新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.488、2006/10/5 15:01 https://www.shinginza.com/rikon/index.htm

[家事・親子]
質問:私は、結婚して8年になりますが、このほど、離婚をすることになりました。5歳になる娘の親権は私の方でとることになりました。現在、私と娘は夫を筆頭者とする戸籍に入っており、夫の姓(甲)を名乗っていますが、娘もまだ就学前ですので、自分も娘も今後は私の旧姓(乙)を名乗ろうと思っています。今後、どのような手続きをとればよいのでしょうか。また、私は、婚姻前は実父を筆頭者とする戸籍に入っていましたが、両親とあまり仲が良くないため、できれば両親とは別の戸籍を作りたいと思っています。このようなことはできるのでしょうか。

回答:
離婚さえすれば、旧姓に戻ることについては特段手続きはいりません。ただし、旧姓に戻ったときは、婚姻前の戸籍に入籍するのが原則ですので、ご両親と別の戸籍を作りたい場合には、新戸籍編成の申し出をしなければなりません。また、上記のように新戸籍をつくり、旧姓に戻ったとしても、それだけではお子さんの戸籍はご主人の戸籍に残ったままで、姓も変わりません。そこで、お子さんの親権者であるあなたが家庭裁判所へ行き、子の氏の変更許可申立てをする必要があります。裁判所で許可書を交付してもらったら、入籍届にこれを添付して役所に届出をして下さい。これであなたの新戸籍にお子さんが入籍し、あなたと同じ氏(乙)を名乗ることが出来ます。
解説:
1、氏の変更について
結婚をして名字(法律用語では名字のことを「氏」というので、以下「氏」といいます。)を変更した場合、離婚をすると原則として結婚前に名乗っていた氏に戻ることになります(民法767条1項、771条)。氏を元に戻すことによって不都合が生じる場合もあるため、離婚の日から3ヵ月以内に届出をすれば、離婚の際に称していた氏を名乗ることが出来ることとされています(民法767条2項、戸籍法77条の2)。本件について考えると、旧姓に戻りたいということですから、離婚の手続をすればそれで足り、それ以外、旧姓に戻すための特別な手続は必要ないということになります。
2、戸籍について
結婚によって氏を改めた人が離婚によって婚姻前の氏に戻ったときは、婚姻前の戸籍に入籍するのが原則とされています(戸籍法19条1項本文)。しかし、戸籍に記載されていた方が全て亡くなるなどして、既に除籍となっている場合や、離婚によって婚姻前の氏に戻る人が新戸籍編成の申し出をした場合には、新戸籍が編成されることになります(同項但し書)。本件では、まだご両親が健在で除籍にはなっていないようですので、あなたが新戸籍編成の申し出をすれば、ご両親とは別の新戸籍を作成することが出来ます。
3、お子さんの戸籍、氏について
親の一方が離婚によって婚姻前の氏に戻ったとしても、子の氏に影響はなく、また、戸籍についても婚姻中の戸籍筆頭者の戸籍に残ることになります。これは親権者がどちらかという問題とは全く関係ありません。離婚によって氏が変わり、戸籍も移った者が、子の氏も変更し、戸籍も移したいと考えている場合には、子本人または子が15歳未満のときにはその親権者が、家庭裁判所に子の氏について変更許可の申立てをしなければなりません(民法791条、家審法9条1項甲類6号)。手続自体はそれ程難しいものではなく、おそらく申し立てたその日のうちに許可書を交付してくれるものと思います。戸籍の届出は、上記の許可書を添付して入籍届を提出する(戸籍法98条)という方法をとることになります。あなたも上記の手続を踏めば、お子さんをご自分の新戸籍に入籍させ、ご自分と同じ氏を名乗らせることが出来るようになります。
4、ご質問に対する回答は以上のとおりですが、細かい点で分からないことなどあれば、専門家に相談するようにして下さい。なお、No、83に類似の事例が掲載されておりますので、そちらも併せてご覧下さい。

≪参考条文≫

民法 
第七百六十七条  婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、協議上の離婚によって婚姻前の氏に復する。
2  前項の規定により婚姻前の氏に復した夫又は妻は、離婚の日から三箇月以内に戸籍法 の定めるところにより届け出ることによって、離婚の際に称していた氏を称することができる。
第七百七十一条  第七百六十六条から第七百六十九条までの規定は、裁判上の離婚について準用する。
第七百九十一条  子が父又は母と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法 の定めるところにより届け出ることによって、その父又は母の氏を称することができる。
2  父又は母が氏を改めたことにより子が父母と氏を異にする場合には、子は、父母の婚姻中に限り、前項の許可を得ないで、戸籍法 の定めるところにより届け出ることによって、その父母の氏を称することができる。
3  子が十五歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わって、前二項の行為をすることができる。
4  前三項の規定により氏を改めた未成年の子は、成年に達した時から一年以内に戸籍法 の定めるところにより届け出ることによって、従前の氏に復することができる。

戸籍法
第十九条  婚姻又は養子縁組によつて氏を改めた者が、離婚、離縁又は婚姻若しくは縁組の取消によつて、婚姻又は縁組前の氏に復するときは、婚姻又は縁組前の戸籍に入る。但し、その戸籍が既に除かれているとき、又はその者が新戸籍編製の申出をしたときは、新戸籍を編製する。
第七十七条  2  前項に規定する離婚の届書には、左の事項をも記載しなければならない。
一  親権者と定められた当事者の氏名及びその親権に服する子の氏名
二  その他法務省令で定める事項
第九十八条  民法第七百九十一条第一項 から第三項 までの規定によつて父又は母の氏を称しようとする者は、その父又は母の氏名及び本籍を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。
2  民法第七百九十一条第二項 の規定によつて父母の氏を称しようとする者に配偶者がある場合には、配偶者とともに届け出なければならない。

家事審判法
第9条1項甲類6号
六 民法第七百九十一条第一項 又は第三項 の規定による子の氏の変更についての許可

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