新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース ≪参考条文≫ 民法
No.492、2006/10/5 15:50 https://www.shinginza.com/rikon/index.htm
[民事][家事・夫婦]
質問:私(A)は、結婚して5年になりますが、1ヶ月ほど前に夫(B)が、ある女性(C)と不倫関係にあることが分かりました。そしてこのことが原因で私たち夫婦は離婚することになりました。私は、夫の不倫相手の女性に慰謝料請求をしたいと思っていますし、また、財産分与の請求もしたいと思っていますが、一方で、話し合いがつかずに離婚が先延ばしになってしまうのも困ります。そこで質問なのですが、離婚をした後に慰謝料を請求したり、財産分与の請求をしたりすることはできないのでしょうか。
↓
回答:離婚をした後でも慰謝料請求、財産分与の請求は出来ます。もっとも、一定期間で請求できなくなる(消滅時効、除斥期間)ので、その点はご注意下さい。
解説:
1、財産分与について
財産分与は、一般的に婚姻中の夫婦共同財産を清算するという意味合いを持ったものですが、これは必ずしも離婚に先立って話し合いをしなければならないものではなく、協議離婚をした後であっても請求をすることは可能であるとされています(民法768条1項)。もっとも、協議離婚後いつまでも請求が認められるわけではなく、請求することが出来る期間は離婚の時から2年間です(同法768条2項)。したがって、Aさんも離婚の時から2年以内であればBさんに対して財産分与の請求をすることが可能です。
2、慰謝料請求について
不倫の慰謝料請求をする場合、その根拠となる条文は民法709条、710条(不法行為)ということになります。そして不法行為に基づいて損害賠償請求をする場合、その消滅時効期間は「損害及び加害者を知った時から3年」、あるいは「不法行為のときから20年」とされています。本件で言えば、Aさんが、「Bさんが不倫をしていることを知り、不倫相手がCさんであることが分かった」時点から3年(時効の中断事由がある場合は別です。)でCさんに対する慰謝料請求権が時効にかかります。この請求権は、AさんがBさんと離婚をしたからといって直ちに消滅してしまうものではありませんので、上記の消滅時効期間の範囲内であれば、協議離婚してから請求することも可能です。
3、まとめ
以上のように、財産分与も慰謝料も離婚後に請求することは可能ですが、現実問題として、離婚がまとまる前の方が財産分与及び慰謝料の点についても話がまとまりやすいというのも事実です。離婚の成立が最優先であり、財産分与及び慰謝料についてはそれほど気にしないという場合はそれでも特に問題ありませんが、財産分与及び慰謝料の点も十分な話し合いがしたいと考えていらっしゃるのであれば、離婚をされる前に、一度専門家に詳しく話を聞かれるのが良いと思います。
第七百六十八条 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
2 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から二年を経過したときは、この限りでない。
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
第七百十条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。