新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース ≪参考条文≫ (錯誤) 第九十五条 意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。
No.501、2006/10/17 18:44 https://www.shinginza.com/rikon/index.htm
[民事・不法行為]
質問:私は,1年前に,夫の暴力とギャンブルが原因で夫と協議離婚をしましたが,最近,夫が離婚する前に浮気していたことを知りました。離婚時に,夫の暴力や浪費癖を理由として慰謝料をもらっているのですが,今になって,不倫を理由とする慰謝料請求を夫にすることはできるでしょうか。また,夫の浮気相手の女性に対してはどうでしょうか。
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回答:
1、まず,離婚された夫に対する慰謝料請求ですが,たとえすでに離婚しているとしても,その不貞行為自体が存在しなかったことになったり,違法性がなくなったりすることはありませんので,離婚後であっても請求することは自体は可能です。ただ,協議離婚の際に,離婚協議書内に清算条項(その件に関し,合意書に記載されている以外には債権債務がないと確認する条項)を入れていると思われますので,まずは,その精算条項自体が錯誤(民法95条)無効であると主張する必要があります。また,離婚の際にすでに暴力行為に対する慰謝料をもらっていたとしても,別途,不貞行為に対する慰謝料を請求することも可能です(大阪高裁平12.3.8など)。
2、次に,不倫相手の女性への慰謝料請求ですが,たとえ離婚後であっても請求することはできます。しかし,不貞行為自体が,あなたと前夫との婚姻関係が破綻した後のものになりますと,裁判上,慰謝料請求が認められないことがあります。また,その請求の前に離婚された夫との間で不倫に関する和解が成立し,すでにこれに関する慰謝料を取得している場合は,法律上,離婚された夫と不倫相手の女性は,共同不法行為者(民法719条)の関係に立ちますので,その女性と裁判上で和解する場合や判決を受ける場合,夫からすでに慰謝料を取得していることが考慮され,本来その女性から取得できる金額よりも低額になることがあります。
3、これらの請求の方法ですが,まずは,請求内容を記載した内容証明郵便を請求の相手方に送付した上で相手方と話し合いをするなど,裁判外の交渉で解決できるとよろしいのですが,このような方法で解決できない場合には,民事裁判を提起する必要があります。
4、また,これらの請求権は,不法行為(民法709条,710条)に基づく損害賠償請求になり,損害及び加害者を知ってから3年経過してしまいますと,消滅時効(民法724条)により請求できなくなりますので,請求されるのであれば,この点にも注意が必要になります。
5、さらに,相手方が不貞行為の存在自体を争ってくる場合には,請求する側であるあなたの方で十分な立証活動を行わないと,裁判で請求を棄却されることになりますので,これらの請求をご検討されているのであれば,一度,弁護士等の専門家にご相談されるとよろしいかと思います。
(不法行為による損害賠償) 第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
(財産以外の損害の賠償) 第七百十条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。
(共同不法行為者の責任)第七百十九条 数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。
2 行為者を教唆した者及び幇助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する。
(不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)
第七百二十四条 不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。