新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.506、2006/10/30 17:59 https://www.shinginza.com/qa-hanzai.htm
[刑事・起訴前]
質問:夫が覚醒剤を使ってしまい、逮捕されてしまいました。これまで薬物使用で捕まったということはないはずで、前科もないはずです。自分で使う一人分だけ、路上で買ったようです。裁判が終わるまで、数ヶ月は出られないのですか、と警察の方に聞いたところ、新しく、即決裁判手続という手続ができたので、もう少し早く出られるかもしれないよ、と言われました。どんな手続なのでしょうか。早く出られるというのは本当ですか。
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回答:
1.これまでの制度では、起訴猶予や略式起訴にならず、正式に起訴されてしまうと、多額の保証金を預けて保釈されない限りは、裁判が終わるまで釈放されず、最低でも数ヶ月以上、身柄を拘束されることを覚悟する必要がありました。薬物犯罪の場合、自己使用、しかも軽微な事案であっても、基本的には、正式に起訴されてしまう場合がほとんどでしたので、釈放まで数ヶ月程度までかかるケースも多くありました。
2.しかし、法改正で新設された、即決裁判手続(刑事訴訟法350条の2以下)による裁判の場合には、できるだけ、逮捕の後の、勾留も延長せずに10日で起訴し、起訴から判決まで14日程度(裁判は、一日で判決まで行う)にすることが想定されており、今後の運用にもよりますが、1ヶ月程度での釈放も期待できます。手続や証拠の制限を簡略化する等して(同法350条の10、350条の12)、早期化を図っていますので、自白している、軽微な事件であることが前提ですが(同法350条の2、350条の8)、この即決裁判手続での判決は、必ず執行猶予となりますので(同法350条の14)、実刑の不安が早期に解消されるというメリットもあります。
3.ただ、いったんこの手続で判決を受けると、事実に誤りがあることを理由にした控訴等はできません(同法403条の2等)ので、被告人本人が書面で同意しなければ、この手続は行えないことになっています(同法350条の2第2項、第5項)。とにかく早く出たいから、本当はやっていないのに自白してしまい、この手続に同意してしまうと、執行猶予となっても、有罪判決を受けることになりますから、本人には、慎重に検討してもらう必要があります。この手続は、必ず弁護人がつくことになっていますので(同法350条の9)、弁護士とよく相談することが大事です。
4.また、起訴から判決までの時間が短いので、本人に有利な立証をするための準備の時間も短いことになります。執行猶予の判決でも、執行猶予期間を短くする、あるいは、取り消されたときの刑の期間を短くするためには、やはり、弁護人による、有利な情状立証が必要になります。ご家族のご協力としては、被告人のこれまでの生活、今後の生活への監督等について、情状証人として証言したり、上申書を提出したりすることが考えられますが、その準備期間も短くなるので、弁護人だけでなく、ご家族の準備へのご協力も大事になってきます。もし、弁護人をつけるなら、早い方がいいことにもなります。ご心配な点は、お早めに、お近くの法律事務所にお問い合わせ下さい。