新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.510、2006/11/7 16:30 https://www.shinginza.com/qa-sarakin.htm

[債務整理]
質問:職場の人間関係がうまくいかず、ストレスを晴らそうと、ついつい、クレジットカードでの買い物をしてしまうようになり、結局、約500万円もの負債を作ってしまいました。心身共に調子を崩して、いろいろ通院もしましたが、この負債の返済もストレスとなり、仕事にも集中できず、収入も伸び悩み、自分でも、悪循環に陥っていると思います。破産するしかない、と思いましたが、浪費が負債の原因だと破産できないと聞いたことがあります。どうしたらいいでしょうか。

回答:
1.恐縮ですが、お伺いした債務額ですと、かなりのご収入やご資産がなければ、自力での解決は難しく、また、弁護士を依頼しても、返済計画をたてて交渉することが難しいかもしれません。消費者金融からの借り入れ等が多い場合は、利息制限法で定められた制限内の利息に計算し直して交渉すれば、負債の圧縮が図れる場合もありますが、カード利用でのショッピング等が多い場合は、利息も既にその範囲内で、方針が変わるほどの圧縮が図れないことも多いと思います。
2.そうなると、支払不能ということで、裁判所に、破産を申立てることを検討せざるを得ません。確かに、ご指摘の通り、浪費によって、財産を減少させ、または過大な債務を負担した場合には、免責不許可事由(破産法第252条第1項第4号)に該当しますので、法的には、免責を受けられないのが原則ですが、この事由に該当する場合であっても、申立に至る経緯や一切の事情を斟酌して、裁判所が相当と認めるときは、免責が受けられる場合があります(同法同条第2項)。これを裁量免責といいます。もちろん、法的には例外となりますが、現実には、この裁量免責を受けられるケースも少なくありません。
3.ただ、やはり例外は例外ですので、裁量免責を受けるためには、負債が増大してしまった理由(本件の場合は、職場の人間関係がうまくいかなかった原因と現状、ストレスの内容や程度、それによる心身の症状、具体的診断があればその病名等)や、支払を強いるのには酷だという事情(本件の場合は、体調の悪化で、仕事もままならず、収入の増加も図れないこと等)につき、申立書において、かなり、具体的かつ詳細に説明する必要があり、裁判所に対しても、そういった事情を強く主張する必要があります。裁量免責のために、少額管財等の、管財人による調査が必要な場合も多く、その場合は、管財人への説明、対応(上記の事情を補足するため、さらに、かなり詳細な上申書を提出する等)や、管財手続費用の支払いも必要になってきます。このような、複雑な手続への対応は、ご自身では難しく、弁護士への相談、依頼が必要になってきます。
4.結局、支払の目処が立たないのであれば、どこかで、何らかの法的対処を検討せざるを得ません。お伺いした事情でも、免責が通るかどうかはわかりませんが、申立書において、説明すべき事情はあるように思います。このまま負債を増大させると、支払えないのに漫然と借り入れを放置した、として、ますます免責が受けにくくなるおそれもあります。まずは、お早めに、お近くの法律事務所にご相談下さい。

≪参考条文≫
(免責許可の決定の要件等) 第二百五十二条 裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
一  債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。
二  破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、又は信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと。
三  特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと。
四  浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。
五  破産手続開始の申立てがあった日の一年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと。
六  業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、又は変造したこと。
七  虚偽の債権者名簿(第二百四十八条第五項の規定により債権者名簿とみなされる債権者一覧表を含む。次条第一項第六号において同じ。)を提出したこと。
八  破産手続において裁判所が行う調査において、説明を拒み、又は虚偽の説明をしたこと。
九  不正の手段により、破産管財人、保全管理人、破産管財人代理又は保全管理人代理の職務を妨害したこと。
十  次のイからハまでに掲げる事由のいずれかがある場合において、それぞれイからハまでに定める日から七年以内に免責許可の申立てがあったこと。
イ 免責許可の決定が確定したこと 当該免責許可の決定の確定の日
ロ 民事再生法 (平成十一年法律第二百二十五号)第二百三十九条第一項 に規定する給与所得者等再生における再生計画が遂行されたこと 当該再生計画認可の決定の確定の日
ハ 民事再生法第二百三十五条第一項 (同法第二百四十四条 において準用する場合を含む。)に規定する免責の決定が確定したこと 当該免責の決定に係る再生計画認可の決定の確定の日
十一  第四十条第一項第一号、第四十一条又は第二百五十条第二項に規定する義務その他この法律に定める義務に違反したこと。
2  前項の規定にかかわらず、同項各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合であっても、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。

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