新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース ≪参考条文≫ 【平成14年版警察白書】 【民法】 【出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(出資法)】 【貸金業の規制等に関する法律】 【刑法】
No.514、2006/11/7 17:03 https://www.shinginza.com/qa-sarakin.htm
〔民事・多重債務・紹介業者〕
質問:私は、多重債務に陥ってしまいました。色々な金融業者を回り、融資の申込みをしておりますが、断わられ続け、先日、ある金融業者に融資の申込みをすると、うちでは貸せないので、他の金融業者を紹介するので、その融資額から数十%の紹介手数料を支払って下さいと言われました。このような業者を信用しても大丈夫でしょうか。
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回答:
1.あなたが融資の申込みを行った業者は、世上「紹介屋」と呼ばれる業者である可能性が考えられます。
2.このような業者は、様々な広告媒体を用いて融資の申込みを勧誘し、債務額や債権者数などを申告させて、外観上融資のための審査を行ったように見せかけますが、自分のところでは融資を断わり、他の融資をしてくれる金融業者を紹介すると言い、融資された金額の数十%を紹介手数料として徴収します。このような業者は、一見すると他の金融業者に対して働きかけを行ったため、融資が行われたように説明しますが、実際は法的な審査、検討や他の業者への働きかけ等、何も行っておらず、あなたから紹介料と称し事実上金銭を詐取することが目的と考えられます。詐取しようとする金銭についても宅急便等を利用し、被害者の送金の事実を隠蔽しようとする場合もあります。近時は、「金融機関加盟の信用情報機関のデータベースに侵入し、データを書き換える」「金融業界に通じている人物に口利きをする」等のおおよそ現実には考えられない名目で金銭を詐取する事例もあります。このような業者も上記と同様に考えられます。
3.従って、被害に遭われる前に、そのような金融業者の言うことは一切信用せず、即刻取引を中止してください。取引を中止したことで、相手方から執拗に電話をかけられ、家に押しかける等脅迫的な言動を行われる可能性も考えられますが、その場合でも、一切相手にせず、すぐに最寄りの警察署、弁護士にご相談してください。一度何らかの要求に応じてしまうと、要求がエスカレートし、さらに被害か拡大する危険性があります。
4.もし仮に既に被害に遭われた場合の対処方法について、ご説明します。
@ まず、紹介手数料として詐取された金銭は法律上の原因のない不当利得として、返還を請求することが出来ます(民法703条)。しかしながら、現実には、このような業者は、行方が分からなくなったり、正確な氏名や所在地など特定が難しい場合も多くあり、たとえ公示送達などの方法により訴訟提起し、判決を得ても、その後、強制執行をする際、差押えるべき財産が分からない等に理由により、残念ながらお金を取り戻すことが難しい場合がほとんどです。
A 一方、その金融業者の行った行為は、紹介手数料を数十%徴収しており、出資法4条1項(媒介手数料制限)に定めている5%を大きく超えていますので、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金、又は併科の罰則が処される重大な違法行為であり(同法8条2項)、また、貸金業規制法16条違反(誇大広告禁止)や、刑法246条の詐欺罪に該当する可能性も十分ございますので、あなたとしては、捜査機関に対して、刑事告訴をすることができます。また、その業者が、貸金業登録業者である場合には、登録取消の行政処分の申立てを監督官庁にすることも考えられます。
B そのため、まだ相手の業者と連絡が取れる状況で、紹介手数料として支払った金銭を返還しないのであれば、即刻刑事告訴・行政処分の申立をする旨を警告し、金銭の返還を請求することも一つの方法だと考えられます。
C 以上の方法は、刑事的処罰等を含むことから詐取された金銭返還に意外な効果を発揮する場合がありますから、諦めずにお近くの警察署に何度も足を運ばれることをお勧めします。すなわち、業者側に前科・前歴、他にやましい取引等があり、取調べ・逮捕を回避したいという気持ち、違法行為を継続している業務に思わぬ支障(例えば、捜査を予知し店舗の移転等の必要性が生じ経済的負担が多くなること、店舗名義の変更の煩雑性、すなわち違法業者は他人名義で賃貸している場合が多いといわれています)が生じる可能性があることなどから一部金銭の返還に応じる場合もあるかも知れません。
5.以上のように、あなたが融資の申込みをした金融業者は悪質業者である可能性が高く、もし、本件の対応、多重債務でお困りでしたら、借り増しは多重債務の解決とはなりませんので、弁護士等に相談し、法的な債務整理、金銭の返還請求を行うことをご検討されることをお勧め致します。
平成13年中の金融関係事犯の検挙は、検挙事件数・検挙人員ともに過去10年間で最多となった。特徴としては、高金利事犯の検挙が増加し、また、いわゆる紹介屋による詐欺事犯の検挙が11事件、108人と急増した。
(注) 紹介屋とは、融資を申し込んできた客に対し、他の金融会社を仲介すると偽り、仲介料等をだまし取るものをいう。
第七百三条 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
第七百四条 悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。
第四条 金銭の貸借の媒介を行う者は、その媒介に係る貸借の金額の百分の五に相当する金額をこえる手数料の契約をし、又はこれをこえる手数料を受領してはならない。
2 金銭の貸借の媒介を行う者がその媒介に関し受ける金銭は、礼金、調査料その他何らの名義をもつてするを問わず、手数料とみなして前項の規定を適用する。
第八条 何らの名義をもつてするを問わず、また、いかなる方法をもつてするを問わず、第五条第一項から第三項までの規定に係る禁止を免れる行為をした者は、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第一条、第二条第一項、第三条又は第四条第一項の規定に違反した者
二 何らの名義をもつてするを問わず、また、いかなる方法をもつてするを問わず、前号に掲げる規定に係る禁止を免れる行為をした者
3 前項の規定中第一条及び第三条に係る部分は、刑法 (明治四十年法律第四十五号)に正条がある場合には、適用しない。
第十六条 貸金業者は、その業務に関して広告又は勧誘をするときは、貸付けの利率その他の貸付けの条件について、著しく事実に相違する表示若しくは説明をし、又は実際のものよりも著しく有利であると人を誤認させるような表示若しくは説明をしてはならない。
2 前項に定めるもののほか、貸金業者は、その業務に関して広告又は勧誘をするときは、次の各号に掲げる表示又は説明をしてはならない。
一 顧客を誘引することを目的とした特定の商品を当該貸金業者の中心的な商品であると誤解させるような表示又は説明
二 他の貸金業者の利用者又は返済能力がない者を対象として勧誘する旨の表示又は説明
三 借入れが容易であることを過度に強調することにより、資金需要者の借入意欲をそそるような表示又は説明
四 公的な年金、手当等の受給者の借入意欲をそそるような表示又は説明
五 貸付けの利率以外の利率を貸付けの利率と誤解させるような表示又は説明
3 貸金業者は、その業務に関して広告又は勧誘をするときは、資金需要者等の返済能力を超える貸付けの防止に配慮するとともに、その広告又は勧誘が過度にわたることがないように努めなければならない。
第四十八条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第十一条第三項の規定に違反した者
二 第十三条の三の規定に違反した者
三 第十六条第一項の規定に違反した者
四 第十七条又は第十八条第一項(第二十四条第二項、第二十四条の二第二項、第二十四条の三第二項、第二十四条の四第二項及び第二十四条の五第二項においてこれらの規定を準用する場合を含む。)の規定に違反して書面を交付せず、又はこれらの規定に規定する事項を記載しない書面若しくは虚偽の記載をした書面を交付した者
五 第二十条(第二十四条第二項、第二十四条の二第二項、第二十四条の三第二項、第二十四条の四第二項及び第二十四条の五第二項(第二十四条の六においてこれらの規定を準用する場合を含む。)において準用する場合を含む。以下この号において同じ。)の規定に違反して、第二十条に規定する事項を記載しない委任状を取得した者
五の二 第二十条の二(第二十四条第二項、第二十四条の二第二項、第二十四条の三第二項、第二十四条の四第二項及び第二十四条の五第二項(第二十四条の六においてこれらの規定を準用する場合を含む。)において準用する場合を含む。)の規定に違反して、第二十条の二に規定する預金通帳等の引渡し若しくは提供を求め、又はこれらを保管した者
六 第二十四条第三項の規定に違反して、同項第一号又は第二号に該当する者であることを知りながら、これを相手方として、貸付けの契約に基づく債権の債権譲渡等をした者
七 第二十四条の二第三項の規定に違反して、同項第一号又は第二号に該当する者であることを知りながら、これを相手方として、貸付けに係る契約について保証契約を締結した者
八 第二十四条の三第三項の規定に違反して、同項第一号又は第二号に該当する者であることを知りながら、これを相手方として、貸付けの契約に基づく債務の弁済を委託した者
九 第三十五条第一項の規定による報告若しくは資料の提出をせず、虚偽の報告若しくは虚偽の資料の提出をし、同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は同項の規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をした者
十 第四十一条の二の規定による事業報告書を提出せず、又は虚偽の記載をした事業報告書を提出した者
十一 第四十二条第一項(第二十四条第二項、第二十四条の二第二項、第二十四条の三第二項、第二十四条の四第二項及び第二十四条の五第二項において準用する場合を含む。)の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
十二 第四十二条第二項(第二十四条第二項、第二十四条の二第二項、第二十四条の三第二項、第二十四条の四第二項及び第二十四条の五第二項において準用する場合を含む。以下この号において同じ。)の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は第四十二条第二項の規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をした者
十三 第四十四条の五第一項の規定による質問に対して答弁をせず、又は虚偽の答弁をした者
第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。