新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.518、2006/11/10 16:27 https://www.shinginza.com/rikon/index.htm

[家事・夫婦]
質問 20年間連れ立った夫との離婚を考えています。報道によると,平成19年に年金分割制度が実施されるとのことですが,今,離婚した場合,年金は,財産分与の対象になるのでしょうか。

回答:
1 財産分与
一般に,財産分与には,@夫婦財産の清算,A離婚後の扶養,B離婚慰謝料の3つの要素がありますが,通常は,@夫婦財産の清算,すなわち,夫婦が婚姻中に夫婦双方の協力で形成した財産の清算という意味で用いられることが一般です。ご質問のケースにおいては,@における財産分与とAにおける財産分与が問題となります。
2 年金分割の必要性
現在の年金制度では,全国民共通の基礎年金と,これに対する上乗せ部分としての厚生年金や共済年金とがあります。そして,専業主婦は,いわゆるサラリーマンや公務員(第2号被保険者)の妻である場合,第3号被保険者として基礎年金についての受給権があるので,基礎年金部分については,離婚した場合でも特に問題になることはありませんが,上乗せ部分(厚生年金,共済年金)については,第2号被保険者である夫のみが受給できるのに対して,妻には受給権が認められません。そこで,この点の不都合を是正するために,平成19年4月から年金分割制度が実施される予定ですが,夫が上乗せ年金を受給できるのは,婚姻中の妻の家事労働などのいわゆる「内助の功」があったからであり,その意味で,上乗せ年金は,夫婦が婚姻中に夫婦双方の協力で形成した財産といえますので,年金分割制度の実施前であっても,年金は,清算的財産分与対象になるというべきです。また,年金は,受給者の生活保障の意味合いを有するため,A扶養的財産分与の対象にもなると考えられます。実務上も,年金を財産分与の対象と認める判例があります(ただし,逆に,支給の不確実等を理由として財産分与の対象とは認められない,とする判例もあります)。
3 算定方法
年金が財産分与の対象になるとしても,妻の「内助の功」が認められるのは,在職期間の内,婚姻期間に対応する部分であり,この部分のみが婚姻中に取得された年金の価値といえます。したがって,分与額は,年金の現在価値×(婚姻期間/在職期間)×寄与度を基本とすべきでしょう。なお,年金の現在価値の計算は,年金支給開始年齢から平均余命までの受給額を計算し,受給額から中間利息を控除するという方法によることが提唱されています。
4 ご質問のケースでも,あなたは,上記のような算定方法で得られる金額について,財産分与を主張することができると思われます。ただし,一般の方が裁判外で上記のような算定を行うのは,必ずしも容易ではありませんので,弁護士に依頼したり,調停を利用したりすることが必要になるかもしれません。したがって,場合によっては,平成19年4月の年金分割制度の開始を待ったほうが得策であるとも考えられます。

≪参考条文≫

(財産分与)民法第768条 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
2 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から2年を経過したときは、この限りでない。
3 前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める

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