新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース ≪参考条文≫ 裁判所法 民事訴訟法
No.519、2006/11/10 16:35
[民事・裁判]
質問:相手方に対して訴訟を起こそうかと考えています。どこの裁判所に申し立てればよいのでしょうか。また、自分でやるのは難しそうなので、弁護士を頼むことも考えています。相手方が支払ってくれれば問題なかったのだから、裁判に勝った場合には相手方に弁護士費用を請求することはできますよね。
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回答:
1 訴訟を申し立てるときに、どこの裁判所に申し立てればよいかは、あなたがこれから何を申し立てようとしているかによってかわってきます。当該事件をどこに申立てればよいかというのを、「管轄」といいます。例えば、離婚や遺産相続などについての事件については、家庭裁判所に「管轄」がありますし、通常の金銭の支払いをもとめるような通常の民事訴訟については、訴額(請求する額)が140万をこえるものについては地方裁判所、140万円以下のものについては、簡易裁判所にそれぞれ「管轄」があります(裁判所法24条1項、同33条1項1号)。(なお、訴額60万円以下の訴訟については簡易裁判所のなかでも少額訴訟という手続きもとることが可能です。民事訴訟法368条1項)
2 さて、地方裁判所、簡易裁判所、家庭裁判所はそれぞれ各地にあります。これらの裁判所のうち、どこに申し立てをしたらいいかというのが「土地管轄」の問題で、これは原則として、相手方の住所地の裁判所に申し立てる、と考えておけば間違いはないと思います。ただし、相手方の住所地が遠方にある場合など、相手方の住所地に期日のたびに行くのは大変です。法が相手方の住所地以外に「土地管轄」を認めているケースもあるので、できるだけあなたの行きやすい裁判所に申し立てをするのが得策といえます。例外としていくつか挙げると、@金銭請求については義務履行地(多くは原告の住所地であることが多いでしょう。)A不法行為の損害賠償(例えば交通事故)については不法行為地(事故がおきた土地)B不動産にかかる訴訟(明け渡し訴訟など)については、不動産の所在地C相続事件については相続が開始したときの被相続人の住所地を管轄する裁判所などがあります(法5条)。お金を払えという訴訟であれば、あなたの最寄りの裁判所で申し立てができる可能性は高いといえますので、とりあえずは、お近くの裁判所にご相談してみてはいかがでしょうか。
3 次に、弁護士費用についてですが、残念ながら、仮に勝訴判決をもらうようなケースであっても、弁護士費用を相手方に払ってもらうことは原則としてできません。通常、訴状には申し立ての趣旨として、「訴訟費用を被告の負担とする」という判決を求め、裁判所も判決の主文で「訴訟費用は被告の負担とする」とすることがあり、このような場合には「訴訟費用」を相手方に負担させることができます(民事訴訟法61条)。ただ、ここでいう訴訟費用というのは、民事訴訟費用等に関する法律に定まっていて、具体的には訴状貼付の印紙額、書類作成料、郵便料、証人・鑑定人などの旅費・日当や実地検証の費用などで、弁護士費用は含まれないことになっています。弁護士費用を請求したい場合は、請求の趣旨として、弁護士費用を損害額として請求し、判決で損害額として認められた場合のみであり、判決で弁護士費用を損害として認めてもらうのは難しいと考えていただいて結構です。ただし、交通事故のような不法行為に基づく損害賠償請求の場合には、実務でも損害額の1割程度の金額を弁護士費用として生じた損害として認定することは多いようです。
4、なお、上記の訴訟費用については、裁判所は判決では具体的な金額を定めることはしません。通常のケースでも本案で認められた請求額のみ相手方に支払を求めて、訴訟費用については、訴訟費用についての負担についての判決にかかわらず、特に請求しないことも少なくありません。もっとも、印紙代や郵券代など確実に認められる部分は、判決後、認容額とあわせて相手方に請求してみて、相手方としてもこれらは訴訟費用として争いのないところなので、支払うということもあるでしょうから、請求してみてもよいでしょう。訴訟費用額について争いがあるなどの理由で相手方が支払わないのであれば、別途訴訟費用確定を裁判所(正確には、判決を出した裁判所の書記官・法71条)に求め、訴訟費用額を確定してもらい、債務名義を得て、最終的には強制執行という手続きをとることになります。
第二十四条 (裁判権) 地方裁判所は、次の事項について裁判権を有する。
一 第三十三条第一項第一号の請求以外の請求に係る訴訟(第三十一条の三第一項第二号の人事訴訟を除く。)及び第三十三条第一項第一号の請求に係る訴訟のうち不動産に関する訴訟の第一審
第三十三条 (裁判権) 簡易裁判所は、次の事項について第一審の裁判権を有する。
一 訴訟の目的の価額が百四十万円を超えない請求(行政事件訴訟に係る請求を除く。)
(財産権上の訴え等についての管轄)
第五条 次の各号に掲げる訴えは、それぞれ当該各号に定める地を管轄する裁判所に提起することができる。
一 財産権上の訴え
義務履行地
二 手形又は小切手による金銭の支払の請求を目的とする訴え
手形又は小切手の支払地
三 船員に対する財産権上の訴え
船舶の船籍の所在地
四 日本国内に住所(法人にあっては、事務所又は営業所。以下この号において同じ。)がない者又は住所が知れない者に対する財産権上の訴え
請求若しくはその担保の目的又は差し押さえることができる被告の財産の所在地
五 事務所又は営業所を有する者に対する訴えでその事務所又は営業所における業務に関するもの
当該事務所又は営業所の所在地
六 船舶所有者その他船舶を利用する者に対する船舶又は航海に関する訴え
船舶の船籍の所在地
七 船舶債権その他船舶を担保とする債権に基づく訴え
船舶の所在地
八 会社その他の社団又は財団に関する訴えで次に掲げるもの
社団又は財団の普通裁判籍の所在地
イ 会社その他の社団からの社員若しくは社員であった者に対する訴え、社員からの社員若しくは社員であった者に対する訴え又は社員であった者からの社員に対する訴えで、社員としての資格に基づくもの
ロ 社団又は財団からの役員又は役員であった者に対する訴えで役員としての資格に基づくもの
ハ 会社からの発起人若しくは発起人であった者又は検査役若しくは検査役であった者に対する訴えで発起人又は検査役としての資格に基づくもの
ニ 会社その他の社団の債権者からの社員又は社員であった者に対する訴えで社員としての資格に基づくもの
九 不法行為に関する訴え
不法行為があった地
十 船舶の衝突その他海上の事故に基づく損害賠償の訴え
損害を受けた船舶が最初に到達した地
十一 海難救助に関する訴え
海難救助があった地又は救助された船舶が最初に到達した地
十二 不動産に関する訴え
不動産の所在地
十三 登記又は登録に関する訴え
登記又は登録をすべき地
十四 相続権若しくは遺留分に関する訴え又は遺贈その他死亡によって効力を生ずべき行為に関する訴え
相続開始の時における被相続人の普通裁判籍の所在地
十五 相続債権その他相続財産の負担に関する訴えで前号に掲げる訴えに該当しないもの(相続財産の全部又は一部が同号に定める地を管轄する裁判所の管轄区域内にあるときに限る。)
同号に定める地
(訴訟費用の負担の原則)
第六十一条 訴訟費用は、敗訴の当事者の負担とする。
(訴訟費用額の確定手続)
第七十一条 訴訟費用の負担の額は、その負担の裁判が執行力を生じた後に、申立てにより、第一審裁判所の裁判所書記官が定める。
2 前項の場合において、当事者双方が訴訟費用を負担するときは、最高裁判所規則で定める場合を除き、各当事者の負担すべき費用は、その対当額について相殺があったものとみなす。
3 第一項の申立てに関する処分は、相当と認める方法で告知することによって、その効力を生ずる。
4 前項の処分に対する異議の申立ては、その告知を受けた日から一週間の不変期間内にしなければならない。
5 前項の異議の申立ては、執行停止の効力を有する。
6 裁判所は、第一項の規定による額を定める処分に対する異議の申立てを理由があると認める場合において、訴訟費用の負担の額を定めるべきときは、自らその額を定めなければならない。
7 第四項の異議の申立てについての決定に対しては、即時抗告をすることができる。
(少額訴訟の要件等)
第三百六十八条 簡易裁判所においては、訴訟の目的の価額が六十万円以下の金銭の支払の請求を目的とする訴えについて、少額訴訟による審理及び裁判を求めることができる。ただし、同一の簡易裁判所において同一の年に最高裁判所規則で定める回数を超えてこれを求めることができない。
2 少額訴訟による審理及び裁判を求める旨の申述は、訴えの提起の際にしなければならない。
3 前項の申述をするには、当該訴えを提起する簡易裁判所においてその年に少額訴訟による審理及び裁判を求めた回数を届け出なければならない。