新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.536、2006/11/28 15:24
〔消費者団体訴訟〕
質問:消費者団体訴訟という制度ができたと聞きましたが、それはどのような制度でしょうか。
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回答:
消費者団体訴訟は、平成18年5月31日に消費者契約法の改正により創設されました。改正法は、平成19年6月7日から施行されます。この制度の詳細については、内閣府令、ガイドラインによって、今後、規定されることになっていますので、ここでは概要だけご紹介しておきます。
1.制度の概要
この制度は、不特定多数の消費者の利益を擁護するために、内閣総理大臣の認定を受けた適格消費者団体に、消費者契約法違反の事業者の不当な勧誘行為(消費者契約法4条)及び契約条項(消費者契約法8条乃至10条)の使用を差し止める請求権を認めるものです。訴訟外において差止の事前請求をしたにもかかわらず従わない場合には、差止訴訟も認められます。民事訴訟法の原則論として、訴訟を提起する者(原告)に、訴えの利益、当事者適格が必要とされています。そのため直接の被害者ではない消費者団体が、消費者に代わって訴訟を提起するということは認められていませんでした。この原則論を修正してまで、このような制度を認めたという点は、非常に画期的なことです。
2.制度の必要性
平成13年4月1日の施行以来、消費者契約法は、消費者被害を救済する法律として広く利用されており、実際の事件処理においても、同法の規定によって消費者の救済が図れるケースが少なからずありました。しかしながら、従来の法制度だけでは、消費者契約で被害に遭った消費者自身が、事業者に対して個別に請求(場合によっては訴訟を提起)して被害の回復を図る必要があり、その効果も消費者と事業者間の個別の問題でしかなく、同様の被害を受けた消費者に対しては何ら影響がないため、抜本的な被害防止にはならないという問題がありました。例えば、消費者甲が、事業者乙を民事訴訟で訴え、乙の甲に対する不当な勧誘行為と認定され、両者の契約の取消しを認める旨の判決が出されたとしても、その効果は、当該甲及び乙との間にのみ生じ(既判力)、事業者乙が、他の消費者Aに対して、同様の不当な勧誘行為を行うことを防止できませんでした。
3.制度のメリット
この点、消費者団体訴訟の制度が施行されますと、事業者が、不特定かつ多数の消費者に対して、当該行為を現に行い又は行うおそれがあるときは、適格消費者団体は、当該事業者に対して、当該行為の停止もしくは予防等を請求することができ、請求しても従わない場合には、差止訴訟も認められます。適格消費者団体にこのような権限が認められることで、適格消費者団体が、市場における消費者契約の監視役となり、事業者の業務の改善が期待できるという意味で、抜本的な解決が期待できるわけです。
4.まとめ
今回の改正では、適格消費者団体から事業者に対して損害賠償請求をすることは認めていないなど、施行前から今後の課題とされる点の指摘はありますが、消費者団体訴訟制度が認められたことで、消費者被害を未然に防止し、また被害の拡大を防止できるのではないかという大きな期待が寄せられています。