新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.557、2007/1/10 17:38 https://www.shinginza.com/qa-hanzai.htm

【刑事 起訴前弁護 保釈 公判 準抗告 執行猶予 電話による危険物散布の脅迫】
質問:私は、ある病院の看護婦として十数年の間一生懸命働いてきたのですが、仕事の事であるミスがあり病院長、看護婦長、職場の同僚などにも厳しいことを言われたため、失意のうちに依願退職しました。その後、職場の同僚とのやり取りなどが頭を離れず病院に対して恨みの感情が芽生え、さらには、自分の生い立ちや努力した日々を思い出すなど被害妄想的感情に支配され、怒りが増幅し、ひいては病院に対し数ヶ月間で複数回に亘り危険な薬物を散布するといった内容の脅迫電話等を掛けてしまいました。現在、そのために脅迫罪などの容疑で逮捕されております。事件当時、病院の警備担当は、脅迫電話の度に事実確認のため臨戦態勢をとり、病院内に危険物等がないか点検し、入院患者の誘導準備を余儀なくされるなど、その時期は病院全体が緊迫した状況に陥ったそうです。私は現在自分の犯した罪の重さを痛感し深く反省しております。ただ、私は以前ある病気で入院した経験があり体が弱い為身柄拘束の日々がつらくてたまりません。それでもこの場合私は実刑になってしまうのでしょうか、それ以前に身柄拘束を早期に解放される余地はないのでしょうか。

回答:
ご質問では、脅迫罪などの容疑で逮捕されたとのことですが、脅迫罪などで逮捕されるということは捜査機関側があなたの上記脅迫電話をいたずら半分のものではなく悪質な犯罪であると考えていることが伺われます。病院全体に与えた影響や社会に与えた衝撃を考えると当然のこととも思われます。行為態様や動機の悪質さの程度などによっては実刑になる可能性もあるでしょう。ただ、そうはいっても脅迫罪は殺人罪や強盗罪などと比較すれば重大な犯罪類型とは必ずしもいえません。脅迫罪であれば一般的にいえば実刑を免れる可能性が高いとも言えます。また、早期に身柄解放がされる可能性もあります。そこで、以下早期の身柄解放のための方策について、弁護士が弁護人として受任を受けた場合に考慮する点について述べ最後に今後の見通しなどについて述べることとします。

1、起訴前弁護
残念ながら、起訴前段階では現行法上被疑者保釈制度はありません。そのこと自体問題ですが、ここでは現行制度の中でとるべき手段を述べることにとどめます。
(1)処分(略式起訴・起訴猶予の検討)
起訴前に身柄解放の為の手段としてはまず、軽微な事案であることなどを強調して公判請求させないよう検察官に働きかける活動があります。この活動は直接の身柄解放のための制度というわけではありませんが、実刑となって長期の身柄拘束とはならなくなるという意味では最も効果的な方法であるとも言えます。公判請求されると原則勾留は起訴後も継続されることを考えると、その活動が身柄拘束の早期解放との関係で意味があることも分かることと思います。
(2)身柄解放
次に、起訴前段階の直接的な身柄解放の為の活動ですが、@逮捕後勾留時までの身柄の解放、A勾留の裁判に対する準抗告、B勾留理由開示制度、C勾留の取消、D勾留に対する執行停止などが考えられます。いずれの手続も残念ながら現実の実務では必ずしも実効性が高いとはいえません。しかし、だからといって、漫然と捜査機関側の身柄拘束を放置しておくのではなく、捜査機関側の違法不当な身柄拘束がなされないよう監視をする意味でも弁護人は積極的にこれらの手続きを検討します。
ア @(逮捕時の活動)について
逮捕に対する準抗告の制度は現行法上ありません。しかし、逮捕にかかる被疑事実について嫌疑不十分である場合や嫌疑があっても罪証隠滅・逃亡などのおそれがない場合には、弁護人は捜査機関に対し在宅捜査への切り替えを求めるなどの活動をします。
イ A(準抗告)について
この手続は、違法不当な勾留からの被疑者の救済手続です。そもそも勾留の要件としては、勾留の理由と必要性が充足される必要があり、犯罪の嫌疑がないときや罪証隠滅ないし逃亡のおそれがないなど、これらの要件がないことを理由に勾留の裁判自体を争うものです。勾留の原裁判当時の資料や事情に付加してその後の新事情を考慮(例えば、被疑者が主要部分について自白し、関係人の供述もある程度収集されたなど。)すれば原裁判は取消されるべきであるとして準抗告を認容した裁判例(東京地決昭47・4・9判地660・34など)などもあり、弁護人としては勾留裁判までの資料とその直後の事情を加味して勾留裁判の効力を争います。起訴前では最も利用される制度といえます。
ウ B(勾留理由開示)について
この制度は、勾留の理由を公開の法廷で明らかにすることによって、裁判官に対して勾留の要件の存否について再検討の機会を与え、勾留の可否について反省を迫るものです。以下の勾留取消請求と共になされることが多く、仮に被疑者に対する勾留取消請求が成功しなくても、その後の勾留延長の際などでは裁判官の一層慎重な判断を期待できます。実際、勾留理由開示請求をしたことで、開示直前に検察官が被疑者を釈放したり、開示後の勾留延長期間が短縮されることもあります。
エ C(勾留取消)について
勾留取消請求は、勾留後に勾留の理由又は必要性がなくなったときにする身柄解放の為の制度です。勾留の裁判直後に生じた事由は準抗告においても主張できますので、ある程度の期間経過後に生じた事由により勾留の理由又は必要性がなくなった場合などにこの制度を利用します。
オ D(勾留執行停止)について
勾留の執行を一時的に停止し、被疑者・被告人の拘束を解く制度です。執行停止が認められても、執行停止期間に終期を明示されるのが通常ですので、病気治療のための入院の必要がある場合などにこの制度を利用します。

2、起訴後弁護
(1)仮に、公判請求段階に至ると、起訴前に述べた身柄解放の為の制度のほか、最も実効性の高い保釈制度が利用できます。なお、裁判で執行猶予判決を得られた場合、その段階で身柄は釈放されることとなりますので、執行猶予判決を得るための活動の重要性は言うまでもありませんが、ここでは起訴後裁判時までに身柄拘束を解く手段である保釈制度について述べます。
(2)保釈
保釈制度とは、保釈金の納付等を条件として、勾留の効力を残しながらその執行を停止し、被告人の身柄の拘束を解く制度を言います。(刑事訴訟法88条、89条)保釈裁判の現状としては、保釈請求率は30〜40%程度であり、そのうち保釈許可率は概ね50%程度で推移しています。いずれにしても他の身柄拘束の制度と比べれば実効性は一番高いといえます。そもそも、刑事訴訟法上保釈は認められるのが原則(権利保釈)でありますので、弁護人としてはそのことを強調しつつ、罪証隠滅のおそれ等が起訴されたことで消滅ないし著しく減少したことを強く主張して保釈を勝ち取る為の活動をします。

3 今後の見通しを含めたまとめ
(1)示談交渉との関係
本件では、行為態様が比較的重大であり、動機も悪質と捜査機関側が考えていると思われますので、公判請求される可能性は高いでしょう。
ただ、被害病院側との示談が成立し、被害者側が被疑者の処分を軽くするよう捜査機関側や裁判所に対し嘆願したような場合、検察官が特別に起訴猶予処分または略式手続として処理することも可能性としては考えられます(なお、本件では、被害病院の院長などと示談交渉をすることとなりますが、直接に脅迫を受けた従業員や警備担当者などの意向を無視して示談が成立することは難しいでしょう。その意味で、難しい交渉が予想されます。)。
(2)準抗告との関係
弁護人は、裁判所に準抗告を申立てて勾留裁判を争います。特に、本人が本件犯行を自白しておりますので、被害者側との示談が成立し被疑者本人の体調などを強調すれば、勾留裁判が覆る可能性はあると思われます。ただ、示談交渉にすら応じてもらえないようなケースでは証人威迫の可能性があり証拠隠滅の恐れがあることなどを理由に準抗告申立ては却下されることが予想されます。
(3)保釈との関係
本件では、示談が成立する可能性はそれほど高くないと思われます。その場合でも起訴前の弁護人は略式起訴手続で処理してもらえるよう検察官に働きかける活動をしますが、実際には公判手続に移行する可能性は高いでしょう。その場合、起訴後の弁護人は、起訴後直ちに保釈申請手続をします。起訴後の段階では既に捜査機関側は有罪立証の為の証拠を収集済みであり証拠隠滅の具体的な可能性は極めて低いといえます。もちろん、被害者側などに対する証人威迫の恐れはなおあるわけですが、弁護人が付いた上で家族が身元を保証するなどした場合、実際にその恐れは低いものと判断して裁判官としては保釈が認められる可能性は十分にあると思われます。ただ、保釈保証金としては少なくとも200万円―300万円程度は準備する必要があるでしょう。判決については、脅迫文言の内容や頻度、動機の悪質性の度合い、被害者側に与えた影響、示談交渉の経緯、被害者側の被害感情、前科前歴の有無(ないし前科の内容が同種前科か)、被告人の反省の程度、贖罪寄付の有無、社会に与えた影響、被告人の家族などの指導監督の実効性の程度などさまざまな事情を考慮しない限り実刑となるか執行猶予が付くかの厳密な判断は出来ません。ただ、被告人であるあなたが自白をした上で深く反省しているということからすると、執行猶予の可能性は十分にあると思われますし、弁護人は執行猶予判決を得る為の最大限の弁護をすることに心血を注ぐこととなります。

≪参考条文≫

略式起訴
第三十二章 脅迫の罪
(脅迫)
第二百二十二条  生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
2  親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

刑事訴訟法
第八十二条  勾留されている被告人は、裁判所に勾留の理由の開示を請求することができる。
○2  勾留されている被告人の弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹その他利害関係人も、前項の請求をすることができる。
○3  前二項の請求は、保釈、勾留の執行停止若しくは勾留の取消があつたとき、又は勾留状の効力が消滅したときは、その効力を失う。
第八十三条  勾留の理由の開示は、公開の法廷でこれをしなければならない。
○2  法廷は、裁判官及び裁判所書記が列席してこれを開く。
○3  被告人及びその弁護人が出頭しないときは、開廷することはできない。但し、被告人の出頭については、被告人が病気その他やむを得ない事由によつて出頭することができず且つ被告人に異議がないとき、弁護人の出頭については、被告人に異議がないときは、この限りでない。
第八十四条  法廷においては、裁判長は、勾留の理由を告げなければならない。
○2  検察官又は被告人及び弁護人並びにこれらの者以外の請求者は、意見を述べることができる。但し、裁判長は、相当と認めるときは、意見の陳述に代え意見を記載した書面を差し出すべきことを命ずることができる。
第八十七条  勾留の理由又は勾留の必要がなくなつたときは、裁判所は、検察官、勾留されている被告人若しくはその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消さなければならない。
○2  第八十二条第三項の規定は、前項の請求についてこれを準用する。
第八十八条  勾留されている被告人又はその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹は、保釈の請求をすることができる。
○2  第八十二条第三項の規定は、前項の請求についてこれを準用する。
第八十九条  保釈の請求があつたときは、左の場合を除いては、これを許さなければならない。
一  被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
二  被告人が前に死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮にあたる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
三  被告人が常習として長期三年以上の懲役又は禁錮にあたる罪を犯したものであるとき。
四  被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
五  被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
六  被告人の氏名又は住居が判らないとき。
第九十条  裁判所は、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。
第九十一条  勾留による拘禁が不当に長くなつたときは、裁判所は、第八十八条に規定する者の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消し、又は保釈を許さなければならない。
○2  第八十二条第三項の規定は、前項の請求についてこれを準用する。
第九十二条  裁判所は、保釈を許す決定又は保釈の請求を却下する決定をするには、検察官の意見を聴かなければならない。
○2  検察官の請求による場合を除いて、勾留を取り消す決定をするときも、前項と同様である。但し、急速を要する場合は、この限りでない。
第九十三条  保釈を許す場合には、保証金額を定めなければならない。
○2  保証金額は、犯罪の性質及び情状、証拠の証明力並びに被告人の性格及び資産を考慮して、被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額でなければならない。
○3  保釈を許す場合には、被告人の住居を制限しその他適当と認める条件を附することができる。
第九十四条  保釈を許す決定は、保証金の納付があつた後でなければ、これを執行することができない。
○2  裁判所は、保釈請求者でない者に保証金を納めることを許すことができる。
○3  裁判所は、有価証券又は裁判所の適当と認める被告人以外の者の差し出した保証書を以て保証金に代えることを許すことができる。
第九十五条  裁判所は、適当と認めるときは、決定で、勾留されている被告人を親族、保護団体その他の者に委託し、又は被告人の住居を制限して、勾留の執行を停止することができる。
第九十六条  裁判所は、左の各号の一にあたる場合には、検察官の請求により、又は職権で、決定を以て保釈又は勾留の執行停止を取り消すことができる。
一  被告人が、召喚を受け正当な理由がなく出頭しないとき。
二  被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
三  被告人が罪証を隠滅し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
四  被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しくは加えようとし、又はこれらの者を畏怖させる行為をしたとき。
五  被告人が住居の制限その他裁判所の定めた条件に違反したとき。
○2  保釈を取り消す場合には、裁判所は、決定で保証金の全部又は一部を没取することができる。
○3  保釈された者が、刑の言渡を受けその判決が確定した後、執行のため呼出を受け正当な理由がなく出頭しないとき、又は逃亡したときは、検察官の請求により、決定で保証金の全部又は一部を没取しなければならない。
第二百三条  司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者を受け取つたときは、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から四十八時間以内に書類及び証拠物とともにこれを検察官に送致する手続をしなければならない。
○2  前項の場合において、被疑者に弁護人の有無を尋ね、弁護人があるときは、弁護人を選任することができる旨は、これを告げることを要しない。
○3  第一項の時間の制限内に送致の手続をしないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
第二百四条  検察官は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者(前条の規定により送致された被疑者を除く。)を受け取つたときは、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から四十八時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければならない。但し、その時間の制限内に公訴を提起したときは、勾留の請求をすることを要しない。
○2  前項の時間の制限内に勾留の請求又は公訴の提起をしないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
○3  前条第二項の規定は、第一項の場合にこれを準用する。
第二百五条  検察官は、第二百三条の規定により送致された被疑者を受け取つたときは、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者を受け取つた時から二十四時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければならない。
○2  前項の時間の制限は、被疑者が身体を拘束された時から七十二時間を超えることができない。
○3  前二項の時間の制限内に公訴を提起したときは、勾留の請求をすることを要しない。
○4  第一項及び第二項の時間の制限内に勾留の請求又は公訴の提起をしないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
第二百六条  検察官又は司法警察員がやむを得ない事情によつて前三条の時間の制限に従うことができなかつたときは、検察官は、裁判官にその事由を疎明して、被疑者の勾留を請求することができる。
○2  前項の請求を受けた裁判官は、その遅延がやむを得ない事由に基く正当なものであると認める場合でなければ、勾留状を発することができない。
第二百七条  前三条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。但し、保釈については、この限りでない。
○2  裁判官は、前項の勾留の請求を受けたときは、速やかに勾留状を発しなければならない。但し、勾留の理由がないと認めるとき、及び前条第二項の規定により勾留状を発することができないときは、勾留状を発しないで、直ちに被疑者の釈放を命じなければならない。
第二百八条  前条の規定により被疑者を勾留した事件につき、勾留の請求をした日から十日以内に公訴を提起しないときは、検察官は、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
○2  裁判官は、やむを得ない事由があると認めるときは、検察官の請求により、前項の期間を延長することができる。この期間の延長は、通じて十日を超えることができない。
第四百二十九条  裁判官が左の裁判をした場合において、不服がある者は、簡易裁判所の裁判官がした裁判に対しては管轄地方裁判所に、その他の裁判官がした裁判に対してはその裁判官所属の裁判所にその裁判の取消又は変更を請求することができる。
一  忌避の申立を却下する裁判
二  勾留、保釈、押収又は押収物の還付に関する裁判
第六編 略式手続
第四百六十一条  簡易裁判所は、検察官の請求により、その管轄に属する事件について、公判前、略式命令で、百万円以下の罰金又は科料を科することができる。この場合には、刑の執行猶予をし、没収を科し、その他付随の処分をすることができる。
第四百六十一条の二  検察官は、略式命令の請求に際し、被疑者に対し、あらかじめ、略式手続を理解させるために必要な事項を説明し、通常の規定に従い審判を受けることができる旨を告げた上、略式手続によることについて異議がないかどうかを確めなければならない。
○2  被疑者は、略式手続によることについて異議がないときは、書面でその旨を明らかにしなければならない。
第四百六十二条  略式命令の請求は、公訴の提起と同時に、書面でこれをしなければならない。
○2  前項の書面には、前条第二項の書面を添附しなければならない。
第四百六十三条  前条の請求があつた場合において、その事件が略式命令をすることができないものであり、又はこれをすることが相当でないものであると思料するときは、通常の規定に従い、審判をしなければならない。
○2  検察官が、第四百六十一条の二に定める手続をせず、又は前条第二項に違反して略式命令を請求したときも、前項と同様である。
○3  裁判所は、前二項の規定により通常の規定に従い審判をするときは、直ちに検察官にその旨を通知しなければならない。
○4  第一項及び第二項の場合には、第二百七十一条の規定の適用があるものとする。但し、同条第二項に定める期間は、前項の通知があつた日から二箇月とする。
第四百七十条  略式命令は、正式裁判の請求期間の経過又はその請求の取下により、確定判決と同一の効力を生ずる。正式裁判の請求を棄却する裁判が確定したときも、同様である。

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