新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース 2.ご援助いただいた金額についても、弁護士を通じる等による法的な債務整理をせずに、債権者の主張額のまま返済をするということは、利息制限法を主張して減額した負債額での返済とはならないと思いますので(同法1条で計算し直した金額での交渉は、弁護士を依頼しないと難しいと思われます)、金額的にも、損失が大きくなる可能性があります。返済についても、現実には、妹様から借用書を取ったり、それに従った返済を裁判で求めたりするということは、お気持ちとしては、やはりためらわれることですので、結局はそのままになってしまうかもしれません。その先、妹様が、やはり債務整理を、ということになれば、破産(支払わなくていいという裁判所の決定をもらいます)であれば、虚偽の事実を述べることは許されず、借り入れは全て届けなければならず(破産法252条第7号、第8号、第9号)、届出をされて、免責となれば、支払は受けられなくなりますし、任意整理(支払額や方法について、債権者と交渉します)であれば、多少返ってくるかもしれませんが、減額になる可能性もあり、また、ご親族である関係上、法的なこととは別に、ご主張にはやはりご支障も出てくるかもしれません。 3.まずは、妹様とご一緒に、お近くの法律事務所にご相談いただいた方がよろしいかと存じます。どうしても、妹様を破産させたくない、ということでしたら、利息制限法の金額での返済(それ以下の交渉は難航しますが、どうしても全額用意できないという場合は、交渉してみるしかありません)で、債権者と交渉する任意整理の方法もあり得ますが、妹様ご自身の収入、資産がなく、返済不能ということでしたら、破産による免責を得られる可能性もあります。買い物という浪費は、免責不許可事由(破産法第252条第1項第4号)に該当しますが、同情すべき点があり、免責を受けさせた方がいい、と裁判所が判断する場合には、裁量免責で免責を受けられる可能性もあります(同法同条2項)。この手続には、弁護士費用だけでなく、裁判所への申立費用や裁判所が選任した管財人(事情調査をします)の費用がかかる可能性もあります。こういった費用(返還が期待しにくいのは同様ですが、もちろん、負債額に比べればかなり低額です)と、手続への協力という形で、妹様の再出発を助ける、という方法もあります。 4.この法的な債務整理を行えば、債権者が、弁護士からの、債務整理を受任しました、という受任通知を受け取った時点で、信用情報機関に情報が登録され、妹様は、通常の合法的な営業をしている業者からは、しばらく借り入れができなくなります(任意整理は約5年から7年、破産は約8年が目途です)。また、破産手続で、一度免責決定を受けると、7年の間は、原則として免責が許可されません(破産法第252条第10号のイ)。こういった制限も、ご本人様の自覚を促し、新たな借り入れを防ぐきっかけになると思います。妹様ともよくご相談の上、お早めにご相談下さい。 ≪参考条文≫ 利息制限法 破産法
No.562、2007/1/11 13:21 https://www.shinginza.com/qa-sarakin.htm
【債務整理】
質問:先日、妹から、何年も前から、ストレスによる買い物がやめられずにいて、数百万円の負債を抱えてしまったと打ち明けられました。妹の収入では、とても返せる金額ではありませんし、働き始めたばかりですので、貯蓄もないはずです。もう二度としない、少しずつ、必ず返すといっていましたので、私が肩代わりして返してやろうかとも思うのですが、私にとっても、決して少額ではありませんし、本当に信じていいのか、決心が付きかねています。どうしたらいいでしょうか。
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回答:
1.妹様のことはご心配だと思いますし、今の妹様のお気持ちは本当かもしれませんが、信じていいのか迷うお気持ちも、また当然のことだと思います。もちろん、本当に、二度とそのようなことをしない方もおられるはずですが、当初は、近しい方から援助を受けて、いったん負債をなくしたにもかかわらず、また借り入れをしてしまい、債務整理の手続に至ってしまう方もおられます。借り入れをした原因が解消されなければ、結局、また借り入れをしてしまうリスクは残ってしまいますし、自分でのけじめを付ける形の方が、今後は借り入れをしない、という決意も強くなるかもしれません。
(利息の最高限)
第一条 金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約は、その利息が左の利率により計算した金額をこえるときは、その超過部分につき無効とする。
元本が十万円未満の場合 年二割
元本が十万円以上百万円未満の場合 年一割八分
元本が百万円以上の場合 年一割五分
(免責許可の決定の要件等)
第二百五十二条 裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。(以下、該当号のみ記載)
四 浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。
七 虚偽の債権者名簿(第二百四十八条第五項の規定により債権者名簿とみなされる債権者一覧表を含む。次条第一項第六号において同じ。)を提出したこと。
八 破産手続において裁判所が行う調査において、説明を拒み、又は虚偽の説明をしたこと。
九 不正の手段により、破産管財人、保全管理人、破産管財人代理又は保全管理人代理の職務を妨害したこと。
十 次のイからハまでに掲げる事由のいずれかがある場合において、それぞれイからハまでに定める日から七年以内に免責許可の申立てがあったこと。
イ 免責許可の決定が確定したこと 当該免責許可の決定の確定の日
2 前項の規定にかかわらず、同項各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合であっても、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。