新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース 解説 ここで,2週間という期間に「判決書の送達を受けた日(当日)」が含まれるかどうかが問題となりますが,これを考えるためには,「期間の計算」がどのようになされるかを考える必要があります。この点,民事訴訟法95条1項に「期間の計算については,民法の期間に関する規定に従う。」と規定されていますので,以下,民法の期間に関する規定について説明します。 2,期間の計算 したがって,期間の初日である「判決書の送達を受けた日(12月18日)」は期間の計算には含まれないことになり,2週間という期間の起算日(期間の計算を開始する日)は12月19日ということになります。 3,期間の満了 この規定があるため,1月1日で期間が満了するということはなく,また,1月2日,3日も上記規定によって期間満了日にならないため,さらにその翌日である4日で期間が満了することになります。もっとも,曜日の関係で,満了日がさらに先となることもあります。例えば1月1日が水曜日の場合には4日は土曜日,5日は日曜日となりますので,その翌日の6日が期間の満了日となります。 4,まとめ ≪参照条文≫ 民法 民事訴訟法
No.569、2007/2/5 9:51
[民事・裁判]
質問:私は,損害賠償請求の訴訟を提起し,裁判で争っていましたが,その裁判(第一審)が平成○年11月の中頃に結審し,翌月15日に判決の言渡しがありました。私は判決の言渡しを聞きに行きませんでしたが,判決言い渡しから3日後の12月18日に判決書の送達を受けて,判決の内容を知りました。その内容は,私にとって納得のいくようなものではなかったため,控訴しようと思います。「控訴は2週間以内にしなくてはならない。」という話を聞いたことがあるのですが,判決言渡しの日から2週間ということなのでしょうか。結局,控訴の期限はいつになるのでしょうか。
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回答:判決言渡しの日から2週間ではありません。判決書の送達を受けた日から2週間以内です。従って、ご質問の場合通常,期限は(平成○年の)翌年の1月4日となりますが,曜日の関係で5日ないし6日になる可能性もあります。
1,控訴期間
控訴は,判決書の送達を受けた日から2週間の不変期間内に提起しなければならない(民訴285条)とされています。判決言い渡しは、判決言渡し期日に法廷で行われますが、判決書の送達を受けた日とは、それとは違い現実に判決書の正本を受け取った日です。従って,判決言い渡しの日に送達を受けた場合を除けば,控訴の期限は判決言い渡しの日から2週間とはなりません。
民法の期間に関する規定(民法138条ないし143条)によれば,「週・・・によって期間を定めたときは,期間の初日は,算入しない。ただし,その期間が午前零時から始まるときは,この限りではない。」となっています(民法140条)。本件において,期間は「2週間」と定められており,これは「週によって期間を定めたとき」に該当しますので,期間の初日は算入しないということになります(本件では午前零時から期間が始まるということは考えられないので,ただし書きに該当するということも通常ありえません)。
次に期間の満了ですが,「期間は,その末日の終了をもって満了する。」とされています(民法141条)。そうすると,(平成○年の)翌年の1月1日の終了をもって期間が満了することになりそうですが,この日は裁判所もお休みになってしまっているため,民事訴訟法95条3項に例外規定がおかれています。規定の内容は,「期間の末日が日曜日,土曜日,国民の祝日に関する法律に規定する休日,1月2日,3日又は12月29日から12月31日までの日に当たるときは,期間はその翌日に満了する。」というものです。
以上のとおり,本件において,控訴期間は通常,(翌年の)1月4日で満了することになります。なお,民事訴訟法95条3は,あくまで民事訴訟法独自の規定であり,民法に規定されている「期間の満了」とは若干異なりますので,この点については十分にご注意下さい(民法142条参照)。いずれにしても,裁判上,期間は極めて厳密に取り扱われておりますので,少しでも不安や疑問を感じた場合には,専門家に問い合わせるのが無難であろうと思います。
(期間の計算の通則)
第百三十八条 期間の計算方法は、法令若しくは裁判上の命令に特別の定めがある場合又は法律行為に別段の定めがある場合を除き、この章の規定に従う。
(期間の起算)
第百三十九条 時間によって期間を定めたときは、その期間は、即時から起算する。
第百四十条 日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。
(期間の満了)
第百四十一条 前条の場合には、期間は、その末日の終了をもって満了する。
第百四十二条 期間の末日が日曜日、国民の祝日に関する法律(昭和二十三年法律第百七十八号)に規定する休日その他の休日に当たるときは、その日に取引をしない慣習がある場合に限り、期間は、その翌日に満了する。
(暦による期間の計算)
第百四十三条 週、月又は年によって期間を定めたときは、その期間は、暦に従って計算する。
2 週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。ただし、月又は年によって期間を定めた場合において、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了する。
(期間の計算)
第九十五条 期間の計算については、民法 の期間に関する規定に従う。
2 期間を定める裁判において始期を定めなかったときは、期間は、その裁判が効力を生じた時から進行を始める。
3 期間の末日が日曜日、土曜日、国民の祝日に関する法律(昭和二十三年法律第百七十八号)に規定する休日、一月二日、一月三日又は十二月二十九日から十二月三十一日までの日に当たるときは、期間は、その翌日に満了する。
(控訴期間)
第二百八十五条 控訴は、判決書又は第二百五十四条第二項の調書の送達を受けた日から二週間の不変期間内に提起しなければならない。ただし、その期間前に提起した控訴の効力を妨げない。