新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース 2、未成年者の後見人が具体的に誰になるかの手続きは次の通りです。まず、未成年者に対して最後に親権を行なう者は、遺言で、未成年後見人を指定することが出来ます(民法839条)。そのため、亡くなった親権者の遺言の有無、内容を調査する必要があります。次に、遺言によって未成年後見人となるべき者がないときは、家庭裁判所が、未成年被後見人又はその親族その他の利害関係人の請求によって、未成年後見人を選任するとされています(民法840条)。子供の福祉の観点から、諸般の事情を考慮して、誰が後見人としてふさわしいかの判断がなされます。 3、以上が民法の規定ですが、実際の裁判所の運用としては、もう片方の親が存命中の場合には、その者が家庭裁判所に対して、親権変更の申し立てをすれば、その者の主張を認めて、親権の変更を認める取り扱いをしているようです。ただ、元妻の遺族が後見人の選任の申立てをしてきた場合には、子供の福祉の観点から、それぞれの生活環境や経済状態、子供のこれまでの生育環境、状態などを総合的に判断して、どちらの申立てを認めるべきかの判断がなされます。 4、以上から、所定の手続きをとれば、子供の親権を取り戻すことは可能です。元妻に遺族がない場合や元妻の遺族に問題がある場合には、裁判所の運用から比較的簡単に親権の変更が可能でしょう。ただ、元妻の遺族が強く後見人になることを求めている場合には、自分の方が子供の福祉のためにより適切であることを裁判所に認めさせる必要があり、争いになりますので、弁護士に委任して適切な主張立証活動をした方が良いでしょう。 ≪参照条文≫ 民法819条@父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。
No.580、2007/2/14 12:01 https://www.shinginza.com/rikon/index.htm
【離婚、親権】
質問:5年前に離婚をして、当時0歳の息子の親権は元妻に決めて息子を引き渡しました。その後、ずっと連絡はとっていなかったのですが、今日元妻が病気で死亡したとの連絡がありました。この場合、私は息子の親権を取り戻して育てることは出来るのでしょうか。
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回答:
1 離婚の時には、未成年の子供の親権者を父母の一方に決めなければなりません(民法819条)。そして、親権者と決められた者が死亡などでいなくなった場合には、法律上は後見が開始されることになります(民法838条1号)。自動的にもう片方の親に親権が回復する訳ではありません。この制度趣旨は、子供の福祉の観点から、一旦親権者と定めて日常生活を送っていたにもかかわらず、親権者の死亡などの突然の事態で、もう片方の親がいきなり親権者になるのは適当ではないということです。
A裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。
B子の出生前に父母が離婚した場合には、親権は、母がこれを行う。但し、子の出生後に、父母の協議で、父を親権者と定めることができる。
C父が認知した子に対する親権は、父母の協議で父を親権者と定めたときに限り、父がこれを行う。
D第1項、第3項又は前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。
E子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる。
民法838条 後見は、次に掲げる場合に開始する。
1 未成年者に対して親権を行う者がないとき、又は親権を行う者が管理権を有しないとき。
2 後見開始の審判があったとき。
民法839条@未成年者に対して最後に親権を行う者は、遺言で、未成年後見人を指定することができる。ただし、管理権を有しない者は、この限りでない。
A親権を行う父母の一方が管理権を有しないときは、他の一方は、前項の規定によって未成年後見人の指定をすることができる。
民法840条 前条の規定によって未成年後見人となるべき者がないときは、家庭裁判所は、未成年被後見人又はその親族その他の利害関係人の請求によって、未成年後見人を選任する。未成年後見人が欠けたときも、同様である。