新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.582、2007/2/14 12:14

【会社法】
質問:会社法(平成18年5月1日施行)では、旧商法のときと比較して、株式会社の機関構成が柔軟に決められるようになったと聞きましたが、具体的にはどのような機関構成が可能になったのでしょうか。

回答:
1、会社法の施行に伴い、有限会社法が廃止され、従前の有限会社は、株式会社として存続することになりました。特例有限会社として「有限会社○○」という商号をそのまま継続使用することはできますが、あくまでも「株式会社」という扱いです。会社法下では、有限会社と株式会社を統一し、旧商法下での有限会社に近い機関設計の株式会社を認めることとしました。旧商法下での株式会社は、取締役3名以上、監査役1名以上必要とされていたものを、会社法では、取締役1名以上で、監査役を設置しない株式会社も認められるようになりました。

このような改正の趣旨としては、@従来の法制度の下で予定されていた株式会社と現実に多数存在する株式会社の実態とが乖離しており、株式会社に関する法規制が実態に合致せず、形骸化していたこと。つまり株式会社は大規模な公開会社を予定し、有限会社は小規模閉鎖的な会社を予定していましたが、実際には、株式会社でありながら小規模閉鎖的な会社が多数存在しました。また、A有限会社の利用がそれほど多くなかったこと。などの理由から、会社の類型を『公開会社かつ大会社』、『公開会社かつ非大会社』、『非公開会社かつ大会社』『非公開会社かつ非大会社』の4つに分け、類型ごとに実態に合わせた機関設計を選択できるように柔軟化が図られました。

機関設計のルールを規定した条文として、会社法上、以下のようなものがあります。
第326条 株式会社には、一人又は二人以上の取締役を置かなければならない。

2、株式会社は、定款の定めによって、取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人又は委員会を置くことができる。
第327条 次に掲げる株式会社は、取締役会を置かなければならない。
一 公開会社
二 監査役会設置会社
三 委員会設置会社
2 取締役会設置会社(委員会設置会社を除く。)は、監査役を置かなければならない。ただし、公開会社でない会計参与設置会社については、この限りでない。
3 会計監査人設置会社(委員会設置会社を除く。)は、監査役を置かなければならない。
4 委員会設置会社は、監査役を置いてはならない。
5 委員会設置会社は、会計監査人を置かなければならない。
第328条 大会社(公開会社でないもの及び委員会設置会社を除く。)は、監査役会及び会計監査人を置かなければならない。
2 公開会社でない大会社は、会計監査人を置かなければならない。

具体的に考えられる機関設計は、会社の態様ごとに以下のパターンにまとめることができます。
1.公開会社であり、かつ、大会社の場合
@取締役会+監査役会+会計監査人
A取締役会+監査役会+会計監査人+会計参与
B取締役会+三委員会+会計監査人
C取締役会+三委員会+会計監査人+会計参与

2.公開会社であり、かつ、非大会社の場合
@取締役会+監査役
A取締役会+監査役+会計参与
B取締役会+監査役会
C取締役会+監査役会+会計参与
D取締役会+監査役+会計監査人
E取締役会+監査役+会計監査人+会計参与
F取締役会+監査役会+会計監査人
G取締役会+監査役会+会計監査人+会計参与
H取締役会+三委員会+会計監査人
I取締役会+三委員会+会計監査人+会計参与

3.非公開会社であり、かつ、大会社の場合
@取締役+監査役+会計監査人
A取締役+監査役+会計監査人+会計参与
B取締役会+監査役+会計監査人
C取締役会+監査役+会計監査人+会計参与
D取締役会+監査役会+会計監査人
E取締役会+監査役会+会計監査人+会計参与
F取締役会+三委員会+会計監査人
G取締役会+三委員会+会計監査人+会計参与

4.非公開会社であり、かつ、非大会社の場合
@取締役
A取締役+会計参与
B取締役+監査役
C取締役+監査役+会計参与
D取締役+監査役+会計監査人
E取締役+監査役+会計監査人+会計参与
F取締役会+会計参与
G取締役会+監査役
H取締役会+監査役+会計参与
I取締役会+監査役会
J取締役会+監査役会+会計参与
K取締役会+監査役+会計監査人
L取締役会+監査役+会計監査人+会計参与
M取締役会+監査役会+会計監査人
N取締役会+監査役会+会計監査人+会計参与
O取締役会+三委員会+会計監査人
P取締役会+三委員会+会計監査人+会計参与

※ 公開会社とは、発行する全部又は一部の株式の内容として、譲渡による株式の取得について、株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない株式会社をいいます(会社法2条5号)。非公開会社とは、会社法上の表現ではありませんが、いわゆる株式譲渡制限会社のことです。便宜上、公開会社以外の会社という意味でこのように表現で記載します。
※ 大会社とは、最終事業年度に係る貸借対照表に資本金として計上した額が5億円以上である会社、又は、最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上である会社をいいます(会社法2条6号)。
※ 三委員会とは、指名委員会、監査委員会、報酬委員会を言います(会社法2条12号)。
※ 会計参与とは、取締役と共同して、計算書類等を作成することを主な任務とする会社法において初めて設けられた機関であり(会社法374条1項)、公認会計士・監査法人・税理士・税理士法人であることが資格要件とされています(333条1項)。

このように、会社の規模や役員の人数や構成により、様々な機関設計が考えられるようになりました。会社法が施行されたからといって、会社の機関設計に関する変更を強制されることはありませんが、会社をよりよく運営していくための選択肢が増えていると考えることができますので、経営効率化・人材活用等のために新しい機関設計を導入したいと考えている経営者の方は、一度、弁護士・司法書士に相談なさるとよいでしょう。

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