新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース 1、保釈の申請は、勾留されている被告人本人、弁護人、配偶者(妻あるいは夫)、直系の親族(祖父母や孫)、兄弟姉妹(その他被告人に法定代理人や保佐人がいる場合はその方たちも含みます)がすることができます(刑事訴訟法84条)。 更に保釈の理由について説明します。刑事訴訟法89条に必要的保釈となる事由が記載されていますので、1から6号に記載されている事項について該当しないということを説明する必要があります。そのうち問題となるのは4号と5号ですので、詳しく説明する必要があります。通常は、捜査の時点ですべて認めていることや、被害者と示談していることをあげて証拠を隠滅したり、被害者や事件関係者に害を加えることがないことを説明することになります。 次に、前記の必要的な保釈のほかに、裁量保釈といって裁判所が適当と認める場合に職権で認められる保釈があります(刑事訴訟法90条)。保釈申請書では、まず必要的な保釈が認められことを説明しますが、仮に疑問があるとしても保釈が必要であることを説明して裁量保釈が認められるよう説明する必要があります。個別の事案により異なることになりますが、仕事をする必要があることや、経済的な理由を挙げることになるかと思われます。他に、身柄引き受け書といって、保釈になった場合は責任を持って監督します、と言う趣旨の書面提出することになります。身柄引受人となるのは配偶者や両親などが一般的です。 4、これらの書面を作成して裁判所に提出すると、保釈を認める場合は裁判官と面接して保釈保証金の金額を決めることになります。金額の基準となるのは、当該被告人にとって経済的負担として相当かどうかです。資産がある人の場合は高額になります。通常は、最低でも150万円とされています。経済的に余裕がないことを説明すれば減額されることもありますが100万円を下ることはないといってよいでしょう。 保釈保証金は、保証金ですから被告人が裁判に出頭して裁判が終われば、返還されるお金です。万一逃亡して裁判に出頭しないと没収されてしまします。保釈保証金をどうしても用意できないと言う場合は保釈保証金を立て替える機関も最近できています。100万円について5万円程度の手数料がかかるようです。消費者金融の利息と比較すると高額ですので、法律事務所として利用を勧めることはできませんが、現金が用意できないがどうしても保釈してほしいという場合は利用することも可能です。 5、裁判所から保釈を許可すると連絡があった場合、現金を用意して裁判所に行き必要書類を裁判所からもらって裁判所の会計に保管金として納めることになります。最近では裁判所によっては事前に登録する事により銀行、インターネット送金でも出来るようになりました。お金を納める人は保釈申請をした人に限られます。もし別の人の名前で納める場合は事前に裁判所の許可をもらっておく必要があります(刑事訴訟法94条2項)。保証金は、納めた人に返還されますので、誰の名前で納めるかは後で問題がおきないために検討しておく必要があります。お金を納めたことの書類を、再度刑事部の担当部に持参すると裁判所から検察庁に保釈が許可されたことを連絡してくれますのでその日のうちに釈放されます。釈放は検察庁から留置場に指示をして行うのですが、電話で指示することはできないので2,3時間はかかるようです。 6、以上が保釈の申請の概略です。夫が起訴されているのであれば妻として保釈を申し立てることは可能です。自分では申請書を作成できないと言う場合は弁護士に依頼することもできます。ただ、弁護士に依頼する場合は、保釈の申請だけ依頼すると言うことはできません。弁護士としては刑事事件の裁判を受任し弁護人となって、その手続の中で保釈の申請をすることになります。刑事事件の弁護士費用としてはもちろん事件の内容によって異なりますが、着手金で30万から50万円、報酬で同じ程度の金額、その他実費(交通費、通信費、1時間1万円の日当等)がかかるのが普通とされています。弁護士費用については依頼する時点で契約書を作成しなければならないことになっていますから、依頼する際、弁護士から費用について説明してもらうことが大切です。 なお、国選弁護人の場合は裁判所が選任しますから初めに費用を負担する必要はありません。ただ、起訴されてから国選弁護人が選任されるまで期間がかかることがありますから、起訴されてすぐ保釈の申請をするには自分の費用で弁護士を依頼しない限り、弁護士なしで申請する必要があります。又、国選弁護人によっては保釈の申請に消極的な人もいます。国選弁護人は基本的に財産的に余裕がなく私選弁護人を選任することが困難な人が利用する制度ですので、保釈金が用意できるのであれば金銭的余裕があるので私選の弁護人を選び保釈の申請をしてほしいという理由のようです。 解説 2、保釈が認められどうかは、被告人やその家族にとっては重大な問題です。そして法律上は必要的保釈と行って、短期1年以上の懲役や禁錮に当たる犯罪で起訴された場合などを除いて、保釈されるのが原則とされています。しかし、現実には保釈が認められるのは、勾留されている被告人の13%弱とされています。この保釈が認めれる中には第1回目の裁判が終わった後の保釈も含まれますから、起訴後から裁判が始まるまでの間に保釈が認められる事案は、きわめて少ないのが実情です。 3、なお、保釈は認められない、と裁判所から連絡があった場合は、申請自体を取り下げることを検討することも必要です。保釈は許可されないと何回でも請求できますが、事情が変わらない限りは同じ判断になります。ですから、たとえば示談できていないので保釈は認められないと裁判所から連絡があった場合示談の可能性があるのであれば一度申請を取り下げて示談をしてから再度保釈の申請をするほうが良いでしょう。示談できる可能性がないのであれば、示談していなくても保釈が相当なことを主張して申請を維持し、保釈を認めないのであれば準抗告をする予定であることを裁判所に申し出ることが必要になります。その結果不許可と言うことであれば準抗告といって不服を申し立て別の裁判官に判断してもらうことになります。 このように保釈に関しては、許可される割合が少ないことや裁判所との交渉が必要となることから、どうしても保釈をして欲しいという場合は弁護士に依頼する必要があるでしょう。 ≪参考条文≫ 刑事訴訟法
No.598、2007/4/6 16:48 https://www.shinginza.com/qa-hanzai.htm
[刑事・起訴後・保釈申請の手続き・方法・国選弁護人との関係]
質問:私の夫が、傷害で逮捕、勾留となり先日起訴されました。刑事さんの説明では裁判が終わるまでは留置場にいなければならないが、保釈の申請をすれば出てこられると言うことでした。保釈の申請はどのようにすればよいのでしょうか。また、費用はどのくらいかかるのでしょうか。
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回答:
まず冒頭、保釈制度とはどういうものか御説明いたします。貴方の御主人は傷害を起こしましたから法治国家では必ず刑事裁判を受け裁判所の有罪判決により罪を償う事になります。裁判を行う証拠資料収集は御主人が逮捕後10日―20日間の勾留中に捜査し取り調べにより終了していますから本来であれば、起訴と同時に釈放し御自宅に帰してあげなければいけないはずです。しかし有罪の判決を受ける可能性がある人はその恐怖心から逃走するかもわかりません。そこで裁判の法廷への出廷を確保するために身柄拘束をされて取調べを受けた勾留中の人は取り調べが終了し起訴されてもそのまま取調べを受けた警察署、拘置所にいなければならないことになっています。それに、裁判が始まるまで被告人となった人が、自分に不利益な証拠を隠滅、隠匿する可能性もまだありますから(被害者のところに抗議に行く等)、捜査が終了したからといって簡単に自宅に帰してくれない訳です。しかし逃走、証拠隠滅の危険性のない人まで有罪と決まったわけでもないのに身柄を拘束しておくのは人権上不当であり捜査の必要性もないので保釈によって釈放を認めているのです。これが保釈制度です。したがって、保釈の個々の要件も以上の趣旨から定められているのですから解釈上争いがある場合や、裁判所に具体的に保釈を求める場合弁護人は、身柄拘束の必要性がないことを積極的に資料を提出し、立証していくことになります。
2、保釈の申請は、起訴されている裁判所の刑事部の事件受付係に申し立てます。東京地方裁判所の場合は刑事14部という所に直接申し立てることになっています。申立ては通常書面を提出して行います。また、被告人以外の者が申し立てる場合は戸籍謄本を提出して自分が申立権者であることを証明することが必要です。
3、保釈の申請書には、被告人を特定するため、起訴された罪名、住所、氏名、生年月日を記載し、申請する人の被告人との関係明らかにして署名捺印します。
1、保釈の申請についての概略は回答にあるとおりですが、補足の説明をします。
第八十四条 法廷においては、裁判長は、勾留の理由を告げなければならない。
第八十九条 保釈の請求があつたときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない。
一 被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
二 被告人が前に死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
三 被告人が常習として長期三年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
四 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
五 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
六 被告人の氏名又は住居が分からないとき。
第九十条 裁判所は、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。
第九十四条 2 裁判所は、保釈請求者でない者に保証金を納めることを許すことができる。