借地権申告の重要性
民事|行政|都市再開発法|東京地裁令和4年5月17日判決
目次
質問:
駅前に賃貸ビルを経営しています。10数年前から再開発の話が持ち上がり、再開発準備組合が組織されて話が進行しているようです。私は、苦労して建設した愛着のあるビルを建て替えしたくないので、再開発には反対であり、準備組合にも加入していません。このたび、準備組合から「施行地区となるべき区域の公告と借地権の申告について」という手紙が来ました。再開発施行区域内に借地権を持っている人は申告しないと権利が主張できなくなるという事の様です。私は個人名義の敷地に法人名義の建物を建設して賃貸事業を行っています。私は再開発に反対なので、この書類を提出するのは矛盾するような気もしています。どのようにしたら良いでしょうか。
回答:
1、再開発準備組合が設立され、市街地再開発事業の施行区域の公告があった場合には、区域内の宅地について未登記の借地権を有する者は、公告があつた日から起算して30日以内に当該市町村長に対し、国土交通省令で定めるところにより、その借地の所有者(借地権を有する者から更に借地権の設定を受けた場合にあっては、その設定者及びその借地の所有者)と連署し、又は借地権を証する書面を添えて、書面をもつてその借地権の種類及び内容を申告しなければならない、とされています(都市再開発法施行規則1条の2、1条の3)。申告をしておかないと、その後の本組合設立についての同意要件の対象とならないことになりますので、現時点で再開発に反対であったとしても借地権の申告をしておく必要があります。
2、都市再開発法に基づく市街地再開発事業は、木造建物密集地域のように、耐震性が不足したり、耐火性が不足している建物の一括建て替えを行うことにより、区域内の建物の安全性を高め、地域の商業機能も高めることにより公共の福祉を向上させることを目的として施行される、都市計画事業です。
3、都市計画事業としての市街地再開発事業を行うためには、組合施行方式といって、区域内地権者の3分の2以上の同意書を集めて、5名以上の発起人が事業計画認可申請および組合設立認可申請を都道府県知事に対して行う必要があります。この際の同意要件となる地権者は、借地権者と土地所有者です。借地権と敷地所有権のそれぞれ面積と人数で3分の2の多数を要求するという厳格なものです(都再法14条1項)。
4、この同意要件をカウントする場合に、一般論ですが、区域内の権利者数が少ないことが多い「借地権者」の動向が重要になってきます。借地権については、建物の所有権保存登記をすることにより第三者対抗要件(世間一般に対して敷地への借地権設定登記に代わる効力)が認められているため、借地権設定登記も為されないことが多くなっています。そこで、都再法では、施行区域の公告後に、借地権申告手続きが法定されており、借地権設定登記を経由していない借地権者は、法令様式に従って借地権申告をすることが求められています(都再法15条1項)。
5、建物の所有権登記をしているので、借地権が公示されているとも言える状態ですが、都市再開発法の手続き上は、この申告をしないと借地権者として認められませんので注意が必要です。下級審判例ですが、これについて判断したものがありますのでご紹介致します。
6、前記の様に、本組合設立時の同意要件について、借地権者と敷地所有権者は、それぞれ別々に3分の2以上の多数を確保していることが必要であり、人数が少なくなりがちな借地権者のカウントは、手続きの帰趨を決める重要な要素になっています。手続きに反対だからといって、借地権申告手続きを無視することは推奨できません。どうしても、申告手続きをしたくないという場合には、申告手続きの前に、つまり、再開発事業施工区域の公告前に、借地権設定登記を申請されることをお勧めいたします。
7、借地権申告に関する関連事例集参照。
解説:
1、組合施行の第一種市街地再開発事業
都市再開発法の市街地再開発事業は、木造住宅の密集区域など、建物の耐震性や防災機能に懸念のある市街区域について、民間主導で権利変換手続きによる建て替えを行ったり(第一種市街地再開発事業)、行政主導で管理処分手続きにより区域内整備を行ったり(第二種市街地再開発事業)して、都市における土地の高度利用を図ることにより公共の福祉に寄与しようとする、都市計画事業(公共事業)です。都市の防災機能を高め、土地の高度利用を促進することにより商業経済機能を高めることにより、区域内の公共の福祉を向上させるのが基本理念となります。
都市再開発法第1条 この法律は、市街地の計画的な再開発に関し必要な事項を定めることにより、都市における土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新とを図り、もつて公共の福祉に寄与することを目的とする。
第一種市街地再開発事業の施行主体は、個人施行(都再法7条の9)や地方公共団体(都再法51条)が行うこともありますが、最も多いのは、区域内地権者で結成される市街地再開発組合による組合施行方式の市街地再開発事業です(都再法11条1項)。
都市再開発法11条1項(認可)第一種市街地再開発事業の施行区域内の宅地について所有権又は借地権を有する者は、五人以上共同して、定款及び事業計画を定め、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事の認可を受けて組合を設立することができる。
2、事業計画認可および組合設立認可申請の要件
都市再開法14条1項で、組合設立認可申請をするには、施行区域内の宅地について、所有権者と借地権者、それぞれの人数と面積で、3分の2以上の同意を得ることが要件となっています。宅地と借地権に、それぞれ共有者が居る場合は、その共有持分に応じて、人数と面積がカウントされることになります(都再法14条2項、7条の2第5項)。つまり、この時の人数は、例えば90.5人など、小数点を用いた数値で計算されることになります。
都市再開発法14条(宅地の所有者及び借地権者の同意)1項 第十一条第一項又は第二項の規定による認可を申請しようとする者は、組合の設立について、施行地区となるべき区域内の宅地について所有権を有するすべての者及びその区域内の宅地について借地権を有するすべての者のそれぞれの三分の二以上の同意を得なければならない。この場合においては、同意した者が所有するその区域内の宅地の地積と同意した者のその区域内の借地の地積との合計が、その区域内の宅地の総地積と借地の総地積との合計の三分の二以上でなければならない。
2項 第七条の二第五項の規定は、前項の規定により同意を得る場合について準用する。
ここで注意が必要なので、借地権者の同意要件です。再開発事業の施行区域は5000平米(0.5ヘクタール)以上とされていますが、この区域内に、借地権付き建物が数軒しか存在していない事例があることです。
例えば、借地権つき建物が8軒しか無かった場合、都再法14条1項の要件は、8×2÷3=5.33以上ということになり、共有の借地権がない場合は、6名以上の同意が必要ということになります。8名の借地権者(借地権付き建物所有者)のうち3名が反対したら、再開発組合を設立できないのです。同意者の集計は、宅地所有権者と、借地権者で、それぞれ別々に計算し、それぞれが3分の2以上である必要があります(都再法14条1項前段)。
少し複雑になるのですが、同意者の人数を集計する時は、所有権者と借地権者をそれぞれ別々に集計しますが、同意者が有する敷地面積を集計する時は、同意した所有権者の面積と借地権者の面積を合算して集計することになります(都再法14条1項後段)。
3、借地権申告手続き
この借地権者の人数をカウントするために、施行区域内の借地権者の人数を確定させる必要があり、都市再開発法では、施行区域の公告と借地権申告手続きを規定しています。
借地権については、建物保護法1条(平成4年7月まで)と借地借家法10条1項(平成4年8月以降)で、建物の所有権保存登記をすることにより、敷地利用権(借地権)についても、第三者対抗要件を備えていると認められているため、一般に、敷地に対する借地権設定登記は行われないことが多くなっています。
建物保護法1条 建物ノ所有ヲ目的トスル地上権又ハ土地ノ賃貸借ニ因リ地上権者又ハ土地ノ賃借人カ其ノ土地ノ上ニ登記シタル建物ヲ有スルトキハ地上権又ハ土地ノ賃貸借ハ其ノ登記ナキモ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得 借地借家法10条1項 借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。
借地権付き建物の民間取引における権利を確認するためであれば(いわゆる対抗問題を解決するためには)、これらの規定で借地権者が誰なのか権利者を確定させれば良いのですが、公共事業である市街地再開発事業では、施行者の調査負担を軽減させ区域内の一括建て替えを円滑に進行させる趣旨から、また、強制的に権利変換手続きや管理処分手続きで、土地建物の財産の権利を移動させる手続きがありますので、より慎重に権利関係を判断するという趣旨から、借地権の申告手続きが法定されています(都再法15条1項、7条の3第2項から4項)。
具体的には、市街地再開発事業の施行区域の公告があった場合には、区域内の宅地について未登記の借地権を有する者は、公告があつた日から起算して30日以内に当該市町村長に対し、国土交通省令で定めるところにより、その借地の所有者(借地権を有する者から更に借地権の設定を受けた場合にあつては、その設定者及びその借地の所有者)と連署し、又は借地権を証する書面を添えて、書面をもつてその借地権の種類及び内容を申告しなければならない、とされています(都市再開発法施行規則1条の2、1条の3)。公告と同時に、施行区域の図面を2週間市役所などで縦覧することも必要です(都市再開発法施行規則1条の2)。
都市再開発法15条(借地権の申告)1項 前条第一項に規定する同意を得ようとする者は、あらかじめ、施行地区となるべき区域の公告を当該区域を管轄する市町村長に申請しなければならない。
2項 第七条の三第二項から第四項までの規定は、前項の規定による申請があつた場合について準用する。この場合において、同条第四項中「前条第三項」とあるのは、「第十四条」と読み替えるものとする。
第7条の3(借地権の申告)
1項 前条第三項の同意を得ようとする者は、あらかじめ、当該単位整備区の区域内の宅地について未登記の借地権を有する者は第三項の規定による申告を行うべき旨の公告を、当該単位整備区の区域を管轄する市町村長に申請しなければならない。
2項 市町村長は、前項の申請があつたときは、国土交通省令で定めるところにより、遅滞なく、当該申請に係る公告をしなければならない。
3項 前項の公告に係る単位整備区の区域内の宅地について未登記の借地権を有する者は、同項の公告があつた日から起算して三十日以内に当該市町村長に対し、国土交通省令で定めるところにより、その借地の所有者(借地権を有する者から更に借地権の設定を受けた場合にあつては、その設定者及びその借地の所有者)と連署し、又は借地権を証する書面を添えて、書面をもつてその借地権の種類及び内容を申告しなければならない。
4項 未登記の借地権で前項の規定による申告のないものは、同項の申告の期間を経過した後は、前条第三項の規定の適用については、存しないものとみなす。
都市再開発法施行規則
第1条の2(施行要請に関する借地権の申告を行うべき旨の公告)市町村長は、法第七条の三第二項の公告をしようとするときは、法第七条の二第三項に規定する単位整備区の区域に含まれる地域の名称(市町村の区域内の町又は字の区域の一部が含まれる場合においては、その一部の区域内の土地の地番)並びに当該単位整備区の区域内の宅地について未登記の借地権を有する者は法第七条の三第三項の規定による借地権の種類及び内容の申告を行うべき旨を公告し、かつ、当該区域を表示する図面を当該市町村の事務所においてその公告をした日から二週間公衆の縦覧に供しなければならない。
第1条の3(施行要請に関する借地権の申告手続)
1項 法第七条の三第三項の規定による申告をしようとする者は、別記様式第一の借地権申告書を市町村長に提出しなければならない。
2項 前項の借地権申告書には、次に掲げる図書を添付しなければならない。
一 借地権申告書に署名した者の運転免許証(道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)第九十二条第一項に規定する運転免許証をいう。)、個人番号カード(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成二十五年法律第二十七号)第二条第七項に規定する個人番号カードをいう。)、旅券(出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)第二条第五号に規定する旅券をいう。)の写しその他その者が本人であることを確認するに足りる書類(法人にあつては、印鑑登録証明書その他その者が本人であることを確認するに足りる書類)(第二十四条第二項において「本人確認書類」という。)
二 借地権が宅地の一部を目的としている場合においては、その部分の位置を明らかにする見取図(方位を記載すること。)
3項 市町村長は、第一項の借地権申告書が借地権を証する書面を添えて提出された場合において、その書面がその借地権を証するに足りないと認めるときは、更に必要な書類の提出を求めることができる。
※都市再開発法施行規則 別記様式第一の借地権申告書
https://www.shinginza.com/db/shakuchiken-shinkoku.pdf
ここで重要なのは、都再法7条の3第4項で、「未登記の借地権で前項の規定による申告のないものは、同項の申告の期間を経過した後は、前条第三項の規定の適用については、存しないものとみなす。」とされていることです。これにより、借地権申告を怠ってしまうと、14条1項の同意要件のカウントから除外されてしまうことになってしまいます。組合から見れば、同意を得る必要の無い地権者ということになってしまうのです。
4、判例紹介
民間取引における権利者の確定には、借地借家法10条1項で、建物の所有権保存登記があれば、借地権の取得についても問題なく主張できるのに、市街地再開発事業では借地権者であることを主張できなくなっているのです。この取り扱いの違いについて、行政手続きにおける借地権者の保護が不足しているとして争われた下級審判例がありますので、ご紹介致します。
※東京地方裁判所、令和4年5月17日判決、市街地再開発組合設立認可処分取消請求事件
『(2) 借地権申告をしていない未登記の借地権者の扱い
ア 施行地区となるべき区域を管轄する市町村長による当該区域の公告がされたとき(都市再開発法15条2項、7条の3第2項)は、当該区域内の宅地について未登記の借地権を有する者は、申告期間内に当該市町村長に対して借地権申告をしなければならず(同条3項)、未登記の借地権で借地権申告のない者については、申告期間の経過後は、同法14条の適用について、存在しないものとみなされる(同法7条の3第4項)。
イ このように、施行地区となるべき区域内の宅地について借地権を有していても、上記アの公告がされてから申告期間内に借地権申告をしなければ都市再開発法14条1項の同意権者として存在しないものと擬制されるのは、組合の設立の申請をしようとする者が同意権者の同意を得るに際し、同意権者である借地権者の有無等を調査する負担を軽減し、借地権設定登記のある借地権者及び借地権申告をした未登記の借地権者のみを同意権者である借地権者として扱うことを可能ならしめることによって、市街地再開発事業の円滑、迅速かつ画一的な遂行を確保することにあるものと解される。そして、同法15条2項において準用する同法7条の3第3項は、借地権申告として、借地の所有権者と連署し、又は借地権を証する書面を添えて、書面をもってその借地権の種類及び内容を申告することを求めているところ、借地権の設定登記(不動産登記法81条)がされている場合には、登記権利者である借地権者と登記義務者である借地の所有権者との共同申請(同法60条)により登記の申請がされており、しかも、同申請に当たっては、登記原因を証する情報(同法61条)等として、借地権申告において要求されている情報を証する資料又はこれに準ずる資料が登記所に提供されていると考えられることからすれば、借地権の設定登記のある借地権者を同意権者である借地権者として扱うことには合理性があるといえる。
これに対し、未登記の借地権者については、仮に、原告らの指摘するような事情、すなわち、借地上の建物所有権者として登記されていたり、組合の設立認可を申請しようとする者から組合設立について同意するよう事実上求められたり、それらの者に対して組合設立に反対する旨の意思を事実上表明したりしたことがあったとしても、それらの事情だけから借地権申告において要求されている内容と同程度の情報が明らかにされているとはいえない以上、借地権申告がない限り、都市再開発法7条の3第4項の明文の規定に反してまでして、同意権者である借地権者として扱うことはできないというべきである。また、後記(6)のとおり、本件でも、組合の設立に同意しない未登記の借地権者は借地権申告をしているのであって、対象となる未登記の借地権者において申告期間内に借地権申告をすることは十分に期待することができたものといえる。
ウ したがって、本件申請に当たり、本件施行地区となるべき区域を管轄する北区長による当該区域の公告(前記前提事実(5)イ)がされてから申告期間内に借地権申告をしなかった未登記の借地権者については、都市再開発法15条2項において準用する同法7条の3第4項により、同法14条1項の同意権者として存在しないものと擬制される結果、同意権者として扱われず、同意権者の人数として数えられることもないというべきである。
エ なお、原告らは、本件において、借地権申告をしていない未登記の借地権者の中には、本件許可申請の申請者にとって、その存在について悪意又は重過失の者も含まれているとして、それらの者を同意権者から外してされた本件申請は、適正手続、平等原則及び信義則に反し、憲法上の結社の自由や財産権を侵害する違法なものであると主張するが、未登記の借地権者を同意権者である借地権者として扱うには、都市再開発法の明文により借地権申告が求められており、そのような規律に合理性が認められることは前記イのとおりであるから、借地権申告をする機会がありながら、それをしなかった者らを同意権者として扱わなかったとしても、適正手続、平等原則及び信義則に反したり、憲法上の結社の自由や財産権を侵害したりするものとはいえない。原告らの上記主張は独自の見解であって、採用することができない。』
この判例では、公益目的の市街地再開発事業を進行させるために、画一的処理として、敷地に対する借地権設定登記申請と同程度の書類を用意させて提出させることに一定の合理性があると判示しています。民間取引の権利関係を決める対抗問題と、市街地再開発事業の権利者確定は異なると判断しているのです。
更に、借地権者が、従前の交渉経過において、組合担当者に対して借地権者であることを主張するなどしており、施行者(組合理事や組合事務局)などが、借地権者の存在を事実上認識していたとしても、それは、都再法上の権利者を確定させる法定の手続きには影響しないと判断しています。
5、考えられる対策
上記の次第ですので、もしもあなたが、再開発事業の施行区域内に借地権つき建物を有しており、その敷地への借地権設定登記をしていない場合、いわゆる「未登記の借地権者」である場合は、都再法14条1項の同意権者としてカウントされるためにも、借地権の申告は適式に行うことが有利であると言えます。再開発手続き自体に反対しており、組合の手続きには一切協力したくない、というお考えをお持ちであることも分かりますが、公法上の手続きですので、前記判例のように、申告をしなかったことにより借地権者として扱われなかったことの不当性について法的に争うことは一般的にハードルの高い問題となります。現段階では、法令様式に従って借地権申告を行うことをお勧め致します。
借地権申告をせずに、組合に対して同意権者であることを主張するためには、市街地再開発事業の施行区域の公告がなされる前に、敷地に対する借地権設定登記を行ってしまうことも一つの選択肢となります。借地権の地主さんと良く話し合って、法務局に借地権設定登記を申請することも検討して下さい。ご相談のように、敷地が個人で、建物が法人所有というようなケースでは、迅速に協議して比較的円滑に登記申請できるはずです。とはいえ、費用も掛かりますし、借地権の申告をしたとしても再開発に賛成したということにはなりませんから、借地権の申告をした方が良いでしょう。急いでいる場合は、再開発手続きに詳しい弁護士事務所に御相談なさってみると良いでしょう。
なお、前記の借地権申告期限を過ぎてしまった場合でも、再開発事業で権利変換を受けるための評価基準日は、組合設立認可および事業計画認可公告から30日経過した日(都再法80条1項)であり、未だ到来していませんので、組合に対して借地権が存在することを書面で主張することができますし、借地権設定登記をすることも有益です。期限後の申告についても御検討なさって下さい。
※参考条文
都市再開発法
第14条(宅地の所有者及び借地権者の同意)
1項 第十一条第一項又は第二項の規定による認可を申請しようとする者は、組合の設立について、施行地区となるべき区域内の宅地について所有権を有するすべての者及びその区域内の宅地について借地権を有するすべての者のそれぞれの三分の二以上の同意を得なければならない。この場合においては、同意した者が所有するその区域内の宅地の地積と同意した者のその区域内の借地の地積との合計が、その区域内の宅地の総地積と借地の総地積との合計の三分の二以上でなければならない。
2項 第七条の二第五項の規定は、前項の規定により同意を得る場合について準用する。
第15条(借地権の申告)
1項 前条第一項に規定する同意を得ようとする者は、あらかじめ、施行地区となるべき区域の公告を当該区域を管轄する市町村長に申請しなければならない。
2項 第七条の三第二項から第四項までの規定は、前項の規定による申請があつた場合について準用する。この場合において、同条第四項中「前条第三項」とあるのは、「第十四条」と読み替えるものとする。
第7条の3(借地権の申告)
1項 前条第三項の同意を得ようとする者は、あらかじめ、当該単位整備区の区域内の宅地について未登記の借地権を有する者は第三項の規定による申告を行うべき旨の公告を、当該単位整備区の区域を管轄する市町村長に申請しなければならない。
2項 市町村長は、前項の申請があつたときは、国土交通省令で定めるところにより、遅滞なく、当該申請に係る公告をしなければならない。
3項 前項の公告に係る単位整備区の区域内の宅地について未登記の借地権を有する者は、同項の公告があつた日から起算して三十日以内に当該市町村長に対し、国土交通省令で定めるところにより、その借地の所有者(借地権を有する者から更に借地権の設定を受けた場合にあつては、その設定者及びその借地の所有者)と連署し、又は借地権を証する書面を添えて、書面をもつてその借地権の種類及び内容を申告しなければならない。
4項 未登記の借地権で前項の規定による申告のないものは、同項の申告の期間を経過した後は、前条第三項の規定の適用については、存しないものとみなす。
都市再開発法施行規則
第1条の2(施行要請に関する借地権の申告を行うべき旨の公告)
市町村長は、法第七条の三第二項の公告をしようとするときは、法第七条の二第三項に規定する単位整備区の区域に含まれる地域の名称(市町村の区域内の町又は字の区域の一部が含まれる場合においては、その一部の区域内の土地の地番)並びに当該単位整備区の区域内の宅地について未登記の借地権を有する者は法第七条の三第三項の規定による借地権の種類及び内容の申告を行うべき旨を公告し、かつ、当該区域を表示する図面を当該市町村の事務所においてその公告をした日から二週間公衆の縦覧に供しなければならない。
第1条の3(施行要請に関する借地権の申告手続)
1項 法第七条の三第三項の規定による申告をしようとする者は、別記様式第一の借地権申告書を市町村長に提出しなければならない。
2項 前項の借地権申告書には、次に掲げる図書を添付しなければならない。
一号 借地権申告書に署名した者の運転免許証(道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)第九十二条第一項に規定する運転免許証をいう。)、個人番号カード(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成二十五年法律第二十七号)第二条第七項に規定する個人番号カードをいう。)、旅券(出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)第二条第五号に規定する旅券をいう。)の写しその他その者が本人であることを確認するに足りる書類(法人にあつては、印鑑登録証明書その他その者が本人であることを確認するに足りる書類)(第二十四条第二項において「本人確認書類」という。)
二号 借地権が宅地の一部を目的としている場合においては、その部分の位置を明らかにする見取図(方位を記載すること。)
3項 市町村長は、第一項の借地権申告書が借地権を証する書面を添えて提出された場合において、その書面がその借地権を証するに足りないと認めるときは、更に必要な書類の提出を求めることができる。
※都市再開発法施行規則 別記様式第一の借地権申告書
https://www.shinginza.com/db/shakuchiken-shinkoku.pdf
以上