新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース 質問:私は73歳の年金で生活している無職女性です。投資経験もありません。平成17年初めごろ、業者から外国為替証拠金取引(FX)というものを何度か勧誘され、合計700万円をいわれるままに預け信用し任せていたところ、大きな損が出てしまいました。さらに、今般、会社が破産しましたが、そうなると、預けたお金は全く戻ってこないのでしょうか。 その構造は商品先物取引のように少額の証拠金(数%−10%)を預けて証拠金の10倍から数十倍の売買を行いますので一般の人にとって先物取引のように投機的な危険な取引であることは間違いありません。計算は、為替の差益(例えば米ドルを買っていて円安ドル高になれば儲かるわけです。)、と「スワップ金利」という金利差益の合計で行いますが、この「スワップ金利」も一般の人には分かりにくく思わぬ損害を蒙ることがあります。すなわち、通貨を保有し銀行に預けていれば金利がつくと同様に考え各通貨におのおの金利があると評価し(利率は業者により異なりますが「外貨預金」の金利と同じように考えればいいでしょう。平成19年現在では、円よりも、ドル、豪州ドルは金利が高くなっています。)各通貨間の金利の差をスワップ金利というのです。豪州ドルを買った場合は円との金利差を受け取れるが、豪州ドルを売った場合は逆に金利差を支払うことになります。これを理解するのも大変です。 株はその背景に会社の実態、商品先物は大豆、ガソリン等の商品の価値が背景にありますが、この取引は各国の通貨価値が背景であり大きく言えば世界政治経済の情況の把握が不可欠であり予測困難な要素を多分に含んでいるのです。それに以前この取引は実際対象となる通貨を発注するわけではなく(発注があるという場合でもどの銀行を通じてするかは不明なことが多い)数字上の顧客と業者との直接相対取引ですので基準となる相場表、スワップ金利の設定内容(業者側に有利に設定していること)手数料等取引内容が一定せず不明確で常に顧客側の不利益の危険が内在していました。 2.そこでこの取引については平成17年7月1日に金融先物取引法の改正があり、同18年1月1日から施行されています。簡単に言うと、改正前は、この取引は投資の危険性を伴うにもかかわらずほぼ法律の規制対象外でしたが、このような状況を利用した小規模業者等の不当取引により一般の消費者が取引の内容を十分理解できないまま業者の勧誘により契約し多額の被害が生じた事情があって金融先物取引法の対象として規制し一般消費者、投資家を保護しようとしたのです。現在では、業者は「店頭金融先物取引業者」として実態を備えた上で内閣総理大臣の登録を受けなければなりませんし(登録制、金融先物取引法2条、56条、57条)、大豆、コーン、コーヒー等の商品先物取引を規制する商品取引法と同じように禁止行為等の規制(同法67条―76条)が明確に定められています。もちろん制裁処置(同法85条―93条)も設けられました。この改正でとりあえず明らかな違法業者を締め出したと評価されています。しかし商品先物取引と同様法律の改正があっても常に法の網を逃れようとする者がなくなるわけではありませんから引き続き注意が必要です。解説が長くなりましたが、以上を前提に貴女の取引を検討致してみます。 3.貴女が取引していた会社が破産したとしても、ある程度財産が保全されているならば、それを破産管財人が分配して配当するという手続きが破産法上ありますので、破産事件の際に、あなたの蒙った損害を不法行為債権として管財人に届け出ることができます(破産法111条)。管財人の調査の上、認められた部分については、中間配当、最後配当または追加配当の手続き(簡易配当もありますが)において、配当率に従い配当額が交付されます(破産法193条以下)。しかし、破産事件における配当率は微々たるもので、預けた金額が全額返ってくることはほとんどありません。そこで、会社の代わりに、会社の従業員や取締役、監査役などの個人を訴えることが考えられます。 4.その前提として、従業員があなたに対して不法行為を行ったことが必要となりますが、あなたの場合平成18年1月金融先物取引法改正施行前の取引ですから、不法行為の根拠法規が不明確ですからそれを明らかにする必要があります。もちろん本件業者も改正と時を同じくして倒産している事から、現在のような総理大臣への登録に値しない小規模業者だと推定するのですが、この点についていろいろな考え方があります。 @この取引を為替変動の偶然性を根拠に詐欺的行為、賭博行為として公序良俗に反するものとして無効とする説。札幌地裁平成15年5月9日判決、同地裁平成15年5月14日の判決では改正前の取引行為について悪徳商法の一類型の判断がなされています。 5.また、従業員が顧客に、取引の仕組みや危険性を顧客に正確に理解してもらうためのわかりやすい説明をしうるだけの知識、能力を欠き、かえって従業員が、本件取引が高い金利を得られる取引であることのみを強調し、リスクについては説明せず、断定的な判断を提供したというようなことがあれば、従業員について、一般消費者であるあなたを勧誘するにあたり、取扱業者の営業担当者として要求されるべき説明義務を怠ったものとして、断定的判断の提供という違法性が認められます。従って、従業員及び会社に対して損害賠償請求をすることができます(民法709条及び715条。但し、会社は破産していますので、上記1の解決となります)。 6.次に、取締役等会社役員の責任ですが、役員らは、具体的にあなたに対して取引を勧誘した等の行為がないため、一般論としては、責任を問うことは困難ですが、会社が破産している状況のもとでは、以下のような事情のもとで、取締役らと監査役の責任を認めた判決があります。 (1)会社が行う外国為替証拠金取引の仕組みや危険性について、これを営業社員らに理解させるための十分な研修等が行われていなかったこと。 7.以上であり、お金が戻ってくるかどうかは具体的な事情によります。早急に弁護士に相談をした方がよいと思います。 ≪参考条文≫ 破産法
No.619、2007/5/11 14:07 https://www.shinginza.com/sakimono.htm
[民事・消費者問題・外国為替証拠金取引・内容、構造・金融先物取引法改正・適合性の原則]
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回答
1.あなたは、勧誘されて外国為替証拠金取引を行っていますが、御高齢でもありこの取引について理解できているか不明ですし、一般には聞きなれない言葉だと思いますので先ず沿革的、概括的に説明します。外国為替証拠金取引とは平成10年の外為法(外国為替及び外国貿易法)改正による為替取引自由化に伴い始まったものですが、定義的には取引業者が顧客から契約した取引元本の一定率の証拠金等を預かり差金決済(対比される「現物決済」は通貨の現物をやり取りしますが、「差金決済」はその決済時点での仕切りを行い通貨の売り買いの差額を計算して差額の受け渡しを行います。)によって外国為替(通貨)の売買を行う取引といわれています。売買の対象は通貨ですから、商品先物取引の対象たる将来のある一定時期の売り買いの権利を売買する先物取引とは違い「通貨」すなわち「時価」そのものを取引することから直物取引(じきものとりひき)といわれているのです。
A証拠金を法令の根拠もなく銀行でもない業者に預ことに着眼して出資法の潜脱行為として違反行為と認定する説。
B先物取引ではありませんが商品取引法を類推適用して全体的に違法性を考えていく考え方。個別的判断が可能であり、構造、システム、消費者保護の観点から商品先物取引行為に類似点が多くこの説が妥当と思います。まず商品取引法215条の適合性原則違反を問うことが考えられます。外国為替証拠金取引は、少額の証拠金による差金決済という取引方法により多額の取引をするもので、強度の投機的色彩を有する取引である上、為替相場やスワップ金利といった高度に専門的な概念に対する理解を要する取引であることから、このような取引の危険性、仕組みの複雑さ等に照らすと、本件取引当時、73歳の独居高齢者であり、無職の年金生活者で、本件取引を開始するまで、株式の現物取引を含め元本割れが生じる危険性のある投機的取引をした経験が全くなかったあなたについては、本件取引に対する適合性を欠いていたことは明らかです。さらに貴女は、取引を業者、担当者に一任していたと考えられますから説明義務違反、取引行為一任の禁止の規定も類推され全体としては違法、不法行為と認定が可能でしょう。商品取引法214条以下類推。
(2)そのため、従業員は取引の仕組みや危険性を顧客に正確に理解してもらうためのわかりやすい説明をしうるだけの知識と能力を欠いており、また、適合性原則や説明義務など、営業社員らがその営業活動を行うに当たって遵守すべき事項につき、違反が生じないようにするための体制が特に採られていなかったこと。
(3)従業員に、歩合給制が採用されており、営業に携わる従業員が顧客獲得に熱心になりやすい環境があったこと。
(4)さらに、顧客からの預かり資産と自社資産との分別管理が行われておらず、顧客からの預かり資産が適切に管理されていなかったこと。
(5)その結果、当時、会社には、独立行政法人国民センター宛に多くの苦情が寄せられ、また、多数の紛議が生じており、会社は多額の和解金の支払いを余儀なくされられていたばかりか、○年×月△日には、監督官庁から業務停止命令等の行政処分が下されるなど、外国為替証拠金取引を取り扱う業者として不適格であることが明らかな状況に陥っていたこと。
(6)そして、平成○年△月△日、会社につき破産手続きが開始され、不法行為に基づく損害賠償債権を含む破産債権が回収不能の状態となっていること。
(7)このような事情のもとで、判決は「会社においては、営業担当者らによる不法行為を生みやすい土壌があったにもかかわらず、これを防止するための適切な対策が採られていなかったものであり、これが原因で上記不法行為を含む多数の紛議が生じてしまったものと認めることができ、この点につき、破産会社の役員は、責任を負わなければならないというべきである。即ち、被告○○は、破産会社の代表取締役として、その従業員が違法な営業行為等を行わないようその業務を適切に監督し、違法行為を未然に防止するための体制を構築すべき義務を負っていたというべきであり、また、被告××らは、同社の取締役として、被告○○のかかる業務執行を監督すべき義務を負うところ、上記のとおりの破産会社の状況に照らすと、被告らは代表取締役または取締役として果たすべきこのような義務を怠っており、かかる任務懈怠につき重大な過失があったものと認めることができる。同被告らが上記義務を履行していれば、本件における不法行為の発生も避けることができた可能性が大きいと推認されるから、同被告らは、旧商法266条の3第1項に基づき、原告に対して損害賠償責任を負わなければならない。」
(8)「また、被告△は、破産会社の唯一の監査役として、会計帳簿等を調査するなどして不適切な会計処理の是正を図るとともに、取締役の職務執行を監査する義務を負うところ、破産会社においては、上記のとおり、顧客からの預かり資産と自社資産との分別管理がされておらず、顧客からの預かり資産が適切に管理されていなかったにもかかわらず、被告△はこれを放置し、適切な会計監査及び業務監査を怠った。顧客からの預かり資産と自社資産と区別し、その保全を図ることは、外国為替証拠金取引の適正性を確保するための基本的な遵守事項であるといえるから、被告△が監査役としての職務を全うせず、破産会社における杜撰な資産管理を放置したことには、重大な過失があると認められる。そして、被告△が、監査役として負担する上記義務を履行していれば、本件における不法行為の発生も避けることができた可能性が大きいと推認されるから、同被告は旧商法280条1項、同法266条の3第1項に基づき、原告に対して損害賠償責任を負わなければならない。」と判示しています(平成18年6月8日東京地裁)。つまり、極めて限定的な事情ではありますが、役員個人の責任が認められる場合もあるということです。
(破産債権の届出)
第百十一条 破産手続に参加しようとする破産債権者は、第三十一条第一項第一号又は第三項の規定により定められた破産債権の届出をすべき期間(以下「債権届出期間」という。)内に、次に掲げる事項を裁判所に届け出なければならない。
一 各破産債権の額及び原因
二 優先的破産債権であるときは、その旨
三 劣後的破産債権又は約定劣後破産債権であるときは、その旨
四 自己に対する配当額の合計額が最高裁判所規則で定める額に満たない場合においても配当金を受領する意思があるときは、その旨
五 前各号に掲げるもののほか、最高裁判所規則で定める事項
2 別除権者は、前項各号に掲げる事項のほか、次に掲げる事項を届け出なければならない。
一 別除権の目的である財産
二 別除権の行使によって弁済を受けることができないと見込まれる債権の額
3 前項の規定は、第百八条第二項に規定する特別の先取特権、質権若しくは抵当権又は破産債権を有する者(以下「準別除権者」という。)について準用する。
(配当の方法等)
第百九十三条 破産債権者は、この章の定めるところに従い、破産財団から、配当を受けることができる。
2 破産債権者は、破産管財人がその職務を行う場所において配当を受けなければならない。ただし、破産管財人と破産債権者との合意により別段の定めをすることを妨げない。3 破産管財人は、配当をしたときは、その配当をした金額を破産債権者表に記載しなければならない。
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
(使用者等の責任)
第七百十五条 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。
旧商法266の3、同280条
会社法
(役員等の第三者に対する損害賠償責任)
第四百二十九条 役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。
2 次の各号に掲げる者が、当該各号に定める行為をしたときも、前項と同様とする。ただし、その者が当該行為をすることについて注意を怠らなかったことを証明したときは、この限りでない。
一 取締役及び執行役 次に掲げる行為
イ 株式、新株予約権、社債若しくは新株予約権付社債を引き受ける者の募集をする際に通知しなければならない重要な事項についての虚偽の通知又は当該募集のための当該株式会社の事業その他の事項に関する説明に用いた資料についての虚偽の記載若しくは記録
ロ 計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書並びに臨時計算書類に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録
ハ 虚偽の登記
ニ 虚偽の公告(第四百四十条第三項に規定する措置を含む。)
二 会計参与 計算書類及びその附属明細書、臨時計算書類並びに会計参与報告に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録
三 監査役及び監査委員 監査報告に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録
四 会計監査人 会計監査報告に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録
金融先物取引法
(定義)
第二条 この法律において「金融先物取引」とは、取引所金融先物取引等又は店頭金融先物取引をいう。
2 この法律において「取引所金融先物取引」とは、金融先物取引所の開設する金融先物市場において金融先物取引所の定める基準及び方法に従い行う次に掲げる取引をいい、「取引所金融先物取引等」とは、取引所金融先物取引又は海外金融先物市場において行う取引所金融先物取引と類似の取引をいう。
一 当事者が将来の一定の時期において通貨等及びその対価の授受を約する売買取引であつて、当該売買の目的となつている通貨等の転売又は買戻しをしたときは差金の授受によつて決済することができる取引
二 当事者があらかじめ金融指標の数値として約定する数値(以下「約定数値」という。)と将来の一定の時期における現実の当該金融指標の数値の差に基づいて算出される金銭の授受を約する取引
三 当事者の一方の意思表示により当事者間において次に掲げる取引を成立させることができる権利(以下「金融オプション」という。)を相手方が当事者の一方に付与し、当事者の一方がこれに対して対価を支払うことを約する取引
イ 第一号に掲げる取引
ロ 前号に掲げる取引(これに準ずる取引で金融先物取引所の定めるものを含む。)
ハ 通貨等の売買取引(イに掲げる取引に該当するものを除く。)
3 この法律において「金融先物市場」とは、金融先物取引を行う市場をいい、「海外金融先物市場」とは、金融先物取引所の開設する金融先物市場に類似する外国に所在する市場をいう。
4 この法律において「店頭金融先物取引」とは、金融先物取引所の開設する金融先物市場及び海外金融先物市場によらないで行う次に掲げる取引(その内容等を勘案し、取引の当事者の保護のため支障を生ずることがないと認められるものとして政令で定めるものを除く。)をいう。
一 当事者が将来の一定の時期において通貨等(第八項第三号に掲げるものを除く。以下この号及び第三号ロにおいて同じ。)及びその対価の授受を約する売買取引であつて、当該売買の目的となつている通貨等の売戻し又は買戻しその他政令で定める行為をしたときは差金の授受によつて決済することができる取引
二 第二項第二号に掲げる取引
三 当事者の一方の意思表示により当事者間において次に掲げる取引を成立させることができる権利を相手方が当事者の一方に付与し、当事者の一方がこれに対して対価を支払うことを約する取引
イ 第一号又は前号に掲げる取引
ロ 通貨等の売買取引(イに掲げる取引に該当するものを除く。)
四 前三号に掲げる取引に類似する取引であつて、政令で定めるもの
5 この法律において「金融先物会員制法人」とは、金融先物市場の開設を目的として第二章第二節第一款の規定に基づいて設立された会員組織の社団をいう。
6 この法律において「金融先物取引所」とは、次条の規定により内閣総理大臣の免許を受けて金融先物市場を開設する金融先物会員制法人又は株式会社をいう。
7 この法律において「金融先物取引所持株会社」とは、第三十四条の三十四第一項又は第三項ただし書の規定により内閣総理大臣の認可を受けた者をいう。
8 この法律において「通貨等」とは、次に掲げるものをいう。
一 通貨
二 有価証券、預金契約に基づく債権その他の政令で定めるもの(証券取引法 (昭和二十三年法律第二十五号)第二条第二十項 に規定する有価証券を除く。)
三 前号に掲げるものについて、金融先物取引所が、取引所金融先物取引を円滑化するため、利率、償還期限その他の条件を標準化して設定した標準物
9 この法律において「金融指標」とは、通貨の価格若しくは前項第二号に掲げるものの価格若しくは利率又はこれらに基づいて算出した数値をいう。
10 この法律において「外国金融先物取引所」とは、第五十五条の二第一項の規定により内閣総理大臣の認可を受けた者をいう。
11 この法律において「金融先物取引の受託等」とは、次に掲げる行為をいう。
一 取引所金融先物取引等の委託を受け、又はその委託の媒介、取次ぎ若しくは代理を行う行為
二 次のいずれにも該当しない者(以下「一般顧客」という。)を相手方として店頭金融先物取引を行い、又は一般顧客のために店頭金融先物取引の媒介、取次ぎ若しくは代理を行う行為
イ 金融先物取引に関する専門的知識及び経験を有すると認められる者として内閣府令で定める者
ロ 資本金の額が内閣府令で定める金額以上の株式会社
12 この法律において「金融先物取引業」とは、金融先物取引の受託等を業として行うことをいい、「金融先物取引業者」とは、第五十六条の登録を受けて金融先物取引業を行う者をいう。
13 この法律において「委託者等」とは、金融先物取引業者に対し取引所金融先物取引等の委託をし、若しくはその委託の媒介、取次ぎ若しくは代理の申込みをした者、金融先物取引業者の行う店頭金融先物取引の相手方となつた一般顧客又は金融先物取引業者に店頭金融先物取引の媒介、取次ぎ若しくは代理の申込みをした一般顧客をいう。
14 この法律において「金融先物債務引受業」とは、金融先物取引業者を相手方として、金融先物取引業者が行う対象取引(金融先物取引その他政令で定める取引をいう。)に基づく債務の引受けを業として行うことをいう。
15 この法律において「金融先物清算機関」とは、第百十五条又は第百三十五条第一項の規定により内閣総理大臣の免許又は承認を受けた者をいう。
(登録)
第五十六条 金融先物取引業は、内閣総理大臣の登録を受けた次に掲げる者でなければ、行うことができない。
一 株式会社であつて次に掲げる機関を置くもの
イ 取締役会
ロ 監査役又は委員会
二 外国の法令に準拠して設立された取締役会設置会社と同種類の法人
三 銀行法 (昭和五十六年法律第五十九号)第四条第一項 の免許を受けた同法第四十七条第一項 に規定する外国銀行(前号に該当する者を除く。)
四 協同組織金融機関の優先出資に関する法律 (平成五年法律第四十四号)第二条第一項 に規定する協同組織金融機関(以下「協同組織金融機関」という。)
五 保険業法 (平成七年法律第百五号)第二条第五項 に規定する相互会社(次条第一項第二号において「相互会社」という。)又は同法第二条第七項 に規定する外国保険会社等(法人である者に限る。以下「外国保険会社等」という。)で第二号 に該当する者以外のもの
(登録の申請)
第五十七条 前条の登録を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した登録申請書を内閣総理大臣に提出しなければならない。
一 商号又は名称
二 資本金の額又は出資の総額(相互会社にあつては、基金の総額。第五十九条第一項第二号において同じ。)
三 役員(理事、取締役、会計参与、監事、監査役、執行役又はこれらに準ずる者をいい、外国法人にあつては、国内における代表者を含む。以下この章(第七節を除く。)において同じ。)の氏名又は名称
四 営業所又は事務所の名称及び所在地
五 他に事業を行つているときは、その事業の種類
六 その他内閣府令で定める事項
2 前項の登録申請書には、次に掲げる書類を添付しなければならない。
一 第五十九条第一項第一号から第七号まで及び第九号から第十二号までに該当しないことを誓約する書面
二 損失の危険の管理方法、業務分掌の方法その他の業務の内容及び方法として内閣府令で定めるものを記載した書類
三 前二号に掲げるもののほか、定款、貸借対照表、損益計算書その他内閣府令で定める書類
3 前項第三号の場合において、定款若しくは貸借対照表が電磁的記録で作成されているとき、又は損益計算書について書面に代えて電磁的記録の作成がされているときは、書類に代えて電磁的記録(内閣府令で定めるものに限る。)を添付することができる。
(登録簿への登録)
第五十八条 内閣総理大臣は、第五十六条の登録の申請があつた場合においては、次条第一項の規定により登録を拒否する場合を除くほか、次に掲げる事項を金融先物取引業者登録簿に登録しなければならない。
一 前条第一項各号に掲げる事項
二 登録年月日及び登録番号
2 内閣総理大臣は、前項の規定による登録をしたときは、遅滞なく、その旨を登録申請者に通知しなければならない。
3 内閣総理大臣は、金融先物取引業者登録簿を公衆の縦覧に供しなければならない。
(名義貸しの禁止)
第六十七条 金融先物取引業者は、自己の名義をもつて、他人に金融先物取引業を行わせてはならない。
(広告において表示すべき事項)
第六十八条 金融先物取引業者は、その行う金融先物取引業の内容について広告をするときは、内閣府令で定めるところにより、次に掲げる事項を表示しなければならない。
一 金融先物取引業者の商号又は名称及び登録番号
二 金融先物取引の受託等について顧客から手数料を徴収する場合にあつては、その手数料の料率又は額
三 顧客が行う金融先物取引(第二条第二項第三号に掲げる取引にあつては金融オプションを行使することにより成立する同号イからハまでに掲げる取引をいい、同条第四項第三号に掲げる取引にあつては同号の権利を行使することにより成立する同号イ及びロに掲げる取引をいう。)の額(取引の対価の額又は約定数値に、その取引の件数又は数量を乗じて得た額をいう。)が、その取引について顧客が預託すべき委託証拠金その他の保証金の額に比して大きい旨
四 顧客が行う金融先物取引について、通貨等の価格又は金融指標の数値の変動により損失が生ずることとなるおそれがあり、かつ、当該損失の額が委託証拠金その他の保証金の額を上回ることとなるおそれがある旨
五 前各号に掲げるもののほか、金融先物取引業の内容に関する事項であつて、顧客の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものとして政令で定めるもの
(著しく事実に相違する表示等の禁止)
第六十九条 金融先物取引業者は、その行う金融先物取引業に関して広告をするときは、金融先物取引による利益の見込みその他内閣府令で定める事項について、著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示をしてはならない。
(契約締結前の書面の交付)
第七十条 金融先物取引業者は、金融先物取引の受託等を内容とする契約(以下「受託契約等」という。)を締結しようとするときは、内閣府令で定めるところにより、あらかじめ、顧客(銀行その他の内閣府令で定める者を除く。)に対し、受託契約等の概要、第六十八条各号に掲げる事項その他の内閣府令で定める事項を記載した書面を交付して説明しなければならない。ただし、当該受託契約等の締結前内閣府令で定める期間内に当該顧客に当該書面を交付して説明した場合には、この限りでない。
2 金融先物取引業者は、前項の規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、当該顧客の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて内閣府令で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該金融先物取引業者は、当該書面を交付したものとみなす。
(成立した取引に係る書面の交付)
第七十一条 金融先物取引業者は、受託契約等に係る金融先物取引が成立したときは、委託者等に対し、遅滞なく、成立した金融先物取引の対価の額又は約定数値及び件数又は数量並びにその成立の日付その他内閣府令で定める事項についての内容を明らかにする書面を交付しなければならない。ただし、当該金融先物取引に係る契約の内容その他の事情を勘案し、当該書面を委託者等に交付しなくても公益又は委託者等の保護のため支障を生ずることがないと認められるものとして内閣府令で定めるものは、この限りでない。
2 前条第二項の規定は、前項の規定による書面の交付について準用する。この場合において、同条第二項中「顧客」とあるのは、「委託者等」と読み替えるものとする。
(委託証拠金等の受領に係る書面の交付)
第七十二条 金融先物取引業者は、その行う金融先物取引業に関して委託証拠金その他の保証金を受領したときは、委託者等に対し、直ちに、内閣府令で定めるところにより、その旨を記載した書面を交付しなければならない。
2 第七十条第二項の規定は、前項の規定による書面の交付について準用する。この場合において、同条第二項中「顧客」とあるのは、「委託者等」と読み替えるものとする。
(取引態様の事前明示義務)
第七十三条 金融先物取引業者は、その行う金融先物取引業に関して委託者等から金融先物取引に関する注文を受けたときは、あらかじめ、当該委託者等に対し自己がその相手方となつて当該取引を成立させるか、又は媒介し、取次ぎし、若しくは代理して当該取引を成立させるかの別を明らかにしなければならない。
(自己契約の禁止)
第七十四条 金融先物取引業者は、その行う金融先物取引業に関し、同一の金融先物取引について、その本人となると同時に、その相手方の取次ぎをする者又は代理人となることができない。
(委託者等に対する誠実義務)
第七十五条 金融先物取引業者並びにその役員及び使用人は、委託者等に対して誠実かつ公正に、その業務を遂行しなければならない。
(禁止行為)
第七十六条 金融先物取引業者は、次に掲げる行為をしてはならない。ただし、第三号及び第四号に掲げる行為にあつては、顧客の保護に欠け、取引の公正を害し、又は金融先物取引業の信用を失墜させるおそれのないものとして内閣府令で定めるものを除く。
一 顧客に対し、利益を生ずることが確実であると誤解させるべき断定的判断を提供して受託契約等の締結を勧誘すること。
二 顧客に対し、損失の全部若しくは一部を負担することを約し、又は利益を保証して、受託契約等の締結を勧誘すること。
三 取引の件数又は数量、対価の額又は約定数値その他の内閣府令で定める事項について、顧客の同意を得ないで定めることができることを内容とする受託契約等を締結すること。
四 受託契約等の締結の勧誘の要請をしていない一般顧客に対し、訪問し又は電話をかけて、受託契約等の締結を勧誘すること。
五 受託契約等の締結の勧誘を受けた顧客が当該受託契約等を締結しない旨の意思(当該勧誘を引き続き受けることを希望しない旨の意思を含む。)を表示したにもかかわらず、当該勧誘を継続すること。
六 受託契約等を締結しないで、金融先物取引の受託等をし、顧客を威迫することによりその追認を求めること。
七 受託契約等に基づく金融先物取引の受託等をすることその他の当該受託契約等に基づく債務の全部又は一部の履行を拒否し、又は不当に遅延させること。
八 受託契約等に基づく委託者等の計算に属する金銭、有価証券その他の財産又は委託証拠金その他の保証金を虚偽の相場を利用することその他不正の手段により取得すること。
九 前各号に掲げるもののほか、金融先物取引の受託等に関する行為であつて、委託者等の保護に欠け、又は金融先物取引の受託等の公正を害するものとして内閣府令で定めるものを行うこと。
(適合性の原則等)
第七十七条 金融先物取引業者は、業務の状況が次の各号のいずれかに該当することのないように、業務を行わなければならない。
一 顧客の知識、経験及び財産の状況に照らして不適当と認められる受託契約等の締結の勧誘を行つて顧客の保護に欠けることとなつており、又は欠けることとなるおそれがあること。
二 前号に掲げるもののほか、業務の状況が公益に反し、又は委託者等の保護に支障を生ずるおそれがあるものとして内閣府令で定める状況にあること。
(立入検査等)
第八十五条 内閣総理大臣は、公益又は委託者等の保護のため必要があると認めるときは、金融先物取引業者に対し、その業務若しくは財産に関して報告若しくは資料の提出を命じ、又は当該職員に、金融先物取引業者の営業所若しくは事務所に立ち入り、その業務若しくは財産の状況若しくは帳簿書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。
2 内閣総理大臣は、公益又は委託者等の保護のため必要があると認めるときは、金融先物取引業者(外国法人を除く。以下この項において同じ。)の主要株主又は金融先物取引業者を子法人とする持株会社の主要株主に対し第六十一条から第六十三条まで(これらの規定を第六十四条において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の届出若しくは措置若しくは当該金融先物取引業者の業務若しくは財産に関し参考となるべき報告若しくは資料の提出を命じ、又は当該職員に、当該主要株主の営業所若しくは事務所に立ち入り、その書類その他の物件の検査(第六十一条から第六十三条までの届出若しくは措置又は当該金融先物取引業者の業務若しくは財産に関し必要な検査に限る。)をさせ、若しくは関係者に質問させることができる。
3 内閣総理大臣は、公益又は委託者等の保護のため特に必要があると認めるときは、金融先物取引業者と取引する者に対し、当該金融先物取引業者の業務又は財産に関して報告又は資料の提出を命ずることができる。
4 第三十四条の二十の三第二項及び第三項の規定は、第一項及び第二項の規定による立入検査又は質問について準用する。
(業務改善命令)
第八十六条 内閣総理大臣は、金融先物取引業者の業務の運営又は財産の状況に関し、公益又は委託者等の保護のため必要かつ適当であると認めるときは、その必要の限度において、当該金融先物取引業者に対し、業務の種類及び方法の変更その他業務の運営又は財産の状況の改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
(監督上の処分)
第八十七条 内閣総理大臣は、金融先物取引業者が次の各号のいずれかに該当するときは、第五十六条の登録を取り消し、又は六月以内の期間を定めてその業務の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。
一 第五十九条第一項第一号から第三号まで、第五号、第六号(同号に規定する第十九条第二号については、この法律に相当する外国の法令の規定に係る部分に限る。)、第七号又は第十三号のいずれかに該当することとなつたとき。
二 不正の手段により第五十六条の登録を受けたとき。
三 この法律(第八十二条第二項を除く。)若しくはこの法律に基づく命令又はこれらに基づく処分に違反したとき。
四 業務又は財産の状況に照らし、支払不能に陥るおそれがあるとき。
五 金融先物取引業に関し、不正又は著しく不当な行為をした場合において、その情状が特に重いとき。
2 内閣総理大臣は、金融先物取引業者(銀行、協同組織金融機関、保険会社及び外国保険会社等を除く。)が第八十二条第二項の規定に違反している場合(自己資本規制比率が百パーセントを下回るときに限る。)において、公益又は委託者等の保護のため必要かつ適当であると認めるときは、その必要の限度において、三月以内の期間を定めて業務の全部又は一部の停止を命ずることができる。
3 内閣総理大臣は、前項の規定により業務の全部又は一部の停止を命じた場合において、その日から三月を経過した日における当該金融先物取引業者の自己資本規制比率が引き続き百パーセントを下回り、かつ、当該金融先物取引業者の自己資本規制比率の状況が回復する見込みがないと認められるときは、当該金融先物取引業者の第五十六条の登録を取り消すことができる。
4 内閣総理大臣は、金融先物取引業者の役員(相談役、顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、当該金融先物取引業者に対し理事、取締役、会計参与、執行役又はこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有するものと認められる者を含み、外国法人にあつては、国内における営業所若しくは事務所に駐在する役員又は国内における代表者に限る。)が第五十九条第一項第九号イ若しくはロに該当することとなつたとき、又は第一項第三号若しくは第五号に該当する行為をしたときは、当該金融先物取引業者に対して、当該役員の解任を命ずることができる。
第八十八条 内閣総理大臣は、金融先物取引業者が正当な理由がないのに、金融先物取引業を行うことができることとなつた日から三月以内に事業を開始しないとき、又は引き続き三月以上その業務を休止したときは、当該金融先物取引業者の第五十六条の登録を取り消すことができる。
(登録の抹消)
第八十九条 内閣総理大臣は、第八十四条第二項の規定により第五十六条の登録がその効力を失つたとき、又は第八十七条第一項若しくは第三項若しくは前条の規定により第五十六条の登録を取り消したときは、当該登録を抹消しなければならない。
(残務の結了)
第九十条 第八十四条第五項の規定は、金融先物取引業者が次の各号のいずれかに該当するに至つた場合における当該金融先物取引業者であつた者について準用する。
一 第八十七条第一項若しくは第三項又は第八十八条の規定により第五十六条の登録を取り消されたとき。
二 第八十四条第二項(同条第一項第一号から第四号まで(同項第二号にあつては、合併後存続する法人又は合併により設立される法人が金融先物取引業を行わない場合の当該合併に係る部分に限る。)に係る部分に限る。)の規定により第五十六条の登録が効力を失つたとき。
2 前項各号に掲げる場合において、当該金融先物取引業者であつた者は、当該金融先物取引業者が締結した受託契約等に基づく取引を結了する目的の範囲内において、金融先物取引業者とみなす。
(受託等に係る財産の管理)
第九十一条 金融先物取引業者は、受託契約等に係る金融先物取引につき、委託者等から預託を受けた委託証拠金その他の保証金については、内閣府令で定めるところにより、自己の固有財産と区分して管理しなければならない。
2 金融先物取引業者は、受託契約等に係る金融先物取引につき、委託者等の計算に属する金銭及び通貨等の価額に相当する財産については、内閣府令で定めるところにより、管理しなければならない。
(資産の国内保有)
第九十二条 内閣総理大臣は、公益又は委託者等の保護のため必要かつ適当であると認める場合には、金融先物取引業者に対し、その資産のうち政令で定める部分を国内において保有することを命ずることができる。
(金融先物取引所等の会員等でない金融先物取引業者に対する監督)
第九十三条 内閣総理大臣は、金融先物取引所の会員等となつておらず、又は第百四条第一項に規定する金融先物取引業協会(以下この条及び次節において「協会」という。)に加入していない金融先物取引業者の行う金融先物取引の受託等について、公益を害し、又は委託者等の保護に欠けることのないよう、金融先物取引所又は協会の定款その他の規則を考慮し、適切な監督を行わなければならない。
2 前項に規定する監督を行うため、内閣総理大臣は、金融先物取引所の会員等となつておらず、又は協会に加入していない金融先物取引業者に対して、金融先物取引所又は協会の定款その他の規則を考慮し、当該金融先物取引業者又はその役員若しくは使用人が遵守すべき規則の作成又は変更を命ずることができる。
3 前項の規定により規則の作成又は変更を命ぜられた金融先物取引業者は、三十日以内に、当該規則の作成又は変更をし、内閣総理大臣の承認を受けなければならない。
4 前項の承認を受けた金融先物取引業者は、当該承認を受けた規則を変更し、又は廃止しようとする場合においては、内閣総理大臣の承認を受けなければならない。
商品取引所法
(誠実かつ公正の原則)
第二百十三条 商品取引員並びにその役員及び使用人は、顧客に対して誠実かつ公正に、その業務を遂行しなければならない。
(不当な勧誘等の禁止)
第二百十四条 商品取引員は、次に掲げる行為をしてはならない。
一 商品市場における取引等につき、顧客に対し、利益を生ずることが確実であると誤解させるべき断定的判断を提供してその委託を勧誘すること。
二 商品市場における取引等につき、顧客に対し、損失の全部若しくは一部を負担することを約し、又は利益を保証して、その委託を勧誘すること。
三 商品市場における取引等につき、数量、対価の額又は約定価格等その他の主務省令で定める事項についての顧客の指示を受けないでその委託を受けること(委託者の保護に欠け、又は取引の公正を害するおそれのないものとして主務省令で定めるものを除く。)。
四 商品市場における取引につき、顧客から第二条第八項第一号に掲げる取引の委託を受け、その委託に係る取引の申込みの前に自己の計算においてその委託に係る商品市場における当該委託に係る取引と同一の取引を成立させることを目的として、当該委託に係る取引における対価の額より有利な対価の額(買付けについては当該委託に係る対価の額より低い対価の額を、売付けについては当該委託に係る対価の額より高い対価の額をいう。)で同号に掲げる取引をすること。
五 商品市場における取引等につき、その委託を行わない旨の意思(その委託の勧誘を受けることを希望しない旨の意思を含む。)を表示した顧客に対し、その委託を勧誘すること。
六 商品市場における取引等につき、顧客に対し、迷惑を覚えさせるような仕方でその委託を勧誘すること。
七 商品市場における取引等につき、その勧誘に先立つて、顧客に対し、自己の商号及び商品市場における取引等の勧誘である旨を告げた上でその勧誘を受ける意思の有無を確認することをしないで勧誘すること。
八 商品市場における取引等につき、顧客に対し、特定の上場商品構成物品等の売付け又は買付けその他これに準ずる取引とこれらの取引と対当する取引(これらの取引から生じ得る損失を減少させる取引をいう。)の数量及び期限を同一にすることを勧めること。
九 前各号に掲げるもののほか、商品市場における取引等又はその受託に関する行為であつて、委託者の保護に欠け、又は取引の公正を害するものとして主務省令で定めるもの
(適合性の原則)
第二百十五条 商品取引員は、顧客の知識、経験及び財産の状況に照らして不適当と認められる勧誘を行つて委託者の保護に欠け、又は欠けることとなるおそれがないように、商品取引受託業務を営まなければならない。
(受託契約準則への準拠)
第二百十六条 商品取引員は、商品市場における取引等の受託については、商品取引所の定める受託契約準則によらなければならない。
(受託契約の締結前の書面の交付)
(商品取引員の説明義務及び損害賠償責任)
第二百十八条 商品取引員は、受託契約を締結しようとする場合において、顧客が商品市場における取引に関する専門的知識及び経験を有する者として主務省令で定める者以外の者であるときは、主務省令で定めるところにより、あらかじめ、当該顧客に対し、前条第一項各号に掲げる事項について説明をしなければならない。
2 商品取引員は、顧客に対し前項の規定により説明をしなければならない場合において、前条第一項第一号から第三号までに掲げる事項について説明をしなかつたときは、これによつて当該顧客の当該受託契約につき生じた損害を賠償する責めに任ずる。