新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.641、2007/6/26 14:02

[民事]

質問:悩み事があり、弁護士さんに相談したいとおもいました。弁護士事務所に電話したら、法律相談の予約を取るように言われました。法律相談とはどういうものですか?弁護士によって回答内容が異なる場合がありますか?万が一依頼すると弁護士費用はどうなるのでしょうか。解決してから報酬を支払うような事も出来るのですか。

回答:
法律相談は、人生相談とは違います。相談を受ける側でも、良く違いを理解したうえで有効に活用してください。

1、法律相談とは、相談者の質問に応じて、弁護士の職務(法律問題)に関して、弁護士の個人的な見解を述べることです。弁護士の職務は弁護士法3条で定められています。弁護
士法72条でも異なる角度から弁護士の職務内容が規定されています。

弁護士法3条  弁護士は、当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によつて、訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことを職務とする。
弁護士法第72条  弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

「法律事務」「法律事件」などの用語が少し難しいですが、要するに、当事者間の法的紛争について法律を適用することにより解決するのが弁護士の仕事です。従って、法律相談の回答は、@どのような法律が適用されるか、A適用された結果どうなるか、ということについての回答になります。法律には、@実体法(民法・商法など)、A手続法(民事保全法・民事訴訟法・民事執行法など)に分かれていますから、@実体法ではどうなるか、A実体法の結論は手続法でどのように実現されるか、ということも法律相談の回答になります。また、付随する事項として、弁護士の手続期間や費用も回答することができます。

それでは、例を挙げて説明してみましょう。
質問例=友人に100万円貸したけれど返してくれません。どうしたら返して貰えますか?

回答例
@実体法→民法587条の金銭消費貸借契約の成立の可否が問題となります。交渉段階で払ってくれなくても、証拠により契約関係の立証ができれば、裁判で請求することができます。
A手続法1→財産隠しをされるおそれがある場合は、現時点で判明している財産に対して仮差押(民事保全法20条)の申立を行います。
B手続法2→裁判所の管轄は相談者の住所地(民事訴訟法4条)の簡易裁判所(裁判所法33条)が良いでしょう。
C手続法3→勝訴判決が取れたら銀行預金など財産の差押(民事執行法143条)を行い、取立てをすることができます。
D弁護士手続→通常は半年から1年以内で終わります。
E手続費用総額は最初に支払う着手金と成功した場合の報酬に分かれており、紛争額にもよるのですが目的達成の場合取得額の2割程度と考えてください。平成16年までは日本弁護士連合会、当職が所属する東京弁護士会に標準報酬規定というものがあったのですが、アメリカ等と同じく報酬の自由化となり(その代わり廃止前と異なり詳細な弁護士委任契約書は必ず作成する必要があります。)現在は廃止されています。着手金は、事件内容により数万円から数十万円になる事が多いと思いますが、各法律事務所に報酬規定が詳細に定められています。当事務所にも勿論ありますし(旧日弁連報酬規定とほぼ同様になっています)、当事務所インターネットホームページで公開しておりますので参考にしてください。ただし、敗訴などにより目的が達成できない場合は最初に預けた費用着手金は戻ってきませんから何もしない場合より出費が出て結果的にマイナスになる場合があります。したがって、弁護士は勝訴(交渉の場合和解成立)の見込みがない事件をみだりに受任してはいけないという職業倫理が求められているのです。依頼者としては必要資料を十分用意し勝訴できるかどうかの予測を何度も聞く事が大切です。しかし、勝訴の予測は、あくまで貴方の資料に基づき判断しますし相手方の主張、資料は検討しておりませんから結果は思わぬ方向に進む場合があります。予測困難なときには最初の着手金を事実上不要にして経済的利益が生じたときにまとめて成功報酬(基本的に%は自由なのですが、紛争額にもよりますが20%前後になる場合が多いでしょう)にて支払うという委任契約も認められております。ただ、万が一敗訴、交渉不成立になると弁護士にとってそれまで長期間遂行した業務に対する報酬はゼロになりますからその場合のリスクは弁護士側がすべて負担する事になります。したがって成功報酬も基準より幾分高めになる事もあります。担当する弁護士さんと遠慮せずに相談してみましょう。

2、しかしながら、そもそも上記のような法律的な質問でない場合は弁護士としても回答に困ってしまう場合があります。例えば、次のような質問です。
質問例=友人に100万円貸したけれど返してくれません。昔交際した恋人で、今でも好きなのです。結婚したいのです。友人に何と話したらよいでしょうか。
これは、前段部分は法律問題のようにも読めますが、結局、請求したいのかそれともやめて再度交際するよう申し込みするのか、相談者自身が決めかねているようです。弁護士は、法律問題について回答することはできますが、人生相談や恋愛相談について回答することは職業倫理に反し憚られます。そのような場合は、弁護士から、「あなたの悩みは法律問題ではありませんから、自分自身でどのようにしたいのか先ず意思を決めて、それから、再度相談してきてください」と言われてしまうでしょう。

他にもいくつか、法律相談では無い事例を挙げますので、参考にしてください。
1)離婚すべきでしょうか、しないべきでしょうか。
2)結婚すべきでしょうか、しないべきでしょうか。
3)子供を生むべきでしょうか、中絶すべきでしょうか。
4)相続放棄すべきでしょうか、しないべきでしょうか。

法律相談の側面と、そうでない側面と両方あるのが、次の質問です。
5)和解すべきか、判決にすべきか?

弁護士は、和解した場合はどのような法的効果を生じるか、判決を求めた場合はどのような判決が予想されるか、どのような法的効果を生じるか、各自の知識と経験に基いて意見を述べることができますが、最終的に、和解を受け入れるか、それとも和解を突っぱねて判決を求めるのかは、依頼者本人に決めてもらわなければならない事項です。「先生どちらがよいですか?」と質問されても、断定できないというのが、正直な感想になってしまうのです。そういう時は、できるだけ丁寧に両方の選択肢についての内容や効果を説明し、本人が結論を下しやすくするための材料としてもらうようにします。

3、上記のように解説してきましたが、そもそも、自分の悩みが法律相談なのか、そうでないのか、その点についても、判断が難しい場合もあります。「法律相談じゃないから弁護士さん怒るかしら」などと考えず、弁護士さんに全てを話してみましょう、弁護士は法的問題とそうでない問題を切り分けるプロですから、これは法律問題、これは人生相談、と区別して教えてくれるはずです。自分だけで抱え込まずに、一度、ご相談になってみることをお勧めいたします。「法律相談になるのかどうか、良く分からないのですが」などと前置きをして事情をお話いただければ、弁護士も安心して話を聞くことができます。

4、「法律相談の回答は弁護士によって異なるか?」
これも難しい問題ですが、一言で表現すると、「異なる場合と、異ならない場合がある」ということになります。

民法の条文に規定された基本的な法律関係や重要判例の解釈見解については、どちらの弁護士でもあまり回答に違いが出にくいかもしれませんが、法律の条文解釈であっても複雑な事例だとか、珍しい事例だとか、判例の少ない事例や、判例(前例)の無い事件では、弁護士のそれまでの経験(ノウハウ)や個性によって、回答が異なる可能性はあります。損害賠償請求事件では、賠償額の見積もりについても、弁護士によって相違が生じる場合があるでしょう。交通死亡事故や労災死亡事故事件など、損害賠償額が大きい事例などでは、複数の弁護士に相談してみて、セカンドオピニオンもご参考になさった上で手続きを進めることも、有益な場合があると思います。「セカンドオピニオンが欲しいのですが」と前置きをした上でご相談されても良いと思います。関係資料の写しを用意して、ご相談されてみると良いでしょう。

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