新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース 質問:最近、利息制限法、グレーゾーン金利、などという言葉をよく耳にします。私も、消費者金融とかなり長い期間取引があるので、過払になる可能性が高いと思うのですが、過払金を取り返すにはどうしたらよいでしょうか?また、弁護士を入れずに自分で取り返すことはできますか? 2、まず、過払金とは、法的には「不当利得返還請求」です。不当利得とは、@法律上の原因がなくA一方が利得し、一方が損失を被っていることB利得と損失に因果関係があることが証明されることが必要になります。簡単に言えば、これらの条件が整えば法律上返還が認められます。条件が整っているか否かは、最終的には裁判所が判断、すなわち訴訟を提起しなければ認められません。この点、場合によっては、弁護士が交渉することで、訴訟手続をせずに過払金の返還を受けられることは確かにあります。これは、計算の結果や、取引の内容など、事実について消費者金融各社は争わないことがほとんどであること、裁判は時間とコストがかかり、話し合いでまとまった方がコスト削減になるという消費者金融の思惑が関係しています。ただし、これはあくまで「弁護士」が交渉に当たる結果です。弁護士は、交渉が決裂すれば直ちに裁判を提起する能力と可能性が高いという一般的な認識があることが大きな理由です。 3、これまでは、上記のように弁護士が「交渉」することによって過払い金の返還を受けるケースが多数ありました。しかし近時、交渉による返還を拒む会社も増えてきました。また、裁判手続においても、複雑な法的議論を仕掛けてくる業者も増え始めています。今年に入ってから、過払金返還に関して重要な判例が出ていることにも関連して、過払金の獲得が以前よりも多少難しくなっている印象を受けます。 4、過払い金返還に関するいくつかの問題点について、簡単に内容を紹介しますと、 (2)利息制限法の引きなおし計算に関して、重要な判例が最近出されました。従来、利息制限法に基づく計算は、過払金が発生した後に再度借入を行った場合、その借り入れは、過払金に充当する計算をしていました。つまり、取引の当初から最終までを一連のものとして計算するのです。新たな借入は債務者に対する過払金の弁済とみなされる、黙示の相殺合意があった、計算関係が複雑化することを避けるのが当事者の合理的意思解釈である、など、このような計算を行うことの根拠は様々に主張されてきました。最高裁はこの点に関して最近2つの判例を出しています。一つは、原則として一連のものとして計算することはできない、というものです。裁判所は、過払金返還(不当利得返還請求権)と貸金債権はあくまで別々の権利であるという前提を重視したといえます。しかし、この判決は、「特段の事情がある場合を除き」と断っています。この判決は、一見わたしたちにとって不利とも思えますが、この判決は、「特段の事情」がない限り、と限定しています。 そして、その数ヵ月後に出された裁判例では、限度額の範囲内で借入と返済を繰り返すいわゆる基本契約に基づく消費貸借契約の場合には、過払金が発生していた状態で新たな借入がなされた場合、過払金に充当することが基本契約の内容であると認められる、判示しました。これは、一般的な消費者金融との取引においては、先の最高裁判例に言うところの「貸主と借主との間に第一貸し付け過払金の充当に関する特約が存在するなどの特段の事情」が認められるのである、という判断であると考えることができるでしょう。しかし、消費者金融も新たな法的主張を行ってくることは充分に考えられます。まとめますと、過払金返還請求においては、現在その解釈、運用をめぐり一進一退の攻防が繰り広げられているといえます。 ここでご質問に戻りますが、市民が簡単に利用できるように実施されているいわゆる特定調停(これについても当事務所HPを御参照ください)では、過払金の取戻しまではやってくれません。また、過払金返還に関しては学術的問題点が多数含まれており、近時関連判例が多数出されているということは、消費者金融がその問題点を法廷に持ち込むケースが増えている、ということを示しています。したがって、過払金が出ている可能性が高いと考えられる場合でも、近時の消費者金融各社は簡単には支払わないケースが多いといえ、相談者一人で全てを解決することは非常に困難です。早めにこの問題に詳しい弁護士にご相談されることをお勧めいたします。 ≪参考判例(抄)≫ 1 平成19年2月13日 2 平成19年6月9日
No.659、2007/8/27 14:23 https://www.shinginza.com/qa-sarakin.htm
【民事・グレーゾーン金利・過払い請求の根拠について】
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回答:
1、近時の法改正の流れを受けて、利息制限法と出資法の間の制限利息の差、いわゆるグレーゾーン金利について、国民の関心が高まっています。利息制限法(100万円以下の貸金の利息は18パーセントを上限とする)に基づいて、これまでの取引を計算しなおすことにより、借金の残高が減ったり、場合によっては払いすぎ(過払)が発生するということもあり得るということも、市民の知るところとなっています。(利息制限法、過払金等についての詳しい解説は当事務所HPの別項でも紹介していますので参考にしてください)今回は、計算上過払金が発生していることを前提として、これを取り返すこと方法や難易について解説します。
(1)「みなし弁済」という問題があります。これは、利息制限法を上回る利息の支払がなされた場合でも、債務者がこれを任意に支払い、債権者が法定の書面を(いわゆる17条書面、18条書面)を交付した場合には有効な利息支払とみなされるというものです。裁判所はみなし弁済を制限的に解釈する傾向がありますので、これが認められるケースはほとんど無いのですが、一部の消費者金融は「みなし弁済が成立するとその当時は認識していた」という議論にすりかえることにより、過払金に対する利息(法定利率5%)を回避しようとするケースが見られます。
貸主と借主との間で基本契約が締結されていない場合において、〜中略〜その貸主と借主との間で、基本契約が締結されていたと同様の貸付が繰り返されており、第一の貸し付けの際にも第二の貸付が想定されていたとか、その貸主と借主との間に第一貸し付け過払金の充当に関する特約が存在するなどの特段の事情のない限り、第一貸し付け過払金は、第一の貸付に係る債務の各弁済が第2の貸付の前にされたものであるか否かにかかわらず、第二の貸付に係る債務には充当されないと解するのが相当である。
本件基本契約は、同契約に基づく各借入金債務に対する各弁済金のうち制限超過部分を元本に充当した結果、過払金が発生した場合には、上記過払金を、弁済当時存在するほかの借入金債務に充当することはもとより、弁済当時他の借入金債務が存在しないときでもその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含んでいるものと解するのが相当である。