新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.676、2007/10/5 13:09 https://www.shinginza.com/rikon/index.htm

【親族・家出と離婚・協議がまとまらない場合の親権の決定】

質問:私の妻が不倫をして、それが発覚して以来、家を飛び出して別居が続いています。私たちには3歳の子供がいるのですが、妻は子供を家において1人で出て行きました。このような婚姻関係を続けていても意味がないので、離婚をしようと考え、妻に提案したところ、妻は離婚には応じましたが、子供の親権は渡さないと主張してきました。妻は今まで子供の面倒は私任せで、子供を放置して家を出ているのに、いまさらになって子供の親権を主張することが許せません。このような状況で、離婚することは出来ますか?子供の親権をとることはできますか?

回答:
1.@あなた方ご夫婦のように離婚の合意が出来ている場合、離婚は、夫婦間の協議で出来ることになっていますが(民法763条)、子供がいる場合には、子供の親権者、具体的監護者を誰にするか決める必要があります(民法766条、819条1項)。親権とは両親が精神的、肉体的に未成熟な未成年者の子を社会人として生活できるよう成人になるまで監護教育し、子の財産関係を管理する権利義務を言います。一般社会生活の基本は、個々の人間が人間らしく個人の尊厳を持って生きていく事が大前提であり社会の最終目標ですから、そのためには他から影響を受けやすく未成熟な期間における両親の教育、監護、子の財産管理、身分上の代理は子の成長にとり必要不可欠なものであり、親権は両親にとって道義的、社会的責任を伴う権利義務の総体と位置づける事ができます。又子の立場から見ると精神的、経済的に教育を受け人間らしく生きる権利(憲法13条、26条、生来的基本権)を内包する権利義務という事ができます。

以上のような内容から、親権は、親である以上夫婦双方が持っており協議し共同して行使することになっています(法818条3項)。通常夫婦、子とも同居しているので親権行使に何も不都合がありません。しかし、離婚し別々に生活する事になった場合には両親のどちらか一方に決めなければなりません。夫婦が他人となり別居しているのですから協議による共同行使は難しいですし、子の教育方針の合意も一致せず教育上子の利益につながらないからです。子供の親権を両親のどちらにするかについては、原則として、夫婦間の協議で決めることになりますが、協議が出来ない場合には、家庭裁判所が審判で決めることになります(法819条1項、5項 家事審判法9条 乙類4号、7号)。両親は、当事者として自分の子の教育監護、財産管理、子の将来ににつき事情を最も熟知しているので双方の協議に任せたのです。協議が出来ない時は、訴訟ではなく、調停、審判による事になります。権利の争いは基本的に訴訟で行うのが原則ですが、家事審判という非訟事件手続に任せています。

Aここで、聞きなれない家事審判についてご説明いたします。家事審判とは、個別的に定められた家庭に関する事件(本件親権者の決定等)について訴訟手続である民事訴訟法ではなく非訟事件手続である家事審判法に基づき家庭裁判所が判断する審判を言います。私的な権利、法律関係の争いは訴訟事件といい、基本的に地方(家庭)裁判所で民法のような実体法に基づき民事訴訟手続により行われます。民事訴訟とは、国民の私的な紛争について裁判所が公的に判決等により判断を行い強制的に解決するものですから、当事者にとり適正(より真実にあっていること)公平で、迅速性、費用のかからないものでなければなりません(訴訟経済)。従って、訴訟事件は、原告被告を相対立する当事者と捉え、公正を担保するため公開でなければいけませんし、当事者の公平を保つため主張、立証、証拠収集について当事者の責任とし(当事者主義、弁論主義といいます。)裁判所は仮に真実、証拠を発見、気づいたとしても勝手に当事者の主張を変更し、証拠を提出、収集できないことになっているのです。更に紛争の公的早期解決のため迅速に、費用がかからないようにその進行について積極的に訴訟指揮が行われます。しかし、事件の内容によってはこのような対立構造になじまない紛争があります。権利の存否(事実関係の有無、当事者の勝ち負け)が問題となる紛争ではなく、離婚時に親権者を定めたり、親族間の扶養義務を定めたり、借地契約の条件変更協議など、当事者の利害をどのように調整すべきか問題となるような紛争です。すなわち当事者に任せておいては事件の真の解決につながるか問題があり、国家、裁判所が後見的、裁量的判断を求められる事件があります。これが非訟事件です。非訟事件については、基本的には非訟事件手続法があり、個々の非訟事件について個別的に法令を定めて事件の性質に合った非訟手続を用意しています。家事審判とは非訟事件の中の、家庭に関する事件をさし、家事審判法はその手続を規定しているのです。

非訟事件の基本構造は、事件の性質上合理的解決のため裁判所が裁量権を有し後見的に介入し民事行政的作用の面があり、攻撃し相対立する当事者という形は取っていません。当事者の意見にとらわれず合理的解決を目指しているので事件の内容を公開せず(非公開、非訟事件手続法13条)、国家が後見的立場から主張、証拠、収集について介入し自ら証拠収集ができ、主張に対するアドヴァイスができる事になっています(職権探知主義といいます。非訟事件手続法11条、当事者主義に対立する概念です。)。訴訟の指揮、進行も迅速性を最優先にせず、訴訟経済もさほど強調されません。

B 本件親権者の決定は、双方どちらの両親が、親権を取得できるかどうかという勝ち負けが大切ではなく、人間として生きていく子の生まれながらの利益をどのようにして確保実現していくかという問題であり、この点について両親とも争いはないはずです。従って、離婚を合意し相争っている夫婦の主張に拘束される事なく、証拠等を収集し国家が意思表示できない子の正当な利益を考え後見的立場から判断を下す事になるわけです。そういう意味で、本件は家事審判事項になっているのです(家事審判法9条乙類4号、7号)。

C尚、非訟事件は、国民の公開裁判を受ける権利(憲法32、82条)の例外的位置にありますから、どのような範囲で認められるか個々の事件を個別的に検討、注意する必要があります。

D具体的手続きにおける判断基準ですが、家庭裁判所は、以上のように子供の福祉の観点から、生活環境、養育環境、当事者の意思、能力、収入等経済力など総合的に判断して、親権者を決定することになります。重要な要素としては、子供を養育する適性、意思、能力にあると考えられます。収入については、働く意思さえあれば、相手方からの養育費でも補充されうるので決定的な要素とはなりません。また、子供の年齢が小さく、子供の意思能力が不明な場合は、子供の気持ちは考慮されません。ただ、実務の実際の運用としては、特段の事情がない場合には、5歳未満の幼児のときは、母親が親権者として認められることになるでしょう。

E 手続きとしては、当事者間の協議が出来ない場合には、一般的に、先ず家庭裁判所に調停を申し立てます。家庭裁判所において、調停委員2名を間に入れて、話し合いますが、その際、家裁調査官が入り、調査がなされることもあります(家事審判法22条)。調停でも話がまとまらず、不調になった場合には、調停申し立ての時に家庭裁判所の審判を申し立てたことになり、自動的に審判手続きに移行します(家事審判法26条1項)。この場合、職権探知主義の立場から家裁調査官の調査がなされ(裁判所法61条の2)、参与の専門的意見を聴取し(家事審判法10条)各当事者の主張、立証を考慮した上で、親権者を決定する審判がなされます。不服があれば高等裁判所に即時抗告して争います(家事審判法14条、家事審判規則19条)。親権者を指定する審判が確定すると裁判所から子の本籍地へ通知されて離婚の届けはそれに従い離婚届が受け付けられます(家事審判規則71条)。但し、家事審判で親権者を決めても離婚届の時離婚自体を相手方が拒否すると、届出が出来ず結果として離婚は成立しません。その様な場合は人事訴訟法により再度離婚訴訟により離婚を求める事になりますから実効性の点で少々疑問もありますが、後の離婚訴訟で親権決定の資料として審判の内容は考慮される事になりますし、訴訟まで希望しないような場合には有効です。又家庭裁判所の調査により親権決定のアドバイスに従い一度調停の段階に戻し離婚の合意に代わる審判がありますので(家事審判法 24条)当事者が裁判所の意向に従うような場合は訴訟より迅速に解決出来ることになるでしょう。

2.本件を具体的に検討しますと、@本件相談者の場合、子供が3歳であることから、一般的には母親が親権者となることが多いと思います。しかし、母親は今まで子供の面倒を見ておりませんし、養育につき相談者に任せきりで、子供を放置して家を出ているとの事情から、母親に子供の養育監護の適性が欠けており、能力が欠如しているとの判断がなされる可能性もあります。したがって、この点をしっかり主張立証する必要があります。毎日、育児日記をつけるなどして、父親が養育している実績を積み、これを後日確認できる形で資料として残しておくことが必要でしょう。なお、奥さんが不倫をしたこと自体については、離婚事由、慰謝料の問題は生じますが、子供の親権との関係ではさほど関係がないと考えられています。

A以上のような本件の特殊性から、具体的にどのように手続きを進めるべきか考えますと、まず家庭裁判所に調停を申し立てて、相手方が子供の面倒をみず相談者に任せきりで、子供を放置して家を出ているとの事情、そして相手方には子供の養育の適性が欠け、能力が欠如していているので申立人の方が親権者として適確であると書面にて主張し、交渉することになります。そして、調停委員に対し申立人の主張を納得していただき、調停委員から相手方に対しる説得を要請します。相手方が譲歩を示さない場合には、相手方が不倫行為をした事実を主張し、有責配偶者からの離婚請求は基本的にできないこと、当方は慰謝料を請求準備があることを伝え、申立人に親権を譲るのであれば、離婚に応じ、慰謝料の請求も放棄するとの譲歩案を提示して見ましょう。相手方に強い離婚の意志、要求がある様な場合は和解が成立するかもしれません。

B このような方法でも相手方が譲歩しないような場合には、調停不調となり当然審判に移行しますが、前述の通り、子供が3歳の場合、母親に有利な審判がなされる傾向にあり、高いリスクがあることは否定できません。親権獲得か相手方との離婚を優先するか難しい問題となります。中間的な和解案としては、婚姻関係は継続させつつ、別居生活をそのままにして、交互に子供を養育監護する旨の和解案を提案する暫定的な措置も考えられます。

3.調停手続きは、本人でも進めることはできますが、上記のような交渉を有利に進めるためには、調停委員を説得し、相手方より自分の方が子供に対する熱意があることを認めてもらい、信頼してもらう必要がありますので、専門家である弁護士にも一度、相談をされることをお勧めします。

≪参考条文≫

民法
(協議上の離婚)
第763条 夫婦は、その協議で、離婚をすることができる。
(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)
第766条 父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者その他監護について必要な事項は、その協議で定める。協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、これを定める。
《改正》平16法147
2 子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の監護をすべき者を変更し、その他監護について相当な処分を命ずることができる。
3 前2項の規定によっては、監護の範囲外では、父母の権利義務に変更を生じない。
(離婚又は認知の場合の親権者)
第八百十九条  父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。
2  裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。
5  第一項、第三項又は前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。
6  子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる。

家事審判法
第一章 総則
第一条  この法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等を基本として、家庭の平和と健全な親族共同生活の維持を図ることを目的とする。
第二条  家庭裁判所において、この法律に定める事項を取り扱う裁判官は、これを家事審判官とする。
第三条  審判は、特別の定がある場合を除いては、家事審判官が、参与員を立ち合わせ、又はその意見を聴いて、これを行う。但し、家庭裁判所は、相当と認めるときは、家事審判官だけで審判を行うことができる。
○2  調停は、家事審判官及び家事調停委員をもつて組織する調停委員会がこれを行う。前項ただし書の規定は、調停にこれを準用する。
○3  家庭裁判所は、当事者の申立があるときは、前項後段の規定にかかわらず、調停委員会で調停を行わなければならない。
第四条  裁判所職員の除斥及び忌避に関する民事訴訟法 (平成八年法律第百九号)の規定で、裁判官に関するものは、家事審判官及び参与員に、裁判所書記官に関するものは、家庭裁判所の裁判所書記官にこれを準用する。
第五条  家庭裁判所は、最高裁判所の定めるところにより、合議体の構成員に命じて終局審判以外の審判を行わせることができる。
◯2  前項の規定により合議体の構成員が行うこととされる審判は、判事補が単独ですることができる。
第六条  削除
第七条  特別の定めがある場合を除いて、審判及び調停に関しては、その性質に反しない限り、非訟事件手続法 (明治三十一年法律第十四号)第一編 の規定を準用する。ただし、同法第十五条 の規定は、この限りでない。
第八条  この法律に定めるものの外、審判又は調停に関し必要な事項は、最高裁判所がこれを定める。
第9条 家庭裁判所は、次に掲げる事項について審判を行う。
甲類
乙類
4.民法第766条第1項又は第2項(これらの規定を同法第749条、第771条及び第788条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護者の指定その他子の監護に関する処分
7.民法第819条第5項又は第6項(これらの規定を同法第749条において準用する場合を含む。)の規定による親権者の指定又は変更
第十条  参与員の員数は、各事件について一人以上とする。
○2  参与員は、家庭裁判所が毎年前もつて選任する者の中から、家庭裁判所が各事件についてこれを指定する。
○3  前項の規定により選任される者の資格、員数その他同項の選任に関し必要な事項は、最高裁判所がこれを定める。
第十三条  審判は、これを受ける者に告知することによつてその効力を生ずる。但し、即時抗告をすることのできる審判は、確定しなければその効力を生じない。
第十四条  審判に対しては、最高裁判所の定めるところにより、即時抗告のみをすることができる。その期間は、これを二週間とする。
第三章 調停
第一節 通則
第十七条  家庭裁判所は、人事に関する訴訟事件その他一般に家庭に関する事件について調停を行う。但し、第九条第一項甲類に規定する審判事件については、この限りでない。
第十八条  前条の規定により調停を行うことができる事件について訴を提起しようとする者は、まず家庭裁判所に調停の申立をしなければならない。
○2  前項の事件について調停の申立をすることなく訴を提起した場合には、裁判所は、その事件を家庭裁判所の調停に付しなければならない。但し、裁判所が事件を調停に付することを適当でないと認めるときは、この限りでない。
第十九条  第十七条の規定により調停を行うことができる事件に係る訴訟が係属している場合には、裁判所は、何時でも、職権でその事件を家庭裁判所の調停に付することができる。
○2  前項の規定により事件を調停に付した場合において、調停が成立し又は第二十三条若しくは第二十四条第一項の規定による審判が確定したときは、訴の取下があつたものとみなす。
第二十条  第十二条の規定は、調停手続にこれを準用する。
第二十一条  調停において当事者間に合意が成立し、これを調書に記載したときは、調停が成立したものとし、その記載は、確定判決と同一の効力を有する。但し、第九条第一項乙類に掲げる事項については、確定した審判と同一の効力を有する。
○2  前項の規定は、第二十三条に掲げる事件については、これを適用しない。
第二十二条  調停委員会の組織は、家事審判官一人及び家事調停委員二人以上とする。
○2  調停委員会を組織する家事調停委員は、家庭裁判所が各事件について指定する。
第二十四条  家庭裁判所は、調停委員会の調停が成立しない場合において相当と認めるときは、当該調停委員会を組織する家事調停委員の意見を聴き、当事者双方のため衡平に考慮し、一切の事情を見て、職権で、当事者双方の申立ての趣旨に反しない限度で、事件の解決のため離婚、離縁その他必要な審判をすることができる。この審判においては、金銭の支払その他財産上の給付を命ずることができる。
第二十五条  第二十三条又は前条第一項の規定による審判に対しては、最高裁判所の定めるところにより、家庭裁判所に対し異議の申立をすることができる。その期間は、これを二週間とする。
○2  前項の期間内に異議の申立があつたときは、同項の審判は、その効力を失う。
○3  第一項の期間内に異議の申立がないときは、同項の審判は、確定判決と同一の効力を有する。
第二十五条の二  家庭裁判所は、調停又は第二十四条第一項の規定による審判で定められた義務の履行について、第十五条の五から第十五条の七までの規定の例により、これらの規定に掲げる措置をすることができる。
第二十六条  第九条第一項乙類に規定する審判事件について調停が成立しない場合には、調停の申立の時に、審判の申立があつたものとみなす。
○2  第十七条の規定により調停を行うことができる事件について調停が成立せず、且つ、その事件について第二十三条若しくは第二十四条第一項の規定による審判をせず、又は第二十五条第二項の規定により審判が効力を失つた場合において、当事者がその旨の通知を受けた日から二週間以内に訴を提起したときは、調停の申立の時に、その訴の提起があつたものとみなす。

非訟事件手続法
(明治三十一年六月二十一日法律第十四号)
 第一編 総則(第一条―第三十三条ノ三)
 第二編 民事非訟事件
  第一章 法人ニ関スル事件(第三十四条―第七十一条)
  第二章 信託ニ関スル事件(第七十一条ノ二―第七十一条ノ八)
  第三章 裁判上ノ代位ニ関スル事件(第七十二条―第七十九条)
  第四章 保存、供託、保管及ビ鑑定ニ関スル事件(第八十条―第百十六条)
  第五章 法人及ビ夫婦財産契約ノ登記(第百十七条―第百四十条)
 第三編 公示催告事件
  第一章 通則(第百四十一条―第百五十五条)
  第二章 有価証券無効宣言公示催告事件(第百五十六条―第百六十条)
 第四編 過料事件(第百六十一条―第百六十四条)
  第一編 総則
第一条  裁判所ノ管轄ニ属スル非訟事件ニ付テハ本法其他ノ法令ニ別段ノ定アル場合ヲ除ク外本編ノ規定ヲ適用ス
第二条  裁判所ノ土地ノ管轄カ住所ニ依リテ定マル場合ニ於テ日本ニ住所ナキトキ又ハ日本ノ住所ノ知レサルトキハ居所地ノ裁判所ヲ以テ管轄裁判所トス
○2 居所ナキトキ又ハ居所ノ知レサルトキハ最後ノ住所地ノ裁判所ヲ以テ管轄裁判所トス
○3 最後ノ住所ナキトキ又ハ其住所ノ知レサルトキハ財産ノ所在地又ハ最高裁判所ノ指定シタル地ノ裁判所ヲ以テ管轄裁判所トス相続開始地ノ裁判所カ管轄裁判所ナル場合ニ於テ相続カ外国ニ於テ開始シタルトキ亦同シ
第三条  数個ノ管轄裁判所アル場合ニ於テハ最初事件ノ申立ヲ受ケタル裁判所其事件ヲ管轄ス但其裁判所ハ申立ニ因リ又ハ職権ヲ以テ適当ト認ムル他ノ管轄裁判所ニ事件ヲ移送スルコトヲ得
第四条  管轄裁判所ノ指定ハ数個ノ裁判所ノ土地ノ管轄ニ付キ疑アルトキ之ヲ為ス
○2 管轄裁判所ノ指定ハ関係アル裁判所ニ共通スル直近上級裁判所申立ニ因リ決定ヲ以テ之ヲ為ス此決定ニ対シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第五条  民事訴訟ニ関スル法令ノ規定中裁判所職員ノ除斥ニ関スル規定ハ非訟事件ニ之ヲ準用ス
第六条  事件ノ関係人ハ訴訟能力者ヲシテ代理セシムルコトヲ得但自身出頭ヲ命セラレタルトキハ此限ニ在ラス
○2 裁判所ハ弁護士ニ非スシテ代理ヲ営業トスル者ニ退斥ヲ命スルコトヲ得此命令ニ対シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第七条  前条第一項ノ規定ニ依リテ選任シタル代理人ノ権限ハ書面ヲ以テ之ヲ証スルコトヲ要ス
○2 前項ノ書面ガ私文書ナルトキハ裁判所ハ当該公務員ノ認証ヲ受クベキ旨ヲ代理人ニ命ズルコトヲ得此命令ニ対シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ズ
○3 前二項ノ規定ハ事件ノ関係人ガ口頭ヲ以テ代理人ヲ選任シ裁判所書記官ガ調書ニ其陳述ヲ記載シタル場合ニハ之ヲ適用セズ
第八条  申立及ビ陳述ハ別段ノ定アル場合ヲ除ク外書面又ハ口頭ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得
○2 口頭ヲ以テ申立又ハ陳述ヲ為スニハ裁判所書記官ノ面前ニ於テ之ヲ為スベシ
○3 前項ノ場合ニ於テハ裁判所書記官調書ヲ作リ之ニ署名捺印スベシ但署名捺印ニ代ヘテ記名捺印スルコトヲ得
第九条  申立ニハ左ノ事項ヲ記載シ申立人又ハ代理人之ニ署名捺印スベシ但署名捺印ニ代ヘテ記名捺印スルコトヲ得
一  申立人ノ氏名、住所
二  代理人ニ依リテ申立ヲ為ストキハ其氏名、住所
三  申立ノ趣旨及ヒ其原因タル事実
四  年月日
五  裁判所ノ表示
○2 証拠書類アルトキハ其原本又ハ謄本ヲ添附スヘシ
第十条  民事訴訟ニ関スル法令ノ規定中期日、期間、疎明ノ方法、人証及ビ鑑定ニ関スル規定ハ非訟事件ニ之ヲ準用ス
第十一条  裁判所ハ職権ヲ以テ事実ノ探知及ヒ必要ト認ムル証拠調ヲ為スヘシ
第十二条  事実ノ探知、呼出、告知及ヒ裁判ノ執行ニ関スル行為ハ之ヲ嘱託スルコトヲ得
第十三条  審問ハ之ヲ公行セス但裁判所ハ相当ト認ムル者ニ傍聴ヲ許スコトヲ得
第十四条  証人又ハ鑑定人ノ訊問ニ付テハ調書ヲ作ラシメ其他ノ審問ニ付テハ必要ト認ムル場合ニ限リ之ヲ作ラシムヘシ
第十五条  検察官ハ事件ニ付キ意見ヲ述ヘ審問ヲ為ス場合ニ於テハ之ニ立会フコトヲ得
○2 事件及ヒ審問期日ハ検察官ニ之ヲ通知スヘシ
第十六条  裁判所其他ノ官庁、検察官及ヒ公吏ハ其職務上検察官ノ請求ニ因リテ裁判ヲ為スヘキ場合カ生シタルコトヲ知リタルトキハ之ヲ管轄裁判所ニ対応スル検察庁ノ検察官ニ通知スヘシ
第十七条  裁判ハ決定ヲ以テ之ヲ為ス
○2 裁判ノ原本ニハ裁判官署名捺印スヘシ但申立書又ハ調書ニ裁判ヲ記載シ裁判官之ニ署名捺印シテ原本ニ代フルコトヲ得
○3 裁判ノ正本及ヒ謄本ニハ書記署名捺印シ且正本ニハ裁判所ノ印ヲ押捺スヘシ
○4 前二項ノ署名捺印ハ記名捺印ヲ以テ之ニ代フルコトヲ得
第十八条  裁判ハ之ヲ受クル者ニ告知スルニ因リテ其効力ヲ生ス
○2 裁判ノ告知ハ裁判所ノ相当ト認ムル方法ニ依リテ之ヲ為ス
○3 告知ノ方法、場所及ヒ年月日ハ之ヲ裁判ノ原本ニ記入スヘシ
第十九条  裁判所ハ裁判ヲ為シタル後其裁判ヲ不当ト認ムルトキハ之ヲ取消シ又ハ変更スルコトヲ得
○2 申立ニ因リテノミ裁判ヲ為スヘキ場合ニ於テ申立ヲ却下シタル裁判ハ申立ニ因ルニ非サレハ之ヲ取消シ又ハ変更スルコトヲ得ス
○3 即時抗告ヲ以テ不服ヲ申立ツルコトヲ得ル裁判ハ之ヲ取消シ又ハ変更スルコトヲ得ス
第二十条  裁判ニ因リテ権利ヲ害セラレタリトスル者ハ其裁判ニ対シテ抗告ヲ為スコトヲ得
○2 申立ニ因リテノミ裁判ヲ為スヘキ場合ニ於テ申立ヲ却下シタル裁判ニ対シテハ申立人ニ限リ抗告ヲ為スコトヲ得
第二十一条  抗告ハ特ニ定メタル場合ヲ除ク外執行停止ノ効力ヲ有セス
第二十二条  当事者カ其責ニ帰スヘカラサル事由ニ因リ即時抗告ノ期間ヲ遵守スルコト能ハサル場合ニ於テハ其事由ノ止ミタル後一週間内ニ限リ懈怠シタル行為ノ追完ヲ為スコトヲ得外国ニ在ル当事者ニ付テハ此期間ハ之ヲ二月トス
第二十三条  抗告裁判所ノ裁判ニハ理由ヲ附スルコトヲ要ス
第二十四条  削除
第二十五条  抗告ニハ特ニ定メタルモノヲ除ク外民事訴訟ニ関スル法令ノ規定中抗告ニ関スル規定ヲ準用ス
第二十六条  裁判前ノ手続及ヒ裁判ノ告知ノ費用ハ特ニ其負担者ヲ定メタル場合ヲ除ク外事件ノ申立人ノ負担トス但検察官又ハ法務大臣カ申立ヲ為シタル場合ニ於テハ国庫ノ負担トス
第二十七条  裁判所ハ前条ノ費用ニ付キ裁判ヲ為スコトヲ必要ト認ムルトキハ其額ヲ確定シテ事件ノ裁判ト共ニ之ヲ為スヘシ
第二十八条  裁判所ハ特別ノ事情アルトキハ本法其他ノ法令ノ規定ニ依リテ費用ヲ負担スヘキ者ニ非サル関係人ニ費用ノ全部又ハ一部ノ負担ヲ命スルコトヲ得
第二十九条  民事訴訟法 (平成八年法律第百九号)第六十五条 ノ規定ハ共同ニテ費用ヲ負担スヘキ者数人アル場合ニ之ヲ準用ス
第三十条  費用ノ裁判ニ対シテハ其負担ヲ命セラレタル者ニ限リ不服ヲ申立ツルコトヲ得但独立シテ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第三十一条  費用ノ債権者ハ費用ノ裁判ニ基キテ強制執行ヲ為スコトヲ得
○2 民事執行法 (昭和五十四年法律第四号)其他強制執行ノ手続ニ関スル法令ノ規定ハ前項ノ強制執行ニ之ヲ準用ス但執行ヲ為ス前裁判ヲ送達スルコトヲ要セス
○3 費用ノ裁判ニ対スル抗告アリタルトキハ民事訴訟法第三百三十四条第二項 ノ規定ヲ準用ス
第三十二条  職権ヲ以テ為ス探知、証拠調、呼出、告知其他必要ナル処分ノ費用ハ国庫ニ於テ之ヲ立替フヘシ
第三十三条  本編ニ於ケル申立トハ申立、申請及ヒ申述ヲ謂フ
第三十三条ノ二  申立ノ内当該申立ニ関スル本法其他ノ法令ノ規定ニ依リ書面等(書面、書類、文書、謄本、抄本、正本、副本、複本其他文字、図形等人ノ知覚ヲ以テ認識スルコトヲ得ル情報ガ記載セラレタル紙其他ノ有体物ヲ謂フ以下本条ニ於テ同ジ)ヲ以テ為スモノトセラレタルモノニシテ最高裁判所ノ定ムル裁判所ニ対シテ為スモノニ付テハ当該法令ノ規定ニ拘ラズ最高裁判所規則ニ定ムルトコロニ依リ電子情報処理組織(裁判所ノ使用ニ係ル電子計算機(入出力装置ヲ含ム以下本条ニ於テ同ジ)ト申立ヲ為ス者ノ使用ニ係ル電子計算機トヲ電気通信回線ニテ接続シタル電子情報処理組織ヲ謂フ)ヲ用ヒテ為スコトヲ得
○2 前項ノ規定ニ依リ為サレタル申立ニ付テハ当該申立ヲ書面等ヲ以テ為スモノトシテ規定シタル申立ニ関スル法令ノ規定ニ規定シタル書面等ヲ以テ為サレタルモノト看做シテ当該申立ニ関スル法令ノ規定ヲ適用ス
○3 第一項ノ規定ニ依リ為サレタル申立ハ同項ノ裁判所ノ使用ニ係ル電子計算機ニ備ヘラレタルファイルヘノ記録ガ為サレタル時ニ当該裁判所ニ到達シタルモノト看做ス
○4 第一項ノ場合ニ於テ当該申立ニ関スル本法其他ノ法令ノ規定ニ依リ署名等(署名、記名、押印其他氏名又ハ名称ヲ書面等ニ記載スルコトヲ謂フ以下本項ニ於テ同ジ)ヲ為スコトトセラレタルモノニ付テハ当該申立ヲ為ス者ハ当該法令ノ規定ニ拘ラズ当該署名等ニ代ヘテ最高裁判所規則ニ定ムルトコロニ依リ氏名又ハ名称ヲ明ラカニスル措置ヲ講ズルコトヲ要ス
○5 第一項ノ規定ニ依リ為サレタル申立ガ第三項ニ規定スルファイルニ記録セラレタルトキハ第一項ノ裁判所ハ当該ファイルニ記録セラレタル情報ノ内容ヲ書面ニ出力スルコトヲ要ス
○6 第一項ノ規定ニ依リ為サレタル申立ニ係ル本法其他ノ法令ノ規定ニ依ル事件ノ記録ノ閲覧若クハ謄写又ハ其正本、謄本若クハ抄本ノ交付ハ前項ノ書面ヲ以テ之ヲ為スモノトス当該申立ニ係ル書類ノ送達又ハ送付亦同ジ
第三十三条ノ三  外国人ニ関スル非訟事件手続ニシテ条約ニ因リ特ニ定ムルコトヲ要スルモノハ法務大臣之ヲ定ム

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