新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.711、2007/11/29 11:34 https://www.shinginza.com/qa-sarakin.htm

【民事・債務整理・ブラックリスト・掲載をとめることが出来るか】

質問:消費者金融から借り入れをしています。ブラックリストというものがあると聞きますが、それはどのようなものなのでしょうか?ブラックリストに名前が載ってしまうと、どのような制裁があるのですか?

回答:
1. まず、ブラックリストというものは法的には存在しません。俗にブラックリストと呼んでいるものは、正確には、業者からお金を借りたり、クレジットを組んだときに、長期にわたって返済を滞納したり、返済期間が多々遅れたり、また、債務整理などの法的措置をした場合に、それらの事故情報を金融機関同士が「この人は要注意人物なので、融資をしないように。」という確認をとれるように、加盟している信用情報機関にリストアップされたものを指します。

2.主な信用情報機関を挙げてみます。
@ 国銀行協会信用情報センター(全国銀行協会、銀行系)  http://www.zenginkyo.or.jp/personal_credit/index.html
A 株式会社シー・アイ・シー(社団法人日本クレジット産業協会、クレジット系)http://www.cic.co.jp
B 株式会社日本情報センター(全国信用情報センター連合会、消費者金融系)http://www.fcbj.jp/
C これら3つの機関は、正確な信用情報を共有すべく、相互に情報を融通し合っています。CRedit Information Networkの略で「クリン」と呼ばれています。ですから、いわゆるブラックリストとは、この「クリン」にリストアップされた信用情報のことを指すと思われます。

3.大抵の金融機関・貸金業者・クレジット会社、信販会社・リース会社は上記のいずれかに加盟しています。ただし、違法な無登録業者(やみ金業者)や個人の金貸しなどはこれに加盟していないので、ブラックリストを閲覧することはできません。

4. どのような場合にリストに載るかということについては、具体的には決められていませんが、一般的には、借り入れした時期、借入残高、長期延滞と、債務整理(弁護士介入による任意整理、調停,民事再生、自己破産など)とされています。延滞していなくても利息制限法引きなおしによる過払い金返還請求などでも載ることはあるようです。長期延滞については、一般的に3カ月以上滞納した場合は「延滞」という事故情報が、登録されます。このような事故が生じたときに、ブラックリストに情報が載り、それを金融機関が照会する、ということは、クレジットカードなどを契約する際の借入申込書の裏面などに「弊社があなたの個人情報を信用情報機関に登録・紹介することを許可する」などと小さく書かれており、申し込みの際に承諾をしていることになっています。

5.このようなブラック情報の登録について、独占禁止法違反やプライバシー侵害を理由に差止請求の裁判がありましたが、裁判所は「個人信用情報登録制度は、その趣旨・目的、情報の登録・利用の手続や利用者の範囲、プライバシーの保護に対する配慮等の点からみて、公共性・公益性を有し、合理性のある制度であると認めるのが相当である」と判断し、差し止めを認めませんでした(東京高等裁判所平成10年2月26日判決)。無担保で個人に対して融資を行う業者にも自己防衛の必要がありますから、借り入れを希望する場合に、信用情報機関への登録が条件となっていても、これを拒否することは事実上不可能となっています。

6. 以前に延滞をしてしまった経験などがあり、ご自身がブラックリストに登録されているか気になるようでしたら、自分で最寄の情報センターへ行き、身分証明書と印鑑を持参すれば、自分の情報の開示を求めることができます。開示請求方法の詳細については情報機関各社に問い合わせみるとよいでしょう。登録情報に関して事実に反するなど不服がある場合には、申し出ることもできます。登録情報の本人からの照会や、登録情報の訂正の申し出に応じるということは、個人情報保護法により義務化されています(個人情報保護法25条・26条)。

7.では、一度ブラックリストに登録されてしまうと、どのような制裁があるのでしょうか。他社からの借入残高の合計が収入に比べて過大になっているような場合は、新たな融資を受けるのは困難でしょうし、事故情報が載っている間はクレジットカードを作ろうとしても、カード会社の審査が通らず、借り入れをしたり、家や車を購入する際や、子供の教育ローンを組んだりしにくくなります。

8.以前はブラックリストに残っている場合に借り入れをするには非一般金融業者以外方法がないと言われていましたが、最近では、ブラック情報を照会しない、過去のことは問わない、といった業者もあるようです。(但しこの場合は違法な利息を請求しないかどうか良く確認する必要はあると思います。)

9.では、完済すれば直ちにブラックリストの情報は消えるのか、というと、そうではなく、個人信用情報には、「延滞しました」「延滞したお金を払いました」「完済しました」という情報が記録されますので、お金を払っても、しばらくは延滞したという記録は消せません。長期延滞の場合は約5年、調停は任意整理、裁判和解の場合も約5年、自己破産や個人再生手続きは約7〜10年、事故情報が残ります。

10.ブラックリストの情報について、どうしても納得が出来ない、訂正してもらいたいなどの事情がある場合は、御自分で信用情報を取得した上で、最寄の弁護士事務所に御相談になってみると良いでしょう。

<参考条文>

個人情報保護法 
第25条 個人情報取扱事業者は、本人から、当該本人が識別される保有個人データの開示(当該本人が識別される保有個人データが存在しないときにその旨を知らせることを含む。以下同じ。)を求められたときは、本人に対し、政令で定める方法により、遅滞なく、当該保有個人データを開示しなければならない。ただし、開示することにより次の各号のいずれかに該当する場合は、その全部又は一部を開示しないことができる。
 一 本人又は第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがある場合
 二 当該個人情報取扱事業者の業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合
 三 他の法令に違反することとなる場合
第26条 個人情報取扱事業者は、本人から、当該本人が識別される保有個人データの内容が事実でないという理由によって当該保有個人データの内容の訂正、追加又は削除(以下この条において「訂正等」という。)を求められた場合には、その内容の訂正等に関して他の法令の規定により特別の手続が定められている場合を除き、利用目的の達成に必要な範囲内において、遅滞なく必要な調査を行い、その結果に基づき、当該保有個人データの内容の訂正等を行わなければならない。

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