私道の通行トラブル

民事|自動車で他人名義の私道を通ることができるか|囲繞地通行権、通行地役権及び通行自由権|最高裁平成9年12月18日判決

目次

  1. 質問
  2. 回答
  3. 解説
  4. 関連事例集
  5. 参考条文・判例

質問:

私の自宅は、一応、公道に接続した土地に位置するのですが、その公道へと至る道が階段状になっており、自動車で通行することができません。そのため、これまで30年以上もの間、公道と反対側の自宅前の私道を、その所有者の方の同意を得て、自動車で通行するために使わせてもらっていました。ところが、最近、その方が引っ越してしまい、私道部分も処分したようで、新たな私道の所有者の方からは、突然、私道を今後一切使用しないように、もし私道を使いたいのであれば、年間の使用料として300万円を支払わないように、と言われてしまいました。

私たち家族は、私道を使ってはいけないのでしょうか。私道の前の所有者の方から同意を得ていますし、その同意書も取り交わしています。私たち家族が私道を使ったとしても、新たな私道の所有者の方には、特段の支障もないので、納得ができません。私には、介護が必要な母親がおり、自動車を使えないとなると、母親を病院等に連れて行くことができなくなってしまうので、大変困っています。

回答:

1 私道を通行する権利、私道通行権としては、囲繞地通行権、通行地役権及び通行自由権の3つが挙げられます。

まず私道部分が位置指定道路(建築基準法42条1項5号)やみなし道路(同条2項)である場合とそれ以外の道路状の通路である場合とに分けて検討する必要があります。前者の場合は通行自由権があるか、後者の場合は囲繞地通行権あるいは通行地役権の問題となります。

2 後者の場合の、囲繞地通行権(民法210条)、については、相談者様のご自宅がある土地が公道にも面していることからいわゆる「袋地」には当たらない以上、相談者様が囲繞地通行権に基づいて私道を通行することはできないでしょう。

次に、通行地役権(同法280条)については、相談者様は、私道の前所有者の同意を得て、私道を自動車で通行していたということですので、私道の前所有者との間で、通行地役権の設定契約が締結されていたと考えることができます。ただし、この通行地役権を「第三者」(同法177条)に対抗(主張)するためには、その設定登記が必要となります。

この点、私道の新たな所有者は「第三者」に当たるのが原則ですが、判例法理に照らせば、私道の所有権が譲渡された際に、私道が相談者様によって継続的に通路として使用されていることが、その位置、形状、構造等の物理的状況から客観的に明らかであり、かつ、新たな私道の所有者がそのことを認識していたか又は認識することが可能であったのならば、新たな私道の所有者は「第三者」に当たらないこととなります。そのため、この場合は、相談者様は、新たな私道の所有者に対し、私道の前所有権との間で設定された通行地役権を対抗(主張)して、 私道を自動車で通行することができます。

3 最後に、通行自由権については、私道が位置指定道路(建築基準法42条1項5号)やみなし道路(同条2項)である場合は、判例上、その「道路を通行することについて日常生活上不可欠の利益を有する者は、右道路の通行をその敷地の所有者によって妨害され、又は妨害されるおそれがあるときは、敷地所有者が右通行を受忍することによって通行者の通行利益を上回る著しい損害を被るなどの特段の事情のない限り、敷地所有者に対して右妨害行為の排除及び将来の妨害行為の禁止を求める権利(人格権的権利)を有するものというべきである」とされています。

本件では、単なる通行だけではなく自動車通行まで認められるかという問題もありますが(参考判例最高裁平成9年12月18日判決)、自動車を用いるためには、私道を通行せざるを得ない、これまで30年以上もの間、私道を自動車で通行していた、自動車を用いることができないと、お母様の介護に重大な支障を生じることになる、といったご事情に鑑みると、相談者様は、私道を通行することについて日常生活上不可欠の利益を有するものといえます。そのため、私道が位置指定道路やみなし道路に当たる場合には、新たな私道の所有者において、相談者様による通行を受忍することにより、その通行利益を上回る著しい損害を被る、といった特段の事情がないのであれば、相談者様は、通行自由権に基づき、私道を自動車で通行することができます。

4 私道に関する関連事例集参照。

解説:

1 私道通行権の概要

まず、私道とは、個人や団体等が所有している道路をいいます。これと対となるのが、 国や各自治体が所有している道路である公道です。

私道も、 位置指定道路(建築基準法42条1項5号)(幅が4メートル以上の道路であって、建築物を建てることを目的に、土地所有者が特定行政庁から指定を受けた道路のこと。)やみなし道路(同条2項)(幅が4メートル未満の道路であって、同項の規定により、道路であるものと「みなす」こととされた道路のこと。)に当たらない限り、私的所有権の対象である以上、本来的には、その所有者が自由に管理・処分することができます。そのため、私道の所有者は、誰の通行を許すかを決めることができる(私道を通行するためには、その所有者の許可が必要となる)のが原則です。

私道通行権としては、囲繞地通行権、通行地役権及び通行自由権の3つが挙げられますが、このうちの通行地役権は、正に、私道の所有者の許可(同意)があった場合に認められる権利です。

2 囲繞地通行権について

囲繞地通行権とは、自己の土地が、他人の土地又は海岸・崖地等に囲まれて、公道に接していない場合に、囲まれている土地の所有者が公道まで他の土地を通行する権利のことをいいます(民法210条)。この場合の自己の土地は「袋地」、他人の土地は「囲繞地」と呼称されています。

囲繞地通行権は、法定の権利であり、当事者間の合意がなくとも成立しますが、囲繞地通行権を行使するに当たっては、その通行する他の土地の損害に対し、原則1年ごとに、償金を支払わなければなりません(同法212条)。償金の金額については、近隣における囲繞地通行権の償金を参照する方法や、不動産鑑定士に土地の鑑定評価を依頼し、その金額を通行料の基準とする方法、近隣の月極駐車場の利用料金を参照する方法等があり得ますが、必ずしも裁判例の蓄積がある分野ではありません。いずれにせよ、最終的には、裁判所の判断によることとなり、償金としていくらが適切かということについては、その支払いを求める囲繞地の所有者が主張立証責任を負います。なお、元々は1つであった土地が分筆されて、公道に通じない袋地が生じた場合には、その袋地の所有者は、分筆されたもう1つの土地についてのみ、囲繞地通行権を行使して通行することができ、その場合、償金の支払いは不要となります(同法213条)。

本件では、相談者様のご自宅がある土地は、一応、公道に接続しており、「袋地」には当たりませんので、相談者様が囲繞地通行権に基づいて私道を通行することはできません。

3 通行地役権について

(1)通行地役権の定義

通行地役権とは、当事者間の合意に基づき、自己の土地の便益のために、他人の土地を通行することのできる権利のことをいいます(民法280条)。この場合の自己の土地は「要役地」、他人の土地は「承役地」と呼称されています。

通行地役権を設定するに際しては、当事者間において、通行の対価として、通行料の支払いが定められることが一般的かとは思いますが、必ずしも有償である必要はなく、当事者間の合意に基づき、無償で通行地役権を設定することも可能です。

(2)通行地役権の対抗要件

 この通行地役権は、物権なので、所有権と同様に、登記の対象とされており、「第三者」(民法177条)に対抗(主張)するためには、その設定登記が必要となります。そのため、承役地の所有権を譲り受けた者は、原則として、この「第三者」に当たるので、登記がなされていない限り、この者に対し、前所有権との間で設定された通行地役権を対抗(主張)することはできません。

もっとも、判例上、「通行地役権(通行を目的とする地役権)の承役地が譲渡された場合において、譲渡の時に、右承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されていることがその位置、形状、構造等の物理的状況から客観的に明らかであり、かつ、譲受人がそのことを認識していたか又は認識することが可能であったときは、譲受人は、通行地役権が設定されていることを知らなかったとしても、特段の事情がない限り、地役権設定登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者に当たらないと解するのが相当である」ことから、かかる譲受人に対しては、登記がなされていなかったとしても、通行地役権を対抗(主張)することができるとされています(最高裁平成10年2月13日判決)。

本件でも、私道の所有権が譲渡された際に、私道が相談者様によって継続的に通路として使用されていることが、その位置、形状、構造等の物理的状況から客観的に明らかであり、かつ、新たな私道の所有者がそのことを認識していたか又は認識することが可能であったのならば、登記がなされていなかったとしても、私道の前所有権との間で設定された通行地役権を対抗(主張)することができます。

この場合、相談者様は、新たな私道の所有者に対し、通行地役権に基づき、通行地役権の設定登記手続を請求することもでき、新たな私道の所有者はこれに応ずる義務を負います(最高裁平成10年12月18日判決参照)。

(3)通行地役権の時効取得

なお、上記のとおり、通行地役権が物権であることから、その時効取得をすることができる場合があります。

具体的には、通行地役権の時効取得は、要役地の所有者が、自己のためにする意思(通行地役権に基づいて通行する意思)をもって、通行の開始当時、通行地役権の存在につき、善意無過失の場合は10年間、悪意の場合は20年間、「継続的」、かつ、外形上認識することができる状態で、平穏かつ公然に承役地を通行していた場合に認められます(民法283条、同法163条、同法162条)。この「継続的」という要件については、判例上、「要役地の所有者によって承役地となる土地の上に通路が開設されたものであることを要する」と解されています(最高裁平成6年12月16日判決)。

ただし、通行地役権を時効取得した場合であっても、その後に承役地の所有権を譲り受けた者は、原則として、同法177条の「第三者」に当たるので、登記がなされていない限り、この者に対し、時効取得した通行地役権を対抗(主張)することはできません。

4 通行自由権について

私道が位置指定道路(建築基準法42条1項5号)(幅が4メートル以上の道路であって、建築物を建てることを目的に、土地所有者が特定行政庁から指定を受けた道路のこと。)である場合は、判例上、その「道路を通行することについて日常生活上不可欠の利益を有する者は、右道路の通行をその敷地の所有者によって妨害され、又は妨害されるおそれがあるときは、敷地所有者が右通行を受忍することによって通行者の通行利益を上回る著しい損害を被るなどの特段の事情のない限り、敷地所有者に対して右妨害行為の排除及び将来の妨害行為の禁止を求める権利(人格権的権利)を有するものというべきである」とされています(最高裁平成9年12月18日判決)。

また、私道がみなし道路(同条2項)(幅が4メートル未満の道路であって、同項の規定により、道路であるものと「みなす」こととされた道路のこと。)である場合も、判例上、「このことは、同条二項の規定による指定を受け現実に開設されている道路の場合であっても、何ら異なるものではないと解するのが相当である」として、上記が妥当するものとされています(最高裁平成12年1月27日判決)。

本件では、自動車を用いるためには、私道を通行せざるを得ず、相談者様は、これまで30年以上もの間、私道を自動車で通行していたということですし、自動車を用いることができないと、お母様の介護に重大な支障を生じることになりますので、相談者様は、私道を通行することについて日常生活上不可欠の利益を有するものといえます。そのため、私道が位置指定道路やみなし道路に当たる場合には、新たな私道の所有者において、相談者様による通行を受忍することにより、その通行利益を上回る著しい損害を被る、といった特段の事情がないのであれば、相談者様は、私道の通行自由権を有するものといえ、仮に新たな私道の所有者によって(自動車での)通行を妨害されたとしても、これを法的な手続きを通じて排除することができます。

なお、私道が位置指定道路やみなし道路であるか否かは、私道を管轄する役所の建築課等で道路台帳等を閲覧することによって確認することができます。

5 まとめ

以上のように、相談者様においては、通行地役権又は通行自由権に基づき、私道を自動車で通行することができる可能性があります。もっとも、事案の性質上、具体的な利用状況や土地の形状等を確認しない限り、具体的な見通しをお伝えすることは困難です。そのため、お近くの法律事務所でご相談いただき、現地確認を実施してもらうなどした上で、本件の具体的な見通しをお伺いになることをお勧めいたします。

以上

関連事例集

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※参照条文・判例

【建築基準法】

第42条(道路の定義)

1 この章の規定において「道路」とは、次の各号のいずれかに該当する幅員四メートル(特定行政庁がその地方の気候若しくは風土の特殊性又は土地の状況により必要と認めて都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域内においては、六メートル。次項及び第三項において同じ。)以上のもの(地下におけるものを除く。)をいう。

① 道路法(昭和二十七年法律第百八十号)による道路

② 都市計画法、土地区画整理法(昭和二十九年法律第百十九号)、旧住宅地造成事業に関する法律(昭和三十九年法律第百六十号)、都市再開発法(昭和四十四年法律第三十八号)、新都市基盤整備法(昭和四十七年法律第八十六号)、大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法(昭和五十年法律第六十七号)又は密集市街地整備法(第六章に限る。以下この項において同じ。)による道路

③ 都市計画区域若しくは準都市計画区域の指定若しくは変更又は第六十八条の九第一項の規定に基づく条例の制定若しくは改正によりこの章の規定が適用されるに至つた際現に存在する道

④ 道路法、都市計画法、土地区画整理法、都市再開発法、新都市基盤整備法、大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法又は密集市街地整備法による新設又は変更の事業計画のある道路で、二年以内にその事業が執行される予定のものとして特定行政庁が指定したもの

⑤ 土地を建築物の敷地として利用するため、道路法、都市計画法、土地区画整理法、都市再開発法、新都市基盤整備法、大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法又は密集市街地整備法によらないで築造する政令で定める基準に適合する道で、これを築造しようとする者が特定行政庁からその位置の指定を受けたもの

2 都市計画区域若しくは準都市計画区域の指定若しくは変更又は第六十八条の九第一項の規定に基づく条例の制定若しくは改正によりこの章の規定が適用されるに至つた際現に建築物が立ち並んでいる幅員四メートル未満の道で、特定行政庁の指定したものは、前項の規定にかかわらず、同項の道路とみなし、その中心線からの水平距離二メートル(同項の規定により指定された区域内においては、三メートル(特定行政庁が周囲の状況により避難及び通行の安全上支障がないと認める場合は、二メートル)。以下この項及び次項において同じ。)の線をその道路の境界線とみなす。ただし、当該道がその中心線からの水平距離二メートル未満で崖地、川、線路敷地その他これらに類するものに沿う場合においては、当該崖地等の道の側の境界線及びその境界線から道の側に水平距離四メートルの線をその道路の境界線とみなす。

3 特定行政庁は、土地の状況に因りやむを得ない場合においては、前項の規定にかかわらず、同項に規定する中心線からの水平距離については二メートル未満一・三五メートル以上の範囲内において、同項に規定するがけ地等の境界線からの水平距離については四メートル未満二・七メートル以上の範囲内において、別にその水平距離を指定することができる。

4 第一項の区域内の幅員六メートル未満の道(第一号又は第二号に該当する道にあつては、幅員四メートル以上のものに限る。)で、特定行政庁が次の各号の一に該当すると認めて指定したものは、同項の規定にかかわらず、同項の道路とみなす。

① 周囲の状況により避難及び通行の安全上支障がないと認められる道

② 地区計画等に定められた道の配置及び規模又はその区域に即して築造される道

③ 第一項の区域が指定された際現に道路とされていた道

5 前項第三号に該当すると認めて特定行政庁が指定した幅員四メートル未満の道については、第二項の規定にかかわらず、第一項の区域が指定された際道路の境界線とみなされていた線をその道路の境界線とみなす。

6 特定行政庁は、第二項の規定により幅員一・八メートル未満の道を指定する場合又は第三項の規定により別に水平距離を指定する場合においては、あらかじめ、建築審査会の同意を得なければならない。

【民法】

第162条(所有権の取得時効)

1 二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。

2 十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。

第163条(所有権以外の財産権の取得時効)

所有権以外の財産権を、自己のためにする意思をもって、平穏に、かつ、公然と行使する者は、前条の区別に従い二十年又は十年を経過した後、その権利を取得する。

第177条(不動産に関する物権の変動の対抗要件)

不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

第210条(公道に至るための他の土地の通行権)

1 他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。

2 池沼、河川、水路若しくは海を通らなければ公道に至ることができないとき、又は崖があって土地と公道とに著しい高低差があるときも、前項と同様とする。

第211条

1 前条の場合には、通行の場所及び方法は、同条の規定による通行権を有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。

2 前条の規定による通行権を有する者は、必要があるときは、通路を開設することができる。

第212条

第二百十条の規定による通行権を有する者は、その通行する他の土地の損害に対して償金を支払わなければならない。ただし、通路の開設のために生じた損害に対するものを除き、一年ごとにその償金を支払うことができる。

第213条

1 分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することができる。この場合においては、償金を支払うことを要しない。

2 前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。

第280条(地役権の内容)

地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する。ただし、第三章第一節(所有権の限界)の規定(公の秩序に関するものに限る。)に違反しないものでなければならない。

第283条(地役権の時効取得)

地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。

《参考判例》

(最高裁平成10年2月13日判決)

上告代理人宮國英男の上告理由について

一 通行地役権(通行を目的とする地役権)の承役地が譲渡された場合において、譲渡の時に、右承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されていることがその位置、形状、構造等の物理的状況から客観的に明らかであり、かつ、譲受人がそのことを認識していたか又は認識することが可能であったときは、譲受人は、通行地役権が設定されていることを知らなかったとしても、特段の事情がない限り、地役権設定登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者に当たらないと解するのが相当である。その理由は次のとおりである。

(一) 登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有しない者は、民法一七七条にいう「第三者」(登記をしなければ物権の得喪又は変更を対抗することのできない第三者)に当たるものではなく、当該第三者に、不動産登記法四条又は五条に規定する事由のある場合のほか、登記の欠缺を主張することが信義に反すると認められる事由がある場合には、当該第三者は、登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者に当たらない。

(二) 通行地役権の承役地が譲渡された時に、右承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されていることがその位置、形状、構造等の物理的状況から客観的に明らかであり、かつ、譲受人がそのことを認識していたか又は認識することが可能であったときは、譲受人は、要役地の所有者が承役地について通行地役権その他の何らかの通行権を有していることを容易に推認することができ、また、要役地の所有者に照会するなどして通行権の有無、内容を容易に調査することができる。したがって、右の譲受人は、通行地役権が設定されていることを知らないで承役地を譲り受けた場合であっても、何らかの通行権の負担のあるものとしてこれを譲り受けたものというべきであって、右の譲受人が地役権者に対して地役権設定登記の欠缺を主張することは、通常は信義に反するものというべきである。ただし、例えば、承役地の譲受人が通路としての使用は無権原でされているものと認識しており、かつ、そのように認識するについては地役権者の言動がその原因の一半を成しているといった特段の事情がある場合には、地役権設定登記の欠缺を主張することが信義に反するものということはできない。

(三) したがって、右の譲受人は、特段の事情がない限り、地役権設定登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者に当たらないものというべきである。なお、このように解するのは、右の譲受人がいわゆる背信的悪意者であることを理由とするものではないから、右の譲受人が承役地を譲り受けた時に地役権の設定されていることを知っていたことを要するものではない。

二 これを本件について見ると、原審が適法に確定したところによれば、(1) 分筆前の沖縄県S郡Y町字Y〇番〇の土地を所有していたTは、昭和四六年ころ、これを六区画の宅地及び東西三区画ずつの中央を南北に貫く幅員約四メートルの通路として造成した、(2) 右通路は、その北端で、右分筆前の土地の北側に接して東西方向に通る公道に通じている、(3) 右分筆前の土地の西側に接して南北方向に通る里道があるが、その有効幅員は一メートルにも満たない、(4) Tは、昭和四九年九月、右六区画のうち西側中央の三六〇四番八の土地(第一審判決別紙物件目録二記載の土地)を被上告人に売り渡し、その際、Tと被上告人は、黙示的に、右通路部分の北側半分に相当する本件係争地に要役地を三六〇四番八の土地とする無償かつ無期限の通行地役権を設定することを合意した、(5) 被上告人は、以後、本件係争地を三六〇四番八の土地のための通路として継続的に使用している、(6) Tは、昭和五〇年一月ころ、右六区画のうち東側中央、南東側及び南西側の三区画並びに右通路部分をA宏昌に売り渡し、これらの土地は、その後分合筆を経て昭和五九年一〇月に三六〇四番五の土地(第一審判決別紙物件目録一記載の土地)となった、(7) TとAは、右売買の際に、黙示的に、AがTから右通行地役権の設定者の地位を承継することを合意した、(8) Aは、右売買後直ちに、本件係争地を除いた部分に自宅を建築し、本件係争地については、アスファルト舗装をし、その東端と西端に排水溝を設けるなどして、自宅から右公道に出入りするための通路とした、(9) 被上告人は、昭和五八年、三六〇四番八の土地に、東側に駐車スペースを設け、玄関が北東寄りにある自宅を建築し、本件係争地を自動車又は徒歩で通行して右公道に出入りしていたが、Aがこれに異議を述べたことはなかった、(10) Aは、平成三年七月、三六〇四番五の土地を上告人に売り渡したが、上告人がAから右通行地役権の設定者の地位を承継するとの合意はされていない、(11) しかし、上告人は、三六〇四番五の土地を買い受けるに際し、現に被上告人が本件係争地を通路として利用していることを認識していたが、被上告人に対して本件係争地の通行権の有無について確認することはしなかったというのである。

そうすると、三六〇四番八の土地を要役地、本件係争地を承役地とする通行地役権が設定されていたものであるところ、上告人が本件係争地を譲り受けた時に、本件係争地が三六〇四番八の土地の所有者である被上告人によって継続的に通路として使用されていたことはその位置、形状、構造等の物理的状況から客観的に明らかであり、かつ、上告人はそのことを認識していたものということができる。そして、本件においては前記特段の事情があることはうかがわれないから、上告人は、右通行地役権について、これが設定されていることを知らなかったとしても、地役権設定登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者に当たらないものと解すべきである。

三 したがって、原審が上告人を背信的悪意者であるとしたことは、措辞適切を欠くものといわざるを得ないが、上告人が被上告人の通行地役権について地役権設定登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者に当たらないとした原審の判断は、結論において是認することができる。論旨は、原判決の結論に影響のない事項についての違法をいうに帰するものであって、採用することができない。

よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(最高裁平成6年12月16日判決)

上告代理人松川雅典の上告理由について

一 原審の適法に確定した事実関係は、次のとおりである。(1) 上告人は、八尾市沼三丁目一四三番一の宅地(以下「上告人所有地」という。)を所有している。右土地及び周囲の状況は別紙略図のとおりであり、上告人所有地は、北側及び西側がいずれも公道に接しており、第一審判決別紙被告土地目録(二)記載の土地(別紙略図の斜線部分。以下「本件土地」という。)は、上告人所有地の一部で、西側の公道(以下「西側道路」という。)に接する東西の幅員約0.9メートルの南北に細長い形状の土地である。被上告人らは、西側道路のうち、本件土地と接する部分より南の部分の両側に土地を所有する者であり、各自の所有地から北側の公道へ出るために西側道路を通行している。(2) 上告人は、昭和四三年一二月ころ、上告人所有地と西側道路との境界線に沿ってフェンスを設置しようとした際、被上告人らから、右道路の拡幅のために上告人所有地の一部を提供するよう強く働きかけられたため、西側道路との境界より東寄りに引き込んで、本件土地の東端線(別紙略図のイ点とロ点とを結ぶ直線)に沿ってフェンスを設置した。(3) 被上告人らは、右フェンスが設置されたのとほぼ同じ時期に、西側道路のうち被上告人らの所有地と接する部分について、各自が所有地の一部を提供し又は費用の一部を負担するなどして、共同して拡幅を行った。(4) 右(2)及び(3)の結果、西側道路は幅員約3.6メートルに拡幅され、本件土地は拡幅部分の一部となった。(5) 被上告人らは、その後、西側道路及びその拡幅部分について、土砂を入れたり除草をしたりするなどして維持管理をするとともに、二〇年以上にわたって通行のためにその使用を継続した。

二 ところで、地役権は継続かつ表現のものに限って時効取得が認められるが(民法二八三条)、通行地役権について右「継続」の要件を満たすには、要役地の所有者によって承役地となる土地の上に通路が開設されたものであることを要すると解されるところ(最高裁昭和二八年(オ)第一一七八号同三〇年一二月二六日第三小法廷判決・民集九巻一四号二〇九七頁、最高裁昭和三一年(オ)第三一一号同三三年二月一四日第二小法廷判決・民集一二巻二号二六八頁)、前記事実関係によれば、被上告人らは、西側道路を拡幅するため、上告人所有地の一部を右拡幅用地として提供するよう上告人に働きかける一方、自らも、各自その所有地の一部を同用地として提供するなどの負担をしたものであり、被上告人らのこれら行為の結果として、西側道路の全体が拡幅され、本件土地はその一部として通行の用に供されるようになったというのであるから、本件土地については、要役地の所有地である被上告人らによって通路が開設されたものというべきである。そうすると、被上告人らは、右開設後二〇年以上本件土地を通行のために使用したことにより、本件土地につき通行地役権を時効取得したということができるのであって、これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(最高裁平成9年12月18日判決)

上告人らの上告理由について

一 建築基準法四二条一項五号の規程による位置の指定(以下「道路位置指定」という。)を受け現実に開設されている道路を通行することについて日常生活上不可欠の利益を有する者は、右道路の通行をその敷地の所有者によって妨害され、又は妨害されるおそれがあるときは、敷地所有者が右通行を受忍することによって通行者の通行利益を上回る著しい損害を被るなどの特段の事情のない限り、敷地所有者に対して右妨害行為の排除及び将来の妨害行為の禁止を求める権利(人格権的権利)を有するものというべきである。

けだし、道路位置指定を受け現実に開設されている道路を公衆が通行することができるのは、本来は道路位置指定に伴う反射的利益にすぎず、その通行が妨害された者であっても道路敷地所有者に対する妨害排除等の請求権を有しないのが原則であるが、生活の本拠と外部との交通は人間の基本的生活利益に属するものであって、これが阻害された場合の不利益には甚だしいものがあるから、外部との交通についての代替手段を欠くなどの理由により日常生活上不可欠なものとなった通行に関する利益は私法上も保護に値するというべきであり、他方、道路位置指定に伴い建築基準法上の建築制限などの規制を受けるに至った道路敷地所有者は、少なくとも道路の通行について日常生活上不可欠の利益を有する者がいる場合においては、右の通行利益を上回る著しい損害を被るなどの特段の事情がない限り、右の者の通行を禁止ないし制限することについて保護に値する正当な利益を有するとはいえず、私法上の通行受忍義務を負うこととなってもやむを得ないものと考えられるからである。

二 原審の適法に確定した事実関係は、次のとおりである。

1 原判決別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)は、昭和三三年ころ本件土地周辺が大規模な分譲住宅団地として開発された際、各分譲地に至る通路として開設された幅員四メートルの道路であり、昭和三三年一月一三日、川崎市長から道路位置指定を受けた。

2 本件土地は、右の道路位置指定以後三〇年以上にわたり、被上告人らを含む近隣住民等の徒歩及び自動車による通行の用に供されている。

3 被上告人らは、肩書の住所に居住し、自動車を利用する者である。被上告人らがその居住地から自動車で公道に出るには、公道に通じる他の道路が階段状であって自動車による通行ができないため、本件土地を道路として利用することが不可欠である。

4 上告人らは、昭和六一年一二月九日、贈与により本件土地の所有権(持分各二分の一)を取得した。

5(一) 上告人らは、平成三年九月ころ、被上告人らを含む本件土地近辺の住民に対し、同年一二月末日までに上告人らと本件土地の通行に関する契約を締結しない車両等の本件土地の通行を禁止するという趣旨のビラをまいた。

(二) 上告人らは、右(一)と前後して、専ら被上告人らの自動車通行をやめさせる意図の下に、本件土地に簡易ゲート等を設置した。その結果、被上告人らは、自動車で本件土地を通行するたびに、いったん下車して右簡易ゲートを取り除かなければならなくなり、通行を妨害されている。

(三) 上告人らは、平成四年二月八日、被上告人らの所属する自治会に対し、同年一二月末日をもって本件土地の通行を不可能にする工事を施工することがある旨を通知した。

三 右事実関係に基づいて検討する。

被上告人らは、道路位置指定を受けて現実に道路として開設されている本件土地を長年にわたり自動車で通行してきたもので、自動車の通行が可能な公道に通じる道路は外に存在しないというのであるから、本件土地を自動車で通行することについて日常生活上不可欠の利益を有しているものということができる。また、本件土地の所有者である上告人らは、被上告人らが本件土地を通行することを妨害し、かつ、将来もこれを妨害するおそれがあるものと解される。他方、右事実関係によっても、上告人らが被上告人らの右通行利益を上回る著しい損害を被るなどの特段の事情があるということはできず、他に右特段の事情に係る主張立証はない。

したがって、被上告人らは、上告人らに対して、本件土地についての通行妨害行為の排除及び将来の通行妨害行為の禁止を求めることができるものというべきである。

四 以上と同旨に帰する原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(最高裁平成12年1月27日判決)

上告代理人佐々木秀雄、同塚本まみ子、同田口育男の上告理由第二点について

一 原審の適法に確定した事実関係は、次のとおりである。

1 被上告人らは、東京都〇〇区〇町〇丁目〇番の〇及び〇の各土地(以下「被上告人ら共有地」という。)を共有し、上告人らは、同番の〇、〇、〇及び〇の各土地(以下「上告人ら共有地」という。)を共有している。上告人ら共有地のうち〇番の〇及び〇の各土地には、北端と南端でそれぞれ公道に接する未舗装の私道(一審判決別紙図面一の斜線部分。以下「本件私道」という。)が設置されており、被上告人ら共有地は、本件私道以外の道路に接していない。

2 本件私道は、戦前に開設されたものであって、その幅員は、場所によって一定しないものの約二メートルから三メートルであり、建築基準法施行後、同法四二条二項に規定する指定により同条一項の道路とみなされている。被上告人らの母であるUは、上告人Aの父から賃借していた被上告人ら共有地上に建物を建てて居住し、主に徒歩で本件私道を通行していた。

3 Hは、昭和二八年一一月、上告人Aの父が昭和二二年に国に物納した二九番の六の土地を大蔵省からの払下げにより取得し、昭和三九年二月には、同番一三の土地を上告人らから買い受け、上告人らとの間で、右各土地を要役地、本件私道を承役地として、徒歩及び二輪車による通行を目的とする通行地役権(以下「本件通行地役権」という。)を黙示的に設定した。

4 上告人らは、昭和五九年五月、上告人ら共有地のうち二九番の一四及び一五の各土地上にマンションを建築した。その際、右各土地と本件私道との境の塀が撤去され、道路中心線から右各土地寄りに約二メートル後退した位置にフェンスが設置されたため、同所付近における本件私道の幅員は、従前の約2.7メートルから約3.4メートルに拡幅された。

5 被上告人らは、昭和六一年一〇月三一日に死亡したHを相続し、昭和六三年一〇月頃、空き家となっていた被上告人ら共有地上の右建物を取り壊し、右土地を更地にした。

6 被上告人ら共有地は、平成二年三月から約一年間、近隣のビル建築のため、工事関係車両の駐車場、仮事務所設置用地として利用されたが、その際、上告人らは、右建築工事の請負業者が前記マンションの建築工事を担当した業者であったことから、右請負業者の要請を受けて、右建築工事中、工事関係車両が本件私道を通行することを承諾した。右期間以外には本件私道を自動車が通行したことはなかった。

7 上告人らは、平成三年八月頃、前記フェンスを撤去し、新たに道路中心線から三メートル以上離れた一審判決別紙図面二のP2、P3、P4の各点を結んだ位置にフェンスを設置し直した上、道路中心線から一メートル弱の同図面の①から⑩の各位置に鎖でつながれた金属製ポール一〇本(以下「本件ポール」という。)を設置した。

8 被上告人らは、その共有地を賃貸駐車場として利用する目的を有している。

二 本件において、被上告人らは、自動車の通行を妨げられているとして、上告人らに対し、通行地役権又は通行の自由権(人格権)に基づき、本件ポールの撤去を求めている。

原審は、通行の自由権(人格権)に基づく請求について、概要次のように判示して、これを認容した。

一般人は、建築基準法四二条二項の規定による指定を受けた私道について、その反射的利益として自由に通行する権利を有し、右通行が妨害された場合には、通行妨害の態様、指定された道路の使用状況等によっては通行の自由権(人格権)に基づき、通行妨害の停止や予防を請求することができる。本件ポールの設置は、建築基準法四四条一項に直接違反するものではないが、現状での通行可能な範囲を著しく制限する行為は、同法の趣旨に反するものと解すべきである。本件私道の自動車による通行は、従来、一般公衆に保障されていたものではないし、被上告人ら共有地の利用状況や賃貸駐車場としての利用目的からみて、日常生活に必須の要請であるとは認め難い面があるが、通行の自由が確保される必要があるのは、本件私道に接する土地の居住者が利用する場合に限定されるものではなく、本件ポールの設置により緊急自動車の進入が制限される事態の発生も予想されるから、被上告人らは、通行の自由権(人格権)に基づき、公共の福祉に反して違法に設置された本件ポールの撤去を求めることができる。

三 しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。

建築基準法四二条一項五号の規定による位置の指定を受け現実に開設されている道路を通行することについて日常生活上不可欠の利益を有する者は、右道路の通行をその敷地の所有者によって妨害され、又は妨害されるおそれがあるときは、敷地所有者が右通行を受忍することによって通行者の通行利益を上回る著しい損害を被るなどの特段の事情のない限り、敷地所有者に対して右妨害行為の排除及び将来の妨害行為の禁止を求める権利(人格権的権利)を有するものというべきである(最高裁平成八年(オ)第一三六一号同九年一二月一八日第一小法廷判決・民集五一巻一〇号四二四一頁)。そして、このことは、同条二項の規定による指定を受け現実に開設されている道路の場合であっても、何ら異なるものではないと解するのが相当である。

これを本件についてみるに、前記事実関係によれば、本件私道は、専ら徒歩又は二輪車による通行に供されてきた未舗装の道路であり、上告人らの承諾を受けた請負業者が建築工事のため一年間本件私道を自動車で通行したことがあるほかには、自動車が通行したことはなく、被上告人らは、Hが死亡した昭和六一年一〇月以降、その共有地を利用していないのみならず、右共有地を居住用としてではなく、単に賃貸駐車場として利用する目的で本件ポールの撤去を求めているにすぎないというのであるから、被上告人らが本件私道を自動車で通行することについて日常生活上不可欠の利益を有しているとはいえない。

そうすると、被上告人らの人格権的権利が侵害されたことを前提として本件ポールの撤去請求を認容した原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があり、右違法が判決に影響を及ぼすことは明らかである。論旨は理由があり、その余の上告理由について判断するまでもなく、原判決は破棄を免れない。そして、原審の認定した事実によれば、本件通行地役権は自動車の通行を目的とするものではないのであるから、右権利に基づく請求も理由がないというべきである。以上に述べたところからすれば、被上告人らの右各請求を棄却した第一審判決は正当であるから、被上告人らの控訴を棄却すべきである。

よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

以上