新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.833、2009/1/13 12:24 https://www.shinginza.com/qa-saisei.htm

【債務整理・民事再生・個人再生・給与所得者再生・再生の条件・債権者への支払総額の決め方・支払い期間・毎月いくら支払えばいいか・手続き期間】

質問:私(27歳、独身)は、友人の借金の連帯保証人となっていましたが、今般、友人が破産しました。債権者から私に返済してほしいと連絡がありましたが、金額は700万円もあります。とても任意で返済するのは難しいので民事再生を考えています。私の収入は給与所得230万円(税引き後)、貯金が100万円ほどありますが、民事再生はできますか。なお、事情があって、破産はできません。

回答:
1.民事再生は可能です。あなたの負債総額が700万円であり5000万円以下(住宅ローンを除きます)ですから、民事再生手続きの中で個人再生手続き(民事再生法221条1項、負債額5000万円以下の小規模個人再生といいます。)が適用になり、さらに勤め人ですから、本件の場合給与所得者再生(法239条以下)により再起を図ってください。債権者の同意は他の民事再生と異なり一切不要です。

2.弁済総額の計算ですが細かく分かれています。一般的に、返済額は、基準額100万円か、負債額の20%の多い方が基準となり(1500万円以上3000万円以下は300万円、3000万円を超えると10%)、この総額を基本的に3年間で支払います(法229条2項、例外的に5年)。さらに厳密に言うとあなたの2年分の可処分所得(法241条2項7号。計算方式は事務所ホームページ参照)が前記金額より多ければ多い方が基準になります。本件では、年収230万円ですので計算すると可処分所得は18万円(2年分。計算しますと最低生活費年間221万円です。)であり、負債額の20%(140万円)が結果的に一番高い金額になります。尚、あまりないと思いますが、申し立て時の保有資産(破産の場合の実質配当額を基準とする。)が140万円より多いと、その額が基準となります(法241条2項2号、法174条2項4号。破産の時より配当が下回ることを防いで分割払いに同意、譲歩した債権者との公平を図る清算価値保障の原則です。民事再生すべてに適用されますので241条2項2号は重複規定です。)。以上3つの基準(負債総額20%、可処分所得2年分、保有資産)から一番大きい金額で返済総額は決められます。

3.具体的には、700万円を20%である140万円について3年間毎月約3万9000円を支払えば負債はなくなります。一般的債務整理(内整理)より経済的再起更生が容易であると思います。

4.裁判所に納める費用は約17万5000円(東京地裁、個人再生委員の費用15万円、その他の予納金、印紙、切手等約2万5000円以上合計17万5000円)です。尚、会社等通常の民事再生は200万円以上負債総額により異なります。他に弁護士に依頼すると弁護士費用(基準額30万円以上60万円、通常の民事再生は負債額、予納金に応じて増加します。)がさらに必要です。

5.手続期間は一般的に申し立てから約6か月程度でしょう。

解説:
民事再生、個人再生(小規模個人再生、給与所得者再生)の制度趣旨。

支払不能の可能性等経済的窮地(破産原因が生じるおそれでよい。法21条)に陥り、社会経済生活において自由競争ができなくなった者の経済的再起更生を早期に実現し、公正な社会経済秩序を維持し、個人の尊厳を確保保障するために(法の支配)債務整理の一環として平成12年以降創設されました(民事再生法1条)。我が国は、自由主義、個人主義の下、私的自治の原則、私有財産制により自由競争を基本としていますが、自由競争は結果として必然的に敗者を生み、資本の論理により恒常的敗者すなわち債務整理を必要とする者を生じることになります。しかし、私的自治の原則は自由で公正な社会秩序を実現するための手段であり、制度に内在する公正公平の原則によりこのような不平等状態は是正されなければならず、直ちに社会の構成員である個人、会社が再起更生し、再度自由競争社会への参加が認められなければなりません。すなわち、債務整理制度は、法が債権者側の恩恵として認めたものではなく、自由競争社会で制度自体から必然的に導かれる個人、会社が有する当然の権利なのです。唯、債務整理の手続きは再起更生の他、本来支払われるべき債務の減額免除を内容としますので、債務者、債権者にとり公正で公平、迅速、低廉でなければいけません。そこで、法は第一義的に破産制度(破産法)を用意し、すべての財産を明らかにし公平、平等に配当清算することを条件に負債を免責しています。しかし、この制度はいままでの財産的基盤(自宅も)をすべて失うことになり、真の経済的再起更生としては不十分です。

そこで、従来は、弁護士が介入し裁判所の監督を受けない私的整理(内整理)、民事調停による減額交渉、さらには裁判所の監督下の手続きによる、破産手続き中の強制和議(破産法、民事再生制定により廃止)、破産予防の和議(和議法、民事再生により廃止)、会社更生手続き等により債務者の早期実質的再起更生を図ってきました。しかし、私的整理、民事調停は各債権者の同意が障害となり、負債額が大きい場合にさほど有効ではありませんし、強制和議、和議法の予防和議は要件が厳しく(債権者数の過半数、債権額3分の2の議決)、抵当権等担保権の実行を阻止できませんし(結局生活の本拠である自宅を失う)、会社更生法も強制和議と同様成立要件が厳格で経営権が更生管財人に奪われ早期、自主的に再起更生を果たそうとする一般的個人、会社に十分活用されませんでした。そこで平成12年から民事再生法が制定され、申し立ての理由を広くし(破産原因が生じるおそれで足りる)、従来の経営者が引き続き経営権を有し、決議要件を緩和し(債権者数、額とも過半数で可、さらに債権者の同意で再生債権確定手続き、再生計画案決議手続きを省略簡易にすることも可能)、再起更生のため生活の本拠である住宅確保のための手続き(法196条、弁済猶予等による担保権実行の制限。住宅資金債権者は債務額を保証される関係上再生計画案について議決権を有しないので住宅資金特別条項は事実上確保されます。法201条。)、さらに特則として規模が小さい個人の債務整理に対応して小規模個人再生手続き(法221条以下、弁済期間、弁済額限定、議決手続きの簡易化等。基準3年、20%、書面による議決権行使)、小規模再生のさらに特則として給与所得者再生手続き(法239条以下、日常生活権が侵害される危険があり弁済額を厳しくして債権者同意を不要とする。)が制定され、債務者の経済状態に応じて再起更生がさらに確保、保障され容易になりました。以上の趣旨から民事再生は規定され、解釈されます。以下説明いたします。尚、民事再生法の施行により私的整理の整理案にも事実上の影響(弁済額20%−10%、負債額5000万円以上なら10%以下)があるものと思われます。

1.民事再生法は平成12年4月1日から施行され、個人再生についても平成13年4月1日から施行され、現在まで多くの事例が蓄積されてきました。個人再生手続は、民事再生法第13章の「小規模個人再生及び給与所得者再生に関する特則」の適用ある再生手続きのことで(民事再生法221条以下)、非事業者の自然人及び零細な個人事業者にとって利用しやすい再生手続きとなっています。

2.さて、友人の借金の連帯保証人とのことですが、確かに借金が700万円もあっては、任意整理手続(利息制限法引き直しの金額を全額、債権者に3年から5年で返済するという方法が一般的)を取ると月額弁済額19万円を超えてしまいます。これでは普通の給与所得者では生活が破綻してしまいます。これに対し、民事再生の場合には、基準債権総額の2割相当額もしくは100万円のどちらか多い方を3年(特別な場合は5年)で返済すればよいので、借金(基準債権、本件の場合は保証債務)が700万円の場合には、2割相当額の140万円を3年で返済するという計画案が認可されれば、月額弁済額3.9万円弱にもなりますので、任意整理よりも格段に支払いやすくなります。

3.但し、上記は、小規模個人再生をとる場合であり、小規模個人再生の場合、計画案に対して債権者の同意が必要となりますので、本件のように債権者が1社の場合には、当該債権者が計画案を拒否すれば認可されなくなってしまいます(民事再生法230条、231条)。そのため給与所得者に限り、債権者の承認が不要な給与所得者個人再生(民事再生法239条以下)が用意されています。給与所得者が経済的窮地に陥るということは、その日その日の日常生活が困難になるという状態であり、人間らしく生活する権利(個人の尊厳)を実質的に保障するため「可処分所得」という一定の条件を付加して債権者の意思に無関係に経済的更生を認めたのです。債権者にとっても最低負債額の20%は確保できるので配当ゼロに近い破産と比べ不利益はないでしょう。この場合には、給与から算出した可処分所得の2年分という金額も月額弁済額に影響してきますので、月額弁済額が上記3.9万円か可処分所得から算定された金額のどちらか多い方ということになります。可処分所得を算出するには、過去2年間の収入合計額から当該期間の所得税相当額、住民税相当額、社会保険料相当額を差し引き、政令に基づく居住地域区分・各費用額の早見表に記載されている「個人別生活費の額、世帯別生活費の額、当期特別生活費の額、住居費の額、勤労必要経費の額」の2年分を引くことにより、1年間あたりの可処分所得が算出できます。

4.具体的には、あなたは給与が230万円であり、東京23区にお住まいとのことですので、所得税、住民税、社会保険料、その他上記の金額を差し引くとマイナスもしくは100万円以下となる可能性が高く、可処分所得は考慮しなくてもよいということになります。しかし、例えば給与が500万円もある人の場合などは、上記所得税相当額等の金額を控除しても可処分所得の2年分はかなり高くなり(妻と子1人で可処分所得2年分が400万円ほどになる可能性)、これを基準とすれば支払うのに苦労するような金額になることがあります(可処分所得2年分が400万円の場合月額11万円)。

5.今回あなたの場合は、給与所得者再生を選択し、月額弁済額3.9万円という計画案を提出するのが穏当でしょう。ただ、給与230万円で月額3.9万円を支払うのは、並大抵のことではありません。認可決定確定後、親族などの援助を受けて、繰上償還をして一度に支払うということもできますので、ご検討下さい(不安でなければ貯金を取り崩すことも検討できます)。当事務所の以下のページもご参考になさって下さい。簡易計算もできます。https://www.shinginza.com/qa-kojinsaisei.htm

6.万が一、再生計画遂行中に減給・失業等で減収になり、計画通り支払えなくなった場合には、民事再生手続きが社会復帰の債務者本来の権利であるという点から種々の救済処置が置かれています。@勤務先の経営不振、家族の病気による出費等債務者に責任がなく「やむをえない事由」がある場合、債務者の早期再起更生を果たすため再生計画を変更して分割弁済期間を延長することも可能です(民事再生法234条)。A債務者の責めに帰さない理由で弁済が極めて困難になり、それまで誠実に総負債額の4分の3の弁済状況があり債権者間の公平の原則に反しないようであれば、再起更生を優先し免責の決定を得ることができます(これをハードシップ免責といいます)(同法235条)。B以上の対応がとれなければ最終的に再生取消(法189条)、自己破産(牽連破産。同法250条。裁判所の判断で職権により決定。破産原因があると認定された場合。)という手続きになります。弁済ができなくなる前に、お早めに弁護士に相談してください。

<条文参照>

民事再生法
第一章 総則
(目的)
第一条  この法律は、経済的に窮境にある債務者について、その債権者の多数の同意を得、かつ、裁判所の認可を受けた再生計画を定めること等により、当該債務者とその債権者との間の民事上の権利関係を適切に調整し、もって当該債務者の事業又は経済生活の再生を図ることを目的とする。
(再生計画案の可決の要件)
第百七十二条の三  再生計画案を可決するには、次に掲げる同意のいずれもがなければならない。
一  議決権者(債権者集会に出席し、又は第百六十九条第二項第二号に規定する書面等投票をしたものに限る。)の過半数の同意
二  議決権者の議決権の総額の二分の一以上の議決権を有する者の同意
2  約定劣後再生債権の届出がある場合には、再生計画案の決議は、再生債権(約定劣後再生債権を除く。以下この条、第百七十二条の五第四項並びに第百七十四条の二第一項及び第二項において同じ。)を有する者と約定劣後再生債権を有する者とに分かれて行う。ただし、議決権を有する約定劣後再生債権を有する者がないときは、この限りでない。
3  裁判所は、前項本文に規定する場合であっても、相当と認めるときは、再生計画案の決議は再生債権を有する者と約定劣後再生債権を有する者とに分かれないで行うものとすることができる。
4  裁判所は、再生計画案を決議に付する旨の決定をするまでは、前項の決定を取り消すことができる。
5  前二項の規定による決定があった場合には、その裁判書を議決権者に送達しなければならない。ただし、債権者集会の期日において当該決定の言渡しがあったときは、この限りでない。
6  第一項の規定にかかわらず、第二項本文の規定により再生計画案の決議を再生債権を有する者と約定劣後再生債権を有する者とに分かれて行う場合において再生計画案を可決するには、再生債権を有する者と約定劣後再生債権を有する者の双方について第一項各号に掲げる同意のいずれもがなければならない。
7  第百七十二条第二項(同条第三項において準用する場合を含む。)の規定によりその有する議決権の一部のみを再生計画案に同意するものとして行使した議決権者(その余の議決権を行使しなかったものを除く。)があるときの第一項第一号又は前項の規定の適用については、当該議決権者一人につき、同号に規定する議決権者の数に一を、再生計画案に同意する旨の議決権の行使をした議決権者の数に二分の一を、それぞれ加算するものとする。
第四節 再生計画の認可等
(再生計画の認可又は不認可の決定)
第百七十四条  再生計画案が可決された場合には、裁判所は、次項の場合を除き、再生計画認可の決定をする。
2  裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合には、再生計画不認可の決定をする。
一  再生手続又は再生計画が法律の規定に違反し、かつ、その不備を補正することができないものであるとき。ただし、再生手続が法律の規定に違反する場合において、当該違反の程度が軽微であるときは、この限りでない。
二  再生計画が遂行される見込みがないとき。
三  再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったとき。
四  再生計画の決議が再生債権者の一般の利益に反するとき。
3  第百十五条第一項本文に規定する者及び労働組合等は、再生計画案を認可すべきかどうかについて、意見を述べることができる。
4  再生計画の認可又は不認可の決定があった場合には、第百十五条第一項本文に規定する者に対して、その主文及び理由の要旨を記載した書面を送達しなければならない。
5  前項に規定する場合には、同項の決定があった旨を労働組合等に通知しなければならない。
(再生計画の取消し)
第百八十九条  再生計画認可の決定が確定した場合において、次の各号のいずれかに該当する事由があるときは、裁判所は、再生債権者の申立てにより、再生計画取消しの決定をすることができる。
一  再生計画が不正の方法により成立したこと。
二  再生債務者等が再生計画の履行を怠ったこと。
三  再生債務者が第四十一条第一項若しくは第四十二条第一項の規定に違反し、又は第五十四条第二項に規定する監督委員の同意を得ないで同項の行為をしたこと。
2  前項第一号に掲げる事由を理由とする同項の申立ては、再生債権者が再生計画認可の決定に対する即時抗告により同号の事由を主張したとき、若しくはこれを知りながら主張しなかったとき、再生債権者が同号に該当する事由があることを知った時から一月を経過したとき、又は再生計画認可の決定が確定した時から二年を経過したときは、することができない。
3  第一項第二号に掲げる事由を理由とする同項の申立ては、再生計画の定めによって認められた権利の全部(履行された部分を除く。)について裁判所が評価した額の十分の一以上に当たる権利を有する再生債権者であって、その有する履行期限が到来した当該権利の全部又は一部について履行を受けていないものに限り、することができる。
4  裁判所は、再生計画取消しの決定をしたときは、直ちに、その裁判書を第一項の申立てをした者及び再生債務者等に送達し、かつ、その主文及び理由の要旨を公告しなければならない。
5  第一項の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
6  第四項の決定は、確定しなければその効力を生じない。
7  第四項の決定が確定した場合には、再生計画によって変更された再生債権は、原状に復する。ただし、再生債権者が再生計画によって得た権利に影響を及ぼさない。
8  第百八十五条の規定は第四項の決定が確定した場合について、前条第四項の規定は再生手続終了前に第四項の決定が確定した場合について準用する。
第十章 住宅資金貸付債権に関する特則
(定義)
第百九十六条  この章、第十二章及び第十三章において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一  住宅 個人である再生債務者が所有し、自己の居住の用に供する建物であって、その床面積の二分の一以上に相当する部分が専ら自己の居住の用に供されるものをいう。ただし、当該建物が二以上ある場合には、これらの建物のうち、再生債務者が主として居住の用に供する一の建物に限る。
二  住宅の敷地 住宅の用に供されている土地又は当該土地に設定されている地上権をいう。
三  住宅資金貸付債権 住宅の建設若しくは購入に必要な資金(住宅の用に供する土地又は借地権の取得に必要な資金を含む。)又は住宅の改良に必要な資金の貸付けに係る分割払の定めのある再生債権であって、当該債権又は当該債権に係る債務の保証人(保証を業とする者に限る。以下「保証会社」という。)の主たる債務者に対する求償権を担保するための抵当権が住宅に設定されているものをいう。
四  住宅資金特別条項 再生債権者の有する住宅資金貸付債権の全部又は一部を、第百九十九条第一項から第四項までの規定するところにより変更する再生計画の条項をいう。
五  住宅資金貸付契約 住宅資金貸付債権に係る資金の貸付契約をいう。
(抵当権の実行手続の中止命令等)
第百九十七条  裁判所は、再生手続開始の申立てがあった場合において、住宅資金特別条項を定めた再生計画の認可の見込みがあると認めるときは、再生債務者の申立てにより、相当の期間を定めて、住宅又は再生債務者が有する住宅の敷地に設定されている前条第三号に規定する抵当権の実行手続の中止を命ずることができる。
2  第三十一条第二項から第六項までの規定は、前項の規定による中止の命令について準用する。
3  裁判所は、再生債務者が再生手続開始後に住宅資金貸付債権の一部を弁済しなければ住宅資金貸付契約の定めにより当該住宅資金貸付債権の全部又は一部について期限の利益を喪失することとなる場合において、住宅資金特別条項を定めた再生計画の認可の見込みがあると認めるときは、再生計画認可の決定が確定する前でも、再生債務者の申立てにより、その弁済をすることを許可することができる。
(住宅資金特別条項を定めることができる場合等)
第百九十八条  住宅資金貸付債権(民法第五百条 の規定により住宅資金貸付債権を有する者に代位した再生債権者が当該代位により有するものを除く。)については、再生計画において、住宅資金特別条項を定めることができる。ただし、住宅の上に第五十三条第一項に規定する担保権(第百九十六条第三号に規定する抵当権を除く。)が存するとき、又は住宅以外の不動産にも同号に規定する抵当権が設定されている場合において当該不動産の上に第五十三条第一項に規定する担保権で当該抵当権に後れるものが存するときは、この限りでない。
2  保証会社が住宅資金貸付債権に係る保証債務を履行した場合において、当該保証債務の全部を履行した日から六月を経過する日までの間に再生手続開始の申立てがされたときは、第二百四条第一項本文の規定により住宅資金貸付債権を有することとなる者の権利について、住宅資金特別条項を定めることができる。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。
3  第一項に規定する住宅資金貸付債権を有する再生債権者又は第二百四条第一項本文の規定により住宅資金貸付債権を有することとなる者が数人あるときは、その全員を対象として住宅資金特別条項を定めなければならない。
(住宅資金特別条項の内容)
第百九十九条  住宅資金特別条項においては、次項又は第三項に規定する場合を除き、次の各号に掲げる債権について、それぞれ当該各号に定める内容を定める。
一  再生計画認可の決定の確定時までに弁済期が到来する住宅資金貸付債権の元本(再生債務者が期限の利益を喪失しなかったとすれば弁済期が到来しないものを除く。)及びこれに対する再生計画認可の決定の確定後の住宅約定利息(住宅資金貸付契約において定められた約定利率による利息をいう。以下この条において同じ。)並びに再生計画認可の決定の確定時までに生ずる住宅資金貸付債権の利息及び不履行による損害賠償 その全額を、再生計画(住宅資金特別条項を除く。)で定める弁済期間(当該期間が五年を超える場合にあっては、再生計画認可の決定の確定から五年。第三項において「一般弁済期間」という。)内に支払うこと。
二  再生計画認可の決定の確定時までに弁済期が到来しない住宅資金貸付債権の元本(再生債務者が期限の利益を喪失しなかったとすれば弁済期が到来しないものを含む。)及びこれに対する再生計画認可の決定の確定後の住宅約定利息 住宅資金貸付契約における債務の不履行がない場合についての弁済の時期及び額に関する約定に従って支払うこと。
2  前項の規定による住宅資金特別条項を定めた再生計画の認可の見込みがない場合には、住宅資金特別条項において、住宅資金貸付債権に係る債務の弁済期を住宅資金貸付契約において定められた最終の弁済期(以下この項及び第四項において「約定最終弁済期」という。)から後の日に定めることができる。この場合における権利の変更の内容は、次に掲げる要件のすべてを具備するものでなければならない。
一  次に掲げる債権について、その全額を支払うものであること。
イ 住宅資金貸付債権の元本及びこれに対する再生計画認可の決定の確定後の住宅約定利息
ロ 再生計画認可の決定の確定時までに生ずる住宅資金貸付債権の利息及び不履行による損害賠償
二  住宅資金特別条項による変更後の最終の弁済期が約定最終弁済期から十年を超えず、かつ、住宅資金特別条項による変更後の最終の弁済期における再生債務者の年齢が七十歳を超えないものであること。
三  第一号イに掲げる債権については、一定の基準により住宅資金貸付契約における弁済期と弁済期との間隔及び各弁済期における弁済額が定められている場合には、当該基準におおむね沿うものであること。
3  前項の規定による住宅資金特別条項を定めた再生計画の認可の見込みがない場合には、一般弁済期間の範囲内で定める期間(以下この項において「元本猶予期間」という。)中は、住宅資金貸付債権の元本の一部及び住宅資金貸付債権の元本に対する元本猶予期間中の住宅約定利息のみを支払うものとすることができる。この場合における権利の変更の内容は、次に掲げる要件のすべてを具備するものでなければならない。
一  前項第一号及び第二号に掲げる要件があること。
二  前項第一号イに掲げる債権についての元本猶予期間を経過した後の弁済期及び弁済額の定めについては、一定の基準により住宅資金貸付契約における弁済期と弁済期との間隔及び各弁済期における弁済額が定められている場合には、当該基準におおむね沿うものであること。
4  住宅資金特別条項によって権利の変更を受ける者の同意がある場合には、前三項の規定にかかわらず、約定最終弁済期から十年を超えて住宅資金貸付債権に係る債務の期限を猶予することその他前三項に規定する変更以外の変更をすることを内容とする住宅資金特別条項を定めることができる。
5  住宅資金特別条項によって権利の変更を受ける者と他の再生債権者との間については第百五十五条第一項の規定を、住宅資金特別条項については同条第三項の規定を、住宅資金特別条項によって権利の変更を受ける者については第百六十条及び第百六十五条第二項の規定を適用しない。
(住宅資金特別条項を定めた再生計画案の提出等)
第二百条  住宅資金特別条項を定めた再生計画案は、再生債務者のみが提出することができる。
2  再生債務者により住宅資金特別条項を定めた再生計画案が提出され、かつ、次の各号のいずれかに該当することとなったときは、当該各号に定める時までに届出再生債権者が再生債権の調査において第百九十八条第一項に規定する住宅資金貸付債権の内容について述べた異議は、それぞれその時においてその効力を失う。ただし、これらの時までに、当該異議に係る再生債権の確定手続が終了していない場合に限る。
一  いずれの届出再生債権者も裁判所の定めた期間又はその伸長した期間内に住宅資金特別条項の定めのない再生計画案を提出しなかったとき 当該期間が満了した時
二  届出再生債権者が提出した住宅資金特別条項の定めのない再生計画案が決議に付されず、住宅資金特別条項を定めた再生計画案のみが決議に付されたとき 第百六十七条ただし書に規定する決定がされた時
三  住宅資金特別条項を定めた再生計画案及び届出再生債権者が提出した住宅資金特別条項の定めのない再生計画案が共に決議に付され、住宅資金特別条項を定めた再生計画案が可決されたとき 当該可決がされた時
3  前項の規定により同項本文の異議が効力を失った場合には、当該住宅資金貸付債権については、第百四条第一項及び第三項の規定は、適用しない。
4  再生債務者により住宅資金特別条項を定めた再生計画案が提出され、かつ、第二項各号のいずれかに該当することとなったときは、当該各号に定める時までに第百九十八条第一項に規定する住宅資金貸付債権を有する再生債権者であって当該住宅資金貸付債権以外に再生債権を有しないもの又は保証会社であって住宅資金貸付債権に係る債務の保証に基づく求償権以外に再生債権を有しないものが再生債権の調査において述べた異議についても、第二項と同様とする。この場合においては、当該異議を述べた者には、第百四条第三項及び第百八十条第二項の規定による確定判決と同一の効力は、及ばない。
5  再生債務者により住宅資金特別条項を定めた再生計画案が提出され、かつ、第二項第一号又は第二号のいずれかに該当することとなったときは、前項前段に規定する再生債権者又は保証会社は、第百七十条第一項本文の異議を述べることができない。
(住宅資金特別条項を定めた再生計画案の決議等)
第二百一条  住宅資金特別条項を定めた再生計画案の決議においては、住宅資金特別条項によって権利の変更を受けることとされている者及び保証会社は、住宅資金貸付債権又は住宅資金貸付債権に係る債務の保証に基づく求償権については、議決権を有しない。
2  住宅資金特別条項を定めた再生計画案が提出されたときは、裁判所は、当該住宅資金特別条項によって権利の変更を受けることとされている者の意見を聴かなければならない。第百六十七条の規定による修正(その修正が、住宅資金特別条項によって権利の変更を受けることとされている者に不利な影響を及ぼさないことが明らかな場合を除く。)があった場合における修正後の住宅資金特別条項を定めた再生計画案についても、同様とする。
3  住宅資金特別条項を定めた再生計画案に対する第百六十九条第一項の規定の適用については、同項第三号中「第百七十四条第二項各号(第三号を除く。)」とあるのは、「第二百二条第二項各号(第四号を除く。)」とする。
(住宅資金特別条項を定めた再生計画の認可又は不認可の決定等)
第二百二条  住宅資金特別条項を定めた再生計画案が可決された場合には、裁判所は、次項の場合を除き、再生計画認可の決定をする。
2  裁判所は、住宅資金特別条項を定めた再生計画案が可決された場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、再生計画不認可の決定をする。
一  第百七十四条第二項第一号又は第四号に規定する事由があるとき。
二  再生計画が遂行可能であると認めることができないとき。
三  再生債務者が住宅の所有権又は住宅の用に供されている土地を住宅の所有のために使用する権利を失うこととなると見込まれるとき。
四  再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったとき。
3  住宅資金特別条項によって権利の変更を受けることとされている者は、再生債権の届出をしていない場合であっても、住宅資金特別条項を定めた再生計画案を認可すべきかどうかについて、意見を述べることができる。
4  住宅資金特別条項を定めた再生計画の認可又は不認可の決定があったときは、住宅資金特別条項によって権利の変更を受けることとされている者で再生債権の届出をしていないものに対しても、その主文及び理由の要旨を記載した書面を送達しなければならない。
5  住宅資金特別条項を定めた再生計画案が可決された場合には、第百七十四条第一項及び第二項の規定は、適用しない。
(住宅資金特別条項を定めた再生計画の効力等)
第二百三条  住宅資金特別条項を定めた再生計画の認可の決定が確定したときは、第百七十七条第二項の規定は、住宅及び住宅の敷地に設定されている第百九十六条第三号に規定する抵当権並びに住宅資金特別条項によって権利の変更を受けた者が再生債務者の保証人その他再生債務者と共に債務を負担する者に対して有する権利については、適用しない。この場合において、再生債務者が連帯債務者の一人であるときは、住宅資金特別条項による期限の猶予は、他の連帯債務者に対しても効力を有する。
2  住宅資金特別条項を定めた再生計画の認可の決定が確定したときは、住宅資金特別条項によって変更された後の権利については、住宅資金特別条項において、期限の利益の喪失についての定めその他の住宅資金貸付契約における定めと同一の定めがされたものとみなす。ただし、第百九十九条第四項の同意を得て別段の定めをすることを妨げない。
3  住宅資金特別条項を定めた再生計画の認可の決定が確定した場合における第百二十三条第二項及び第百八十一条第二項の規定の適用については、これらの規定中「再生計画で定められた弁済期間」とあるのは「再生計画(住宅資金特別条項を除く。)で定められた弁済期間」と、「再生計画に基づく弁済」とあるのは「再生計画(住宅資金特別条項を除く。)に基づく弁済」とする。
4  住宅資金特別条項によって変更された後の権利については前項の規定により読み替えて適用される第百八十一条第二項の規定を、住宅資金特別条項によって権利の変更を受けた者については第百八十二条の規定を適用しない。
(保証会社が保証債務を履行した場合の取扱い)
第二百四条  住宅資金特別条項を定めた再生計画の認可の決定が確定した場合において、保証会社が住宅資金貸付債権に係る保証債務を履行していたときは、当該保証債務の履行は、なかったものとみなす。ただし、保証会社が当該保証債務を履行したことにより取得した権利に基づき再生債権者としてした行為に影響を及ぼさない。
2  前項本文の場合において、当該認可の決定の確定前に再生債務者が保証会社に対して同項の保証債務に係る求償権についての弁済をしていたときは、再生債務者は、同項本文の規定により住宅資金貸付債権を有することとなった者に対して、当該弁済をした額につき当該住宅資金貸付債権についての弁済をすることを要しない。この場合において、保証会社は、当該弁済を受けた額を同項本文の規定により住宅資金貸付債権を有することとなった者に対して交付しなければならない。
(査定の申立てがされなかった場合等の取扱い)
第二百五条  第百九十八条第一項に規定する住宅資金貸付債権についての第百五条第一項に規定する査定の申立てが同条第二項の不変期間内にされなかった場合(第百七条及び第百九条の場合を除く。)、第二百条第二項の規定により同項本文の異議が効力を失った場合及び保証会社が住宅資金貸付債権に係る保証債務を履行した場合には、住宅資金特別条項については、第百五十七条、第百五十九条、第百六十四条第二項後段及び第百七十九条の規定は、適用しない。
2  住宅資金特別条項を定めた再生計画の認可の決定が確定したときは、前項に規定する場合(保証会社が住宅資金貸付債権に係る保証債務を履行した場合を除く。)における当該住宅資金貸付債権を有する再生債権者の権利及び前条第一項本文の規定により住宅資金貸付債権を有することとなる者の権利は、住宅資金特別条項における第百五十六条の一般的基準に従い、変更される。
(住宅資金特別条項を定めた再生計画の取消し等)
第二百六条  住宅資金特別条項を定めた再生計画についての第百八十九条第一項第二号に掲げる事由を理由とする再生計画取消しの申立ては、同条第三項の規定にかかわらず、再生計画の定めによって認められた権利(住宅資金特別条項によって変更された後のものを除く。)の全部(履行された部分を除く。)について裁判所が評価した額の十分の一以上に当たる当該権利を有する再生債権者であって、その有する履行期限が到来した当該権利の全部又は一部について履行を受けていないものに限り、することができる。
2  住宅資金特別条項を定めた再生計画の取消しの決定が確定した場合における第百八十九条第七項ただし書及び第百九十条第一項ただし書の規定の適用については、これらの規定中「再生債権者が再生計画によって得た権利」とあるのは、「再生債権者が再生計画によって得た権利及び第二百四条第一項本文の規定により生じた効力」とする。
第13章 小規模個人再生及び給与所得者等再生に関する特則
第一節 小規模個人再生
(手続開始の要件等)
第二百二十一条  個人である債務者のうち、将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがあり、かつ、再生債権の総額(住宅資金貸付債権の額、別除権の行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権の額及び再生手続開始前の罰金等の額を除く。)が五千万円を超えないものは、この節に規定する特則の適用を受ける再生手続(以下「小規模個人再生」という。)を行うことを求めることができる。
2  小規模個人再生を行うことを求める旨の申述は、再生手続開始の申立ての際(債権者が再生手続開始の申立てをした場合にあっては、再生手続開始の決定があるまで)にしなければならない。
3  前項の申述をするには、次に掲げる事項を記載した書面(以下「債権者一覧表」という。)を提出しなければならない。
一  再生債権者の氏名又は名称並びに各再生債権の額及び原因
二  別除権者については、その別除権の目的である財産及び別除権の行使によって弁済を受けることができないと見込まれる再生債権の額(以下「担保不足見込額」という。)
三  住宅資金貸付債権については、その旨
四  住宅資金特別条項を定めた再生計画案を提出する意思があるときは、その旨
五  その他最高裁判所規則で定める事項
4  再生債務者は、債権者一覧表に各再生債権についての再生債権の額及び担保不足見込額を記載するに当たっては、当該額の全部又は一部につき異議を述べることがある旨をも記載することができる。
5  第一項に規定する再生債権の総額の算定及び債権者一覧表への再生債権の額の記載に関しては、第八十七条第一項第一号から第三号までに掲げる再生債権は、当該各号に掲げる債権の区分に従い、それぞれ当該各号に定める金額の債権として取り扱うものとする。6 再生債務者は、第二項の申述をするときは、当該申述が第一項又は第三項に規定する要件に該当しないことが明らかになった場合においても再生手続の開始を求める意思があるか否かを明らかにしなければならない。ただし、債権者が再生手続開始の申立てをした場合については、この限りでない。
7  裁判所は、第二項の申述が前項本文に規定する要件に該当しないことが明らかであると認めるときは、再生手続開始の決定前に限り、再生事件を通常の再生手続により行う旨の決定をする。ただし、再生債務者が前項本文の規定により再生手続の開始を求める意思がない旨を明らかにしていたときは、裁判所は、再生手続開始の申立てを棄却しなければならない。
(再生計画による権利の変更の内容等)
第二百二十九条  小規模個人再生における再生計画による権利の変更の内容は、不利益を受ける再生債権者の同意がある場合又は少額の再生債権の弁済の時期若しくは第八十四条第二項に掲げる請求権について別段の定めをする場合を除き、再生債権者の間では平等でなければならない。
2  再生債権者の権利を変更する条項における債務の期限の猶予については、前項の規定により別段の定めをする場合を除き、次に定めるところによらなければならない。
一  弁済期が三月に一回以上到来する分割払の方法によること。
二  最終の弁済期を再生計画認可の決定の確定の日から三年後の日が属する月中の日(特別の事情がある場合には、再生計画認可の決定の確定の日から五年を超えない範囲内で、三年後の日が属する月の翌月の初日以降の日)とすること。
3  第一項の規定にかかわらず、再生債権のうち次に掲げる請求権については、当該再生債権者の同意がある場合を除き、債務の減免の定めその他権利に影響を及ぼす定めをすることができない。
一  再生債務者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
二  再生債務者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)
三  次に掲げる義務に係る請求権
イ 民法第七百五十二条 の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
ロ 民法第七百六十条 の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
ハ 民法第七百六十六条 (同法第七百四十九条、第七百七十一条及び第七百八十八条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務
ニ 民法第八百七十七条 から第八百八十条 までの規定による扶養の義務
ホ イからニまでに掲げる義務に類する義務であって、契約に基づくもの
4  住宅資金特別条項によって権利の変更を受ける者と他の再生債権者との間については第一項の規定を、住宅資金特別条項については第二項の規定を適用しない。
(再生計画案の決議)
第二百三十条  裁判所は、一般異議申述期間(特別異議申述期間が定められた場合には、当該特別異議申述期間を含む。)が経過し、かつ、第百二十五条第一項の報告書の提出がされた後でなければ、再生計画案を決議に付することができない。当該一般異議申述期間内に第二百二十六条第一項本文の規定による異議が述べられた場合(特別異議申述期間が定められた場合には、当該特別異議申述期間内に同条第三項の規定による異議が述べられた場合を含む。)には、第二百二十七条第一項本文の不変期間を経過するまでの間(当該不変期間内に再生債権の評価の申立てがあったときは、再生債権の評価がされるまでの間)も、同様とする。
2  裁判所は、再生計画案について第百七十四条第二項各号(第三号を除く。住宅資金特別条項を定めた再生計画案については、第二百二条第二項第一号から第三号まで)又は次条第二項各号のいずれかに該当する事由があると認める場合には、その再生計画案を決議に付することができない。
3  再生計画案の提出があったときは、裁判所は、前二項の場合を除き、議決権行使の方法としての第百六十九条第二項第二号に掲げる方法及び第百七十二条第二項(同条第三項において準用する場合を含む。)の規定により議決権の不統一行使をする場合における裁判所に対する通知の期限を定めて、再生計画案を決議に付する旨の決定をする。
4  前項の決定をした場合には、その旨を公告するとともに、議決権者に対して、同項に規定する期限、再生計画案の内容又はその要旨及び再生計画案に同意しない者は裁判所の定める期間内に同項の規定により定められた方法によりその旨を回答すべき旨を通知しなければならない。
5  第三項の決定があった場合における第百七十二条第二項(同条第三項において準用する場合を含む。)の規定の適用については、同条第二項中「第百六十九条第二項前段」とあるのは、「第二百三十条第三項」とする。
6  第四項の期間内に再生計画案に同意しない旨を同項の方法により回答した議決権者が議決権者総数の半数に満たず、かつ、その議決権の額が議決権者の議決権の総額の二分の一を超えないときは、再生計画案の可決があったものとみなす。
7  再生計画案に同意しない旨を第四項の方法により回答した議決権者のうち第百七十二条第二項(同条第三項において準用する場合を含む。)の規定によりその有する議決権の一部のみを行使したものがあるときの前項の規定の適用については、当該議決権者一人につき、議決権者総数に一を、再生計画案に同意しない旨を第四項の方法により回答した議決権者の数に二分の一を、それぞれ加算するものとする。
8  届出再生債権者は、一般異議申述期間又は特別異議申述期間を経過するまでに異議が述べられなかった届出再生債権(第二百二十六条第五項に規定するものを除く。以下「無異議債権」という。)については届出があった再生債権の額又は担保不足見込額に応じて、第二百二十七条第七項の規定により裁判所が債権の額又は担保不足見込額を定めた再生債権(以下「評価済債権」という。)についてはその額に応じて、それぞれ議決権を行使することができる。
(再生計画の認可又は不認可の決定)
第二百三十一条  小規模個人再生において再生計画案が可決された場合には、裁判所は、第百七十四条第二項(当該再生計画案が住宅資金特別条項を定めたものであるときは、第二百二条第二項)又は次項の場合を除き、再生計画認可の決定をする。
2  小規模個人再生においては、裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合にも、再生計画不認可の決定をする。
一  再生債務者が将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがないとき。
二  無異議債権の額及び評価済債権の額の総額(住宅資金貸付債権の額、別除権の行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権の額及び第八十四条第二項に掲げる請求権の額を除く。)が五千万円を超えているとき。
三  前号に規定する無異議債権の額及び評価済債権の額の総額が三千万円を超え五千万円以下の場合においては、当該無異議債権及び評価済債権(別除権の行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権及び第八十四条第二項各号に掲げる請求権を除く。以下「基準債権」という。)に対する再生計画に基づく弁済の総額(以下「計画弁済総額」という。)が当該無異議債権の額及び評価済債権の額の総額の十分の一を下回っているとき。
四  第二号に規定する無異議債権の額及び評価済債権の額の総額が三千万円以下の場合においては、計画弁済総額が基準債権の総額の五分の一又は百万円のいずれか多い額(基準債権の総額が百万円を下回っているときは基準債権の総額、基準債権の総額の五分の一が三百万円を超えるときは三百万円)を下回っているとき。
五  再生債務者が債権者一覧表に住宅資金特別条項を定めた再生計画案を提出する意思がある旨の記載をした場合において、再生計画に住宅資金特別条項の定めがないとき。
(再生計画の効力等)
第二百三十二条  小規模個人再生において再生計画認可の決定が確定したときは、第八十七条第一項第一号から第三号までに掲げる債権は、それぞれ当該各号に定める金額の再生債権に変更される。
2  小規模個人再生において再生計画認可の決定が確定したときは、すべての再生債権者の権利(第八十七条第一項第一号から第三号までに掲げる債権については前項の規定により変更された後の権利とし、第二百二十九条第三項各号に掲げる請求権及び再生手続開始前の罰金等を除く。)は、第百五十六条の一般的基準に従い、変更される。
(再生計画の変更)
第二百三十四条  小規模個人再生においては、再生計画認可の決定があった後やむを得ない事由で再生計画を遂行することが著しく困難となったときは、再生債務者の申立てにより、再生計画で定められた債務の期限を延長することができる。この場合においては、変更後の債務の最終の期限は、再生計画で定められた債務の最終の期限から二年を超えない範囲で定めなければならない。
2  前項の規定により再生計画の変更の申立てがあった場合には、再生計画案の提出があった場合の手続に関する規定を準用する。
3  第百七十五条(第二項を除く。)及び第百七十六条の規定は、再生計画の変更の決定があった場合について準用する。
(計画遂行が極めて困難となった場合の免責)
第二百三十五条  再生債務者がその責めに帰することができない事由により再生計画を遂行することが極めて困難となり、かつ、次の各号のいずれにも該当する場合には、裁判所は、再生債務者の申立てにより、免責の決定をすることができる。
一  第二百三十二条第二項の規定により変更された後の各基準債権及び同条第三項ただし書に規定する各再生債権に対してその四分の三以上の額の弁済を終えていること。
二  第二百二十九条第三項各号に掲げる請求権(第二百三十二条第四項(同条第五項ただし書において準用する場合を含む。)の規定により第百五十六条の一般的基準に従って弁済される部分に限る。)に対してその四分の三以上の額の弁済を終えていること。
三  免責の決定をすることが再生債権者の一般の利益に反するものでないこと。
四  前条の規定による再生計画の変更をすることが極めて困難であること。
2  前項の申立てがあったときは、裁判所は、届出再生債権者の意見を聴かなければならない。
3  免責の決定があったときは、再生債務者及び届出再生債権者に対して、その主文及び理由の要旨を記載した書面を送達しなければならない。
4  第一項の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
5  免責の決定は、確定しなければその効力を生じない。
6  免責の決定が確定した場合には、再生債務者は、履行した部分を除き、再生債権者に対する債務(第二百二十九条第三項各号に掲げる請求権及び再生手続開始前の罰金等を除く。)の全部についてその責任を免れる。
7  免責の決定の確定は、別除権者が有する第五十三条第一項に規定する担保権、再生債権者が再生債務者の保証人その他再生債務者と共に債務を負担する者に対して有する権利及び再生債務者以外の者が再生債権者のために提供した担保に影響を及ぼさない。
8  再生計画が住宅資金特別条項を定めたものである場合における第二項及び第三項の規定の適用については、第二項中「届出再生債権者」とあるのは「届出再生債権者及び住宅資金特別条項によって権利の変更を受けた者」と、第三項中「及び届出再生債権者」とあるのは「、届出再生債権者及び住宅資金特別条項によって権利の変更を受けた者」とする。
第二節 給与所得者等再生
(手続開始の要件等)
第二百三十九条  第二百二十一条第一項に規定する債務者のうち、給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者であって、かつ、その額の変動の幅が小さいと見込まれるものは、この節に規定する特則の適用を受ける再生手続(以下「給与所得者等再生」という。)を行うことを求めることができる。
2  給与所得者等再生を行うことを求める旨の申述は、再生手続開始の申立ての際(債権者が再生手続開始の申立てをした場合にあっては、再生手続開始の決定があるまで)にしなければならない。
3  再生債務者は、前項の申述をするときは、当該申述が第二百二十一条第一項又は第二百四十四条において準用する第二百二十一条第三項に規定する要件に該当しないことが明らかになった場合に通常の再生手続による手続の開始を求める意思があるか否か及び第五項各号のいずれかに該当する事由があることが明らかになった場合に小規模個人再生による手続の開始を求める意思があるか否かを明らかにしなければならない。ただし、債権者が再生手続開始の申立てをした場合については、この限りでない。
4  裁判所は、第二項の申述が前項本文に規定する要件に該当しないことが明らかであると認めるときは、再生手続開始の決定前に限り、再生事件を通常の再生手続により行う旨の決定をする。ただし、再生債務者が前項本文の規定により通常の再生手続による手続の開始を求める意思がない旨を明らかにしていたときは、裁判所は、再生手続開始の申立てを棄却しなければならない。
5  前項に規定する場合のほか、裁判所は、第二項の申述があった場合において、次の各号のいずれかに該当する事由があることが明らかであると認めるときは、再生手続開始の決定前に限り、再生事件を小規模個人再生により行う旨の決定をする。ただし、再生債務者が第三項本文の規定により小規模個人再生による手続の開始を求める意思がない旨を明らかにしていたときは、裁判所は、再生手続開始の申立てを棄却しなければならない。一 再生債務者が、給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者に該当しないか、又はその額の変動の幅が小さいと見込まれる者に該当しないこと。
二  再生債務者について次のイからハまでに掲げる事由のいずれかがある場合において、それぞれイからハまでに定める日から七年以内に当該申述がされたこと。
イ 給与所得者等再生における再生計画が遂行されたこと 当該再生計画認可の決定の確定の日
ロ 第二百三十五条第一項(第二百四十四条において準用する場合を含む。)に規定する免責の決定が確定したこと 当該免責の決定に係る再生計画認可の決定の確定の日
ハ 破産法第二百五十二条第一項 に規定する免責許可の決定が確定したこと 当該決定の確定の日
(再生計画案についての意見聴取)
第二百四十条  給与所得者等再生において再生計画案の提出があった場合には、裁判所は、次に掲げる場合を除き、再生計画案を認可すべきかどうかについての届出再生債権者の意見を聴く旨の決定をしなければならない。
一  再生計画案について次条第二項各号のいずれかに該当する事由があると認めるとき。二 一般異議申述期間が経過していないか、又は当該一般異議申述期間内に第二百四十四条において準用する第二百二十六条第一項本文の規定による異議が述べられた場合において第二百四十四条において準用する第二百二十七条第一項本文の不変期間が経過していないとき(当該不変期間内に再生債権の評価の申立てがあったときは、再生債権の評価がされていないとき)。
三  特別異議申述期間が定められた場合において、当該特別異議申述期間が経過していないか、又は当該特別異議申述期間内に第二百四十四条において準用する第二百二十六条第三項の規定による異議が述べられたときであって第二百四十四条において準用する第二百二十七条第一項本文の不変期間が経過していないとき(当該不変期間内に再生債権の評価の申立てがあったときは、再生債権の評価がされていないとき)。
四  第百二十五条第一項の報告書の提出がされていないとき。
2  前項の決定をした場合には、その旨を公告し、かつ、届出再生債権者に対して、再生計画案の内容又はその要旨を通知するとともに、再生計画案について次条第二項各号のいずれかに該当する事由がある旨の意見がある者は裁判所の定める期間内にその旨及び当該事由を具体的に記載した書面を提出すべき旨を通知しなければならない。
3  給与所得者等再生における第九十五条第四項及び第百六十七条ただし書の規定の適用については、これらの規定中「再生計画案を決議に付する旨の決定」とあるのは、「再生計画案を認可すべきかどうかについての届出再生債権者の意見を聴く旨の決定」とする。(再生計画の認可又は不認可の決定等)
第二百四十一条  前条第二項の規定により定められた期間が経過したときは、裁判所は、次項の場合を除き、再生計画認可の決定をする。
2  裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合には、再生計画不認可の決定をする。一  第百七十四条第二項第一号又は第二号に規定する事由(再生計画が住宅資金特別条項を定めたものである場合については、同項第一号又は第二百二条第二項第二号に規定する事由)があるとき。
二  再生計画が再生債権者の一般の利益に反するとき。
三  再生計画が住宅資金特別条項を定めたものである場合において、第二百二条第二項第三号に規定する事由があるとき。
四  再生債務者が、給与又はこれに類する定期的な収入を得ている者に該当しないか、又はその額の変動の幅が小さいと見込まれる者に該当しないとき。
五  第二百三十一条第二項第二号から第五号までに規定する事由のいずれかがあるとき。六 第二百三十九条第五項第二号に規定する事由があるとき。
七  計画弁済総額が、次のイからハまでに掲げる区分に応じ、それぞれイからハまでに定める額から再生債務者及びその扶養を受けるべき者の最低限度の生活を維持するために必要な一年分の費用の額を控除した額に二を乗じた額以上の額であると認めることができないとき。
イ 再生債務者の給与又はこれに類する定期的な収入の額について、再生計画案の提出前二年間の途中で再就職その他の年収について五分の一以上の変動を生ずべき事由が生じた場合 当該事由が生じた時から再生計画案を提出した時までの間の収入の合計額からこれに対する所得税、個人の道府県民税又は都民税及び個人の市町村民税又は特別区民税並びに所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第七十四条第二項に規定する社会保険料(ロ及びハにおいて「所得税等」という。)に相当する額を控除した額を一年間当たりの額に換算した額
ロ 再生債務者が再生計画案の提出前二年間の途中で、給与又はこれに類する定期的な収入を得ている者でその額の変動の幅が小さいと見込まれるものに該当することとなった場合(イに掲げる区分に該当する場合を除く。) 給与又はこれに類する定期的な収入を得ている者でその額の変動の幅が小さいと見込まれるものに該当することとなった時から再生計画案を提出した時までの間の収入の合計額からこれに対する所得税等に相当する額を控除した額を一年間当たりの額に換算した額
ハ イ及びロに掲げる区分に該当する場合以外の場合 再生計画案の提出前二年間の再生債務者の収入の合計額からこれに対する所得税等に相当する額を控除した額を二で除した額
3  前項第七号に規定する一年分の費用の額は、再生債務者及びその扶養を受けるべき者の年齢及び居住地域、当該扶養を受けるべき者の数、物価の状況その他一切の事情を勘案して政令で定める。
(再生手続の終了に伴う職権による破産手続開始の決定)
第二百五十条  破産手続開始前の再生債務者について再生手続開始の申立ての棄却、再生手続廃止、再生計画不認可又は再生計画取消しの決定が確定した場合において、裁判所は、当該再生債務者に破産手続開始の原因となる事実があると認めるときは、職権で、破産法 に従い、破産手続開始の決定をすることができる。
2  破産手続開始後の再生債務者について再生計画認可の決定の確定により破産手続が効力を失った後に第百九十三条若しくは第百九十四条の規定による再生手続廃止又は再生計画取消しの決定が確定した場合には、裁判所は、職権で、破産法 に従い、破産手続開始の決定をしなければならない。ただし、前条第一項後段の規定による破産手続開始の申立てに基づいて破産手続開始の決定をする場合は、この限りでない。

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