新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.834、2009/1/16 17:52 https://www.shinginza.com/qa-kojinsaisei.htm

【債務整理・民事再生・個人給与所得者再生】

質問:私は、1000万円の借金を抱えていますが、現在の収入では、とても返せそうにありません。自己破産を検討しましたが、私はガードマンをやっているので、破産はできないといわれたことがあります。その場合には民事再生という方法があるとのことですが、どのような方法があるのか簡単に説明してください。

回答:
1.民事再生法の特則である小規模個人再生(法221条以下)か給与所得者再生手続き(法239条)が利用できると思われます。
2.どちらを選ぶかは、貴方の給与所得収入により計算される可処分所得額と1000万円の総負債額の20%と申立て時に保有する資産の比較考慮により決定することが適切でしょう。
3.民事再生に関する他の事例集もありますので参考にしてください。

解説:
債務整理、民事再生法の考え方。

民事再生法は、経済的破綻する危険性のある債務者が経営権、財産管理権を保有しながら債権者の一定の同意により一部の負債額を分割払いすることにより破産を回避し経済的な再起更生を一刻も早く達成し、公正な経済社会秩序を維持し、最終的に個人の尊厳を確保しようとする手続きです(民事再生法1条、法の支配)。自由主義経済体制、自由競争のもとでは必然的に敗者すなわち債務整理を必要な人が生まれ、資本の論理によりその状態は恒常化します。破綻した以上、残り少ない財産は、債権者平等の原則の趣旨から分配され、資産を失った債務者は長期間にわたり残された負債の弁済に引き続き追われることになります。このような事態は、公平、公正で自由な社会経済秩序維持、個人の尊厳保障という理想から直ちに是正され、自由競争社会に一刻も早く復帰し再度スタートラインにつくことを保障するため、債務者の残余財産を公正で公平、迅速低廉に清算後直ちに経済的再起更生を実現しなければいけません。破産法は、財産の清算後負債を免責し復権を認めていますが、自宅等財産的基礎をすべて失っており事実上再起更生は容易ではありません。これに対し、私的整理、民事調停、特定調停、破産法の強制和議、破産予防の和議法、会社更生法が用意されていましたが、債権者の厳しい同意の要件、事業の管理権の喪失、担保権実行による自宅の喪失等により債務者の再起更生はなお難しい面がありました。そこで債権者の同意の要件緩和(法172条の3、債権者の数、額の過半数)、経営権確保(法38条)、自宅確保(法196条住宅資金特別条項)等を内容とする民事再生法(1条以下)、特則として小規模個人再生(法221条以下。弁済額、期間の限定、議決権行使の簡易化)、給与所得者再生手続き(法239条以下、さらに加えて債権者の同意不要)が平成12年後施行され、債務者の勤務経済状態、負債額に応じた迅速な経済的再起更生の制度がとられています。以上の趣旨から法律は規定されており、解釈されます。

1.自己破産は、負債の免責を受けて(一部免責されない債務もあります)、生活を立て直すことの出来る制度です。通常は、勤務先に知られることもありませんし、仮に知られたとしても、そのことを積極的な解雇事由にすることはできません。しかし、資格を必要とする一定の職業については、破産が欠格事由となり、自己破産をすることによって職を失ってしまうことがあります。破産者は経済的に破綻していますから、弁護士、税理士等財産関係にかかわる国家資格を有する業務につくことは、法律上制限を受けるのです。その他は、貴方のようなガードマン(警備員)、保険外交員等(保険業法279条。警備業法23条。)です。但し、破産手続きは破産者の経済的再起更生を目的として懲戒主義を採用していませんから、通常後の免責、復権によりそのような制限がなくなるのですが(破産法255条、256条。復権は破産によって失った行使の資格を回復することです。)、事実上失った職を回復することは困難です。それを回避するために、一定の職業を有している方で、現在の債務の返済が困難な方には、破産予防のため任意整理、特定調停等の手続きがありますが、基本的に総債権者の同意が必要であり(消費者金融など債権者側はそのような事態を察知して同意に応じないことが考えられます)、破産を回避できるかどうか分かりません。そこで債務を圧縮して、一部を分割弁済することにより、債務残額の免責をうけることができる、民事再生の手続が適していることがあります。

2.民事再生は、本来は、企業が、破産(倒産)によって、全てを清算するのではなく、営業を続けながら(したがって、破産と異なり債務者の財産の管理権限が管財人などに移ることは無く、債務者が引き続き営業を続けることが出来るのです)、債務を圧縮して建て直しを図るという目的で創設された制度であり、主に負債額が大きい企業の再建を念頭においているため、非常に手続が厳格で煩雑であり、代理人弁護士・裁判所に支払わなければならない手数料(予納金も200万円以上、弁護士費用も準じて高額になります。参考のため事務所ホームページ、予納金、報酬参照)もかなり高額になりました。

3.しかし、近時の債務整理の多様化の要請に伴い、個人にも利用しやすい民事再生手続が創設されています。相談者のようなケースでは、個人向けに規定されている、小規模個人再生、または給与所得者再生という手続が適していると思われます。

4.今回は、小規模個人再生と給与所得者再生のおおまかな違いと、どちらを選択するべきか、についてご説明します。小規模個人再生は、将来、継続的にまたは反復して収入を得る見込みがあり、かつ債務の総額(住宅ローン等一部は除きます)が5000万円を超えない個人債務者(個人事業主なども利用できます)が利用できます。

5.裁判所は、企業の再生手続と異なり、基本的に債務者の申立を元に要件を審査します(必要に応じて個人再生委員を選任し、詳細な調査をします)。なお、東京地裁では、より迅速な手続の進行のために、各手続きにおいて、必要な資料や報告を細かく分けています。そして、迅速性と安定性を確保するために、全件個人再生委員を選任する運用をしています。

6.再生債務者は、あらかじめ定められた最低弁済額まで負債を圧縮され、それを一定の期間(原則3年、例外的に難しいと判断された場合は5年)で弁済します。最低弁済額については後述します。再生計画は、債権者の同意で可決されることが必要ですが、小規模個人再生の場合、消極的同意で足ります。すなわち、議決権者の過半数が同意しない旨を書面で回答しなければ、可決されることになります(法230条4項、6項)。

7.一方、給与所得者再生は、小規模個人再生の特則として規定されていますからほとんど要件は同じですが、以下の違いがあります。給与所得者再生を利用できる債務者は、給与またはそれに類する定期的な収入を得る見込みがあり、かつ、その変動の幅が小さいと認められる必要があります(法239条)。再生計画案に債権者の同意は不要であり原則3年間で確実に弁済ができるよう対象者を限定しているのです。この点、一般のサラリーマンなどはこちらを利用することが出来るでしょう。相談者も、アルバイトなどではなく、正社員としてガードマンの仕事をし、定期的に給与を得ているのであればこちらを使うことが出来そうです。給与所得者再生では、要件を全て充たせば裁判所が再生計画を認可しますので、債権者の同意は不要です。給与所得者の経済的破綻は人間としての生きる生活権を侵害しかねず早期に経済的再起更生を図る必要があり、弁済総額の計算を厳格にして(後述する可処分所得の制限)債権者の同意を不要にしたのです。最低弁済総額についてですが、小規模個人再生と給与所得者再生で大きな違いがあります。わかりやすい基準を申し上げますと、破産した場合、財産を清算して配当しますが、この清算予定額よりも弁済額が少なくなってはいけません(法241条2項2号、法174条2項4号。債務者の再起更生を助けるため分割払いに同意し譲歩した債権者との公平を図る清算価値保障の原則です)。ただし、経済的に窮地にあるのが普通ですからこの基準にかかる個人の債務者はそれほど多くありません。次に、債務総額によって、弁済予定額を決めます。

債権総額が100万円以下の場合、全額。
100万円以上500万円以下の場合、100万円。
500万円以上1500万円以下の場合、総額の5分の1(100〜300)。1500万円以上3000万円以下の場合、300万円。
3000万円以上5000万円以下の場合、総額の10分の1(300〜500)。以上のようになります。

8.小規模個人再生ではここまでですが、給与所得者再生の場合、上記の基準のほかに、「可処分所得の2年分」という基準があり、上記金額と可処分所得の2年分のうち多いほうを弁済することになります。ここで、可処分所得とは、収入から税金等を引いたいわゆる手取り収入に、家族の人数、年齢、居住している地域などを元に政令で定められた生活費、冬季特別生活費、住居費、勤労必要経費などを引いたもので、機械的に算出されます。ホームページ自動計算方式参照してください。

9.以上をまとめると、負債総額の基本20%、可処分所得の2年分額、保有資産の計算額の3つの基準から弁済総額は決められます。

10.このように、給与所得者再生は、給与所得者の早期再起更生の必要性から小規模個人再生よりもさらに、安定した収入の中から、厳格な基準に従った金額(収入から計算されるので支払いも確実)を支払うことが出来るので、再生計画の許認可を再生債権者に委ねる必要がない、という趣旨の元に、同意がいらない、としたものであるということが出来ます。

11.ここで、どちらの手続を選ぶべきか、という問題があります。民事再生手続の特則として、小規模個人再生、給与所得者再生の二つの制度が定められた当初は、商店主などの小規模な個人事業主については、収入確保に(給与所得者に比べて)若干の不安もあるため、小規模個人再生を選択し、会社員や公務員などについては、給与所得者再生を選択し、債権者の不同意というリスクを回避して、確実に再生計画の認可を得る、というパターンが想定されていました。しかし、実際は、給与所得者再生よりも、小規模個人再生を選択するケースが年々増えてきています。なぜそのようになっているのかを分析しますと、給与所得者再生手続の選択が可能な人でも、小規模個人再生を選択する人が増えてきている、ということのようです。その理由は2つあります。まず第一に、可処分所得2年分の要件が、案外厳しいことが多いということです。東京都在住で年収400万円程度の独身男性で、可処分所得の額が一年で150万近いという試算になってしまいます(あくまで一例であり、個人差はあります)。これの2年分ということですと、300万近くになり、これを3年間で弁済するとなると一ヶ月の支払が8万円強になります。一方で、最低弁済額300万円を超える負債は、計算上3000万近くなります。個人で民事再生を利用しようとする人の多くは、債務額が500〜1000万程度であり、その最低弁済額は100〜150万円程度です。3年払いなら月額3〜4万円になります。これだけの差があれば、小規模個人再生が利用できればそのほうがよい、という判断になるでしょう。次に、消費者金融をはじめとする業者は、小規模個人再生における不同意を出すことは稀である、ということが挙げられます。個人の債務者は、再生計画が通らなかったとしても、特に大きな財産を有しているわけでもなく、あきらめて破産されてしまうと、結局損失になることが多い、という事情から、債権者が金融業者などの場合は純粋な損得勘定が働き、むやみに不同意の意見は出さないというのが現状のようです。逆に、債権者が金融業者ではなく、取引先などであった場合には、相当な抵抗にあうことがよくありますが、一般のサラリーマンなどでは、このような債権者がいることはほとんどありませんので、小規模個人再生を選択したときのリスクは比較的少ないといえるでしょう。

12.以上のように、現在の制度の下では、給与所得者再生よりも小規模個人再生を選択することが多いといえます。ご質問の相談者の場合も、負債1000万なので、最低弁済額は200万円、3年間ですと月額55000円です。これと、可処分所得の2年分を比較してどちらのほうが支払について容易かどうか、また、どのような種類の債権者が多いか、を分析して、適切な手続を選択するべきでしょう。専門家の中で、一般的な会社員の場合に、比較、検討無しに給与所得者再生を勧める人がいるようであれば、注意しなければなりませんし慎重なる対応が必要でしょう。

13.※なお、民事再生のもう一つの特徴として、住宅ローンは別途維持して支払を続けることにより、購入した自宅を手放さなくて済むというメリットがあります(住宅資金貸付債権に関する特則)。詳細は当HP170番をご参照ください。

≪条文参照≫

民事再生法
第一章 総則
(目的)
第一条  この法律は、経済的に窮境にある債務者について、その債権者の多数の同意を得、かつ、裁判所の認可を受けた再生計画を定めること等により、当該債務者とその債権者との間の民事上の権利関係を適切に調整し、もって当該債務者の事業又は経済生活の再生を図ることを目的とする。
(定義)
第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一  再生債務者 経済的に窮境にある債務者であって、その者について、再生手続開始の申立てがされ、再生手続開始の決定がされ、又は再生計画が遂行されているものをいう。
二  再生債務者等 管財人が選任されていない場合にあっては再生債務者、管財人が選任されている場合にあっては管財人をいう。
三  再生計画 再生債権者の権利の全部又は一部を変更する条項その他の第百五十四条に規定する条項を定めた計画をいう。
四  再生手続 次章以下に定めるところにより、再生計画を定める手続をいう。
第二章 再生手続の開始
第一節 再生手続開始の申立て
(再生手続開始の申立て)
第二十一条  債務者に破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれがあるときは、債務者は、裁判所に対し、再生手続開始の申立てをすることができる。債務者が事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないときも、同様とする。
2  前項前段に規定する場合には、債権者も、再生手続開始の申立てをすることができる。
(他の手続の中止命令等)
第二十六条  裁判所は、再生手続開始の申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、再生手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、次に掲げる手続の中止を命ずることができる。ただし、第二号に掲げる手続については、その手続の申立人である再生債権者に不当な損害を及ぼすおそれがない場合に限る。
一  再生債務者についての破産手続又は特別清算手続
二  再生債権に基づく強制執行、仮差押え若しくは仮処分又は再生債権を被担保債権とする留置権(商法 (明治三十二年法律第四十八号)又は会社法 の規定によるものを除く。)による競売(次条、第二十九条及び第三十九条において「再生債権に基づく強制執行等」という。)の手続で、再生債務者の財産に対して既にされているもの
三  再生債務者の財産関係の訴訟手続
四  再生債務者の財産関係の事件で行政庁に係属しているものの手続
2  裁判所は、前項の規定による中止の命令を変更し、又は取り消すことができる。
3  裁判所は、再生債務者の事業の継続のために特に必要があると認めるときは、再生債務者(保全管理人が選任されている場合にあっては、保全管理人)の申立てにより、担保を立てさせて、第一項第二号の規定により中止した手続の取消しを命ずることができる。
4  第一項の規定による中止の命令、第二項の規定による決定及び前項の規定による取消しの命令に対しては、即時抗告をすることができる。
5  前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
6  第四項に規定する裁判及び同項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。
(再生債権に基づく強制執行等の包括的禁止命令)
第二十七条  裁判所は、再生手続開始の申立てがあった場合において、前条第一項の規定による中止の命令によっては再生手続の目的を十分に達成することができないおそれがあると認めるべき特別の事情があるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、再生手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、すべての再生債権者に対し、再生債務者の財産に対する再生債権に基づく強制執行等の禁止を命ずることができる。ただし、事前に又は同時に、再生債務者の主要な財産に関し第三十条第一項の規定による保全処分をした場合又は第五十四条第一項の規定若しくは第七十九条第一項の規定による処分をした場合に限る。
2  前項の規定による禁止の命令(以下「包括的禁止命令」という。)が発せられた場合には、再生債務者の財産に対して既にされている再生債権に基づく強制執行等の手続は、再生手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、中止する。
3  裁判所は、包括的禁止命令を変更し、又は取り消すことができる。
4  裁判所は、再生債務者の事業の継続のために特に必要があると認めるときは、再生債務者(保全管理人が選任されている場合にあっては、保全管理人)の申立てにより、担保を立てさせて、第二項の規定により中止した再生債権に基づく強制執行等の手続の取消しを命ずることができる。
5  包括的禁止命令、第三項の規定による決定及び前項の規定による取消しの命令に対しては、即時抗告をすることができる。
6  前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
7  包括的禁止命令が発せられたときは、再生債権については、当該命令が効力を失った日の翌日から二月を経過する日までの間は、時効は、完成しない。
(包括的禁止命令に関する公告及び送達等)
第二十八条  包括的禁止命令及びこれを変更し、又は取り消す旨の決定があった場合には、その旨を公告し、その裁判書を再生債務者(保全管理人が選任されている場合にあっては、保全管理人。次項において同じ。)及び申立人に送達し、かつ、その決定の主文を知れている再生債権者及び再生債務者(保全管理人が選任されている場合に限る。)に通知しなければならない。
2  包括的禁止命令及びこれを変更し、又は取り消す旨の決定は、再生債務者に対する裁判書の送達がされた時から、効力を生ずる。
3  前条第四項の規定による取消しの命令及び同条第五項の即時抗告についての裁判(包括的禁止命令を変更し、又は取り消す旨の決定を除く。)があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。
(包括的禁止命令の解除)
第二十九条  裁判所は、包括的禁止命令を発した場合において、再生債権に基づく強制執行等の申立人である再生債権者に不当な損害を及ぼすおそれがあると認めるときは、当該再生債権者の申立てにより、当該再生債権者に対しては包括的禁止命令を解除する旨の決定をすることができる。この場合において、当該再生債権者は、再生債務者の財産に対する再生債権に基づく強制執行等をすることができ、包括的禁止命令が発せられる前に当該再生債権者がした再生債権に基づく強制執行等の手続は、続行する。
2  前項の規定による解除の決定を受けた者に対する第二十七条第七項の規定の適用については、同項中「当該命令が効力を失った日」とあるのは、「第二十九条第一項の規定による解除の決定があった日」とする。
3  第一項の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
4  前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
5  第一項の申立てについての裁判及び第三項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第十条第三項本文の規定は、適用しない。
(仮差押え、仮処分その他の保全処分)
第三十条  裁判所は、再生手続開始の申立てがあった場合には、利害関係人の申立てにより又は職権で、再生手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、再生債務者の業務及び財産に関し、仮差押え、仮処分その他の必要な保全処分を命ずることができる。
2  裁判所は、前項の規定による保全処分を変更し、又は取り消すことができる。
3  第一項の規定による保全処分及び前項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
4  前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
5  第三項に規定する裁判及び同項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第十条第三項本文の規定は、適用しない。
6  裁判所が第一項の規定により再生債務者が再生債権者に対して弁済その他の債務を消滅させる行為をすることを禁止する旨の保全処分を命じた場合には、再生債権者は、再生手続の関係においては、当該保全処分に反してされた弁済その他の債務を消滅させる行為の効力を主張することができない。ただし、再生債権者が、その行為の当時、当該保全処分がされたことを知っていたときに限る。
(再生債務者の地位)
第三十八条  再生債務者は、再生手続が開始された後も、その業務を遂行し、又はその財産(日本国内にあるかどうかを問わない。第六十六条及び第八十一条第一項において同じ。)を管理し、若しくは処分する権利を有する。
2  再生手続が開始された場合には、再生債務者は、債権者に対し、公平かつ誠実に、前項の権利を行使し、再生手続を追行する義務を負う。
3  前二項の規定は、第六十四条第一項の規定による処分がされた場合には、適用しない。
(別除権)
第五十三条  再生手続開始の時において再生債務者の財産につき存する担保権(特別の先取特権、質権、抵当権又は商法 若しくは会社法 の規定による留置権をいう。第三項において同じ。)を有する者は、その目的である財産について、別除権を有する。
2  別除権は、再生手続によらないで、行使することができる。
3  担保権の目的である財産が再生債務者等による任意売却その他の事由により再生債務者財産に属しないこととなった場合において当該担保権がなお存続するときにおける当該担保権を有する者も、その目的である財産について別除権を有する。
第三章 再生手続の機関
第一節 監督委員
(監督命令)
第五十四条  裁判所は、再生手続開始の申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、監督委員による監督を命ずる処分をすることができる。
第二節 調査委員
(調査命令)
第六十二条  裁判所は、再生手続開始の申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、調査委員による調査を命ずる処分をすることができる。
2  裁判所は、前項の処分(以下「調査命令」という。)をする場合には、当該調査命令において、一人又は数人の調査委員を選任し、かつ、調査委員が調査すべき事項及び裁判所に対して調査の結果の報告をすべき期間を定めなければならない。
第三節 管財人
(管理命令)
第六十四条  裁判所は、再生債務者(法人である場合に限る。以下この項において同じ。)の財産の管理又は処分が失当であるとき、その他再生債務者の事業の再生のために特に必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、再生手続の開始の決定と同時に又はその決定後、再生債務者の業務及び財産に関し、管財人による管理を命ずる処分をすることができる。
第四節 保全管理人
(保全管理命令)
第七十九条  裁判所は、再生手続開始の申立てがあった場合において、再生債務者(法人である場合に限る。以下この節において同じ。)の財産の管理又は処分が失当であるとき、その他再生債務者の事業の継続のために特に必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、再生手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、再生債務者の業務及び財産に関し、保全管理人による管理を命ずる処分をすることができる。この場合においては、第六十四条第三項の規定を準用する。
(再生債権となる請求権)
第八十四条  再生債務者に対し再生手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権(共益債権又は一般優先債権であるものを除く。次項において同じ。)は、再生債権とする。
2  次に掲げる請求権も、再生債権とする。
一  再生手続開始後の利息の請求権
二  再生手続開始後の不履行による損害賠償及び違約金の請求権
三  再生手続参加の費用の請求権

破産法
(復権)
第二百五十五条  破産者は、次に掲げる事由のいずれかに該当する場合には、復権する。次条第一項の復権の決定が確定したときも、同様とする。
一  免責許可の決定が確定したとき。
二  第二百十八条第一項の規定による破産手続廃止の決定が確定したとき。
三  再生計画認可の決定が確定したとき。
四  破産者が、破産手続開始の決定後、第二百六十五条の罪について有罪の確定判決を受けることなく十年を経過したとき。
2  前項の規定による復権の効果は、人の資格に関する法令の定めるところによる。
3  免責取消しの決定又は再生計画取消しの決定が確定したときは、第一項第一号又は第三号の規定による復権は、将来に向かってその効力を失う。
(復権の決定)
第二百五十六条  破産者が弁済その他の方法により破産債権者に対する債務の全部についてその責任を免れたときは、破産裁判所は、破産者の申立てにより、復権の決定をしなければならない。
2  裁判所は、前項の申立てがあったときは、その旨を公告しなければならない。
3  破産債権者は、前項の規定による公告が効力を生じた日から起算して三月以内に、裁判所に対し、第一項の申立てについて意見を述べることができる。
4  裁判所は、第一項の申立てについての裁判をしたときは、その裁判書を破産者に、その主文を記載した書面を破産債権者に、それぞれ送達しなければならない。この場合において、裁判書の送達については、第十条第三項本文の規定は、適用しない。
5  第一項の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
6  前項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第十条第三項本文の規定は、適用しない。
第二節 再生債権の届出
(届出)
第九十四条  再生手続に参加しようとする再生債権者は、第三十四条第一項の規定により定められた再生債権の届出をすべき期間(以下「債権届出期間」という。)内に、各債権について、その内容及び原因、約定劣後再生債権であるときはその旨、議決権の額その他最高裁判所規則で定める事項を裁判所に届け出なければならない。
2  別除権者は、前項に規定する事項のほか、別除権の目的である財産及び別除権の行使によって弁済を受けることができないと見込まれる債権の額を届け出なければならない。
第三節 再生債権の調査及び確定
(再生債権者表の作成等)
第九十九条  裁判所書記官は、届出があった再生債権及び第百一条第三項の規定により再生債務者等が認否書に記載した再生債権について、再生債権者表を作成しなければならない。
2  前項の再生債権者表には、各債権について、その内容(約定劣後再生債権であるかどうかの別を含む。以下この節において同じ。)及び原因、議決権の額、第九十四条第二項に規定する債権の額その他最高裁判所規則で定める事項を記載しなければならない。
3  再生債権者表の記載に誤りがあるときは、裁判所書記官は、申立てにより又は職権で、いつでもその記載を更正する処分をすることができる。
(再生債権の調査)
第百条  裁判所による再生債権の調査は、前条第二項に規定する事項について、再生債務者等が作成した認否書並びに再生債権者及び再生債務者(管財人が選任されている場合に限る。)の書面による異議に基づいてする。
(特別調査期間に関する費用の予納)
第百三条の二  前条第一項本文の場合には、裁判所書記官は、相当の期間を定め、同条第二項の再生債権を有する者に対し、同項の費用の予納を命じなければならない。
2  前項の規定による処分は、相当と認める方法で告知することによって、その効力を生ずる。
3  第一項の規定による処分に対しては、その告知を受けた日から一週間の不変期間内に、異議の申立てをすることができる。
4  前項の異議の申立ては、執行停止の効力を有する。
5  第一項の場合において、同項の再生債権を有する者が同項の費用の予納をしないときは、裁判所は、決定で、その者がした再生債権の届出又は届出事項の変更に係る届出を却下しなければならない。
6  前項の規定による却下の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
第六章 再生債務者の財産の調査及び確保
第一節 再生債務者の財産状況の調査
(財産の価額の評定等)
第百二十四条  再生債務者等は、再生手続開始後(管財人については、その就職の後)遅滞なく、再生債務者に属する一切の財産につき再生手続開始の時における価額を評定しなければならない。
2  再生債務者等は、前項の規定による評定を完了したときは、直ちに再生手続開始の時における財産目録及び貸借対照表を作成し、これらを裁判所に提出しなければならない。
3  裁判所は、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、評価人を選任し、再生債務者の財産の評価を命ずることができる。
第四節 担保権の消滅
(担保権消滅の許可等)
第百四十八条  再生手続開始の時において再生債務者の財産につき第五十三条第一項に規定する担保権(以下この条、次条及び第百五十二条において「担保権」という。)が存する場合において、当該財産が再生債務者の事業の継続に欠くことのできないものであるときは、再生債務者等は、裁判所に対し、当該財産の価額に相当する金銭を裁判所に納付して当該財産につき存するすべての担保権を消滅させることについての許可の申立てをすることができる。
第七章 再生計画
第一節 再生計画の条項
(再生計画の条項)
第百五十四条  再生計画においては、次に掲げる事項に関する条項を定めなければならない。
一  全部又は一部の再生債権者の権利の変更
二  共益債権及び一般優先債権の弁済
三  知れている開始後債権があるときは、その内容
2  債権者委員会が再生計画で定められた弁済期間内にその履行を確保するため監督その他の関与を行う場合において、再生債務者がその費用の全部又は一部を負担するときは、その負担に関する条項を定めなければならない。
3  第百六十六条第一項の規定による裁判所の許可があった場合には、再生計画の定めによる再生債務者の株式の取得に関する条項、株式の併合に関する条項、資本金の額の減少に関する条項又は再生債務者が発行することができる株式の総数についての定款の変更に関する条項を定めることができる。
4  第百六十六条の二第二項の規定による裁判所の許可があった場合には、再生計画において、募集株式(会社法第百九十九条第一項 に規定する募集株式をいい、譲渡制限株式であるものに限る。以下この章において同じ。)を引き受ける者の募集(同法第二百二条第一項 各号に掲げる事項を定めるものを除く。以下この章において同じ。)に関する条項を定めることができる。
第二節 再生計画案の提出
(再生計画案の提出時期)
第百六十三条  再生債務者等は、債権届出期間の満了後裁判所の定める期間内に、再生計画案を作成して裁判所に提出しなければならない。
(再生計画案の可決の要件)
第百七十二条の三  再生計画案を可決するには、次に掲げる同意のいずれもがなければならない。
一  議決権者(債権者集会に出席し、又は第百六十九条第二項第二号に規定する書面等投票をしたものに限る。)の過半数の同意
二  議決権者の議決権の総額の二分の一以上の議決権を有する者の同意
2  約定劣後再生債権の届出がある場合には、再生計画案の決議は、再生債権(約定劣後再生債権を除く。以下この条、第百七十二条の五第四項並びに第百七十四条の二第一項及び第二項において同じ。)を有する者と約定劣後再生債権を有する者とに分かれて行う。ただし、議決権を有する約定劣後再生債権を有する者がないときは、この限りでない。
3  裁判所は、前項本文に規定する場合であっても、相当と認めるときは、再生計画案の決議は再生債権を有する者と約定劣後再生債権を有する者とに分かれないで行うものとすることができる。
4  裁判所は、再生計画案を決議に付する旨の決定をするまでは、前項の決定を取り消すことができる。
5  前二項の規定による決定があった場合には、その裁判書を議決権者に送達しなければならない。ただし、債権者集会の期日において当該決定の言渡しがあったときは、この限りでない。
6  第一項の規定にかかわらず、第二項本文の規定により再生計画案の決議を再生債権を有する者と約定劣後再生債権を有する者とに分かれて行う場合において再生計画案を可決するには、再生債権を有する者と約定劣後再生債権を有する者の双方について第一項各号に掲げる同意のいずれもがなければならない。
7  第百七十二条第二項(同条第三項において準用する場合を含む。)の規定によりその有する議決権の一部のみを再生計画案に同意するものとして行使した議決権者(その余の議決権を行使しなかったものを除く。)があるときの第一項第一号又は前項の規定の適用については、当該議決権者一人につき、同号に規定する議決権者の数に一を、再生計画案に同意する旨の議決権の行使をした議決権者の数に二分の一を、それぞれ加算するものとする。
(再生計画の認可又は不認可の決定)
第百七十四条  再生計画案が可決された場合には、裁判所は、次項の場合を除き、再生計画認可の決定をする。
2  裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合には、再生計画不認可の決定をする。
一  再生手続又は再生計画が法律の規定に違反し、かつ、その不備を補正することができないものであるとき。ただし、再生手続が法律の規定に違反する場合において、当該違反の程度が軽微であるときは、この限りでない。
二  再生計画が遂行される見込みがないとき。
三  再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったとき。
四  再生計画の決議が再生債権者の一般の利益に反するとき。
3  第百十五条第一項本文に規定する者及び労働組合等は、再生計画案を認可すべきかどうかについて、意見を述べることができる。
4  再生計画の認可又は不認可の決定があった場合には、第百十五条第一項本文に規定する者に対して、その主文及び理由の要旨を記載した書面を送達しなければならない。
5  前項に規定する場合には、同項の決定があった旨を労働組合等に通知しなければならない。
(再生債権の免責)
第百七十八条  再生計画認可の決定が確定したときは、再生計画の定め又はこの法律の規定によって認められた権利を除き、再生債務者は、すべての再生債権について、その責任を免れる。ただし、再生手続開始前の罰金等については、この限りでない。
第八章 再生計画認可後の手続
(再生計画の遂行)
第百八十六条  再生計画認可の決定が確定したときは、再生債務者等は、速やかに、再生計画を遂行しなければならない。
2  前項に規定する場合において、監督委員が選任されているときは、当該監督委員は、再生債務者の再生計画の遂行を監督する。
3  裁判所は、再生計画の遂行を確実にするため必要があると認めるときは、再生債務者等又は再生のために債務を負担し、若しくは担保を提供する者に対し、次に掲げる者のために、相当な担保を立てるべきことを命ずることができる。
一  再生計画の定め又はこの法律の規定によって認められた権利を有する者
二  異議等のある再生債権でその確定手続が終了していないものを有する者
三  別除権の行使によって弁済を受けることができない債権の部分が確定していない再生債権を有する者
4  民事訴訟法第七十六条 、第七十七条、第七十九条及び第八十条の規定は、前項の担保について準用する。
(再生手続の終結)
第百八十八条  裁判所は、再生計画認可の決定が確定したときは、監督委員又は管財人が選任されている場合を除き、再生手続終結の決定をしなければならない。
2  裁判所は、監督委員が選任されている場合において、再生計画が遂行されたとき、又は再生計画認可の決定が確定した後三年を経過したときは、再生債務者若しくは監督委員の申立てにより又は職権で、再生手続終結の決定をしなければならない。
3  裁判所は、管財人が選任されている場合において、再生計画が遂行されたとき、又は再生計画が遂行されることが確実であると認めるに至ったときは、再生債務者若しくは管財人の申立てにより又は職権で、再生手続終結の決定をしなければならない。
4  監督命令及び管理命令は、再生手続終結の決定があったときは、その効力を失う。
5  裁判所は、再生手続終結の決定をしたときは、その主文及び理由の要旨を公告しなければならない。
(再生計画の取消し)
第百八十九条  再生計画認可の決定が確定した場合において、次の各号のいずれかに該当する事由があるときは、裁判所は、再生債権者の申立てにより、再生計画取消しの決定をすることができる。
一  再生計画が不正の方法により成立したこと。
二  再生債務者等が再生計画の履行を怠ったこと。
三  再生債務者が第四十一条第一項若しくは第四十二条第一項の規定に違反し、又は第五十四条第二項に規定する監督委員の同意を得ないで同項の行為をしたこと。
2  前項第一号に掲げる事由を理由とする同項の申立ては、再生債権者が再生計画認可の決定に対する即時抗告により同号の事由を主張したとき、若しくはこれを知りながら主張しなかったとき、再生債権者が同号に該当する事由があることを知った時から一月を経過したとき、又は再生計画認可の決定が確定した時から二年を経過したときは、することができない。
3  第一項第二号に掲げる事由を理由とする同項の申立ては、再生計画の定めによって認められた権利の全部(履行された部分を除く。)について裁判所が評価した額の十分の一以上に当たる権利を有する再生債権者であって、その有する履行期限が到来した当該権利の全部又は一部について履行を受けていないものに限り、することができる。
4  裁判所は、再生計画取消しの決定をしたときは、直ちに、その裁判書を第一項の申立てをした者及び再生債務者等に送達し、かつ、その主文及び理由の要旨を公告しなければならない。
5  第一項の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
6  第四項の決定は、確定しなければその効力を生じない。
7  第四項の決定が確定した場合には、再生計画によって変更された再生債権は、原状に復する。ただし、再生債権者が再生計画によって得た権利に影響を及ぼさない。
8  第百八十五条の規定は第四項の決定が確定した場合について、前条第四項の規定は再生手続終了前に第四項の決定が確定した場合について準用する。
(破産手続開始の決定又は新たな再生手続開始の決定がされた場合の取扱い等)
第百九十条  再生計画の履行完了前に、再生債務者について破産手続開始の決定又は新たな再生手続開始の決定がされた場合には、再生計画によって変更された再生債権は、原状に復する。ただし、再生債権者が再生計画によって得た権利に影響を及ぼさない。
2  第百八十五条の規定は、前項の場合について準用する。
3  第一項の破産手続開始の決定に係る破産手続においては、再生債権であった破産債権については、その破産債権の額は、従前の再生債権の額から同項の再生計画により弁済を受けた額を控除した額とする。
4  前項の破産手続においては、同項の破産債権については、第一項の再生計画により弁済を受けた場合であっても、従前の再生債権の額をもって配当の手続に参加することができる債権の額とみなし、破産財団に当該弁済を受けた額を加算して配当率の標準を定める。ただし、当該破産債権を有する破産債権者は、他の同順位の破産債権者が自己の受けた弁済と同一の割合の配当を受けるまでは、配当を受けることができない。
5  第一項の破産手続開始の決定がされたときは、再生債務者が再生手続終了後に再生計画によらずに再生債権者に対してした担保の供与は、その効力を失う。
6  新たな再生手続においては、再生債権者は、再生債権について第一項の再生計画により弁済を受けた場合であっても、その弁済を受ける前の債権の全部をもって再生手続に参加することができる。
7  新たな再生手続においては、前項の規定により再生手続に参加した再生債権者は、他の再生債権者が自己の受けた弁済と同一の割合の弁済を受けるまでは、弁済を受けることができない。
8  新たな再生手続においては、第六項の規定により再生手続に参加した再生債権者は、第一項の再生計画により弁済を受けた債権の部分については、議決権を行使することができない。
9  新たな再生手続においては、従前の再生手続における共益債権は、共益債権とみなす。
第九章 再生手続の廃止
(再生計画認可前の手続廃止)
第百九十一条  次の各号のいずれかに該当する場合には、裁判所は、職権で、再生手続廃止の決定をしなければならない。
一  決議に付するに足りる再生計画案の作成の見込みがないことが明らかになったとき。
二  裁判所の定めた期間若しくはその伸長した期間内に再生計画案の提出がないとき、又はその期間内に提出されたすべての再生計画案が決議に付するに足りないものであるとき。
三  再生計画案が否決されたとき、又は第百七十二条の五第一項本文及び第四項の規定により債権者集会の続行期日が定められた場合において、同条第二項及び第三項の規定に適合する期間内に再生計画案が可決されないとき。
第十章 住宅資金貸付債権に関する特則
(定義)
第百九十六条  この章、第十二章及び第十三章において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一  住宅 個人である再生債務者が所有し、自己の居住の用に供する建物であって、その床面積の二分の一以上に相当する部分が専ら自己の居住の用に供されるものをいう。ただし、当該建物が二以上ある場合には、これらの建物のうち、再生債務者が主として居住の用に供する一の建物に限る。
二  住宅の敷地 住宅の用に供されている土地又は当該土地に設定されている地上権をいう。
三  住宅資金貸付債権 住宅の建設若しくは購入に必要な資金(住宅の用に供する土地又は借地権の取得に必要な資金を含む。)又は住宅の改良に必要な資金の貸付けに係る分割払の定めのある再生債権であって、当該債権又は当該債権に係る債務の保証人(保証を業とする者に限る。以下「保証会社」という。)の主たる債務者に対する求償権を担保するための抵当権が住宅に設定されているものをいう。
四  住宅資金特別条項 再生債権者の有する住宅資金貸付債権の全部又は一部を、第百九十九条第一項から第四項までの規定するところにより変更する再生計画の条項をいう。
五  住宅資金貸付契約 住宅資金貸付債権に係る資金の貸付契約をいう。
(抵当権の実行手続の中止命令等)
第百九十七条  裁判所は、再生手続開始の申立てがあった場合において、住宅資金特別条項を定めた再生計画の認可の見込みがあると認めるときは、再生債務者の申立てにより、相当の期間を定めて、住宅又は再生債務者が有する住宅の敷地に設定されている前条第三号に規定する抵当権の実行手続の中止を命ずることができる。
2  第三十一条第二項から第六項までの規定は、前項の規定による中止の命令について準用する。
3  裁判所は、再生債務者が再生手続開始後に住宅資金貸付債権の一部を弁済しなければ住宅資金貸付契約の定めにより当該住宅資金貸付債権の全部又は一部について期限の利益を喪失することとなる場合において、住宅資金特別条項を定めた再生計画の認可の見込みがあると認めるときは、再生計画認可の決定が確定する前でも、再生債務者の申立てにより、その弁済をすることを許可することができる。
(住宅資金特別条項の内容)
第百九十九条  住宅資金特別条項においては、次項又は第三項に規定する場合を除き、次の各号に掲げる債権について、それぞれ当該各号に定める内容を定める。
一  再生計画認可の決定の確定時までに弁済期が到来する住宅資金貸付債権の元本(再生債務者が期限の利益を喪失しなかったとすれば弁済期が到来しないものを除く。)及びこれに対する再生計画認可の決定の確定後の住宅約定利息(住宅資金貸付契約において定められた約定利率による利息をいう。以下この条において同じ。)並びに再生計画認可の決定の確定時までに生ずる住宅資金貸付債権の利息及び不履行による損害賠償 その全額を、再生計画(住宅資金特別条項を除く。)で定める弁済期間(当該期間が五年を超える場合にあっては、再生計画認可の決定の確定から五年。第三項において「一般弁済期間」という。)内に支払うこと。
二  再生計画認可の決定の確定時までに弁済期が到来しない住宅資金貸付債権の元本(再生債務者が期限の利益を喪失しなかったとすれば弁済期が到来しないものを含む。)及びこれに対する再生計画認可の決定の確定後の住宅約定利息 住宅資金貸付契約における債務の不履行がない場合についての弁済の時期及び額に関する約定に従って支払うこと。
2  前項の規定による住宅資金特別条項を定めた再生計画の認可の見込みがない場合には、住宅資金特別条項において、住宅資金貸付債権に係る債務の弁済期を住宅資金貸付契約において定められた最終の弁済期(以下この項及び第四項において「約定最終弁済期」という。)から後の日に定めることができる。この場合における権利の変更の内容は、次に掲げる要件のすべてを具備するものでなければならない。
一  次に掲げる債権について、その全額を支払うものであること。
イ 住宅資金貸付債権の元本及びこれに対する再生計画認可の決定の確定後の住宅約定利息
ロ 再生計画認可の決定の確定時までに生ずる住宅資金貸付債権の利息及び不履行による損害賠償
二  住宅資金特別条項による変更後の最終の弁済期が約定最終弁済期から十年を超えず、かつ、住宅資金特別条項による変更後の最終の弁済期における再生債務者の年齢が七十歳を超えないものであること。
三  第一号イに掲げる債権については、一定の基準により住宅資金貸付契約における弁済期と弁済期との間隔及び各弁済期における弁済額が定められている場合には、当該基準におおむね沿うものであること。
3  前項の規定による住宅資金特別条項を定めた再生計画の認可の見込みがない場合には、一般弁済期間の範囲内で定める期間(以下この項において「元本猶予期間」という。)中は、住宅資金貸付債権の元本の一部及び住宅資金貸付債権の元本に対する元本猶予期間中の住宅約定利息のみを支払うものとすることができる。この場合における権利の変更の内容は、次に掲げる要件のすべてを具備するものでなければならない。
一  前項第一号及び第二号に掲げる要件があること。
二  前項第一号イに掲げる債権についての元本猶予期間を経過した後の弁済期及び弁済額の定めについては、一定の基準により住宅資金貸付契約における弁済期と弁済期との間隔及び各弁済期における弁済額が定められている場合には、当該基準におおむね沿うものであること。
4  住宅資金特別条項によって権利の変更を受ける者の同意がある場合には、前三項の規定にかかわらず、約定最終弁済期から十年を超えて住宅資金貸付債権に係る債務の期限を猶予することその他前三項に規定する変更以外の変更をすることを内容とする住宅資金特別条項を定めることができる。
5  住宅資金特別条項によって権利の変更を受ける者と他の再生債権者との間については第百五十五条第一項の規定を、住宅資金特別条項については同条第三項の規定を、住宅資金特別条項によって権利の変更を受ける者については第百六十条及び第百六十五条第二項の規定を適用しない。
(住宅資金特別条項を定めた再生計画案の決議等)
第二百一条  住宅資金特別条項を定めた再生計画案の決議においては、住宅資金特別条項によって権利の変更を受けることとされている者及び保証会社は、住宅資金貸付債権又は住宅資金貸付債権に係る債務の保証に基づく求償権については、議決権を有しない。
第十三章 小規模個人再生及び給与所得者等再生に関する特則
第一節 小規模個人再生
(手続開始の要件等)
第二百二十一条  個人である債務者のうち、将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがあり、かつ、再生債権の総額(住宅資金貸付債権の額、別除権の行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権の額及び再生手続開始前の罰金等の額を除く。)が五千万円を超えないものは、この節に規定する特則の適用を受ける再生手続(以下「小規模個人再生」という。)を行うことを求めることができる。
2  小規模個人再生を行うことを求める旨の申述は、再生手続開始の申立ての際(債権者が再生手続開始の申立てをした場合にあっては、再生手続開始の決定があるまで)にしなければならない。
3  前項の申述をするには、次に掲げる事項を記載した書面(以下「債権者一覧表」という。)を提出しなければならない。
一  再生債権者の氏名又は名称並びに各再生債権の額及び原因
二  別除権者については、その別除権の目的である財産及び別除権の行使によって弁済を受けることができないと見込まれる再生債権の額(以下「担保不足見込額」という。)
三  住宅資金貸付債権については、その旨
四  住宅資金特別条項を定めた再生計画案を提出する意思があるときは、その旨
五  その他最高裁判所規則で定める事項
4  再生債務者は、債権者一覧表に各再生債権についての再生債権の額及び担保不足見込額を記載するに当たっては、当該額の全部又は一部につき異議を述べることがある旨をも記載することができる。
5  第一項に規定する再生債権の総額の算定及び債権者一覧表への再生債権の額の記載に関しては、第八十七条第一項第一号から第三号までに掲げる再生債権は、当該各号に掲げる債権の区分に従い、それぞれ当該各号に定める金額の債権として取り扱うものとする。
6  再生債務者は、第二項の申述をするときは、当該申述が第一項又は第三項に規定する要件に該当しないことが明らかになった場合においても再生手続の開始を求める意思があるか否かを明らかにしなければならない。ただし、債権者が再生手続開始の申立てをした場合については、この限りでない。
7  裁判所は、第二項の申述が前項本文に規定する要件に該当しないことが明らかであると認めるときは、再生手続開始の決定前に限り、再生事件を通常の再生手続により行う旨の決定をする。ただし、再生債務者が前項本文の規定により再生手続の開始を求める意思がない旨を明らかにしていたときは、裁判所は、再生手続開始の申立てを棄却しなければならない。
(再生手続開始に伴う措置)
第二百二十二条  小規模個人再生においては、裁判所は、再生手続開始の決定と同時に、債権届出期間のほか、届出があった再生債権に対して異議を述べることができる期間をも定めなければならない。この場合においては、一般調査期間を定めることを要しない。
2  裁判所は、再生手続開始の決定をしたときは、直ちに、再生手続開始の決定の主文、債権届出期間及び前項に規定する届出があった再生債権に対して異議を述べることができる期間(以下「一般異議申述期間」という。)を公告しなければならない。
3  再生債務者及び知れている再生債権者には、前項に規定する事項を通知しなければならない。
4  知れている再生債権者には、前条第三項各号及び第四項の規定により債権者一覧表に記載された事項を通知しなければならない。
5  第二項及び第三項の規定は、債権届出期間に変更を生じた場合について準用する。
(個人再生委員)
第二百二十三条  裁判所は、第二百二十一条第二項の申述があった場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、一人又は数人の個人再生委員を選任することができる。ただし、第二百二十七条第一項本文に規定する再生債権の評価の申立てがあったときは、当該申立てを不適法として却下する場合を除き、個人再生委員の選任をしなければならない。
2  裁判所は、前項の規定による決定をする場合には、個人再生委員の職務として、次に掲げる事項の一又は二以上を指定するものとする。
一  再生債務者の財産及び収入の状況を調査すること。
二  第二百二十七条第一項本文に規定する再生債権の評価に関し裁判所を補助すること。
三  再生債務者が適正な再生計画案を作成するために必要な勧告をすること。
3  裁判所は、第一項の規定による決定において、前項第一号に掲げる事項を個人再生委員の職務として指定する場合には、裁判所に対して調査の結果の報告をすべき期間をも定めなければならない。
4  裁判所は、第一項の規定による決定を変更し、又は取り消すことができる。
5  第一項及び前項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
6  前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
7  第五項に規定する裁判及び同項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。
8  第二項第一号に掲げる事項を職務として指定された個人再生委員は、再生債務者又はその法定代理人に対し、再生債務者の財産及び収入の状況につき報告を求め、再生債務者の帳簿、書類その他の物件を検査することができる。
9  個人再生委員は、費用の前払及び裁判所が定める報酬を受けることができる。
10  第五十四条第三項、第五十七条、第五十八条、第六十条及び第六十一条第二項から第四項までの規定は、個人再生委員について準用する。
(再生債権の届出の内容)
第二百二十四条  小規模個人再生においては、再生手続に参加しようとする再生債権者は、議決権の額を届け出ることを要しない。
2  小規模個人再生における再生債権の届出に関しては、第二百二十一条第五項の規定を準用する。
(再生債権のみなし届出)
第二百二十五条  債権者一覧表に記載されている再生債権者は、債権者一覧表に記載されている再生債権については、債権届出期間内に裁判所に当該再生債権の届出又は当該再生債権を有しない旨の届出をした場合を除き、当該債権届出期間の初日に、債権者一覧表の記載内容と同一の内容で再生債権の届出をしたものとみなす。
(届出再生債権に対する異議)
第二百二十六条  再生債務者及び届出再生債権者は、一般異議申述期間内に、裁判所に対し、届出があった再生債権の額又は担保不足見込額について、書面で、異議を述べることができる。ただし、再生債務者は、債権者一覧表に記載した再生債権の額及び担保不足見込額であって第二百二十一条第四項の規定により異議を述べることがある旨を債権者一覧表に記載していないものについては、異議を述べることができない。
2  第九十五条の規定による届出又は届出事項の変更があった場合には、裁判所は、その再生債権に対して異議を述べることができる期間(以下「特別異議申述期間」という。)を定めなければならない。
3  再生債務者及び届出再生債権者は、特別異議申述期間内に、裁判所に対し、特別異議申述期間に係る再生債権の額又は担保不足見込額について、書面で、異議を述べることができる。
4  第百二条第三項から第五項までの規定は特別異議申述期間を定める決定又は一般異議申述期間若しくは特別異議申述期間を変更する決定をした場合における裁判書の送達について、第百三条第二項の規定は第二項の場合について準用する。
5  再生手続開始前の罰金等及び債権者一覧表に住宅資金特別条項を定めた再生計画案を提出する意思がある旨の記載がされた場合における第百九十八条第一項に規定する住宅資金貸付債権については、前各項の規定は、適用しない。
6  再生債務者が債権者一覧表に住宅資金特別条項を定めた再生計画案を提出する意思がある旨の記載をした場合には、第百九十八条第一項に規定する住宅資金貸付債権を有する再生債権者であって当該住宅資金貸付債権以外に再生債権を有しないもの及び保証会社であって住宅資金貸付債権に係る債務の保証に基づく求償権以外に再生債権を有しないものは、第一項本文及び第三項の異議を述べることができない。
(再生債権の評価)
第二百二十七条  前条第一項本文又は第三項の規定により再生債務者又は届出再生債権者が異議を述べた場合には、当該再生債権を有する再生債権者は、裁判所に対し、異議申述期間の末日から三週間の不変期間内に、再生債権の評価の申立てをすることができる。ただし、当該再生債権が執行力ある債務名義又は終局判決のあるものである場合には、当該異議を述べた者が当該申立てをしなければならない。
2  前項ただし書の場合において、前項本文の不変期間内に再生債権の評価の申立てがなかったとき又は当該申立てが却下されたときは、前条第一項本文又は第三項の異議は、なかったものとみなす。
3  再生債権の評価の申立てをするときは、申立人は、その申立てに係る手続の費用として裁判所の定める金額を予納しなければならない。
4  前項に規定する費用の予納がないときは、裁判所は、再生債権の評価の申立てを却下しなければならない。
5  裁判所は、第二百二十三条第一項の規定による決定において、同条第二項第二号に掲げる事項を個人再生委員の職務として指定する場合には、裁判所に対して調査の結果の報告をすべき期間をも定めなければならない。
6  第二百二十三条第二項第二号に掲げる事項を職務として指定された個人再生委員は、再生債務者若しくはその法定代理人又は再生債権者(当該個人再生委員が同項第一号に掲げる事項をも職務として指定された場合にあっては、再生債権者)に対し、再生債権の存否及び額並びに担保不足見込額に関する資料の提出を求めることができる。
7  再生債権の評価においては、裁判所は、再生債権の評価の申立てに係る再生債権について、その債権の存否及び額又は担保不足見込額を定める。
8  裁判所は、再生債権の評価をする場合には、第二百二十三条第二項第二号に掲げる事項を職務として指定された個人再生委員の意見を聴かなければならない。
9  第七項の規定による再生債権の評価については、第二百二十一条第五項の規定を準用する。
10  再生手続開始前の罰金等及び債権者一覧表に住宅資金特別条項を定めた再生計画案を提出する意思がある旨の記載がされた場合における第百九十八条第一項に規定する住宅資金貸付債権については、前各項の規定は、適用しない。
(貸借対照表の作成等の免除)
第二百二十八条  小規模個人再生においては、再生債務者は、第百二十四条第二項の規定による貸借対照表の作成及び提出をすることを要しない。
(再生計画による権利の変更の内容等)
第二百二十九条  小規模個人再生における再生計画による権利の変更の内容は、不利益を受ける再生債権者の同意がある場合又は少額の再生債権の弁済の時期若しくは第八十四条第二項に掲げる請求権について別段の定めをする場合を除き、再生債権者の間では平等でなければならない。
2  再生債権者の権利を変更する条項における債務の期限の猶予については、前項の規定により別段の定めをする場合を除き、次に定めるところによらなければならない。
一  弁済期が三月に一回以上到来する分割払の方法によること。
二  最終の弁済期を再生計画認可の決定の確定の日から三年後の日が属する月中の日(特別の事情がある場合には、再生計画認可の決定の確定の日から五年を超えない範囲内で、三年後の日が属する月の翌月の初日以降の日)とすること。
3  第一項の規定にかかわらず、再生債権のうち次に掲げる請求権については、当該再生債権者の同意がある場合を除き、債務の減免の定めその他権利に影響を及ぼす定めをすることができない。
一  再生債務者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
二  再生債務者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)
三  次に掲げる義務に係る請求権
イ 民法第七百五十二条 の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
ロ 民法第七百六十条 の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
ハ 民法第七百六十六条 (同法第七百四十九条 、第七百七十一条及び第七百八十八条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務
ニ 民法第八百七十七条 から第八百八十条 までの規定による扶養の義務
ホ イからニまでに掲げる義務に類する義務であって、契約に基づくもの
4  住宅資金特別条項によって権利の変更を受ける者と他の再生債権者との間については第一項の規定を、住宅資金特別条項については第二項の規定を適用しない。
(再生計画案の決議)
第二百三十条  裁判所は、一般異議申述期間(特別異議申述期間が定められた場合には、当該特別異議申述期間を含む。)が経過し、かつ、第百二十五条第一項の報告書の提出がされた後でなければ、再生計画案を決議に付することができない。当該一般異議申述期間内に第二百二十六条第一項本文の規定による異議が述べられた場合(特別異議申述期間が定められた場合には、当該特別異議申述期間内に同条第三項の規定による異議が述べられた場合を含む。)には、第二百二十七条第一項本文の不変期間を経過するまでの間(当該不変期間内に再生債権の評価の申立てがあったときは、再生債権の評価がされるまでの間)も、同様とする。
2  裁判所は、再生計画案について第百七十四条第二項各号(第三号を除く。住宅資金特別条項を定めた再生計画案については、第二百二条第二項第一号から第三号まで)又は次条第二項各号のいずれかに該当する事由があると認める場合には、その再生計画案を決議に付することができない。
3  再生計画案の提出があったときは、裁判所は、前二項の場合を除き、議決権行使の方法としての第百六十九条第二項第二号に掲げる方法及び第百七十二条第二項(同条第三項において準用する場合を含む。)の規定により議決権の不統一行使をする場合における裁判所に対する通知の期限を定めて、再生計画案を決議に付する旨の決定をする。
4  前項の決定をした場合には、その旨を公告するとともに、議決権者に対して、同項に規定する期限、再生計画案の内容又はその要旨及び再生計画案に同意しない者は裁判所の定める期間内に同項の規定により定められた方法によりその旨を回答すべき旨を通知しなければならない。
5  第三項の決定があった場合における第百七十二条第二項(同条第三項において準用する場合を含む。)の規定の適用については、同条第二項中「第百六十九条第二項前段」とあるのは、「第二百三十条第三項」とする。
6  第四項の期間内に再生計画案に同意しない旨を同項の方法により回答した議決権者が議決権者総数の半数に満たず、かつ、その議決権の額が議決権者の議決権の総額の二分の一を超えないときは、再生計画案の可決があったものとみなす。
7  再生計画案に同意しない旨を第四項の方法により回答した議決権者のうち第百七十二条第二項(同条第三項において準用する場合を含む。)の規定によりその有する議決権の一部のみを行使したものがあるときの前項の規定の適用については、当該議決権者一人につき、議決権者総数に一を、再生計画案に同意しない旨を第四項の方法により回答した議決権者の数に二分の一を、それぞれ加算するものとする。
8  届出再生債権者は、一般異議申述期間又は特別異議申述期間を経過するまでに異議が述べられなかった届出再生債権(第二百二十六条第五項に規定するものを除く。以下「無異議債権」という。)については届出があった再生債権の額又は担保不足見込額に応じて、第二百二十七条第七項の規定により裁判所が債権の額又は担保不足見込額を定めた再生債権(以下「評価済債権」という。)についてはその額に応じて、それぞれ議決権を行使することができる。
(再生計画の認可又は不認可の決定)
第二百三十一条  小規模個人再生において再生計画案が可決された場合には、裁判所は、第百七十四条第二項(当該再生計画案が住宅資金特別条項を定めたものであるときは、第二百二条第二項)又は次項の場合を除き、再生計画認可の決定をする。
2  小規模個人再生においては、裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合にも、再生計画不認可の決定をする。
一  再生債務者が将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがないとき。
二  無異議債権の額及び評価済債権の額の総額(住宅資金貸付債権の額、別除権の行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権の額及び第八十四条第二項に掲げる請求権の額を除く。)が五千万円を超えているとき。
三  前号に規定する無異議債権の額及び評価済債権の額の総額が三千万円を超え五千万円以下の場合においては、当該無異議債権及び評価済債権(別除権の行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権及び第八十四条第二項各号に掲げる請求権を除く。以下「基準債権」という。)に対する再生計画に基づく弁済の総額(以下「計画弁済総額」という。)が当該無異議債権の額及び評価済債権の額の総額の十分の一を下回っているとき。
四  第二号に規定する無異議債権の額及び評価済債権の額の総額が三千万円以下の場合においては、計画弁済総額が基準債権の総額の五分の一又は百万円のいずれか多い額(基準債権の総額が百万円を下回っているときは基準債権の総額、基準債権の総額の五分の一が三百万円を超えるときは三百万円)を下回っているとき。
五  再生債務者が債権者一覧表に住宅資金特別条項を定めた再生計画案を提出する意思がある旨の記載をした場合において、再生計画に住宅資金特別条項の定めがないとき。
(再生計画の効力等)
第二百三十二条  小規模個人再生において再生計画認可の決定が確定したときは、第八十七条第一項第一号から第三号までに掲げる債権は、それぞれ当該各号に定める金額の再生債権に変更される。
2  小規模個人再生において再生計画認可の決定が確定したときは、すべての再生債権者の権利(第八十七条第一項第一号から第三号までに掲げる債権については前項の規定により変更された後の権利とし、第二百二十九条第三項各号に掲げる請求権及び再生手続開始前の罰金等を除く。)は、第百五十六条の一般的基準に従い、変更される。
3  前項に規定する場合における同項の規定により変更された再生債権であって無異議債権及び評価済債権以外のものについては、再生計画で定められた弁済期間が満了する時(その期間の満了前に、再生計画に基づく弁済が完了した場合又は再生計画が取り消された場合にあっては弁済が完了した時又は再生計画が取り消された時。次項及び第五項において同じ。)までの間は、弁済をし、弁済を受け、その他これを消滅させる行為(免除を除く。)をすることができない。ただし、当該変更に係る再生債権が、再生債権者がその責めに帰することができない事由により債権届出期間内に届出をすることができず、かつ、その事由が第二百三十条第三項に規定する決定前に消滅しなかったもの又は再生債権の評価の対象となったものであるときは、この限りでない。
4  第二項に規定する場合における第二百二十九条第三項各号に掲げる請求権であって無異議債権及び評価済債権であるものについては、第百五十六条の一般的基準に従って弁済をし、かつ、再生計画で定められた弁済期間が満了する時に、当該請求権の債権額から当該弁済期間内に弁済をした額を控除した残額につき弁済をしなければならない。
5  第二項に規定する場合における第二百二十九条第三項各号に掲げる請求権であって無異議債権及び評価済債権以外のものについては、再生計画で定められた弁済期間が満了する時に、当該請求権の債権額の全額につき弁済をしなければならない。ただし、第三項ただし書に規定する場合には、前項の規定を準用する。
6  第二項に規定する場合における第百八十二条、第百八十九条第三項及び第二百六条第一項の規定の適用については、第百八十二条中「認可された再生計画の定めによって認められた権利又は前条第一項の規定により変更された後の権利」とあるのは「第二百三十二条第二項の規定により変更された後の権利及び第二百二十九条第三項各号に掲げる請求権」と、第百八十九条第三項中「再生計画の定めによって認められた権利の全部(履行された部分を除く。)」とあるのは「第二百三十二条第二項の規定により変更された後の権利の全部及び第二百二十九条第三項各号に掲げる請求権(第二百三十二条第四項(同条第五項ただし書において準用する場合を含む。)の規定により第百五十六条の一般的基準に従って弁済される部分に限る。)であって、履行されていない部分」と、第二百六条第一項中「再生計画の定めによって認められた権利(住宅資金特別条項によって変更された後のものを除く。)の全部(履行された部分を除く。)」とあるのは「第二百三十二条第二項の規定により変更された後の権利(住宅資金特別条項によって変更された後のものを除く。)の全部及び第二百二十九条第三項各号に掲げる請求権(第二百三十二条第四項(同条第五項ただし書において準用する場合を含む。)の規定により第百五十六条の一般的基準に従って弁済される部分に限る。)であって、履行されていない部分」とする。
7  住宅資金特別条項を定めた再生計画の認可の決定が確定した場合における第三項から第五項までの規定の適用については、これらの規定中「再生計画で定められた弁済期間」とあるのは「再生計画(住宅資金特別条項を除く。)で定められた弁済期間」と、第三項本文中「再生計画に基づく弁済」とあるのは「再生計画(住宅資金特別条項を除く。)に基づく弁済」と、同項ただし書中「又は再生債権の評価の対象となったもの」とあるのは「若しくは再生債権の評価の対象となったものであるとき、又は当該変更後の権利が住宅資金特別条項によって変更された後の住宅資金貸付債権」とする。
(再生手続の終結)
第二百三十三条  小規模個人再生においては、再生手続は、再生計画認可の決定の確定によって当然に終結する。
(再生計画の変更)
第二百三十四条  小規模個人再生においては、再生計画認可の決定があった後やむを得ない事由で再生計画を遂行することが著しく困難となったときは、再生債務者の申立てにより、再生計画で定められた債務の期限を延長することができる。この場合においては、変更後の債務の最終の期限は、再生計画で定められた債務の最終の期限から二年を超えない範囲で定めなければならない。
2  前項の規定により再生計画の変更の申立てがあった場合には、再生計画案の提出があった場合の手続に関する規定を準用する。
3  第百七十五条(第二項を除く。)及び第百七十六条の規定は、再生計画の変更の決定があった場合について準用する。
(計画遂行が極めて困難となった場合の免責)
第二百三十五条  再生債務者がその責めに帰することができない事由により再生計画を遂行することが極めて困難となり、かつ、次の各号のいずれにも該当する場合には、裁判所は、再生債務者の申立てにより、免責の決定をすることができる。
一  第二百三十二条第二項の規定により変更された後の各基準債権及び同条第三項ただし書に規定する各再生債権に対してその四分の三以上の額の弁済を終えていること。
二  第二百二十九条第三項各号に掲げる請求権(第二百三十二条第四項(同条第五項ただし書において準用する場合を含む。)の規定により第百五十六条の一般的基準に従って弁済される部分に限る。)に対してその四分の三以上の額の弁済を終えていること。
三  免責の決定をすることが再生債権者の一般の利益に反するものでないこと。
四  前条の

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