婚姻中の姓を名乗る場合と旧姓に戻る場合・親権に服する子の姓と戸籍との関係

民事|親族法|離婚後の姓|新戸籍

目次

  1. 質問
  2. 回答
  3. 解説
  4. 関連事例集
  5. 参考条文

質問:

私は,夫と結婚して,夫の姓を名乗っており,中学生の子供が1人います。しかし,現在,夫と離婚の話を進めており,子供の親権は私が取得する予定です。

ただ,離婚して,子供の姓が変わるのもかわいそうだと思っており,離婚後の姓をどうするかについて悩んでおります。どのような選択肢が考えられるのでしょうか。

また,例えば,私が旧姓に戻り,子供が夫の姓を名乗り続ける場合,戸籍はどうなるのでしょうか。

回答:

1.あなたが,旧姓(婚姻前の氏)に戻りたいと考えた場合

(1)離婚により,特に手続きをすることなく,当然に,旧姓(婚姻前の氏)に戻ることができます(民法767条1項)。尚,一旦旧姓に戻り婚氏継続の申し出期間3カ月経過後でも,婚姻中の氏に戻る必要性,具体的理由等やむを得ない事情があれば,氏を旧姓に変更することも可能です(戸籍法107条1項)。

(2)この場合,戸籍については,原則として,①婚姻前の戸籍に入りますが(戸籍法19条1項本文),

②役所に,新戸籍編製の申出をすれば,新戸籍を編製することもできます(戸籍法19条1項但し書き)。

(3)また,子の氏は,原則として,①現在の姓(婚氏)を続称することになりますが,②家庭裁判所に,「子の氏の変更許可の申立て」をすれば,あなたの旧姓(婚姻前の氏)に変更することもできます(民法791条)。

(4)そして,子の氏が,②あなたの旧姓(婚姻前の氏)になった場合,あなたと子の氏が同一になりますので,子供をあなたの戸籍に入れることができます。しかし,子の氏が,①現在の姓(婚氏)のままの場合,あなたと子の氏が異なることになりますので,子供をあなたの戸籍に入れることはできません。

2.現在の姓(婚氏)を続称したいと考えた場合

(1)あなたは,離婚により,当然に,旧姓(婚姻前の氏)に戻りますが,離婚の日から3か月以内に,役所に届出をすれば,現在の姓(婚氏)を続称することができます(民法762条2項)。尚,婚氏を選択しても,旧姓に戻す具体的理由,必要性等やむをえない事情があれば,氏の変更が可能です。

(2)この場合,戸籍については,離婚届出と同時に婚氏続称の届出をすれば,新戸籍が編製されることになります(戸籍法19条3項)。

(3)また,子の氏は,現在の姓(婚氏)を続称することになります。子の氏は、子供が独自に有する人格権で単なる呼称にすぎませんから、母親が戸籍から離脱しても子の身分関係に影響がなく、子供の戸籍は父親の戸籍に入ったままの状態となります。すなわち、子の戸籍の記載は,両親の離婚,親権者の指定とは関係ありませんので,父親が親権者にならなくても,何ら変更がないわけです。

(4)ただ,あなたと子の氏は,形式的には同一の氏ですが,法律的には別の氏であると取り扱われてしまいますので(おかしいと思うでしょうが、氏の続称により特に認められた氏,人格権であり呼び方は同じでも婚姻中に取得した氏,人格権とは法的には別の氏となります。例えば,同じ田中さんでも別々の氏,人格権と同様に考えます。),このままでは,子供をあなたの戸籍に入れることはできません。そこで,家庭裁判所に,「子の氏の変更許可の申立て」をすれば,法律的にもあなたの氏と同一の氏にすることができますので(呼び方は同一でも法的には別の氏になるので変更の手続きが必要なのです。),子供をあなたの戸籍に入れることができます。

4. 旧姓に関する関連事例集参照。

解説:

第1 氏と戸籍の関係について

氏(姓)とは,戸籍上の姓であり,単なる個人の呼称にすぎませんが,人間が生まれながらに有する人格名誉権の一つであり、各個人が専属的に所有するものです(憲法13条)。

そして,この氏を明らかにして個人の身分関係を公に証明する公文書が戸籍です。旧民法,戦前は,氏は家,家族制度(家長が統率権を持ち長子単独相続する制度)を表すものと考えられ、個人の所有物ではなく家制度を維持する呼称として存在しました。

しかし,現代において法の支配の理念,憲法の基本原則は個人の尊厳保障,確保,家族関係の本質的平等(憲法24条)にありますから,社会経済生活において個人を特定する姓,氏は必要不可欠であり,自らの存在,先祖を確認するための権利で各個人が生まれながらに享有する人格権,自然権で国家,第三者も理由なく剥奪,侵害することはできません。

しかし,個人,国民は自らの意思で国家を作り統治権を委託し,国家は委託された統治権に基づき教育,納税,選挙,犯罪,福祉等公益的理由及び,相続,扶養,婚姻,取引等私的関係の必要上氏を同じくする夫婦,子ごとに身分関係を明らかにする公文書を作成しています。これが戸籍です。

戸籍自体も旧民法時代と異なり家制度を表示維持するためのものではなく,夫婦,子の人権,尊厳を保障し、平等な家族関係を維持,公示するために存在します。従って,氏の発生,変更については,氏をもともと人格権として所有する個人が自由に決められるはずですが,公益的理由及び私的関係の安定のため発生,変更等について自由に行うことはできません。

以上,氏の変更,戸籍の記載,訂正については,氏の本来的性質である個人の尊厳を保障する人格権,自然権を背景に公益的理由を考慮して行われ,解釈する必要があります。

第2 氏について

1.夫婦の氏

まず,夫婦の氏については,現行法では,民法750条が,「夫婦は,婚姻の際に定めるところに従い,夫又は妻の氏を称する。」と規定しております。夫婦・家族は対等であり各々氏を有する人格権を持っていますが,同一氏を称する理由は前述のように国民にとり公正な社会秩序維持するという公益的理由により、一体性を保持するためにあります。

ただ,現在,98%の夫婦が夫の姓を選択しており,夫婦間の実質的公平に反するとも思われること,近時,女性の社会進出が進んでおり,働く女性に不利であること等の理由から,国会等で,夫婦別姓に関する議論がなされております。ただ,現在のところ決着はついておりません。なお,「氏」(うじ)とは,法律用語における,「名字」,「姓」のことをいいます。

2.復氏(ふくうじ)

そして,民法767条1項は,「婚姻によって氏を改めた夫又は妻は,協議上の離婚によって婚姻前の氏に復する。」と規定しております。

また,裁判上の離婚の場合にも,かかる規定は準用されております(民法771条)。婚姻により同一姓になっても,本来婚姻前に有した人格権である氏使用権は事実上停止していただけですから,離婚によって停止する障害がなくなれば,当然旧氏を継続利用できるわけです。

767条は,そういう意味で氏の人格権として当然の規定です。よって,あなたは,離婚により,特に手続きをすることなく,当然に,旧姓(婚姻前の氏)に戻ることになります。

3.婚氏(こんうじ)続称の届出

但し,当然の復氏によって,従前の社会活動の継続が困難になる場合も考えられます。そこで,民法767条2項は,「前項の規定により婚姻前の氏に復した夫又は妻は,離婚の日から3箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって,離婚の際に称していた氏を称することができる。」と規定しております。

理論的にいえば,氏は単なる呼称で使用することにより,その実態に基づき婚姻中新たに人格権として発生していますから,離婚しても人格権としての氏を夫の意思とは無関係に称することができることになります。あなたは,現在の姓(婚氏)を続称したいと考えた場合,離婚の日から3か月以内に,役所(あなたの本籍地,所在地のうちいずれかの市区町村)に,届け出ることにより(戸籍法77条の2),現在の姓(婚氏)を続称することができます。

4.氏の変更

(1)また,①「当然に,旧姓(婚姻前の氏)に戻った後,離婚の日から3か月が経過したが,婚氏に変更したいと考える場合」もあるでしょう。また,②「当然に,旧姓(婚姻前の氏)に戻った後,離婚の日から3か月以内に届出をして,婚氏を続称することにしたが,その後,再度,旧姓(婚姻前の氏)に変更したいと考える場合」もあるでしょう。なお,これらの場合については,法律相談データベースNo.742で詳しく説明しておりますので,参照して下さい。

(2)これらの場合,戸籍法107条1項は,「やむを得ない事由によって氏を変更しようとするときは,戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者は,家庭裁判所の許可を得て,その旨を届け出なければならない。」と規定しており,家庭裁判所の許可を受ける必要があります。これは,氏は,個人の呼称特定という意味で社会秩序を形成していることから,安易な氏の変更を許すと,教育,納税,福祉等公益的理由及び契約等私的関係において社会秩序が混乱するおそれがあるあるからです。そして,氏の変更には,「やむを得ない事由」が必要で,これは,変更の理由,現在使用している氏の使用期間,子供の利益の有無,氏の変更による社会的影響等の事情を総合的に考慮して,裁判所が決することになります。

(3)そして,①「当然に,旧姓(婚姻前の氏)に戻った後,離婚の日から3か月が経過したが,婚氏に変更したいと考える場合」については,例えば,3か月の期間制限を若干徒過してしまったに過ぎない場合は,「やむを得ない事由」が認められやすいと考えられますが,一般的に,①の場合,裁判所は,社会秩序の混乱防止を重視し,容易に許可しない傾向にあります。すでに婚姻中の氏は人格権として生じ離婚しても潜在的にもともと所有している権利であることから,婚氏に戻す具体的理由,必要性があれば,氏の変更を勝手に許さないという公益的理由があっても緩和する方向が妥当であると思います。

5.判例紹介

判例①

東京高裁平成元年2月15日決定

本件は,届出期間経過後の婚氏の続称を認めています。昭和45年に結婚,昭和63年に離婚訴訟で離婚の判決が出て,離婚が確定した後,元夫から,売却して代金を判決に従って分ける合意が成立したマンションからの転居先を見つけにくくなるので,転居先が決まるまで,離婚届の提出を待って欲しいと言われ,また,元夫が精神不安定と聞いて,督促して取り返しのつかない状態になることを恐れたことから,元妻が,離婚届を出さずに,判決による法的な離婚成立から約4ヶ月が経過してしまい,離婚届提出の際に,続称届が出せなかった,という事案です。

しかし,このケースでも,前審の東京家庭裁判所は,届出を出さなかったのは,あくまでも,元妻の判断に基づく結果であり,法定の期間内に,客観的に届出が提出不可能だった,というわけではない,等の理由から,変更の申立を却下していますから,高裁でも,否定される可能性は,大いにあったことになります。それでも,この地裁の却下の決定に対して,即時抗告をした元妻が,この高裁決定を得たわけですが,その理由として,「元妻が,小学校の教諭として,婚姻時の姓を,児童,教職員,その他校外の関係者にも広く用いていて,続称を認めないと,その人物の同一性が混乱してしまうこと,また,元妻が親権者となった中学生の子供二人が,婚姻前の姓に戻ることに強い抵抗を示していたこと等」が挙げられています。さらに,協議離婚の場合には,届出の時点で離婚が法的に効力を生じるとわかりやすいのですが,判決での離婚の場合には,判決確定の時点で既に離婚は法的に効力を生じていて,届出はその報告をする(報告的届出),というだけですので,効力を生じる時期,つまり,3ヶ月の届出期間の計算開始時期が,少しわかりにくい,という点も判断材料になったのかもしれません。妥当な判決です。

判例②

昭和52年1月5日 大阪家裁 審判 事件番号 昭51(家)2894号

氏の変更許可申立事件

本件は,婚姻前の氏に戻った後に婚姻時の氏得の変更を求めた事件ですが,婚姻中約一四年間使用し,離婚後,長男と同居し母子で氏が相違するので生活上非常に不便であり,かつ肩身の狭い思をしているという理由はやむを得ない事由にあたらないとしています。「当時制定された民法七六七条第二項の立法趣旨を考慮してもやむを得ない事由というのは,当人にとって氏を変更しなければ,社会生活上重大な支障があるとともに現在の氏を引続いて使用させることが社会観念に照して,不当であるとみられる場合をいうものと解する。」と判示していますが具体的不都合がさほどでもなくやむを得ない判断でしょう。また,②「当然に,旧姓(婚姻前の氏)に戻った後,離婚の日から3か月以内に届出をして,婚氏を続称することにしたが,その後,再度,旧姓(婚姻前の氏)に変更したいと考える場合」については,一般的に,裁判所は,一般の氏の変更の場合よりは,「やむを得ない事由」を緩和して(認められやすい方向で)解釈する傾向にあるといえますが,やはり具体的理由,不都合が必要であり簡単に認められるわけではありません。これもすでに人格権として発生した氏の性質上緩和する方向が妥当です。

判例③

平成2年4月4日 東京高裁決定 事件番号 平2(ラ)62号

氏の変更許可申立却下審判に対する即時抗告申立事件

本件は,離婚の際に婚氏を続称した者からの婚姻前の氏への変更の申立てを却下した審判に対する即時抗告事件です。婚氏が社会的に定着する前の申立てであれば,それが恣意的なものではなく,かつ,その変更により社会的弊害が生ずる恐れがない限り,戸籍法一〇七条一項の「やむを得ない事由」の存否について一般的な基準よりもある程度緩和して判断し得ると判断し,原審判を取り消して申立てを認容しています。

判例①

昭和60年3月22日 東京高裁決定 昭59(ラ)292号

氏の変更許可申立却下審判に対する抗告事件

この事件は,離婚時の姓を続用した妻の婚姻前の姓への変更を認めていません。「やむを得ない事由」があるとするためには,単に主観的な支障や不便があるというだけでは足りず,変更しようとする氏が社会生活上重大な支障を与え,その継続使用を強制することが社会観念上不当であると考えられるような事情が必要であるとして,離婚した夫が再婚した女性の名前が同一である事はその理由にならないとしています。

第3. 戸籍について

1.復氏の場合,離婚届出と同時に婚氏続称の届出をしなかった場合

(1)まず,戸籍法19条1項本文は,「婚姻…によって氏を改めた者が,離婚…によって,婚姻…前の氏に復するときは,婚姻又は縁組前の戸籍に入る。」と規定しております。あなたは,離婚届出と同時に婚氏続称の届出をしない限り,離婚届出により,当然に,旧姓(婚姻前の氏)に戻りますので,この場合,あなたは,原則として,婚姻前の戸籍に入ることになります。戸籍は,家族の平等,個人の尊厳を保障する趣旨から両親と子の単位ごとに作成されていますので旧戸籍に戻ることが原則になります。

(2)但し,戸籍法19条1項但書は,「但し,その戸籍が既に除かれているとき,又はその者が新戸籍編製の申出をしたときは,新戸籍を編製する。」と規定しております。よって,あなたは,①戸籍に記載されている者が全て死亡している等の理由で,婚姻前の戸籍が既に除籍されているとき,又は②役所に,新戸籍編製の申出をしたときは,新戸籍を編製することができます。戸籍は,家族間の対等,平等を基本として氏を同じくする両親,子の家族単位に作成しますので新戸籍も作ることが可能になります。

2.離婚届出と同時に婚氏続称の届出をした場合

次に,あなたが,離婚届出と同時に婚氏続称の届出をした場合,戸籍実務の運用では,直ちに,新戸籍が編製されることになります。一旦婚姻し,離婚後婚姻中の氏を再度利用するのですから法的には婚姻中の氏と,続称届け出の氏は呼び方が同じでも続称制度により新たに使用する氏でありその時から別個に人格権として享有することになります。

3.新戸籍について

この場合,戸籍法19条3項は,「民法第767条第2項…の規定によって離婚…の際に称していた氏を称する旨の届出があった場合において,その届出をした者を筆頭に記載した戸籍が編製されていないとき,又はその者を筆頭に記載した戸籍に在る者が他にあるときは,その届出をした者について新戸籍を編製する。」と規定しております。

よって,あなたが,①復籍後の戸籍の筆頭者でないとき(両親が筆頭者となっている場合),又は②復籍後の戸籍の筆頭者であっても,その戸籍に同籍者があるときは(子を氏の変更により戸籍に加えた場合),新戸籍が編製されることになります。

これは,同籍者がいる場合は,あなたの氏の変更の効果を同籍者に及ぼすわけにはいかず,他方,あなたと同籍者の氏が異なったままでは,同一戸籍・同一呼称の要請を貫くことができなくなるからです。逆に言いますと,①あなたが復籍後の戸籍の筆頭者であり,かつ②あなたの戸籍に同籍者がいないときは,新戸籍は編製されません。この場合,戸籍の筆頭者であるあなたの氏名欄の氏の記載が,婚氏に更正されることになります。

第4. 子供について

1.子の氏

まず,子の氏については,民法790条1項本文は,「嫡出である子は,父母の氏を称する。」と規定しております。そして,子の氏は,両親が離婚しても,子どもが人格権として有する氏は子供が生まれながらに取得するものであり,当然に,変更はありません。

よって,

①「あなたが,旧姓(婚姻前の氏)に戻った場合」

あなたが,子供の親権を取得したとしても,子供の氏と異なることになります。

また,

②「あなたが,離婚の日から3か月以内に,役所に届出をすることにより,現在の姓(婚氏)を続称する場合」

あなたと子の氏は,形式的には同一の氏ですが,法律的には,婚姻中の婚氏(=子の氏)と,離婚後に続称の手続をとった婚氏とは,前述のように別の氏として取り扱われます。

よって,この場合も,あなたと子供の氏は異なることになります。

2.子の戸籍

次に,子の戸籍については,戸籍法18条2項は,「父の氏を称する子は,父の戸籍に入り,母の氏を称する子は,母の戸籍に入る。」と規定しております。

つまり,親と子の氏が異なる場合,親は,子を自分の戸籍に入れることはできません。これは,教育,納税,福祉等公益的理由から同一戸籍・同一呼称の要請から規定されているものです。よって,

①「あなたが,旧姓(婚姻前の氏)に戻った場合」

あなたが,子供の親権を取得したとしても,子供の氏と異なることになることから,子供をあなたの戸籍に入れることはできません。

また,

②「あなたが,離婚の日から3か月以内に,役所に届出をすることにより,現在の姓(婚氏)を続称する場合」も,法律的に,あなたと子供の氏は異なることになることから,子供をあなたの戸籍に入れることはできません。

これらの場合,子供は,親権を有しない親の戸籍に入ったままとなり,親権を有するあなたの戸籍には,親権者である旨の記載がなされるに過ぎないことになります。

3.子の氏の変更許可の申立て

(1)但し,これらの場合,あなたは,民法791条1項・3項により,家庭裁判所に,「子の氏の変更許可の申立て」をすることにより,子の氏を,あなたの氏に変更することができます(家事審判法9条1項甲類6号)。この場合,あなたと子の氏が同一になりますので,子供をあなたの戸籍に入れることができます。

(2)この場合の手続きについては,子が15歳以上であれば,申立人は,子になります(民法791条1項)が,子が15歳未満であれば,申立人は,法定代理人(親権者等)になります(民法791条3項)。また,東京家庭裁判所の場合,申立人が申立て時に裁判所に出頭すれば,即日審判によって,即日に変更許可の審判書の交付を受けられるようです。また,郵送による申立てを行うことも可能ですが,この場合,審判書が届くまでに1~2週間かかるようです。

そして,その後,あなたは,役所(入籍する者の本籍地,届出人の所在地のうちいずれかの市区町村)に,審判書を添付した入籍届を届出することになります(戸籍法98条1項)。

第5. まとめ

以上の第1~3の解説をまとめると,回答に記載した内容になります。より詳しく相談したい場合には,離婚に詳しい弁護士に相談するのがよいでしょう。

以上

関連事例集

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※参照条文

憲法

第十三条  すべて国民は,個人として尊重される。生命,自由及び幸福追求に対する国民の権利については,公共の福祉に反しない限り,立法その他の国政の上で,最大の尊重を必要とする。

第二十四条  婚姻は,両性の合意のみに基いて成立し,夫婦が同等の権利を有することを基本として,相互の協力により,維持されなければならない。

○2  配偶者の選択,財産権,相続,住居の選定,離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては,法律は,個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して,制定されなければならない。

民法750条(夫婦の氏)

「夫婦は,婚姻の際に定めるところに従い,夫又は妻の氏を称する。」

民法767条(離婚による復氏等)

1項「婚姻によって氏を改めた夫又は妻は,協議上の離婚によって婚姻前の氏に復する。」

2項「前項の規定により婚姻前の氏に復した夫又は妻は,離婚の日から3箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって,離婚の際に称していた氏を称することができる。」

民法771条(協議上の離婚の規定の準用)

「第766条から第769条までの規定は,裁判上の離婚について準用する。」

民法790条(子の氏)

1項「嫡出である子は,父母の氏を称する。ただし,子の出生前に父母が離婚したときは,離婚の際における父母の氏を称する。」

民法791条(子の氏の変更)

1項「子が父又は母と氏を異にする場合には,子は,家庭裁判所の許可を得て,戸籍法の定めるところにより届け出ることによって,その父又は母の氏を称することができる。」

3項 「子が15歳未満であるときは,その法定代理人が,これに代わって,前二項の行為をすることができる。」

戸籍法18条(子・養子の籍)

1項「父母の氏を称する子は,父母の戸籍に入る。」

2項「前項の場合を除く外,父の氏を称する子は,父の戸籍に入り,母の氏を称する子は,母の戸籍に入る。」

戸籍法19条(離婚・離縁等による復氏者の籍)

1項「婚姻又は養子縁組によって氏を改めた者が,離婚,離縁又は婚姻若しくは縁組の取消によって,婚姻又は縁組前の氏に復するときは,婚姻又は縁組前の戸籍に入る。但し,その戸籍が既に除かれているとき,又はその者が新戸籍編製の申出をしたときは,新戸籍を編製する。」

3項「民法第767条第2項(同法第749条及び第771条において準用する場合を含む。)又は同法第816条第2項(同法808条第2項において準用する場合を含む。)の規定によって離婚若しくは婚姻の取消し又は離縁若しくは縁組の取消しの際に称していた氏を称する旨の届出があった場合において,その届出をした者を筆頭に記載した戸籍が編製されていないとき,又はその者を筆頭に記載した戸籍に在る者が他にあるときは,その届出をした者について新戸籍を編製する。」戸籍法77条の2(離婚の際の氏を称する場合)

「民法第767条第2項(同法第771条において準用する場合も含む。)の規定によって離婚の際に称していた氏を称しようとする者は,離婚の年月日を届書に記載して,その旨を届け出なければならない。」

戸籍法98条(子の改氏)

1項「民法第791条第1項から第3項までの規定によって父又は母の氏を称しようとする者は,その父又は母の氏名及び本籍と届書に記載して,その旨を届け出なければならない。」

戸籍法107条(氏の変更)

1項「やむを得ない事由によって氏を変更しようとするときは,戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者は,家庭裁判所の許可を得て,その旨を届け出なければならない。」

家事審判法9条(審判事項)

1項「家庭裁判所は,次に掲げる事項について審判を行う。」

1項甲類6号「民法第791条第1項又は第3項の規定による子の氏の変更についての許可」