新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.862、2009/4/28 14:06

【商事・会社法・取締役の退任】

質問:株式会社の代表取締役です。自分も含め、株主は3人で持ち株割合は平等、全員取締役になっています。今回、取締役のうちの1人の取締役が病気のため長期療養をすることになりました。いずれ業務に支障をきたしますので、彼には取締役を辞めてもらいたいと思います。@取締役をやめてもらうための手続を教えてください。A報酬の支払いはどうなりますか。

回答:
1.取締役の退任方法としては、
(あ)任期が近ければ任期満了まで待って再任しない、
(い)辞任届を書いてもらう、
(う)株主総会で解任の決議をする(会社法339条1項)、あるいは
(え)少数株主による取締役解任の訴え提起という方法があります(会社法854条)。
ただ、(う)(え)の方法で退任した場合には、登記事項証明書に「解任」という文言が記載され、第三者から見た場合、社内トラブルがあったようにも見受けられ、対外的な印象を悪くする可能性もありますので、できれば、(あ)(い)の方法で穏便に退任してもらうのがいいでしょう。
2.取締役に対する報酬は、定款あるいは株主総会の決議で定めることとなっています(会社法361条)。また、取締役と会社の関係は、民法に規定された「委任契約」ですので、報酬の支払は原則として後払いであり、期間によって報酬を定めた場合には、雇用契約と同じように期間経過後でないと請求できないとしています(民法第648条)。これらから、任期途中で辞任した場合には、以降の報酬を払う必要は当然ありませんが、解任手続をせざるを得なくなった場合には、解任について正当な事由があると認められない場合には、残任期間の役員報酬に相当する額を支払う必要がありますので、注意が必要です。
3.当事務所相談事例集NO.692も参考にしてください。

解説:
取締役の地位、退任についての基本的考え方を説明します。

取締役の定義ですが、平成17年会社法成立により多少複雑になりましたので注意してください。取締役とは、株式会社において業務決定、執行を行う権限を有する(会社法348条)常置の機関である役員(業務の執行、業務会計の監査を行うもの)をいいます(会社法329条1項)。ただ、取締役会設置会社(会社法327条、326条2項、2条7号、会社の利益を保護するため意思決定・監査機関を設けている会社です。改正商法前の構成と同じです。)では、会社の業務執行の意思決定及び、取締役の職務執行の監査を行う取締役会の構成員である役員ということになります。但し、委員会設置会社では(会社法400条以下、2条12号、執行役という経営のプロを雇いながら取締役会という意思決定、監査機関をさらに分化、強化して意思決定、監査力を強めて会社の利益を確保する会社)、取締役だけでなく執行役の職務執行の監査も取締役会が行うことになります。以上から、取締役とは株式会社の業務の意思決定、執行、業務監査を行う役員、経営者ということになります。このような取締役の基本的地位は、民法上の委任契約に基づきます(会社法330条、民法643条)。委任契約は、委任者(会社)が法律上の効果を生じる行為(事務)の代理(処理)を受託者に委託するものですが、受託者(取締役)は労働契約と異なり、委託された趣旨に従い、法律行為等を行うことについて自ら裁量権を有し、高度な善管注意義務(会社法355条の忠実義務)を要するところに特色があります。従って、委任契約は当事者間の信頼関係が当然の前提となり、信頼関係が失われた時当事者は理由の如何を問わず契約は解消することができるのです(民法651条)。これは会社の機関である取締役も同じです。すなわち、株主総会の決議(株主の意思)に基づき、正当な理由がなくとも解任となります。その他、前記の取締役の業務内容から会社法上委任契約存続に特別な配慮がなされています。

言うまでもなく、株式会社の基本構造は、営利を目的として所有(株主)と経営(取締役等)の分離にありますが、会社の規模が大きくなればなるほど、配当、株価にのみ直接の利害を有する本来の所有者である一般株主は、経営に興味を失い経営者、すなわち取締役に権限が集中する傾向が大きくなります。しかし、株式会社制度の本来の目的は、単に当該会社の営利のみを目的にするものではなく、自由主義、資本主義社会の経済社会秩序を適正公平に維持し、発展させることの手段として存在し、法の理想である個人を尊重し、公正で豊かな経済秩序建設という理念により常に支配されているのです。株式会社は、一般大衆投資家の資金により巨大な事業を展開し、経済活動を行うだけでなく、国民の雇用、労働の場でもあり、その運営は他の組織体とも密接に関連し、社会全体に大きい影響を及ぼす可能性を有しています。従って、その会社の運営の中核にある取締役(又は取締役会の構成員として)には、厳格な忠実義務が要求されると同時に、業務の適正を確保するための体制(内部統制システム、コンプライアンス体制)をとることが常に要請されています(会社法348条2項・3項4号。大会社では348条4項。取締役会設置会社では362条4項6号・5項。委員会設置会社では416条1項1号ホ、2項)。以上、会社法上の趣旨から、取締役に不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実がれば、例え株主総会で解任が否決されても少数株主による解任の訴えも規定されているのです。以下詳説します。

1.取締役と会社
取締役は株主総会の決議で選任されます(会社法第329条)。そして、選任された取締役と会社との関係は、民法が定める委任に関する規定に従う、と規定されています(会社法第330条)。これにより、会社が取締役を解任する場合には、会社法の他に民法第643条以下の委任に関する規定も見ていく必要があります。その他取締役に関しては当事務所相談事例集NO.692も併せてご参考下さい。
(あ)(い)の任期満了あるいは辞任による退任については、法の定め、あるいは、本人の意向を汲むので、後に大きな問題が生じることは少ないと考えられますが、(う)(え)の解任による場合には、本人の意思に反して退任させることになるので、手続きについては、十分な検討と準備が必要です。会社法は取締役の解任について、「いつでも、株主総会の決議によって解任することができる」と定めています(会社法第339条1項)。この委任契約に不解任特約があるような場合を除いて、この取締役との委任契約が有償、あるいは使用人兼役員のような雇用型の委任契約であった場合でも、判例は本法に基づき、いつでも委任契約を解除することができるとしています(東京地裁H11.12.24判決)。ただし、同条2項で、その解任に正当な事由がある場合を除いて、当該取締役は会社に対して、解任によって生じた損害の賠償を請求することができる、と定められていますので、解任について正当な事由がない場合には、「解任によって生じた損害」(取締役を解任されなければ残存期間中に得られたであろう利益、すなわち、残存期間中の役員報酬相当額(前述判例))を当該取締役に支払う必要があります。ちなみに判例では正当事由として、『取締役に職務執行上の法令定款違反行為があった場合、心身の故障のため職務執行に支障がある場合、職務への著しい不適任となるべき事情がある場合等、業務執行の障害となるべき客観的状況がある場合』を挙げています(大阪地裁平成10.1.28判決)。ご相談のケースでは、長期療養に入る、とのことですので、判例のいう、「心身の故障のため職務執行に支障がある場合」として、解任の正当事由に該当する可能性は高いといえます。

2.退任の方法
取締役の退任方法として、いくつかの方法が考えられますが、いずれの方法をとるにしても、法律に則った正確な手続きを踏み、後日その手続に瑕疵があったことを理由に解任決議が取り消されたり、無効とされたりしないようにすることが重要です。

(あ)任期満了による退任
まもなく当該取締役の任期が満了となる場合には、次の定時株主総会で当該取締役を再任しなければ、その取締役と会社との委任契約は円満に終了することになります。株主の権利等については、当事務所事例集NO.708をご覧下さい。
(い)辞任による退任
取締役はいつでも辞任することができます(民法第651条)ので、取締役に辞任届を書いてもらいます。なお、任期満了による退任の場合と辞任による退任の場合で、定款に規定する取締役の人数を下回ることになる場合には、株主総会で、取締役会設置の定め廃止、または、員数制限に関する定款変更決議(特別決議)をするか、あるいは、後任取締役の選任決議(普通決議)をする必要があります。いずれかの決議をしないと当該取締役は、権利義務取締役として、引き続き取締役としての地位を有するからです(会社法第346条)。
(う)解任による退任(会社法341条、会社法342条)
解任により退任させる場合には、当該取締役の意思に反する決議を行うことになりますから、(あ)(い)と比べて、より慎重に手続を行う必要があります。

3.解任決議
取締役は株主総会で解任することができます(会社法第295条)。商法下では、取締役の解任決議には、特別決議が必要でしたが、会社法ではその要件が緩和され、選任決議と同様の普通決議で足りることとになりました。これは、会社の運営ついて望ましくない人物をいつまでも経営参加させておく必要はないと考えるからです。普通決議とは、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(定款で3分の1までの軽減が可能)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数(定款で加重可)をもってする決議のことです。ただし、例外として、当該取締役が累積投票により選任されている場合には、普通決議ではなく、従前どおり、特別決議(議決権を行使することができる株主の議決権の過半数の株主の出席で、その議決権の3分の2以上の同意を持ってする決議)が必要となります。累積投票とは、株式一株について、選任する取締役と同じ数の議決権が与えられ、株主はこの議決権を全て同じ取締役に投じることも、それぞれ別の取締役に投じることも出来るという制度で、この制度を利用することにより、取締役の選任に少数株主の意見を反映させることができます。この累積投票の制度趣旨から、累積投票により選任された取締役について普通決議で解任することを認めるのは相当ではないとされ、引き続き特別決議が要求されているのです。

4.解任手続
@株主総会を招集する(会社法第296条、297条、298条)
株主総会を招集するには、取締役会設置会社であれば、取締役会の決議、非設置会社であれば、取締役の過半数の一致により、招集する旨を決定する必要があります。その後、開催の日時、場所、目的(当該取締役を解任する旨)を決め、招集権者である代表取締役が招集します。また、会社法297条では、少数株主による株主総会招集権を認めています。公開会社では6ヶ月前(定款で短縮可能)から引き続き(非公開会社は、同条2項で保有期間の制限なし)当該会社の100分の3(定款でこれを下回ることも可)以上の議決権を有する株主は、会社に対して、株主総会の目的及びその理由を示して、株主総会を請求するよう求めることができます。ただし、この権利を行使しても、株主が直接株主総会を招集できるわけではなく、会社に対して招集するよう請求できるに留まります。株主が直接総会を召集できるのは、当該株主が招集を請求してから遅滞なく招集手続が行われない場合、あるいは請求した日から8週間以内(定款で短縮可)に株主総会の招集通知が発せられない場合に、裁判所の許可を得ることにより、初めて直接株主総会を招集することができるのです。

以上のとおり、会社法は、総会の招集は、招集権限のある者が法定の手続を踏んで行うことを要求しています。仮に、招集手続を経ないで株主が集まり、ある事項について決定をしたとしても、原則としてそれは株主総会の決議としては認められません。判例・通説は、取締役会の決定(取締役会非設置会社では、取締役の過半数の一致)を欠いた株主総会の決議は、決議取消しの訴えの対象となるとしています。その一方で、旧商法は、株主総会について招集権者による招集の手続を経ることを必要とする趣旨は、『全株主に対し、会議体としての機関である株主総会の開催と会議の目的たる事項を知らせることによって、これに対する出席の機会を与えるとともにその議事及び議決に参加するための準備の機会を与えることを目的とするもの』であるが、招集権者による招集手続を欠いた場合であっても、『株主全員がその開催に同意して出席したいわゆる全員出席総会において、株主総会の権限に属する事項につき決議をしたときには、右決議は有効に成立するものというべきであり』、『委任状に基づいて選任された代理人が出席することにより株主全員が出席したこととなる右総会において決議がされたとき』でも、当該株主が『会議の目的たる事項を了知して委任状を作成し』、『かつ、当該決議が右会議の目的たる事項の範囲内のものである限り』は、招集手続を欠いた株主総会の決議でも、有効に成立するものと解すべきである(最判昭和60.12.20)として、株主全員がその開催に同意し、全員が出席した株主総会の決議は有効である、としていましたが、平成14年の商法改正および会社法では、書面あるいは電磁的方法による議決権行使を認めている場合を除いて、株主全員の同意があれば、招集手続を省略できると明確に規定しました(法300条)。取締役あるいは取締役会は、株主総会の開催・招集を決定する際に、当該取締役の解任を議題とすることもあわせて決定します(法第298条)。

A招集手続をする(法第298条)
株主総会の開催・招集について決まったら、株主に招集通知を発送します。この通知は、原則として総会の日の2週間前(非公開会社では1週間前、非公開会社でかつ取締役会非設置会社であれば、定款でさらに短縮可能)までに発する必要があります。2週間前までに「発すれば」足りますので、株主が受け取ってから総会期日まで2週間なくても構いません。株主総会の通知には、株主総会が開催されること及びそこで決議する議題(取締役の解任であれば、どの取締役を解任するのかを記載)について記載をします(法299条/非公開会社を除く)が、これは、株主に総会に出席するかどうか、また、議決権をどのように行使するかについて熟慮する期間を設けるためですので、株主全員の同意があれば通知を発する必要はないとされています。ただし、招集決定に際して、書面または電磁的方法による議決権行使を認めることを定めた場合には、必ず「通知」を発する必要があります(株主の承諾があれば電磁的方法で発することも可)。なおこの通知は、取締役会非設置会社である場合、または、書面または電磁的方法による議決権行使を認めない場合には、書面でする必要がなく、口頭で足ります。しかし、今回の取締役の解任決議など重要な決議(将来紛争の種となる恐れのある決議)を行う場合には、この招集通知は、取締役会非設置会社であっても発したことが証明できるように口頭ではなく書面で、できれば配達記録等の発したことの記録が残る方法で議案も含めて通知しておくことをお勧めします。なお、書面での議決権行使を認める場合には、この総会招集通知には解任についての参考資料を添える必要があります。

B株主総会を開催する
最後に、株主総会を開催します。株主総会において、当該取締役には、監査役・会計監査人・会計参与と異なり、解任の議題について異義があっても、意見陳述をする権利はありませんが、もし、当該取締役が株主から解任に関して説明を求められたら、これについて説明をする義務があります(会社法第314条)。株主総会では、取締役を解任したい旨及び解任の理由を述べて議場に諮り、可決された場合には、その時点で当該取締役は、取締役の職を失い、直ちに退任することになります。株主総会の議事については、終了後、議事録を作成する義務があります(会社法318条)。作成された議事録は、原則として、本店では、株主総会の日から10年間、支店では5年間、その本店支店に備えおきます。この議事録には、議事録作成者が署名押印します。

(え)解任の訴えによる退任(会社法854条)
最後に、会社法は、株主総会で解任決議が否決された場合の救済策として、少数株主よる解任の訴えを認めています。訴えを提起する権利(少数株主権)を行使するには、下記の条件があります。
@@当該取締役が、職務執行に関して不正な行為した、あるいは、法令・定款に違反する重大な事実があったこと、A@の事実があるにもかかわらず、当該取締役を解任する旨の決議が否決、あるいは、解任する旨の決議の効力が生じないとされた場合であること
A解任決議のあった株主総会から30日以内に、Bの持ち株要件を満たす株主は、本店所在地を管轄する地方裁判所に対して、会社と当該取締役を相手方(被告)として解任の訴えを提起できるとしています(会社法855、856条)。
B解任の訴えを提起できる株主の持ち株要件は、@総株主の議決権の3パーセントを6ヶ月前(定款で短縮可)から引き続き保有する株主(但し、解任決議に関して議決権を行使できない株主、及び当該取締役である株主は除く)、あるいは、A発行済み株式総数の3パーセント以上の株式を6ヶ月前(定款で短縮可)から引き続き保有する株主、です(但し、当該株式会社である株主、当該取締役である株主は除きます)。いずれの場合も非公開会社の場合には保有期間の制限はありません。

5.権利義務取締役の解任
では当該取締役が、会社法346条の権利義務取締役に該当する取締役の場合には、どうなるのでしょうか。
@株主総会による解任決議
権利義務取締役は、当該取締役が「任期満了」あるいは「辞任」により退任したが、定款あるいは法令に定める取締役の員数に欠員が生じる場合に、当該取締役は、引き続き取締役としての権利義務を有するというものです。この場合には、株主総会を開いて新しい取締役を選任する、あるいは、取締役の員数制限について定款変更決議をすれば、欠員状態が解消され、当該取締役の権利義務は消滅し、当該取締役はその地位を失いますので、解任決議をすることはできません。

A解任の訴え
これについては、最近、最高裁で判決が出ています(最判H20.2.26)。判決では、『会社法346条1項に基づき退任後もなお会社の役員としての権利義務を有する者(以下「役員権利義務者」という。)の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実(以下「不正行為等」という。)があった場合において,同法854条を適用又は類推適用して株主が訴えをもって当該役員権利義務者の解任請求をすることは,許されないと解するのが相当』としています。その理由として、『(1)同条は,解任請求の対象につき,単に役員と規定しており,役員権利義務者を含む旨を規定していない。(2)同法346条2項は、裁判所は必要があると認めるときは利害関係人の申立てにより一時役員の職務を行うべき者(以下「仮役員」という。)を選任することができると定めているところ,役員権利義務者に不正行為等があり,役員を新たに選任することができない場合には,株主は,必要があると認めるときに該当するものとして,仮役員の選任を申し立てることができると解される。そして,同条1項は,役員権利義務者は新たに選任された役員が就任するまで役員としての権利義務を有すると定めているところ,新たに選任された役員には仮役員を含むものとしているから,役員権利義務者について解任請求の制度が設けられていなくても,株主は,仮役員の選任を申し立てることにより,役員権利義務者の地位を失わせることができる。』とし、会社法は、権利義務取締役について、解任の訴えを提起することを法は予定していないとして、株主からの解任の訴えを認めませんでした。

6.最後に
以上のとおり、会社は、株主総会の決議により、取締役の選任・解任をはじめとする様々な意思決定を行っています。しかし、最近の株式会社の設立の際によく見られるのですが、すべてにおいて対等とするべく、出資者2人が対等額を出資、保有する株式の数も全く同じにして設立された会社については、この株主総会の意思決定機関として機能が全く働かないという事態も生じます。全てに対等であるということは、会社の運営がうまくいき、株主、取締役の関係が良好、会社の方針に対立がないような場合には、特に大きな問題が生じることはないのでしょう。しかし、万一、意見の食い違いがおき、対立関係が生じた場合に、反対する株主が株主総会に出席しない、決議に参加しないことで、会社の重要な事項すら決められないという事態を招きかねないのです。ご相談のケースで、もし、持分割合が、当該取締役と代表取締役とで2分の1ずつであった場合には、株主総会自体が不成立となり、解任の訴えも提起できないという状況は十分に考えられます。逆に考えれば、このような事態にまで発展した会社の共同経営は、将来上手くいくと考えることは正直難しいので、相手方の保有する株式を買い取り、取締役を辞任してもらい、共同関係を解消する方法で事態の収拾を図るというのも、会社を存続させるひとつの方法であると言えるでしょう。さらに言えば、会社法の改正で非公開会社は取締役の任期を10年まで伸長できるようになりましたが、もし、長い任期を定めて新たに取締役を選任した場合、仮にその取締役が取締役の地位に相応しくない、能力が足らない、といった理由で解任したいような場合にも、残存期間に応じた役員報酬相当額を支払わなければいけない可能性があり、会社に相応の負担を課すことになりますので、長い任期を設定する場合には、より慎重な人選が必要でしょう。以上のとおり、取締役の退任については、会社の状況、当該取締役の違反行為の程度、株主構成などにより、とるべく退任の方法は異なります。特に、当該取締役が退任を望んでいない場合に「辞任」「任期満了」により穏便に解決したい場合、あるいは、解任の手続を取らざるを得ないような場合には、一度弁護士に相手方との交渉や適切な手続についてご相談されることをお勧めします。

<参照条文:会社法>

(定義)
第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一  会社 株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社をいう。
二  外国会社 外国の法令に準拠して設立された法人その他の外国の団体であって、会社と同種のもの又は会社に類似するものをいう。
三  子会社 会社がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社その他の当該会社がその経営を支配している法人として法務省令で定めるものをいう。
四  親会社 株式会社を子会社とする会社その他の当該株式会社の経営を支配している法人として法務省令で定めるものをいう。
五  公開会社 その発行する全部又は一部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない株式会社をいう。
六  大会社 次に掲げる要件のいずれかに該当する株式会社をいう。
イ 最終事業年度に係る貸借対照表(第四百三十九条前段に規定する場合にあっては、同条の規定により定時株主総会に報告された貸借対照表をいい、株式会社の成立後最初の定時株主総会までの間においては、第四百三十五条第一項の貸借対照表をいう。ロにおいて同じ。)に資本金として計上した額が五億円以上であること。
ロ 最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が二百億円以上であること。
七  取締役会設置会社 取締役会を置く株式会社又はこの法律の規定により取締役会を置かなければならない株式会社をいう。
八  会計参与設置会社 会計参与を置く株式会社をいう。
九  監査役設置会社 監査役を置く株式会社(その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがあるものを除く。)又はこの法律の規定により監査役を置かなければならない株式会社をいう。
十  監査役会設置会社 監査役会を置く株式会社又はこの法律の規定により監査役会を置かなければならない株式会社をいう。
十一  会計監査人設置会社 会計監査人を置く株式会社又はこの法律の規定により会計監査人を置かなければならない株式会社をいう。
十二  委員会設置会社 指名委員会、監査委員会及び報酬委員会(以下「委員会」という。)を置く株式会社をいう。
(株主総会の権限)
第二百九十五条 株主総会は、この法律に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる。
2 前項の規定にかかわらず、取締役会設置会社においては、株主総会は、この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる。
3 この法律の規定により株主総会の決議を必要とする事項について、取締役、執行役、取締役会その他の株主総会以外の機関が決定することができることを内容とする定款の定めは、その効力を有しない。
(株主総会の招集)
第二百九十六条  定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない。
2 株主総会は、必要がある場合には、いつでも、招集することができる。
3 株主総会は、次条第四項の規定により招集する場合を除き、取締役が招集する。
(株主による招集の請求)
第二百九十七条 総株主の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主は、取締役に対し、株主総会の目的である事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る。)及び招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができる。
2 公開会社でない株式会社における前項の規定の適用については、同項中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する」とあるのは、「有する」とする。
3 第一項の株主総会の目的である事項について議決権を行使することができない株主が有する議決権の数は、同項の総株主の議決権の数に算入しない。
4 次に掲げる場合には、第一項の規定による請求をした株主は、裁判所の許可を得て、株主総会を招集することができる。
一 第一項の規定による請求の後遅滞なく招集の手続が行われない場合
二 第一項の規定による請求があった日から八週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)以内の日を株主総会の日とする株主総会の招集の通知が発せられない場合
(株主総会の招集の決定)
第二百九十八条 取締役(前条第四項の規定により株主が株主総会を招集する場合にあっては、当該株主。次項本文及び次条から第三百二条までにおいて同じ。)は、株主総会を招集する場合には、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 株主総会の日時及び場所
二 株主総会の目的である事項があるときは、当該事項
三 株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができることとするときは、その旨
四 株主総会に出席しない株主が電磁的方法によって議決権を行使することができることとするときは、その旨
五 前各号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項
2 取締役は、株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。次条から第三百二条までにおいて同じ。)の数が千人以上である場合には、前項第三号に掲げる事項を定めなければならない。ただし、当該株式会社が金融商品取引法第二条第十六項に規定する金融商品取引所に上場されている株式を発行している株式会社であって法務省令で定めるものである場合は、この限りでない。
3 取締役会設置会社における前項の規定の適用については、同項中「株主総会において決議をすることができる事項」とあるのは、「前項第二号に掲げる事項」とする。
4 取締役会設置会社においては、前条第四項の規定により株主が株主総会を招集するときを除き、第一項各号に掲げる事項の決定は、取締役会の決議によらなければならない。
(株主総会の招集の通知)
第二百九十九条 株主総会を招集するには、取締役は、株主総会の日の二週間(前条第一項第三号又は第四号に掲げる事項を定めたときを除き、公開会社でない株式会社にあっては、一週間(当該株式会社が取締役会設置会社以外の株式会社である場合において、これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間))前までに、株主に対してその通知を発しなければならない。
2 次に掲げる場合には、前項の通知は、書面でしなければならない。
一 前条第一項第三号又は第四号に掲げる事項を定めた場合
二 株式会社が取締役会設置会社である場合
3 取締役は、前項の書面による通知の発出に代えて、政令で定めるところにより、株主の承諾を得て、電磁的方法により通知を発することができる。この場合において、当該取締役は、同項の書面による通知を発したものとみなす。
4 前二項の通知には、前条第一項各号に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
(招集手続の省略)
第三百条 前条の規定にかかわらず、株主総会は、株主の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができる。ただし、第二百九十八条第一項第三号又は第四号に掲げる事項を定めた場合は、この限りでない。
(株主総会以外の機関の設置)
第三百二十六条  株式会社には、一人又は二人以上の取締役を置かなければならない。
2  株式会社は、定款の定めによって、取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人又は委員会を置くことができる。
(取締役会等の設置義務等)
第三百二十七条  次に掲げる株式会社は、取締役会を置かなければならない。
一  公開会社
二  監査役会設置会社
三  委員会設置会社
2  取締役会設置会社(委員会設置会社を除く。)は、監査役を置かなければならない。ただし、公開会社でない会計参与設置会社については、この限りでない。
3  会計監査人設置会社(委員会設置会社を除く。)は、監査役を置かなければならない。
4  委員会設置会社は、監査役を置いてはならない。
5  委員会設置会社は、会計監査人を置かなければならない。
(選任)
第三百二十九条 役員(取締役、会計参与及び監査役をいう。以下この節、第三百七十一条第四項及び第三百九十四条第三項において同じ。)及び会計監査人は、株主総会の決議によって選任する。
2 前項の決議をする場合には、法務省令で定めるところにより、役員が欠けた場合又はこの法律若しくは定款で定めた役員の員数を欠くこととなるときに備えて補欠の役員を選任することができる。
(株式会社と役員等との関係)
第三百三十条 株式会社と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う。
(解任)
第三百三十九条 役員及び会計監査人は、いつでも、株主総会の決議によって解任することができる。
2 前項の規定により解任された者は、その解任について正当な理由がある場合を除き、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができる。
(役員の選任及び解任の株主総会の決議)
第三百四十一条 第三百九条第一項の規定にかかわらず、役員を選任し、又は解任する株主総会の決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行わなければならない。
(累積投票による取締役の選任)
第三百四十二条 株主総会の目的である事項が二人以上の取締役の選任である場合には、株主(取締役の選任について議決権を行使することができる株主に限る。以下この条において同じ。)は、定款に別段の定めがあるときを除き、株式会社に対し、第三項から第五項までに規定するところにより取締役を選任すべきことを請求することができる。
2 前項の規定による請求は、同項の株主総会の日の五日前までにしなければならない。
3 第三百八条第一項の規定にかかわらず、第一項の規定による請求があった場合には、取締役の選任の決議については、株主は、その有する株式一株(単元株式数を定款で定めている場合にあっては、一単元の株式)につき、当該株主総会において選任する取締役の数と同数の議決権を有する。この場合においては、株主は、一人のみに投票し、又は二人以上に投票して、その議決権を行使することができる。
4 前項の場合には、投票の最多数を得た者から順次取締役に選任されたものとする。
5 前二項に定めるもののほか、第一項の規定による請求があった場合における取締役の選任に関し必要な事項は、法務省令で定める。
6 前条の規定は、前三項に規定するところにより選任された取締役の解任の決議については、適用しない。
(役員等に欠員を生じた場合の措置)
第三百四十六条 役員が欠けた場合又はこの法律若しくは定款で定めた役員の員数が欠けた場合には、任期の満了又は辞任により退任した役員は、新たに選任された役員(次項の一時役員の職務を行うべき者を含む。)が就任するまで、なお役員としての権利義務を有する。
(業務の執行)
第三百四十八条  取締役は、定款に別段の定めがある場合を除き、株式会社(取締役会設置会社を除く。以下この条において同じ。)の業務を執行する。
2  取締役が二人以上ある場合には、株式会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、取締役の過半数をもって決定する。
3  前項の場合には、取締役は、次に掲げる事項についての決定を各取締役に委任することができない。
一  支配人の選任及び解任
二  支店の設置、移転及び廃止
三  第二百九十八条第一項各号(第三百二十五条において準用する場合を含む。)に掲げる事項
四  取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備
五  第四百二十六条第一項の規定による定款の定めに基づく第四百二十三条第一項の責任の免除
4  大会社においては、取締役は、前項第四号に掲げる事項を決定しなければならない。
(忠実義務)
第三百五十五条  取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない。
(取締役会の権限等)
第三百六十二条  取締役会は、すべての取締役で組織する。
2  取締役会は、次に掲げる職務を行う。
一  取締役会設置会社の業務執行の決定
二  取締役の職務の執行の監督
三  代表取締役の選定及び解職
3  取締役会は、取締役の中から代表取締役を選定しなければならない。
4  取締役会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない。
一  重要な財産の処分及び譲受け
二  多額の借財
三  支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
四  支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
五  第六百七十六条第一号に掲げる事項その他の社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で定める事項
六  取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備
七  第四百二十六条第一項の規定による定款の定めに基づく第四百二十三条第一項の責任の免除
5  大会社である取締役会設置会社においては、取締役会は、前項第六号に掲げる事項を決定しなければならない。
(取締役会設置会社の取締役の権限)
第三百六十三条  次に掲げる取締役は、取締役会設置会社の業務を執行する。
一  代表取締役
二  代表取締役以外の取締役であって、取締役会の決議によって取締役会設置会社の業務を執行する取締役として選定されたもの
2  前項各号に掲げる取締役は、三箇月に一回以上、自己の職務の執行の状況を取締役会に報告しなければならない。
(委員の選定等)
第四百条  各委員会は、委員三人以上で組織する。
2  各委員会の委員は、取締役の中から、取締役会の決議によって選定する。
3  各委員会の委員の過半数は、社外取締役でなければならない。
4  監査委員会の委員(以下「監査委員」という。)は、委員会設置会社若しくはその子会社の執行役若しくは業務執行取締役又は委員会設置会社の子会社の会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)若しくは支配人その他の使用人を兼ねることができない。

第四百十六条  委員会設置会社の取締役会は、第三百六十二条の規定にかかわらず、次に掲げる職務を行う。
一  次に掲げる事項その他委員会設置会社の業務執行の決定
イ 経営の基本方針
ロ 監査委員会の職務の執行のため必要なものとして法務省令で定める事項
ハ 執行役が二人以上ある場合における執行役の職務の分掌及び指揮命令の関係その他の執行役相互の関係に関する事項
ニ 次条第二項の規定による取締役会の招集の請求を受ける取締役
ホ 執行役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備
二  執行役等の職務の執行の監督
2  委員会設置会社の取締役会は、前項第一号イからホまでに掲げる事項を決定しなければならない。
3  委員会設置会社の取締役会は、第一項各号に掲げる職務の執行を取締役に委任することができない。
(株式会社の役員の解任の訴え)
第八百五十四条 役員(第三百二十九条第一項に規定する役員をいう。以下この節において同じ。)の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があったにもかかわらず、当該役員を解任する旨の議案が株主総会において否決されたとき又は当該役員を解任する旨の株主総会の決議が第三百二十三条の規定によりその効力を生じないときは、次に掲げる株主は、当該株主総会の日から三十日以内に、訴えをもって当該役員の解任を請求することができる。
一 総株主(次に掲げる株主を除く。)の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主(次に掲げる株主を除く。)
イ 当該役員を解任する旨の議案について議決権を行使することができない株主
ロ 当該請求に係る役員である株主
二 発行済株式(次に掲げる株主の有する株式を除く。)の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の数の株式を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主(次に掲げる株主を除く。)
イ 当該株式会社である株主
ロ 当該請求に係る役員である株主
2 公開会社でない株式会社における前項各号の規定の適用については、これらの規定中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する」とあるのは、「有する」とする。
3 第百八条第一項第九号に掲げる事項(取締役に関するものに限る。)についての定めがある種類の株式を発行している場合における第一項の規定の適用については、同項中「株主総会」とあるのは、「株主総会(第三百四十七条第一項の規定により読み替えて適用する第三百三十九条第一項の種類株主総会を含む。)」とする。
4 第百八条第一項第九号に掲げる事項(監査役に関するものに限る。)についての定めがある種類の株式を発行している場合における第一項の規定の適用については、同項中「株主総会」とあるのは、「株主総会(第三百四十七条第二項の規定により読み替えて適用する第三百三十九条第一項の種類株主総会を含む。)」とする。
(被告)
第八百五十五条 前条第一項の訴え(次条及び第九百三十七条第一項第一号ヌにおいて「株式会社の役員の解任の訴え」という。)については、当該株式会社及び前条第一項の役員を被告とする。
(訴えの管轄)
第八百五十六条 株式会社の役員の解任の訴えは、当該株式会社の本店の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に専属する。
(委任)

<参照条文:民法>
第六百四十三条 委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
(受任者の注意義務)
第六百四十四条 受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。
(受任者による報告)
第六百四十五条 受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない。
(受任者による受取物の引渡し等)
第六百四十六条 受任者は、委任事務を処理するに当たって受け取った金銭その他の物を委任者に引き渡さなければならない。その収取した果実についても、同様とする。
2 受任者は、委任者のために自己の名で取得した権利を委任者に移転しなければならない。
(受任者の金銭の消費についての責任)
第六百四十七条 受任者は、委任者に引き渡すべき金額又はその利益のために用いるべき金額を自己のために消費したときは、その消費した日以後の利息を支払わなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。
(受任者の報酬)
第六百四十八条 受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない。
2 受任者は、報酬を受けるべき場合には、委任事務を履行した後でなければ、これを請求することができない。ただし、期間によって報酬を定めたときは、第六百二十四条第二項の規定を準用する。
3 委任が受任者の責めに帰することができない事由によって履行の中途で終了したときは、受任者は、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。
(受任者による費用の前払請求)
第六百四十九条 委任事務を処理するについて費用を要するときは、委任者は、受任者の請求により、その前払をしなければならない。
(受任者による費用等の償還請求等)
第六百五十条 受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。
2 受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる債務を負担したときは、委任者に対し、自己に代わってその弁済をすることを請求することができる。この場合において、その債務が弁済期にないときは、委任者に対し、相当の担保を供させることができる。
3 受任者は、委任事務を処理するため自己に過失なく損害を受けたときは、委任者に対し、その賠償を請求することができる。
(委任の解除)
第六百五十一条 委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。
2 当事者の一方が相手方に不利な時期に委任の解除をしたときは、その当事者の一方は、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。
(委任の解除の効力)
第六百五十二条 第六百二十条の規定は、委任について準用する。
(委任の終了事由)
第六百五十三条 委任は、次に掲げる事由によって終了する。
一 委任者又は受任者の死亡
二 委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと。
三 受任者が後見開始の審判を受けたこと。
(委任の終了後の処分)
第六百五十四条 委任が終了した場合において、急迫の事情があるときは、受任者又はその相続人若しくは法定代理人は、委任者又はその相続人若しくは法定代理人が委任事務を処理することができるに至るまで、必要な処分をしなければならない。
(委任の終了の対抗要件)
第六百五十五条 委任の終了事由は、これを相手方に通知したとき、又は相手方がこれを知っていたときでなければ、これをもってその相手方に対抗することができない。
(準委任)
第六百五十六条 この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。


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