新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.902、2009/8/3 17:02 https://www.shinginza.com/qa-jiko.htm

【民事・交通事故・訴訟手続以外の救済手続き・ADR法・評価損の認定】

質問:車(国産車,登録後3年半経過)を運転していたところ,他車に後方から追突されて,自車後部が破損してしまいました。相手方の費用で修理がなされたのですが,一旦事故に遭った車ということで価値は下がっていると思われます。価値下落分の賠償を相手方に請求したのですが,相手方は,修理がなされたのだからと言って,取り合ってくれません。そこで,どうしたものかと困っていたところ,裁判所以外にも,このような問題を処理してくれる機関があるということを耳にしました。どういうことでしょうか?

回答:
1.御相談者の希望する機関として,まず(財)交通事故紛争処理センター(紛センといいます。)があります。担当する弁護士が中立的立場で示談,斡旋をしますが,基礎となる資料収集は自分でしなければいけません。複雑な法的主張は別個弁護士と相談する必要がありますし,勿論弁護士を代理人とすることができます。あっせんがまとまらない場合の審査は,被害者側を拘束しませんが,保険会社,共済組合は出資し,手続きについて了解しているので保険会社側を拘束します。
2.次に,(財)日弁連交通事故相談センター(日弁連)があります。紛センと同じく裁判外紛争解決手続きですが,裁定は,加害者,損害保険会社等を原則的に拘束しません。民間機関であり,手続,斡旋,審査は,裁判所の強制的手続きではないからです。
3.他に裁判所の民事調停もあります。
4.修理により価値が下がることによる損害は「評価損」といわれています。判例でも認められていますが,初年登録から1−2年の車両で修理費の10%−30%が多いようです。
5.事例集760番655番64番法の支配と民事訴訟実務入門各論15も参考にしてください。

解説:
1.(裁判所以外の機関の必要性)
交通事故にあった被害者は,自ら加害者に対して不法行為(民法709条)を理由に損害賠償請求をすることになり,話し合いがまとまらなければ公的,強制的に解決してもらうため最終的に裁判所に訴えを提起することになります。一般的に公的,強制的に紛争を解決するため手続きは厳格であり,挙証責任の関係から過失の認定(自動車損害賠償保障法で事実上の転換はなされています。),過失相殺,後遺症等損害額の認定,そのための証拠の収集,提出等専門性,時間と労力が必要となります。しかし,交通事故の本質は,生来的危険性を有する自動車の存在そのものに原因があり,危険物責任,報償責任の観点から被害者の救済を迅速,低廉に行い法の理想である実質的に公正,公平な紛争解決が求められます。そこで,司法権を独占する裁判所の公的,強制的解決(憲法76条)の他に交通事故被害者の救済を目的として公益性を有する民間の紛争解決機関が置かれています。公正な社会秩序の維持という法の理想に従い,平成19年4月ADR法が施行され民間にも裁判外紛争解決手続き機関設立を促進していますが,その趣旨に合致した機関ということができます。但し,これらの機関は国家機関ではありませんし,紛争解決のための強制力を有する司法権を有していませんので,取り扱う内容,手続きについては機関自体が交通事故紛争の公平な解決という目的に沿って簡易迅速性を重視して独自に決められていますから,利用するため一定の要件も決められています。又,機関を利用するかどうか,判断の拘束力についても当事者の同意が前提となります。

(具体的機関)
あなたが耳にした裁判所以外の機関とは,財団法人交通事故紛争処理センターhttp://www.jcstad.or.jp/index.html(以下「紛セン」といいます。)や財団法人日弁連交通事故相談センターhttp://www.n-tacc.or.jp/index.html(以下「日弁連」といいます。)のことだと思われます。以下,これらの機関について若干の説明をいたします。

(1)紛セン
自動車事故に伴う損害賠償の紛争に関する相談,示談あっ旋及び審査(以下「示談あっ旋等」と言います。)を行っている財団法人です。すなわち,公益性を目的にしていますが,財団という私的組織です。運営経費は,主として自賠責保険の運用益があてられており,国内外損保会社,JA共済連及び全労済から出捐されています。すなわち,中立性は保持されていますが加害者側と契約をしている保険会社,共済組合が資金を実質的に拠出している関係になります。
本部と7つの支部及び2つの相談室があり,それらの連絡先は,以下のとおりです。
東京本部  03-3346-1756
札幌支部  011-281-3241  仙台支部  022-263-7231
名古屋支部 052-581-9491  大阪支部  06-6227-0277
広島支部  062-249-5421  高松支部  087-822-5005
福岡支部  092-721-0881
さいたま相談室 048-650-5271  金沢相談室 076-234-6650

特徴については,以下のとおりです。以上10か所だけになり設置個所が少ないので都市部から遠距離の人は不便になります。
@示談あっ旋等は,担当する弁護士が中立的立場に立ち無料で行っています。迅速性が義務づけられています(利用規定13条)。人身事故(センターへの出頭,3回−5回,1回の所要時間1時間程度。),物損(2回)で決まるのが多いようです。
A法的主張に必要な資料の収集・作成(事故による日常・仕事上の具体的な支障,それに基づく損害積算明細書等)は,自分自身で行う必要があります。自分でできなければ個別に依頼した弁護士のアドヴァイスを受け,難しい場合は代理人選任も必要です。
B示談あっ旋等は,中立性を保持するため地方裁判所支払基準(以下「地裁基準」といいます。)に従ってなされます。
C あっ旋案がまとまらず,審査の申し立てが行われた場合の裁定は,被害者側は審査に拘束されませんが,損保会社に対して一定の拘束力を有します。損保会社等は,交通事故事件の早期解決のため公正な法的専門家の判断に従うことを前提にして自ら財団を設立し手続きを定めているので,審査を尊重し従うのは当然です(利用規定10条)。

(2)日弁連
紛センと同様,自動車事故に伴う損害賠償の紛争に関する相談,示談あっ旋及び審査を行っている財団法人です。国(国土交通省)からの補助金,日弁連,弁護士会,弁護士,関係団体の寄付金,贖罪寄付などで運営されています。交通事故の被害者を迅速,低廉に救済することを目的としています。全国148か所に相談所があり,そのうち35か所で示談あっ旋及び審査が行われています。35か所の連絡先は,以下のとおりです。
本部(東京)  03-3581-4724
札幌  011-251-7730   岩手  019-623-5005
仙台  022-223-7811   山形  023-635-3648
水戸  029-221-3501   栃木  028-622-2008
前橋  027-234-9321   埼玉  048-710-5666
千葉  043-227-8530   東京  03-3581-1782
横浜  045-211-7700   山梨  055-235-7202
新潟  025-222-3765   岐阜  058-265-0020
静岡  054-252-0008   沼津  055-931-1848
浜松  053-455-3009   名古屋 052-221-7097
三重  059-228-2232   京都  075-231-2378
大阪  06-6364-8289   神戸  078-341-1717
奈良  0742-22-2035   岡山  086-223-4401
広島  082-225-1600   高松  087-822-3693
愛媛  089-941-6279   高知  088-822-4867
福岡  092-741-3208   北九州 093-561-0360
佐賀  0952-24-3411   熊本  096-325-0009
鹿児島 099-226-3765   那覇  098-835-4343

特徴については,@弁護士が無料で行っていること,A但し,法的主張の基礎となる必要な資料の収集・作成は自分自身で行う必要があること(弁護士と相談し代理人とすることも可能です),B地裁基準に従っていることは,紛センと同様です。C物損のみの示談あっ旋等は,加害者が一定の共済,及び,自家用自動車総合保険(SAP)等,物損の示談代行付きの保険に加入していることを条件に,行ってくれます。また,D審査が行われた場合の審査意見は,加害者,損保会社に対して拘束力を有しません。交通事故による被害者救済のため作られた民間の機関,手続きであり,相手方たる加害者,損保会社の同意がないからです。但し,一定の共済組合は審査結果を尊重しています。加害者,損保会社が裁定に従わなければ法的手続きを行うため弁護士等法的専門家と協議する必要が生じます。

2.(評価損)
本件について
「価値下落分」の損害とは,いわゆる「評価損」といわれるものですが,このような損害についても賠償請求が認められる余地はあります。前記のとおり,紛セン,日弁連で示談あっ旋等の申し立てを行うことになります。また,前記のとおり,日弁連は,地裁基準に従って示談あっ旋等を行います。あなたの車は「国産車,登録後3年半経過」ということですが,これは,地裁基準ですと評価損としては認められにくいものです。後記判例を参照してください。ですから,本件について,日弁連に示談あっせん等を頼んでも,あなたが満足できる解決を示してくれる可能性は少ないといえます。

(評価損の基準)
公正,公平な被害弁償という観点から評価損が認められるか否かは以下の事情を総合的に考慮して決められることになります。
@事故前の車両の価格。車種(国産車,外車)
A初登録からの期間
B走行距離
C修理の内容,修理後の車両の状態
D事故前の車両の状況
E価値が減少したという客観的資料。一般的にJAAI公益財団法人日本自動車査定協会が評価損の査定業務を行っています。中立性があるとはいえ,JAAIは民間の機関であり査定は1つの証拠にすぎませんから,この資料が必ず裁判で採用されるとは限りません。内容が問題となります。

従って,「国産車,登録後3年半経過」の評価損が全く認められる余地がないかというと,そうとも限りません。あなたがどうしても相手方に賠償してもらいたいというのであれば,費用はかかりますが,弁護士等の専門家に依頼して,紛センや日弁連の利用以外の手段によって解決を図ることをお勧めします。具体的には,弁護士に依頼して,内容証明郵便を送付して和解交渉を行ったり,民事調停を起こしたり,民事訴訟を提起することなどです。また,前記のとおり,紛センも日弁連も対応してくれるのは担当となった弁護士なのですが,彼らはあくまで中立・公正な立場にあるのであって,あなたの味方ではありません。必要な資料の収集・作成も,あなたご自身で行う必要があるのです。そこで,あなたが法律の専門家を味方として処理してもらいたいというのであれば,やはり弁護士等の専門家に依頼して,紛センや日弁連の利用以外の手段によって解決を図るしかないでしょう。損害額の見積等を弁護士に相談なさって見ると良いでしょう。

(評価損の判例の検討)
評価損は大まかに言うと初年登録から1年−2年以内で修理費の10%から30%の範囲で認められているようです。但し,事故前から下取り価格が決まっていたような特殊事情等(他に修理後の車両の状況)があれば,日本自動車査定協会の査定に従い評価損の額も増額される可能性もあります。
@東京簡易裁判所平成20年12月15日民事第9室判決。初度登録から6ヶ月余りと極めて短く,走行距離も1万3000キロメートル。修理費の13%を認めています。判決の内容。「評価損の発生の有無及び金額については,事故による損傷の部位・程度,修理の内容や修理に要した費用,事故当時の車両時価額,初度登録からの経過年月数,走行距離,車種等を総合的に考慮して算定されるべきである。

2.以上の考え方を前提に,本件事故による評価損について検討する。
(1)証拠によれば,確かに原告車は,建築業者に有償で貸し出し貨物の運搬等作業用に使用している国産ワンボックスの商用車であることが認められ,原告主張のように,リース期間が終了する2年後に転売する蓋然性が高いとは言えない。しかしながら,その点のみをもって原告が転売する可能性が殆どないとまで断定することはできない。また,本件は追突事案で同乗者も怪我を負ったほか,車両の重要部分に及ぶ程度の損傷を受けているおそれがないとは言えないこと,修理に77万円余り要していること等が認められ,特に,本件事故当時,初度登録から6ヶ月余りと極めて短く,走行距離も1万3000キロメートル余で比較的短いことを考慮すると,原告車が商用車であることを重視して評価損を否定するのは相当とは思われない。
(2)以上の諸点に弁論の全趣旨を総合考慮した上,民事訴訟法248条の趣旨に照らすと,原告車の評価損は10万円(修理費用77万6982円の約13パーセント)と認めるのが相当である。なお,原告は,本件評価損として修理代金の30パーセントを請求しているほか,具体的な減価損の額として,財団法人日本自動車査定協会東京都支所作成の「中古自動車事故減価額証明」(甲10)を提出しているが,本書面は中古車の商品価値の差(価格差)を算定しているもので,価格査定の根拠や理由が必ずしも明確なものとはいえない面もあり,その査定上の減価を直ちに原告の損害とすることはできない。」

A東京地裁平成18年1月14日判決。初年登録4か月,走行距離5500キロ,外車BMW。修理費の30%(53万円)を認定しています。査定協会の評価損(68万円)に近い額ですが査定協会の評価を根拠が不明確として採用していません。自動車販売会社の評価損は200万円となっています。
判決内容です。
「(1)原告会社の損害の発生及び額
ア 原告車の評価損 五三万八五二四円
 評価損については,一般に中古車市場において事故歴があることのみを理由として取引価格が低下するという損害が発生することは避けられず,また,中古車業者の修復歴表示義務がない場合にも下取価格が低下することは避けられないから,このような減価が生じた場合には,これを評価損として損害と認めるべきである。しかし,いかなる場合においても評価損が認められるとすることは相当ではなく,初度登録からの経過年数,走行距離,車種,事故による損傷の部位・程度等の具体的事情を総合考慮した上で,その有無及び程度を判断すべきである。そこで,原告車の評価損の発生及び額について検討すると,原告車の修理費用が一七九万五〇八〇円であることは当事者間に争いがなく,前記第三の一の(1)のウのとおり,原告車の車種はBMW七三五iという外国車であり,原告車の損傷の部位及び程度については,左側面の左フロントフェンダーの後部から左リアバンパーにかけての凹損及び擦過痕が生じたというものであり,軽微であるとはいい難いところ,証拠(甲三の一及び二,四,八ないし一〇)及び弁論の全趣旨によれば,原告車の損傷の程度については,軽微であるとはいえないものの,フレーム等の車体の本質的構造部分が損傷したものではなく,復元修理が可能であること,他方,原告車の初度登録が平成一六年三月であり,本件事故発生時,初度登録から約四か月が経過していたに過ぎず,走行距離も五五七六キロメートルに過ぎなかったことが認められ,これらの事情を総合考慮すれば,本件事故によって原告車に生じた評価損は,修理費用の三割である上記金額と認めるのが相当である。なお,原告会社は,訴外東立作成の個別査定書(甲三の一及び二)及び財団法人日本自動車査定協会作成の「中古自動車事故減価額証明」と題する書面(甲九)を提出して評価損の額を主張するが,いずれも価格査定の根拠及び妥当性が明らかであるとはいえないから,直ちに上記各書面記載の査定価格に基づき評価損を算出することはできないといわざるを得ない。」

B東京地裁平成12年11月28日判決。初年登録から2年以上経過,走行53000キロ,国産高級車について,修理の状況,もともとの損傷内容,程度から評価損を認めていません。

C大阪地裁平成12年9月6日判決。初年登録2年4か月,走行15000キロ,高級外車の評価損は,見積もり修理費の約15%程度を認定しています。

D東京地裁平成10年10月14日判決。初年登録3年,4万3000キロ,国産高級車について,修理後も車両の具合を考慮し評価損20%を認めています。

≪参照条文等≫
交通事故紛争処理センター利用規定
(センターの業務)

(1)財団法人交通事故紛争処理センター(以下「センター」といいます。)は自動車事故に伴う損害賠償に関する紛争を解決するために,相談,和解のあっ旋および審査を行うことを主な業務としています。
(2)次の場合などは,相談,和解のあっ旋手続および審査手続(以下「あっ旋手続等」といいます。)ができません。
1.自転車の対歩行者・対自転車事故による損害賠償に関する紛争
2.搭乗者傷害保険や人身傷害保険など,自分が契約している保険会社,共済組合との保険金,共済金の支払いに関する紛争
(3)次の場合で紛争の相手方(以下「相手方」といいます)がセンターで解決することを拒んでいる場合は,あっ旋手続等ができません。
1.相手方が自動車保険(共済)契約をしていない場合
2.相手方が契約している自動車保険(共済)に示談代行サービスがない場合
3.相手方の契約している共済が,全国共済農業協同組合連合会または全国労働者共済生活組合連合会以外である場合
(4)ケガの治療中や後遺障害の等級が決まらないうちは,あっ旋手続等を停止します。
(利用の申込み) 

(1)センターの利用者(以下「利用者」といいます。)は,利用者が係わる自動車事故の損害賠償に関する紛争(以下「個別事案」といいます。)につきセンターが定める利用申込書(用紙は予約の後,センターから送付します。)を提出する必要があります。利用申込書を記載することが困難な場合など特段の事情がある場合は,口頭により利用申込みをすることができます。
(2)利用者は,利用申込書を提出する際に,交通事故証明書,事故概要を示す略図,診断書など個別事案に関する基本的資料を提出しなければなりません。
(あっ旋手続等の拒否)
3  次の場合には,あっ旋手続等を行いません。
1.訴訟または調停が行われている場合
2.不正請求等不当な目的であっ旋手続等の申込みがされたと認められる場合
3.あっ旋手続等を受けようとする利用者が権利または権限を有していないと認められる場合
4.その他あっ旋手続等を行うことが適当でないと認められた場合
(費用)
4  センターが行うあっ旋手続等の費用は無料です。
ただし,交通事故証明書,診断書など紛争を解決するために必要な資料等を準備する費用,利用者の交通費,通信費等は利用者ご自身の負担となります。
(相談担当者・審査員の選任)
5  センターにおけるあっ旋手続は,中立,公正に選任された嘱託弁護士(以下「相談担当者」といいます。)が担当します。また,審査手続は,中立,公正の立場の大学教授(助教授),弁護士で構成するセンターの審査会(以下「審査会」)が担当します。
(相談担当者,審査員の排除)
6  相談担当者または審査員が利用者および相手方(以下「利用者等」といいます。)と特別な利害関係がある場合は,いずれかの利用者等の申出によって相談担当者または審査員を変更するようにセンターに求めることができます。(単に自分と意見が合わない,肌合が合わないというような場合は含みません。)
センターは事実関係を確認のうえ,他の相談担当者または審査員に変更します。
(手続の進行)

(1)センターにおけるあっ旋手続は,1回に1時間を目途に行い,相談担当者は1事案が標準として3〜5回で解決するように努めます。
(2)紛争の適正,妥当な解決をするにあたり,利用者等は,手続の進行について相談担当者,審査員および職員の指示に従わなければなりません。
(3)あっ旋手続等の過程で,相談担当者または審査会から指示があった場合は,利用者等は,速やかに,個別事案に関する自分の主張の基となる資料を提出しなければなりません。
(資料等の取扱)
8  利用者が提出する資料は,原則としてコピーでさしつかえありません。利用者が提出した資料は,原則として返却されません。
(第三者の関与)
9  利用者等は,名目のいかんを問わず,代理人弁護士以外の者をセンターの利用手続に参加させたり,同席させるなど,関与させることはできません。ただし,相談担当者または審査会が特に認めた場合は,この限りではありません。
(信義則)
10  利用者等は,あっ旋手続等を利用するにあたり,虚偽の事実を主張したり,個別事案の相手方を誹謗中傷したり,威圧的言動をとることのないよう個別事案の相手方との信義およびセンターに対する信義を重んじるよう努めなければなりません。
(個人情報の取扱)
11  センターが取得する利用者に係わる個人情報(以下「個人情報」という。)の利用の目的,取得方法および第三者への提供は次のとおりとします。
1利用の目的
個人情報の利用の目的は,自動車事故の損害賠償に関する法律相談,和解のあっ旋,審査に係る業務の実施および事務手続の円滑な遂行のために必要な範囲とします。
2取得方法
個人情報は,利用者の同意を得て取得します。
3第三者への提供
センターは,法令に基づく場合等を除き,業務遂行のために必要があるときは,取得した個人情報を第三者(相手方保険会社,共済組合,医療機関または車両鑑定人等)に提供することがありますのでご了承下さい。
(遵守事項)
12  利用者等は,次の行為をしてはいけません。
1個別事案のあっ旋手続等の内容を録音または撮影すること
2センターの承認なく個別事案についてあっ旋手続等の内容をインターネットその他の方法で公表すること
3その他センターの円滑・公正な業務を阻害するおそれのある行為
(あっ旋案提示)
13  相談担当者は,利用者等の主張を整理したうえで利用者等に対し,早期にあっ旋案を提示するように努めます。
(あっ旋手続の終了)
14   あっ旋手続は,次の場合に終了となります。
1利用者等の間で和解が成立したとき
2相談担当者があっ旋不調の決定をしたとき
3利用者が利用申込を取下げたとき
4センターが個別事案につき訴訟移行の承認決定をしたとき
5個別事案につき本訴,調停に係属している等あっ旋手続を行えないことが判明したとき
6最終あっ旋期日から3か月以上を経過し,利用者が再来を希望しないと認められるとき
7利用者等がこの規定に従わないとき
(審査申立)
15
(1)相談担当者が,14の2のあっ旋不調を決定した場合,その決定について利用者等に通知します。
(2)利用者等は,前(1)の通知を受けた後14日以内に限り,当該個別事案を審査に付すことの申立をすることができます。ただし,審査申立人が保険会社または共済組合である場合は,利用者の同意を必要とします。
(審査会への回付)
16  利用者等が15の(2)の申立を行った場合,相談担当者があっ旋手続中に明らかになった利用者等の間の争点をとりまとめ,審査申立事案として審査会に対する必要な手続を行います。
(審査・裁定)
17
(1)審査会では,相談担当者および利用者等から個別事案の説明やそれぞれの主張を聴取し,裁定を行います。利用者等は審査会に出席し,必要な説明をし,自分の意見を述べることができます。
(2)審査会は,審査申立事案が審査に不適当である場合,(1)の手続を経ず,審査不適の決定をすることがあります。
(3)物損の審査においては,事案解決のために審査会が提示する一定の条件について利用者の承認を得ることができない場合には,審査・裁定ができないことがあります。
(審査申立の取下)
18  審査を申立てた利用者は,いつでも審査申立の取下げをすることができます。ただし,審査申立人が保険会社または共済組合である場合は,利用者の同意が必要となります。
(裁定に対する回答)
19  損害賠償請求権者である利用者は,裁定の内容につき告知を受けた日から14日以内に裁定の内容に対し,同意または不同意をセンターに回答しなければなりません。
期間内に回答がない場合は,不同意とみなされます。
(裁定の拘束力)
20  損害賠償請求権者である利用者は,原則として裁定に拘束されませんが,センターとの協定等がある相手側の保険会社または共済組合は裁定を尊重することになっています。
(利用手続の終了)
21  センターと利用者等の関係は,次の場合に終了となります。
1.あっ旋手続が終了したとき
ただし,15の(2)の申立があるときは除く。
2.審査不適の決定がなされたとき
3.審査申立が取下げられたとき
4.利用者が審査会の裁定に対して不同意の回答をしたとき(回答期間経過により不同意とみなされた場合も含む。)
5.審査会の裁定に基づき,利用者等の間で示談が成立したとき
(平成17年4月1日実施)
(平成17年5月20日一部改定)

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