新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース 質問:私は、住宅ローン、サラ金、など多額の借金を抱えています。もう返済のしようがないので破産しようと思うのですが、自動車だけはなんとか使い続けたいと思っています。仕事に使うので、自動車がないと困ってしまうのですが、何か方法はありませんか? 解説: 2.(破産手続きにおける中古自動車の取り扱い。自由財産との関係)まず、お手持ちの自動車の状態を確かめてみましょう。売却するとどの程度の価値があるのか、ローン中か、そうでないか、などです。破産法では、破産者の財産を換価し、債権者に配当し、残った債務は免責決定を受けることができれば免責される、という仕組みになっています。といっても、全ての財産が換価配当されてしまうわけではありません。まず、生活にどうしても必要な家電製品等、一定の現金(99万円)などは配当の対象になりません(34条3項1号、民事執行法131条3号は、標準的な世帯の二月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭と規定し、その額は1か月33万円であるので2か月66万円の2分の3の額すなわち99万円。)。破産手続きの目的は自由競争に敗れた者の再起更生を図ることにあり、そのためには生活費は常に確保、保障されなければいけません。また、運用上、資産価値が20万円に満たないものは、配当手続にかかる費用を捻出することができず、いわゆる費用倒れになるので、配当にはなりません。 3.(自由財産の拡張)このような場合には、裁判所に、自由財産の拡張(同条4項)を申し立てます。自由財産の拡張とは、自由財産とみなされる範囲を文字通り拡張することです。破産手続きは、破産者の経済的再起更生を目的とし、最終的に社会を構成する者の個人としての尊厳を保障して公正な社会秩序を維持することにありますから、自由財産の確保、拡張は必要不可欠な制度です。ただ、破産債権者の利益保護があり、裁判所が、破産者の生活で必要と判断すれば認められます。しかし、これは実際の運用では、なかなか認められません。拡張が問題になるのは、法律上「現金」となっているが、銀行に預けていて、形式としては「預金債権」となっている場合など、ほとんど現金と変わらないケースだけだと考えた方がよいでしょう。但し、本制度の趣旨から車両であっても、地域上、仕事上車両が必要不可欠なものであれば、認められる可能性は大きいと思います。 4.(判例)福岡高等裁判所平成18年5月18日決定(自由財産拡張申立却下決定に対する即時抗告事件)。法定自由財産の範囲を、すでに支払い済みであり差し押さえ禁止債権である退職金まで範囲を広げようとしたが、支払い済みの退職金は破産財団充実のため拡張は認めていません。法は、固定主義を採用しており妥当な解釈です。 (2)これを本件についてみるに、(省略)同記載の次に「抗告人には別居の実母がいるものの、同人は、抗告人がA信金に勤務していた当時から、抗告人の扶養親族とはなっていなかったこと」を加える。)が認められる。そうすると、抗告人は、少なくとも破産手続開始申立ての時点では、法34条3項1号所定の現金を法定額の満額(すなわち、標準的な世帯の3か月間の必要生計費に相当することとなる。民事執行法131条3号参照。)所持していたものであるところ、平成17年11月以降は雇用保険金の受給も開始したというのであるから、相応の生計費が既に確保されているものといってよい。他方、上記家族構成からして、抗告人において、標準的な世帯に比して過大な生計費の負担を迫られるものとは到底いえないし、抗告人の就労可能性もないとはいえない。 以上によれば、抗告人については、法34条4項に基づいて自由財産の範囲を拡張しなければならない必要性を認めるには至らないものというほかはない。」 5.(ローン付き中古自動車)また、自動車をローンで購入し、返済中である場合にはどうでしょうか。ローンで自動車を購入したときは、自動車登録証を見ると、所有者がローン会社、使用者が債務者となっています。つまり、ローン会社は、ローン返済中は自動車の所有権者であり、ローンが返済できない場合には、所有権に基づいて自動車を引き上げ、売却して残債の充当にあてます。これを所有権留保といい、ほとんどのローンでの物品販売に利用されています。これはローン会社に合法的に認められた担保権の一種で、不動産でいうところの抵当権と同じような仕組みの権利です。この場合は、ローンの支払を止めた時点で、債権者から自動車を返して下さいと連絡が来ますので、引き渡すと売却されてしまう場合がほとんどですし、任意の引き上げを拒否したとしても、裁判を起こされ強制執行の申立をされて差し押さえをされてしまえば対抗手段はありません。 6.(中古自動車の任意売却)この点、不動産において、任意売却という方法があります。任意売却とは、親戚、友人などの第三者に当該不動産を買い取ってもらい、その人から貸してもらう形をとって、使用関係を継続する方法です。不動産を持っていて、ローンが残っているが、なんとか住み続ける方法はないか、という場合に、親戚などに買い取ってもらった上で、貸してもらうことで住み続ける方法です。理論上は、このような方法も可能でしょう。債権者としてはローン残債が入れば問題ないわけですし、所有権を留保した債権者はいわゆる別除権つき債権なので、優先的に自動車を売却した代金から弁済を受けることは違法ではありません。実際に当事務所でも、債務者が所有している自動車を債務者の知人が買い受けたいと申し出たため、債権者と折衝して、任意売却の手続をとったことはあります。しかし、本件の相談者が希望されている自動車の保持とは、当然ご自分で自動車を利用し続けることでしょう。だとすれば、買い受けた親戚ないし知人から、自動車を借り受けなければ利用できないでしょう。しかし、自動車は不動産とは異なり事故が発生した場合法的責任が異なります。自動車の場合には、違反や事故が起こった場合、自動車損害賠償保障法(いわゆる自賠法)で、運行供用者にも責任がかかります。つまり、登録上の所有者が、使用することを了承して(乗り逃げなどではなくして)、自動車を貸していた場合、事故の責任などを負わされることになるのです。不動産などと違い、自動車は常に管理について危険を伴う動産ですので、自分で管理しきれないのに所有者になるべきではありません。したがって、任意売却の方法を自動車に応用することは、その後借り受けて利用することに大きなリスクが伴いますので、お勧めいたしません。どうしても自動車の利用が必要な場合は、破産手続にかかってしまう自動車は手放し、20万円以下の自動車を再度購入する(手続を依頼している弁護士とよく相談してください)などの方法を取らざるを得ないでしょう。 7.(その他自由財産に関する判例)最高裁判所平成18年1月23日判決(不当利得返還請求事件)。本件は、地方公務員であった破産者の自由財産である退職金債権について破産宣告後勤務先地方公共団体が自らの貸付債権で自動的に相殺することは自由財産を侵害するという理由(任意弁済に当たらない)で認められないというものです。固定主義を採用し、破産者の再起更生を図るという破産法の理念に立脚した当然の判決です。「3(1)被上告人の破産事件について適用される旧破産法(平成16年法律第75号による廃止前のもの)においては、破産財団を破産宣告時の財産に固定する(6条)とともに、破産債権者は破産手続によらなければその破産債権を行使することができない(16条)と規定し、破産者の経済的更生と生活保障を図っていることなどからすると、破産手続中、破産債権者は破産債権に基づいて債務者の自由財産に対して強制執行をすることなどはできないと解されるが、破産者がその自由な判断により自由財産の中から破産債権に対する任意の弁済をすることは妨げられないと解するのが相当である。もっとも、自由財産は本来破産者の経済的更生と生活保障のために用いられるものであり、破産者は破産手続中に自由財産から破産債権に対する弁済を強制されるものではないことからすると、破産者がした弁済が任意の弁済に当たるか否かは厳格に解すべきであり、少しでも強制的な要素を伴う場合には任意の弁済に当たるということはできない。」 8.(最後に) 破産手続き上特に禁止される行為は、財産の引き上げを避けるために財産を隠匿することです。そのような行為が発覚すれば、破産債権者の利益を侵害することになり破産法上保護に値する誠意ある破産者とはいえませんので、免責不許可事由(破産法252条)となり、せっかく破産手続を行っても債務が免除されず無意味な結果になってしまいます。依頼した弁護士も、依頼者の正直な申告がなければ責任を持った事件処理ができません。破産手続等を依頼される際には、ご自分の財産と負債の状況を正確に、正直に弁護士に説明してください。 <参考条文> 破産法 自動車損害賠償保障法 民事執行法
No.938、2009/12/22 11:27 https://www.shinginza.com/qa-sarakin.htm
【民事・破産・破産宣告時の財産の取り扱い・利用している自動車の取り扱い・自由財産と破産財団・自由財産の拡張】
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回答:
1.通常の中古の自動車と思われますので事前に、適正価格で知人、身内の人に売却した後に知人等から賃借して利用するのは通常の方法です。現金は保管し破産宣告時に申告しなければなりませんが、生活費として99万円まで自由財産として保持することができますので(破産法34条、民事執行法 第131条第3号)、その範囲であれば利用を継続できることになります。唯、自動車は、自賠責法により所有者に運行供用者の無過失責任があるので、知人にその旨説明が必要でしょう。
2.破産宣告後は、平成16年の改正によって認められた破産法34条4号の「自由財産の拡張の制度」の利用も考えることができます。破産財団充実のため管財人の意見を聞くことになりますが(34条5号)、仕事上だけでなく生活維持に必要性が高ければ(車で通勤しないと日常生活ができない等の事情)認められる可能性があります。
3.中古の自動車であり、競売の費用と対比して破産債権者に配当の利益がないようであれば、そのまま自由財産として利用が可能です。基準となる額は20万円程度といわれています。
1.(破産手続きの趣旨)我が私法体系は、個人主義、自由主義により私有財産制、私的自治の原則が取られ、契約自由の原則を基に資本主義による自由競争社会が形成されています。自由競争は宿命的に敗者を生じ、勝者はさらに資本を増加し恒常的経済的破綻者を生むことになります。しかし、このような社会状態は、法の支配理念から導かれる私的自治の原則に内在する公正公平、信義則の原則により直ちに是正されなければいけませんし、そもそも自由主義体制の最終目的は個人の尊厳保障にあり(憲法13条)、経済的破綻者は再度自由競争社会の一員として復帰し、再度対等な社会経済活動を行うことが認められなければなりません。
そこで、破産法は、経済的破綻者の経済的再起更生を第一の目的とし、残された財産(破産財団といいます。法2条14項)をすべて清算して、全ての(破産)債権者(法2条5項、6項)に対して適正、公平、迅速低廉に分配するために制定されました(法1条)。しかし、債務者の経済的再起更生には財産的裏付けが必要となりますが、この要請は破産債権者にとり配当額の減少(破産財団の減少)につながるという利益相反する事態を生じることになります。そこで、平成16年の破産法は法の理想である経済的破綻者が経済的に更生するため種々の制度を設けていますが、破産宣告時においては固定主義(破産時を基準として破産債権者のための破産財団を確定し、その後の取得する財産はすべて自由財産とする。破産財団の範囲を広げる膨張主義に対する概念。)を採用する自由財産制度(破産法34条)であり、宣告後では免責、復権制度(破産法248条以下、255条)です。本件では自由財産に関連する問題ですが、関連条文の解釈は破産債権者の利益の確保破産財団の充実との利益調整の上に行うことになります。しかし、自由財産の確保、免責の理念は、公正、公平の原則から導かれるものであり、どのような場合に破産法の理念に反するか破産者の職業、経済生活事情等を具体的に検討が必要となります。
そこで、お手持ちの自動車を中古者販売業者などで査定に出し、販売価格を調査してみてください。買い取り価格が20万円に満たない場合には、換価配当の対象にならず、保持できる可能性があります。逆に、売却価格が20万円を超えてしまう場合には、原則として換価、配当の対象となります。この点、前述のように、現金であれば、99万円まで配当されずに済むのですが、自動車の査定価格が例えば60万円程度だった場合にはどうでしょうか。例えば、自動車を手続前に売却して、現金の形で60万円手元に置けば、配当が免除される可能性があるのですから、自動車の形で置いてもかまわないようにも思われます。
決定内容。「同条4項は、法定自由財産に該当しない財産についても、一定の要件があるときは、裁判所の裁量により自由財産の範囲を拡張する余地を認めたものである。しかし、これを破産債権者の立場からみるならば、法定自由財産とは別に、さらに配当原資たるべき破産財団の減少を甘受することを一方的に迫られることを意味するのであり、しかも、裁判所が自由財産拡張の決定をするに当たっては破産管財人の意見を聴かなければならないとはされているものの(同条5項)、破産債権者が意見を述べる機会は保障されていないし、同決定に対しては不服申立ても許されないのである(同条6項、9条参照)。してみると、破産者の生活の維持等は、原則的には法定自由財産をもって図られるべきであって、自由財産の範囲の拡張には相応の慎重な態度で臨まなければならないものというべきである。
破産財団の範囲)
第三十四条 破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)は、破産財団とする。
2 破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権は、破産財団に属する。
3 第一項の規定にかかわらず、次に掲げる財産は、破産財団に属しない。
一 民事執行法 (昭和五十四年法律第四号)第百三十一条第三号 に規定する額に二分の三を乗じた額の金銭
二 差し押さえることができない財産(民事執行法第百三十一条第三号 に規定する金銭を除く。)。ただし、同法第百三十二条第一項 (同法第百九十二条 において準用する場合を含む。)の規定により差押えが許されたもの及び破産手続開始後に差し押さえることができるようになったものは、この限りでない。
4 裁判所は、破産手続開始の決定があった時から当該決定が確定した日以後一月を経過する日までの間、破産者の申立てにより又は職権で、決定で、破産者の生活の状況、破産手続開始の時において破産者が有していた前項各号に掲げる財産の種類及び額、破産者が収入を得る見込みその他の事情を考慮して、破産財団に属しない財産の範囲を拡張することができる。
5 裁判所は、前項の決定をするに当たっては、破産管財人の意見を聴かなければならない。
6 第四項の申立てを却下する決定に対しては、破産者は、即時抗告をすることができる。
7 第四項の決定又は前項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を破産者及び破産管財人に送達しなければならない。この場合においては、第十条第三項本文の規定は、適用しない。
第四款 別除権
(別除権)
第六十五条 別除権は、破産手続によらないで、行使することができる。
2 担保権(特別の先取特権、質権又は抵当権をいう。以下この項において同じ。)の目的である財産が破産管財人による任意売却その他の事由により破産財団に属しないこととなった場合において当該担保権がなお存続するときにおける当該担保権を有する者も、その目的である財産について別除権を有する。
(破産管財人の権限)
第七十八条 破産手続開始の決定があった場合には、破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利は、裁判所が選任した破産管財人に専属する。
2 破産管財人が次に掲げる行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。
一 不動産に関する物権、登記すべき日本船舶又は外国船舶の任意売却
二 鉱業権、漁業権、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、回路配置利用権、育成者権、著作権又は著作隣接権の任意売却
三 営業又は事業の譲渡
四 商品の一括売却
五 借財
六 第二百三十八条第二項の規定による相続の放棄の承認、第二百四十三条において準用する同項の規定による包括遺贈の放棄の承認又は第二百四十四条第一項の規定による特定遺贈の放棄
七 動産の任意売却
八 債権又は有価証券の譲渡
九 第五十三条第一項の規定による履行の請求
十 訴えの提起
十一 和解又は仲裁合意(仲裁法 (平成十五年法律第百三十八号)第二条第一項 に規定する仲裁合意をいう。)
十二 権利の放棄
十三 財団債権、取戻権又は別除権の承認
十四 別除権の目的である財産の受戻し
十五 その他裁判所の指定する行為
3 前項の規定にかかわらず、同項第七号から第十四号までに掲げる行為については、次に掲げる場合には、同項の許可を要しない。
一 最高裁判所規則で定める額以下の価額を有するものに関するとき。
二 前号に掲げるもののほか、裁判所が前項の許可を要しないものとしたものに関するとき。
4 裁判所は、第二項第三号の規定により営業又は事業の譲渡につき同項の許可をする場合には、労働組合等の意見を聴かなければならない。
5 第二項の許可を得ないでした行為は、無効とする。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない。
6 破産管財人は、第二項各号に掲げる行為をしようとするときは、遅滞を生ずるおそれのある場合又は第三項各号に掲げる場合を除き、破産者の意見を聴かなければならない(免責許可の決定の要件等)
第二百五十二条 裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
一 債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。
二 破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、又は信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと。
三 特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと。
四 浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。
五 破産手続開始の申立てがあった日の一年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと。
六 業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、又は変造したこと。
七 虚偽の債権者名簿(第二百四十八条第五項の規定により債権者名簿とみなされる債権者一覧表を含む。次条第一項第六号において同じ。)を提出したこと。
八 破産手続において裁判所が行う調査において、説明を拒み、又は虚偽の説明をしたこと。
九 不正の手段により、破産管財人、保全管理人、破産管財人代理又は保全管理人代理の職務を妨害したこと。
十 次のイからハまでに掲げる事由のいずれかがある場合において、それぞれイからハまでに定める日から七年以内に免責許可の申立てがあったこと。
イ 免責許可の決定が確定したこと 当該免責許可の決定の確定の日
ロ 民事再生法 (平成十一年法律第二百二十五号)第二百三十九条第一項 に規定する給与所得者等再生における再生計画が遂行されたこと 当該再生計画認可の決定の確定の日
ハ 民事再生法第二百三十五条第一項 (同法第二百四十四条 において準用する場合を含む。)に規定する免責の決定が確定したこと 当該免責の決定に係る再生計画認可の決定の確定の日
十一 第四十条第一項第一号、第四十一条又は第二百五十条第二項に規定する義務その他この法律に定める義務に違反したこと。
2 前項の規定にかかわらず、同項各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合であっても、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。
3 裁判所は、免責許可の決定をしたときは、直ちに、その裁判書を破産者及び破産管財人に、その決定の主文を記載した書面を破産債権者に、それぞれ送達しなければならない。この場合において、裁判書の送達については、第十条第三項本文の規定は、適用しない。
4 裁判所は、免責不許可の決定をしたときは、直ちに、その裁判書を破産者に送達しなければならない。この場合においては、第十条第三項本文の規定は、適用しない。
5 免責許可の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
6 前項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第十条第三項本文の規定は、適用しない。
7 免責許可の決定は、確定しなければその効力を生じない。
(復権)
第二百五十五条 破産者は、次に掲げる事由のいずれかに該当する場合には、復権する。次条第一項の復権の決定が確定したときも、同様とする。
一 免責許可の決定が確定したとき。
二 第二百十八条第一項の規定による破産手続廃止の決定が確定したとき。
三 再生計画認可の決定が確定したとき。
四 破産者が、破産手続開始の決定後、第二百六十五条の罪について有罪の確定判決を受けることなく十年を経過したとき。
2 前項の規定による復権の効果は、人の資格に関する法令の定めるところによる。
3 免責取消しの決定又は再生計画取消しの決定が確定したときは、第一項第一号又は第三号の規定による復権は、将来に向かってその効力を失う。
(自動車損害賠償責任)
第三条 自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。
(差押禁止動産)
第百三十一条 次に掲げる動産は、差し押さえてはならない。
一 債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具
二 債務者等の一月間の生活に必要な食料及び燃料
三 標準的な世帯の二月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭
四 主として自己の労力により農業を営む者の農業に欠くことができない器具、肥料、労役の用に供する家畜及びその飼料並びに次の収穫まで農業を続行するために欠くことができない種子その他これに類する農産物
五 主として自己の労力により漁業を営む者の水産物の採捕又は養殖に欠くことができない漁網その他の漁具、えさ及び稚魚その他これに類する水産物
六 技術者、職人、労務者その他の主として自己の知的又は肉体的な労働により職業又は営業に従事する者(前二号に規定する者を除く。)のその業務に欠くことができない器具その他の物(商品を除く。)
七 実印その他の印で職業又は生活に欠くことができないもの
八 仏像、位牌その他礼拝又は祭祀に直接供するため欠くことができない物
九 債務者に必要な系譜、日記、商業帳簿及びこれらに類する書類
十 債務者又はその親族が受けた勲章その他の名誉を表章する物
十一 債務者等の学校その他の教育施設における学習に必要な書類及び器具
十二 発明又は著作に係る物で、まだ公表していないもの
十三 債務者等に必要な義手、義足その他の身体の補足に供する物
十四 建物その他の工作物について、災害の防止又は保安のため法令の規定により設備しなければならない消防用の機械又は器具、避難器具その他の備品
(差押禁止債権)
第百五十二条 次に掲げる債権については、その支払期に受けるべき給付の四分の三に相当する部分(その額が標準的な世帯の必要生計費を勘案して政令で定める額を超えるときは、政令で定める額に相当する部分)は、差し押さえてはならない。
一 債務者が国及び地方公共団体以外の者から生計を維持するために支給を受ける継続的給付に係る債権
二 給料、賃金、俸給、退職年金及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る債権 2 退職手当及びその性質を有する給与に係る債権については、その給付の四分の三に相当する部分は、差し押さえてはならない。
3 債権者が前条第一項各号に掲げる義務に係る金銭債権(金銭の支払を目的とする債権をいう。以下同じ。)を請求する場合における前二項の規定の適用については、前二項中「四分の三」とあるのは、「二分の一」とする。