新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.949、2010/1/14 15:01

【不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)4条、不正競争防止法2条1項13号、 独占禁止法19条、24条等の関係】

質問:私は、長年、安売りのスーパー、マーケットAを県内に何店舗か経営していますが、同じ町内に最近新しい安売りのチェーン店Bが開店し、チラシ、看板等で堂々と次のような広告を繰り返しています。「当店の商品は町内のどのスーパーよりも価格が安い!お近くのA(頭文字の表示のみ)店と比べてください。」同じ町内には、当店とその店舗しかありませんから当店が被害を受けることになっていますし、売上も減少しています。調べたら当店より低価格であることは事実ですが、商品によっては価格にさほど差異はないように思いますし、当店より高価格のものもありました。このような宣伝は許されるのでしょうか。損害賠償、差し止め請求、看板の除去等は可能でしょうか。

回答:
1.B店は、店舗を事実上特定し、A店の価格より安いという事実と異なる広告、看板を出していますが、不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)4条1項2号の「商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と競争関係にある他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるため」という要件に該当しないと思いますので景品表示法4条には違反しません。従って、申し立てても内閣総理大臣、都道府県知事、公正取引委員会の調査、表示是正の措置命令はないと思いますから(同法6条、9条、12条)、刑事罰もないでしょう(同法15条)。
2.次に、実際と異なる価格で販売されているのに「商品は町内のどのスーパーよりも価格が安い!」と広告していますが、不正競争防止法2条1項13号「商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信にその商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量若しくはその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような表示をし、」に該当しません。
3.又、B店は「当店の商品は町内のどのスーパーよりも価格が安い!お近くのA(頭文字の表示のみ)店と比べてください。」という広告、看板を表示しあたかもA店の業務を妨げているようですが、不正競争防止法2条1項14号「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為」にあたりませんので以上いずれも差し止め、看板の廃棄、除去請求、損害賠償請求、謝罪広告を求めることはできないと思います(不正競争防止法3条、4条、7条)。
4.以上B店の広告は独占禁止法19条「事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない。」公正委員会告示第8号「(ぎまん的顧客誘引)8自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について、実際のもの又は競争者に係るものよりも著しく優良又は有利であると顧客に誤認させることにより、競争者の顧客を自己と取引するように不当に誘引すること。」にも違反しませんので、B店、公正取引委員会は、同法の損害賠償、差し止め、排除請求もできません(独占禁止法20条、24条、25条)。
5.ただ、売り上げが減少している現実的問題として、B店の広告は商道徳上問題がありますので、弁護士等に依頼して、上記法規違反の可能性があるとして、内容証明交渉をすることは必要かもしれません。

解説:
1.(問題点)B店は、広告、看板で他よりも商品が安いし、A店のイニシャル入りでA店を対象に宣伝をしているが、実際はすべての商品がA店より安価ではない事実があるので、景品表示法4条1項2号の「商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と競争関係にある他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるため」に該当するかどうか問題です。すなわち、このような表示が、「価格が著しく有利であると一般消費者に誤認されるか」が問題です。広告等の宣伝は、ある程度誇張を含むものもあるのが通常だからです。

2.(景品表示法の趣旨、独占禁止法、不正競争防止法との関係)景品表示法は、独占禁止法の付属法令であり特別規定です。すなわち、独占禁止法2条9項3号(不公正な取引の例示と指定)、同法19条(不公正な取引の禁止)、公正取引委員会告示8項(指定されたぎまん的顧客誘引)、9項(指定された不当な利益による顧客誘引)、以上に規定されている不公正な取引方法の一形態と考えられる「不当な取引の勧誘」の中で「景品と表示」に関する特別法です。独占禁止法は、自由主義経済、自由競争主義の基本原則である私的自治、契約自由の原則、営業の自由(憲法29条、22条)を基本制度に内在する公正の理念、信義則(法の理想)から制限するものであり、公正な経済秩序維持と合わせて競合する業者の利益保護を目的とした例外的規定ですが、その例外規定をさらに限定し、商品等の景品、表示等に関し特に消費者保護の観点から(競合する業者の保護が目的ではありません)細分化してさらに厳しく規制しているものが景品表示法です。営業の自由の例外のそのまた特例という関係です。
 経済取引において不当な表示、景品により消費者の判断を狂わせ不当な利益を得ようとすることは取引の沿革上から明らかであり、消費者保護と併せて公正な自由競争の原理を常に保護、維持するためです。又、競合する業者の保護については、独占禁止法を補完するものとして、損害賠償、差し止め請求等を認める不正競争防止法(故意過失の要件不要)が営業の自由の例外として位置づけることができます。これをまとめると、景品表示法、不正競争防止法は独占禁止法の特例、補完する法律であり消費者保護と競合する業者保護の面から分けて規定されています。唯、以上の法律は、すべて自由競争、営業の自由の大原則の例外であり法令の解釈は、限定的になりますし、自由主義経済の柱である自由競争、経済活動の(営業の)自由を硬直させるものであってはいけません。

3.B店の広告は「価格が著しく有利であると一般消費者に誤認されるもの」ではないと思います。その理由ですが、@「価格が著しく有利であると一般消費者に誤認されるもの」とは、消費者保護の観点から考えて、一般消費者が、その広告表示を見て、取引の判断を明らかに誤認、間違うようなものでなければならず、単なる可能性があるだけでは足りないものと解釈されます。なぜなら、景品表示法は、自由競争主義の例外をなす独占禁止法のさらに特則であり行為の規制は厳格になされなければならず、そう解釈しないと、自由競争の原理が阻害されてしまうからです。広告においては、他の店舗より商品の価格が勝っているという表示は通常付きものであり、このような広告表示自体、消費者側にとってある程度織り込み済みの情報であり、明らかに消費者が誤認するような態様とは考えられないからです。消費者は、ある意味賢明でありこの程度の広告により明らかに取引の判断を誤認するようなことは認められません。又、A店もこれに類似する広告をすることは通常予想されるものであり、その度ごとに消費者保護の観点から公的機関である公正委員会が措置命令をとることは国家機関が不当に私人間取引に介入し自由競争原理を阻害することになるからです。Aスーパーの厖大な種々の商品の価格自体、日々刻々と変化するものであり、どの時点で低価格になっているかどうか比較すること自体が一般消費者にとり不可能であり、消費者が常に誤認する広告、表示とはいうことができません。

4.次に、ほぼ名指しで商品価格の指摘によって被害をこうむる可能性があるA店、すなわち業者の利益保護を考えてみると、B店の広告看板は、不正競争防止法2条1項13号「商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信にその商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量若しくはその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような表示をし、」に該当しません。問題は、価格の誇張が、「商品の品質、内容、役務」に該当するかという点です。結論から言うと、価格は、商品の品質、内容、役務に該当しません。その理由ですが、不正競争行為に価格という文言がない以上法2条は、限定列挙と解する必要があります。不正競争防止法は、独占禁止法の不公正な取引による競業業者の利益を保護するために、特に行為を列挙し、各行為について故意過失ある加害者の損害賠償義務を認め(法4条)差し止め請求をする場合に立証困難である、不公正な取引をなした業者の故意過失についての免責を認めた点(同法3条)、信用回復措置(同法14条)、損害額の推定(同法5条)に意義があり、規定された行為以外に不公正取引の内容、態様を拡大禁止するものではないからです。
 景品表示法は、独占禁止法の特則として、特に判断能力が劣っている消費者保護のために不公正取引の内容を拡大し規定したものであり、景品表示法と同様な規定が存在しない不正競争防止法では、元々例外規定である独禁法の特則であり、厳格、限定的に解釈され、文言通り、価格は規定されない以上拡大解釈はできないからです。又、競業業者は、消費者と異なり情報能力も持ち合わせ広告等の対抗手段があり、価格の誇張により受ける可能性がある被害を保護する必要はないからです。B店の行為は、商道徳的に多少問題点はありますが、自由競争の範囲内行為であり互いの宣伝等競争により解決されるべきものです。従って、損害賠償、除去請求をする前提が欠けることになり認められません。

5.さらに、B店は「当店の商品は町内のどのスーパーよりも価格が安い!お近くのA(頭文字の表示のみ)店と比べてください。」という広告、看板を表示しあたかもA店の業務を妨げているようですが、不正競争防止法2条1項14号「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為」に該当しません。その理由は、前述のように、自由競争の例外を規定する独占禁止法を補完する不正競争防止法の解釈からして、営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為とは、不公正な取引に該当すると通常思われる広告等でなければならず、単なる可能性では不十分だからです。一般消費者がこのような一般的、題目的広告によりB店の商品がすべて必ず安いと明らかに誤認しない以上業者の利益保護の必要性もないと考えられます。自由に競争する業者は、自らの経済力、情報力により自らの地位を守ることができるのであり、民法の一般規定(不法行為)による保護で十分だからです。さらに、B店の広告等は、B店の商品がA店より低価格であるということを表示しているにすぎず、A店の商品が通常より高価であるとか、不良品であるとか信用を毀損する行為とは直接評価できないからです。

6.(独占禁止法違反の問題)前述のごとく、景品表示法にも該当しない以上、例外特則規定のもとになっている独占禁止法にも違反しないことは明らかです。すなわち、広告、看板は独占禁止法19条「事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない。」公正委員会告示第8号「(ぎまん的顧客誘引)8自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について、実際のもの又は競争者に係るものよりも著しく優良又は有利であると顧客に誤認させることにより、競争者の顧客を自己と取引するように不当に誘引すること。」にも違反しませんので、B店、公正取引委員会は、同法の損害賠償、看板、広告等の差し止め、排除請求もできません(独占禁止法20条、24条、25条)。

7.(判例の検討)東京高裁平成平成16年10月19日判決。ある電化製品の量販店(被控訴人)が、競争相手の業者(控訴人)を名指ししてその商品価格より低価で販売するという一般的広告等は、景品表示法4条2号違反に当たらないし、不正競争防止法、独占禁止法の違反行為にも該当しないし営業妨害、名誉棄損とは言えないという判決です。妥当な判断とおもいます。判決内容の抜粋です。
「検討の基本的視点、法4条2号を本件の事案に当てはめれば、本件各表示によって、被控訴人の店舗における商品の販売価格が、控訴人の店舗におけるものよりも顧客にとって「著しく有利」であると一般消費者に誤認される場合には、本件各表示は法4条2号に該当するということになる。そして、同号の文言上も明らかなように、かかる誤認が生じるか否かの判断は一般消費者の認識を基準としてなすべきものである。ここで、「著しく有利」であると一般消費者に誤認される表示か否かは、当該表示が、一般的に許容される誇張の限度を超えて、商品又は役務の選択に影響を与えるような内容か否かによって判断される(同ガイドライン「第2」1(2))。このことを本件事案に即していうと、一般に広告表示においてはある程度の誇張や単純化が行われる傾向があり、健全な常識を備えた一般消費者もそのことを認識しているのであるから、価格の安さを訴求する本件各表示に接した一般消費者も、かかる認識を背景に本件各表示の文言の意味を理解するのであり、そのことを前提にして検討を行うべきものである。」
「a 今日の家電量販店の取扱品目は数千点以上に及び、各事業者は頻繁にその店頭表示価格を変更している。このような事実に照らすと、取扱品目の全てについて競合他店における同一商品の店頭表示価格を日々調査をするのは不可能であり(このことについては当事者間に争いがない。)、そのことは、一般消費者にとってそれほど理解困難なことではない。
 b 値引後価格については、ある特定の商品に関する控訴人の値引後価格を被控訴人が調査することはできない。また、顧客が控訴人の値引後価格を告げて被控訴人の店員と値引き交渉する際にも、控訴人の値引後価格が記載された書面を持参しているのであればともかく、顧客の申告だけでは真実そのような値引後価格が控訴人によって提示されたことを被控訴人において確かめるのは容易ではないから、その価格が極端に安い場合などは、被控訴人の店員が顧客の言を信用せず値引に応じないこともあり得る。このようなことは、値引き交渉において一般的にしばしば起こり得ることであるから、一般消費者にとって予想できることである。
 c 控訴人がその販売価格の安さで著名であることについては、当事者間に争いがないし、このことを前提とするのでなければそもそも本件各表示は意味を持たない。そうすると、控訴人よりもさらに安い価格で販売することは、多くの企業にとっては原価割れの危険を含むものであって、そのような価格引下げにはおのずと限度があることも、それほど理解困難なことではない。したがって、商品によっては、あるいは控訴人の価格によっては、被控訴人がこれよりも安くしない(できない)場合があることも、一般消費者にとって十分予想できることである。
 d また、激烈な価格競争を繰り広げている近時の家電量販店の業界においては、ある時点における価格を特定してこれを比較するということがそもそも困難になっているということができる。例えば、控訴人の店頭における表示を示した甲41の右側の写真によれば、旧の値札の上に新しい値札を貼り付けることによって店頭表示価格自体を機動的に変更していることが認められるし、被控訴人においても同様である(乙4の右側の写真)。このような状況は、乙5(朝日新聞記事)においても、「店の表示価格の上に『更に値下げ!』と書き込まれている。店頭表示は『これより更に下げる』ことを示すだけの暗号となっていく。」と描写されているところであるし、乙5及び乙6(週刊現代記事)によれば、被控訴人及び控訴人の双方が、相手方の価格の推移を見ながら1日数回にわたる値下げを日常的に行っていることが認められる。このような状況のもとでは、一般消費者にとって、ある時点における両方の店舗の価格を正確に比較することはそもそも不可能となっているといえる。例えば、被控訴人の店頭表示価格が控訴人の店頭表示価格よりも安いと思って購入した場合にも、その時点では既に控訴人の店頭表示価格が更に引き下げられているかもしれないし、控訴人の店舗に再度足を運べばさらに値引きを受けられた可能性もある。したがって、本件各表示に接した消費者は、一般的に、被控訴人の店舗の方が常に結果的に有利になるとまで認識するとは限らない。

(エ)このように、本件各表示に接する一般消費者の中には、被控訴人の店舗では全商品について必ず控訴人の店舗よりも安く買えるという確定的な認識を抱くには至らない者も、相当多数存在するものと考えられるのである。一方、上記(ア)のように、そのような確定的な認識を抱く消費者層が存在する可能性があるとしても、それは未だ「一般消費者」の認識とはいいがたいものである。したがって、「一般消費者」の認識を基準として景品表示法4条2号の該当性を判断するにあたり、本件各表示の意味を控訴人主張のように解することは、当を得たものではない。そして、被控訴人の店舗において本件各表示に接した消費者は、通常、高額商品や売れ筋商品については控訴人の店舗よりも安い店頭表示価格が設定されていること、及び、店頭表示価格が安くなっていない場合には、店員との相対の交渉によって値引きを受ける余地があること、を意味するものとして本件各表示を理解するにとどまるというべきであるから、かかる理解を前提として本件各表示の法4条2号該当性を判断すべきである。」
「3 不正競争防止法2条1項13号違反の主張について(後記前橋地裁判決参照してください。)
 当裁判所も、原審と同じく、本件各表示の実施が不正競争防止法2条1項13号の不正競争行為に該当するということはできないと判断する。その理由は、原判決の28頁17行目から32頁4行目までの説示のとおりであるから、これを引用する。
 控訴人は、前記第2の4(2)のとおり原判決の判断を論難するが、同法の文言を離れ、また原判決が適切に認定した立法趣旨にも反する主張であって、採用の限りでない。

4 営業妨害及び名誉毀損の主張について
 当裁判所も、原審と同じく、本件各表示の実施が控訴人に対する営業妨害又は名誉毀損として不法行為を構成するとは認められないと判断する。その理由は、原判決32頁5行目から33頁7行目までの説示のとおりであるから、これを引用する。控訴人は、前記第2の4(3)のとおり原判決の判断を論難するが、まず、本件各表示が不当表示に該当するといえないことは前記2のとおりであり、また、その実施が不正競争行為に当たらないことは前記3のとおりであるから、不当表示及び不正競争行為であることを前提とする営業妨害の主張は、その前提を欠き、理由がない。また、控訴人は社会通念上も本件各表示は許されないと主張するが、市場における競争は本来自由であることに照らせば、事業者の行為が市場において利益を追求するという観点を離れて、ことさらに競争事業者に損害を与えることを目的としてなされたような特段の事情が存在しない限り、これが競争事業者に対する営業妨害として違法性を帯びることはなく、控訴人の主張は採用することができない。また、名誉毀損については、本件各表示は、その読み手である一般消費者に対し、控訴人の店舗における価格設定が不当に高いという印象を与えるものとはいえず、その社会的評価を低下させるものではないから、名誉毀損が成立する余地はないというべきである。

5 不正競争防止法2条1項14号の主張について
 前記4において営業妨害及び名誉毀損の主張について述べたとおり、本件各表示は控訴人の営業上の信用を毀損するものではないし、上記2に述べたとおり、本件各表示が虚偽の事実を告知するものともいえない。よって、控訴人の上記主張は採用できない。

6 独占禁止法違反の主張について
 景品表示法1条によれば、同法は独占禁止法の特例を定めたものであるから、上記2のとおり景品表示法4条違反の有無を検討した結果それに違反するといえない以上、同一の行為が、ぎまん的顧客誘引を不公正な取引方法として禁止する独占禁止法の規定に違反するものとして不法行為を構成する余地はないというべきである。よって、この点に関する控訴人の主張も採用することができない。
 なお、本件各表示が虚偽ないし不正確な表示とはいえないこと、及び、被控訴人の商品の価格が控訴人のそれよりも著しく有利であると顧客(一般消費者)に誤認させるものでもないことは、既に説示したとおりである。」

(第一審判例)前橋地方裁判所平成16年5月7日判決(平成14年(ワ)第565号)不正競争防止法2条1項13号に関する、前橋地裁の判決を抜粋します。妥当な判断です。「争点(3)(本件各表示の実施が不正競争(不正競争防止法2条1項13号)に該当するか。)について
(1)不正競争防止法の定めについて
 不正競争防止法2条1項は不正競争の定義について規定し、その13号において、「商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信にその商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量若しくはその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような表示をし、又はその表示をした商品を譲渡し、引渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、若しくはその表示をして役務を提供する行為」を不正競争としている。
(2)不正競争防止法2条1項13号の直接適用の可否について
ア 原告は、商品の価格も当該商品の属性であって不正競争防止法2条1項13号にいう「商品の内容」に含めて考えることも可能であると主張し、被告による本件各表示の実施が不正競争防止法2条1項13号所定の不正競争に当たると主張する。
しかし、本件各表示は、同一の商品について、被告の販売価格を原告のそれよりも安くするという内容の表示であって、かかる表示を見た一般消費者は、被告が同一の商品について原告の販売価格よりも安い価格で販売しようとしていると認識することはあっても、当該商品について被告が販売価格を安くすることによって、そうしない場合と比較してその商品の内容について異なった印象を抱くことはあり得ないから、本件各表示が商品の内容について誤認させるような表示に当たるということはできない。
したがって、原告の上記主張は採用することができない。
イ また、原告は、家電量販店のように取扱商品が同一である場合、購入者が注目するのは各量販店がどこまで安くするかという点であるから、競争事業者間で同一の商品をどれだけ安く提供できるかという点で、これを不正競争防止法2条1項13号の「役務」に含めて考えることも十分可能であると主張する。
しかし、不正競争防止法2条1項13号が「商品」と「役務」とを並列的に規定してそれらの内容等の誤認惹起行為を規制していることにかんがみると、同号にいう「役務」とは、他人のために行う労務又は便益であって、独立して商取引の目的たり得べきものをいうと解すべきである。これを本件について見ると、事業者が商品の価格を安くすること自体は、独立して商取引の目的たり得ないことは明らかであるから、不正競争防止法2条1項13号にいう「役務」には当たらないというべきである。
したがって、原告の上記主張も採用することができない。
(3)不正競争防止法2条1項13号の拡張適用ないし類推適用の可否について
ア 原告は、不正競争防止法2条1項13号は「価格」についての表示を明文で規制するものではないが、本件各表示の実施のように、競争事業者間で販売取扱商品の品質、内容が異ならないケースで、価格について競争事業者よりも安いと誤認させるような表示をしている場合には、上記規定の拡張解釈又は類推適用により不正競争防止法の規制を及ぼすべきであると主張する。
イ そこで検討するに、証拠(乙7)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 

(ア)平成5年の現行不正競争防止法の制定過程で、政府の産業構造審議会知的財産政策部会において、旧不正競争防止法をどのような方向で見直すべきかについて審議がなされた。その審議では、判例の中には、旧不正競争防止法上明記されていない「価格」を「品質、内容」に含まれると解したものがあるが、「価格」のうち解釈上「品質、内容」に含まれないものについて規制する必要があるかどうかについては、我が国の経済取引社会の実態を踏まえれば、少なくとも現段階において、内容等に係るものと同様に不正競争防止法上の不正競争行為として位置付け、差止請求による民事的規制の対象とする社会的コンセンサスは形成されていないものと考えざるを得ず、今後の我が国経済取引社会の実態の推移を慎重に見守りつつ検討することが適当であるとの結論が出された。その結果、現行の不正競争防止法においては、価格の誤認惹起行為を不正競争行為として規制することが見送られた。
(イ)また、上記の産業構造審議会知的財産政策部会の審議においては、旧不正競争防止法は不正競争行為を限定的に列挙しているため、社会通念上不正な競争行為であると目される行為であっても、列挙された行為類型に該当しなければ規制の対象にはならないとの問題意識から、現行の不正競争防止法に不正競争行為についての一般条項を導入することも検討された。しかし、一般条項の要件は、その性質上抽象的なものにならざるを得ず、事業者にとって、何が許される競争行為であり何が許されない競争行為であるかを、その都度裁判所の判断を待たねば決めることができないというのでは、事業活動の予測可能性を著しく害し、正当な事業活動を萎縮させることにもなりかねないこと、不正競争行為を個別類型化することによる対応を図った後になお、いかなる行為を不正競争行為として想定すべきなのかは明確でなく、むしろ、社会通念上、不正競争行為であるとのコンセンサスを得られた行為については、その都度、個別類型化を図っていくことにより対応することが適切であると考えられることなどの理由から、結論として、一般条項を導入することについては、今後、更にその必要性及び導入した場合の問題点等について検討を行っていくべき課題であるとされた。その結果、現行の不正競争防止法においては、不正競争行為についての一般条項を導入することが見送られた。
ウ 以上のとおり、現行の不正競争防止法の制定に際して、価格の誤認惹起行為を不正競争行為として規制すること及び不正競争行為についての一般条項を導入することがいずれも見送られたという経緯があることに加え、いったん不正競争行為に該当するとされると、不正競争防止法上、差止請求の対象とされたり(同法3条)、損害賠償請求において損害の額が推定される(同法5条)などの強力な規制が施されるので、不正競争行為となる対象についての安易な拡張解釈ないし類推解釈は避けるべきであるといえることも併せ考えると、価格の誤認惹起行為について、不正競争防止法2条1項13号を拡張適用ないし類推適用することはできないというべきである。
したがって、原告の前記アの主張は採用することができない。
(4)小括
 以上検討したところによれば、本件各表示の実施は、不正競争防止法2条1項13号所定の不正競争に該当せず、結局のところ、不正競争防止法にいう不正競争に該当しないというべきである。」

≪一般的類似問題について説明いたします。≫
【不当景品類及び不当表示防止法についての一般的問題】

質問:景品表示法の、不当表示の規制について教えてください。

回答:不当景品類及び不当表示防止法について概説的説明をいたします。

解説:
1.最近、消費者を誤認させる虚偽の表示が問題になっていますが、景品表示法も、そのような不当な広告を規制する法律の一つです。その目的は第1条に示されており、「この法律は、商品および役務の提供に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するため・・・」と規定されています。わが国は、自由主義を基本としており、経済活動も本来自由に行われるべきものです。自由競争とは本来、よりよい商品やサービスを提供することにより、顧客を獲得して企業が発展するために互いに切磋琢磨していくもので、それにより社会全体の質の向上が図られるべきものです。しかし、現実にはそのような理念に反し、単純に品質のよいものだけでなく、宣伝、広告に長けたものが人気を得ることも少なくありません。企業の立場からすれば、単に品質のよいものを作るだけでなく、それをどのように消費者に知らしめるのかも重要な問題になってきています。しかし、公正とはいえない、不公正な手段による顧客の誘引も散見されます。勿論、民法の一般規定を適用して顧客を保護する方法も考えられますが、民法上の詐欺取消(96条1項)や瑕疵担保責任(570条)の規定では、消費者保護が不十分となる恐れがあります。そこで、不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)が、不当な表示により不当に顧客を誘引し、ひいては公正な競争を阻害することを防止する目的で制定されました。

2.景品表示法で規制される表示は、法4条1項に定義されます。4条、事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号に掲げる表示をしてはならない。 @商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と競争関係にある他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示すことにより、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認められる表示 A商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と競争関係にある他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるため、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認められる表示、B前二号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であって、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認めて公正取引委員会が指定するもの (同三号による指定の具体例(告示)としては、無果汁清涼飲料水についての表示、商品の原産国に関する不当な表示、消費者信用の融資費用に関する不当な表示、不動産のおとり広告に関する表示、おとり広告に関する表示、有料老人ホームに関する不当な表示、などがあります)。

3.法律の内容について簡単に解説しますと、「一般消費者に誤認されるものであること」とは、表示が誤認されやすいかどうかの基準たる「一般消費者」とは、消費生活のために商品または役務を購入するものであり、平均的な、世間並みの常識を有した成人、ということなります。ただし、これは商品の性質により柔軟に解釈する必要があります。例えば、通信販売で、ガラス玉を入れた万年筆を「ダイヤ入り」と表示した事件では、一般的な大人が考えれば、価格からいってもダイヤが入っているとは考えにくいものの、商品の性質上、子供を対象にしているため、不当表示であると認定されたものもありました。
また、告示にある「有料老人ホーム」などでは、当然、ホームを利用する高齢者を「一般消費者」に当てはめて解釈することになります。
 「不当に顧客を誘引する」について、例えば、内容に問題がなくても、広告の量が競業他社に比べて圧倒的に多く、これが不当に顧客を誘引する、と主張された場合はどうでしょうか。景品表示法は、あくまで「一般消費者に誤認される」おそれのあるものが「不当な」表示であり、これを用いた顧客誘引行為が「不当な顧客誘引」と考えられます。広告について量的規制などはありません。同様に、「公正な競争を阻害するおそれがある」という文言も、不当な表示による競争自体が公正な競争を阻害するおそれがある、と解されます。すなわち、不当な表示がなされてしまえば、実際に顧客が誘引されていなくても、実際に競争が害されていなくても(実害が生じていないケースでも)、同法の規制の対象になることになります。また、告示で挙げられている商品や役務については、類型的に不当な表示がなされるおそれが高く、告示において詳細にその規制および具体例が定められています。

4.本法律に違反すると、公正取引委員会が調査し、排除命令を出します(法6条)。排除命令は、基本的には公正取引委員会が具体的な行為、不当である理由などを示して発表するものですが、企業にとっては、新聞広告などで排除命令を受けたことと謝罪を発表するなどの措置を命じられますので、企業のイメージダウンと新聞広告の費用などを考えると大きな打撃になります。また、行政処分ですので、命令を覆すことには相当のエネルギーが必要です(行政処分の問題については、当事務所ホームページの他の記事をご参照ください。 法律相談事例集キーワード検索で「行政処分・取り消し」等入力するとよいかと思います)。景品表示法は、独占禁止法などと同様、公正取引委員会が運用している点で、裁判基準とは異なる手続(6条参照、公正取引委員会が独自に調査し、排除命令を出します)が採用されている点で特殊なものといえますが、公正な表示を守ることにより、公正な取引を奨励し、ひいては消費者を守るものです。最近では、大手携帯電話会社などに対しても、公正取引委員会が調査のメスを入れており、その適切な運用が期待されてます。

5.ビジネスをされる上で、公正取引委員会から上記の排除命令を受けてしまうと、マスコミ報道される場合もありますし、報道されなくてもインターネットで処分内容が公開されることとなってしまいますので、社会的にもマイナスイメージが大きいことですから、コンプライアンス(法令遵守)活動の一環として、十分に事前調査を行ったうえで、対処していくべきだと思われます。「このような表示が可能かどうか」「景表法に違反していないかどうか」という事項に関しては、弁護士に相談の上、公正取引委員会の事前相談制度を活用するなどして、適正に対処される事をお勧めいたします。ご不明な点があったら、一度、弁護士にご相談になると良いでしょう。

(参考)公正取引委員会の事前相談説明ページ
http://www.jftc.go.jp/jizen/jizen.html

≪参照条文≫

憲法
第二十二条  何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
第二十九条  財産権は、これを侵してはならない。

不当景品類及び不当表示防止法
最終改正:平成二一年六月五日法律第四九号
(目的)
第一条  この法律は、商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するため、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護することを目的とする。
(定義)
第二条  この法律で「事業者」とは、商業、工業、金融業その他の事業を行う者をいい、当該事業を行う者の利益のためにする行為を行う役員、従業員、代理人その他の者は、次項及び第十一条の規定の適用については、これを当該事業者とみなす。
2  この法律で「事業者団体」とは、事業者としての共通の利益を増進することを主たる目的とする二以上の事業者の結合体又はその連合体をいい、次に掲げる形態のものを含む。ただし、二以上の事業者の結合体又はその連合体であつて、資本又は構成事業者(事業者団体の構成員である事業者をいう。第二十条において同じ。)の出資を有し、営利を目的として商業、工業、金融業その他の事業を営むことを主たる目的とし、かつ、現にその事業を営んでいるものを含まないものとする。
一  二以上の事業者が社員(社員に準ずるものを含む。)である一般社団法人その他の社団
二  二以上の事業者が理事又は管理人の任免、業務の執行又はその存立を支配している一般財団法人その他の財団
三  二以上の事業者を組合員とする組合又は契約による二以上の事業者の結合体
3  この法律で「景品類」とは、顧客を誘引するための手段として、その方法が直接的であるか間接的であるかを問わず、くじの方法によるかどうかを問わず、事業者が自己の供給する商品又は役務の取引(不動産に関する取引を含む。以下同じ。)に付随して相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益であつて、内閣総理大臣が指定するものをいう。
4  この法律で「表示」とは、顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について行う広告その他の表示であつて、内閣総理大臣が指定するものをいう。
(景品類の制限及び禁止)
第三条  内閣総理大臣は、不当な顧客の誘引を防止し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を確保するため必要があると認めるときは、景品類の価額の最高額若しくは総額、種類若しくは提供の方法その他景品類の提供に関する事項を制限し、又は景品類の提供を禁止することができる。
(不当な表示の禁止)
第四条  事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
一  商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
二  商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
三  前二号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの
2  内閣総理大臣は、事業者がした表示が前項第一号に該当するか否かを判断するため必要があると認めるときは、当該表示をした事業者に対し、期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。この場合において、当該事業者が当該資料を提出しないときは、第六条の規定の適用については、当該表示は同号に該当する表示とみなす。
(公聴会等及び告示)
第五条  内閣総理大臣は、第二条第三項若しくは第四項若しくは前条第一項第三号の規定による指定若しくは第三条の規定による制限若しくは禁止をし、又はこれらの変更若しくは廃止をしようとするときは、内閣府令で定めるところにより、公聴会を開き、関係事業者及び一般の意見を求めるとともに、消費者委員会の意見を聴かなければならない。
2  前項に規定する指定並びに制限及び禁止並びにこれらの変更及び廃止は、告示によつて行うものとする。
(措置命令)
第六条  内閣総理大臣は、第三条の規定による制限若しくは禁止又は第四条第一項の規定に違反する行為があるときは、当該事業者に対し、その行為の差止め若しくはその行為が再び行われることを防止するために必要な事項又はこれらの実施に関連する公示その他必要な事項を命ずることができる。その命令は、当該違反行為が既になくなつている場合においても、次に掲げる者に対し、することができる。
一  当該違反行為をした事業者
二  当該違反行為をした事業者が法人である場合において、当該法人が合併により消滅したときにおける合併後存続し、又は合併により設立された法人
三  当該違反行為をした事業者が法人である場合において、当該法人から分割により当該違反行為に係る事業の全部又は一部を承継した法人
四  当該違反行為をした事業者から当該違反行為に係る事業の全部又は一部を譲り受けた事業者
(都道府県知事の指示)
第七条  都道府県知事は、第三条の規定による制限若しくは禁止又は第四条第一項の規定に違反する行為があると認めるときは、当該事業者に対し、その行為の取りやめ若しくはその行為が再び行われることを防止するために必要な事項又はこれらの実施に関連する公示その他必要な事項を指示することができる。その指示は、当該違反行為が既になくなつている場合においても、することができる。
(内閣総理大臣への措置請求)
第八条  都道府県知事は、前条の規定による指示を行つた場合において当該事業者がその指示に従わないとき、その他同条に規定する違反行為を取りやめさせるため、又は同条に規定する違反行為が再び行われることを防止するため必要があると認めるときは、内閣総理大臣に対し、この法律の規定に従い適当な措置をとるべきことを求めることができる。
2  前項の規定による請求があつたときは、内閣総理大臣は、当該違反行為について講じた措置を当該都道府県知事に通知するものとする。
(報告の徴収及び立入検査等)
第九条  内閣総理大臣は、第六条の規定による命令を行うため必要があると認めるときは、当該事業者若しくはその者とその事業に関して関係のある事業者に対し、その業務若しくは財産に関して報告をさせ、若しくは帳簿書類その他の物件の提出を命じ、又はその職員に、当該事業者若しくはその者とその事業に関して関係のある事業者の事務所、事業所その他その事業を行う場所に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。
2  都道府県知事は、第七条の規定による指示又は前条第一項の規定による請求を行うため必要があると認めるときは、当該事業者若しくはその者とその事業に関して関係のある事業者に対し景品類若しくは表示に関する報告をさせ、若しくは帳簿書類その他の物件の提出を命じ、又はその職員に、当該事業者若しくはその者とその事業に関して関係のある事業者の事務所、事業所その他その事業を行う場所に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。
3  前二項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。
4  第一項又は第二項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(権限の委任)
第十二条  内閣総理大臣は、この法律による権限(政令で定めるものを除く。)を消費者庁長官に委任する。
2  消費者庁長官は、政令で定めるところにより、前項の規定により委任された権限の一部を公正取引委員会に委任することができる。
3  公正取引委員会は、前項の規定により委任された権限を行使したときは、速やかに、その結果について消費者庁長官に報告するものとする。
(内閣府令への委任)
第十三条  この法律に定めるもののほか、この法律を実施するため必要な事項は、内閣府令で定める。
(協議)
第十四条  内閣総理大臣は、第十一条第一項及び第四項並びに前条に規定する内閣府令(同条に規定する内閣府令にあつては、第十一条第一項の協定又は規約について定めるものに限る。)を定めようとするときは、あらかじめ、公正取引委員会に協議しなければならない。
(罰則)
第十五条  第六条の規定による命令に違反した者は、二年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
2  前項の罪を犯した者には、情状により、懲役及び罰金を併科することができる。
第十六条  第九条第一項の規定による報告若しくは物件の提出をせず、若しくは虚偽の報告若しくは虚偽の物件の提出をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは同項の規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をした者は、一年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
第十七条  第九条第二項の規定による報告若しくは物件の提出をせず、若しくは虚偽の報告若しくは虚偽の物件の提出をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは同項の規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をした者は、五十万円以下の罰金に処する。
第十八条  法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関して、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、当該各号に定める罰金刑を科する。
一  第十五条第一項 三億円以下の罰金刑
二  第十六条又は前条 各本条の罰金刑
2  法人でない団体の代表者、管理人、代理人、使用人その他の従業者がその団体の業務又は財産に関して、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その団体に対しても、当該各号に定める罰金刑を科する。
一  第十五条第一項 三億円以下の罰金刑
二  第十六条又は前条 各本条の罰金刑
3  前項の場合においては、代表者又は管理人が、その訴訟行為につきその団体を代表するほか、法人を被告人又は被疑者とする場合の訴訟行為に関する刑事訴訟法 (昭和二十三年法律第百三十一号)の規定を準用する。

不正競争防止法
(目的)
第一条  この法律は、事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため、不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条  この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。
十三  商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信にその商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量若しくはその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような表示をし、又はその表示をした商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくはその表示をして役務を提供する行為
十四  競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為
(差止請求権)
第三条  不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
2  不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物(侵害の行為により生じた物を含む。第五条第一項において同じ。)の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の停止又は予防に必要な行為を請求することができる。
(損害賠償)
第四条  故意又は過失により不正競争を行って他人の営業上の利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、第十五条の規定により同条に規定する権利が消滅した後にその営業秘密を使用する行為によって生じた損害については、この限りでない。
(損害の額の推定等)
第五条  第二条第一項第一号から第九号まで又は第十五号に掲げる不正競争(同項第四号から第九号までに掲げるものにあっては、技術上の秘密(秘密として管理されている生産方法その他の事業活動に有用な技術上の情報であって公然と知られていないものをいう。)に関するものに限る。)によって営業上の利益を侵害された者(以下この項において「被侵害者」という。)が故意又は過失により自己の営業上の利益を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為を組成した物を譲渡したときは、その譲渡した物の数量(以下この項において「譲渡数量」という。)に、被侵害者がその侵害の行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た額を、被侵害者の当該物に係る販売その他の行為を行う能力に応じた額を超えない限度において、被侵害者が受けた損害の額とすることができる。ただし、譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を被侵害者が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものとする。
2  不正競争によって営業上の利益を侵害された者が故意又は過失により自己の営業上の利益を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、その営業上の利益を侵害された者が受けた損害の額と推定する。
3  第二条第一項第一号から第九号まで、第十二号又は第十五号に掲げる不正競争によって営業上の利益を侵害された者は、故意又は過失により自己の営業上の利益を侵害した者に対し、次の各号に掲げる不正競争の区分に応じて当該各号に定める行為に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を、自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。
一  第二条第一項第一号又は第二号に掲げる不正競争 当該侵害に係る商品等表示の使用
二  第二条第一項第三号に掲げる不正競争 当該侵害に係る商品の形態の使用
三  第二条第一項第四号から第九号までに掲げる不正競争 当該侵害に係る営業秘密の使用
四  第二条第一項第十二号に掲げる不正競争 当該侵害に係るドメイン名の使用
五  第二条第一項第十五号に掲げる不正競争 当該侵害に係る商標の使用
4  前項の規定は、同項に規定する金額を超える損害の賠償の請求を妨げない。この場合において、その営業上の利益を侵害した者に故意又は重大な過失がなかったときは、裁判所は、損害の賠償の額を定めるについて、これを参酌することができる。

私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律
第一章 総則
第一条  この法律は、私的独占、不当な取引制限及び不公正な取引方法を禁止し、事業支配力の過度の集中を防止して、結合、協定等の方法による生産、販売、価格、技術等の不当な制限その他一切の事業活動の不当な拘束を排除することにより、公正且つ自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇傭及び国民実所得の水準を高め、以て、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とする。
第2条
9  この法律において「不公正な取引方法」とは、次の各号のいずれかに該当する行為であつて、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するものをいう。
一  不当に他の事業者を差別的に取り扱うこと。
二  不当な対価をもつて取引すること。
三  不当に競争者の顧客を自己と取引するように誘引し、又は強制すること。
四  相手方の事業活動を不当に拘束する条件をもつて取引すること。
五  自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引すること。
六  自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において競争関係にある他の事業者とその取引の相手方との取引を不当に妨害し、又は当該事業者が会社である場合において、その会社の株主若しくは役員をその会社の不利益となる行為をするように、不当に誘引し、そそのかし、若しくは強制すること。
第七条  
○2  公正取引委員会は、第三条又は前条の規定に違反する行為が既になくなつている場合においても、特に必要があると認めるときは、第八章第二節に規定する手続に従い、事業者に対し、当該行為が既になくなつている旨の周知措置その他当該行為が排除されたことを確保するために必要な措置を命ずることができる。ただし、当該行為がなくなつた日から三年を経過したときは、この限りでない。
第十九条  事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない。
第二十条  前条の規定に違反する行為があるときは、公正取引委員会は、第八章第二節に規定する手続に従い、当該行為の差止め、契約条項の削除その他当該行為を排除するために必要な措置を命ずることができる。
○2  第七条第二項の規定は、前条の規定に違反する行為に準用する。
第七章 差止請求及び損害賠償
第二十四条  第八条第五号又は第十九条の規定に違反する行為によつてその利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、これにより著しい損害を生じ、又は生ずるおそれがあるときは、その利益を侵害する事業者若しくは事業者団体又は侵害するおそれがある事業者若しくは事業者団体に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。第二十五条  第三条、第六条又は第十九条の規定に違反する行為をした事業者(第六条の規定に違反する行為をした事業者にあつては、当該国際的協定又は国際的契約において、不当な取引制限をし、又は不公正な取引方法を自ら用いた事業者に限る。)及び第八条の規定に違反する行為をした事業者団体は、被害者に対し、損害賠償の責めに任ずる。
○2  事業者及び事業者団体は、故意又は過失がなかつたことを証明して、前項に規定する責任を免れることができない。
第二十六条  前条の規定による損害賠償の請求権は、第四十九条第一項に規定する排除措置命令(排除措置命令がされなかつた場合にあつては、第五十条第一項に規定する納付命令(第八条第一号又は第二号の規定に違反する行為をした事業者団体の構成事業者に対するものを除く。))又は第六十六条第四項の審決が確定した後でなければ、裁判上これを主張することができない。
○2  前項の請求権は、同項の排除措置命令若しくは納付命令又は審決が確定した日から三年を経過したときは、時効によつて消滅する。
公正取引委員会告示
(昭和五十七年六月十八日公正取引委員会告示第十五号)不公正な取引方法
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)第二条第九項の規定により、不公正な取引方法(昭和二十八年公正取引委員会告示第十一号)の全部を次のように改正し、昭和五十七年九月一日から施行する。
不公正な取引方法
(共同の取引拒絶)
1正当な理由がないのに、自己と競争関係にある他の事業者(以下「競争者」という。)と共同して、次の各号のいずれかに掲げる行為をすること。
一ある事業者に対し取引を拒絶し又は取引に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限すること。
二他の事業者に前号に該当する行為をさせること。
(その他の取引拒絶)
2不当に、ある事業者に対し取引を拒絶し若しくは取引に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限し、又は他の事業者にこれらに該当する行為をさせること。
(差別対価)
3不当に、地域又は相手方により差別的な対価をもつて、商品若しくは役務を供給し、又はこれらの供給を受けること。
(取引条件等の差別取扱い)
4不当に、ある事業者に対し取引の条件又は実施について有利な又は不利な取扱いをすること。
(事業者団体における差別取扱い等)
5事業者団体若しくは共同行為からある事業者を不当に排斥し、又は事業者団体の内部若しくは共同行為においてある事業者を不当に差別的に取り扱い、その事業者の事業活動を困難にさせること。
(不当廉売)
6正当な理由がないのに商品又は役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給し、その他不当に商品又は役務を低い対価で供給し、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあること。
(不当高価購入)
7不当に商品又は役務を高い対価で購入し、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあること。
(ぎまん的顧客誘引)
8自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について、実際のもの又は競争者に係るものよりも著しく優良又は有利であると顧客に誤認させることにより、競争者の顧客を自己と取引するように不当に誘引すること。
(不当な利益による顧客誘引)
9正常な商慣習に照らして不当な利益をもつて、競争者の顧客を自己と取引するように誘引すること。
(抱き合わせ販売等)
10相手方に対し、不当に、商品又は役務の供給に併せて他の商品又は役務を自己又は自己の指定する事業者から購入させ、その他自己又は自己の指定する事業者と取引するように強制すること。
(排他条件付取引)
11不当に、相手方が競争者と取引しないことを条件として当該相手方と取引し、競争者の取引の機会を減少させるおそれがあること。
(再販売価格の拘束)
12自己の供給する商品を購入する相手方に、正当な理由がないのに、次の各号のいずれかに掲げる拘束の条件をつけて、当該商品を供給すること。
一相手方に対しその販売する当該商品の販売価格を定めてこれを維持させることその他相手方の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束すること。
二相手方の販売する当該商品を購入する事業者の当該商品の販売価格を定めて相手方をして当該事業者にこれを維持させることその他相手方をして当該事業者の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束させること。
(拘束条件付取引)
13前二項に該当する行為のほか、相手方とその取引の相手方との取引その他相手方の事業活動を不当に拘束する条件をつけて、当該相手方と取引すること。
(優越的地位の濫用)
14自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次の各号のいずれかに掲げる行為をすること。
一継続して取引する相手方に対し、当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務を購入させること。
二継続して取引する相手方に対し、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。
三相手方に不利益となるように取引条件を設定し、又は変更すること。
四前三号に該当する行為のほか、取引の条件又は実施について相手方に不利益を与えること。
五取引の相手方である会社に対し、当該会社の役員(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)第二条第三項の役員をいう。以下同じ。)の選任についてあらかじめ自己の指示に従わせ、又は自己の承認を受けさせること。
(競争者に対する取引妨害)
15自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において競争関係にある他の事業者とその取引の相手方との取引について、契約の成立の阻止、契約の不履行の誘引その他いかなる方法をもつてするかを問わず、その取引を不当に妨害すること。
(競争会社に対する内部干渉)
16自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において競争関係にある会社の株主又は役員に対し、株主権の行使、株式の譲渡、秘密の漏えいその他いかなる方法をもつてするかを問わず、その会社の不利益となる行為をするように、不当に誘引し、そそのかし、又は強制すること。

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