新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.963、2010/1/26 10:51 https://www.shinginza.com/jitsumu.htm

法の支配と民事訴訟実務入門(平成20年8月13日改訂)
【総論7、法的三段論法、訴訟物、要件事実、主要事実、証拠提出、訴訟追行上当事者の責任の範囲、裁判所はどこまで教えてくれるか。訴状の書き方。】

Q:友人に500万円貸したので取り戻したいのですが、実際の民事訴訟で勝訴判決を得るためには訴状で何を主張・立証したらよいのでしょうか。500万円を貸したから返してください、と言うだけでよいのですか?訴状の書き方も教えてください。解からない時は裁判所で教えてくれるでしょうか。心配です。

A:
1. 貴方と友人の契約は500万円の金銭消費契約ですから基本的に
@ 友人に対して500万円支払えという主張(裁判の対象、訴訟物といいます)が必要です。訴状では、請求の趣旨というところに書きますし判決では主文に該当します。これを処分権主義といいます。
A 次に貴方と友人が平成O年O月O日500万円の貸借をするという合意(他期限等)をした事実と500万円を渡したという事実(訴訟物を基礎付ける事実。要件事実、主要事実、請求原因事実といいます)を主張します。訴状(書式@)では、「請求原因」という箇所に書きます。弁論主義です。判決との対比では「事実」というところに記載されます。
B 次にAの事実を立証する証拠を収集提出し立証する必要があります。訴状にも証拠方法(証拠物)として記載し必要に応じて順次提出して立証活動を行います。弁論主義の内容です。判決では「理由」に立証の評価として記載されることになります。

2. 訴訟物、要件事実、証拠の収集提出、立証の内容に関する事項について、裁判所は絶対教えてくれません。貴方が自分で考え判断し内容を訴状、準備書面等に書き証拠調べで主張、立証しなければなりません。貴方が民事訴訟で必ずしなければならないことは基本的に以上3つの点です。この点が民事訴訟の中核です。当事者主義、私的自治の原則の理論的帰結です。
3. それ以外の訴訟手続き進行上の事項等についてですが、貴方は国家に対して裁判を受ける権利(憲法32条)を有していますから困った時丁寧に裁判所に聞いてみてください。かならず教えてくれますし、裁判所には制度上教える義務があるのです。安心してください。訴訟の進行手続き事項は、裁判所と相談し裁判所との約束(期日、方式)を守りながら行えば支障は生じないはずです。
4. 訴状は書式集@を参照してください。その他の書式、手続については新銀座法律事務所ホームページも参考にしてください。

解説
1. 裁判所の判決は当事者双方の主張立証に基づく要件事実(500万円貸し渡したという事実の確定)と法(民法の消費貸借の条文)の解釈適用により組み立て結論(500万円を支払え)を出します。このルールを理解しないと裁判で敗訴することがあり説明します。これは法科大学院の院生や司法研修所の修習生が勉強することで、簡単ではありませんが、本人訴訟を行う貴方も基本的な理解が必要です。

2.  裁判官は法的三段論法で判決を書きます。500万円を貸し渡したという事実を証拠調べで認めることが出来れば(事実の確定、第一段)、次に民法587条の法律条文を解釈適用して(法律の解釈および適用、第二段)500万円を支払えという結論(判決の主文 、紛争解決の結論、第三段)を出します。

3. 当事者は、解決してもらいたい紛争の対象(裁判所の判断の対象訴訟物といいます。例えば500万円払え)を先ず訴状にはっきりと書いて提示します。次に貴方が希望している権利の発生を規定している法律が適用になるように法律を構成している事実を主張しなければなりません。民法587条は「消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。」と規定しています。「返還する事を約し」と書いているので金銭を貸し渡す合意が必要です。次に「受け取ることによって効力を生ずる」と書いてあるので、目的物を渡して初めて契約が成立するという要物契約であり、500万円交付受領の2つの事実を特定し裁判官に解かる様に記載しなければなりません。法律適用の要件という意味でこれを要件事実(大切な事実なので主要事実とも言います)といいます。訴状の請求の原因と言う項目に記載しますので請求原因事実ともいいます。しかし、民法598条を読んで2つの要件事実があると解釈することも勉強が必要で大変です。基本的に当事者の主張はここまでです。

4. 裁判所は、当事者が主張された事実について争いがあれば当事者の立証によって自ら確定し、該当する法律(消費貸借契約)を自らの判断で選び抽象的な法律を解釈し要件事実に当てはめる事が出来るかを考え当てはまっていれば法律の効果(500万円支払え)を言い渡します。このような権限を司法権、裁判権といいます(憲法76条)。司法権は、裁判所が独占し独立していますから、一般国民は権限を一切持っていません。要件事実を主張し、争いがあれば事実を証明し裁判官に納得し法律を適応してもらうよう要請主張するだけです。法の支配の理念、自力救済を禁止した以上当然の結論です。当事者は勿論適用される法律を主張しますがそれは単なる意見で裁判官は主張に何ら拘束されません。裁判所も独占しているのは要件事実確定の判断権と法律の解釈適用権限だけですから紛争の対象、事実主張の内容、証明活動に口出しは出来ません。自由主義、私的自治の原則から当然の理論的帰結です。

5. 従って、当事者が主張する要件事実について認めて(自白、自分に不利益な事実を認めること。例えば友人が500万円を借り受け取った事実を認めること)争いがない場合、たとえ事実と違っていても裁判所は口出し出来ませんし(弁論主義)勝手に調べる事も出来ません(職権証拠調べの禁止)。

6. 但し、要件事実が記載主張されていないと500万円の請求権は認められません。例えば、500万円の貸借は約束したと記載しても、500万円渡したという要件事実を記載しないと、借用書を証拠に出しても、証人が500万円貸すのを見たと証言しても敗訴(請求棄却)になります。これを主張しないと不利益をうけるといういみで主張責任といいます。勿論私的自治の原則の現れです。このような責任を負わないようにするには事実関係を詳細に記載するといいと思います。

7. 訴状「請求の原因」の箇所に、要件事実以外の内容を記載してもかまいません。「500万円は親から相続したもので、自分名義の銀行口座に預金してあった。」「友人は失業中で生活に困っていたし借金があった。」等です。これは要件事実を推測させる間接事実(その他500万円の支払いに立ち会った人は正直な人であるという証人の証明力を明らかにする補助事実もあります)といいます。その他、請求原因の箇所にその他要件事実の特定、証明に役立つ事実を書くことは何ら問題ありません。このような事実の主張は要件事実の特定、明瞭化に有意義であり相手方の防御権行使も容易になり紛争の適正、公平、迅速な解決に繋がるからです。間接事実(補助事実も)は、請求の原因に記載し主張しなくても裁判所は証拠調べから認定する事も出来ます。すなわち弁論主義が適用になりません。訴訟の理想の一つに適正な解決という面から間接事実の認定は当事者の主張にかかわらず裁判官の自由な心証形成の材料として認めているのです。間接事実は、要件事実との関連では主要事実認定するための証拠と同様な作用を持っていますからその範囲で真実発見、適正な判断を優先しています。心配であれば主張責任の問題がありますので、要件事実に関連する事はなるべく詳細に書いた方が無難でしょう。以上の主張は当事者、裁判所に争点を明らかにし適正、公平、迅速、低廉な解決のため全て書面が必要です(訴状、準備書面等。民訴133条、161条)。

8.
@ 相手方が、要件事実を認めないが場合(これを否認といいます)は、順次借用書などの書証(その他交通事故損害賠償で確認する事故現場等の検証物、まとめて物証といいます)証人(他に当事者本人、借用書が本人署名の本物かどうか調べる鑑定人、まとめて人証といいます)について証拠調べ手続を行い(民訴180条、民事訴訟規則99条以下に詳細に規定してあります)要件事実の存在を証明しなければいけません(証明できない場合に受ける不利益を挙証責任といいます)。証拠を集め裁判所に提出する事も当事者である貴方の責任です(職権証拠の禁止)。私的自治の原則から自らの利益になる証拠は自分で探さなければなりませんし、裁判所が介入すると公平性に反しむしろ真実発見(適正)が遅れるという考え方によっています。相手方(被告)が要件事実を認めるかどうかにかかわらず最初から訴状に「証拠方法」として証拠物(書証)を記載し請求原因事実の中のどの事実の証拠なのかを指摘しながら提出する事が求められます(民訴規則53条)。紛争の事実(争点)が明確化し迅速な解決に繋がるからです。要件事実、間接事実の中で相手が認めないものでも証明が不要な事実があります。相手方が自白した事実と顕著な事実(公知の事実)です(民訴179条)。私的自治の原則から争いのない事実に裁判所は関与できませんし、5月3日は憲法記念日であるとか法律、判例の存在等は裁判所にとり公知の事実(その他自分が担当した裁判結果等職務上知りえた事実もあります)であり証拠調べがなくても適正公平な事実認定ができることが理由です。

9. 証拠の申し出は口頭でも可能な場合もありますが基本的に文書に記載して提出しなければなりません。要件事実を証明するために行う手続ですから当事者、裁判所に争点、立証の必要性を明確にして当事者が短時間で十分に攻撃防御を行い適正公平迅速に真実を明らかにするため証拠調べの内容(立証する要件事実とその証拠の関係を明確にする)を書面にして関係者にわかるようにしておかなければなりません。人証(証人、鑑定人等)の場合の証拠申出、尋問事項書、鑑定申立書、物証の場合書証の証拠説明書、検証申立書などです。このように、当事者主義の大原則から裁判官が主張、立証について理解しやすいように貴方が自分の利益を考えて口頭で主張するだけでなくほとんどが書面にて提出する事になります。書面の方式、体裁は、民事訴訟法、民事訴訟規則を基に本書の書式集を参考にし、裁判所でも聞けますのでさほど心配は要りません。要は証拠があるかということです。

10. 本件の500万円返還請求において相手方が訴訟中に500万円の請求、訴訟物自体を認める(民訴266条、267条請求の認諾)と紛争の対象がないのですから私的自治の原則から裁判所の判断不要となり判決によらず裁判は終結します。要件事実を認めれば(相手方被告の自白といいます)貴方に対して勝訴の判決が下されます。被告が要件事実を否認し争ってもし消費貸借を直接立証できる借用書(直接証拠)等があれば問題ありません。しかし、借用書のようなものがなければ結構大変になります。要件事実を証明する間接事実の主張、立証(間接証拠)になり時間がかかることになります。証人、当事者本人尋問の証拠調べは必要になるでしょう。証拠調べの結果貴方が要件事実の存在を証明できなければ立証、挙証責任を負わされ請求は認められず敗訴判決ということになります。

11. 以上、貴方が自ら考え判断し民事訴訟を追行していく基本的内容は、訴訟物の特定主張、法律を構成する要件事実の特定主張、要件事実の証拠収集提出立証に尽きるのです。この内容及びこれに関連する事項(訴えの取り下げ、訴えの変更、反訴)については貴方の全責任です。いくらお願いしても、裁判所は、当事者の一方だけには、基本的に協力をしてくれません。裁判所の釈明権(民訴149条)の限界もここにあります。

12.
@ どのような難しい事件も民事訴訟の基本的な構造は同じです。訴訟物の変更(民訴143条)も理屈は訴訟物の特定と同じ理論であり当事者の責任でしなければいけませんが相手方の公平、訴訟の迅速、訴訟経済を考え「請求の基礎の同一性」という要件等を加え厳しくなっているだけなのです。例えば、訴訟中に、同じ友人に車の売買代金200万円を追加して合計700万円請求する場合です。勿論売買の要件事実を新たに主張立証する事になります。
A 1つの訴訟で当事者が最初から複数いる共同訴訟(民訴38条、複数の紛争の適正、迅速な解決になり一定の要件の下に認められています)も基本的構造は同じでありただ当事者ごとに複数の訴訟物があるだけです。例えば友人と連帯保証人の父(友人の父が保証人になってくれた場合)に500万円請求する場合です。当然、追加して連帯保証契約の要件事実を新たに主張立証していく事になります。

13. ただ、要件事実が何であるか条文を読み不明確な場合には、法的専門家のアドヴァイスが必要でしょう。

14. しかし、以上の3点以外の進行手続、方式の内容についわからない場合、弁護士に聞くのもいいですが遠慮なく裁判所に聞いてください。電話や、裁判所の書記官室、法廷内で書記官、廷吏さんに聞いてみましょう。裁判所は、不明な点について教えてくれますし、教える義務もあるのです。弁護士だって解からない時は電話でよく聞いています。

15. その理由は、法の支配、自力救済の禁止の原則に求める事が出来ます。個人の適正な社会秩序を維持発展させ国民個人の尊厳を保障するために、私人間の紛争解決は禁止されて紛争解決の権利すなわち司法権、裁判権は国家、すなわち裁判所が独占し独立しているのです(行政権、立法権も侵害できません)。従ってその反射的効果として、全ての国民は国家に対して個人間の私的紛争について訴訟、裁判を求め、受ける権利を有しているのです。憲法32条は裁判を受ける権利として、「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」と規定していますが国民の裁判を受ける権利だけでなく、義務をも前提として認めているのです。従って、国家は、裁判所という建物を立てて場所を確保し、裁判官、職員を雇用し、私的紛争を解決していく手続を法律(公正を保つため)により決めなければなりませんし、決まった手続により紛争解決機関である司法権、裁判所が自ら主体となって手続を具体的に実行しなければなりません。手続実行の最終目的は国民の適正公平迅速低廉な裁判を受ける権利を保障し実効あらしめるためにありますから、裁判所の利用方法、訴訟手続の内容、方式、手続進行の構造について裁判所を利用する紛争当事者国民に分かるように説明する義務を基本的に有するのです。裁判所が、手続に関し説明義務を果たさなければ国民は裁判所に行った経験がないのが通常ですから本人訴訟は事実上できなくなり実質的に国民の裁判を受ける権利は失われることになるからです。そういう意味で、裁判所(裁判官)の訴訟指揮権(民訴148条、93条、168条、98条 期日期間指定、送達、弁論整理、釈明)、訴状の形式的審査補正権(民訴137条)、等は本人訴訟で理解できない進行手続を国民に説明する義務があることを全て前提としていますし説明義務の現れです。裁判所は、訴訟進行の単なる手続、方式にミスがあっても直ちに裁判を終了する事はしませんし、出来ません。必ず訂正、補正をするよう注意しますし、しなければならないのです。分からなければ裁判所に聞くことです。例えば、訴状の副本(被告に渡す分)が提出されなければ書記官から連絡があり提出を要請されますし、添付印紙、切手代が足りなければ補正、追加の連絡が来ます(民訴137条)。

16. 細かい進行手続、方式に恐れをいだく事はありません一度書式集などで勉強したら後は堂々と裁判所にお尋ねください。ただ、私的紛争の公平、迅速、低廉な解決のため手続進行権は裁判所にあり指示、指揮に従わないと権利自体を失う場合がありますから注意してください。

【書式1 訴状貸し金返還請求】

訴状

(印紙)
平成20年3月1日
東京地方裁判所(    支部)民事部 御中

〒104−0061
住 所 東京都中央区銀座4丁目15番 10号        (送達場所)
   原  告    中    央   太   郎    印
   
電話      03−3248−5791
    
FAX      電話と兼用

〒100−8921
       住  所 東京都千代田区霞ヶ関1丁目5番10号
                    霞ヶ関マンション101号室

被  告     千 代 田    次    郎    

貸金等請求事件

訴訟物の価額   金500万円
貼用印紙額    金 3万円

請 求 の 趣 旨
1 被告は,原告に対し,金500万円及びこれに対する平成20年2月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決並びに仮執行の宣言を求める。

請 求 の 原 因
第1 金銭消費貸借
原告は、被告に対し平成19年2月10日金500万円を期限の定めなく貸し渡し、被告は返還の約束をして同日金500万円を受領した(甲1 借用書)。

原告は平成20年1月ころから返済を求めたが被告は言を左右にしてこれに応じない。そこで平成20年2月10日到達の内容証明郵便を持って7日以内に支払うよう通知催告したが被告は弁済しない(甲2通知催告書,甲3配達証明書)。

第2 結語
  よって、原告は被告に対し、被告に対する金銭消費貸借による支払い債務の履行として、金500万円の支払いと平成20年2月18日から完済まで年5パーセントの割合による遅延損害金の支払いを求め、訴えを提起する。

以上

立 証 方 法
甲1号証  借用書
甲2号証  通知催告書
甲3号証  配達証明書郵便はがき

付 属 書 類
1 訴状副本      1通
2 甲号証正本、副本    各1通


1. 訴状提出する裁判所は、民訴4条、5条1項1号管轄(事件について裁判所が裁判権を有する範囲)の決まりで東京地方裁判所になります。被告の住所地が東京ですし、契約の内容からみても500万円を原告の住所地に支払う(持参債務民法434条)という紛争なので原告も東京であり住所地を管轄する東京地裁になります。管轄の定めは適正公平、迅速低廉な解決を理想に決められていますが後に詳しく説明します。

2. 貸金の返還を請求する裁判の訴状の例です。当事者の住所は本人の特定、裁判所、相手方被告からの書類の送付場所、管轄の決定等に必ず必要です。その他に電話、FAXを記載する必要があります(民訴133条、民事訴訟規則53条4項)。迅速低廉な手続進行のためです。準備書面等一部の書類はFAX送信が認められています(規則3条)。

3. 請求の趣旨には、原告が求める判決を記載します。強制執行を念頭に、「金500円を支払え。」という判決を求めることになります。この点を説明すると難しくなりますので、このような書き方をするものだということで作成してください。

4.
@ 次に、「これに対する平成20年2月18日から支払済みまで年5分の割合による金員」と記載してありますが、5%の遅延損害金の請求は、ややこしくなりますが、500万円の消費貸借契約と別個の履行遅滞という債務不履行の請求原因(要件事実)による遅延損害金請求という訴訟物ということになりますので500万円とは別個に記載しなければならないのです。すなわち訴訟物は2つあるのです。返済の期限が定めない時は、貴方が被告に請求した時から被告は履行遅滞になります(民法412条3項)。損害金は本来であれば実損害を請求する方が証明しなければならないのですが、金銭の場合特約がなければ証明する必要がなく一律的に法定利率(利息の定めをして額を決めない場合の利率)である年5%(商事の場合6%、商法514条)と法律で決めています(民法415条、404条)。金銭を返さないこと自体が一定の損害発生と評価できるからです。従って履行遅滞の要件事実(期限の定めなく、請求の事実)も必ず請求原因のところに書かなければいけませんし、記載しないと認められません。
A 次にどうして2月18日と言う記載となった理由ですが、本来期限の定めがない場合は、貴方が1月頃から請求していますからその日を特定して例えば1月20日からと書いてもいいのですが、明らかな証拠がないので請求した内容証明到達の日の翌日である2月11日から請求できるのですが、期限のない消費貸借の場合相当期間を決めて請求しなければなりませんので(民法591条、解釈上は被告の抗弁と解釈されていますから被告が主張しないと11日から損害金は認められます)念のため1週間経過後の18日と書きました。この内容は、私的自治、処分権主義の内容をなすものですから、「訴訟送達の日から」、「3月1日から」でもかまいません。原告が自分で決められます。
B 完済までと書くのは、勿論完済まで遅延損害金が請求できるからです。

5. 本件とは異なり、期限(例えば2月20日)、利息(例えば6%)や遅延損害金(例えば10%)の約束がある場合は、理論的、法律的には基になる500万円の金銭消費貸借契約とは別個の契約が成立しています。利息支払契約と遅延損害金支払契約であり、訴訟物が3つになるのでそれそれについて請求の趣旨、請求の原因で各々主張する必要があります。
@ その場合は少し複雑になりますが請求の趣旨としては次のようになります。「被告は、原告に対し金530万円(注・・請求する元金500万円と利息の期限までの30万円の合計額)と内金500万円(注・・請求する元金の金額)に対する(期限の次の日である)平成20年2月21日から完済に至るまで年10パーセントの割合の金員を支払え。」期限がくれが当然履行遅滞になりますから期限の翌日から10%の遅延損害金を請求できるのです。請求の趣旨は処分権主義の対象ですから、訴訟提起の日3月1日前日までの元金、利息、遅延損害金を合計して記載し平成20年3月1日から完済に至るまで年10パーセントの割合の金員を支払え。と記載してもいいわけです。訴訟物さえ特定できていれば私的自治の原則からその点は自由です。
A そして訴状中に、要件事実、請求原因として「原告と被告は、本件金員を貸し渡す際に、支払期限を平成〇〇年〇〇月〇〇日、利息年〇〇パーセント。遅延損害金年〇〇パーセントと定めた。」という別個の要件事実を記載する必要があります。主たる契約である金銭消費貸借の事実と従たる利息契約、遅延損害金契約合意の事実が記載さされていれば、要件事実としては十分です。

6. 訴状で判決を求めるのは当然ですが未確定の判決に仮執行の宣言も求めます(民事執行法22条)。判決は確定して初めて権利関係も公的に認めら債務名義として強制執行できるのですが原則ですが、被告が勝つ見込みがないのにわざと上訴して勝った者の権利実現を遅らせる危険がありますので、仮執行を認め原状回復の簡単な金銭請求について未確定の判決を債務名義としています。主張立証を尽くした第一審の審理が終了しており当事者の公平にも反しませんし適正、迅速な解決のために認められます。 

7. 請求原因には、判決を出してもらうために必要な事実を記載します。どのような事実が必要かは、要件事実によって異なりますが、貸金返還請求の場合は、返還する約束と、お金を渡した事実です(金銭消費貸借契約の成立)。通常は、借用証をその証拠として提出します。借用証がない場合は、立証がが困難になります。その場合借用証がなくても、お金を被告に渡したこと、貸したお金の出所を証明すれば、特にお金を渡す理由がない限り貸金と認められることになるでしょう。しかし、その場合は被告から贈与された金員であるなどと反論される場合もありますから裁判としては簡単ではありません。

8.  理論的に返済されないことは、原告が主張する必要はありません。返済したことは(抗弁といい弁済は被告が主張する利益がありますので被告が主張する要件事実ということになります)被告が領収書などを提出して証明することになっています。ただ、訴えを起こした理由を説明するため、「被告は、返済しない。」と記載することは問題ありません。要件事実に必要なことが抜けていると判決が出ませんが、余分なことが書いてあっても判決をすることはできますので、よくわからない場合は事情等事実を多めに書いた方がいいと思います。また、抜けている事実がある場合は裁判所から釈明、質問がありますので、補充することができます。補充は書面(準備書面)でも、裁判の当日(その場合は、裁判所で調書に記載してもらうことになります)でもできます。

9.  証拠方法(証拠調べの対象たる有形物)に記載する甲号証とは原告の出す証拠の番号です。甲1号証、甲2号証と記載します。証拠は勿論原本なのですが、原本は自分で管理し立証活動を適正公平にするため裁判所、相手方被告保管用に写しを提出しますから、借用書等のコピーを3部作ります。 一部は裁判所用、ほかは被告に渡す分(裁判所が被告に送ってくれます)と、自分の控えとします。借用書原本は、証拠調べのとき証人に提示したりして使いますから大切に保管しておいてください。証拠は、コピーでなく原本ですから裁判の当日(口頭弁論期日といいます)に必ず原本提示を求められます。持参提出して裁判所に原本と写しが一致していることを確認します。裁判所が原本を確認した時点で、証拠として提出されたことになります。

10. 訴状も同様に3部作成しておくとよいでしょう。ちなみに被告1名につき訴状の副本が1部必要ですから、被告が増えればその分訴状副本の数も増えることになります。

11.  訴訟物の価格は下段の手数料算定、管轄決定のために記載します。貸し金では請求する元金の金額のみを記載します(民訴9条2項)。遅延損害金等付帯請求を入れると額が未確定になり手数料計算が煩雑になるのが理由です。心配であれば空欄にしておいて裁判所の受付で、担当の人に相談しながら記載する方が良いでしょう。金銭請求以外の価格では算定に一般的決まりがありますが(民訴8条、民事訴訟費用の法律4条)不明確な部分は最高裁民事局長(訴額)通知等により決められています。巻末資料別表@参照してください。

12. 訴えを提起するには裁判所を利用する手数料として訴状に印紙(国の手数料、税金を納めるための現金に代わる証券)を貼らなければなりません(民事訴訟費用等に関する法律3条、8条)。公的機関を利用するのに手数料を支払うのもおかしいように思いますが、私的紛争を抱える人だけが国の機関を利用するので最低眼の費用を徴収しています。そうでないと濫訴の危険もあるからです。住民票等を取るときの手数料と同じに考えてください。貼用印紙も裁判所の受付の人に確認してその場で記載したほうが良いでしょう。裁判所は手続き、方式について説明、補助する義務がありますから解からなければ教えてくれます。裁判所が、自らの手数料を決めて徴集するのですから聞けば教えてくれるのは当然です。誤っていても不足分は請求されますが、過剰分は後で返還してくれます(民事訴訟費用法9条)。印紙額は民事訴訟費用等に関する法律により決まっています。巻末資料別表Aを参照してください。直ぐに分かります。訴状に貼る印紙の場所は特に決まりはありませんから印紙が少なければ通常1枚目の左うえの辺に貼ります。納めればいいので別紙でもかまいません。郵送の場合、不安なら印紙を貼らずに同封して送れば裁判所のほうで貼ってくれます。印紙の消印は手数料の徴収権者である裁判所が受領後行いますので原告は消印しないで印紙をそのまま納めます(国の取引税である取引の契約書、領収書の印紙は消印により納税した事になりますので納税者の当事者が消し印しますがこれとは異なります。印紙税法8条)。

13. 印紙の他に、郵送用切手を訴状提出時に予納します(民訴費用13条)。裁判所は、訴状、準備書面、呼び出し状、判決、等の郵送迅速に行う必要がありますから紛争解決を申し出た原告に訴状に添付して予納させます。合計6400円です。予納郵券別表参照。郵送代ですから残れば返還してくれます。

14. 付属書類とは訴状に添付して提出した一切の書類を言います。被告へ渡す訴状、各証拠の副本、弁護士がいる場合の訴訟委任状等を記載します。

15.  訴状を提出すると、担当の部が決まります。急ぐ場合は担当の部に連絡してもらい裁判の期日を提出した時に決めてもらうこともできます。もちろん訴状に不備がない場合ですが、裁判所の受付に相談することは可能です。ただし、裁判を始めるには、当事者の公平を考え被告の住所に訴状が第1回口頭弁論期日の14日前までに送達され送達されたことが裁判所で確認できることが必要ですし(被告も防御として答弁書を提出しなければならないので)通常訴状を提出してから最初の口頭弁論期日は1ヶ月後位になってしまいます(民訴139条、規則60条)。

16. 訴状の形式は法律で決まっていませんが、裁判所の実務を説明します。
@ A4判、
A 横書き、文字12ポイント、
B 1行37文字、1頁26行程度、
C 左閉じ、左側3センチ、右側1.5センチ、上部、3.5センチ、下部3センチの余白
D 番号の付け方、  第1、第2、第3、   1、2、3、  (1)、(2)、(3)、 ア、イ、ウ、   (ア)(イ)(ウ)     項目が少ないようであれば、第1、第2は省いてもいいわけです。

≪条文参照≫

憲法
第三十二条  何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。
第七十六条  すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。

民法
(消費貸借)
(履行期と履行遅滞)
第四百十二条  債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。
3  債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。
(債務不履行による損害賠償)
第四百十五条  債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。
(法定利率)
第四百四条  利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年五分とする。
(弁済の場所)
第四百八十四条  弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において、その他の弁済は債権者の現在の住所において、それぞれしなければならない。
第五百八十七条  消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。
(返還の時期)
第五百九十一条  当事者が返還の時期を定めなかったときは、貸主は、相当の期間を定めて返還の催告をすることができる。
商法
(商事法定利率)
第五百十四条  商行為によって生じた債務に関しては、法定利率は、年六分とする。

民事訴訟法
(普通裁判籍による管轄)
第四条  訴えは、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所の管轄に属する。
第五条  次の各号に掲げる訴えは、それぞれ当該各号に定める地を管轄する裁判所に提起することができる。
一  財産権上の訴え
     義務履行地
(訴訟の目的の価額の算定)
第八条  裁判所法 (昭和二十二年法律第五十九号)の規定により管轄が訴訟の目的の価額により定まるときは、その価額は、訴えで主張する利益によって算定する。
2  前項の価額を算定することができないとき、又は極めて困難であるときは、その価額は百四十万円を超えるものとみなす。
(併合請求の場合の価額の算定)
第九条  一の訴えで数個の請求をする場合には、その価額を合算したものを訴訟の目的の価額とする。ただし、その訴えで主張する利益が各請求について共通である場合におけるその各請求については、この限りでない。
2  果実、損害賠償、違約金又は費用の請求が訴訟の附帯の目的であるときは、その価額は、訴訟の目的の価額に算入しない。
(共同訴訟の要件)
第三十八条  訴訟の目的である権利又は義務が数人について共通であるとき、又は同一の事実上及び法律上の原因に基づくときは、その数人は、共同訴訟人として訴え、又は訴えられることができる。訴訟の目的である権利又は義務が同種であって事実上及び法律上同種の原因に基づくときも、同様とする。
(期日の指定及び変更)
第九十三条  期日は、申立てにより又は職権で、裁判長が指定する。
(職権送達の原則等)
第九十八条  送達は、特別の定めがある場合を除き、職権でする。
2  送達に関する事務は、裁判所書記官が取り扱う。
(訴え提起の方式)
第百三十三条  訴えの提起は、訴状を裁判所に提出してしなければならない。
2  訴状には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一  当事者及び法定代理人
二  請求の趣旨及び原因
(裁判長の訴状審査権)
第百三十七条  訴状が第百三十三条第二項の規定に違反する場合には、裁判長は、相当の期間を定め、その期間内に不備を補正すべきことを命じなければならない。民事訴訟費用等に関する法律(昭和四十六年法律第四十号)の規定に従い訴えの提起の手数料を納付しない場合も、同様とする。
2  前項の場合において、原告が不備を補正しないときは、裁判長は、命令で、訴状を却下しなければならない。
(口頭弁論期日の指定)
第百三十九条  訴えの提起があったときは、裁判長は、口頭弁論の期日を指定し、当事者を呼び出さなければならない。
(訴えの変更)
第百四十三条  原告は、請求の基礎に変更がない限り、口頭弁論の終結に至るまで、請求又は請求の原因を変更することができる。ただし、これにより著しく訴訟手続を遅滞させることとなるときは、この限りでない。
2  請求の変更は、書面でしなければならない。
(裁判長の訴訟指揮権)
第百四十八条  口頭弁論は、裁判長が指揮する。
2  裁判長は、発言を許し、又はその命令に従わない者の発言を禁ずることができる。
(弁論準備手続の開始)
第百六十八条  裁判所は、争点及び証拠の整理を行うため必要があると認めるときは、当事者の意見を聴いて、事件を弁論準備手続に付することができる。
(証明することを要しない事実)
第百七十九条  裁判所において当事者が自白した事実及び顕著な事実は、証明することを要しない。
第百八十条  証拠の申出は、証明すべき事実を特定してしなければならない。
2  証拠の申出は、期日前においてもすることができる。
(請求の放棄又は認諾)
第二百六十六条  請求の放棄又は認諾は、口頭弁論等の期日においてする。
2  請求の放棄又は認諾をする旨の書面を提出した当事者が口頭弁論等の期日に出頭しないときは、裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官は、その旨の陳述をしたものとみなすことができる。
(和解調書等の効力)
第二百六十七条  和解又は請求の放棄若しくは認諾を調書に記載したときは、その記載は、確定判決と同一の効力を有する。

民事訴訟規則
(当事者が裁判所に提出すべき書面の記載事項)
第二条 訴状、準備書面その他の当事者又は代理人が裁判所に提出すべき書面には、次に掲げる事項を記載し、当事者又は代理人が記名押印するものとする。
一  当事者の氏名又は名称及び住所並びに代理人の氏名及び住所
二  事件の表示
三  附属書類の表示
四  年月日
五  裁判所の表示
2  前項の規定にかかわらず、当事者又は代理人からその住所を記載した同項の書面が提出されているときは、以後裁判所に提出する同項の書面については、これを記載することを要しない。
(裁判所に提出すべき書面のファクシミリによる提出)
第三条 裁判所に提出すべき書面は、次に掲げるものを除き、ファクシミリを利用して送信することにより提出することができる。
一  民事訴訟費用等に関する法律(昭和四十六年法律第四十号)の規定により手数料を納付しなければならない申立てに係る書面
二  その提出により訴訟手続の開始、続行、停止又は完結をさせる書面(前号に該当する書面を除く。)
三  法定代理権、訴訟行為をするのに必要な授権又は訴訟代理人の権限を証明する書面その他の訴訟手続上重要な事項を証明する書面
四  上告理由書、上告受理申立て理由書その他これらに準ずる理由書
2  ファクシミリを利用して書面が提出されたときは、裁判所が受信した時に、当該書面が裁判所に提出されたものとみなす。
3  裁判所は、前項に規定する場合において、必要があると認めるときは、提出者に対し、送信に使用した書面を提出させることができる。
(訴状の記載事項・法第百三十三条)
第 五十三条 訴状には、請求の趣旨及び諸求の原因(請求を特定するのに必要な事実をいう。)を記載するほか、請求を理由づける事実を具体的に記載し、かつ、立証を要する事由ごとに、当該事実に関連する事実で重要なもの及び証拠を記載しなければならない。
2  訴状に事実についての主張を記載するには、できる限り、請求を理由づける事実についての主張と当該事実に関連する事実についての主張とを区別して記載しなければならない。
3  攻撃又は防御の方法を記載した訴状は、準備書面を兼ねるものとする。
4  訴状には、第一項に規定する事項のほか、原告又はその代理人の郵便番号及び電話番号(ファクシミリの番号を含む。)を記載しなければならない。
(最初の口頭弁論期日の指定・法第百三十九条)
第 六十条 訴えが提起されたときは、裁判長は、速やかに、口頭弁論の期日を指定しなければならない。ただし、事件を弁論準備手続に付する場合(付することについて当事者に異議がないときに限る。)又は書面による準備手続に付する場合は、この限りでない。
2  前項の期日は、特別の事由がある場合を除き、訴えが提起された日から三十日以内の日に指定しなければならない。
証拠の申出・法第百八十条)
第 九十九条 証拠の申出は、証明すべき事実及びこれと証拠との関係を具体的に明示してしなければならない。
2  第八十三条(準備書面の直送)の規定は、証拠の申出を記載した書面についても適用する。

民事訴訟費用等に関する法律
(申立ての手数料)
第三条  別表第一の上欄に掲げる申立てをするには、申立ての区分に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる額の手数料を納めなければならない。
(訴訟の目的の価額等)
第四条  別表第一において手数料の額の算出の基礎とされている訴訟の目的の価額は、民事訴訟法第八条第一項及び第九条 の規定により算定する。
2  財産権上の請求でない請求に係る訴えについては、訴訟の目的の価額は、百六十万円とみなす。
 財産権上の請求に係る訴えで訴訟の目的の価額を算定することが極めて困難なものについても、同様とする。
3  一の訴えにより財産権上の請求でない請求とその原因である事実から生ずる財産権上の請求とをあわせてするときは、多額である訴訟の目的の価額による。
(予納義務)
(裁判所書記官が保管する記録の閲覧、謄写等の手数料)
第七条  別表第二の上欄に掲げる事項の手数料は、同表の下欄に掲げる額とする。
(過納手数料の還付等)
第九条  手数料が過大に納められた場合においては、裁判所は、申立てにより、決定で、過大に納められた手数料の額に相当する金額の金銭を還付しなければならない。
第十二条  前条第一項の費用を要する行為については、他の法律に別段の定めがある場合及び最高裁判所が定める場合を除き、裁判所は、当事者等にその費用の概算額を予納させなければならない。
2  裁判所は、前項の規定により予納を命じた場合においてその予納がないときは、当該費用を要する行為を行なわないことができる。
(郵便切手等による予納)
第十三条  裁判所は、郵便物の料金又は民間事業者による信書の送達に関する法律(平成十四年法律第九十九号)第二条第六項に規定する一般信書便事業者若しくは同条第九項に規定する特定信書便事業者の提供する同条第二項に規定する信書便の役務に関する料金に充てるための費用に限り、金銭に代えて郵便切手又は最高裁判所が定めるこれに類する証票(以下「郵便切手等」という。)で予納させることができる。

民事執行法
(債務名義)
第二十二条  強制執行は、次に掲げるもの(以下「債務名義」という。)により行う。
一  確定判決
二  仮執行の宣言を付した判決

巻末資料@
訴訟物の価額(訴額)の算定基準(基本的なもの)
基本原則
1. 訴えで主張する利益が基準になる(民訴8条)。
2. 1つの訴えで複数の請求をする場合は合算する(民訴9条1項)。
3. 損害金等の付帯請求は入れない(民訴9条2項)。
4. 財産上の請求でない場合(離婚、認知、嫡出否認の訴え、)、算定困難な場合(市民全体のための住民訴訟、自治体の監査請求)は160万円とする(民事訴訟費用法4条2項)。
5. 一の訴えにより財産権上の請求でない請求とその原因である事実から生ずる財産権上の請求とをあわせてするときは、多額である訴訟の目的の価額による(民事訴訟費用法4条3項、離婚の訴え160万円と慰謝料請求の額の多いほう)等

昭和31.12.12 最高裁判所民事甲第412号民事局長通知
平成6.3.28 最高裁判所民2第389号民事局長通知
平成6.3.28 最高裁判所民2第79号民事局長通知

訴訟物たる権利の種別、訴訟物の価格
所有権、目的たる物の価格
占有権、目的たる物の価格の3分の1
地上権・永小作権・賃借権、目的たる物の価格の2分の1
地役権、承役地の物の価格の3分の1
担保物権
 優先順位の担保物権がない場合
 ・ 被担保債権の金額
 ・ 目的たる物の価格が被担保債権の金額に達しないときは、物の価格
 優先順位の担保物権がある場合
 ・ 被担保債権の金額
 ・ 目的たる物の価格に優先順位の担保物権を考慮して修正を加えた金額が被担保債権の金額に達しないときは、その修正金額
金銭支払請求権
 ・ 請求金額
 ・ 将来の給付を求めるものは、請求金額から中間利息を控除した金額
物の引渡し(明渡し)請求権
 所有権に基づく場合、目的たる物の価格の2分の1
 占有権に基づく場合、目的たる物の価格の3分の1
 地上権・永小作権・賃借権に基づく場合、目的たる物の価格の2分の1
 賃貸借契約の解除等による場合、目的たる物の価格の2分の1
所有権移転登記請求権、目的たる物の価格
詐害行為取消し
 ・ 原告の債権の金額
 ・ 取り消される法律行為の目的の価格が原告の債権の金額に達しないときは、法律行為の目的の価格
境界確定、係争地域の物の価格


1. 物の価格とは、
@ 地方税法349条の規定による基準年度の価格のあるものについては、その価格(固定資産税の評価額。課税標準額ではない)、但し、土地を目的とする訴訟については、平成6年4月1日から当分の間、その目的たる物の価格に2分の1を乗じて得た金額を基準とする
A  その他の物については、取引価格とする
2.  上訴(附帯上訴を含む)の場合は不服を申し出た限度で訴訟物の価額を算定する。
3. 会社設立無効、株主総会の決議の取消し・無効確認等の訴えは、財産権上の請求でない訴えとして取り扱う
4.  この基準は、参考資料であって、訴訟物の価額に争いがあるとき等の基準にはならない。
5.  価格の認定に関しては、基準年度の価格について所管公署のこれを証明する固定資産評価証明書を提出する等の方法により、適宜、当事者が証明すること。

巻末資料A

手数料額早見表(単位:円)
手数料
訴額等 訴状 支払い督促 借地非訟 民事調停(労働審判)、控訴上告
10万まで 1、000 500 400 500 1、500 2、000
20万2、000 1、000 800 1、000 3、000 4、000
30万3、000 1、500 1、200 1、500 4、500 6、000
40万4、000 2、000 1、600 2、000 6、000 8、000
50万5、000 2、500 2、000 2、500 7、500 10、000
60万6、000 3、000 2、400 3、000 9、000 12、000
70万7、000 3、500 2、800 3、500 10、500 14、000
80万8、000 4、000 3、200 4、000 12、000 16、000
90万9、000 4、500 3、600 4、500 13、500 18、000
100万10、000 5、000 4、000 5、000 15、000 20、000
120万11、000 5、500 4、400 5、500 16、500 22、000
140万12、000 6、000 4、800 6、000 18、000 24、000
160万13、000 6、500 5、200 6、500 19、500 26、000
180万14、000 7、000 5、600 7、000 21、000 28、000
200万15、000 7、500 6、000 7、500 22、500 30、000
220万16、000 8、000 6、400 8、000 24、000 32、000
240万17、000 8、500 6、800 8、500 25、500 34、000
260万18、000 9、000 7、200 9、000 27、000 36、000
280万19、000 9、500 7、600 9、500 28、500 38、000
300万20、000 10、000 8、000 10、000 30、000 40、000
320万21、000 10、500 8、400 10、500 31、500 42、000
340万22、000 11、000 8、800 11、000 33、000 44、000
360万23、000 11、500 9、200 11、500 34、500 46、000
380万24、000 12、000 9、600 12、000 36、000 48、000
400万25、000 12、500 10、000 12、500 37、500 50、000
420万26、000 13、000 10、400 13、000 39、000 52、000
440万27、000 13、500 10、800 13、500 40、500 54、000
460万28、000 14、000 11、200 14、000 42、000 56、000
480万29、000 14、500 11、600 14、500 43、500 58、000
500万30、000 15、000 12、000 15、000 45、000 60、000
550万32、000 16、000 12、800 16、000 48、000 64、000
600万34、000 17、000 13、600 17、000 51、000 68、000
650万36、000 18、000 14、400 18、000 54、000 72、000
700万38、000 19、000 15、200 19、000 57、000 76、000
750万40、000 20、000 16、000 20、000 60、000 80、000
800万42、000 21、000 16、800 21、000 63、000 84、000
850万44、000 22、000 17、600 22、000 66、000 88、000
900万46、000 23、000 18、400 23、000 69、000 92、000
950万48、000 24、000 19、200 24、000 72、000 96、000
1、000万50、000 25、000 20、000 25、000 75、000 100、000
1、100万53、000 26、500 21、200 26、200 79、500 106、000
1、200万56、000 28、000 22、400 27、400 84、000 112、000
1、300万59、000 29、500 23、600 28、600 88、500 118、000
1、400万62、000 31、000 24、800 29、800 93、000 124、000
1、500万65、000 32、500 26、000 31、000 97、500 130、000
1、600万68、000 34、000 27、200 32、200 102、000 136、000
1、700万71、000 35、500 28、400 33、400 106、500 142、000
1、800万74、000 37、000 29、600 34、600 111、000 148、000
1、900万77、000 38、500 30、800 35、800 115、500 154、000
2、000万80、000 40、000 32、000 37、000 120、000 160、000
2、100万83、000 41、500 33、200 38、200 124、500 166、000
2、200万86、000 43、000 34、400 39、400 129、000 172、000
2、300万89、000 44、500 35、600 40、600 133、500 178、000
2、400万92、000 46、000 36、800 41、800 138、000 184、000
2、500万95、000 47、500 38、000 43、000 142、500 190、000
2、600万98、000 49、000 39、200 44、200 147、000 196、000
2、700万101、000 50、500 40、400 45、400 151、500 202、000
2、800万104、000 52、000 41、600 46、600 156、000 208、000
2、900万107、000 53、500 42、800 47、800 160、500 214、000
3、000万110、000 55、000 44、000 49、000 165、000 220、000
3、100万113、000 56、500 45、200 50、200 169、500 226、000
3、200万116、000 58、000 46、400 51、400 174、000 232、000
3、300万119、000 59、500 47、600 52、600 178、500 238、000
3、400万122、000 61、000 48、800 53、800 183、000 244、000
3、500万125、000 62、500 50、000 55、000 187、500 250、000
3、600万128、000 64、000 51、200 56、200 192、000 256、000
3、700万131、000 65、500 52、400 57、400 196、500 262、000
3、800万134、000 67、000 53、600 58、600 201、000 268、000
3、900万137、000 68、500 54、800 59、800 205、500 274、000
4、000万140、000 70、000 56、000 61、000 210、000 280、000
4、100万143、000 71、500 57、200 62、200 214、500 286、000
4、200万146、000 73、000 58、400 63、400 219、000 292、000
4、300万149、000 74、500 59、600 64、600 223、500 298、000
4、400万152、000 76、000 60、800 65、800 228、000 304、000
4、500万155、000 77、500 62、000 67、000 232、500 310、000
4、600万158、000 79、000 63、200 68、200 237、000 316、000
4、700万161、000 80、500 64、400 69、400 241、500 322、000
4、800万164、000 82、000 65、600 70、600 246、000 328、000
4、900万167、000 83、500 66、800 71、800 250、500 334、000
5、000万170、000 85、000 68、000 73、000 255、000 340、000
5、100万173、000 86、500 69、200 74、200 259、500 346、000
5、200万176、000 88、000 70、400 75、400 264、000 352、000
5、300万179、000 89、500 71、600 76、600 268、500 358、000
5、400万182、000 91、000 72、800 77、800 273、000 364、000
5、500万185、000 92、500 74、000 79、000 277、500 370、000
5、600万188、000 94、000 75、200 80、200 282、000 376、000
5、700万191、000 95、500 76、400 81、400 286、500 382、000
5、800万194、000 97、000 77、600 82、600 291、000 388、000
5、900万197、000 98、500 78、800 83、800 295、500 394、000
6、000万200、000 100、000 80、000 85、000 300、000 400、000
6、100万203、000 101、500 81、200 86、200 304、500 406、000
6、200万206、000 103、000 82、400 87、400 309、000 412、000
6、300万209、000 104、500 83、600 88、600 313、500 418、000
6、400万212、000 106、000 84、800 89、800 318、000 424、000
6、500万215、000 107、500 86、000 91、000 322、500 430、000
6、600万218、000 109、000 87、200 92、200 327、000 436、000
6、700万221、000 110、500 88、400 93、400 331、500 442、000
6、800万224、000 112、000 89、600 94、600 336、000 448、000
6、900万227、000 113、500 90、800 95、800 340、500 454、000
7、000万230、000 115、000 92、000 97、000 345、000 460、000
7、100万233、000 116、500 93、200 98、200 349、500 466、000
7、200万236、000 118、000 94、400 99、400 354、000 472、000
7、300万239、000 119、500 95、600 100、600 358、500 478、000
7、400万242、000 121、000 96、800 101、800 363、000 484、000
7、500万245、000 122、500 98、000 103、000 367、500 490、000
7、600万248、000 124、000 99、200 104、200 372、000 496、000
7、700万251、000 125、500 100、400 105、400 376、500 502、000
7、800万254、000 127、000 101、600 106、600 381、000 508、000
7、900万257、000 128、500 102、800 107、800 385、500 514、000
8、000万260、000 130、000 104、000 109、000 390、000 520、000
8、100万263、000 131、500 105、200 110、200 394、500 526、000
8、200万266、000 133、000 106、400 111、400 399、000 532、000
8、300万269、000 134、500 107、600 112、600 403、500 538、000
8、400万272、000 136、000 108、800 113、800 408、000 544、000
8、500万275、000 137、500 110、000 115、000 412、500 550、000
8、600万278、000 139、000 111、200 116、200 417、000 556、000
8、700万281、000 140、500 112、400 117、400 421、500 562、000
8、800万284、000 142、000 113、600 118、600 426、000 568、000
8、900万287、000 143、500 114、800 119、800 430、500 574、000
9、000万290、000 145、000 116、000 121、000 435、000 580、000
9、100万293、000 146、500 117、200 122、200 439、500 586、000
9、200万296、000 148、000 118、400 123、400 444、000 592、000
9、300万299、000 149、500 119、600 124、600 448、500 598、000
9、400万302、000 151、000 120、800 125、800 453、000 604、000
9、500万305、000 152、500 122、000 127、000 457、500 610、000
9、600万308、000 154、000 123、200 128、200 462、000 616、000
9、700万311、000 155、500 124、400 129、400 466、500 622、000
9、800万314、000 157、000 125、600 130、600 471、000 628、000
9、900万317、000 158、500 126、800 131、800 475、500 634、000
1億0、000万320、000 160、000 128、000 133、000 480、000 640、000
※ 訴額等が1億円を超える場合の手数料の額については,各裁判所の窓口等にお尋ねください。

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