新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.968、2010/1/26 11:36 https://www.shinginza.com/jitsumu.htm

法の支配と民事訴訟実務入門(平成21年8月4日改訂)
【総論12、争点整理、証拠調べ、口頭弁論準備手続、準備的口頭弁論、書面による準備手続、文書提出命令、当事者照会、自由心証主義、適時提出主義、書証、検証、証人尋問、本人尋問、鑑定。】

Q:事業をしている友人に500万円の貸金請求の民事訴訟を起こしましたが、貸与、返済が何度かに分けて行われ期間的にも長く複雑になっていますし証拠も十分ではありません。手続きはどのようになるでしょうか。証拠の収集、証拠調べはどのように行われるのですか、注意点はあるでしょうか。不安なので教えてください。

A:
1. (争点整理について。)平成10年1月民事訴訟法が審議を重ね種々の点について70年ぶりに大改正され施行されました。新民事訴訟法と言われています。民事訴訟の基本構造は変わっていませんが、その目的は私的紛争を今までよりさらに適正・迅速に解決し(民訴2条)国民の裁判を受ける権利を実質的に保障し、「法の支配」の理念をさらに民事訴訟手続に生かそうとするものです。「法の支配」の理念は、もともとは統治機構に関する法原則ですが、これを発展・具体化していく過程で、民事訴訟の分野においても、その趣旨を生かしていく必要が生じたと考えられます。本件のように争点が多く、その他主張、証拠の整理の必要な私的紛争については審理の基本手続きである口頭弁論手続きのほかに争点、証拠整理のために旧手続きを改正して次の三制度を用意しました。文言上似かよっていて紛らわしいですが@準備的口頭弁論(164条以下)A口頭弁論準備手続き(民訴168条)、B書面による準備手続(民訴175条)です。本件は事件の内容上裁判所の指示(決定)で口頭弁論準備手続きに付されて争点、主張、証拠の整理を行うことになると思います。
2. (証拠収集方法について。)私的自治の原則、弁論主義から証拠の収集は、当事者の責任にまかせられていますが訴訟開始後適正、迅速な解決のために当事者は裁判所を通じ又は独自に証拠を収集することができます。前記した証拠保全(民訴234条)のほか、書証についての文書提出命令(民訴219条以下)、当事者照会(民訴163条、新民訴により新設)調査の嘱託(民訴186条)文書送付の嘱託(民訴226条)等があります。
3. (証拠の提出時期、取り調べ方式について。)集まった証拠の提出は弁論主義から当事者の責任であり何時提出してもいいはずですが、迅速低廉な裁判のため適切な時期に提出しなければならず(適時提出主義。民訴156条。迅速性のための改正されました)、適切な時期に遅れた主張、証拠は却下されます(民訴158条。時期に遅れた攻撃防御方法の却下)。証拠調べは集中審理により行われます(民訴182条)。
4.  (証拠の判断方法について。) 法の支配を実現するために司法権は裁判所が独占していますから(憲法76条)証拠調べによる証拠価値の判断、それに基づく事実認定は裁判官の自由な心証形成にゆだねられています(民訴247条。自由心証主義)。
5. (証拠調手続きの種類。)公正な裁判を維持するため当事者が申し出る証拠調べは、対象が物(物証)である書証(民訴219条)、検証(232条)と対象が人(人証)である証人尋問(民訴190条)、当事者尋問(民訴207条)、鑑定(民訴212条)、に分けられますが、その手続きについてご説明します。

解説
1. 貴方の500万円の貸金請求は、貸与、返済が繰り返されておりどの消費貸借を認め否認するのか、弁済、時効、放棄等抗弁の内容について原告被告の主張、証拠調べを整理し争点を明らかにする必要があります。国民の裁判を受ける権利を実質的に保障し適正迅速に私的紛争を解決する必要がありますので(憲法32条)、民事訴訟は口頭弁論手続きを基本としていますが、平成10年民事訴訟法改正を経て、公開の法廷で準備書面、証拠を互いに、順番に提出して進行する手続き(五月雨審理と言われています)よりも、争点、主張、証拠の整理をまず行い、その後集中して証拠調べを行う手続き(集中証拠調べ、民訴182条)を、事件の内容に応じて裁判所が用いるようになっています。

2. 貴方の場合は、弁論準備手続きが行われると思います。貴方の意見も聴き裁判所が決めるのですが、弁論準備手続とは非公開で、当事者、裁判所が争点、主張、立証を整理し適正・迅速な裁判を実現しようとするものです。
 従来の口頭弁論方式では当事者に主体性を認め、準備書面の提出・反論の繰り返しが行われ、結果として数多い争点が明らかにならず時間を浪費し、証拠調べによる事実認定も適正さを欠く恐れがありました。これを是正しようとする手続き(例えば、弁論兼和解等)もあったのですが、うまく機能していたとは言えなかったでしょう。
 弁論準備手続は、裁判所と当事者が直接又は電話会議により話し合い、争点や証拠の整理を行い、口頭弁論の進行を円滑にすすめるための準備を行う手続です。この手続は非公開ですが、準備書面の提出、書証(文書の証拠調べ)を行うことができますし、法廷ではありませんから手続き、内容について裁判官、相手方に自由に意見を言って構いません。そのための制度です。公開を原則とする口頭弁論の原則に反するように見えますが、当事者の申し出により傍聴も可能であり(民訴169条)、弁論準備手続の結果を口頭弁論で陳述するようにすることで、口頭弁論の原則との調和を図っています(民訴173条)。手続の実効性を確保するため、争点整理後の主張立証が一部制限されます(民訴174条、167条)。弁論準備手続は、争点証拠整理手続(民訴法3章3節)の中で、最も頻繁に利用されています。

3.   その他、争点証拠整理手続きとして、準備的口頭弁論手続(民訴164条)があります。この手続きは、口頭弁論の基本を維持しながら特殊な事件について主張、立証を行いながら争点証拠を整理し適正な裁判を実現しようとするものです。争点証拠整理が目的ですから当事者が公開の法廷で自由に意見を交わしあう、複数当事者訴訟(例えば貸金の相手方が複数いる共同訴訟の場合)、傍聴の必要性が高い労働事件、日の丸君が代訴訟等の政策形成訴訟(訴訟により国家の政策を喚起していこうとする特殊訴訟)に合うといわれており、法廷も円卓のテーブルが用意されています。この手続きは争点整理を中心に行うため後の主張、証拠の提出が制限されます(民訴167条)。従って、本件のような貴方の訴訟には向かないと思います。

4.   次に、遠隔地間の当事者の訴訟手続きについて争点、証拠を整理する書面による準備手続きがあります(民訴175条)。口頭弁論の原則からいえば遠距離であっても裁判所、当事者の日程を調整し時間をかけて主張、立証を行うことになりますが、これでは、迅速性、訴訟経済性から実質的に当事者の裁判を受ける権利を奪うことになります。そこで、当事者双方とも裁判所に出頭することなく、準備書面の提出、書証による文書の写しの提出によって主張、立証を行い電話会議システム(裁判官と交互に電話で話し合いをする)にて争点、証拠の整理を行うものです。口頭弁論の原則は、その後の口頭弁論における争点となる事実の確認、準備手続きの要約書面の提出で(民訴178条4項、165条2項)調和を図っています。争点整理ですからその後の攻撃防御方法が制限されます(178条)。貴方の場合も遠隔地の訴訟であれば利用も可能であると考えられます。

5.   証拠の収集についてお尋ねですが、私的自治の原則、弁論主義から証拠は貴方が、自分で探し整理して提出するのが原則です。しかし、弁論主義の真の目的は理にかなった適正な裁判、解決ですから、訴え提起後は公正な理由がある場合貴方の証拠収集に裁判所も協力しいろいろな制度を認めています。証拠保全手続きについては起訴前手続きで説明しましたので省き説明します。

6.  文書提出命令(民訴219条以下)。貴方が、紛失等により繰り返された金銭貸借の書類を所持せず、相手方が保管しているようであればこの手続きを利用してはどうでしょう。民訴改正により、文書の提出義務を証人の出廷義務と同じように一般義務化しました(民訴219条4項)。適正、迅速な裁判を実現するためです。形式的に弁論主義を適用していくとどうしても相手方、第三者が所持する文書を強制的に法廷に持ち出すことができませんから公正、迅速な判断ができません。しかし、書証は証拠調べの王様といわれるように文書は客観性、信用性が強く適正な訴訟には不可欠です。そこで、法の支配(弁論主義)の理想に立ち戻り真実発見のため特に文書所持者に提出による正当な理由(法的不利益、社会生活活動上の具体的不利益の存在。可能性では不十分です)がない限り提出義務を認め、破棄し、又提出しないと事実認定での不利益、制裁(第三者への過料処分)を科しています(民訴224条、225条)。金銭消費貸借の契約書、借用書、領収書の不足分については219条1項3号「は挙証者と文書の所持者との間の法律関係について作成された文書」に該当しますので請求してください。

7.    
  【書式  文書提出命令申立書】
        文書提出命令申立書
東京地方裁判所民事  部御中
平成20年3月17日
 原告  氏    名
          被告  氏    名
    上記当事者間の御庁平成20年(ワ)第354号貸金請求訴訟について、下記文書の提出命令を発せられたく申し立て致します。
          原告  氏    名   印
1. 文書の表示。平成16年6月17日付の400万円の金銭消費貸借契約書。同日付200万円の領収書。

2. 文書の趣旨。原被告間で作られた400万円の契約書であり400万万円受領の事実及び領収書にはその時期までの貸金残金総額が記載されている。

3. 文書の所持者。 被告 
氏名   名 前
住所   住 所 
4. 証明すべき事実。原告主張する平成16年6月17日の金銭消費貸借についての請求原因事実及びその時期までの残金総額を証明する。
5. 文書提出義務の原因。 当該契約書、領収書は、貸主、借主の消費貸借のために作成されたものであり民訴219条1項3号に該当する。
                  以上。

8.     当事者照会手続き(民訴163条、新民事訴訟法により新設。)。
@ この制度は、訴訟の当事者が裁判所の手続きを使わず自分の主張立証を準備するために必要な事項について、自ら相手方に照会し回答を得ようとするものです。訴え提起前は前記したように訴え予告通知制度(民訴132条の2、平成15年改正の予告制度は、照会制度を文書提出命令の改正とともに訴え提起前に拡充したものです)がありますがこの手続きは訴え提起後に認められます。当事者主義、弁論主義からいえば、訴訟資料の収集は自己責任ですから相争っている当事者が相手方に対して自らの訴訟資料の準備に協力せよというのもおかしいように思います。しかし、当事者主義、弁論主義の根拠は、私的自治の原則にあり、私的自治の原則の根源は、法の支配による個人の尊厳確保、適正、公正な法秩序の維持発展にありますから、私的自治の原則、当事者主義、弁論主義には必ず権利濫用禁止、信義誠実の原則が内在するのです(憲法12条、民法1条、2条、その他の法律の総則条文)。民事訴訟は契約関係ではありませんが、私的紛争について公的機関を利用して解決しようとするもので訴訟の特殊な法律関係(訴訟法律関係か法律状態か議論があります)が社会生活上生じており、この関係も私的自治の原則が支配し規律を受けることになるわけです。従って、適正、迅速な紛争解決のため相手方は、法的、社会的に見て正当な理由がなければ(民訴163条1項各号参照)これを拒絶することはできません。しかし、拒絶してもそれによる効果、罰則等はなく後に裁判官の自由心証形成の過程で事実上の不利益を受けるだけですが、訴訟開始の文書提出命令の一般義務化(前述)でその不都合を事実上補っています。このようにして訴訟提起前の予告通知制度とバランスをとっています。
A この制度の趣旨から、照会の対象は広く直接事実間接事実等主張立証に必要な事項一切です。訴訟の資料、情報が一方的に偏っている労災事故における現場の一切の資料、交通事故の運転者側の事情、医療過誤における病院側の資料確保に有効でしょう。
B 本件でいえば、各個別的貸金について、弁済、放棄、時効、承認に関して資金の調達方法、預金方法、債権放棄の具体的理由、債務承認に至る過程について照会が可能です。このような照会は、事実上準備書面により釈明を求めることもできますので、訴訟開始の早い段階で利用することになるでしょう。照会は文書でしなければなりませんが内容証明、FAXでもできます。

 【書式  当事者照会書】
      民事訴訟法163条による訴訟当事者照会書
被告  住所 
氏名 
電話番号      FAX番号      
平成20年3月17日
 原告  氏    名
          被告  氏    名
    上記当事者間の東京地方裁判所民事  部平成20年(ワ)第354号貸金請求訴訟に関して、下記事項について照会致しますので宜しくお願い致します。
          原告   住所
 氏    名   印
電話番号、 FAX番号
1. 照会事項。
平成16年6月17日付の400万円の金銭消費貸借契約書に基づき被告が得た資金の取引先への弁済額と取引先の住所、名前。平成16年10月19日付同日付200万円の弁済資金拠出先。拠出した預金口座名。
原告被告間の金銭消費貸借、及び返済の回数、日時、場所。金銭受け渡しを担当した者の所属、氏名、住所。

2. 照会の必要性。本件訴訟は、原告が、被告に対し長期間にわたり事業資金を繰り返し貸借したものであり残金債権の額を確定するために契約、返済、放棄、減額の日時、担当者、場所、資金拠出処の特定が必要である。  
3. 本件照会に関する回答期限。本文書到達から20日以内にお願い致します。
                      以上

9.     さらに裁判所による調査の嘱託(民訴186条)があります。
@ 弁論主義から証拠の収集は当事者の責任ですが、当事者が提出した主張、証拠により簡易に裁判所が調査できる事項については当事者の申し立てまたは職権で第三者機関に調査を依頼(嘱託)できることにしています。訴訟の理想である適正な裁判にもつながりますし、当事者の公平性にも反することがなく迅速低廉な手続き進行にも役立つからです。この内容は、証人(ある日程の気象条件)、書証(取引所の価格)に事実上該当するもの、法規、経験則、慣習(取引所の商慣習)を確認するものなど様々ですが公平上容易に調査できるものに解釈上限定されています。
A 貴方の場合であれば被告の現金手渡しに事実、弁済の抗弁としての資金の流れをつかむために銀行等金融機関の取引履歴について調査の嘱託が可能です。

       【書式 調査嘱託申立書】
調査嘱託申立書
東京地方裁判所 民事  部
平成20年   月  日
 原告  氏    名
          被告  氏    名
    上記当事者間の東京地方裁判所民事  部平成20年(ワ)第354号貸金請求訴訟に関して、下記事項について調査の嘱託を申し立てます。
          原告   
 氏    名     印

1. 証明する事実。被告と嘱託先国民金融公庫との取引関係。

2. 嘱託先 国民金融公庫大手町支店。住所。

3. 嘱託事項。平成16年1月1日から3年間の嘱託先国民金融公庫と被告の取引履歴。
  
本件照会に関する回答期限。本文書到達から20日以内にお願い致します。
                           以上

10.    さらに文書送付の嘱託(民訴226条)があります。この手続きは、証拠調べで一番重要な書証の収集について裁判所を介して第三者機関に嘱託(依頼)という形をとり行うものです。弁論主義は証拠収集を当事者の責任としていますが、証拠資料を当事者が特定している限り収集方法について嘱託という方法で関与しても当事者の公平に反しませんし、むしろ適正、迅速な紛争解決につながり認められています。裁判所としても国民の裁判を受ける権利を実効ならしめるため手続き上紛争の解決に協力することは当然です。継続裁判所以外の公的機関、裁判所(事件記録)、法務局(登記記録等)、公証役場(作成書類)、警察署、検察庁(刑事、少年事件記録)、官公庁等に対して嘱託がなされており活用されています。取り寄せた文書は、裁判所の連絡を受けて書証として正式に裁判所、相手方に提出することになります。

  【書式   文書送付嘱託申立書】

        文書送付嘱託申立書
東京地方裁判所 民事  部
平成20年 3 月 1 日
 原告  氏    名
          被告  氏    名
    上記当事者間の東京地方裁判所民事  部平成20年(ワ)第354号貸金請求訴訟に関して、下記文書について送付嘱託を申し立てます。
          原告   
 氏    名     印

1. 文書の表示。 平成18年7月10日作成、債権者 何某、債務者何某の債務弁済契約公正証書
2. 文書の所持者。東京銀座公証役場。住所。 
3. 証明すべき事実。 公正証書作成後の被告の債務の返済状況を証明する。

                           以上

11.  裁判官による証拠の価値判断の原則は自由心証主義です。自由心証主義とは、当事者が主張した要件事実を当事者が提出した証拠の価値判断を行い認定し、法律を解釈して適用する過程をすべて担当する裁判官に任せるという考え方です。前もって証拠の価値判断の方式を決めておく立場(法定証拠主義)と対比されます。裁判官を拘束するのは全人格的思想、良心、そして公正な法律(法の支配)だけです。これが裁判官の独立、司法権の独立です(憲法76条)。たとえ内閣総理大臣でも裁判官の自由な価値判断に介入できません。自由心証主義がとられる理由は、争点の真実発見に一番近いということです。紛争、事件は似通っていても同一のものはありませんから紛争事実の認定、公正な法規の解釈は事件に直接関与した裁判官の自由な価値判断に任せるのが最適なのです。前もって証拠の価値判断の方式を決めておくことは事件に対する柔軟で公正な判断ができない危険があり採用できません。立証する貴方も担当裁判官の態度、釈明、訴訟指揮を謙虚に受け止め真摯に立証活動をしなければなりません。

12.   証拠の適時提出主義、時期に遅れた攻撃防御方法の制限。集めた証拠は、弁論主義から提出時期については当事者の判断に任せられるようにも思いますが(改正前は随時提出主義が採用されていました)、適正、公平、迅速な解決のためには事実認定に適切な時期に提出する必要があり新民事訴訟法により改正されています。これに伴い争点証拠整理を明確にして、証拠調べも集中証拠調べ(民訴182条。1日に当事者本人、証人を続けて取り調べをする)の方式を採用しています。従って、適切な時期に提出しない証拠の採用は却下の可能性があります。準備手続、適時提出主義、集中証拠調べは一体の関係にあります。新民事訴訟法は、当事者主義を是正し訴訟指揮権を充実させ適正、迅速な紛争解決を実質的に目指しています。

13.   お尋ねの証拠調べ手続きの種類についてご説明します。物証と人証に分けます。

14.   書証(民訴219条以下)。裁判官が、文書の意味内容を理解するための証拠調べを言います。調べる対象が物でもその形状、性状をしらべる検証とは違います。
@ 文書は客観性、明確性、信憑性が高く書証は証拠調べの王様、中核です。
A 文書の提出方法は当該文書の写しを正本副本2通送付、提出して裁判所で原本を確認します。証拠の認否手続きについては述べましたので繰り返しません。後は裁判官の自由な判断に任せられます。しかし、裁判官も(ワ)号貸金請求事件なら東京地裁でいえば最低でも100件以上持っていますから、貴方の事件に特に注目していませんので書証を見て中立的な裁判官が分かりやすく500万円勝訴の判決文を書きやすいようにしておかなければなりません。和解の勧告の額も異なります。証拠の価値判断は担当裁判官の自由なのです。従って、説明書には、以下の事項について明らかにすることになります。
B 証拠の提出には証拠説明書が必要です(規則137条)。訴状、答弁書等準備書面に記載してもいいですが、通常、証拠が多い場合は証拠説明書という書面を作って提出します。

       【書式 証拠説明書】
       証拠説明書
東京地方裁判所 民事 部御中
平成20年(ワ)第450号、貸金請求事件
             原 告   氏   名
             被 告   氏   名
上記事件についての証拠説明を致します。
             原告    氏   名   印

号証、証拠標目(原本、写しの別)、作成年月日、作成者、  立証趣旨
   
甲1 借用書 、(原本)、18,6,10、 被告、(18,6,10、600万円の金銭消費貸借が成立したことの事実)

甲2 領収書、 (写し)、 19,3,3  原告、(作成年月日に200万円返済し残金が500万円であるという事実)

写真についての記載方法。文書の説明書に追加して以下の説明事項が
記載してある必要があります。勿論、別個の書面として作成しても
かまいません。要は、裁判官が証拠を特定判断しやすいように記載し
ます。その場合、証拠説明書(写真)という表題を付けて作成してく
ださい。写真自体は文書と同じようにA4用紙に貼り付けて写真ごと
に番号を付けて正本副本2通、控えを作成提出します。

        証拠説明書(写真)
    説明事項    内容
    号証      甲7号証(1−6)
    証拠の標目    写真 
       撮影の対象   原告住まいのアパート及び室内
    撮影日時    平成19年5月1日
    撮影者     原告
撮影の場所   葛飾区新小岩2−4−1 
    立証趣旨    原告の質素な生活状況から平成19年12月1日の200万円の交付は貸与したものであり贈与したものではないという事実。
    以上の事項が記載されてあればいいので順番、記載位置は自由
です。

15.   (検証)。例えば、貴方が持っている300万円の借用書の筆跡がそもそも被告の筆跡と同一であるかどうか裁判官が他の手紙、領収書等文書と比較して調べることを検証と言います(比較文書がなければ文書提出命令、文書送付嘱託を併用することになります)。後述のように筆跡鑑定を行う専門家の意見を聞くと鑑定になります(民訴233条の内容です)。その上で借用書の名義人の意思で作成されたかどうか(文書の形式的証拠力)、さらにその内容が真実かどうか(実質的証拠力)を調べるのは書証です。民訴229条は、文書の成立を判断する方法として筆跡、印影の比較対照方法を定めていますが、その内容は文書の検証手続きを規定しています。すなわち、検証により文書の成立を判断するという書証を規定しているのです(2つの証拠調べを規定)。複雑ですが基本的理解が必要です。テープ、CDで、その意味内容を調べるのは書証(民訴231条 書証に準ずる。準文書です)となり、テープ、CDの音声が誰の音声と一致するかを調べるのは検証です(民訴232条、233条)。すなわち検証とは、証拠調べの対象物の形状、性状を裁判官の五感の作用で調べるものです。調べる対象がモノであり書証と似ていますが物に表示されている作成者の意思内容を調べるものではないですが、むしろ裁判官の判断の前提事項にあたりますので公正な裁判には欠かせません。交通事故の場合の現場を裁判官が実際に見に行くことが典型例です(現場検証)。供述と異なり対象が物ですから客観性、不変性があり証拠力の程度は高いわけです。公正な裁判を実現するため書証と同じような理由から関係者の裁判への協力義務があり、これに反すると処罰されます(民訴232条3項)。証拠申し出は、自己判断で自由に行い、裁判官の訴訟指揮に従いましょう。

 【書式  検証申出書】
         検証申出書
 
 東京地方裁判所 民事 部御中
平成20年(ワ)第450号、貸金請求事件
             原 告   氏   名
             被 告   氏   名
上記事件についての原告の主張要件事実を立証するため下記の通り検証の申出を致します。
             原告    氏   名   印
1. 証明すべき事実。平成17年5月10日300万円の消費貸借成立の事実。
2. 検証の目的物。 平成17年5月10日の300万円領収書。
3. 検証により証明する事項。領収書の名義人の筆跡が被告のものかどうかを確定し金銭消費貸借の事実を証明する。
                       以上

16.   (証人尋問手続き。)
@証人は、自ら経験した過去の事実を陳述する当事者以外の人を言います(民訴190条)。第三者が証言するのですから信用性が高い訳ですが、過去の記憶していた事実を述べるので細部の点で真実かどうかはわからない点が多いと裁判官も思っています。その点変容性がなく客観性が高い書証より証拠力は低いと考えられています。ですから証人がいるからと言って喜んでばかりはいられません。国民は呼び出しがあると証人として出廷義務、宣誓、証言義務を負い正当な理由がないのに違反すると処罰されることがあります(民訴190条、192条)。忙しいのに他人の私的紛争にどうしてそんな法的義務があるのかと思うでしょうが、そもそも裁判制度は、法の支配の理念により個人の尊厳保障、公正な法社会秩序維持のためにありますから、真実発見のために国民は訴訟に協力する法的義務があるのです(平成21年度から施行される刑事訴訟への国民参加を定める裁判員制度の思想的根源は法の支配の理念にありその理論的帰結であると考えられます。すなわち国民は自らの意思で国家を作った時から裁判制度に関与し公正な法秩序を維持する法的義務を負っているのです。あまりに当然のことであり教育、納税、勤労の義務のように憲法には明記されていません)。

A 尋問の方式は、交互尋問方式で行われます(民訴202条。規則113条以下)。証人申請者の尋問(主尋問)後、証拠調べの適正を保障するため必ず相手方に反対尋問権、裁判所の補充尋問を認めています。又、公正、迅速な裁判を妨げる尋問はできません(規則115条)。例えば、証人を困惑させるもの、重複するもの、誘導するもの等です。
B本件では採用されないでしょうが新民事訴訟法により適正、迅速な手続きのため、直接主義、口頭主義を本来の趣旨により修正しテレビ会議方式(証人が遠隔地にいる)、ビデオリンク方式(民訴204条、裁判所の別室にいる証人に証言を求め公正な証言の保障を行う)、書面尋問方式(民訴205条、相手方の同意)も取られています。
C本件でいえば、借用書等の直接証拠がなければ、消費貸借の事実を知っている第三者例えば、貸借に立ち会った関係人を証人として申請することになります。

17.  (本人尋問手続き。)当事者は、証人よりも事件の内容を知っていますから事実の解明に役立つ様に思いますが、事件の当事者ですから利害関係から証言内容の信用性に欠けます。従って、他の証拠がない場合に補充的に認められますし(民訴207条2項)、正当な理由なく出廷しない場合の制裁も証人より緩和され処罰規定はありませんが、相手方の主張している事実が認められる不利益を受けます(民訴208条)。尋問方式は証人の場合と同じです。相手方が消費貸借を認めず直接証拠がなく間接事実の積み重ねにより貸借の要件事実を証明しようとする場合は証人のほか本人尋問も認められます。

  【書式 証拠申請書】
 証拠申請書
東京地方裁判所 民事 部御中
平成20年(ワ)第450号、貸金請求事件
             原 告   氏   名
             被 告   氏   名
上記事件についての証拠説明を致します。
             原告    氏   名   印
第1.証人尋問の申請。
1. 証人の表示。
〒108−0032東京都中央区京橋1−4−5
          氏     名
2. 立証趣旨。
原告が被告に10数回に分け合計700万円を貸与した事実、及びそれに関する一切の間接事実。
被告が、合計200万円を弁済した事実、及びそれに関する一切の間接事実。 

3. 同行、呼出別。尋問時間。
呼出。  主尋問。30分。
4. 尋問事項。別紙記載のとおりです。
  
第2.本人尋問の申請。
1. 被告本人(又は原告本人)の表示。
2. 立証の趣旨。
3. 同行、呼出の別。尋問時間。
同行。  主尋問。30分。
4. 尋問事項。別紙記載のとおりです。

(注意)証人尋問の場合、同行は当事者が証人を出廷させますが、呼出は裁判所から文書で連絡してくれます。

  【書式 証人尋問事項書】
 (別紙)  証人尋問事項書  (証人 甲野 乙子)

@ 原告と被告の関係。どうして知りあったか。仕事仲間か。
A 被告が最初に消費貸借を申し込んだのは何時か。なんのための資金か。
B 返済方法はどうしていたか。
C 必ず、契約書、借用書を作る関係か。
D 返済に遅滞はあったか。
E 原告が残金を放棄するような背景を知っているか。
F 担保をつけなかったのはどうしてか。
G 原告の生活状況はどうか。贈与、権利放棄するような生活か。

  
   【書式 本人尋問事項書】
 (別紙)  本人尋問事項書  (本人 被告   乙野太郎)

@ 原告との関係。どうして知りあったか。仕事関係の知人か。
A 被告が最初に消費貸借を申し込んだのは何時か。なんのための資金か。
B 返済方法はどうしていたか。
C 必ず、契約書、借用書を作る関係か。
D 返済に遅滞はあったか。
E 原告が残金を放棄するような背景を知っているか。
F 原告が担保をつけなかった理由。
G 原告の生活状況。贈与、権利放棄するような生活環境であったか。    
 
 (注意)証拠調べは口頭弁論で行われ口頭主義、直接主義が原則ですが、裁判官が陳述を聞く前に前もって尋問事項書、陳述書等で事件の争点について証人尋問、本人尋問を行う内容を開示させ適正、迅速な裁判のため証拠の価値判断をしやすいようにしているのです(問題点も指摘されていますが準備書面と同じ位置づけと考えましょう)。裁判官、相手方に理解しやすいように要件事実認定にどうして必要かという観点から作成します。

 
18.  (鑑定)本件で、仮に借用書の筆跡が被告のものであるかどうか争いになれば、証拠調べとして「鑑定の申し出」が必要となります。鑑定とは、裁判官の事実認定、法規の解釈、適用について特別な知識経験を持つ者の知識、判断を報告させて裁判官の判断能力を補う証拠調べです(民訴212条以下。その他規則)。裁判官は法律の専門家ですが、オールマイティではありませんので、適正な裁判を行うために他の分野の専門的知識、判断も参考にしなければなりません。鑑定を行うものを鑑定人と言います。同じ人的証拠である証人は、記憶している過去の事実を供述するのですが、鑑定人は専門的知識、判断を供述するという点に特色があります。従って、筆跡鑑定のように判断が難しい裁判に対する影響力も大きく公正な裁判を実現するため証人と同様の理由により専門家でも鑑定義務が認められています(民訴216条で証人の法的義務の準用)。鑑定の申し出があると裁判所が適切な鑑定人を選任しますが、申出者が特定の鑑定人を推薦することもできます。その場合、勿論、公正を期するために、相手方の意見も聞くことになります。一般的に公正を図るため鑑定結果は、最初は書面で提出され、鑑定の内容について当事者、裁判所から尋問されることになります(民訴215条)。

   【書式  鑑定申出書】
   
   鑑定申出書
東京地方裁判所 民事 部御中
平成20年(ワ)第450号、貸金請求事件
             原 告   氏   名
             被 告   氏   名
上記事件についての原告の主張要件事実を立証するため下記の通り鑑定の申出を致します。
             原告    氏   名   印
4. 証明すべき事実。
平成17年5月10日300万円の消費貸借成立の事実。
5. 鑑定事項 
@ 借用書の名義人の住所、氏名の署名は被告のものかどうか。
                       以上

   
≪条文参照≫
憲法
第十二条  この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

第三十二条  何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。

第七十六条  すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
2  特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。
3  すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。

民法
(基本原則)
第一条  私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
2  権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
3  権利の濫用は、これを許さない。
(解釈の基準)
第二条  この法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等を旨として、解釈しなければならない。

民事訴訟法
(裁判所及び当事者の責務)
第二条  裁判所は、民事訴訟が公正かつ迅速に行われるように努め、当事者は、信義に従い誠実に民事訴訟を追行しなければならない。
(裁判長の訴訟指揮権)
第百四十八条  口頭弁論は、裁判長が指揮する。
2  裁判長は、発言を許し、又はその命令に従わない者の発言を禁ずることができる。
(攻撃防御方法の提出時期)
第百五十六条  攻撃又は防御の方法は、訴訟の進行状況に応じ適切な時期に提出しなければならない。
(審理の計画が定められている場合の攻撃防御方法の提出期間)
第百五十六条の二  第百四十七条の三第一項の審理の計画に従った訴訟手続の進行上必要があると認めるときは、裁判長は、当事者の意見を聴いて、特定の事項についての攻撃又は防御の方法を提出すべき期間を定めることができる。
(時機に後れた攻撃防御方法の却下等)
第百五十七条  当事者が故意又は重大な過失により時機に後れて提出した攻撃又は防御の方法については、これにより訴訟の完結を遅延させることとなると認めたときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、却下の決定をすることができる。
2  攻撃又は防御の方法でその趣旨が明瞭でないものについて当事者が必要な釈明をせず、又は釈明をすべき期日に出頭しないときも、前項と同様とする。

(当事者照会)
第百六十三条  当事者は、訴訟の係属中、相手方に対し、主張又は立証を準備するために必要な事項について、相当の期間を定めて、書面で回答するよう、書面で照会をすることができる。ただし、その照会が次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
一  具体的又は個別的でない照会
二  相手方を侮辱し、又は困惑させる照会
三  既にした照会と重複する照会
四  意見を求める照会
五  相手方が回答するために不相当な費用又は時間を要する照会
六  第百九十六条又は第百九十七条の規定により証言を拒絶することができる事項と同様の事項についての照会

第百六十四条  裁判所は、争点及び証拠の整理を行うため必要があると認めるときは、この款に定めるところにより、準備的口頭弁論を行うことができる。
(弁論準備手続の開始)
第百六十八条  裁判所は、争点及び証拠の整理を行うため必要があると認めるときは、当事者の意見を聴いて、事件を弁論準備手続に付することができる。
(弁論準備手続の結果の陳述)
第百七十三条  当事者は、口頭弁論において、弁論準備手続の結果を陳述しなければならない。
(弁論準備手続終結後の攻撃防御方法の提出)
第百七十四条  第百六十七条の規定は、弁論準備手続の終結後に攻撃又は防御の方法を提出した当事者について準用する。
     第三款 書面による準備手続
(書面による準備手続の開始)
第百七十五条  裁判所は、当事者が遠隔の地に居住しているときその他相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、事件を書面による準備手続(当事者の出頭なしに準備書面の提出等により争点及び証拠の整理をする手続をいう。以下同じ。)に付することができる。
(書面による準備手続の方法等)
第百七十六条  書面による準備手続は、裁判長が行う。ただし、高等裁判所においては、受命裁判官にこれを行わせることができる。
2  裁判長又は高等裁判所における受命裁判官(次項において「裁判長等」という。)は、第百六十二条に規定する期間を定めなければならない。
3  裁判長等は、必要があると認めるときは、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判所及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、争点及び証拠の整理に関する事項その他口頭弁論の準備のため必要な事項について、当事者双方と協議をすることができる。この場合においては、協議の結果を裁判所書記官に記録させることができる。
4  第百四十九条(第二項を除く。)、第百五十条及び第百六十五条第二項の規定は、書面による準備手続について準用する。
(証明すべき事実の確認)
第百七十七条  裁判所は、書面による準備手続の終結後の口頭弁論の期日において、その後の証拠調べによって証明すべき事実を当事者との間で確認するものとする。
(書面による準備手続終結後の攻撃防御方法の提出)
(書面による準備手続の開始)
第百七十五条  裁判所は、当事者が遠隔の地に居住しているときその他相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、事件を書面による準備手続(当事者の出頭なしに準備書面の提出等により争点及び証拠の整理をする手続をいう。以下同じ。)に付することができる。
(集中証拠調べ)
第百八十二条  証人及び当事者本人の尋問は、できる限り、争点及び証拠の整理が終了した後に集中して行わなければならない。
(調査の嘱託)
第百八十六条  裁判所は、必要な調査を官庁若しくは公署、外国の官庁若しくは公署又は学校、商工会議所、取引所その他の団体に嘱託することができる。
(証人義務)
第百九十条  裁判所は、特別の定めがある場合を除き、何人でも証人として尋問することができる。
第二節 証人尋問
(証人義務)
第百九十条  裁判所は、特別の定めがある場合を除き、何人でも証人として尋問することができる。
(不出頭に対する過料等)
第百九十二条  証人が正当な理由なく出頭しないときは、裁判所は、決定で、これによって生じた訴訟費用の負担を命じ、かつ、十万円以下の過料に処する。
2  前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
(不出頭に対する罰金等)
第百九十三条  証人が正当な理由なく出頭しないときは、十万円以下の罰金又は拘留に処する。
2  前項の罪を犯した者には、情状により、罰金及び拘留を併科することができる。
第百九十七条  次に掲げる場合には、証人は、証言を拒むことができる。
一  第百九十一条第一項の場合
二  医師、歯科医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士(外国法事務弁護士を含む。)、弁理士、弁護人、公証人、宗教、祈祷若しくは祭祀の職にある者又はこれらの職にあった者が職務上知り得た事実で黙秘すべきものについて尋問を受ける場合
三  技術又は職業の秘密に関する事項について尋問を受ける場合
2  前項の規定は、証人が黙秘の義務を免除された場合には、適用しない。
(証言拒絶の理由の疎明)
第百九十八条  証言拒絶の理由は、疎明しなければならない。
(証言拒絶についての裁判)
第百九十九条  第百九十七条第一項第一号の場合を除き、証言拒絶の当否については、受訴裁判所が、当事者を審尋して、決定で、裁判をする。
2  前項の裁判に対しては、当事者及び証人は、即時抗告をすることができる。
(尋問の順序)
第二百二条  証人の尋問は、その尋問の申出をした当事者、他の当事者、裁判長の順序でする。
2  裁判長は、適当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、前項の順序を変更することができる。
3  当事者が前項の規定による変更について異議を述べたときは、裁判所は、決定で、その異議について裁判をする。
(書類に基づく陳述の禁止)
第二百三条  証人は、書類に基づいて陳述することができない。ただし、裁判長の許可を受けたときは、この限りでない。
(付添い)
(映像等の送受信による通話の方法による尋問)
第二百四条  裁判所は、次に掲げる場合には、最高裁判所規則で定めるところにより、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によって、証人の尋問をすることができる。
一  証人が遠隔の地に居住するとき。
二  事案の性質、証人の年齢又は心身の状態、証人と当事者本人又はその法定代理人との関係その他の事情により、証人が裁判長及び当事者が証人を尋問するために在席する場所において陳述するときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認める場合であって、相当と認めるとき。
(尋問に代わる書面の提出)
第二百五条  裁判所は、相当と認める場合において、当事者に異議がないときは、証人の尋問に代え、書面の提出をさせることができる。
(当事者本人の尋問)
第二百七条  裁判所は、申立てにより又は職権で、当事者本人を尋問することができる。この場合においては、その当事者に宣誓をさせることができる。
2  証人及び当事者本人の尋問を行うときは、まず証人の尋問をする。ただし、適当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、まず当事者本人の尋問をすることができる。
(不出頭等の効果)
第二百八条  当事者本人を尋問する場合において、その当事者が、正当な理由なく、出頭せず、又は宣誓若しくは陳述を拒んだときは、裁判所は、尋問事項に関する相手方の主張を真実と認めることができる。
(証人尋問の規定の準用)
第二百十条  第百九十五条、第二百一条第二項、第二百二条から第二百四条まで及び第二百六条の規定は、当事者本人の尋問について準用する。
第四節 鑑定
(鑑定義務)
第二百十二条  鑑定に必要な学識経験を有する者は、鑑定をする義務を負う。
(鑑定人の陳述の方式等)
第二百十五条  裁判長は、鑑定人に、書面又は口頭で、意見を述べさせることができる。
2  裁判所は、鑑定人に意見を述べさせた場合において、当該意見の内容を明瞭にし、又はその根拠を確認するため必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、鑑定人に更に意見を述べさせることができる。
(鑑定人質問)
第二百十五条の二  裁判所は、鑑定人に口頭で意見を述べさせる場合には、鑑定人が意見の陳述をした後に、鑑定人に対し質問をすることができる。
2  前項の質問は、裁判長、その鑑定の申出をした当事者、他の当事者の順序でする。
3  裁判長は、適当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、前項の順序を変更することができる。
4  当事者が前項の規定による変更について異議を述べたときは、裁判所は、決定で、その異議について裁判をする。
(映像等の送受信による通話の方法による陳述)
第二百十五条の三  裁判所は、鑑定人に口頭で意見を述べさせる場合において、鑑定人が遠隔の地に居住しているときその他相当と認めるときは、最高裁判所規則で定めるところにより、隔地者が映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によって、意見を述べさせることができる。
(証人尋問の規定の準用)
第二百十六条  第百九十一条の規定は公務員又は公務員であった者に鑑定人として職務上の秘密について意見を述べさせる場合について、第百九十七条から第百九十九条までの規定は鑑定人が鑑定を拒む場合について、第二百一条第一項の規定は鑑定人に宣誓をさせる場合について、第百九十二条及び第百九十三条の規定は鑑定人が正当な理由なく出頭しない場合、鑑定人が宣誓を拒む場合及び鑑定拒絶を理由がないとする裁判が確定した後に鑑定人が正当な理由なく鑑定を拒む場合について準用する。
(鑑定証人)
第二百十七条  特別の学識経験により知り得た事実に関する尋問については、証人尋問に関する規定による。
第五節 書証
(書証の申出)
第二百十九条  書証の申出は、文書を提出し、又は文書の所持者にその提出を命ずることを申し立ててしなければならない。
(文書提出義務)
第二百二十条  次に掲げる場合には、文書の所持者は、その提出を拒むことができない。
一  当事者が訴訟において引用した文書を自ら所持するとき。
二  挙証者が文書の所持者に対しその引渡し又は閲覧を求めることができるとき。
三  文書が挙証者の利益のために作成され、又は挙証者と文書の所持者との間の法律関係について作成されたとき。
四  前三号に掲げる場合のほか、文書が次に掲げるもののいずれにも該当しないとき。
イ 文書の所持者又は文書の所持者と第百九十六条各号に掲げる関係を有する者についての同条に規定する事項が記載されている文書
ロ 公務員の職務上の秘密に関する文書でその提出により公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの
ハ 第百九十七条第一項第二号に規定する事実又は同項第三号に規定する事項で、黙秘の義務が免除されていないものが記載されている文書
ニ 専ら文書の所持者の利用に供するための文書(国又は地方公共団体が所持する文書にあっては、公務員が組織的に用いるものを除く。)
ホ 刑事事件に係る訴訟に関する書類若しくは少年の保護事件の記録又はこれらの事件において押収されている文書
(文書提出命令の申立て)
第二百二十一条  文書提出命令の申立ては、次に掲げる事項を明らかにしてしなければならない。
一  文書の表示
二  文書の趣旨
三  文書の所持者
四  証明すべき事実
五  文書の提出義務の原因
2  前条第四号に掲げる場合であることを文書の提出義務の原因とする文書提出命令の申立ては、書証の申出を文書提出命令の申立てによってする必要がある場合でなければ、することができない。
(文書の特定のための手続)
第二百二十二条  文書提出命令の申立てをする場合において、前条第一項第一号又は第二号に掲げる事項を明らかにすることが著しく困難であるときは、その申立ての時においては、これらの事項に代えて、文書の所持者がその申立てに係る文書を識別することができる事項を明らかにすれば足りる。この場合においては、裁判所に対し、文書の所持者に当該文書についての同項第一号又は第二号に掲げる事項を明らかにすることを求めるよう申し出なければならない。
2  前項の規定による申出があったときは、裁判所は、文書提出命令の申立てに理由がないことが明らかな場合を除き、文書の所持者に対し、同項後段の事項を明らかにすることを求めることができる。
(文書提出命令等)
第二百二十三条  裁判所は、文書提出命令の申立てを理由があると認めるときは、決定で、文書の所持者に対し、その提出を命ずる。この場合において、文書に取り調べる必要がないと認める部分又は提出の義務があると認めることができない部分があるときは、その部分を除いて、提出を命ずることができる。
2  裁判所は、第三者に対して文書の提出を命じようとする場合には、その第三者を審尋しなければならない。
3  裁判所は、公務員の職務上の秘密に関する文書について第二百二十条第四号に掲げる場合であることを文書の提出義務の原因とする文書提出命令の申立てがあった場合には、その申立てに理由がないことが明らかなときを除き、当該文書が同号ロに掲げる文書に該当するかどうかについて、当該監督官庁(衆議院又は参議院の議員の職務上の秘密に関する文書についてはその院、内閣総理大臣その他の国務大臣の職務上の秘密に関する文書については内閣。以下この条において同じ。)の意見を聴かなければならない。この場合において、当該監督官庁は、当該文書が同号ロに掲げる文書に該当する旨の意見を述べるときは、その理由を示さなければならない。
4  前項の場合において、当該監督官庁が当該文書の提出により次に掲げるおそれがあることを理由として当該文書が第二百二十条第四号ロに掲げる文書に該当する旨の意見を述べたときは、裁判所は、その意見について相当の理由があると認めるに足りない場合に限り、文書の所持者に対し、その提出を命ずることができる。
一 国の安全が害されるおそれ、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれ
二 犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれ
5  第三項前段の場合において、当該監督官庁は、当該文書の所持者以外の第三者の技術又は職業の秘密に関する事項に係る記載がされている文書について意見を述べようとするときは、第二百二十条第四号ロに掲げる文書に該当する旨の意見を述べようとするときを除き、あらかじめ、当該第三者の意見を聴くものとする。
6  裁判所は、文書提出命令の申立てに係る文書が第二百二十条第四号イからニまでに掲げる文書のいずれかに該当するかどうかの判断をするため必要があると認めるときは、文書の所持者にその提示をさせることができる。この場合においては、何人も、その提示された文書の開示を求めることができない。
7  文書提出命令の申立てについての決定に対しては、即時抗告をすることができる。
(当事者が文書提出命令に従わない場合等の効果)
第二百二十四条  当事者が文書提出命令に従わないときは、裁判所は、当該文書の記載に関する相手方の主張を真実と認めることができる。
2  当事者が相手方の使用を妨げる目的で提出の義務がある文書を滅失させ、その他これを使用することができないようにしたときも、前項と同様とする。
3  前二項に規定する場合において、相手方が、当該文書の記載に関して具体的な主張をすること及び当該文書により証明すべき事実を他の証拠により証明することが著しく困難であるときは、裁判所は、その事実に関する相手方の主張を真実と認めることができる。
(第三者が文書提出命令に従わない場合の過料)
第二百二十五条  第三者が文書提出命令に従わないときは、裁判所は、決定で、二十万円以下の過料に処する。
2  前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
(文書送付の嘱託)
第二百二十六条  書証の申出は、第二百十九条の規定にかかわらず、文書の所持者にその文書の送付を嘱託することを申し立ててすることができる。ただし、当事者が法令により文書の正本又は謄本の交付を求めることができる場合は、この限りでない。
(文書の成立)
第二百二十八条  文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。
2  文書は、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認めるべきときは、真正に成立した公文書と推定する。
3  公文書の成立の真否について疑いがあるときは、裁判所は、職権で、当該官庁又は公署に照会をすることができる。
4  私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。
5  第二項及び第三項の規定は、外国の官庁又は公署の作成に係るものと認めるべき文書について準用する。
(筆跡等の対照による証明)
第二百二十九条  文書の成立の真否は、筆跡又は印影の対照によっても、証明することができる。
2  第二百十九条、第二百二十三条、第二百二十四条第一項及び第二項、第二百二十六条並びに第二百二十七条の規定は、対照の用に供すべき筆跡又は印影を備える文書その他の物件の提出又は送付について準用する。
3  対照をするのに適当な相手方の筆跡がないときは、裁判所は、対照の用に供すべき文字の筆記を相手方に命ずることができる。
4  相手方が正当な理由なく前項の規定による決定に従わないときは、裁判所は、文書の成立の真否に関する挙証者の主張を真実と認めることができる。書体を変えて筆記したときも、同様とする。
5  第三者が正当な理由なく第二項において準用する第二百二十三条第一項の規定による提出の命令に従わないときは、裁判所は、決定で、十万円以下の過料に処する。
6  前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
(文書の成立の真正を争った者に対する過料)
第二百三十条  当事者又はその代理人が故意又は重大な過失により真実に反して文書の成立の真正を争ったときは、裁判所は、決定で、十万円以下の過料に処する。
2  前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
3  第一項の場合において、文書の成立の真正を争った当事者又は代理人が訴訟の係属中その文書の成立が真正であることを認めたときは、裁判所は、事情により、同項の決定を取り消すことができる。
(文書に準ずる物件への準用)
第二百三十一条  この節の規定は、図面、写真、録音テープ、ビデオテープその他の情報を表すために作成された物件で文書でないものについて準用する。
第六節 検証
(検証の目的の提示等)
第二百三十二条  第二百十九条、第二百二十三条、第二百二十四条、第二百二十六条及び第二百二十七条の規定は、検証の目的の提示又は送付について準用する。
2  第三者が正当な理由なく前項において準用する第二百二十三条第一項の規定による提示の命令に従わないときは、裁判所は、決定で、二十万円以下の過料に処する。
3  前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
(検証の際の鑑定)
第二百三十三条  裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官は、検証をするに当たり、必要があると認めるときは、鑑定を命ずることができる。
(証拠保全)
第二百三十四条  裁判所は、あらかじめ証拠調べをしておかなければその証拠を使用することが困難となる事情があると認めるときは、申立てにより、この章の規定に従い、証拠調べをすることができる。
(自由心証主義)
第二百四十七条  裁判所は、判決をするに当たり、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断する。
民事訴訟規則
(当事者照会・法第百六十三条)
第八十四条 法第百六十三条(当事者照会)の規定による照会及びこれに対する回答は、照会書及び回答書を相手方に送付してする。この場合において、相手方に代理人があるときは、照会書は、当該代理人に対し送付するものとする。
2 前項の照会書には、次に掲げる事項を記載し、当事者又は代理人が記名押印するものとする。
一 当事者及び代理人の氏名
二 事件の表示
三 訴訟の係属する裁判所の表示
四 年月日
五 照会をする事項(以下この条において「照会事項」という。)及びその必要性
六 法第百六十三条の規定により照会をする旨
七 回答すべき期間
八 照会をする者の住所、郵便番号及びファクシミリの番号
3 第一項の回答書には、前項第一号から第四号までに掲げる事項及び照会事項に対する回答を記載し、当事者又は代理人が記名押印するものとする。この場合において、照会事項中に法第百六十三条各号に掲げる照会に該当することを理由としてその回答を拒絶するものがあるときは、その条項をも記載するものとする。
4 照会事項は、項目を分けて記載するものとし、照会事項に対する回答は、できる限り、照会事項の項目に対応させて、かつ、具体的に記載するものとする。
(宣誓・法第二百一条)
第百十二条 証人の宣誓は、尋問の前にさせなければならない。ただし、特別の事由があるときは、尋問の後にさせることができる。
2 宣誓は、起立して厳粛に行わなければならない。
3 裁判長は、証人に宣誓書を朗読させ、かつ、これに署名押印させなければならない。証人が宣誓書を朗読することができないときは、裁判長は、裁判所書記官にこれを朗読させなければならない。
4 前項の宣誓書には、良心に従って真実を述べ、何事も隠さず、また、何事も付け加えないことを誓う旨を記載しなければならない。
5 裁判長は、宣誓の前に、宣誓の趣旨を説明し、かつ、偽証の罰を告げなければならない。
(尋問の順序・法第二百二条)
第百十三条 当事者による証人の尋問、次の順序による。
一 尋問の申出をした当事者の尋問(主尋問)
二 相手方の尋問(反対尋問)
三 尋問の申出をした当事者の再度の尋問
(再主尋問)
2 当事者は、裁判長の許可を得て、更に尋問をすることができる。
3 裁判長は、法第二百二条(尋問の順序)第一項及び第二項の規定によるほか、必要があると認めるときは、いつでも、自ら証人を尋問し、又は当事者の尋問を許すことができる。
4 陪席裁判官は、裁判長に告げて、証人を尋問することができる。
(質問の制限)
第百十四条 次の各号に掲げる尋問は、それぞれ当該各号に定める事項について行うものとする。
一 主尋問  立証すべき事項及びこれに関連する事項
二 反対尋問 主尋問に現れた事項及びこれに関連する事項並びに証言の信用性に関する事項
三 再主尋問 反対尋問に現れた事項及びこれに関連する事項
2 裁判長は、前項各号に掲げる尋問における質問が同項各号に定める事項以外の事項に関するものであって相当でないと認めるときは、申立てにより又は職権で、これを制限することができる。
第百十五条 質問は、できる限り、個別的かつ具体的にしなければならない。
2 当事者は、次に掲げる質問をしてはならない。ただし、第二号から第六号までに掲げる質問については、正当な理由がある場合は、この限りでない。
一 証人を侮辱し、又は困惑させる質問
二 誘導質問
三 既にした質問と重複する質問
四 争点に関係のない質問
五 意見の陳述を求める質問
六 証人が直接経験しなかった事実についての陳述を求める質問
3 裁判長は、質問が前項の規定に違反するものであると認めるときは、申立てにより又は職権で、これを制限することができる。
(文書等の質問への利用)
第百十六条 当事者は、裁判長の許可を得て、文書、図面、写真、模型、装置その他の適当な物件(以下この条において「文書等」という。)を利用して証人に質問することができる。
2 前項の場合において、文書等が証拠調べをしていないものであるときは、当該質問の前に、相手方にこれを閲覧する機会を与えなければならない。ただし、相手方に異議がないときは、この限りでない。
3 裁判長は、調書への添付その他必要があると認めるときは、当事者に対し、文書等の写しの提出を求めることができる。
(異議・法第二百二条)
第百十七条 当事者は、第百十三条(尋問の順序)第二項及び第三項、第百十四条(質問の制限)第二項、第百十五条(質問の制限)第三項並びに前条(文書等の質問への利用)第一項の規定による裁判長の裁判に対し、異議を述べることができる。
2 前項の異議に対しては、裁判所は、決定で、直ちに裁判をしなければならない。
(対質)
第百十八条 裁判長は、必要があると認めるときは、証人と他の証人との対質を命ずることができる。
2 前項の規定により対質を命じたときは、その旨を調書に記載させなければならない。
3 対質を行うときは、裁判長がまず証人を尋問することができる。
(文字の筆記等)
第百十九条 裁判長は、必要があると認めるときは、証人に文字の筆記その他の必要な行為をさせることができる。
(後に尋問すべき証人の取扱い)
第百二十条 裁判長は、必要があると認めるときは、後に尋問すべき証人に在廷を許すことができる。
(書証の申出等・法第二百十九条)
第百三十七条 文書を提出して書証の申出をするときは、当該申出をする時までに、その写し二通(当該文書を送付すべき相手方の数が二以上であるときは、その数に一を加えた通数)を提出するとともに、文書の記載から明らかな場合を除き、文書の標目、作成者及び立証趣旨を明らかにした証拠説明書二通(当該書面を送付すべき相手方の数が二以上であるときは、その数に一を加えた通数)を提出しなければならない。ただし、やむを得ない事由があるときは、裁判長の定める期間内に提出すれば足りる。
2 前項の申出をする当事者は、相手方に送付すべき文書の写し及びその文書に係る証拠説明書について直送をすることができる。
(訳文の添付等)
第百三十八条 外国語で作成された文書を提出して書証の申出をするときは、取調べを求める部分についてその文書の訳文を添付しなければならない。この場合において、前条(書証の申出等)第二項の規定による直送をするときは、同時に、その訳文についても直送をしなければならない。
2 相手方は、前項の訳文の正確性について意見があるときは、意見を記載した書面を裁判所に提出しなければならない。
(書証の写しの提出期間・法第百六十二条)
第百三十九条 法第百六十二条(準備書面等の提出期間)の規定により、裁判長が特定の事項に関する書証の申出(文書を提出してするものに限る。)をすべき期間を定めたときは、当事者は、その期間が満了する前に、書証の写しを提出しなければならない。
(文書提出命令の申立ての方式等・法第二百二十一条等)
第百四十条 文書提出命令の申立ては、書面でしなければならない。
2 相手方は、前項の申立てについて意見があるときは、意見を記載した書面を裁判所に提出しなければならない。
3 第九十九条(証拠の申出)第二項及び前二項の規定は、法第二百二十二条(文書の特定のための手続)第一項の規定による申出について準用する。
(提示文書の保管・法第二百二十三条)
第百四十一条 裁判所は、必要があると認めるときは、法第二百二十三条(文書提出命令等)第六項前段の規定により提示された文書を一時保管することができる。
(平一三最裁規八・一部改正)
(受命裁判官等の証拠調べの調書)
第百四十二条 受命裁判官又は受託裁判官に文書の証拠調べをさせる場合には、裁判所は、当該証拠調べについての調書に記載すべき事項を定めることができる。
2 受命裁判官又は受託裁判官の所属する裁判所の裁判所書記官は、前項の調書に同項の文書の写しを添付することができる。
(文書の提出等の方法)
第百四十三条 文書の提出又は送付は、原本、正本又は認証のある謄本でしなければならない。
2 裁判所は、前項の規定にかかわらず、原本の提出を命じ、又は送付をさせることができる。
(録音テープ等の反訳文書の書証の申出があった場合の取扱い)
第百四十四条 録音テープ等を反訳した文書を提出して書証の申出をした当事者は、相手方がその録音テープ等の複製物の交付を求めたときは、相手方にこれを交付しなければならない。
(文書の成立を否認する場合における理由の明示)
第百四十五条 文書の成立を否認するときは、その理由を明らかにしなければならない。
(筆跡等の対照の用に供すべき文書等に係る調書等・法第二百二十九条)
第百四十六条 法第二百二十九条(筆跡等の対照による証明)第一項に規定する筆跡又は印影の対照の用に供した書類の原本、謄本又は抄本は、調書に添付しなければならない。
2 第百四十一条(提示文書の保管)の規定は、法第二百二十九条第二項において準用する法第二百二十三条(文書提出命令等)第一項の規定による文書その他の物件の提出について、第百四十二条(受命裁判官等の証拠調べの調書)の規定は、法第二百二十九条第二項において準用する法第二百十九条(書証の申出)、第二百二十三条第一項及び第二百二十六条(文書送付の嘱託)の規定により提出され、又は送付された文書その他の物件の取調べを受命裁判官又は受託裁判官にさせる場合における調書について準用する。
(文書に準ずる物件への準用・法第二百三十一条)
第百四十七条 第百三十七条から前条まで(書証の申出等、訳文の添付等、書証の写しの提出期間、文書提出命令の申立ての方式等、提示文書の保管、受命裁判官等の証拠調べの調書、文書の提出等の方法、録音テープ等の反訳文書の書証の申出があった場合の取扱い、文書の成立を否認する場合における理由の明示及び筆跡等の対照の用に供すべき文書等に係る調書等)の規定は、特別の定めがある場合を除き、法第二百三十一条(文書に準ずる物件への準用)に規定する物件について準用する。
(写真等の証拠説明書の記載事項)
第百四十八条 写真又は録音テープ等の証拠調べの申出をするときは、その証拠説明書において、撮影、録音、録画等の対象並びにその日時及び場所をも明らかにしなければならない。
(録音テープ等の内容を説明した書面の提出等)
第百四十九条 録音テープ等の証拠調べの申出をした当事者は、裁判所又は相手方の求めがあるときは、当該録音テープ等の内容を説明した書面(当該録音テープ等を反訳した書面を含む。)を提出しなければならない。
2 前項の当事者は、同項の書面について直送をしなければならない。
3 相手方は、第一項の書面における説明の内容について意見があるときは、意見を記載した書面を裁判所に提出しなければならない

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