法の支配と民事訴訟実務入門【総論17、判決の言い渡し、勝訴判決後の手続き、判決原本、正本、謄本。】
民事|勝訴判決後|判決書|送達証明書
目次
質問:
500万円の貸金訴訟が結審されて来月判決になります。勝訴判決の場合次に何をしたらよいですか?
ところで、正本、謄本、副本等の言葉を聞きますがどういう違いがありますか。
回答:
1. 口頭弁論は終結しましたが、当事者の申し立て等により裁判所が主張、立証、釈明の必要性を認めれば、再度口頭弁論を開くことができます。これを弁論の再開と言います(民訴153条)。
2. 判決期日に裁判所に行けば判決内容を確認することができますが、刑事事件と異なり貴方が出廷しなくても判決の言い渡しは行われますし(民訴251条2項)必ず後から判決書が自宅(送達場所)まで送られてきます(民訴255条1項、方式は送達です)。
勝訴判決の場合、相手方がこの判決文に納得し控訴しないで500万円を支払ってくれれば問題ありませんが、請求しても支払わない場合は確定判決により強制執行手続きに移行せざるを得ません(民事執行法22条1項1号)。相手方というのは、被告のほかに口頭弁論終結後(結審後)の債務譲り受け人(相続人、免責的債務引き受け人)も入ります(民訴115条1項3号)。
続いて、強制執行のためには、貴方が受け取った判決書のほかに、申し立てにより裁判所から執行文という1枚の書面を判決書正本の裏に添付してもらいます。これを執行文付与と言います(民事執行法25条、26条)。債務承継人には承継執行文が必要です(執行法27条2項)。
その他強制執行には、判決が被告のところに届いているという送達証明書が必要です(民事執行法29条)。以上の書類がそろったら被告の財産を調査して、不動産、債権、動産等を探しだして強制執行の申し立てを行います(民事執行法43条 -137条)。
被告が控訴して争うような場合は、主文に「この判決は、仮に執行することができる」という文言があれば(仮執行宣言付判決と言います)、控訴によりこの判決が確定しなくても確定判決と同じ手続きにより強制執行が可能になります(民事執行法22条1項2号)。
貴方がおっしゃるように判決の言い渡しは、判決書の原本により行われ(民訴252条)、強制執行は、判決の正本に基づいて行う(執行法25条)と規定されていますが、原本、正本、謄本、抄本、副本という概念は、民事訴訟、執行手続きを適正公平、迅速低廉に遂行するために定められています。
3. 判決後の手続きに関する関連事例集参照。
解説:
1 結審
結審とは口頭弁論の終結宣言を言い、主張立証は終了したということ意味します。
この日付は、後述のように判決による強制執行の及ぶ人的な範囲に影響がありますし(民訴115条1項3号)、適正、公平上訴訟資料の最終提出日が判決による権利、法律関係確定の基準時にもなります(判決が確定するとこの日以前の権利法律関係を再度争うことはできません。学問上既判力の時的限界といいます)。
基準日は判決言い渡し日、確定日ではありません。
このように重要な日時ですから判決書に記載されます(民訴253条1項4号)。職権進行主義から期日終結宣言は、裁判所が「訴訟が裁判をするのに熟したとき 」と判断したときに行われますが(民訴243条1項)、私的自治、当事者主義の原則から当事者の主張立証が尽くされたと判断したときと解釈することができます。
従って弁論再開は、口頭弁論終結時までに攻撃防御方法を提出できなかったことについて当事者に責任がなく(公平、迅速性が優先するので)、主張立証方法が提出されないことにより、又は裁判所の釈明権の行使が審理に重要な影響があるような場合(適正の確保)に認められることになります。判例も同様です。例えば、弁論終結後紛失していた借用書、領収書、失踪していた証人の確保等が考えられます。
2 判決日
判決の日は、終結後2カ月以内に前もって出頭した期日に裁判官から知らされますが、書記官から通知される場合があります(民訴規則156条)。
しかし、判決期日を知っていても都合が悪ければ出廷する必要はありません(民訴251条2項)。テレビ等で、当事者に対して判決文を読み上げる裁判官を見たことがあるでしょうが、あれは刑事裁判の場合です。特別な場合を除き通常弁護士は言い渡し期日には出廷しません。書記官に電話すれば、判決内容は教えてくれますし行く意味がそれほどないのです。なぜなら、判決は主文を朗読して言い渡されますが、理由は裁判官が相当と認める(世間が注目関心をよせる事件等)以外省略されるからです(民訴252条、民訴規則155条1項、2項、)。
理由は判決書が送達されてから確認することになります。従って、判決の送達は不可欠ですし(民訴255条)、上訴の期間は判決言い渡しの時からではなく判決書が当事者に送達された時から進行するわけです(民訴285条)。
判決は、法の支配の理念から公開の法廷で言い渡す必要がありますから(憲法82条1項)、その理由も朗読しなければならないように思いますが、民事訴訟は基本的に経済的争いであり個人の尊厳の侵害の危険性は少ないとみて主文のみの朗読を原則としています。
3 刑事裁判の場合
これに対し、刑事裁判は生命身体の自由を拘束、制限する内容ですから、個人の尊厳保障に直結しており、必ず被告人は出廷し被告人の前での判決言い渡しが必要ですし、理由も朗読しなければなりません(刑訴286条、同342条、同44条、規則34条、35条)。
従って、判決言い渡しの時から控訴期間は進行しますし(刑訴358条)、判決の送達もありませんから判決書を実際に見たいときは自分で費用を出して申請して受け取ることになります(刑訴46条)。
4 判決書
貴方が、受け取った勝訴の判決書には「被告は、原告に対して金500万円、及びこれに対する平成19年5月1日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え」という判決主文、その他事実、理由、口頭弁論終結の日等が記載されています(民訴253条)。
しかし、この判決書では被告が直ちに支払うかどうかわかりません。日本の法律では、三審制がとられており不服申し立てができるからです(民訴281条、311条)。
書記官に確認し、控訴期間が経過して控訴せず判決が確定すれば公の判断、裁判所のお墨付きが出たのですから、相手方に履行催告の連絡をすることになります。相手方が支払いに応じてくれれば問題ありませんが、分割払い等の支払いにも応じないようであれば、やむを得ず強制執行の手続きに移行することになります。
相手方は通常被告ということになりますが、被告以外の人も500万円の勝訴判決の効力を及ぼすことができます。例えば、「口頭弁論終結後の承継人」すなわち被告の相続人、債務の引受人(免責的)です。
口頭弁論終結前であれば、以前総論14で説明したように条文上明らかであり訴訟の受継、参加承継、引受承継の問題になりますし、判決後であれば、公的判断がなされた権利義務を受け継ぐので承継人に判決の効力が及ぶことに異論はありません。
そこで、口頭弁論終結後、判決前の承継人に判決の効力を及ぼすべきかどうか問題なのですが、審理が終了した権利義務を承継したものは、判断が下されていなくても将来判決が下される権利義務を承継したものと考えられますし、審理が終了しているのですから適正公平の面からも、又、再度承継人に対し訴訟を提起することになれば迅速、訴訟経済上妥当性に欠けますので承継人に対する判決効力の拡張を認めています(学問上既判力の主観的範囲の拡張といわれています)。
5 【書式 履行の催告】
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郵便番号
住所
氏名 様
○○地方裁判所 平成○年(ワ)○○号貸金返還請求事件
平成○年○月○日 原告 ○○○○ 印
前略 要件のみにて失礼致します。上記事件につき、先日の判決の通り、お支払い下さいます様お願い申し上げます。請求額の計算は次の通りです。
1、 判決主文1項記載金額=500万円
2、 判決主文1項記載損害金=12345円(平成○年○月○日時点)
3、 訴訟費用=印紙代30000円、切手代6400円
4、 上記合計=504万8745円
5、 振込口座=○○銀行○○支店、普通口座、1234567、○○○○
ご質問や支払方法についてのご希望などありましたら、次の連絡先までお願いします。
連絡先 住所 東京都○○区○○ ○―○―○
氏名 ○○○○
電話番号03-○○○○-○○○○
草々
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6 執行文
強制執行するには、確定判決のほかにまず執行文が必要です(執行法26条)。執行文とは、裁判所書記官(又は公証人)が当該債務名義(執行法22条、判決等。強制執行により実現されるべき請求権の存在内容を公証する文書です。)について、その内容で強制執行できる効力があることを公に認めた文書です。
「この債務名義の正本により債権者Aは債務者Bに対して強制執行することができる」と記載され日付、書記官により記名押印されています。裁判所が、証拠を調べ判断し権利を確定したのに、どうして重ねてこのような公証文が必要になるかというと強制執行を迅速、低廉に行うためです。最初に説明しましたが、法の支配の理念から紛争を適正に解決するため制度上権利の確定手続き(民事訴訟手続き)と、権利実現手続き(強制執行手続き)は分離されており、本来であれば執行機関が本当に強制執行していいかどうか(判決確定、上訴、再審での取り消し、和解、執行停止等の調査)独自に調査することになります。しかし、執行機関はそのような人員、組織も十分ではなく、時間を費やし強制執行が遅れ迅速性に欠け、訴訟経済上も不都合です。
そこで、執行機関ではなく民事訴訟手続きに関与した書記官(または公証人)が発行し公証する文書(執行文)で以上の不都合を回避し迅速な権利実現を図っているのです。
例えば、判決確定の日は、判決が被告に送達されてから2週間なので受訴裁判所の訴訟記録を見ないと何時被告に送達されたか不明であり、これを執行裁判所が行っていると執行が迅速にできませんし、手元に記録がある受訴裁判所の書記官に確認した方が迅速です。又、条件付判決(500万円の支払いを受けた後に家屋を明け渡す)の様に、判決確定しても(債務名義を得ても)、条件が成就したかどうかを確認を要するような場合も、執行の迅速化のために書記官の執行文制度を利用するのです。
執行文は、事件記録を保管している裁判所の書記官が交付しますが(確定すると第一審に記録が戻ってきますので通常第一審です。控訴されていれば上級裁判所になります)、新民訴では執行文付与に判決確定証明書は原則不要です(執行規則16条2項)。控訴はすべて第一審裁判所に提起することになり(民訴改正前は第二審にも控訴できましたので第一審の書記官が記録を持っていても控訴されて確定しない場合があるのでまず確定証明書が必要でした。上告も同様です)、保管している記録上確定しているかどうか判断できるからです。承継執行文も同様の手続きで交付されます。
7 【書式 執行文付与申請書】
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収入印紙(300円)
平成20年6月1日
東京地方裁判所民事 部御中
債権者 氏 名
債務者 氏 名
上記当事者間御庁平成19年(ワ)第3445号貸金請求事件についての下記書類の正本について上記債権者のために上記債務者に対する執行文を付与するよう申請する。
申請人 氏 名 印
書類の表示
1 判決書 (他に、和解の第5回口頭弁論調書、調停調書、和解調書等があります)
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8 執行文の付与を省く例
執行文を付与の例外があります。以下の制度は元々執行の迅速性を確保するために認められたものですから執行文の付与を省いています(執行法26条但し書き)。例えば、①少額訴訟における確定判決。②仮執行宣言付少額訴訟の判決。③仮執行宣言付支払督促です。
9 送達証明書
次に、強制執行には、確定判決など債務名義の送達証明書が必要です(執行法29条)。
債務名義は、強制執行の基本となるものですから、事前に債務者に対して「貴方は将来強制執行を受ける可能性がありますよ」という通知をして、強制執行を回避するチャンスを与えなければならないからです。
刑事事件と異なり民事訴訟の上訴には判決の送達は必要不可欠です。当事者は、送達された判決を読んで初めて上訴するかどうか決めるのであり、送達は、法の支配を徹底するため三審制をとり国民の権利保障を実現しようとする民事裁判制度の大前提をなすものです(憲法32条、裁判所法)。
判決が確定していても、判決が送達されていなければ国民の権利保障の前提がないのですから、強制的財産収奪を内容とする強制執行が許されるはずがありません。上訴されることのない和解調書・調停調書の場合は、判決と違い必ず送達されるわけではないので、和解が成立した時、原告が送達申請をしなければいけませんが、担当書記官が「送達しますね」と言って記入、署名するだけの送達申請書を用意してくれますし、口頭でも送達申請可能ですから心配ありません。
公正証書の場合は、公証役場の職員が申請書を用意してくれます。送達証明書の申請、交付は、原裁判所が行います。送達証明申請書には同じ用紙に受書も記載して手続きを簡略化します。別紙でもかまいません。送達証明申請書の副本を別に用意して提出すると当該副本の後ろに担当書記官が日付を入れて「右証明します」と記名押印した用紙を添付してくれます。これが判決正本の送達証明書になります。これで強制執行の準備ができました。
10 債券差押
強制執行を行う場合、筆者が弁護士として活動していて最も実効性が高いと感じているのは「債権差押」です。「銀行預金」や、「給与債権」や、「賃料債権」です。
具体的な手続は各論部分でご紹介しますが、事前の準備として、相手の銀行口座が何銀行の何支店、及び給与の支払を受けている会社の調査、商業登記簿謄本、相手が不動産を貸しているなら建物登記簿謄本を法務局で取得し、入居者の氏名連絡先も確認することが必要となってきます。
11 【書式 送達申請書】
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平成20年7月1日
東京地方裁判所民事 部御中
原 告 氏 名
被 告 氏 名
上記当事者間御庁平成19年(ワ)第3445号貸金請求事件について平成20年7月1日に成立した和解調書正本を(当事者双方、 )に送達されるよう申請する。
申請人 氏 名 印
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12 【書式 送達証明申請書兼受書】
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平成20年9月1日
東京地方裁判所民事 部御中
原告 氏 名
被告 氏 名
上記当事者間御庁平成19年(ワ)第3445号貸金請求事件についての下記書類の正本が に対し平成 年 月 日に送達されたことを証明してください。
申請人 氏 名 印
書類の表示
1 判決書 (平成20年8月1日言い渡し)
(他に、和解の第5回口頭弁論調書、調停調書、和解調書等があります。調書であれば成立年月日を記載します。)
請 書
東京地方裁判所民事 部御中
前記証明書 通
令和 年 月 日 申請人 氏 名 印
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13 判決確定後の和解
判決が確定した後でも、和解をすることができます。強制執行をするかしないか、という点について、合意する価値があるからです。勝訴当事者から見れば、確実に履行してもらえるという期待が生じますし、敗訴当事者から見れば、差押命令が送達されることによる信用の低下を防ぐ効果があります。
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甲と乙とは、○○地方裁判所 平成○年(ワ)○○号貸金返還請求事件に関して本日次の通り和解合意した。
平成○年○月○日
1、 甲は乙に対し、金○○円を支払い、乙はこれを本日受領した。
2、 乙は、上記事件の強制執行の申立を行わないことを約束した。
3、 甲乙間には本合意書に定めるほか一切の債権債務が存在しない事を確認した。
甲:住所氏名
乙:住所氏名
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14 仮執行宣言制度
被告が控訴して判決が確定しなくても、500万円請求の勝訴判決主文に「この判決は、仮に執行することができる」という仮執行宣言(民訴259条)が付いていれば、強制執行が可能になります。我が国は適正な解決を図るため三審制を採用しており判決が確定していない以上強制執行もできないはずですが、紛争解決を引き延ばすために上訴する場合もあるので、主張(自白等がある)、証拠上、判決が覆る可能性が少なく、仮執行を認めても被告に回復困難な損害が生じないような場合には、原告の迅速な権利実現の利益を事前に確保することも必要です。
そこで、裁判官の裁量で原告と被告の利益を考慮し一定の要件のもとで例外的に債務名義として認められたのが、仮執行宣言制度です。
従って、判決内容が財産的請求で、判決の内容により原告に担保を要求し、被告も担保を立てて仮執行を逃れる手続、仮執行による損害填補の方法も用意しています(民訴260条)。控訴審は最終事実審として事実認定に関し主張立証は尽くされていますので金銭債権について原則として無担保で仮執行がつきます(民訴310条)。
本件では500万円の金銭請求権であり認められることが多いと思います(土地の明け渡し等は難しいでしょう)。勿論、送達証明書の他執行文の付与も制度上必要です。控訴審、再審で判決の取り消し、訴えの取り下げ、和解等により仮執行宣言が失効していることもあるからです。
15 原本、正本、謄本、抄本、副本の違い
ところで、民事訴訟法、執行法で文書について判決書の原本(民訴252条)、判決の正本(執行法25条)謄本、等規定がありますが分かりにくいと思いますので、原本、正本、謄本、抄本、副本の違いについて説明します。
どうしてこのような概念が必要かということですが、民事訴訟、執行手続きを適正、公平、迅速、低廉に遂行するためです。
(1)原本
原本とは、一定事項を表示するため、確定的なものとして作られた文書です。当たり前のことですが、これが全ての文書の基本(元)となるものですから、判決書原本等は紛失しないように一定の場所に保管しておく必要があります。
(2)正本
正本とはある権限ある者が、原本に基づいて作成し原本と同じ効力が付与された写しの一種です。例えば判決正本は、判決原本の写しですが特定の権限ある者(裁判所書記官)が作成し、原本と同じ効力があるところに、同じ写しである謄本との違いがあります。大切な判決原本を強制執行のために裁判所から持ち出すことはできませんので、書記官が正本を作り原本と同じ効力を認め原告に交付し、適正迅速に強制執行をできるようにしているのです。公正証書(執行証書、執行法22条1項5号)の原本、正本も同様です。原本は大切に公証役場で保管しますが、債権者側には将来の強制執行のために正本が交付され、相手方は証明の必要しかありませんので謄本が交付されます。
(3)謄本
次に謄本ですが、これは原本の内容を証明するために作られた原本の写しです。単なる証明のための写しであり原本と同じ効力はありませんから判決(公正証書)謄本で強制執行はできません。調書判決の謄本(民訴254条2項、強制執行するには正本が必要です。規則159条)、戸籍謄本、登記簿謄本等があります。
(4)抄本
抄本は謄本と同じように原本を証明するための写しですが、原本について必要な部分のみを写してあるという点に謄本との違いがあります(民訴91条3項)。
(5)副本
副本とは、正本と同一内容の文書であり単に予備、事務整理のために作成されたものです。謄本、抄本のように法的証明力はありません。貴方が訴え提起の時提出した訴状の副本は相手方に送達するため予備的に作成されたものです(民訴規則58条1項 )。書証の証拠提出も貴方が保管している原本のほかに原本をコピーして裁判所用に正本、相手方のために副本を提出します。
以上、大切な原本について棄損、紛失の危険を防止し、正本、副本、謄本、抄本の利用により訴訟執行手続きが適正、公正、迅速低廉に進めることができるのです。