新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース 質問: 回答: 解説 不貞行為による賠償義務の理論的な根拠について説明します。 賠償義務の法的根拠は不法行為ですから、違法な権利侵害が必要ですが、その権利とは、夫婦の一方が相手方に対して有する貞操保持を求める請求権を意味します。婚姻は精神的、肉体的にも一体となって協力し共同生活を行うという身分、財産上の総合契約であり一夫一妻制をとる制度のもとにおいて夫婦互いに相手方に対し貞操保持請求権を有し、互いに義務と負担するからです。したがって、民法770条1項1号で不貞行為は債務不履行の一つであり当然離婚原因となるわけです。次に、不貞行為の相手方(本件では未婚の女性)は夫婦の当事者ではなく直接保持義務を有しませんが、不倫行為は1人ではできませんからご主人を通じそそのかし、幇助行為を通じて間接的に妻の貞操保持請求権を侵害したことになりいわゆる共同不法行為として不真正連帯責任を負うことになります。不貞行為の責任追及の根拠が夫婦間の総合契約にある以上、夫婦の実態が形骸化、喪失した場合には(別居、離婚調停、暴力等の要件があります)損害賠償請求を認めないというという判例もありますから、注意が必要です( 事務所事例集630号参照)。又、妻が請求する相手は法的には不貞行為を行った両名であり再発防止のためにはこの実体を重視する必要があります。金銭的請求をしても実質的に夫が秘密裏にそれを填補する場合があるからです。裁判手続きと和解を組み合わせ再度の交際を実質的に防ぐ条件(再度の交際には違約金を付加する)を提示了解させる必要があるでしょう。もちろん、法的な対策だけでなく、夫婦間のコミュニケーションや話し合いも大切だと思います。 1 夫の浮気相手に対する慰謝料請求 2 事実の確認 3 証拠がそろって初めて相手に慰謝料を請求することになります。請求する金額については、決まりはありません。慰謝料ですから被害者の気持ちで金額を決めてよいのです。あまり高額だと恐喝になるのではと心配する人もいますが、無用です。ただし、弁護士以外の第三者を代理人として請求すると、請求の仕方や金額で恐喝と判断される場合もありますから、自分で請求するか、弁護士に依頼する必要があります。 4 示談書の作成 5 訴訟 ---------------------------------------------------------------------------------------------------- まず、管轄は家庭裁判所ではなく、相手の住所かあなたの住所を管轄する地方裁判所です。 6 裁判所からの和解の提案 7 和解できない場合は判決となる。 8 尚、不倫にも種々の原因がありますので 事例集ホームページ事例集783、668、654、596号を参照してください。 ≪条文参照≫ (不法行為による損害賠償)
No.987、2010/1/26 16:09 https://www.shinginza.com/jitsumu.htm
法の支配と民事訴訟実務入門(平成20年9月4日改訂)
【各論9、不倫慰謝料請求を自分でやる。不貞行為による損害賠償。】
夫が、女性と週1回ホテルに行っていることがわかりました。夫と離婚するつもりはありませんが、交際を解消させ、相手の女性に制裁を加えたいと思います。法律上、どのような手段があるのでしょうか。
1. ご主人と交際している女性は、妻であるあなたに対し共同不法行為(民法719条、709条、710条)を行っていますから、50万円から200万円の範囲で両名に対して慰謝料請求することができます。
2. ただ、本当に交際をやめさせるには、金銭的請求のほかに再度交際をしないという相手方女性、ご主人の誓約および違約金等の条件を付した合意書を作成することも必要です。
相手の女性が、男性が結婚していることを知っていて関係を持った場合(「不貞行為」といいます)は、妻の夫に対して有する貞操保持請求権を侵害したことになり不法行為(民709)となり、妻は女性に対し損害賠償を請求できます。財産的な損害はないので慰謝料の請求(民710)になります。金額は一般的に50万円から200万円程度で解決されているようです。
相手に与える制裁として法律上認められているものは他にはありません(慰謝料も制裁という意味ではなくあくまで被害者の救済ということです。)
慰謝料を請求する場合、まずは、事実関係の確認が必要となります。夫や相手の女性と会って、ホテルに行った日時や場所を聞き出し、書面にして相手の署名をもらうことができれば、裁判のための証拠としては最適でしょう。会話の内容を録音することも良いでしょう。いきなり女性に慰謝料請求すると相手も警戒するでしょうから、金銭の請求は考えていないという態度で接する必要があります。
女性や夫が関係を認めない場合には、証拠をそろえる必要があります。
証拠になりうるものとして、写真や手紙や電子メールがあります。写真ならホテルに入る場面や出てくる場面など、手紙やメールならいわゆる肉体関係があると推測されるような記載が必要となります。恋愛は自由なので夫が妻以外の女性と恋愛関係にあっただけでは不法行為は成立しませんから、肉体関係が認められる内容の手紙等が必要になります。
他にも、常識で考えて不貞行為があったと思われる事実についてできるだけ証拠となる資料を集めておく必要があります。探偵の素行調査の必要性ですが、費用がかかり、調査費が慰謝料金額を超えてしまう危険もあります。他に資料がなく、不貞行為の日時が特定できる場合はその日だけに限って調査を依頼したほうが良いでしょう。
請求の方法は、電話、手紙どちらでもかまいませんが、絶対に支払ってもらうという気持ちを相手に伝えるには内容証明郵便が良いでしょう。
相手が、請求を認めて金額や支払い方法について合意ができれば示談書を作成します。
示談できない場合は、裁判を起こす必要があります。訴状の記載はつぎのようなものです。
訴状例
00地方裁判所 民事部御中
訴 状
平成 年 月 日
原 告 00 00
〒000−0000 00県00市00区0丁目00番0号(送達場所)
電 話
ファックス
原 告 00 00
〒000−0000 00県00市00区00番地
被 告 00 00
損害賠等請求事件
訴訟物の価格 金5,000,000円
貼用印紙額 金 30,000円
請求の趣旨
1 被告は、原告に対し、金500万円とこれに対する、訴状送達の翌日から支払い済みまで年5分の割合の金員を支払え。
2 訴訟費用は、被告の負担とする。
との判決並びに仮執行の宣言を求める。
請求の原因
第1 当事者
1 原告は夫00と、平成0年0月結婚し、平成0年0月長女、同0年0月次女をもうけ、円満な家庭生活を送っていた。
2 被告は、原告の夫00が勤務していた00で事務の仕事をしていた。
第2 被告の不法行為(不貞行為)
1 被告と原告の夫は、平成0年0月頃から交際を始めた。
2 その後被告は、平成0年0月0日から00日までの間の毎週末、被告の自宅に00を宿泊させて足り、ホテルに行ったりして不貞の関係をもった。
第3 原告の損害
1 (不貞発覚前の状況)
2 (不貞発覚後の状況)
3 (被告の交渉の状況)
4 (慰謝料の請求をする理由) ・・・被告の不貞行為により原告の家庭はそれまでの円満な家庭生活とはことなり離婚の危機に瀕している状況にある。このような状況にある原告を慰謝するには金500万円以上の慰謝料が相当である。
第4 結語
よって、原告は被告に対し被告の不貞行為を理由として慰謝料金500万円と訴状送達の翌日から慰謝料の完済まで年5部の割合の遅延損害金の支払いを求め訴えを提起する。
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その後の手続きは、他の裁判と変わりありません。
このような裁判では、裁判官は必ず和解による解決を提案します。男女の問題ですし、慰謝料の額については裁判官の判断ですので、裁判官としては判決をする必要も無いと考えているのでしょう。
相手の支払い能力を考慮しつつできるだけ有利な金額、支払い条件で和解するよう努力する必要があります。和解を有利にする方法は、自分が被害者でこの金額をもらわなければ納得できない、とわがままなくらい主張するのが一番です。裁判所は、説得しやすいほうに厳しい条件を提案するので、とても説得できないと思わせることが一番です。
相手が不貞行為を否定する場合、判決となります。不貞行為の立証責任は原告にありますから、証拠がないと原告は敗訴の危険がありますので、証拠を十分に検討する必要があります。
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
(財産以外の損害の賠償)
第七百十条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。
(共同不法行為者の責任)
第七百十九条 数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。
2 行為者を教唆した者及び幇助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する。
(裁判上の離婚)
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2 裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。