新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース 質問 回答 2. 何が特別か主要な点を説明します。 @ 訴額。簡易裁判所の管轄は140万円までですが、少額訴訟は更に60万円までに制限されています。 3. 制度趣旨は、少額の金銭支払い請求は、紛争内容において争いがあるものであっても現行訴訟手続き上費用、労力が個別訴訟の目的である経済的利益を上回る可能性があり訴訟制度の目的である迅速、低廉な解決を実質的に目指そうとするものです。しかし、迅速性、訴訟経済性を重視すると適正、公平な解決という点がおろそかになり国民の裁判を受ける権利をないがしろにする危険があるので利用回数制限(法368条3項、規則223、年10回、消費者金融業者対策)や、当事者が少額訴訟制度を希望する場合にのみ利用できるようにしています。一般国民に利用できるよう休日開廷も理論上は可能です(民訴93条2項)。紛争の内容に実質的争いがない場合を予想する督促手続きとは異なります。 4. 敷金の返還と不動産賃借の原状回復義務との関係は事務所ホームページ事例集747、748、271、28号を参照してください。 解説 2 敷金の返還についての根拠 3 少額訴訟について 4 敷金返還請求少額訴訟の訴状は次のようなものになります。 ---------------------------------------------------------------------------------------------------------- 請求の趣旨 請求の原因 記 建物の表示 所在 第2 賃貸借契約の終了と建物の明け渡し 第3 敷金が返還されない事情 第5 結語 5 訴状の書き方 6 裁判が始まるとどうなるか ≪条文参照≫ 民事訴訟法 民事執行法
No.992、2010/1/28 12:17 https://www.shinginza.com/jitsumu.htm
法の支配と民事訴訟実務入門(平成20年9月22日改訂)
【各論14、少額訴訟で敷金返還請求訴訟を自分でやる。】
借家を引っ越しました。敷金20万円を払っていますが、不動産仲介業者から、畳やカーペットを交換し、敷金以上の金額がかかったので返還はできないという連絡がありました。10年以上住んでいたので畳等は古くなっていますがそれらの交換費用は借家人が敷金で負担する必要はないと思います。裁判も考えていますが、弁護士に依頼すると費用のほうが高くなるといわれました。その際、少額訴訟という制度があることをききました。詳しく知りたいので教えてください。
1. 少額訴訟制度とは簡易裁判所で行われる60万円以下の金銭支払請求についてだけ認められる特別な訴訟手続を言います(民訴368条)。
A 訴訟物は金銭支払請求だけ。
B 口頭弁論期日の回数は(法370条、)1期日審理の原則。1回だけですから証拠調べもその日だけで裁判官が主導権を有します。
C 判決言い渡し期日(法374条)1回の口頭弁論終結後直ちに言い渡します。
D 控訴は(法377条、)できません。但し、同じ簡易裁判所に対する異議申し立てがあります。内容によって特別上告も可能でしょう。
E 強制執行の申し立て(民事執行法167条の2以下、)は執行裁判所でなく判決した受訴裁判所である簡易裁判所で簡易な方法で執行ができます。
F 被告が希望するか相当な理由があれば勿論通常訴訟に移行できます(法373条)。その他は通常訴訟と同じ。
1 自分で裁判ができるか
本件のように敷金返還請求は主に少額訴訟により解決されているようです。少額訴訟は、法律の専門家でなくても裁判ができるよう新たに設けられた制度ですからもちろん自分で裁判ができます。
少額訴訟を説明する前に、敷金の返還請求権の根拠について説明します。
敷金は建物賃貸借契約を締結する際に借家人から貸家人に対して渡される金員で借家人の債務の履行を担保することを目的とし、建物賃貸借契約が終了したのち清算して借家人に返還される金員とされています。このような金員の交付は敷金契約として賃貸借契約に付随するひとつの契約です。貸家が貸家人に返還され賃貸借が終了したあとで、借家人の債務があれば貸家人は敷金から差し引いて残金を返還することになります。ここで問題となるのは、借家人の債務か否かということです。未払い賃料などは明らかに借家人の債務ですが、借りていた物の返還に関する債務の範囲は必ずしも明確ではありません。賃借人は、契約終了後、賃借物を返還する債務を負っていますが、賃借物の使用収益後どの程度の状態で返還すればよいのか、借りたときの状態で返還しなければならないのか問題となりました。従来は、大家さんのほうが敷金を預かっているという強い立場にあったので、必要以上に新しい状態にする費用まで敷金から差し引いていました。しかし、法律上は、賃借人としては通常の用法に従って使用、収益した後の状態で返還すれば債務を履行したことになることから、賃借人の不注意により生じた、たとえば寝タバコによるカーペットの焼け焦げなどは賃借人の費用で修理すれば十分と考えられます。本来借家人に返還されるべき敷金が返還されないという状態が多く見られたのです。
そこで、このような不都合を解消するため、 国のガイドラインや東京都のガイドラインが設けられ、契約を締結する際に返還の際にどこまで借家人が負担するか契約書に明らかにしなくてはならないことになっています。しかし、契約書では本来借家人が負担しなくても良いものでも借家人の不注意による損害については借家人の負担となりますし、通常の使用による以上の破損の場合の負担について問題となります。事務所ホームページ事例集747、748、721、28号を参照してください。
次に少額訴訟の制度について説明します。少額訴訟といっても基本的には通常の裁判と変わりないと理解してください。ただ、通常の訴訟の場合時間もかかることから、1回の裁判期日で終了し当日判決が下される手続きで、そのため、通常の裁判と違った手続きが決められていると理解してよいでしょう。理解しておくべき大きな違いは次のとおりです。
@ まず少額訴訟ができるのは60万円以下の金銭請求の裁判に限定されること。金銭以外のものを引き渡すことを請求することはできないとされています。
A 1回の裁判しかできず、即日判決の言い渡しとなります。手続きが迅速となり原告には有利ですが、反面被告から思わぬ反論があった場合その場で反論して証拠を提出する必要があり、それができないと原告が敗訴する危険があります。
B 証拠の制限。これは1回の裁判で終結することから当然証拠も裁判の当日用意しておく必要があるための制限です。証人も別の日に呼び出すことはできませんから、証人がいる場合は、裁判の当日、裁判所に同行する必要があります。ただし、電話会議システムといって裁判所にいない証人を尋問する制度もありますが、その場合も必ず電話連絡ができるようにしておく必要があります。
C 分割払いの判決ができること。通常の裁判は一括して支払えという判決しかできないのですが、裁判所が被告の資力を考慮して3年以内の分割払いの判決をすることができ、この場合原告は不服の申立ができないという不利益があります。
D 控訴ができないこと。これも裁判を迅速に終わらせるということからの制限です。判決に不服がある場合は、同じ裁判所に異議の申立ができるに過ぎません。
E 被告が通常訴訟を希望する場合は通常訴訟に移行すること。また、裁判所が職権で通常訴訟へ移行することができること。
以上が、少額訴訟の特殊性といえます。そこで次に、具体的にどのように裁判を始めるのか説明します。
00簡易裁判所 民事部御中
訴 状
平成 年 月 日
〒 住 所 (送達場所)
電 話 − −
ファックス − −
原 告 0 0 0 0?
〒 住 所
被 告
敷金等請求事件
訴訟物の価格 金 200,000 円
貼用印紙額 金
円
少額訴訟に関する申述
本件につき、少額訴訟による審理および裁判を求める。原告が御庁において少額訴訟による審理および裁判を求めた回数は1回である。
1 被告は、原告に対し、金20万円とこれに対する訴状送達の翌日から支払い済みまで年5部分の割合の金員を支払え。
2 訴訟費用は、被告の負担とする。
との判決並びに仮執行の宣言を求める。
第1 建物の賃貸借契約と敷金の交付
1 原告は、被告に対し、平成 年 月 日、次の建物(以下「本件建物」という)を下記のとおり賃貸した(甲1 契約書)。
賃貸借の期間 平成 年 月 日から同 年 月 日までの2年間
賃 料 1ヶ月金 円
支払方法 毎月末日限り
2 原告は上記建物賃貸借契約を締結するに際して、敷金として金20万円を被告に対して交付し被告はこれを同日受領した。原告と被告はこの敷金について本件建物賃貸借契約終了後原告が建物を明け渡した後被告が敷金を原告に返還することを約束した(甲1 建物賃貸借契約書)。
その後、賃貸借契約は平成 年 月 日に終了し、同日原告は被告に対し本件建物を明け渡した。
1 原告は、建物返還後の平成 年 月 日頃、被告に対し敷金の返還を求めたが、被告は畳の交換や壁紙の張り替えをしたので敷金は返還できないと回答した。
2 被告が、主張する敷金から差し引く金額の明細は次のとおりである。
@ 畳の表替え費用 金 円
A ふすまの張り替え 金 円
B 壁紙クロスの張り替え 金 円
C ・・・
D ・・・
以上合計金 万 円
3 被告の費用請求に対する原告の反論
被告の主張は次のとおり不当である。
@ 畳の表替え、壁紙クロスの交換について 原告は、本件建物を住居として通常の用法に従って、00年使用していたのであり、建物返還時点での畳や壁紙の劣化はこの年月の経過による当然のものであり、原告がこれらを交換して建物を返還する義務はない。
A ・・・・
B ・・・
C ・・・
よって、原告は被告に対し、敷金の返還として金20万円の支払いと、これに対する訴状送達の翌日から完済まで年5分の割合の損害金の支払いを求めて訴えを提起する。以 上
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@ 訴状の構成は、他の事件と同様まず表題的なものとして、裁判所に提出する日付、宛名として提出する裁判所、当事者の表示として原告と被告の住所を記載します。提出する裁判所は管轄裁判所を記載します。原則は被告の住所地の簡易裁判所ですが、敷金返還債務は金銭債務であり持参債務となり、債務の履行地である債権者の住所地すなわち、原告の住所地を管轄する裁判所にも管轄があります。
A 事件名、訴額と貼用印紙額の記載
事件名は、敷金返還請求事件とするのが通常です。訴額は、返還請求する金額になります。訴額によって貼用印紙額が決められていますので、裁判所に確認してください。必要な印紙を訴状に貼って提出することになります。なお、訴額の記載は、空欄にしておいて裁判所の受付で確認してから記載するほうが、間違いないでしょう。
本件では、遅延損害金の請求は付帯請求といって訴額の算定は不要とされています。
B 以上が表題的な部分で、次に本文として「請求の趣旨」「請求の理由」となります。その前に少額訴訟の特殊な記載として、「少額訴訟の申述」を記載します。この記載がないと通常訴訟として扱われることになります。
C 請求の趣旨には、原告が裁判所に求める判決の主文を記載します。裁判所は原告が求める判決について理由があるかないかを判断することとなっています。原告としては、敷金の返還を請求するのですが、請求の趣旨には、端的に金いくらを支払えと記載する必要があります。大切なことは強制執行できるような主文を判決してもらうということです。
D 次に請求の原因には、原告が記載した請求の趣旨の根拠となる事実を記載します。 敷金返還請求の場合、本体である建物賃貸借契約と特定と敷金契約、賃貸借の終了と建物を返還したことが請求の根拠となる事実になります。
以上の事実を記載すれば、敷金返還請求権が発生していることは明らかでその敷金から清算される費用がいくらになるのかは賃貸人である被告が主張立証することです(これを「被告の抗弁」と言います)。しかし、少額訴訟の場合、一回の裁判で判決まですることになっていますから、あらかじめ被告の抗弁を訴状に記載しそれについても原告の方で反論しておいた方が良いでしょう。とくに、訴状を弁護士などに作成してもらう場合は、この辺の事情もよく説明し訴状に記載し証拠も用意しておくとよいでしょう。
E 訴状の提出
訴状が完成したら裁判所に提出すること他の事件と同じです。訴状と一緒に証拠書類の写しを提出することになっています。証拠としては、敷金について記載のある建物賃貸借契約書、賃貸人からの敷金の清算書等が考えられます。また、あらかじめ建物を返還する際に写真を撮っておけば返還の際の現状がわかるでしょうから証拠として提出できるでしょう。
少額訴訟も裁判手続きについては、基本的には通常訴訟と同様です。被告が訴状の請求の趣旨に記載されている事実を認めれば裁判は終結して判決の言い渡しとなります。被告が返還する敷金は残っていないと主張すると、被告の主張が証拠により認められるか審理することになります。その際、被告が通常訴訟を希望すると少額訴訟はできなくなります。被告が、少額訴訟を了承すれば裁判が一回の裁判で判決まで行うべく手続きが進行します。そして、その審理の方法に少額訴訟としての特殊性が設けられています。
すなわち、通常の裁判ですと証人尋問は交互尋問と言って原告と被告の双方が主尋問、反対尋問をし、その後裁判所が補充的に質問することになっていますが、少額訴訟では、原告や被告本人は尋問を効率よくできないであろうという前提で証人尋問は不都合がなければ裁判所が行うことになっています。
(期日の指定及び変更)
第九十三条 期日は、申立てにより又は職権で、裁判長が指定する。
2 期日は、やむを得ない場合に限り、日曜日その他の一般の休日に指定することができる。
(少額訴訟の要件等)
第三百六十八条 簡易裁判所においては、訴訟の目的の価額が六十万円以下の金銭の支払の請求を目的とする訴えについて、少額訴訟による審理及び裁判を求めることができる。ただし、同一の簡易裁判所において同一の年に最高裁判所規則で定める回数を超えてこれを求めることができない。
2 少額訴訟による審理及び裁判を求める旨の申述は、訴えの提起の際にしなければならない。
3 前項の申述をするには、当該訴えを提起する簡易裁判所においてその年に少額訴訟による審理及び裁判を求めた回数を届け出なければならない。
(反訴の禁止)
第三百六十九条 少額訴訟においては、反訴を提起することができない。
(一期日審理の原則)
第三百七十条 少額訴訟においては、特別の事情がある場合を除き、最初にすべき口頭弁論の期日において、審理を完了しなければならない。
2 当事者は、前項の期日前又はその期日において、すべての攻撃又は防御の方法を提出しなければならない。ただし、口頭弁論が続行されたときは、この限りでない。
(証拠調べの制限)
第三百七十一条 証拠調べは、即時に取り調べることができる証拠に限りすることができる。
(証人等の尋問)
第三百七十二条 証人の尋問は、宣誓をさせないですることができる。
2 証人又は当事者本人の尋問は、裁判官が相当と認める順序でする。
3 裁判所は、相当と認めるときは、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判所及び当事者双方と証人とが音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、証人を尋問することができる。
(通常の手続への移行)
第三百七十三条 被告は、訴訟を通常の手続に移行させる旨の申述をすることができる。ただし、被告が最初にすべき口頭弁論の期日において弁論をし、又はその期日が終了した後は、この限りでない。
2 訴訟は、前項の申述があった時に、通常の手続に移行する。
3 次に掲げる場合には、裁判所は、訴訟を通常の手続により審理及び裁判をする旨の決定をしなければならない。
一 第三百六十八条第一項の規定に違反して少額訴訟による審理及び裁判を求めたとき。
二 第三百六十八条第三項の規定によってすべき届出を相当の期間を定めて命じた場合において、その届出がないとき。
三 公示送達によらなければ被告に対する最初にすべき口頭弁論の期日の呼出しをすることができないとき。
四 少額訴訟により審理及び裁判をするのを相当でないと認めるとき。
4 前項の決定に対しては、不服を申し立てることができない。
5 訴訟が通常の手続に移行したときは、少額訴訟のため既に指定した期日は、通常の手続のために指定したものとみなす。
(判決の言渡し)
第三百七十四条 判決の言渡しは、相当でないと認める場合を除き、口頭弁論の終結後直ちにする。
2 前項の場合には、判決の言渡しは、判決書の原本に基づかないですることができる。この場合においては、第二百五十四条第二項及び第二百五十五条の規定を準用する。
(判決による支払の猶予)
第三百七十五条 裁判所は、請求を認容する判決をする場合において、被告の資力その他の事情を考慮して特に必要があると認めるときは、判決の言渡しの日から三年を超えない範囲内において、認容する請求に係る金銭の支払について、その時期の定め若しくは分割払の定めをし、又はこれと併せて、その時期の定めに従い支払をしたとき、若しくはその分割払の定めによる期限の利益を次項の規定による定めにより失うことなく支払をしたときは訴え提起後の遅延損害金の支払義務を免除する旨の定めをすることができる。
2 前項の分割払の定めをするときは、被告が支払を怠った場合における期限の利益の喪失についての定めをしなければならない。
3 前二項の規定による定めに関する裁判に対しては、不服を申し立てることができない。
(仮執行の宣言)
第三百七十六条 請求を認容する判決については、裁判所は、職権で、担保を立てて、又は立てないで仮執行をすることができることを宣言しなければならない。
2 第七十六条、第七十七条、第七十九条及び第八十条の規定は、前項の担保について準用する。
(控訴の禁止)
第三百七十七条 少額訴訟の終局判決に対しては、控訴をすることができない。
(異議)
第三百七十八条 少額訴訟の終局判決に対しては、判決書又は第二百五十四条第二項(第三百七十四条第二項において準用する場合を含む。)の調書の送達を受けた日から二週間の不変期間内に、その判決をした裁判所に異議を申し立てることができる。ただし、その期間前に申し立てた異議の効力を妨げない。
2 第三百五十八条から第三百六十条までの規定は、前項の異議について準用する。
(異議後の審理及び裁判)
第三百七十九条 適法な異議があったときは、訴訟は、口頭弁論の終結前の程度に復する。この場合においては、通常の手続によりその審理及び裁判をする。
2 第三百六十二条、第三百六十三条、第三百六十九条、第三百七十二条第二項及び第三百七十五条の規定は、前項の審理及び裁判について準用する。
(異議後の判決に対する不服申立て)
第三百八十条 第三百七十八条第二項において準用する第三百五十九条又は前条第一項の規定によってした終局判決に対しては、控訴をすることができない。
2 第三百二十七条の規定は、前項の終局判決について準用する。
(過料)
第三百八十一条 少額訴訟による審理及び裁判を求めた者が第三百六十八条第三項の回数について虚偽の届出をしたときは、裁判所は、決定で、十万円以下の過料に処する。
2 前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
3 第百八十九条の規定は、第一項の規定による過料の裁判について準用する。
第二目 少額訴訟債権執行
(少額訴訟債権執行の開始等)
第百六十七条の二 次に掲げる少額訴訟に係る債務名義による金銭債権に対する強制執行は、前目の定めるところにより裁判所が行うほか、第二条の規定にかかわらず、申立てにより、この目の定めるところにより裁判所書記官が行う。
一 少額訴訟における確定判決
二 仮執行の宣言を付した少額訴訟の判決
三 少額訴訟における訴訟費用又は和解の費用の負担の額を定める裁判所書記官の処分
四 少額訴訟における和解又は認諾の調書
五 少額訴訟における民事訴訟法第二百七十五条の二第一項の規定による和解に代わる決定
2 前項の規定により裁判所書記官が行う同項の強制執行(以下この目において「少額訴訟債権執行」という。)は、裁判所書記官の差押処分により開始する。
3 少額訴訟債権執行の申立ては、次の各号に掲げる債務名義の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める簡易裁判所の裁判所書記官に対してする。
一 第一項第一号に掲げる債務名義 同号の判決をした簡易裁判所
二 第一項第二号に掲げる債務名義 同号の判決をした簡易裁判所
三 第一項第三号に掲げる債務名義 同号の処分をした裁判所書記官の所属する簡易裁判所
四 第一項第四号に掲げる債務名義 同号の和解が成立し、又は同号の認諾がされた簡易裁判所
五 第一項第五号に掲げる債務名義 同号の和解に代わる決定をした簡易裁判所
4 第百四十四条第三項及び第四項の規定は、差押えに係る金銭債権(差押処分により差し押さえられた金銭債権に限る。以下この目において同じ。)について更に差押処分がされた場合について準用する。この場合において、同条第三項中「差押命令を発した執行裁判所」とあるのは「差押処分をした裁判所書記官の所属する簡易裁判所」と、「執行裁判所は」とあるのは「裁判所書記官は」と、「他の執行裁判所」とあるのは「他の簡易裁判所の裁判所書記官」と、同条第四項中「決定」とあるのは「裁判所書記官の処分」と読み替えるものとする。
(執行裁判所)
第百六十七条の三 少額訴訟債権執行の手続において裁判所書記官が行う執行処分に関しては、その裁判所書記官の所属する簡易裁判所をもつて執行裁判所とする。
(裁判所書記官の執行処分の効力等)
第百六十七条の四 少額訴訟債権執行の手続において裁判所書記官が行う執行処分は、特別の定めがある場合を除き、相当と認める方法で告知することによつて、その効力を生ずる。
2 前項に規定する裁判所書記官が行う執行処分に対しては、執行裁判所に執行異議を申し立てることができる。
3 第十条第六項前段及び第九項の規定は、前項の規定による執行異議の申立てがあつた場合について準用する。
(差押処分)
第百六十七条の五 裁判所書記官は、差押処分において、債務者に対し金銭債権の取立てその他の処分を禁止し、かつ、第三債務者に対し債務者への弁済を禁止しなければならない。
2 第百四十五条第二項から第四項までの規定は、差押処分について準用する。
3 差押処分の申立てについての裁判所書記官の処分に対する執行異議の申立ては、その告知を受けた日から一週間の不変期間内にしなければならない。
4 前項の執行異議の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
5 民事訴訟法第七十四条第一項 の規定は、差押処分の申立てについての裁判所書記官の処分について準用する。この場合においては、第三項及び前項並びに同条第三項の規定を準用する。
(費用の予納等)
第百六十七条の六 少額訴訟債権執行についての第十四条第一項及び第四項の規定の適用については、これらの規定中「執行裁判所」とあるのは、「裁判所書記官」とする。
2 第十四条第二項及び第三項の規定は、前項の規定により読み替えて適用する同条第一項の規定による裁判所書記官の処分については、適用しない。
3 第一項の規定により読み替えて適用する第十四条第四項の規定による裁判所書記官の処分に対する執行異議の申立ては、その告知を受けた日から一週間の不変期間内にしなければならない。
4 前項の執行異議の申立てを却下する裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
5 第一項の規定により読み替えて適用する第十四条第四項の規定により少額訴訟債権執行の手続を取り消す旨の裁判所書記官の処分は、確定しなければその効力を生じない。
(第三者異議の訴えの管轄裁判所)
第百六十七条の七 少額訴訟債権執行の不許を求める第三者異議の訴えは、第三十八条第三項の規定にかかわらず、執行裁判所の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。
(差押禁止債権の範囲の変更)
第百六十七条の八 執行裁判所は、申立てにより、債務者及び債権者の生活の状況その他の事情を考慮して、差押処分の全部若しくは一部を取り消し、又は第百六十七条の十四において準用する第百五十二条の規定により差し押さえてはならない金銭債権の部分について差押処分をすべき旨を命ずることができる。
2 事情の変更があつたときは、執行裁判所は、申立てにより、前項の規定により差押処分が取り消された金銭債権について差押処分をすべき旨を命じ、又は同項の規定によりされた差押処分の全部若しくは一部を取り消すことができる。
3 第百五十三条第三項から第五項までの規定は、前二項の申立てがあつた場合について準用する。この場合において、同条第四項中「差押命令」とあるのは、「差押処分」と読み替えるものとする。
(配当要求)
第百六十七条の九 執行力のある債務名義の正本を有する債権者及び文書により先取特権を有することを証明した債権者は、裁判所書記官に対し、配当要求をすることができる。
2 第百五十四条第二項の規定は、前項の配当要求があつた場合について準用する。
3 第一項の配当要求を却下する旨の裁判所書記官の処分に対する執行異議の申立ては、その告知を受けた日から一週間の不変期間内にしなければならない。
4 前項の執行異議の申立てを却下する裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
(転付命令等のための移行)
第百六十七条の十 差押えに係る金銭債権について転付命令又は譲渡命令、売却命令、管理命令その他相当な方法による換価を命ずる命令(以下この条において「転付命令等」という。)のいずれかの命令を求めようとするときは、差押債権者は、執行裁判所に対し、転付命令等のうちいずれの命令を求めるかを明らかにして、債権執行の手続に事件を移行させることを求める旨の申立てをしなければならない。
2 前項に規定する命令の種別を明らかにしてされた同項の申立てがあつたときは、執行裁判所は、その所在地を管轄する地方裁判所における債権執行の手続に事件を移行させなければならない。
3 前項の規定による決定が効力を生ずる前に、既にされた執行処分について執行異議の申立て又は執行抗告があつたときは、当該決定は、当該執行異議の申立て又は執行抗告についての裁判が確定するまでは、その効力を生じない。
4 第二項の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。
5 第一項の申立てを却下する決定に対しては、執行抗告をすることができる。
6 第二項の規定による決定が効力を生じたときは、差押処分の申立て又は第一項の申立てがあつた時に第二項に規定する地方裁判所にそれぞれ差押命令の申立て又は転付命令等の申立てがあつたものとみなし、既にされた執行処分その他の行為は債権執行の手続においてされた執行処分その他の行為とみなす。
(配当等のための移行等)
第百六十七条の十一 第百六十七条の十四において準用する第百五十六条第一項若しくは第二項又は第百五十七条第五項の規定により供託がされた場合において、債権者が二人以上であつて供託金で各債権者の債権及び執行費用の全部を弁済することができないため配当を実施すべきときは、執行裁判所は、その所在地を管轄する地方裁判所における債権執行の手続に事件を移行させなければならない。
2 前項に規定する場合において、差押えに係る金銭債権について更に差押命令又は差押処分が発せられたときは、執行裁判所は、同項に規定する地方裁判所における債権執行の手続のほか、当該差押命令を発した執行裁判所又は当該差押処分をした裁判所書記官の所属する簡易裁判所の所在地を管轄する地方裁判所における債権執行の手続にも事件を移行させることができる。
3 第一項に規定する供託がされた場合において、債権者が一人であるとき、又は債権者が二人以上であつて供託金で各債権者の債権及び執行費用の全部を弁済することができるときは、裁判所書記官は、供託金の交付計算書を作成して、債権者に弁済金を交付し、剰余金を債務者に交付する。
4 前項に規定する場合において、差押えに係る金銭債権について更に差押命令が発せられたときは、執行裁判所は、同項の規定にかかわらず、その所在地を管轄する地方裁判所又は当該差押命令を発した執行裁判所における債権執行の手続に事件を移行させることができる。
5 差押えに係る金銭債権について更に差押命令が発せられた場合において、当該差押命令を発した執行裁判所が第百六十一条第六項において準用する第百九条の規定又は第百六十六条第一項第二号の規定により配当等を実施するときは、執行裁判所は、当該差押命令を発した執行裁判所における債権執行の手続に事件を移行させなければならない。
6 第一項、第二項、第四項又は前項の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。
7 第八十四条第三項及び第四項、第八十八条、第九十一条(第一項第六号及び第七号を除く。)並びに第九十二条第一項の規定は第三項の規定により裁判所書記官が実施する弁済金の交付の手続について、前条第三項の規定は第一項、第二項、第四項又は第五項の規定による決定について、同条第六項の規定は第一項、第二項、第四項又は第五項の規定による決定が効力を生じた場合について準用する。
(裁量移行)
第百六十七条の十二 執行裁判所は、差し押さえるべき金銭債権の内容その他の事情を考慮して相当と認めるときは、その所在地を管轄する地方裁判所における債権執行の手続に事件を移行させることができる。
2 前項の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。
3 第百六十七条の十第三項の規定は第一項の規定による決定について、同条第六項の規定は第一項の規定による決定が効力を生じた場合について準用する。この場合において、同条第六項中「差押処分の申立て又は第一項の申立て」とあるのは「差押処分の申立て」と、「それぞれ差押命令の申立て又は転付命令等の申立て」とあるのは「差押命令の申立て」と読み替えるものとする。
(総則規定の適用関係)
第百六十七条の十三 少額訴訟債権執行についての第一章及び第二章第一節の規定の適用については、第十三条第一項中「執行裁判所でする手続」とあるのは「第百六十七条の二第二項に規定する少額訴訟債権執行の手続」と、第十六条第一項中「執行裁判所」とあるのは「裁判所書記官」と、第十七条中「執行裁判所の行う民事執行」とあるのは「第百六十七条の二第二項に規定する少額訴訟債権執行」と、第四十条第一項中「執行裁判所又は執行官」とあるのは「裁判所書記官」と、第四十二条第四項中「執行裁判所の裁判所書記官」とあるのは「裁判所書記官」とする。
(債権執行の規定の準用)
第百六十七条の十四 第百四十六条から第百五十二条まで、第百五十五条から第百五十八条まで、第百六十四条第五項及び第六項並びに第百六十五条(第三号及び第四号を除く。)の規定は、少額訴訟債権執行について準用する。この場合において、第百四十六条、第百五十五条第三項及び第百五十六条第三項中「執行裁判所」とあるのは「裁判所書記官」と、第百四十六条第一項中「差押命令を発する」とあるのは「差押処分をする」と、第百四十七条第一項、第百四十八条第二項、第百五十条及び第百五十五条第一項中「差押命令」とあるのは「差押処分」と、第百四十七条第一項及び第百四十八条第一項中「差押えに係る債権」とあるのは「差押えに係る金銭債権」と、第百四十九条中「差押命令が発せられたとき」とあるのは「差押処分がされたとき」と、第百六十四条第五項中「差押命令の取消決定」とあるのは「差押処分の取消決定若しくは差押処分を取り消す旨の裁判所書記官の処分」と、第百六十五条(見出しを含む。)中「配当等」とあるのは「弁済金の交付」と読み替えるものとする。