新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース 質問:障害を抱えていた従姉妹が、先日亡くなりました。当初は、従姉妹の介護はその夫が行っていたのですが、夫も早く亡くなり、夫の妹が、従姉妹を自宅に引き取り、身の回りの世話等を行っていました。私も、幼い頃から従姉妹とは仲が良く、心配していましたし、夫の妹だけに任せるのも負担だと思いましたので、事情があって同居はできなかったものの、いつも相談に乗り、不在となった留守宅の管理や、税金や年金の手続等、協力できることは行いました。従姉妹には子供も兄弟もなく、両親も既に死亡し法定相続人はいません。夫の妹は、特別縁故者として、相続財産からの分与を受けられると思いますが、私も、一部でも分与を受けることは無理でしょうか。夫の妹も、必要な経費は、従姉妹本人の資産から出していたはずです。 解説: 2.(特別縁故者の制度趣旨) 日本の私法制度は私有財産制(憲法29条)と私的自治の原則により成り立っています。従って、相続の場合も被相続人の財産処分の意思、及び推定的意思(遺志)に基づき遺言自由優先の原則(民法960条以下)、法定相続制(同900条)により遺産が分配されます。しかし、遺産の分配の時には、当の本人はこの世には存在しないので最も重要な意思確認が不可能ですから、遺言は厳格な方式が取られていますし、法定相続も利害関係人の混乱を避けるため戸籍により画一的に決定されることになります。不条理でも例えば内縁、事実上の養子、未認知の子に相続権はありませんし、厳格な遺言の方式を踏まなければ遺産を法定相続人以外に分け与えることはできません。 しかし、病気等の事情により突然お亡くなりになり遺言もなく相続人も不存在であるという不測の事態が生じることもあり得るわけです。遺言も、相続人もいなければ、権利者が存在しない以上国庫に帰属するといっても不都合はないようにも思います。しかし、私有財産制の原則を貫くのであれば、あくまで被相続人の推定的意思(遺志)を推し量りこれに基づいて財産を分配することが理論的であり、画一的に決定する法定相続制度以外に被相続人が有したであろう意思をさらに総合的に考慮し利害関係人に遺産を公平に分与することが必要です。 3.(手続き) ご相談の被相続人の従姉妹様の場合、民法上定められた法定相続人(民法887条〜890条)が見当たらない、ということになるかと存じます。そこで、従姉妹様の相続財産に対して、分与を求める場合には、まず、利害関係人として、相続財産の管理人の選任を申し立てることになります(民法952条1項)。管理人は、申立人が推薦することも可能ですし、弁護士会推薦等に従い裁判所が選任した弁護士が就任することもあります。相続財産管理人が選任されますと、その事実が公告され(民法952条2項)、相続財産管理人は、財産の状況について把握し、報告ができるようにすることになります(民法953条)。 4.(特別縁故者に対する財産分与の判断基準 縁故者複数の場合) そこで、どのような場合に特別縁故者に当たるかが問題になります。この特別縁故者として、民法が規定しているのは、@被相続人と生計を同じくしていた者、例えば、法定相続制度で保護されなかった内縁の妻、未認知の子、事実上の養子等が考えられます。A被相続人の療養監護に努めた者、Bその他被相続人と特別の縁故のあった者ということになります(民法958条の3)。@及びAは基本的に被相続人が生存していたら通常遺産を分配したであろうという推定的意思に基づき認められます。 5.(判例) 広島高裁平成15年3月28日決定。裁判例では、相続財産として、土地建物約700万円相当、預金約4200万円が残され、10年以上、身体に障害のある本人の療養介護に尽くした配偶者の兄弟と、資産管理に努めた従兄弟が特別縁故者として問題となり、家庭裁判所での原審判で、配偶者の兄弟(療養監護者)に2600万円、従兄弟(資産管理者)に土地建物を含む2300万円の分与の判断がなされ、配偶者の兄弟及び相続財産管理人が、これを不服として即時抗告をした事案があります。この事案について、同居して、家族の協力を得て、療養介護に尽くした縁故者の方が、財産管理を中心とした縁故者よりも、縁故の程度が相当濃密であると判断し、原審判を変更して、療養監護者に7割(預金)、資産管理者に3割(その他の資産)を分与した、という決定例があります(広島高裁平成15年3月28日決定)。 6.(その他の参考判例) 大阪高等裁判所平成20年(ラ)第973号、平成20年10月24日決定(特別縁故者に対する相続財産分与審判に対する抗告事件)。 決定内容。被相続人の父の妹の孫と配偶者の請求に対して6000万円の遺産のうち各々500万円の分与を認めています。 (参考判例2) 鳥取家庭裁判所平成20年(家)第365号、平成20年10月20日審判(特別縁故者に対する相続財産分与申立事件)。老人ホームに入所後に任意後見人となった従兄弟の配偶者に対し遺産2500万円のうち600万円の財産分与を認めています。 (判例) 仙台高等裁判所平成15年(ラ)第123号、平成15年11月28日決定(特別縁故者に対する相続財産の分与申立認容審判に対する即時抗告事件)4000万円の遺産について叔母2名と義理の従兄弟1名の特別縁故者を認め不動産と預金を被相続人の推定的意思を重視して分配しています。被相続人の不動産を長期間にわたり管理し最後にお世話をした叔母、幼い時から親しく交際をした義理の従兄弟、被相続人に自宅をアトリエとして使用させた叔母を特別縁故者と認めて不動産を現金化し、その他の現金と合わせ分与した事例です。以上、いずれの判例も被相続人の推定的意思、遺産に対する財産的寄与等から妥当な判断でしょう。 7.(まとめ) 誰がどのような割合で特別縁故者として財産を譲り受けるかという問題は権利があるかいなかという問題ではなく、具体的な事実をもとに公平の見地、被相続人の推定的意思という点から裁判所が裁量で判断することですので、具体的な事実を裁判所に説明し裁判所の判断に従うという考え方で解決を図るのが良いでしょう。 ≪参考条文≫ <民法>
No.1027、2010/5/14 12:35 https://www.shinginza.com/qa-souzoku.htm
【相続・相続人の不存在・特別縁故者の類型と複数認定について】
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回答:
1.相続人がいない場合、相続財産の管理人の選任を申し出て、相続人捜索の公告期間(6か月以内の期間)満了してから3か月以内に、特別縁故者として申し出た者に対して、財産が与えられることがあります(民法958条の3)。複数の特別縁故者がいる場合には、法律の趣旨からみて、具体的、実質的な縁故の程度に応じた分与がなされるべきとの判例がありますので、従姉妹様のご主人の妹様よりは低い割合かもしれませんが、一部、分与が認められる可能性はあります。
2.この場合、特別縁故者の趣旨から被相続人との会話の内容、手紙、補助した内容を詳細に準備して、被相続人との関係から生存していれば、遺産を分配したであろうという推定的意思(遺志)を積極的に立証する必要があります。他人の場合と異なり身内はあなただけのようですのでその点を強調すべきです。尚、特別縁故者が親族等何らかの血縁関係がないような場合は、立証の内容、範囲も広がると思います。
3.法律相談事例集キーワード検索670番、651番、233番、118番参照。
1.(特別縁故者に対する財産分与) 法定相続人がいない場合、民法では相続財産は法人とされ(民法951条)、その管理を家庭裁判所が選任した相続財産管理人が行うことになります。相続財産管理人が選任されると一定の期間を定めて相続人の調査をし、それでも相続人がいない場合は相続財産に対する債権者の調査をして相続財産から支払いをし、権利を主張する者に対しては相続財産の引き渡しをします。それでも残った相続財産については、被相続人と特別の縁故があった者から、請求があった場合にかぎり家庭裁判所の判断でその者に対して相続財産の全部または一部が与えられます。これを特別縁故者に対する財産分与と言います。
勿論、遺産には債権者でなくても実質的に見て財産的精神的に遺産の形成に貢献した者もありますから遺産の清算という側面も考慮しなければいけません。以上が特別縁故者への財産分与の根拠です。従って、縁故者の解釈に当たっては、被相続人の財産分配意思が推定されるような関係があるかどうかと、遺産の実質的清算という面から判断されることになります。
この公告から2ヶ月の間に、相続人が発見されなければ、相続財産管理人は、今度は、亡くなった人の債権者(相続債権者)に対して、2ヶ月以内に請求をするように、という公告を行い(民法957条)、それでも、相続人が発見されなかった場合には、家庭裁判所が、6ヶ月間の公告を行うことになりますが(民法958条)、この期間の満了後3ヶ月以内に、亡くなった人と特別の関係がある者、特別縁故者が請求を行えば、家庭裁判所は、その者に、財産の全部又は一部を与えるとの判断をすることができます(民法958条の3)。その請求もなかった場合には、相続財産は、国庫に帰属することになっています(民法959条)。
従ってBの特別の縁故という解釈も、被相続人の推定的意思と遺産への財産的精神的寄与という面から下記の事由を総合的に判断して決定されることになります。ご相談の場合、特別縁故者に当たるかどうかについては、Bを検討すべき事になるかと存じますが、その表現が包括的なため、該当するかどうかは、難しい判断となります。@、Aに準ずる程度に具体的、現実的に密接な縁故関係があり、相続財産を分与することが、故人の意思にも合致すると思われるもの、具体的には、生活上の支援や財産管理の有無、程度、期間、被相続人の意思、@、Aに類似する生活関係が考慮されるようです。
また、複数の特別縁故者になると判断される場合(一人に限る、という規定はありませんので、複数いる場合もあり得ます)の分与額決定の判断基準も、明確な規定等はないのですが、縁故関係の内容、縁故の濃淡、程度、縁故者の性別、年齢、職業、教育程度、相続財産の種類、数額、状況、所在等一切の事情を考慮する、とされています。
もちろん、具体的にはいろいろな判断が考えられると思いますが、資産の管理や手続よりは、療養監護の方が、濃密な印象を与えやすいかもしれませんので、従姉妹様のご主人の妹様よりは低い割合かもしれませんが、具体的関与の程度によっては、ご自身に一部の分与が認められる可能性も生じてくると思います。
「被相続人が平成11年に老人ホームに入所してからは,Bが,入所時の身元保証人や成年後見人となったほか,AとBは,多数回にわたって,遠距離の旅程をものともせず,老人ホームや入院先を訪れて,親身になって被相続人の療養看護や財産管理に尽くした上,相当額の費用を負担して,被相続人の葬儀を主宰したり,その供養も行っているものである。このような関係をみると,AとBは,被相続人と通常の親族としての交際ないし成年後見人の一般的職務の程度を超える親しい関係にあり,被相続人からも信頼を寄せられていたものと評価することができるから、民法958条の3所定の,いわゆる特別縁故者に該当するものと認めるのが相当である。4 そこで,被相続人の相続財産からどの程度の財産をAとBに分与すべきかについてみるに,上記のA及びBと被相続人の特別の縁故関係,相続財産管理人保管に係る相続財産が,本件遺産動産のほか預金約6283万円であること,その他,本件に表れた一切の事情を考慮すると,原審の定めた金額はやや低額とみることができ,被相続人の相続財産からAに対し本件遺産動産及び500万円を,Bに対し500万円を,それぞれ分与するのが相当というべきである。」
審判内容「(1)事実関係 ア 被相続人は,大正15年×月×日に父C,母Dの長男として○○市で出生し,父母の死亡後,□□市に出て働いたのち○○市に戻り,市内の○○○に勤務し,60歳で定年退職した。退職後,被相続人は,老人ホームに入所した。その際,被相続人の元同僚が身元引受人となったが,同人は平成14年ころ,事故で寝たきりとなった。イ 申立人(昭和10年×月×日生)は,昭和30年×月×日に夫Eと結婚した。Eは,被相続人の又従兄弟(被相続人の父CとEの父Fが従兄弟)であるところ,平成14年×月×日,老人ホームの担当者から依頼され,前記の事情で新たな身元引受人が必要となった被相続人のために身元引受人となり,以来,老人ホームの行事に参加したり,時には被相続人が申立人夫婦宅を訪れてEと酒を酌み交わすなど,親交が深まった。なお,申立人は,Eの母Gとともに,かねて,被相続人の実家のC家が△△町に残した墓の守りをC家の者に代わってしてきており,昭和62年に被相続人が両親の墓を○○市内の○×寺に移した後も,△△町に残された被相続人の祖父母の墓を守ってきた。その間,被相続人はC家の長男として,盆や彼岸に墓参りに来ており,G家にも挨拶に来て,申立人とも顔見知りとなっていた。Gは平成15年に死亡したが、申立人は,その後もC家の墓守を続けてきた。ウ Eは,平成18年×月×日,交通事故で死亡した。その1か月後,被相続人と老人ホームの担当者が申立人を訪ねて来て,申立人に対し被相続人の身元引受人となることを依頼し,申立人はこれを引き受けた。申立人は,身元引受人となった後,被相続人のため,再々,下着等の衣類を自費で購入して届け,その際,みやげ物を持参したこともある。 同年9月ころ,老人ホームが廃止となるとの話が持ち上がり,申立人は,身元引受人として,その説明会に3,4回参加し,また被相続人の相談に乗るなどしていたが,被相続人から後見人となることを依頼され,同年×月×日,被相続人との間で,申立人を受任者とする任意後見契約を締結した。なおまた,申立人は,被相続人から○×寺にあるC家の墓の永代供養に関する相談も受け,被相続人に同伴して○×寺に赴き,住職に永代供養の申入れを行った。永代供養料100万円のうち50万円は同日被相続人が支払い,残金50万円は,被相続人の死亡後,相続財産から支払われた。エ 同年×月×日朝,被相続人は,老人ホームにおいて,起床時間になっても起きてこず,自室で,喉に痰を詰まらせ死亡しているのが発見された。同日午前4時ころ死亡したものと推定されている。 申立人は,前記任意後見契約に基づき,被相続人の葬儀や○×寺への納骨を執り行い,葬儀費用等103万7212円を立替払した(立替金は,既に相続財産から弁済済み)。オ 申立人は,被相続人のため老人ホームの退寮手続を行い,同月×日に遺品を引き取ったところ,1週間後,遺品中のノートに,「遺言書 自分死亡した後全財産を成年後見人おゆずりします A氏に 平成十八年×月×日△△町 B」と書かれた書面が挟まれており,また,ノート自体にも「遺言証書 右B A氏に自分全財産をおゆずりします 十八年×月×日」と書かれているのを発見した(以下,これらの記載を「本件メモ書き」という。)。 なお,被相続人は,前記任意後見契約に際し,公証人から,遺言書の作成についても示唆を受けていた。カ 申立人は,被相続人の死亡後も,前記のC家の墓を守り,また,○×寺への墓参りを続けている。キ 申立人は,被相続人に法定の相続人がいないため,当庁に相続財産管理人の選任を申し立て,H弁護士が相続財産管理人に選任され,民法957条及び同法958条の手続が行われたが,申立人が上記立替金につき請求の申し出をしたほかは,所定の期間内に相続債権者,受遺者又は相続人であるとして請求の申出又は権利の主張をするものはなかった。ク 平成20年×月×日現在の被相続人の相続財産は,別紙財産目録記載のとおりであり,これから,相続財産管理人の報酬の支出が予定されている。
(2)以上の事実によれば,平成14年×月以降,申立人の夫が又従兄弟の関係にある被相続人の老人ホーム入所につき身元引受人となったもので,その間申立人も妻として相応の協力をしたものと推定されるし,夫が死亡した後は,短期間ではあるが,自ら身元引受人となり,衣類を届けるなど身辺の世話をしていたものであること,さらに,被相続人の依頼により,任意後見契約を結んでおり,被相続人から厚い信頼を得ており,同人の精神的支えとなっていたことが窺われること,被相続人の死亡後は,葬儀等や退寮手続を行い,身辺整理をするなどしたこと,また,かねて,C家の墓守をしており,死亡後もその墓守を続けるとともに,納骨した○×寺への墓参りも行っていること,そして,被相続人は,申立人に相続財産を包括遺贈する旨の本件メモ書きを残しており,有効な遺言の方式を備えていないものの,相続財産を遺贈する意向を明確に表示していることなどを考慮すると,被相続人と特別の縁故があったものと認めるのが相当である。
(3)そこで分与額につき検討すると,申立人は,一定期間被相続人の身辺監護を支援するなどし,被相続人は申立人に相続財産を包括遺贈する旨の本件メモ書きを残しているなどの事情が認められるが,他方,本件メモ書きは遺言書としての方式を備えず不完全なものであるところ,公証人から遺言書の作成につき示唆を受けたのに,かかる書面を作成するに止まった具体的な事情は明らかでないが,客観的,外形的に見て,被相続人の申立人に対する包括遺贈の意思が未だ確定的なものとなっていなかったといわざるを得ないこと,また,申立人は,被相続人の相続財産の形成,維持に寄与したものではないこと,その他前記認定説示の諸事情を総合考慮し,相続財産管理人の意見を聴いた上,申立人に対し,別紙財産目録記載の財産のうち600万円を分与するのを相当と認めて,主文のとおり審判する。」
(子及びその代襲者等の相続権)
第八百八十七条 被相続人の子は、相続人となる。
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
3 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。
第八百八十八条 削除
(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)
第八百八十九条 次に掲げる者は、第八百八十七条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。 二 被相続人の兄弟姉妹
2 第八百八十七条第二項の規定は、前項第二号の場合について準用する。
(配偶者の相続権)
第八百九十条 被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第八百八十七条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。 (相続財産法人の成立)
第九百五十一条 相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。 (相続財産の管理人の選任)
第九百五十二条 前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の管理人を選任しなければならない。
2 前項の規定により相続財産の管理人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なくこれを公告しなければならない。
(不在者の財産の管理人に関する規定の準用)
第九百五十三条 第二十七条から第二十九条までの規定は、前条第一項の相続財産の管理人(以下この章において単に「相続財産の管理人」という。)について準用する。
(相続財産の管理人の報告)
第九百五十四条 相続財産の管理人は、相続債権者又は受遺者の請求があるときは、その請求をした者に相続財産の状況を報告しなければならない。
(相続財産法人の不成立)
第九百五十五条 相続人のあることが明らかになったときは、第九百五十一条の法人は、成立しなかったものとみなす。ただし、相続財産の管理人がその権限内でした行為の効力を妨げない。
(相続財産の管理人の代理権の消滅)
第九百五十六条 相続財産の管理人の代理権は、相続人が相続の承認をした時に消滅する。
2 前項の場合には、相続財産の管理人は、遅滞なく相続人に対して管理の計算をしなければならない。
(相続債権者及び受遺者に対する弁済)
第九百五十七条 第九百五十二条第二項の公告があった後二箇月以内に相続人のあることが明らかにならなかったときは、相続財産の管理人は、遅滞なく、すべての相続債権者及び受遺者に対し、一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、二箇月を下ることができない。
2 第九百二十七条第二項から第四項まで及び第九百二十八条から第九百三十五条まで(第九百三十二条ただし書を除く。)の規定は、前項の場合について準用する。
(相続人の捜索の公告)
第九百五十八条 前条第一項の期間の満了後、なお相続人のあることが明らかでないときは、家庭裁判所は、相続財産の管理人又は検察官の請求によって、相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、六箇月を下ることができない。
(権利を主張する者がない場合)
第九百五十八条の二 前条の期間内に相続人としての権利を主張する者がないときは、相続人並びに相続財産の管理人に知れなかった相続債権者及び受遺者は、その権利を行使することができない。
(特別縁故者に対する相続財産の分与)
第九百五十八条の三 前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。
2 前項の請求は、第九百五十八条の期間の満了後三箇月以内にしなければならない。 (残余財産の国庫への帰属)
第九百五十九条 前条の規定により処分されなかった相続財産は、国庫に帰属する。この場合においては、第九百五十六条第二項の規定を準用する。