相続財産の調査方法

家事|相続|具体的相続財産の調査方法|実際の手続き

目次

  1. 質問
  2. 回答
  3. 解説
  4. 関連事例集
  5. 参考条文

質問:

父親の相続、遺産の調査について質問します。相続人は私と兄の二名です。私が小学生に上がる前に両親は離婚し、私は母方に育てられました。兄は父親の下で生活していたため、父や兄との交流は一切ありませんでした。先日父が亡くなったようで、兄の代理人であるという弁護士事務所から、「遺産分割協議のお願い」という手紙が来ました。私は父や兄に対する格別の感情はありませんが、相続財産があるなら応分のものは相続したいと思います。弁護士の手紙には相続財産の目録も記載されており、銀行の残高証明書の写しや登記簿謄本写しなども添付されていました。当方から積極的に父の遺産を調査する方法はありますか?

回答:

1、 お父様が亡くなったということで、質問にある通り子供であるご相談者様と、お兄さんの二人が第一順位の相続人ということになります。相続人は、「包括承継人」と言って、被相続人(亡くなった方)の全ての法的地位を引き継ぐ立場になります。つまり、不動産や預貯金などプラスの財産も、借金などマイナスの財産も全て引き継ぐことになります。

2、 相続発生時すなわちお父様の死亡時点の、財産を相続財産、遺産として法定相続分に従って分割するのが相続の原則です。ですので、本来はすべての財産を明らかにして、それを具体的に各相続人がどのように引き継ぐのか協議する必要があります。しかし現実は、亡くなった被相続人と同居していた人や、生前の生活状況を知っていた人が相続財産の全体を把握しておりそれ以外の人が、相続財産の全体を把握することは困難です。具体的に分割するのに遺産分割協議書が必要な財産、例えば不動産については、協議書を作成するために、具体的に財産を示す必要がありますが、現金、動産のように、一部の相続の人の手元にある財産については、保管している人が隠して全部相続しようとすれば、可能なのが現実です。隠された財産を、分割の対象とすることは現実には不可能と言って良いでしょう。今回、お兄様の代理人弁護士から銀行の残高証明や登記簿謄本写しが送られてきた、ということですが銀行預金を現金にするには遺産分割協議書なり預金を引き出すための書類(銀行が用意している書類があります)が必要ですし、不動産については、相続を原因とする所有権移転登記をするのに遺産分割協議書が必要です。これらの書類が不要な財産については、隠して独り占めしようとすれば、それを防ぐことは極めて困難といえます。

3、 但し、調査が必要な場合は次のような調査が可能です。

まず、残高証明に記載された預金残高が少なすぎるような場合は、預金の取引履歴を取り寄せて、記録内容を精査してみることが可能です。また、取引履歴やその他の事情から被相続人が株式投資をしていたことがうかがえる場合は、証券会社の証券口座の取引履歴も精査する必要があるでしょう。証券会社が分からない場合は、株券不発行制度による株式の電子的管理を行っている証券保管振替機構に対する開示請求を行うこともできます。

不動産については、お兄様も知らないものがあるかもしれません。不動産については、名寄帳という財産を取りまとめた書類がありますから被相続人の死亡時の住所地の役所から取り寄せて確認してみることが出来ます。また、被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本と住民票を取り寄せることにより、当該住所地の不動産所有権を取得していなかったかどうかを調べることができます。祖父母の代の不動産が残っている場合もあります。戸籍や住民票は、相続人の立場で取り寄せることもできますが、代理人弁護士を依頼して職務上請求で取り寄せて貰うこともできます。

4、 注意すべきは、遺産分割協議書を作成する際に、相続財産を明記し、後日その他の財産が明らかになった場合は再度協議する、という文言を入れておくことです。その他の財産は、お兄様が相続する、というような文言を協議書に記載することだけはしないよう注意してください。相手方が弁護士を依頼して遺産分割協議を求めているのであれば、あなたも弁護士を依頼するのも一つの方法ですから、心配な場合は相談されるとよいでしょう。

5、遺産調査に関する関連事例集参照。

解説:

1、相続は包括承継

本邦の民法典では、自然人が死亡すると、その配偶者や子供など近親者に相続権が与えられており、相続人の意思により、相続開始から3か月以内に相続放棄するか、相続承認するかを選ぶことができるようになっています。必ずしも亡くなった方と、配偶者やお子さん達が同居しているとは限りませんが、被相続人の生前の意思を尊重し、また、家業を手伝っていたり家事を分担していたりなど、被相続人の相続財産の形成に、配偶者や子供などの近親者が事実上の寄与をしていることも多いため、このような相続制度が採られています。

相続人は、亡くなった方(被相続人と言います)の一身専属権を除き、一切の権利義務を引き継ぎます。一身専属権とは、当該個人の個性や能力に着目して設定された権利義務です。使用貸借で借り受けている状態とか、祭祀継承権や、雇用契約上の地位とか、会社役員としての地位など、変わったものでは人間国宝の地位なども含まれます。そのような、個人の個性に着目した相続されない権利義務を除いた、あらゆる財産権や法的義務を引き継ぐのです(民法896条、920条)。

民法896条(相続の一般的効力)相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

民法920条(単純承認の効力)相続人は、単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継する。

このように、相続人が被相続人のあらゆる権利義務を引き継ぐことを、包括承継と言います。民法典では「包括承継」という用語は使われていませんが、「包括受遺者」を定めた条文があります。いずれにしても、一切の権利義務を承継するという意味です。

民法990条(包括受遺者の権利義務)包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。

包括承継人となった相続人は、被相続人の権利義務の一切を引き継ぎますので、当該財産権を行使する時には、被相続人と法的に同一の立場に立って権利行使し、または義務履行することになります。被相続人が為し得た行為は、全て相続人も為すことができるのです。従って、銀行の預金者の地位を包括承継したのであれば、当該銀行に対して、残高証明書の発行を求めたり、取引履歴の開示を求めたり、また、預金の払い戻しを請求したりすることもできることになります。但し、預金の払い戻しなどの解約行為は、相続人の全員からの意思表示が無ければ銀行としても応じることが出来ませんので注意が必要です。

2、被相続人と交流が無かった場合の相続財産調査

ご相談のように、第一順位の相続人である一親等の直系卑属(つまり子供)が複数名居られる場合は、平等割合で法定相続分を有することになりますので、ご相談者様とお兄様は、各2分の1ずつの法定相続分を有することになりますが、この法定相続分を、実際の相続財産の分割としてどのように割り当てるのかを協議するのが、遺産分割協議です(民法907条1項)。

民法907条(遺産の分割の協議又は審判等)

1項 共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。

2項 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができる。ただし、遺産の一部を分割することにより他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合におけるその一部の分割については、この限りでない。

3項 前項本文の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。

遺産分割の基準は、民法906条で定められています。当事者間の話し合いが上手くいかない時は、家庭裁判所の遺産分割調停や審判で強制的に分割することができます。

民法906条(遺産の分割の基準)遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。

例えば、相続人のうちの一人が被相続人所有不動産に同居していた場合に、当該不動産と現金や預貯金などの遺産がある場合に、居住していた土地建物を同居していた相続人が相続し、預貯金や現金を同居していなかった相続人が主に相続する、というような取り決めを行い、これを遺産分割協議書として締結調印します。これは、登記原因証明情報として、不動産の相続登記の申請書の添付書類とすることができます。

遺産分割協議は、相続人同士の任意の協議ですから、裁判所などで行う必要はなく、相続人の一方の住居で行うこともできるし、どこかの飲食店などで協議することもできますし、電話やメールやビデオ会議で話し合って、書類を郵送して持ち回りで協議書を作成しても有効とされています。当然、弁護士や司法書士や税理士などの法律税務専門家などを介さなくても有効に協議することができます。

しかし、同一順位の相続人同士、例えば兄弟姉妹同士の関係といえども、自分に有利になるような遺産分割協議をしたいという気持ちを持つことは避けられませんし、ご相談の場合の様に長期に別々の生活をしていた場合や、財産管理を任されていた相続人が居る場合や、当該相続人が多額の預金を引き出して現金として所持しているなどの事情がある場合は、相続財産の範囲が不明確になってしまう場合があります。

例えば、被相続人の身の回りの推定相続人が主導して、相続財産の隠匿を企図して、被相続人が死亡する直前期に不動産を売却してしまい、売却代金を第三者に預けてしまった場合は、不動産の所有権が、その第三者に対する預託金返還請求権もしくは不当利得返還請求権という債権に転換していることになります。不動産であっても、債権であっても、本来は相続財産の価値に変化は無いはずですが、不動産よりも、そのような債権債務の方が調査をすることが困難になってしまうのが実情です。

遺産分割協議の代理人弁護士を依頼している場合でも、弁護士に対して遺産を隠匿していた場合は、弁護士としても遺産の範囲を誤認識している可能性もあります。相手方代理人弁護士から連絡が来たとして、その弁護士に「他に遺産を隠していることはありませんか」と質問しても、「私は存じません」という回答があるだけで相続財産調査をしていることにはならないのです。弁護士としては、依頼者から報告のあった財産を遺産分割協議の対象となる相続財産とするだけで、他に相続財産があるのか調査する義務はありません。また、家庭裁判所に遺産分割協議調停を申し立てても、相続財産の全部を調査することはありません。申立人や相手方から申告のあった財産を分割協議の対象とするだけです。

従って、相続財産の範囲に疑問や御心配がある場合は、相手方に問い質したり、相手方代理人に質問しても調査の実効性は期待できず、あなた自身で、または自分自身の弁護士を依頼して、相続財産調査の努力をする必要があります。

3、具体的な遺産調査方法

(1)被相続人とその直系尊属の戸籍と住民票除票調査

まず、お父様の誕生から亡くなるまでの戸籍謄本を取り寄せます。結婚(再婚)や転籍などをしている場合は、本籍地が移動している可能性があります。それから、住民票の除票についても、可能な限り、遡って取り寄せてみると良いでしょう。死亡時の住所地の住民票除票を取り、そこに記載された転居元の除票を取得します。

令和元年(2019年)6月20日から、住民基本台帳法の一部が改正され、住民票の除票及び戸籍の附票の除票が従来の5年間から150年間保存することになりました。

※ただし、すでに保存期間を経過してしまっているもの(平成26年(2014年)3月31日以前に消除又は改製したもの)については、請求することができません。

次に、可能であれば、お父様のお父様とお母様(つまり祖父、祖母)の誕生から死亡までの戸籍謄本と戸籍付票も取り寄せてみましょう。

(2)被相続人とその直系尊属の本籍地と住所地の不動産調査

お父様と祖父様、祖母様の本籍地と住所地が分かったら、これをリストアップし、可能な限り、当該住所地の不動産登記簿謄本の取得(登記情報閲覧)をしてみましょう。この時、住居表示と土地建物の地番が異なっている場合がありますので注意が必要です。

1962年(昭和37年)5月10日に「住居表示に関する法律」が公布され即日施行されました。不動産の登記簿謄本を請求する時の「地番」と「本籍地や住民票に記載される住所地」は同じ場所でも、住居表示が実施されている区域では表記が異なることがありますので注意が必要です。

例えば、〇県〇市〇町1234番地という地番があったとして、

住居表示が実施されると、12番34と表記されることがあります。

これは同じ場所ですが、不動産登記簿の地番表記と、住民票の所在地では異なることになります。住民票所在地から、登記簿上の地番を知るには、両者の関係が併記されている「ブルーマップ」などの専用地図を閲覧確認する方法や、法務局に問い合わせて当該地番を調べる方法などがあります。

このようにして、被相続人とその両親に関わりのある土地の登記情報と、建物の登記情報を閲覧すると、当該土地建物の所有権者と、抵当権などの担保権者の情報が分かることがあります。土地建物の登記情報を閲覧申請する時は、「共同担保目録付き」の閲覧申請をして下さい。住宅ローンを組む時に、土地と建物を共同担保に入れることが多いですが、それ以外にも、事業ローンを組む場合などに、債務者が他に所有している不動産も一緒に担保に入れることがあり、それにより、他の相続財産が判明することもあります。

・各土地建物の所有者

・各土地建物の担保権者(銀行など)

・各土地建物の共同担保目録

これらの情報を精査することが必要です。

(3)固定資産課税台帳(名寄帳)交付申請

市区町村の固定資産税課では、納税義務者ごとに課税される土地建物をリストアップしている固定資産税台帳の個人別名寄帳があり、名義人から過去5年分遡って謄写申請することができます。固定資産関係証明等交付申請書という書式で申請します。これも、本人と同一の法的地位で、相続人から交付申請することができます。過去の名寄帳を確認することにより、売却された不動産が判明する可能性があります。

※参考記事、東京都主税局の説明ページ(土地家屋名寄帳について)

https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/scene/index01.html

(4)被相続人とその直系尊属の本籍地と住所地の法人調査

亡くなった方が会社を経営していたり、資産管理会社を運営していた場合は、各本籍地や住所地を本店所在地として法人登記をしている場合があります。前記の共同担保目録をたどることにより、他の不動産の抵当権の債務者として法人が登記されている場合もあります。被相続人が運営していた会社が見つかった場合は、その株式も相続財産に含まれることになりますので、その会社の資産を調査する必要を生じます。会社の本店移転登記が為されている場合は、以前の本店所在地の不動産登記情報を閲覧申請すると新たな不動産資産が判明することもあります。

(5)信用情報センターに対する開示手続き

全国銀行協会(全銀協)が運営している信用情報センターの信用記録を相続人の立場で開示請求すると、加盟している銀行系金融機関の借り入れ情報が判明することがあります。これは、マイナス財産の調査が本来の目的ですが、同時に、担保に差し入れられている当該金融機関の預貯金等が判明することもあります。

※全銀協の開示手続きページ

https://www.zenginkyo.or.jp/pcic/open/

同じように、貸金業系の信用情報機関である、株式会社日本信用情報機構(Japan Credit Information Reference Center Corp.略称 : JICC)に開示請求を行い、当該機関に加盟している貸金業者の借り入れが判明した場合は、自動引き落とし口座を問い合わせるなどして預貯金等が判明することもあります。

※JICCの開示手続きページ

https://www.jicc.co.jp/kaiji/

また、クレジット信販系の信用情報機関CICに開示請求を行うことにより、被相続人の負債や資産が判明することもあります。

※CICの開示手続きページ

https://www.cic.co.jp/mydata/index.html

(6)弁護士法23条照会手続きによる銀行預金調査

弁護士法23条の照会請求手続きにより、相続人から、被相続人の預貯金の有無と残高について、銀行などの金融機関に全店照会を行うことが出来る場合があります。被相続人の住所地付近の金融機関に取引履歴の有無を照会する方法も考えられます。

※日弁連の照会手続解説ページ

https://www.nichibenren.or.jp/activity/improvement/shokai.html

(7)証券保管振替機構への開示請求

被相続人が株式投資をしているが、証券会社が分からない場合は、株券不発行制度による株式の電子的管理を行っている証券保管振替機構に対する開示請求を行うこともできます。

※証券保管振替機構の開示手続き説明ページ

https://www.jasdec.com/system/less/certificate/kaiji/index.html

(8)所得税の確定申告書の閲覧申請

被相続人が個人事業主であったり、不動産所得があったり、2千万円以上の給与所得者であった場合には、確定申告をしていますので、これを閲覧申請することにより、被相続人の収入や資産が判明する場合があります。

※国税庁HPより申告書等閲覧サービスの実施について(事務運営指針)

https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/sonota/050301/01.htm

閲覧時には、税務職員が立ち会いますが、写真撮影をすることもできます。 写真撮影は、デジタルカメラ、スマートフォン、タブレット又は携帯電話など、その場で写真が確認できる機器に限って認められます。

4、遺産分割調停の申立て

相続財産が散逸して他人名義の財産に移行してしまった場合などには、「遺産確認の訴え」や「不当利得返還請求の訴え」により財産を取り戻す訴訟手続きを検討することになりますが、そもそも、そのような遺産があるのかもわからないという場合に、まず話し合いを試みる方法として遺産分割調停を検討されると良いでしょう。

※最高裁判所の遺産分割調停解説ページ

https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_07_12/index.html

※遺産分割調停申し立て書式例

https://www.courts.go.jp/saiban/syosiki/syosiki_kazityoutei/syosiki_01_34/index.html

調停は話し合いの手続きですが、裁判所が必要と考えれば、証拠調べを行うことも出来ますし、家庭裁判所調査官や調停委員による調査が行われる場合もあります(家事事件手続法261条、同262条)。但し、このような調査が行われることは、必要性が極めて高い、明らかに財産が隠されていてその発見が容易な場合に限られ、期待しない方が良いでしょう。

家事事件手続法261条(調停委員会を組織する裁判官による事実の調査及び証拠調べ等)

1項 調停委員会を組織する裁判官は、当該調停委員会の決議により、事実の調査及び証拠調べをすることができる。

2項 前項の場合には、裁判官は、家庭裁判所調査官に事実の調査をさせ、又は医師である裁判所技官に事件の関係人の心身の状況について診断をさせることができる。

3項 第五十八条第三項及び第四項の規定は、前項の規定による事実の調査及び心身の状況についての診断について準用する。

4項 第一項の場合には、裁判官は、相当と認めるときは、裁判所書記官に事実の調査をさせることができる。ただし、家庭裁判所調査官に事実の調査をさせることを相当と認めるときは、この限りでない。

5項 調停委員会を組織する裁判官は、当該調停委員会の決議により、家庭裁判所調査官に第五十九条第三項の規定による措置をとらせることができる。

家事事件手続法262条(家事調停委員による事実の調査)調停委員会は、相当と認めるときは、当該調停委員会を組織する家事調停委員に事実の調査をさせることができる。ただし、家庭裁判所調査官に事実の調査をさせることを相当と認めるときは、この限りでない。

5、まとめ

以上の様に、弁護士から遺産分割協議の提案がなされたとしても、相続財産目録の内容が必ずしも正しいとは限りませんので、被相続人との交流が無かったなどの事情がある場合は、御自身でも相続財産調査の努力をすべきことになります。お兄さんが弁護士を依頼したということは、確保したい相続財産があるということを意味するでしょう。弁護士には公益的な立場も勿論ありますが、私人間の対等な交渉案件の依頼を受けている場合は、依頼者の利益を実現するのが第一の仕事になります。相手方が弁護士を依頼しているのであれば、あなたもお近くの弁護士事務所に一度ご相談なさってみて下さい。

以上

関連事例集

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※参照条文

民法896条(相続の一般的効力)相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

民法920条(単純承認の効力)相続人は、単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継する。

民法990条(包括受遺者の権利義務)包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。