新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1080、2011/2/4 13:19

【民事訴訟法・専属的合意管轄の有効性・判断基準】

質問:よく商品を買ったりすると,約款に「本件について紛争となった時は東京地方裁判所を管轄裁判所とする。」というような専属的合意管轄というものが定めてありますが,これは何なのでしょうか?また,そこに定められている裁判所に訴えを起こさないといけないのでしょうか。

回答:
1.専属的合意管轄とは,当事者の合意によって,訴訟を行う場合には,どこの裁判所で訴訟をするかを定めたもので,その合意で定めた裁判所以外では訴訟は行わない,との取り決めです。このような専属的合意管轄は,特別に法律で定められた特殊な事件を除いて書面で約束できることになっています(民訴11条)。私的自治の原則からは,当事者の合意で,あらかじめ問題が生じた場合の裁判所を定めておくことを否定する理由はありません。この場合は原則として,合意で定めた裁判所に訴訟を起こさなければなりません。しかし,大企業と一般私人との契約のような場合に定型的な契約書で専属的合意管轄が定められている場合は,大企業が一方的に契約書のひな型を作成して,一般私人はそれに署名して契約書を作成するしかないのが現実ですから,そのような場合は,専属的な合意はなかったとされます(東京高裁昭和58・1・19)。
2.法律相談事例集キーワード検索:962番519番67番参照。

解説:
1.管轄について一般的な説明をします。(管轄の趣旨)
 管轄とは,日本の裁判権が及ぶ事件を,各裁判所においてどのように分担するかの定めをいいます。日本の裁判所がその事件の審判をすることができるかどうかの問題である裁判権とは区別する必要があります。管轄は,当該事件に対する裁判権があることを前提として,全国に散らばるどこの日本の裁判所が当該事件を審理して判決を下すかという,裁判所間における事件分担の問題です。
 どうして管轄を決めておかなければならないのでしょうか。事件がある以上どの裁判所で判断してもらうか当事者の自由意思に任せればいいのではないかと思うかもしれません。しかし,民事訴訟は裁判所という公的機関を利用し,私的紛争を公的強制的に解決するものであり,適正,公平,迅速,低廉に行う必要があります(民訴2条)。個人の尊厳の最終保障(憲法13条)は,国民の意思を根拠として司法権に委ねられており(76条,81条,司法権の優越),国民の裁判を受ける権利(憲法32条)は適正,公平,迅速,低廉(訴訟経済)の理想に基づき実質的に保障されることになります。すなわち,適正,公平迅速性がなければ,国民の権利保障は実体を失いますし,裁判所が国民の税金により維持されている公的機関である以上訴訟経済を無視することはできません。又,訴訟経済の欠落は紛争当事者にとっても訴訟追行自体に経済的損失を伴うことになり,金銭的紛争を主眼とする民事訴訟の目的を無にすることになりかねません。従って,裁判,審理を行う前提となる裁判管轄も以上の理想から定められています。例えば,法定管轄,土地管轄である債務の履行地(民訴5条1項1号)を基準とする理由は,当事者の住所を基準とするよりも債務の履行地が証拠の収集による公正,当事者の公平,迅速性を満たし,訴訟経済上も利点があるからです。不法行為地等(民訴5条1項 9号)も同様です。合意管轄も,民事訴訟が私的紛争を解決する点を重視して,当事者の公平,公正を考慮して一定の条件のもとに認められています。
 以上の民事訴訟の理想,趣旨を踏まえ,管轄は,その発生する根拠により,@法定管轄,A合意管轄,B応訴管轄,C指定管轄に分類することができます。さらに@法定管轄は,分担を定める基準により,a職分管轄,b事物管轄,c土地管轄に分けることができ,公的色彩の強弱により当事者の選択を許すかどうかという観点から,a専属管轄,b任意管轄に分けることもできます。

2.
(1)職分管轄
 性質の異なる司法作用を,どの種類の裁判所の職分として担当させるかの定めです。例えば,判決手続きを担当する受訴裁判所,民事執行を担当する執行裁判所,破産事件を担当する破産裁判所(破産法2条3項)があります。紛争当事者の権利実現を安全確実にするために分担が定められています。
(2)事物管轄
 第一審を担当する簡易裁判所と地方裁判所との間で,いずれの裁判所に分担させるかの定めです。原則として,訴額が140万円を超えない請求は簡易裁判所,その他は地方裁判所とされています(裁判所法24条,33条1項)。紛争の権利の重要性から迅速な解決を目指し経験が少ない裁判官による判断がなされます。
(3)土地管轄
 同種の職分を適正,公平,迅速,低廉という観点からどの所在地の裁判所に分担させるかの定めです。そして,この土地管轄を定めるための基準となる関連地点があり,これを裁判籍といいます。
 ア 裁判籍には普通裁判籍と特別裁判籍があります。
 原則として普通裁判籍に裁判籍が認められます(民事訴訟法4条。以下,別段に記載しない場合は民事訴訟法のこととする。)。被告が自然人の場合,原則被告の住所地,被告が法人の場合,原則被告の事務所・営業所,被告が国の場合,法務大臣の所在地となります。
 イ 特別裁判籍は,特別の事件についてだけ認められるもので,普通裁判籍と競合します。訴えの提起に当たっては,私的紛争ですから当事者がいずれの裁判籍を選択しても構いません。
 (ア)そして,この裁判籍には,独立裁判籍(5条,6条)と関連裁判籍(7条)があります。独立裁判籍には,例えば,不法行為の場合,不法行為地,財産上の訴えの場合,義務履行地,特許権の場合,東京地裁・大阪地裁となります。
 (イ)関連裁判籍とは,他の事件と関連のある裁判所に認められるものです。例えば,併合請求や反訴(146条)の裁判籍があります。
(4)合意管轄
 私的紛争ですから,当事者の合意により発生する管轄のことをいいます。後述の専属管轄の定めがある場合を除いて,当事者は合意により,法定管轄と異なる管轄を定めても構いません。要件があり,@第一審の裁判所に限ること,A法定管轄と異なる定めをすること,B一定の法律関係に基づく訴えに関するものであること,C合意は書面で行うこと,です(11条)。管轄の合意には,@法定管轄以外の裁判所に管轄裁判所を追加する付加的合意,A特定の裁判所にだけ管轄を認め,その他の管轄を排除する専属的合意があります。
(5)応訴管轄
 被告が原告の訴えに応じることで生じる管轄のことです。専属管轄を除いてですが,仮に原告が管轄違いの裁判所に訴えを提起しても,被告が異議を唱えずこれに応じれば,管轄が生じます(12条,13条)。合意管轄の一種ともいえます。合意管轄と同様,@第一審裁判所に限り,A法定管轄と異なる裁判所に限りますが,B管轄違いの抗弁をせず,本案・弁論準備手続きにつき,弁論・申述したときに生じます。
(6)指定管轄
 管轄裁判所が,法律上(例えば,裁判官の除斥・忌避)または事実上(例えば,裁判官の病気)により裁判権が行使できないとき,裁判所の管轄区域が明確でなく管轄裁判所が定まらないときに,当事者の申立てにより,関係裁判所に共通の直近の上級裁判所が定める管轄のことです(10条)。
(7)専属管轄
 紛争権利の公正な審理という面から法定管轄の中で,ある事件を特定の裁判所の管轄のみに属するものとして,同一事件について他の裁判所が管轄を持つことを排除する管轄の定めのことです。職分管轄は,原則として専属管轄とされていますが,そのほか,専属管轄とされる場合には,法律で個別にその旨を規定しています(117条2項,340条,破産法126条2項,人事訴訟法4条,会社法862条,835条1項など)。専属管轄の定めのある事件については,他の規定による管轄は生じません(13条)。
(8)任意管轄
 専属管轄以外の合意等により変更可能な管轄のことです。私的紛争である以上,紛争当事者の意思に任せても差し支えない範囲で許されることになります。

3.
(1)ご質問の専属的合意管轄というのは,合意した管轄のみを認め,その他の裁判所の管轄は排除するというものです。取引約款は,企業が作成しますが,企業としては自分の都合のよい場所の裁判所を管轄にするのが目的ですから,必ず「専属的合意管轄」と記載されているといってよいでしょう。個人間の取引においても,もちろん管轄の合意をすることは可能ですが,もし合意管轄の種類を記載していない場合には,専属的なのか否か少し問題が生じます。
(2)この点については,合意管轄は,当事者の合意により定められるものですから,当事者の意思を合理的に解釈します。そうすると,わざわざそのような合意をしたということを考えると,特段の事情がない限りは,専属的合意とみてよいように思われます。
(3)合意管轄の区別について明示されていれば,それに従うことになるのですが,取引約款の場合には,少し手当てが必要です。企業にとってみれば,一般消費者は全国各地に散在している状況です。一般消費者との紛争を迅速に,効率よく解決するためには,あらかじめ特定の裁判所に管轄を定めておくことが望ましいといえます。しかし,これはあくまでも企業側の都合であって,一般消費者からすれば,場合によっては,かなりの遠隔地で訴訟をしなければならなくなる場合もあり得ます。この観点から,合意の内容を例示と解したり,付加的合意と解したりするなどの必要があると考えます。
(4)管轄自体が,前述のように当事者の私的紛争を適正公正,迅速,低廉に解決するために決められているのですから,形式上当事者が合意しても専属的合意管轄の有効性に関して当事者に不公平がないかという実質的な判断が必要です。これは私的自治の大原則に内在する信義誠実,公平の法理(民法1条 民訴2条)から当然の要請となります。
 この点について,クレジット会社の取引約款や生命保険会社の生命保険普通約款に記載されている合意管轄の条項が問題となった裁判がありますが,いずれも専属的な合意があったとは認めていませんから,約款に記載されているだけであれば,文言上は,合意されている裁判所以外には訴訟を提起できないと読めるような場合でもそのような合意は民事訴訟の理想から無効と判断されます。
 この合意が無効となれば原則に戻り普通裁判籍のある被告の住所が管轄となりますが,特別裁判籍のある義務履行地や不法行為地に管轄があることが認められます。損害賠償のような金銭債務の義務履行地は債権者の住所地ですから,原告となる人の住所地にある裁判所にも管轄が認められることになりますから,訴えを起こしやすくなるでしょう。
 なお,訴訟を提起する際,契約書を証拠として提出するとそこに専属的合意管轄の規定があると,訴状の受付の段階で裁判所の担当者や書記官から管轄について問い合わせがあるかもしれませんが,その場合も上記の説明をすれば裁判が行われることになります。裁判が始まってからも被告から,専属管轄の合意があるから当該裁判所には管轄がない旨の主張が被告から行われることも考えられますが,上記の点を主張すれば裁判所も管轄を認めることになるでしょう。

【参照条文】

憲法
第十三条  すべて国民は,個人として尊重される。生命,自由及び幸福追求に対する国民の権利については,公共の福祉に反しない限り,立法その他の国政の上で,最大の尊重を必要とする。
第三十二条  何人も,裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。

裁判所法
第二十四条(裁判権) 地方裁判所は,次の事項について裁判権を有する。
 一 第三十三条第一項第一号の請求以外の請求に係る訴訟(第三十一条の三第一項第二号の人事訴訟を除く。)及び第三十三条第一項第一号の請求に係る訴訟のうち不動産に関する訴訟の第一審
 二 第十六条第四号の罪及び罰金以下の刑に当たる罪以外の罪に係る訴訟の第一審
 三 第十六条第一号の控訴を除いて,簡易裁判所の判決に対する控訴
 四 第七条第二号及び第十六条第二号の抗告を除いて,簡易裁判所の決定及び命令に対する抗告
第三十三条(裁判権)  簡易裁判所は,次の事項について第一審の裁判権を有する。
 一 訴訟の目的の価額が百四十万円を超えない請求(行政事件訴訟に係る請求を除く。)
 二 罰金以下の刑に当たる罪,選択刑として罰金が定められている罪又は刑法第百八十六条,第二百五十二条若しくは第二百五十六条の罪に係る訴訟
A 簡易裁判所は,禁錮以上の刑を科することができない。ただし,刑法第百三十条の罪若しくはその未遂罪,同法第百八十六条の罪,同法第二百三十五条の罪若しくはその未遂罪,同法第二百五十二条,第二百五十四条若しくは第二百五十六条の罪,古物営業法(昭和二十四年法律第百八号)第三十一条から第三十三条までの罪若しくは質屋営業法(昭和二十五年法律第百五十八号)第三十条から第三十二条までの罪に係る事件又はこれらの罪と他の罪とにつき刑法第五十四条第一項の規定によりこれらの罪の刑をもつて処断すべき事件においては,三年以下の懲役を科することができる。
B 簡易裁判所は,前項の制限を超える刑を科するのを相当と認めるときは,訴訟法の定めるところにより事件を地方裁判所に移さなければならない。

民事訴訟法
(裁判所及び当事者の責務)
第二条  裁判所は,民事訴訟が公正かつ迅速に行われるように努め,当事者は,信義に従い誠実に民事訴訟を追行しなければならない。
(普通裁判籍による管轄)
第四条 訴えは,被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所の管轄に属する。
2 人の普通裁判籍は,住所により,日本国内に住所がないとき又は住所が知れないときは居所により,日本国内に居所がないとき又は居所が知れないときは最後の住所により定まる。
3 大使,公使その他外国に在ってその国の裁判権からの免除を享有する日本人が前項の規定により普通裁判籍を有しないときは,その者の普通裁判籍は,最高裁判所規則で定める地にあるものとする。
4 法人その他の社団又は財団の普通裁判籍は,その主たる事務所又は営業所により,事務所又は営業所がないときは代表者その他の主たる業務担当者の住所により定まる。
5 外国の社団又は財団の普通裁判籍は,前項の規定にかかわらず,日本における主たる事務所又は営業所により,日本国内に事務所又は営業所がないときは日本における代表者その他の主たる業務担当者の住所により定まる。
6 国の普通裁判籍は,訴訟について国を代表する官庁の所在地により定まる。
(財産権上の訴え等についての管轄)
第五条 次の各号に掲げる訴えは,それぞれ当該各号に定める地を管轄する裁判所に提起することができる。
 一 財産権上の訴え
     義務履行地
 二 手形又は小切手による金銭の支払の請求を目的とする訴え
     手形又は小切手の支払地
 三 船員に対する財産権上の訴え
     船舶の船籍の所在地
 四 日本国内に住所(法人にあっては,事務所又は営業所。以下この号において同じ。)がない者又は住所が知れない者に対する財産権上の訴え
     請求若しくはその担保の目的又は差し押さえることができる被告の財産の所在地
 五 事務所又は営業所を有する者に対する訴えでその事務所又は営業所における業務に関するもの
     当該事務所又は営業所の所在地
 六 船舶所有者その他船舶を利用する者に対する船舶又は航海に関する訴え
     船舶の船籍の所在地
 七 船舶債権その他船舶を担保とする債権に基づく訴え
     船舶の所在地
 八 会社その他の社団又は財団に関する訴えで次に掲げるもの
     社団又は財団の普通裁判籍の所在地
  イ 会社その他の社団からの社員若しくは社員であった者に対する訴え,社員からの社員若しくは社員であった者に対する訴え又は社員であった者からの社員に対する訴えで,社員としての資格に基づくもの
  ロ 社団又は財団からの役員又は役員であった者に対する訴えで役員としての資格に基づくもの
  ハ 会社からの発起人若しくは発起人であった者又は検査役若しくは検査役であった者に対する訴えで発起人又は検査役としての資格に基づくもの
  ニ 会社その他の社団の債権者からの社員又は社員であった者に対する訴えで社員としての資格に基づくもの
 九 不法行為に関する訴え
     不法行為があった地
 十 船舶の衝突その他海上の事故に基づく損害賠償の訴え
     損害を受けた船舶が最初に到達した地
 十一 海難救助に関する訴え
     海難救助があった地又は救助された船舶が最初に到達した地
 十二 不動産に関する訴え
     不動産の所在地
 十三 登記又は登録に関する訴え
     登記又は登録をすべき地
 十四 相続権若しくは遺留分に関する訴え又は遺贈その他死亡によって効力を生ずべき行為に関する訴え
     相続開始の時における被相続人の普通裁判籍の所在地
 十五 相続債権その他相続財産の負担に関する訴えで前号に掲げる訴えに該当しないもの(相続財産の全部又は一部が同号に定める地を管轄する裁判所の管轄区域内にあるときに限る。)
     同号に定める地
(特許権等に関する訴え等の管轄)
第六条 特許権,実用新案権,回路配置利用権又はプログラムの著作物についての著作者の権利に関する訴え(以下「特許権等に関する訴え」という。)について,前二条の規定によれば次の各号に掲げる裁判所が管轄権を有すべき場合には,その訴えは,それぞれ当該各号に定める裁判所の管轄に専属する。
 一 東京高等裁判所,名古屋高等裁判所,仙台高等裁判所又は札幌高等裁判所の管轄区域内に所在する地方裁判所
     東京地方裁判所
 二 大阪高等裁判所,広島高等裁判所,福岡高等裁判所又は高松高等裁判所の管轄区域内に所在する地方裁判所
     大阪地方裁判所
2 特許権等に関する訴えについて,前二条の規定により前項各号に掲げる裁判所の管轄区域内に所在する簡易裁判所が管轄権を有する場合には,それぞれ当該各号に定める裁判所にも,その訴えを提起することができる。
3 第一項第二号に定める裁判所が第一審としてした特許権等に関する訴えについての終局判決に対する控訴は,東京高等裁判所の管轄に専属する。ただし,第二十条の二第一項の規定により移送された訴訟に係る訴えについての終局判決に対する控訴については,この限りでない。
(意匠権等に関する訴えの管轄)
第六条の二 意匠権,商標権,著作者の権利(プログラムの著作物についての著作者の権利を除く。),出版権,著作隣接権若しくは育成者権に関する訴え又は不正競争(不正競争防止法(平成五年法律第四十七号)第二条第一項に規定する不正競争をいう。)による営業上の利益の侵害に係る訴えについて,第四条又は第五条の規定により次の各号に掲げる裁判所が管轄権を有する場合には,それぞれ当該各号に定める裁判所にも,その訴えを提起することができる。
 一 前条第一項第一号に掲げる裁判所(東京地方裁判所を除く。) 東京地方裁判所
 二 前条第一項第二号に掲げる裁判所(大阪地方裁判所を除く。) 大阪地方裁判所
(併合請求における管轄)
第七条 一の訴えで数個の請求をする場合には,第四条から前条まで(第六条第三項を除く。)の規定により一の請求について管轄権を有する裁判所にその訴えを提起することができる。ただし,数人からの又は数人に対する訴えについては,第三十八条前段に定める場合に限る。
(管轄裁判所の指定)
第十条 管轄裁判所が法律上又は事実上裁判権を行うことができないときは,その裁判所の直近上級の裁判所は,申立てにより,決定で,管轄裁判所を定める。
2 裁判所の管轄区域が明確でないため管轄裁判所が定まらないときは,関係のある裁判所に共通する直近上級の裁判所は,申立てにより,決定で,管轄裁判所を定める。
3 前二項の決定に対しては,不服を申し立てることができない。
(管轄の合意)
第十一条 当事者は,第一審に限り,合意により管轄裁判所を定めることができる。
2 前項の合意は,一定の法律関係に基づく訴えに関し,かつ,書面でしなければ,その効力を生じない。
3 第一項の合意がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式,磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって,電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)によってされたときは,その合意は,書面によってされたものとみなして,前項の規定を適用する。
(応訴管轄)
第十二条 被告が第一審裁判所において管轄違いの抗弁を提出しないで本案について弁論をし,又は弁論準備手続において申述をしたときは,その裁判所は,管轄権を有する。
(専属管轄の場合の適用除外等)
第十三条 第四条第一項,第五条,第六条第二項,第六条の二,第七条及び前二条の規定は,訴えについて法令に専属管轄の定めがある場合には,適用しない。
2 特許権等に関する訴えについて,第七条又は前二条の規定によれば第六条第一項各号に定める裁判所が管轄権を有すべき場合には,前項の規定にかかわらず,第七条又は前二条の規定により,その裁判所は,管轄権を有する。
(管轄違いの場合の取扱い)
第十六条 裁判所は,訴訟の全部又は一部がその管轄に属しないと認めるときは,申立てにより又は職権で,これを管轄裁判所に移送する。
2 地方裁判所は,訴訟がその管轄区域内の簡易裁判所の管轄に属する場合においても,相当と認めるときは,前項の規定にかかわらず,申立てにより又は職権で,訴訟の全部又は一部について自ら審理及び裁判をすることができる。ただし,訴訟がその簡易裁判所の専属管轄(当事者が第十一条の規定により合意で定めたものを除く。)に属する場合は,この限りでない。
(遅滞を避ける等のための移送)
第十七条 第一審裁判所は,訴訟がその管轄に属する場合においても,当事者及び尋問を受けるべき証人の住所,使用すべき検証物の所在地その他の事情を考慮して,訴訟の著しい遅滞を避け,又は当事者間の衡平を図るため必要があると認めるときは,申立てにより又は職権で,訴訟の全部又は一部を他の管轄裁判所に移送することができる。
(簡易裁判所の裁量移送)
第十八条 簡易裁判所は,訴訟がその管轄に属する場合においても,相当と認めるときは,申立てにより又は職権で,訴訟の全部又は一部をその所在地を管轄する地方裁判所に移送することができる。
(必要的移送)
第十九条 第一審裁判所は,訴訟がその管轄に属する場合においても,当事者の申立て及び相手方の同意があるときは,訴訟の全部又は一部を申立てに係る地方裁判所又は簡易裁判所に移送しなければならない。ただし,移送により著しく訴訟手続を遅滞させることとなるとき,又はその申立てが,簡易裁判所からその所在地を管轄する地方裁判所への移送の申立て以外のものであって,被告が本案について弁論をし,若しくは弁論準備手続において申述をした後にされたものであるときは,この限りでない。
2 簡易裁判所は,その管轄に属する不動産に関する訴訟につき被告の申立てがあるときは,訴訟の全部又は一部をその所在地を管轄する地方裁判所に移送しなければならない。ただし,その申立ての前に被告が本案について弁論をした場合は,この限りでない。
(専属管轄の場合の移送の制限)
第二十条 前三条の規定は,訴訟がその係属する裁判所の専属管轄(当事者が第十一条の規定により合意で定めたものを除く。)に属する場合には,適用しない。
2 特許権等に関する訴えに係る訴訟について,第十七条又は前条第一項の規定によれば第六条第一項各号に定める裁判所に移送すべき場合には,前項の規定にかかわらず,第十七条又は前条第一項の規定を適用する。
(定期金による賠償を命じた確定判決の変更を求める訴え)
第百十七条 口頭弁論終結前に生じた損害につき定期金による賠償を命じた確定判決について,口頭弁論終結後に,後遺障害の程度,賃金水準その他の損害額の算定の基礎となった事情に著しい変更が生じた場合には,その判決の変更を求める訴えを提起することができる。ただし,その訴えの提起の日以後に支払期限が到来する定期金に係る部分に限る。2 前項の訴えは,第一審裁判所の管轄に専属する。
(反訴)
第百四十六条 被告は,本訴の目的である請求又は防御の方法と関連する請求を目的とする場合に限り,口頭弁論の終結に至るまで,本訴の係属する裁判所に反訴を提起することができる。ただし,次に掲げる場合は,この限りでない。
 一 反訴の目的である請求が他の裁判所の専属管轄(当事者が第十一条の規定により合意で定めたものを除く。)に属するとき。
 二 反訴の提起により著しく訴訟手続を遅滞させることとなるとき。
2 本訴の係属する裁判所が第六条第一項各号に定める裁判所である場合において,反訴の目的である請求が同項の規定により他の裁判所の専属管轄に属するときは,前項第一号の規定は,適用しない。
3 反訴については,訴えに関する規定による。
(管轄裁判所)
第三百四十条 再審の訴えは,不服の申立てに係る判決をした裁判所の管轄に専属する。2 審級を異にする裁判所が同一の事件についてした判決に対する再審の訴えは,上級の裁判所が併せて管轄する。

破産法
(破産債権査定申立てについての決定に対する異議の訴え)
第百二十六条 破産債権査定申立てについての決定に不服がある者は,その送達を受けた日から一月の不変期間内に,異議の訴え(以下「破産債権査定異議の訴え」という。)を提起することができる。
2 破産債権査定異議の訴えは,破産裁判所が管轄する。
(以下略)

人事訴訟法
(人事に関する訴えの管轄)
第四条 人事に関する訴えは,当該訴えに係る身分関係の当事者が普通裁判籍を有する地又はその死亡の時にこれを有した地を管轄する家庭裁判所の管轄に専属する。
2 前項の規定による管轄裁判所が定まらないときは,人事に関する訴えは,最高裁判所規則で定める地を管轄する家庭裁判所の管轄に専属する。

会社法
(訴えの管轄及び移送)
第八百三十五条 会社の組織に関する訴えは,被告となる会社の本店の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に専属する。
2 前条第九号から第十二号までの規定により二以上の地方裁判所が管轄権を有するときは,当該各号に掲げる訴えは,先に訴えの提起があった地方裁判所が管轄する。
3 前項の場合には,裁判所は,当該訴えに係る訴訟がその管轄に属する場合においても,著しい損害又は遅滞を避けるため必要があると認めるときは,申立てにより又は職権で,訴訟を他の管轄裁判所に移送することができる。
(訴えの管轄)
第八百六十二条 持分会社の社員の除名の訴え及び持分会社の業務を執行する社員の業務執行権又は代表権の消滅の訴えは,当該持分会社の本店の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に専属する。
(被告)
第八百三十四条 次の各号に掲げる訴え(以下この節において「会社の組織に関する訴え」と総称する。)については,当該各号に定める者を被告とする。
 一 会社の設立の無効の訴え 設立する会社
 二 株式会社の成立後における株式の発行の無効の訴え(第八百四十条第一項において「新株発行の無効の訴え」という。) 株式の発行をした株式会社
 三 自己株式の処分の無効の訴え 自己株式の処分をした株式会社
 四 新株予約権の発行の無効の訴え 新株予約権の発行をした株式会社
 五 株式会社における資本金の額の減少の無効の訴え 当該株式会社
 六 会社の組織変更の無効の訴え 組織変更後の会社
 七 会社の吸収合併の無効の訴え 吸収合併後存続する会社
 八 会社の新設合併の無効の訴え 新設合併により設立する会社
 九 会社の吸収分割の無効の訴え 吸収分割契約をした会社
 十 会社の新設分割の無効の訴え 新設分割をする会社及び新設分割により設立する会社
 十一 株式会社の株式交換の無効の訴え 株式交換契約をした会社
 十二 株式会社の株式移転の無効の訴え 株式移転をする株式会社及び株式移転により設立する株式会社
 十三 株式会社の成立後における株式の発行が存在しないことの確認の訴え 株式の発行をした株式会社
 十四 自己株式の処分が存在しないことの確認の訴え 自己株式の処分をした株式会社
 十五 新株予約権の発行が存在しないことの確認の訴え 新株予約権の発行をした株式会社
 十六 株主総会等の決議が存在しないこと又は株主総会等の決議の内容が法令に違反することを理由として当該決議が無効であることの確認の訴え 当該株式会社
 十七 株主総会等の決議の取消しの訴え 当該株式会社
 十八 第八百三十二条第一号の規定による持分会社の設立の取消しの訴え 当該持分会社
 十九 第八百三十二条第二号の規定による持分会社の設立の取消しの訴え 当該持分会社及び同号の社員
 二十 株式会社の解散の訴え 当該株式会社
 二十一 持分会社の解散の訴え 当該持分会社

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