新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース 質問:飲酒後に車を運転して物損事故を起こしました。現在道交法違反容疑(酒酔い及び酒気帯び運転)で警察で取り調べ中です。ところが昨日勤務先から懲戒免職の処分を言い渡されました。刑事処分の判決前に下された懲戒免職という処分に対してその正当性に疑問を抱いております。このまま何もする事無く処分を受け入れるしか無いのでしょうか?それとも自分が抱いた疑問点が正当性に欠けるものだとしたら何らかの救済方法があるでしょうか? 尚,勤務先の飲酒運転に関する懲戒処分の基準は次のとおりとなっております。 解説: 東京高判昭59年6月20日も,「従業員が職場外でその職務との関連なしに私生活上で行った犯罪行為その他の非行であっても,それが営利を目的とする会社の存立,運営上に不可欠である名誉,信用その他相当の社会的評価に悪影響を及ぼし,また企業秩序維持にも支障を与える場合には,使用者はこれに対して懲戒権を行使しうると解されるが,懲戒処分としての解雇(免職)は,当該従業員を全面的,永続的に企業外に放逐するという重罰にあたるから,諸般の事情を総合勘案して,その行為が会社の社会的評価に及ぼす悪影響や企業秩序に与える支障の程度が相当重大であると客観的に評価される場合でなければ懲戒解雇は許されないと解すべきである。」として,懲戒免職処分が可能な就業規則の範囲を限定しています。 (2)争点2(懲戒処分の有効性) 2.裁判例の状況 3.救済方法の選択 4.結論 ≪参考判例≫ ◇東京高判昭59年5月20日判時35巻6・7号116頁 ◇横浜地判昭40年9月30日労働関係民事裁判例集16巻5号670頁 ≪参照条文≫ 労働審判法 労働審判規則 労働基準法 民事訴訟法 民事保全法 民事調停法
No.1085、2011/3/10 17:38 https://www.shinginza.com/qa-roudou.htm
【労働法・酒酔い運転と懲戒解雇・判例・手続き・具体的対応】
酒酔い運転=免職
酒気帯び運転(呼気中アルコール濃度0.25mg以上)=停職
酒気帯び運転(0.15r以上0.25r未満)=減給
↓
回答:
1.本件懲戒免職処分を争う方法としては,労働審判手続きの申立て(労働審判法5条)または,労働契約上の地位の確認請求(民事訴訟法133条)を行い,司法機関に救済を求めることが考えられます。争う内容としては,@そもそも本件就業規則は他の事情を何ら考慮せず一律に懲戒処分を定めている点で無効であるため,これに基づく本件懲戒処分も無効であると主張し,A仮に,本件就業規則が有効であったとしても,これに基づく本件懲戒免職処分は,懲戒事由以外の事由を全く考慮することなくなされた不相当なものであるため,懲戒権の濫用に該当し,無効であると主張することが考えられます(労働契約法15条)。なお,労働審判手続きは,比較的短期間に審判がなされるのが一般的ですが,労働契約上の地位の確認請求をした場合には,判決まで相当期間を要するため,保全手続きとして,地位保全仮処分及び賃金仮払い仮処分など(民事保全法23条2項)をしておく必要があります。
2.どのような刑事処分がなされるかも,懲戒解雇の判断について重要な要素となりますので,今から弁護人と協議して有利な事情を文書で保全し,さらに検察官と交渉,協議して貴方にとって最も有利な処分(罰金刑でも最小限にとどめる)を求める必要があります。物損被害弁償,贖罪寄付,反省文,今後同種事件を行わないという誓約書,その他,判例が示す本件の事件の動機,原因,態様,内容一切等について有利な点を立証可能にしておく必要があります。
3.法律相談事例集キーワード検索:925番,915番,842番,786番,762番,743番,721番,657番,642番。手続は,995番879番,書式集ダウンロード労働審判申立参照。
1.争点
(1)争点1(就業規則の有効性)
本件規則は,「酒酔い運転=免職」と定めていますが,このように,酒酔い運転行為を一律に免職処分とする規定は,本来懲戒免職とすることのできないような行為についても懲戒免職の対象に含んでいるため,同規定自体が無効であると主張することが考えられます。
貴方が勤務会社と労働契約を締結しており,その契約内容に,当該就業規則を順守する合意をしていますから,就業規則に従う義務が生じます。しかし,合意したからといって内容に異議を申し立てることができないというわけではありません。契約内容が一方に特に不利益で対等な契約を締結できないような場合は,民法の一般原則(信義則,公序良俗違反)で修正を受けることになります。公正な社会秩序建設を理想とする私的自治の原則に内在する理論であり,民法1条はこれを明言しています。
労働契約時において使用者は経済力からも雇う立場上有利な地位にあるのが一般的ですし,労働力を売って賃金をもらい生活する関係上労働者は長期間にわたり拘束する契約でありながら常に対等な契約を結べない危険性を有しています。しかし,そのような状況は個人の尊厳を守り,人間として値する生活を保障した憲法13条,平等の原則を定めた憲法14条の趣旨に事実上反しますので,法律は民法の雇用契約の特別規定である労働法等(基本労働三法等)により,労働者が対等に使用者と契約でき,契約後も実質的に労働者の権利を保護すべく種々の規定をおいています。
さらに法律は性格上おのずと抽象的規定にならざるをえませんから,その解釈にあったっては使用者,労働者の実質的平等を確保するという観点からなされなければならない訳ですし,雇用者の利益は営利を目的にする経営する権利(憲法29条の私有財産制に基づく企業の営業の自由,経済的利益確保)であるのに対し,他方労働者の利益は毎日生活し働く権利ですし,個人の尊厳確保に直結した権利ですから当事者の実質的平等を解釈により図る必要があります。
ちなみに,労働基準法1条も「労働条件は,労働者が人たるに値する生活を営むための必要を満たすべきものでなければならない。」第2条は「労働条件は労働者と使用者が,対等の立場において決定すべきものである。」と規定しています。以上の趣旨から前述の要素をもとに契約内容の点検,法規の解釈を行い懲戒解雇の有効性を判断することになります。
本件就業規則は,酒酔い運転行為を行った者について他の事情を考慮して懲戒免職処分を行うといった規定は存在せず,一律に懲戒免職処分を行う体裁になっている点で無効になる可能性があるということです。そして,本件就業規則が無効であれば,本件懲戒免職処分は,無効な規則に基づき行われているわけですから,同処分も無効となるというわけです。
仮に,本件就業規則が有効であった場合にも,本件懲戒免職処分自体が不相当なものであって,懲戒権の濫用にあたり,無効であると主張して争うことが考えられます。
前記東京高判昭59年6月20日も「その犯罪行為が会社の社会的評価に及ぼす悪影響や企業秩序に与えた支障の程度が相当重大であると客観的に評価される場合には,懲戒解雇する旨の規定として有効であると解すべきである。したがって,右規定に基づいて行われた懲戒解雇も,当該犯罪行為の性質,態様,情状,被控訴人の業種,規模,当該従業員の被控訴人における職種,地位などを総合勘案し,また,被控訴人による過去の処分事例,他の企業や公務所における同種事犯に対する処分事例などとも比較対照したうえ,その犯罪行為が被控訴人の社会的評価に及ぼした悪影響,企業秩序に与えた支障の重大性の程度を客観的に判断し,それが,右懲戒権の行使(具体的には前記重大性の判断)にあたり被控訴人に与えられた裁量の幅を考慮に入れても,なお懲戒解雇を相当とするほどに重大であると認められないときには,その懲戒解雇は懲戒権の濫用として無効となるというべきである。」として,就業規則の有効性を前提としても懲戒免職処分の可能な範囲を限定的に捉えています。
本件懲戒免職処分は,被疑事実が「酒酔い及び酒気帯び運転」であったことに基づいているものと思われますが,そもそも,酒酔い運転ではなく酒気帯び運転は,就業規則によっても懲戒免職処分の対象ではないのですから,就業規則上も懲戒免職には該当しないことになりますし,取り調べ中ということであれば本件懲戒処分は未だいずれの違反行為なのか司法的な判断がなされていない状況においてなされた処分であり,かかる点において,そもそも無効の可能性があります。さらに,酒酔い運転行為があったと客観的な証拠があり,それについて会社側にとっても明白な場合であっても,それのみを理由として,本件懲戒免職処分をなすことは,上記裁判例の基準に反し,懲戒権の濫用として無効になる可能性もあります。
ここに,懲戒免職処分を無効と判断した裁判例(東京高判昭59年6月20日)と有効とした裁判例(横浜地判昭40年9月30日)があります。両判決が重視した事実は以下のとおりである。
@職業の性質
A被害者の有無,被害の大きさ,被害弁償の有無
Bアルコールの影響の度合い
C事件が報道されたか否か
D被処分者の前科・前歴・処分歴の有無
飲酒運転行為が業務上のものか私的目的かどうか
E他の従業員の処分の運用との公平性
他の企業や公務所における同種事犯に対する処分事例比較対照
F労働基準法20条1項但書に該当する事由の存否
両事件は,ともに@タクシーの運転手が起こした事件ではあるものの,東京高判昭59年6月20日がA〜Fまでの事由について懲戒免職処分を無効とすべき事実が存在したのに対し,横浜地判昭40年9月30日がAからFの事由について懲戒免職処分を有効とすべき方向に働く事実が存在したことが,両判決の結論を分けたものと考えられます(詳細は,参考判例を参照ください)。
次に,労働審判手続きと労働契約上の地位の確認請求の手続きの差異を説明いたします。上記両制度の大きな差異としては,以下の点が挙げられます。労働審判手続きにおいては,短期間に審判がなされるため(労働審判法15条),早期に紛争が解決する可能性がありますが,その反面,審判に異議が申し立てられるとその審判の効力は失効してしまうため(労働審判法21条3項),抜本的な解決としては,不十分といえます。もっとも,労働審判手続きにおいては,当事者の合意に基づく調停という解決手段も用意されており,このような解決が実現すれば,調停調書には,裁判上の和解と同一の効力が認められますから(労働審判規則22条,労働審判法29条・民事調停法16条),審判の欠点は回避できます。他方,労働契約上の地位の確認請求は,紛争解決までに比較的時間がかかりますが,判決としての効力が認められますから,紛争の抜本的な解決に結びつきます。
懲戒免職処分は,就業規則自体がかかる基準に則ったものではないとして無効の可能性がありますし,また,「その行為が会社の社会的評価に及ぼす悪影響や企業秩序に与える支障の程度が相当重大であると客観的に評価される場合」のみ許されるのです。その際,あなたの会社の業務内容や,あなたの職種や,飲酒運転をしたときの状況(職務時間内か,私的行為か)などに大きく影響を受けるでしょう。一般に,タクシー会社など旅客運送業の会社では飲酒運転に関して厳格な規定がなされていることが多いでしょうし,運転手が職務時間内に飲酒運転をした場合には懲戒免職が有効となりうる可能性も高まるでしょう。他方,運転業務とは関係の無い職種の社員が,勤務時間外に私的行為に付随して飲酒運転をしたという場合には,懲戒免職が懲戒権の濫用と判断される可能性も高まると思います。
本件においては,未だ「酒酔い運転」がなされたか明らかでない状況で,さらに,それ以外の事情を考慮した形跡がないのであれば,上記懲戒免職処分が許される場合に該当しないと思われますので,本件懲戒免職処分の無効を主張して争う価値は十分あると考えられます。本件のような場合に解雇を言い渡されてしまった場合でも,あきらめてしまわず,至急弁護士の相談を受ける事をお勧めいたします。
四 解雇権の濫用の成否について
1 前記のとおり,本件解雇は,控訴人の本件事故が就業規則四二条一〇号の免職(懲戒解雇)事由である「罰金刑以上の刑罰法令にふれる行為のあったもの,但し業務上によるものは除く。」に該当するとして,なされたものである。ところで,従業員が職場外でその職務との関連なしに私生活上で行った犯罪行為その他の非行であっても,それが営利を目的とする会社の存立,運営上に不可欠である名誉,信用その他相当の社会的評価に悪影響を及ぼし,また企業秩序維持にも支障を与える場合には,使用者はこれに対して懲戒権を行使しうると解されるが,懲戒処分としての解雇(免職)は,当該従業員を全面的,永続的に企業外に放逐するという重罰にあたるから,諸般の事情を総合勘案して,その行為が会社の社会的評価に及ぼす悪影響や企業秩序に与える支障の程度が相当重大であると客観的に評価される場合でなければ懲戒解雇は許されないと解すべきである。そして,就業規則二条一〇号が,その文言どおり「罰金刑以上の刑罰法令にふれる行為」のあったことをもって,その行為の会社の社会的評価に及ぼす悪影響や企業秩序に与える支障の有無・程度を問題とすることなく懲戒解雇をするとの趣旨であるとすれば,前記のとおり本来懲戒の対象とはなしえず,ましてや懲戒解雇の対象とは到底なしえない行為についてまでも一律にその対象とすることになり,右規定自体の効力について疑問も生じうるところであるが,同規則四二条には,同条各号に該当するものであっても「情況によっては謹慎減給にとどめることがある。」との但書が設けられていることを考慮すれば,右規定自体を直ちに無効と解するのは相当でなく,右規定は,従業員の職場外での職務との関連のない私生活上の「罰金刑以上の刑罰法令にふれる行為」(以下「犯罪行為」という。)も,その犯罪行為が会社の社会的評価に及ぼす悪影響や企業秩序に与えた支障の程度が相当重大であると客観的に評価される場合には,懲戒解雇する旨の規定として有効であると解すべきである。したがって,右規定に基づいて行われた懲戒解雇も,当該犯罪行為の性質,態様,情状,被控訴人の業種,規模,当該従業員の被控訴人における職種,地位などを総合勘案し,また,被控訴人による過去の処分事例,他の企業や公務所における同種事犯に対する処分事例などとも比較対照したうえ,その犯罪行為が被控訴人の社会的評価に及ぼした悪影響,企業秩序に与えた支障の重大性の程度を客観的に判断し,それが,右懲戒権の行使(具体的には前記重大性の判断)にあたり被控訴人に与えられた裁量の幅を考慮に入れても,なお懲戒解雇を相当とするほどに重大であると認められないときには,その懲戒解雇は懲戒権の濫用として無効となるというべきである。
2 そこで,右のような観点から,本件解雇についての懲戒権の濫用の有無について判断を進める。
(一)本件事故の性質,態様,情状
《証拠》によれば,次の各事実が認められ,この認定を覆すに足りる証拠はない。
(1)控訴人は昭和五四年四月一三日群馬県高崎市で開催された労働組合の会合に出席しての帰途,東京新宿駅から甲府駅までの国鉄中央線列車内でポケット瓶入りウイスキーを飲み,同日午後九時ころ甲府駅で下車した。その後,控訴人は甲府駅周辺で過ごし(控訴人本人は,この間四時間ほど同駅北口に近い被控訴人駐車場に駐車中の自己所有の普通乗用車内で仮眠していた旨の供述をするが,直ちに措信しがたく,この間の控訴人の動静については,証拠上明確でない。),翌一四日午前二時三五分ころ帰宅するため前記自己所有車を運転して甲府市中小河原町四〇四番地の一先路上に至った際,進路左端で非常駐車灯を点滅させて停車中の貨物自動車をその直前で認め,右にハンドルを切ったが間に合わず,右貨物自動車右後部に自車の屋根の部分を衝突させ,押しつぶされてはぎとられた右屋根の部分をそこに残したままさらに走行して,道路右側沿いの同町四〇三番地山梨総合高等職業訓練校の金網囲障に自車前部を衝突させて,右金網に食い込ませた形でやっと停車させた。その直後,事故現場に臨場した警察官土橋正教は,頭部等に負傷して立っている控訴人を発見し,現場に間近い南甲府警察署に任意同行したが,その際,控訴人は負傷している割にはしっかりした足取りであったものの,酒のにおいをさせていたため,同署前で検知管による検知をしたところ,呼気一リットル中のアルコール濃度二・〇ミリグラム以上との結果が出たので,さらに控訴人を約一〇秒直立させたが,ふらつくことなく直立することができた。ついで土橋警察官は控訴人を歩行させようとしたら,その場に座り込んでしまったので,負傷による影響も考えて同署内のソファーまで連れていって横たわらせて,住所,氏名,勤務先等を質問したところ,普通に応答がなされた。間もなく,控訴人は救急車で同市内の外科医院に運ばれ,医師の診察をうけたが,前頭部挫創,頭部打撲症等で治療見込二週間と診断された。
(2)土橋警察官らは,前記鑑識の結果を総合して控訴人を酒気帯びと認定し,また,同署警察官は本件事故を酒気帯び運転,安全運転義務違反として立件して甲府区検察庁に送致した。ところが,同庁検察官は同年五月九日これを酒酔い運転,安全運転義務違反として起訴し,同日甲府簡易裁判所裁判官はこれを酒酔い運転,安全運転義務違反として,控訴人を罰金五万円に処する旨の略式命令をしたが,控訴人はこれに対して正式裁判の請求をしなかった。
(3)他方,山梨県公安委員会は,本件事故を酒気帯び運転,安全運転義務違反の物損事故として,同月二四日,控訴人の運転免許の効力を九〇日間停止する旨の行政処分をした(ただし,その後,安全運転学校の講習受講により停止期間は四五日に短縮された。)。(4)控訴人は本件事故により,自車を大破させたほか,前記貨物自動車及び金網囲障に対し,それぞれ修理費用五万円余を要する損害を与えたが,それぞれその被害弁償をおえている。
(二)被控訴人の業態,控訴人の職種,地位など
《証拠》によれば,次の各事実が認められ,この認定を覆すに足りる証拠はない。
(1)被控訴人は,一般乗用旅客自動車運送事業(いわゆるタクシー事業)を目的とする会社であり,本件解雇当時,認可営業車約二八台,従業員約四六名で,甲府市付近を中心に営業していた。
(2)控訴人は,昭和四二年一月に被控訴人に就職して以来,営業車(タクシー)の運転手として勤務しており,本件事故当時も格別の役職には就いていなかった。
(三)その他の事情
《証拠》によれば,次の各事実が認められ,この認定を覆すに足りる証拠はない。
(1)被控訴人は,その営業目的から,日頃従業員に対する安全運転教育を重視して実施しており,特に,飲酒運転防止については営業所内に貼紙をして注意を促していた。
(2)訴外組合は控訴人を懲戒解雇とすることに反対し,本件解雇後もその撒回を求める運動をしており,被控訴人の従業員の大多数も,本件解雇を重すぎるとして控訴人に同情を示している。
(3)控訴人は,本件解雇を不当として争っているが,本件事故自体については反省し,これがその他の懲戒の対象とされることは甘受する態度を示している。
(4)控訴人は昭和二九年三月自動車運転免許を得て,以後,継続的に運転業務に従事しているが,前科はなく,本件事故時以外には酒気帯び,酒酔い運転をしたことがない。
(5)被控訴人は,昭和五四年五月一四日甲府労働基準監督署長に対し,本件解雇についての解雇予告除外認定申請をしたが,同署長は,被控訴人,訴外組合,控訴人からそれぞれ事情聴取したうえ,認定基準の一つである「著しく事業所の名誉若しくは信用を失墜するもの,取引関係に悪影響を与えるもの,又は,労使間の信頼関係を喪失せしめるものと認められる場合」には該当しないことを理由に,不認定と判定して,同月二二日までに被控訴人に通告した。
(6)本件事故については,新聞,放送等による報道はなされなかった。
(四)他の処分事例など
《証拠》によれば,次の各事実が認められ,この認定を覆すに足りる証拠はない。
(1)被控訴人においては,昭和四五年以降の懲戒事例は乏しく,特に懲戒解雇の事例は皆無である。被控訴人の事例としては,本件とはその性質,態様を異にするが,昭和四六年ころタクシーメーターの不倒行為をし,さらに他の従業員と喧嘩して負傷させた運転手が副班長から平従業員への一年間降格,三日間の出勤停止との処分をうけた例及び昭和五二年に旅客を乗車させる際にドアの閉め方を誤って同人の足に負傷させながら,同人を病院に送りつけたまま立去り,その後営業所に抗議に来たその旅客に対し「当り屋ではないか」と暴言をはいた運転手が始末書提出だけの処分をうけた例がある(なお,控訴人は,業務外で酒酔い運転して物損事故を起こした運転手について被控訴人副社長が示談交渉をしてやったうえ何らの処分もしなかった事例がある旨の主張をしており,《証拠》中にはこれに副う部分があるが,その内容があいまいであって,直ちに採用しがたく,他に右主張を証するに足りる証拠はない。)。
(2)昭和五〇年七月甲府市内の他のタクシー会社の運転手が業務外でライトバンを飲酒運転し,追突による人身事故を起こしながら,そのまま逃走して逮捕され,これが新聞報道された事例について,同社は右運転手を整備工場勤務に配置転換したにとどめ,かつ行政処分により取消された免許の再取得後,再び運転手の職種にもどした。
(3)山梨県は,その県庁職員が昭和五〇年以降本件事故当時までの間に飲酒運転をして物損事故を起こした三例(うち二件は公務員の非行として新聞報道された。)について,停職処分としており,その後の昭和五六年八月の同種事例でも停職三か月の処分であった。
そして,昭和五七年七月乗用車を酒酔い運転し歩行者をはねて負傷させて逃走し逮捕,勾留された県職員を免職としたのが,県職員の飲酒運転に関するはじめての免職事例である。
(4)山梨県内の公立学校教職員の飲酒運転に関する処分事例も,昭和五一年六月から昭和五七年一〇月までに七例(うち五例は新聞報道された。)あるが,最も重いもので停職四か月にとどまっている。
(五)以上(一)ないし(四)で認定したところにより判断するに,右(一)の認定事実からすると本件事故当時,控訴人は単に酒気を帯びていたにとどまらず,そのアルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態であった疑いが濃厚であるといわなければならず,したがって,本件事故自体決して軽いものではないというべく,特に業務外での自家用車の運転中とはいえ,旅客運送のための運転を職務とする従業員がこのような行為を行ったということは,タクシー営業を目的とする被控訴人の社会的評価に少なからぬ影響を与え,また他の運転手はじめ従業員に動揺を与えてその企業秩序維持の上でも支障を及ぼしたものといわなければならない。しかし,(1)本件事故では控訴人が自傷したほかは,その損害は比較的軽微であって,いずれも控訴人において賠償を終えており,事故についての報道もなかったことから,本件事故による被控訴人の社会的評価の現実的毀損はそれほど大きくはなかったと考えられること,(2)控訴人は過去に同種の前科,前歴はなく,被控訴人により懲戒されたこともないこと,(3)他の従業員も本件解雇は重すぎるとの反応を示していること,(4)労働基準監督署長も本件につき解雇予告除外認定をしなかったこと,(5)被控訴人も従業員に対し,その対象たる非行の性質は異なるにせよ,これまで比較的寛大に懲戒権を行使してきたこと,(6)同業他社においては本件よりも情が重いとみられる事例でも懲戒解雇にはなっていないこと,(7)自動車運転を職務内容とするか否かという点で重大な差異があるものの,全体の奉仕者として職場規律が重視され,社会的にも厳しく評価されている県庁職員,公立学校教職員の飲酒運転事例においても,相当に悪質な一例を除き,すべて停職以下の処分にとどまっていることなど,これまでに認定した諸般の事情を勘案すると,懲戒権行使にあたり被控訴人に認められるべき裁量の幅を考慮しても,本件事故が被控訴人の社会的評価に及ぼした悪影響,その企業秩序に与えた支障の程度は,客観的にみて懲戒解雇を相当とするほどまでに重大であるとは認められない。したがって,本件解雇は懲戒権を濫用したものであって,無効であるといわざるをえない。
(一) 会社が川崎市大師川中島町九五番地に本店を有するタクシー運送(一般乗用旅客自動車運送事業)を業とする会社であること,申請人がタクシー運転手として会社の業務に従事する従業員であつたこと並びに昭和三八年一一月六日会社は申請人に対し,同人に会社就業規則第二二条第六号,第九号,第一二号に該当する行為があつたとして,懲戒解雇の意思表示をなし,以後申請人を従業員として扱わず,労務の受領を拒否していることは,当事者間に争いがない。
(二) そこで申請人に懲戒解雇に値する行為があつたか否かにつき判断を加える。
昭和三八年一一月五日午後一〇時三〇分頃東京都大田区仲蒲田一丁目花見橋袂交叉点において,申請人運転の自動車と申請外駒村勇運転に係る自動車とが接触事故を惹起したことは当事者間に争いない。
そこで右事故につきその原因を検討するに,証人駒村勇,木村幸の各証言及び申請人本人尋問の結果(但し後記措信しない部分を除く)によれば,右事故当日申請人は乗車勤務中に自宅に立寄つて夕食をとつたが,その際相当量の飲酒をなし,自動車の運転に支障をきたすような状態に陥つていながら,そのまま運転を続け,前示事故現場に到つたこと,事故現場の交叉点は申請外駒村の運転方向に優先通行権があり,申請人と同一方向に進行する自動車が一台一時停止をしていたのに,申請人はこれに随わず,多少速度を落しはしたもののそのまま右停止車の傍を通り抜け交叉点に進入したため,折柄右交叉点を申請人運転車とほぼ直角に進行していた申請外駒村の運転車と衝突してしまつたこと,申請外駒村の方では衝突直前申請人運転車を発見し,衝突を避けるため,右にハンドルを切つたけれども,申請人の方では何んらの措置を講ぜぬままであつたこともあつて遂に衝突の事態に至つてしまつたこと,以上の事実が認められる。申請人本人尋問の結果中には,右認定と異り,申請人は事故現場で一時停止をしており,ただ一時停止地点では左右の見通しがきかないので緩速度で交叉点に進入しかけたところを申請外駒村運転車に追突された旨及びその当時申請人は日本酒を六・七勺程度飲んでいただけであつて運転に支障をきたすことはなかつた旨の供述部分があるけれども,右部分は,(弁論の全趣旨により真正に成立したと認められる)疎乙第六号証の一乃至三及び証人駒村勇の証言を綜合して認められる。申請人の運転車前部右寄り部分と申請外駒村の運転車左側前部寄りとが接触損傷している事実よりすると,優先通行権のある申請外駒村の運転車側面に申請人運転車が衝突したと認定できるうえ,前同証言より認められる衝突後の状況,即ち衝突後申請外駒村及び同乗者は事故後下車して事故の状況を調査しようとしたところ,申請人は運転席でラヂオを鳴らしたまま容易に下車して来ず,促がされて現場付近の警察派出所に出頭してきた際にはチユーインガムを噛みながらであつたけれども,派出所内は酒気が明らかに認められる程度匂つており,警察官より申請人は飲酒を咎められていたことからみると,申請人は事故当時一見して明白な飲酒状態にあり,そのため運転に支障をきたす状況であつたと認める外ないので,結局申請人本人尋問の結果中さきの認定に反する部分は措信することはできず,他に右認定を左右しうるに足りる証拠はない。
しからば前記事故は,申請人が飲酒のため自動車運転に必要な注意力を欠いた状態であつたのに,あえて自動車を運転し,交叉点を通過するに当り前方注視義務を尽くすことなく,一時停止もせずに進行したため発生したものということができる。
(三) ところで(被申請人代表者本人尋問の結果真正に成立したと認められる)疎乙第一及び第二号証,(成立に争いのない)疎乙第八号及び第九号証並びに被申請人代表者本人尋問の結果によれば,会社には昭和三七年九月二一日川崎労働基準監督署長に届出た就業規則及び運転者服務規律が制定されてあり,新たに運転手を雇い入れる際にはこれを閲覧させ,これを遵守して就労する旨誓約させておるほか,右就業規則を会社従業員控室の掲示板の傍に備えつけ,従業員の閲覧に供していたこと,運転者服務規律第二一条イ号には酒気帯び運転を厳禁する定めがあり,就業規則第二二条には制裁の事由の定めがなされているが,その事由として,故意に災害事故をひき起した時(第六号),会社の名誉信用を傷つけた時(第九号),業務上の指揮命令に違反した時(第一二号),その他右に準ずる程度の不都合な行為をした時(第一三号)などが列挙されていること,以上の事実が認められる。右認定に反し,就業規則は従業員に明示されておらずその内容もわからなかつた旨の証人吉沢優,同会森勝太郎の各証言および申請人本人の供述部分は,そのまま採用することはできず,他に右認定を左右するに足る証拠はない。
(四) 以上認定の各事実によると,会社は,申請人が飲酒運転に起因する接触事故を惹き起したことが就業規則所定の制裁事由に該当する限りその定めるところに従つて,申請人に対し懲戒権を行使することができるといわなければならない。ところで,申請人の所為は,前記服務規律第二一条イ号の禁止規定に違反し,ひいては就業規則第二二条第一二号に該当することが明らかなばかりでなく,会社の業務内容から考えて,同条第九号にも該当することが明らかである。けだし,タクシー運転手なる者は客を運送中はその者の生命,身体を全面的に委ねられる立場にあり,また運転中は常に通行人・通行車の安全を計らなくてはならない立場にあつて,いささかなりとも飲酒運転の許さるべきでないことは,改めていうまでもないにかかわらず,従業員中からかような社会的非難に値する運転手が出たことは,会社としての社会的名誉信用を傷つけられたというにいささかの妨げもないからである。加うるに,成立に争いのない乙第七号証の一,二によると,申請人は過去にメーター不倒で六日間の出勤停止処分を受けたことがあることを認めることができる。かような申請人について,会社が本件事故を契機として,就業規則に定めある懲戒解雇処分を選択して,申請人を企業内から放逐しようとすることは,今日の交通事情からみて特に厳しい規律を社会的に要請されているタクシー業者たる会社にとつて当然の措置といえるであろう。
してみると,本件懲戒解雇は,明示の根拠規定なしに行われたものとはいえず,またその選択を誤つたものともいえないから会社が右就業規則違反を事由として申請人を懲戒解雇に付したことは相当である。
申請人が検察庁において不起訴処分となつていること(この点は当事者間に争いない)は,右の結論に何ら影響を及ぼすものではない。刑事責任を追求する捜査官の立場と,多数の労働者を雇傭し営利を追求する立場にある経営者が企業秩序を維持するため従業員に対し懲戒権を行使する場合とでは,従業員の犯した過失に対する判断も自ら異なつてくるのは当然であるのみならず,さきにふれたように社会的に厳しい規律を要請されている立場にある会社の懲戒権の行使が,刑事責任の追求の場合と同一結果をとらなくてはならぬものではない。
また,被申請人代表者本人尋問の結果によると会社従業員のうち,従来飲酒運転を犯した者は申請人を含め三名を数え,これらはいずれも物的損害を惹き起しているにとどまり,人的損害迄生ぜしめている者は皆無であるけれども,いずれも懲戒解雇されていることが認められ,右認定を覆えすに足りる証拠はない。従つて,会社が申請人を懲戒解雇に付したからといつて,ことさら申請人に対してのみ苛酷な処分をなし,他の場合と権衡を失しているとは考えられず,本件懲戒解雇をもつて就業規則の適用を誤り,ひいては,懲戒解雇権の濫用であるとかいうことができないことはいうまでもない。
(五) 申請人は,会社の申請人に対する本件懲戒解雇の決定的理由は申請人が終始一貫して神自交川崎共同タクシー支部に属し,その会計担当役員として組合活動に積極的であつたことにあると主張し,証人吉沢優,同会森勝太郎の各証言によると,申請人が終始一貫右支部の組合員で且会計担当役員であつたこと,会社が右支部の存在に好意をもつていなかつたことは認めることができるけれども,それだけのことで本件懲戒解雇の真の原因を申請人の神自交川崎共同タクシー支部加入にあり,会社が右組合の切崩しをはかつたことによるとすることは,さきに認定した懲戒解雇事由と比べてみて,とうてい是認することができないのみならず,証人木村幸の証言及び被申請人代表者本人尋問の結果によると,申請人は前記事故直後その過失を全面的に認め制裁を受けるべきことを承服する態度に出ていたことを認めることができ,申請人が右支部組合員なるが故に特に不利益な扱いを受けたと考えることもできない。他に申請人の不当労働行為の主張をなつとくさせるに足るだけの証拠は,本件にあらわれておらず,申請人の右主張を容れる余地はない。
(六) 次に,本件解雇が,所轄川崎労働基準監督署長の労働基準法第二〇条の規定によるいわゆる除外認定を経ないでなされてしまつたことは,当事者間に争いのないところである。しかしそれがため,本件懲戒解雇の効力が左右されることにはならないと解するのが相当である。除外認定制度は,労務行政の立場から,使用者が恣意的に懲戒解雇乃至即時解雇をなすことを抑制せんとし,かかる場合まずもつて行政官庁の認定を受けるよう使用者側に義務づけたもので,その本質は事実確認的なものである。除外認定を経たかどうかということと,客観的に労働基準法第二〇条第一項但書に該当する事由が存在するかどうかということ(本件では懲戒解雇事由の存否)とは別個の問題であつて,除外認定を受けないで懲戒解雇をした場合でも,現実にその事由が存するならば,有効であり,これに反し除外認定を経た場合でも,本来その事由を欠いているときは,解雇は無効とされざるをえないのである。従つて,前示認定のごとく本件懲戒解雇はその理由ありとされたのであるから,それが除外認定を経ずになされたからといつて,その効力に消長をきたすことはないというべきである。また,会社就業規則第二一条四号に,懲戒解雇に関して申請人主張のような条項の定めあることは当事者間に争いがないが,右条項は労働基準法第二〇条第一項但書,第三項,同法施行規則第七条の規定をそのまま要約してひきうつしたものにすぎず一方被申請人代表者本人尋問の結果によると,会社では従前から懲戒解雇の場合に右条項による除外認定を受けるべきことを必らずしも明らかに認識していなかつたことが認められるから,右条項の定めあることをもつて,会社が懲戒解雇の効力を除外認定の有無によつて左右さるべきものとして,懲戒解雇をなすにつき自律的制限を加えた趣旨のものとみることは相当でない。会社が除外認定の申請もせずに懲戒解雇を行つたときは,罰則の適用を受け,また債務不履行の責に任ずべきことがあるにすぎないものと解すべきである。してみると,本件懲戒解雇の効力が左右さるべきものでないことは,さきの説明から明らかであろう。
(七) しからば会社の申請人に対しなした本件懲戒解雇は有効であつて,申請人は昭和三八年一一月六日限り会社従業員たる地位を失つている故,本件仮処分申請は被保全権利の存在を欠き,仮処分の必要性につき判断する迄もなく,理由なしとして却下せざるをえない。よつて訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用し,主文のとおり判決する。
(労働審判手続の申立て)
第五条
当事者は,個別労働関係民事紛争の解決を図るため,裁判所に対し,労働審判手続の申立てをすることができる。
2 前項の申立ては,その趣旨及び理由を記載した書面でしなければならない。
(迅速な手続)
第十五条
労働審判委員会は,速やかに,当事者の陳述を聴いて争点及び証拠の整理をしなければならない。
2 労働審判手続においては,特別の事情がある場合を除き,三回以内の期日において,審理を終結しなければならない。
(異議の申立て等)
第二十一条
当事者は,労働審判に対し,前条第四項の規定による審判書の送達又は同条第六項の規定による労働審判の告知を受けた日から二週間の不変期間内に,裁判所に異議の申立てをすることができる。
2 裁判所は,異議の申立てが不適法であると認めるときは,決定で,これを却下しなければならない。
3 適法な異議の申立てがあったときは,労働審判は,その効力を失う。
4 適法な異議の申立てがないときは,労働審判は,裁判上の和解と同一の効力を有する。
5 前項の場合において,各当事者は,その支出した費用のうち労働審判に費用の負担についての定めがないものを自ら負担するものとする。
(非訟事件手続法及び民事調停法の準用)
第二十九条
労働審判事件に関しては,非訟事件手続法(明治三十一年法律第十四号)第一編(第三条,第六条,第七条,第十条中民事訴訟に関する法令の規定中人証及び鑑定に関する規定を準用する部分,第十一条,第十三条,第十五条,第二十一条並びに第三十二条を除く。)並びに民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)第十一条,第十二条,第十六条及び第三十六条の規定を準用する。この場合において,非訟事件手続法第二十六条中「裁判前ノ手続及ビ裁判ノ告知ノ費用」とあるのは「労働審判事件ニ関スル手続ノ費用」と,民事調停法第十一条中「調停の」とあるのは「労働審判手続の」と,「調停委員会」とあるのは「労働審判委員会」と,「調停手続」とあるのは「労働審判手続」と,同法第十二条第一項中「調停委員会」とあるのは「労働審判委員会」と,「調停の」とあるのは「調停又は労働審判の」と,「調停前の措置」とあるのは「調停又は労働審判前の措置」と,同法第三十六条第一項中「前二条」とあるのは「◆労働審判法◆(平成十六年法律第四十五号)第三十一条及び第三十二条」と読み替えるものとする。
(調停)
第二十二条 労働審判委員会は,審理の終結に至るまで,労働審判手続の期日において調停を行うことができる。
2 裁判所書記官は,前項の調停において当事者間に合意が成立したときは,当該合意の内容並びに当事者の氏名又は名称及び住所並びに代理人の氏名を,調書に記載しなければならない。
労働契約法
(懲戒)
第十五条
使用者が労働者を懲戒することができる場合において,当該懲戒が,当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合は,その権利を濫用したものとして,当該懲戒は,無効とする。
(解雇の予告)
第二十条 使用者は,労働者を解雇しようとする場合においては,少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は,三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し,天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては,この限りでない。
2 前項の予告の日数は,一日について平均賃金を支払つた場合においては,その日数を短縮することができる。
3 前条第二項の規定は,第一項但書の場合にこれを準用する。
(訴え提起の方式)
第百三十三条 訴えの提起は,訴状を裁判所に提出してしなければならない。
2 訴状には,次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 当事者及び法定代理人
二 請求の趣旨及び原因
(仮処分命令の必要性等)
第二十三条 係争物に関する仮処分命令は,その現状の変更により,債権者が権利を実行することができなくなるおそれがあるとき,又は権利を実行するのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができる。
2 仮の地位を定める仮処分命令は,争いがある権利関係について債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるためこれを必要とするときに発することができる。
3 第二十条第二項の規定は,仮処分命令について準用する。
4 第二項の仮処分命令は,口頭弁論又は債務者が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ,これを発することができない。ただし,その期日を経ることにより仮処分命令の申立ての目的を達することができない事情があるときは,この限りでない。
(調停の成立・効力)
第十六条 調停において当事者間に合意が成立し,これを調書に記載したときは,調停が成立したものとし,その記載は,裁判上の和解と同一の効力を有する。