少年事件における勾留請求に対する弁護人の対応

刑事|少年法|勾留理由と「やむを得ない場合」|マスコミ、大学への連絡に対する対策

目次

  1. 質問
  2. 回答
  3. 解説
  4. 関連事例集
  5. 参考条文

質問:

私は、大学1年生(18歳)ですが、昨日新入生のコンパがあり飲み会の後、友人と2次会を開いたその帰り、酔って電車の座席に座り寝てしまいました。隣の女性が、駅に着くと、「この人が、10分以上も私の胸を手の先で触っていました」と騒ぎ出し警察に逮捕されました。確かに腕組みをした手の甲が女性の胸に一瞬、接触したような気がしましたが、10分も長時間触った記憶がありません。私は刑事上の処分を受けるのでしょうか。また、大学に連絡は行くでしょうか。マスコミには発表になるでしょうか。

回答:

1.ご相談の内容からすると,あなたには,いわゆる「迷惑防止条例」違反の嫌疑がかけられています。あなたが未成年者であることから,今後は,捜査の後に家庭裁判所に送致され,少年審判(場合によっては刑事裁判)を受ける可能性が高いと考えられます。唯、検察官の勾留請求に対しては勾留の理由があったとしても、事件の性質上少年法の趣旨(1条)から捜査に特別の支障がないとして却下決定を求め徹底的に争わなければいけません。

2.大学への連絡及びマスコミへの発表については,捜査機関が大学及びマスコミに連絡することのないよう,弁護人を通じて捜査機関に働きかける必要があります。以下,解説します。

3.少年事件に関する関連事例集参照。

解説:

第1 相談者の置かれている現状について

1 被疑事実について

(1)今回,あなたが逮捕されたのは,電車内であなたの隣に座っていた女性が,「この人が,10分以上も私の胸を手の先で触っていました」と供述していることによるものと考えられます。

(2)各都道府県では,いわゆる「迷惑防止条例」が制定されており,痴漢行為等の多くはこの条例により処罰の対象となっています。東京都でいえば,「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為の防止に関する条例」第5条1項が,「何人も、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、人を著しくしゆう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような卑わいな言動をしてはならない」と定めており,第8条1項2号が,これに対する罰則として「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」を定めています。

(3)つまり,あなたには,女性の胸を手の先で10分以上触ることにより,人を著しくしゆう恥させ,又は人に不安を覚えさせるような卑わいな言動をしたという嫌疑がかけられていることになります。なお、「女性の胸を手の先で10分以上触ること」という行為態様は刑法176条の強制わいせつ罪又は178条の準強制わいせつ罪を構成しうる行為ではありますが、今回は、「暴行又は脅迫」「抗拒不能」の要件を満たさないと判断できますので、主に迷惑防止条例違反の点につき述べたいと思います。強制わいせつ罪と迷惑防止条例違反の区別については別稿を参照頂きたいと思います。

2 相談者の主張の法的意味

(1) ところで,あなたのお話によれば,「酔って電車の座席に座り寝てしまった」「腕組みをした手の甲が一瞬女性の胸に接触したような気がしたが、10分も触った記憶がない」とのことですが,この主張は法的にどのような意味を持つでしょうか。

以下の2つの主張が考えられます。

ア 「行為」にあたらないとの主張

刑法上明確な規定はありませんが解釈上犯罪とは,一般に「構成要件に該当し,違法かつ有責な行為(・・)」と定義されています。つまり,処罰の対象となるのは人の「行為」でなければなりません(これを,刑法の「行為主義」といいます)。刑法は,例えば35条から38条において「・・・行為は,罰しない」と定めており,その処罰の対象が人の「行為」であることを前提としています。

そして,この刑法の「行為主義」は,次の2つの意味を持っています。

まず,人の内心や思想を処罰の対象としてはならない,という意味です。そのことは,憲法19条が思想・良心の自由を,20条が信教の自由を保障していることからも裏付けられます。

もう1つの意味は,人の意思による支配とコントロールの不可能な身体的態度についても,処罰対象としてはならない,ということです。刑法とは,法益を保護するための行為規範,すなわち,その場面においてどのような行動をとるべきかを定めたルールですから,そもそもルールに従えない状況下での身体的態度を処罰対象とすることは,法益保護という刑法の目的に照らして不合理かつ無意味です。従って,人の意思による支配とコントロールの不可能な身体的態度は,刑法上の「行為」から除外されるべきなのです。そして,人の意思による支配とコントロールの不可能な身体的態度の典型例として,睡眠中の動作や,単なる反射運動等を挙げることができます。

今回のケースは,コンパの帰りに乗った電車の座席で寝ていた際に起こった出来事ですから,「睡眠中の動作であり,(刑法上の)行為ではない」という主張をする余地はあるでしょう。しかし、睡眠中の動作については実務上,刑法上の行為性が否定されることは極めて希です。ただ、否定した判例もあります。大阪地裁昭和37年7月24日判決は,「首をしめて殺されようとする夢を見て,極度の恐怖感に襲われるまま半覚半醒の意識状態のもとで,相手の首を半ば無意識的にしめるつもりで,傍に寝ていた妻の首をしめ殺害した」という事案について,「そもそも刑罰法規の対象たり得る行為には該当しない」と判示しています。

イ 「故意」がないとの主張

また,仮に刑法上の行為と評価されるとしても,「腕組みをした手の甲が女性の胸に接触したような気がした」という程度であれば,「意図的に接触したわけではない」とか,「接触するつもりはなかった」というように,「故意」がないと主張することも考えられます(刑法38条1項)。

(2) いずれにしても,お伺いした事情を前提とすると,以上の2点を理由に犯罪の成立を争うことになると考えられます。唯、無実を争うということになると後の手続きにおいて身柄拘束が継続される可能性は残されると思います。そのことを前提に,今後の手続について解説します。

第2 今後の手続の進行について

今後の手続についてですが,まず,検察庁に事件が送致された後,以下のような進行をたどることが予想されます。以下では,今後の手続の流れと,その手続内における弁護人(付添人)の役割について解説していきます。

1 勾留または勾留に代わる観護措置

(1)勾留

少年の刑事手続きは,成年者の刑事手続と基本的に同様であり(少年法40条),逮捕の後、勾留として10日間(延長が認められれば,20日間)の身柄拘束が認められます(刑訴法208条)。

なお,少年法は,少年の被疑事件においては,「やむを得ない場合」でなければ,検察官は勾留を請求することができず(少年法43条3項),また,勾留状を発することもできない(少年法48条1項)と定め,少年の勾留のために必要な要件を,成年の場合と比べて加重しています。「やむを得ない場合」と抽象的に規定されていますが、適正な捜査権行使には例え少年といえども勾留の必要性が生じますが、少年法の理想である少年の健全な成長保全という視点から、成人よりも主に罪証隠滅、逃走等の危険性の立証責任を加重し、捜査方法としては本来監護処置(少年鑑別所送致等)を前提とするというものです。従って、弁護人としては反証が容易であり後記の積極的な具体的反証証拠の提出が求められます。

横浜地方裁判所昭和36年7月12日決定(勾留請求却下の裁判に対する検察官の準抗告事件)内容。「少年法43条3項、48条1項の「やむを得ない場合」とは、少年である被疑者が、刑訴60条の要件を完備する場合で、当該裁判所の所在地に、少年鑑別所又は代用鑑別所がなく、あっても収容能力から収容できずない場合、又は、少年の性行、罪質から勾留によらなければ捜査の遂行上重大な支障をきたすと認められる場合を指す」と判断しています。覚せい剤取締法違反事件で少年らが一部否認し、一部否認する成人の第三者と共犯関係にあっても、管轄地域に少年鑑別所は設置されており、又は捜査に重大な支障をきたす事情は見当たらないとして検察官の準抗告を棄却しています。少年の健全な成長を考え、観護処置(少年鑑別所送致)請求を本来とるべきであるとした判断は妥当でしょう。

しかし,現実には,軽微事件であっても安易に勾留請求が認められる傾向にあるため,犯罪事実を争っている今回のようなケースでは,弁護人が対応を怠ると「勾留しないと捜査の遂行上重大な支障をきたす。」という理由で勾留請求をされ,勾留が認められる可能性が高いでしょう。また、少年を勾留する場合、成年のように拘置所や代用監獄ではなく少年鑑別所を拘禁場所とすることもできますが(少年法48条2項)実際には行われていません。そこで,弁護人を通じて,なんとしても勾留請求を阻止し,身柄を解放するための活動を行う必要があります。具体的には、刑訴60条各号、勾留の理由がないことに関し書面をもって反証する必要性が生じます。両親の身元引受書、罪を認めるのであれば示談金、通学経路変更、被害者への接近禁止の誓約書、家族の供述書、学歴等の生活態度証明等により、罪証隠滅の可能性がないこと(学生であり通常、住居は一定しており、逃走の危険はないでしょう)を反証します。勾留の要件が加重されている分成人よりは反証が容易でしょう。また,身柄拘束が避けられないとしても,下記(2)の勾留に代わる観護措置で代替するよう求めることも考えられますし主張しなければなりません。

札幌家庭裁判所平成15年8月28日決定(窃盗未遂保護事件の少年法17条7項みなし観護措置に対する異議申立て事件)において、少年の窃盗共犯事件について異議申し立てを認めていますが、反証方法として、少年の経歴、家庭環境、両親の監督、反省の程度その他罪証隠滅、逃走の可能性がないと考えられる事情を考慮しています。

(2)勾留に代わる観護措置

少年法は,「検察官は,少年の被疑事件の捜査について,その身柄を保全する必要があるときは,勾留の請求に代えて,裁判官に観護措置を請求することができる」(少年法43条1項)と定めています。これは,上記(1)の勾留の代替・補充手段として,少年の身柄を保全するための措置です。観護措置には,少年を家庭に置いた状態で観護の目的を達しようとするもの(少年法17条1項1号)と,少年鑑別所に送致するもの(同2号)がありますが,実務的には,前者はほとんど利用されておらず,少年鑑別所へ送致されるのが通常です。この監護処置に対する異議手続きですが、勾留と同じように準抗告になりますが(刑訴429条準用。)、家裁送致後は少年法17条の2の異議申し立てになります。

ところで、少年法43条3項が、成人と異なり「やむを得ない場合」にのみ検察官が勾留請求できるという規定から、検察官が、勾留請求却下を懸念し、刑訴256条5項の訴因記載と同様に、勾留請求を主位的に、予備的に(又は択一)監護処置請求ができるかどうか実務上争われていますが、少年の健全な成長の確保という観点からは是認されると考えることも可能でしょう。詳しい理由については割愛します。いずれにしろ、弁護人は、愛情に包まれた家庭に少年を戻してあげることを念頭に両請求に対応する(通常は兼ねることが可能)あらゆる書面を短時間に準備し、裁判所に提出、裁判官面接をする必要性が求められます。

2 家庭裁判所への送致

(1)全件送致主義

ア 少年事件の場合,検察官は,捜査を遂げた結果,犯罪の嫌疑があるものと思料するときは,これを家庭裁判所に送致しなければならないとされています(少年法42条1項。これを「全件送致主義」といいます)。したがって,成年者の被疑事件のように,犯罪の成立を認めた上で,被害者との示談が成立していること等の有利な事情を主張して「起訴猶予処分」を得ることはできません。

イ しかし,犯罪の嫌疑がない,あるいは不十分であることを理由とする終局処分を検察官がすることは,この規定によっても妨げられません。したがって,家庭裁判所への送致を避けるためには,捜査段階の早い時期から弁護人と相談をして,犯罪事実がないことを証明する証拠を収集し,検察官に対し,犯罪の嫌疑がない,あるいは不十分であることを主張していく必要があります。

(2)家庭裁判所への送致後の身柄拘束

ア 家庭裁判所へ送致された後の身柄拘束は,少年法17条1項2号の定める「少年鑑別所での観護措置」になります。なお,家庭裁判所への送致により,捜査段階でした弁護人の選任はその効力を失いますので(少年法42条2項),引き続き弁護士からの支援を受けたい場合には,その弁護士を付添人に選任する必要があります。

イ 捜査段階で勾留が認められている場合には,家庭裁判所は,送致を受け事件記録を受理したときから,24時間以内に,審判を行うための観護措置をとるか否かを決定しなければなりません(少年法17条2項)。観護措置がとられた場合には,通常,審判期日までの3週間程度身柄を拘束されることになりますので,付添人を通じて,観護措置が不必要であることを裁判所に対して主張しなければなりません。この点について、検察官が家庭裁判所へ送致する書面の中に意見として、監護処置の必要性を記載している場合がありますが、家庭裁判所の裁判官は、24時間という短時間に(通常は送致を受けると夕方までに)決定しなければならないので、その前に付添人としての意見書を提出し、裁判官に面接する必要があります。無実の主張であれば、それを根拠づける詳細な理由書(検察官への提出書面でもかまいません。)罪を認めるのであれば、勾留に対する時と同様に、謝罪金の預かり証、本人、両親、家族(例えば、祖母、祖父、これは結構効果があります。)の反省文、両親の身元引受書、中学、高校、大学での非行性がないことを裏付ける証拠(成績表、クラブ活動の成績表)等数多く提出する必要があります。

時間がなく、監護処置がとられた場合は体勢を立て直し、証拠の書類を充実させ必ず異議の申し立て(法17条の2第1項)が必要です。勾留に対する準抗告の場合よりも異議が通る可能性は残されていると思います。特別な犯罪、特別な事情がない限り少年を愛情に包まれた暖かい家庭に戻してあげるのが少年の健全な成長を見守る少年法1条の趣旨に合致するからです。付添い人が何もしなければ、検察官の意見書が通ることになるでしょう。(この法律の目的)少年法 第1条 この法律は、少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とする。

3 少年審判

(1)家庭裁判所に事件が送致された後は,調査官による調査を経て,家庭裁判所が終局決定をすることとなります。家庭裁判所が行う終局決定には,保護の必要性が認められる場合の「保護処分(保護観察,少年院送致等)」,保護の必要性がない場合の「審判不開始」,「不処分」等があります。

(2)今回のケースのように,非行事実が存在しないことを主張する場合には,審判の開始前に「審判不開始」(少年法19条1項)が相当であること,あるいは審判で「不処分」(少年法23条2項)が相当であることを,付添人を通じて求めることになります。たとえ、罪を認めても、前科がなければ被害者の宥恕の書面、被害弁償の和解書面、家族の身元引受の書面があれば「不処分」になる確率は高いと思います。成人の場合であれば、初犯で被害者との和解、示談ができれば起訴便宜主義(刑訴248条)の理念から通常不処分であり、本件では、19歳成人と年齢的に接近しており、成人の処分との均衡がとれないからです。

第3 大学及びマスコミの連絡について

1 大学に対して

(1)捜査を担当する警察官も公務員であり,職務上知り得た秘密を漏らしてはならない守秘義務を負っています(地方公務員法34条)。したがって,正当な理由もなく,逮捕された者の勤務先や通学先に連絡を取り,逮捕されていることを告げることはできません。もっとも,捜査の一貫として大学から事情を聞く場合には,守秘義務に違反するとはいえません。しかし,本件のように,飲み会の後の電車内での出来事について,大学から事情を聞く必要はそもそも存在しないでしょう。捜査の必要性がないのにもかかわらず,被疑事実や逮捕されたことを明らかにして大学から事情聴取をすることは,適正な捜査権の行使とは言えず,許されません。

(2)なお,少年事件については,「学校・警察連絡制度」という,少年の非行事実について学校に通報する制度を設けている警察署も存在します。ただし,その通報先は高等学校までに限られており,大学は含まれない運用がなされているようです。大学は高等教育機関であり,学生の生活指導等を行うための機関ではありませんから,通報先から大学が除外されている取り扱いは正当といえるでしょう。

(3)以上からすれば,大学に連絡が行くことは考えづらいですが,ご心配であれば,弁護士を通じて,担当捜査官に対して大学に連絡をしないよう申入れをしてもらうとよいでしょう。

2 マスメディアに対して

(1)警察等の捜査機関が,事件についてマスメディアに報告し,マスメディアがそれを報道することは,広く行われています。既に述べた公務員の守秘義務に照らすと,このようなあり方にまったく問題がないとはいえません。

(2)しかし,他方で,国民には憲法上「知る権利」が保障されており,マスメディアの「報道の自由」は国民の「知る権利」に仕えるものであると考えられることからすると,およそ一切の事件についてマスメディアに公表することは許されないとすることもまた問題があります。

(3)この点について,少年法は,「家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であること推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない」と規定しています。

「家庭裁判所の審判に付された少年」もしくは「少年のとき犯した罪により公訴を提起された者」が対象ですので,文言上は,捜査過程にある者はこの規定の対象外ですが,審判に付された少年や公訴を提起された者について推知報道が禁止されるのであれば,捜査段階にある少年についてはなおさらこれを禁止すべきであると読むことも可能でしょう。

そうであるとすれば,マスメディアが推知報道をすることが法により禁止されている以上,警察がマスメディアに本人であることを推知できるような情報を提供する正当な理由は存在しないことになります。

(4)したがって,弁護人を通じて,担当捜査官に対し,氏名や大学名等,逮捕された人物があなたであることを推知させるような情報を公表することのないよう申入をしてもらうのが良いでしょう。

以上

関連事例集

Yahoo! JAPAN

※参照条文・判例

憲法

第19条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

第20条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。

2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。

3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

刑法

(正当行為)

第35条 法令又は正当な業務による行為は、罰しない。

(正当防衛)

第36条 急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。

2 防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。

(緊急避難)

第37条 自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。

2 前項の規定は、業務上特別の義務がある者には、適用しない。

(故意)

第38条 罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。

2 重い罪に当たるべき行為をしたのに、行為の時にその重い罪に当たることとなる事実を知らなかった者は、その重い罪によって処断することはできない。

3 法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。ただし、情状により、その刑を減軽することができる。

公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例

(粗暴行為(ぐれん隊行為等)の禁止)

第5条 何人も、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、人を著しくしゆう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような卑わいな言動をしてはならない。

2 何人も、公共の場所または公共の乗物において、多数でうろつき、またはたむろして、通行人、入場者、乗客等の公衆に対し、いいがかりをつけ、すごむ等不安を覚えさせるような言動をしてはならない。

3 何人も、祭礼または興行その他の娯楽的催物に際し、多数の人が集まつている公共の場所において、ゆえなく、人を押しのけ、物を投げ、物を破裂させる等により、その場所における混乱を誘発し、または助長するような行為をしてはならない。

4 何人も、公衆の目に触れるような工作物に対し、ペイント、墨、フェルトペン等を用いて、次の各号のいずれかに該当する表示であつて、人に不安を覚えさせるようなものをしてはならない。

一 暴走族(道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)第六十八条の規定に違反する行為又は自動車若しくは原動機付自転車を運転して集団を形成し、同法第七条、第十七条、第二十二条第一項、第五十五条、第五十七条第一項、第六十二条、第七十一条第五号の三若しくは第七十一条の二の規定に違反する行為を行うことを目的として結成された集団をいう。次号において同じ。)の組織名の表示

二 暴走族が自己を示すために用いる図形の表示

(罰則)

第八条 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

一 第二条の規定に違反した者

二 第五条第一項の規定に違反した者

2 前項第二号の罪を犯した者が、人の通常衣服で隠されている下着又は身体を撮影した者であるときは、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

刑事訴訟法

第208条 前条の規定により被疑者を勾留した事件につき、勾留の請求をした日から10日以内に公訴を提起しないときは、検察官は、直ちに被疑者を釈放しなければならない。2 裁判官は、やむを得ない事由があると認めるときは、検察官の請求により、前項の期間を延長することができる。この期間の延長は、通じて10日を超えることができない。

第256条 公訴の提起は、起訴状を提出してこれをしなければならない。

○2 起訴状には、左の事項を記載しなければならない。

一 被告人の氏名その他被告人を特定するに足りる事項

二 公訴事実

三 罪名

○3 公訴事実は、訴因を明示してこれを記載しなければならない。訴因を明示するには、できる限り日時、場所及び方法を以て罪となるべき事実を特定してこれをしなければならない。

○4 罪名は、適用すべき罰条を示してこれを記載しなければならない。但し、罰条の記載の誤は、被告人の防禦に実質的な不利益を生ずる虞がない限り、公訴提起の効力に影響を及ぼさない。

○5 数個の訴因及び罰条は、予備的に又は択一的にこれを記載することができる。

○6 起訴状には、裁判官に事件につき予断を生ぜしめる虞のある書類その他の物を添附し、又はその内容を引用してはならない。

第429条 裁判官が左の裁判をした場合において、不服がある者は、簡易裁判所の裁判官がした裁判に対しては管轄地方裁判所に、その他の裁判官がした裁判に対してはその裁判官所属の裁判所にその裁判の取消又は変更を請求することができる。

一 忌避の申立を却下する裁判

二 勾留、保釈、押収又は押収物の還付に関する裁判

三 鑑定のため留置を命ずる裁判

四 証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人に対して過料又は費用の賠償を命ずる裁判

五 身体の検査を受ける者に対して過料又は費用の賠償を命ずる裁判

○2 第四百二十条第三項の規定は、前項の請求についてこれを準用する。

○3 第一項の請求を受けた地方裁判所又は家庭裁判所は、合議体で決定をしなければならない。

○4 第一項第四号又は第五号の裁判の取消又は変更の請求は、その裁判のあつた日から三日以内にこれをしなければならない。

○5 前項の請求期間内及びその請求があつたときは、裁判の執行は、停止される。

第四百三十条 検察官又は検察事務官のした第三十九条第三項の処分又は押収若しくは

少年法

(この法律の目的)少年法 第1条 この法律は、少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とする。

(観護の措置)

第17条 家庭裁判所は、審判を行うため必要があるときは、決定をもつて、次に掲げる観護の措置をとることができる。

1.家庭裁判所調査官の観護に付すること。

2.少年鑑別所に送致すること。

2 同行された少年については、観護の措置は、遅くとも、到着のときから24時間以内に、これを行わなければならない。検察官又は司法警察員から勾留又は逮捕された少年の送致を受けたときも、同様である。

3 第1項第2号の措置においては、少年鑑別所に収容する期間は、2週間を超えることができない。ただし、特に継続の必要があるときは、決定をもつて、これを更新することができる。

4 前項ただし書の規定による更新は、1回を超えて行うことができない。ただし、第3条第1項第1号に掲げる少年に係る死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件でその非行事実(犯行の動機、態様及び結果その他の当該犯罪に密接に関連する重要な事実を含む。以下同じ。)の認定に関し証人尋問、鑑定若しくは検証を行うことを決定したもの又はこれを行つたものについて、少年を収容しなければ審判に著しい支障が生じるおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある場合には、その更新は、更に2回を限度として、行うことができる。

5 第3項ただし書の規定にかかわらず、検察官から再び送致を受けた事件が先に第1項第2号の措置がとられ、又は勾留状が発せられた事件であるときは、収容の期間は、これを更新することができない。

6 裁判官が第43条第1項の請求により、第1項第1号の措置をとつた場合において、事件が家庭裁判所に送致されたときは、その措置は、これを第1項第1号の措置とみなす。7 裁判官が第43条第1項の請求により第1項第2号の措置をとつた場合において、事件が家庭裁判所に送致されたときは、その措置は、これを第1項第2号の措置とみなす。この場合には、第3項の期間は、家庭裁判所が事件の送致を受けた日から、これを起算する。

8 観護の措置は、決定をもつて、これを取り消し、又は変更することができる。

9 第1項第2号の措置については、収容の期間は、通じて8週間を超えることができない。ただし、その収容の期間が通じて4週間を超えることとなる決定を行うときは、第4項ただし書に規定する事由がなければならない。

10 裁判長は、急速を要する場合には、第1項及び第8項の処分をし、又は合議体の構成員にこれをさせることができる。

(異議の申立て)

第17条の2 少年、その法定代理人又は付添人は、前条第一項第二号又は第三項ただし書の決定に対して、保護事件の係属する家庭裁判所に異議の申立てをすることができる。ただし、付添人は、選任者である保護者の明示した意思に反して、異議の申立てをすることができない。

2 前項の異議の申立ては、審判に付すべき事由がないことを理由としてすることはできない。

3 第一項の異議の申立てについては、家庭裁判所は、合議体で決定をしなければならない。この場合において、その決定には、原決定に関与した裁判官は、関与することができない。

4 第三十二条の三、第三十三条及び第三十四条の規定は、第一項の異議の申立てがあつた場合について準用する。この場合において、第三十三条第二項中「取り消して、事件を原裁判所に差し戻し、又は他の家庭裁判所に移送しなければならない」とあるのは、「取り消し、必要があるときは、更に裁判をしなければならない」と読み替えるものとする。

(特別抗告)

第17条の3 第三十五条第一項の規定は、前条第三項の決定について準用する。この場合において、第三十五条第一項中「二週間」とあるのは、「五日」と読み替えるものとする。

2 前条第四項及び第三十二条の二の規定は、前項の規定による抗告があつた場合について準用する。

(審判を開始しない旨の決定)

第19条 家庭裁判所は、調査の結果、審判に付することができず、又は審判に付するのが相当でないと認めるときは、審判を開始しない旨の決定をしなければならない。

2 家庭裁判所は、調査の結果、本人が20歳以上であることが判明したときは、前項の規定にかかわらず、決定をもつて、事件を管轄地方裁判所に対応する検察庁の検察官に送致しなければならない。

(審判開始後保護処分に付しない場合)

第23条 家庭裁判所は、審判の結果、第18条又は第20条にあたる場合であると認めるときは、それぞれ、所定の決定をしなければならない。

2 家庭裁判所は、審判の結果、保護処分に付することができず、又は保護処分に付する必要がないと認めるときは、その旨の決定をしなければならない。

3 第19条第2項の規定は、家庭裁判所の審判の結果、本人が20歳以上であることが判明した場合に準用する。

(検察官の送致)

第42条 検察官は、少年の被疑事件について捜査を遂げた結果、犯罪の嫌疑があるものと思料するときは、第45条第5号本文に規定する場合を除いて、これを家庭裁判所に送致しなければならない。犯罪の嫌疑がない場合でも、家庭裁判所の審判に付すべき事由があると思料するときは、同様である。

2 前項の場合においては、刑事訴訟法の規定に基づく裁判官による被疑者についての弁護人の選任は、その効力を失う。

(勾留に代る措置)

第43条 検察官は、少年の被疑事件においては、裁判官に対して、勾留の請求に代え、第17条第1項の措置を請求することができる。但し、第17条第1項第1号の措置は、家庭裁判所の裁判官に対して、これを請求しなければならない。

2 前項の請求を受けた裁判官は、第17条第1項の措置に関して、家庭裁判所と同一の権限を有する。

3 検察官は、少年の被疑事件においては、やむを得ない場合でなければ、裁判官に対して、勾留を請求することはできない。

地方公務員法

(秘密を守る義務)

第34条 職員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、また、同様とする。

2 法令による証人、鑑定人等となり、職務上の秘密に属する事項を発表する場合においては、任命権者(退職者については、その退職した職又はこれに相当する職に係る任命権者)の許可を受けなければならない。

3 前項の許可は、法律に特別の定がある場合を除く外、拒むことができない。

<判例参照>

窃盗未遂保護事件のみなし観護措置に対する異議申立て事件

札幌家庭裁判所平成15年(少ロ)第1007号

平成15年8月28日決定

少年 M・W(昭和63.1.XX生)

主 文

少年に対し,平成15年8月22日に事件が札幌家庭裁判所に送致されたことにより,家庭裁判所がしたとみなされる観護措置を取り消す。

理 由

第1 申立ての趣旨及び理由

付添人○○作成の異議申立書記載のとおりであるから,これを引用する。

第2 当裁判所の判断

1 本件は,少年が,共犯少年3人と共謀して,工具を用いて自動販売機から現金及び清涼飲料水を窃取しようとしたが目的を遂げなかった事案である。

2 そこで,観護措置の必要性について検討するに,本件の犯行態様は芳しくない上,少年は,当初,捜査機関に対し共犯少年をかばう内容の供述をしていたが,その後,共犯関係についても自白するに至っており,本件の全容が明らかになっていること,本件非行が未遂に終わっていること,少年は,これまで非行歴や補導歴はなく,高校にもほとんど欠席することなく通っており,生活態度にも大きな問題は認められないこと,少年の家庭環境は安定しており,両親共に健在であり,少年の身元引受け及び今後の手続への出頭を誓約しているなど,両親の監督も期待できることのほか,少年が,既に相当長期間の身柄拘束を受け,反省の念を示していること,身柄拘束の継続によって少年が被る可能性のある不利益の程度等を考慮すると,少年が罪証を隠滅するおそれがあるとまではいえず,逃亡のおそれも認められない上,少年の身柄を拘束してまでその心身を鑑別する必要があるとは認められない。また,その他に観護措置の必要性を基礎づける事由も見当たらない。

3 よって,本件異議申立ては理由があるから,少年法17条の2第4項,33条2項により,主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 宮森輝雄 裁判官 湯川浩昭 清藤健一)

(参考)観護状

(別紙)

被疑事実の要旨

被疑少年は,氏名不詳の男性2名と共謀の上,平成15年8月16日午前2時10分ころ,札幌市○○区○○×××番地株式会社○○△△センター北側敷地内において、同所に設置の□□(52歳)管理にかかる清涼飲料水用自動販売機の扉及びコイン投入口等をドライバーを用いてこじ開け,同販売機から,現金及び清涼飲料水を窃取しようとしたが,警察官に発見されたため,その目的を遂げなかったものである。