離婚問題に伴う子供の取り戻し

家事|人身保護法|最高裁平成17年12月6日決定補足意見及び反対意見

目次

  1. 質問
  2. 回答
  3. 解説
  4. 関連事例集
  5. 参照条文

質問:

私は,現在,妻と離婚に向けて協議をしています。妻とはまだ同居していたのですが,2週間前,妻が子供2人(8歳、5歳)を連れて,突然実家に戻ってしまいました。私は,子供を自力で家に連れて帰りたいと思っているのですが、それは可能なのでしょうか。また,自力で連れて帰ることが許されないとすれば,他にどのような方法をとればよいのでしょうか。

回答:

1 あなたがお子様を自力で連れて帰る行為は,刑法上,未成年者拐取罪(刑法224条)に該当します。したがって,このような手段をとることは許されません。

なお,このような行為を未成年者拐取罪で処罰することについては,最高裁判所の判例でも意見が分かれるところです。しかし,多数意見は,未成年者拐取罪による処罰を認めています。たとえ取り戻したところで、逮捕勾留が予想され、お子様は福祉上親権者である奥様の下に自動的に戻ることになるでしょう。

2 したがって,お子様をあなたの元に取り戻すためには,法的手続を取る必要があります。そのための手段として,①人身保護手続による方法,②家事審判手続による方法の2つがあります。ただ、いずれの方法も決定的な手続きではなく相手方(妻)が事実上拒否した場合にはお子様を引き取ることは難しいと言わざるを得ません。①の方法は要件が厳しく、幼少だと妻の方が有利です。②の方法は直接の強制力を伴わないからです(間接強制になります。)。お子様が意思能力を有する13歳前後になるのを待って、お子様が貴方を自発的に訪ねてくるように(来やすいように)日頃から環境を作り準備するのが得策かもしれません。大きくなるに従い子の意思がさらに重視されることになります。

3 法律相談事例集キーワード検索829番662番472番134番参照。

4 子どもの取り戻し、人身保護請求に関する関連事例集参照。

解説:

1 自力でお子様を連れ戻すことの許否について

(1) 未成年者拐取罪の成否

まず,今回のケースで,あなたが自力でお子様を連れ戻した場合,未成年者略取誘拐罪(刑法224条)に該当するかどうかを検討します。犯罪とは,一般に「構成要件に該当し,違法かつ有責な行為」であると定義されていますので(犯罪行為に対する刑罰は人間の生命自由財産を強制的に剥奪するものであり犯罪成立要件は厳格になります),この順序に従って,今回のケースにおいて未成年者拐取罪が成立するか,詳しく検討します。

ア 未成年者拐取罪の構成要件

刑法224条によれば,未成年者略取誘拐罪が成立するためには,①未成年者を略取し,または誘拐すること及び②故意(①に該当する事実についての認識)が必要となります。

「略取」とは,暴行・脅迫等の強制的手段を用いて,「誘拐」とは,偽計・誘惑を用いて,未成年者を自己または第三者の事実的支配下に置くことをいいます。したがって,あなたがこれらの行為によってお子さんを連れ戻せば,未成年者拐取罪の構成要件に該当することになります。

ただし,今回のケースでは,あなたはまだ離婚をしていないことから,お子様の親権者であると考えられます(民法819条3項)。親権者であるにもかかわらず,お子様を連れ帰った場合は、親権の行使であり、未成年者拐取罪のような犯罪が成立するというのは,疑問が残るところです。また、親子間の問題であり、刑法を適用して国が刑罰を与える必要があるのか、という疑問もあります。初めに子どもを連れていってしまえば、子どもを取り戻すには法的な手続きをしなくてはならないとすれば早い者勝ちではないかという指摘もできるでしょう。法律的には、まず構成要件の段階の問題として,親権者の行為が略取、誘拐と言えるかという問題となり、構成要件に該当するとしても、権利の行使として違法性が阻却されるのではないかという問題になります。構成要件該当性については、本罪がどのような法益を保護しているかという観点からの検討が必要になります。

ア) 未成年者拐取罪の保護法益に関する考え方

刑法をはじめとする刑罰法規の本質は,法益の保護をその目的とすることにあり,刑法の処罰規定は,必ず何らかの法益を保護しています。未成年者拐取罪の保護法益については,「被拐取者の自由」とする考え方,「親権者等の保護・監護権」とする考え方,「被拐取者の自由と親権者等の保護・監護権の両者」とする考え方等が対立しています。

上記の見解のうち,本罪の保護法益を「被拐取者の自由」のみと捉える考え方によれば,生後間もない嬰児のように,行動の自由を持たない者を連れ去る行為には拐取罪が成立しないこととなりますが,このような見解が未成年者の保護に欠けることは明らかです。また,「親権者等の保護・監護権」のみを保護法益と捉える考え方も,監護者の承諾が存在する場合には,およそ拐取罪の成立が否定されることになりますが,この考え方も同様に未成年者の保護に欠けるでしょう。そこで通説は,未成年者拐取罪の保護法益を「被拐取者の自由と親権者等の保護・監護権」と捉えています。

イ) 判例

以下で詳しく紹介しますが,判例は親権者による子どもの連れ去り行為についても,未成年者拐取罪の成立を認めており(構成要件に該当し違法性を阻却することにはならない),上記の見解のうち「被拐取者の自由と親権者等の保護・監護権」両方が保護法益であるとの立場に立っているといわれています。

ウ) 帰結

このように,通説・判例の保護法益論によれば,例え親権者であろうとも,「被拐取者の自由」を侵害している以上,未成年者拐取罪の成立は妨げられないという結論に至ります。また、離婚の交渉中ということですから、日本の法律では共同親権となっていますので、親権者の意見が対立している場合は、他方の親権者の意思に明らかに反するような子供の連れ去りは、他方親権者の親権を侵害することになるので、保護法益論という見地からは他方親権者の子供の連れ去りは、未成年者略取誘拐罪の構成要件に該当するということは否定できないことと考えられます。

イ 違法性

あなたの行為が,未成年者略取誘拐罪の構成要件に該当すると判断される場合,次に違法性の有無が問題となります。

ア) 違法性判断の構造

刑法やその他の刑罰法規において定められる構成要件とは,一定の違法行為を類型化したものであると考えられています。したがって,構成要件に該当する事実が認められる場合,その行為は原則として違法であると推定されるのです(これを,「構成要件の違法推定機能」といいます)。

したがって,構成要件該当性が認められた場合,その後になされる違法性の判断とは,推定された違法性を阻却する事由(これを「違法性阻却事由」といいます)があるか否かという観点から行われます。違法性阻却事由の典型例としては,正当防衛(刑法36条)を挙げることができるでしょう。

イ) 判例による,違法性阻却の可能性の示唆

既に述べたとおり,判例は,たとえ親権者であったとしても,未成年者拐取罪の構成要件に該当することを肯定しています。ただし,以下で紹介する2つの最高裁判例は,親権者であることは,その行為の違法性を阻却するか否かの判断において考慮されるとしており,具体的事情によっては,その行為が適法となる可能性を示唆しています。

a 最高裁第2小法廷平成15年3月18日決定

「…以上の事実関係によれば,被告人は,共同親権者の1人である別居中の妻のもとで平穏に暮らしていた長女を,外国に連れ去る目的で,入院中の病院から有形力を用いて連れ出し,保護されている環境から引き離して自分の事実的支配下に置いたのであるから,被告人の行為が国外移送略取罪に当たることは明らかである。そして,その態様も悪質であって,被告人が親権者の1人であり,長女を自分の母国に連れ帰ろうとしたものであることを考慮しても,違法性が阻却されるような例外的な場合に当たらないから,国外移送略取罪の成立を認めた原判断は,正当である。」

b 最高裁第2小法廷平成17年12月6日決定

「…以上の事実関係によれば,被告人は,Cの共同親権者の1人であるBの実家においてB及びその両親に監護養育されて平穏に生活していたCを,祖母のDに伴われて保育園から帰宅する途中に前記のような態様で有形力を用いて連れ去り,保護されている環境から引き離して自分の事実的支配下に置いたのであるから,その行為が未成年者略取罪の構成要件に該当することは明らかであり,被告人が親権者の1人であることは,その行為の違法性が例外的に阻却されるかどうかの判断において考慮されるべき事情であると解される(最高裁平成14年(あ)第805号同15年3月18日第二小法廷決定・刑集57巻3号371頁)

ウ) 違法性阻却における考慮要素

上記イ)bの最決は,当該事案において,違法性阻却が認められるか否かにつき具体的な判断を行っていますので,該当箇所を紹介します。

「本件において,被告人は,離婚係争中の他方親権者であるBの下からCを奪取して自分の手元に置こうとしたものであって,そのような行動に出ることにつき,Cの監護養育上それが現に必要とされるような特段の事情は認められないから,その行為は,親権者によるものであるとしても,正当なものということはできない。また,本件の行為態様が粗暴で強引なものであること,Cが自分の生活環境についての判断・選択の能力が備わっていない2歳の幼児であること,その年齢上,常時監護養育が必要とされるのに,略取後の監護養育について確たる見通しがあったとも認め難いことなどに徴すると,家族間における行為として社会通念上許容され得る枠内にとどまるものと評することもできない。以上によれば,本件行為につき,違法性が阻却されるべき事情は認められないのであり,未成年者略取罪の成立を認めた原判断は,正当である」

ウ 責任

以上のとおり,判例は,例外的に違法性が阻却される余地は残した判断をしているものの,いずれの事案についても,結論としては違法性の阻却を認めていません。

違法性の阻却が認められない場合,最後に責任が問題となりますが,今回のご相談の中で,あなたの行為について責任を否定する事情は存在しないものと思われます。

エ 結論

したがって,判例の見解を前提とする限り,あなたがお子様を自力で連れ戻した場合,原則として,あなたの行為には未成年者拐取罪が成立することになります。

私見としても,判例の見解に賛成します。下記2で述べるように,あなたがお子様を連れ戻すためには,いくつかの法的手段が存在します。国家の定める手続によらず,権利者が自ら実力を行使して権利を実現することは許さないという「自力救済禁止の原則」からしても,あなたが自力でお子様を連れ戻すことは許されないと考えられるからです。仮にあなたが自力でお子様を連れ戻すことが許されるとするならば,今度は,あなたが連れ戻したお子様を再度妻が連れ戻すことも可能ということになります。しかし,そのような形でお子様が両親の間を行き来することになるとすれば,それは最優先されてしかるべきお子様の福祉に反するでしょう。

(なお,上記イイ)bの最決には,補足意見と反対意見が付されていますが,そのどちら見解も,この種の問題の解決については,家庭裁判所の手続に委ねるべきであるとしています。どちらの見解も,今回のケースのような問題の解決を考える上で示唆に富むものですので,本稿の最後に引用します)

2 法的手段について

(1) 人身保護請求

今回のケースのような場合に利用が検討される法的手段として,人身保護請求手続が挙げられます。

ア 手続の概要

人身保護請求とは,「基本的人権を保障する日本国憲法の精神に従い、国民をして、現に、不当に奪われている人身の自由を、司法裁判により、迅速、且つ、容易に回復せしめることを目的とする」人身保護法に定められた手続です(人身保護法1条)。

この法律が主として念頭に置いているのは,公権力による身柄拘束であると考えられますが,法文上,拘束者を公権力に限定することはなされておらず(人身保護規則3条),拘束者による拘束が「無権限であること又は違法であることが顕著」であれば,今回のケースのように,共同親権者間の子の引渡しについても利用しうると考えられています(人身保護規則4条)。

この手続の長所として,手続が迅速であること(人身保護法6条),相手方が手続に出頭しない場合には勾引しうること(人身保護法10条2項),子どもの監護は裁判所によりなされることから(人身保護規則25条),判決後の引渡しの実現可能性が高いこと等があります。

イ 利用可能性

ただし,今回のようなケースの場合,この手続を利用できる可能性は高くありません。この手続を利用する場合,拘束者による拘束が「無権限であること又は違法であることが顕著」であることが必要なことは既に述べました。

ア) この「拘束の違法性が顕著であること」の要件について,最高裁は,今回のケースのような「夫婦の一方(請求者)が他方(拘束者)に対し、人身保護法に基づき、共同親権に服する幼児の引渡しを請求した場合には、夫婦のいずれに監護させるのが子の幸福に適するかを主眼として子に対する拘束状態の当不当を定め、その請求の許否を決すべきである(最高裁昭和四二年(オ)第一四五五号同四三年七月四日第一小法廷判決・民集二二巻七号一四四一頁)。そして、この場合において、拘束者による幼児に対する監護・拘束が権限なしにされていることが顕著である(人身保護規則四条参照)ということができるためには、右幼児が拘束者の監護の下に置かれるよりも、請求者に監護されることが子の幸福に適することが明白であることを要するもの、いいかえれば、拘束者が右幼児を監護することが子の幸福に反することが明白であることを要するものというべきである(前記判決参照)。けだし、夫婦がその間の子である幼児に対して共同で親権を行使している場合には、夫婦の一方による右幼児に対する監護は、親権に基づくものとして、特段の事情がない限り、適法というべきであるから、右監護・拘束が人身保護規則四条にいう顕著な違法性があるというためには、右監護が子の幸福に反することが明白であることを要するものといわなければならないからである」と判示しています(最判平成5年10月19日)

イ) さらに,最高裁は,上記判示中の「拘束者が右幼児を監護することが子の幸福に反することが明白である」ことの具体例として,「拘束者に対し、家事審判規則五二条の二又は五三条に基づく幼児引渡しを命ずる仮処分又は審判が出され、その親権行使が実質上制限されているのに拘束者が右仮処分等に従わない場合がこれに当たると考えられるが、更には、また、幼児にとって、請求者の監護の下では安定した生活を送ることができるのに、拘束者の監護の下においては著しくその健康が損なわれたり、満足な義務教育を受けることができないなど、拘束者の幼児に対する処遇が親権行使という観点からみてもこれを容認することができないような例外的な場合がこれに当たるというべきである」(最三小判平成6年4月26日)と述べており,共同親権者間の子の引渡しについて人身保護手続を利用することにつき,極めて制限的な立場をとっています。

(2) 家事審判手続

このように,人身保護手続の利用は容易ではありません。そこで,家事審判手続において,子の監護権者の指定及び子の引渡しを求めることが考えられます。

ア 手続の概要

民法は,離婚後の未成年者の監護については明文の規定を定めていますが(民法766条),別居中の監護権については規定していません。しかし,今回のケースのように,監護権者が定まらないままでは子の引渡しについてトラブルが生じ,子の福祉に反する事態が生じうることから,子の監護権者の指定及び子の引渡しについては,子の監護の処分(家事審判法9条1項乙類4号,家事審判規則53条)として調停及び審判の対象となると考えられています。

なお,第九条第一項乙類に規定されている審判事件については,裁判所は,職権でいつでも調停に付すことができるとされており(家事審判法11条),実務上は,まず調停の申立てをすることが通常です。ただし,調停を経ることなく審判を申し立てることも可能ですし,急を要する場合には,審判前の保全処分を利用することもできます(家事審判規則52条の2)。

イ 具体的主張

この手続においては,監護権者の指定及び子の引渡しの可否は,主にお子様の福祉の観点から決せられることとなります。弁護士とご相談のうえ,あなたがお子様の監護権者となることがお子様の福祉のためになることを主張されると良いでしょう。

以上です。

関連事例集

Yahoo! JAPAN

参照条文・判例

民法

(離婚又は認知の場合の親権者)

第819条 父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。

2 裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。

3 子の出生前に父母が離婚した場合には、親権は、母が行う。ただし、子の出生後に、父母の協議で、父を親権者と定めることができる。

4 父が認知した子に対する親権は、父母の協議で父を親権者と定めたときに限り、父が行う。

5 第一項、第三項又は前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。

6 子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる。

刑法

(正当防衛)

第36条 急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。

2 防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。

(未成年者略取及び誘拐)

第224条 未成年者を略取し、又は誘拐した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。

人身保護法

第1条 この法律は、基本的人権を保障する日本国憲法の精神に従い、国民をして、現に、不当に奪われている人身の自由を、司法裁判により、迅速、且つ、容易に回復せしめることを目的とする。

第6条 裁判所は、第2条の請求については、速かに裁判しなければならない。

第10条 裁判所は、必要があると認めるときは、第16条の判決をする前に、決定をもつて、仮りに、被拘束者を拘束から免れしめるために、何時でも呼出しに応じて出頭することを誓約させ又は適当と認める条件を附して、被拘束者を釈放し、その他適当な処分をすることができる。

2 前項の被拘束者が呼出に応じて出頭しないときは、勾引することができる。

人身保護規則

(拘束及び拘束者の意義)

第3条 法及びこの規則において、拘束とは、逮捕、抑留、拘禁等身体の自由を奪い、又は制限する行為をいい、拘束者とは、拘束が官公署、病院等の施設において行われている場合には、その施設の管理者をいい、その他の場合には、現実に拘束を行つている者をいう。

(請求の要件)

第4条 法第二条の請求は、拘束又は拘束に関する裁判若しくは処分がその権限なしにされ又は法令の定める方式若しくは手続に著しく違反していることが顕著である場合に限り、これをすることができる。但し、他に救済の目的を達するのに適当な方法があるときは、その方法によつて相当の期間内に救済の目的が達せられないことが明白でなければ、これをすることができない。

(人身保護命令の効果)

第二十五条 人身保護命令書が拘束者に送達されたときは、被拘束者は、その送達の時から人身保護命令を発した裁判所によつて当該拘束の場所において監護されるものとする。この場合には、被拘束者の監護は、拘束者において当該裁判所の指揮のもとに引き続きこれを行うものとする。

2 前項の場合において、裁判所は、必要があると認めるときは、被拘束者を拘置所、刑務所、警察署その他適当であると認める場所に移すことを命ずることができる。この場合には、被拘束者の監護は、被拘束者の移送を受けた者においてこれを行うものとする。

家事審判法

第9条 家庭裁判所は、次に掲げる事項について審判を行う。

甲類

一 民法 (明治二十九年法律第八十九号)第七条 及び第十条 の規定による後見開始の審判及びその取消し

二 民法第十一条 、第十三条第二項及び第三項、第十四条並びに第八百七十六条の四第一項及び第三項の規定による保佐開始の審判、その取消しその他の保佐に関する処分

二の二 民法第十五条第一項 、第十七条第一項及び第三項、第十八条、第八百七十六条の九第一項並びに同条第二項において準用する同法第八百七十六条の四第三項 の規定による補助開始の審判、その取消しその他の補助に関する処分

二の三 民法第十九条 の規定による後見開始、保佐開始又は補助開始の審判の取消し

三 民法第二十五条 から第二十九条 までの規定による不在者の財産の管理に関する処分四 民法第三十条 及び第三十二条第一項 の規定による失踪の宣告及びその取消し

五 民法第七百七十五条 の規定による特別代理人の選任

六 民法第七百九十一条第一項 又は第三項 の規定による子の氏の変更についての許可

七 民法第七百九十四条 又は第七百九十八条 の規定による養子をするについての許可

七の二 民法第八百十一条第五項 の規定による未成年後見人となるべき者の選任

八 民法第八百十一条第六項 の規定による離縁をするについての許可

八の二 民法第八百十七条の二 及び第八百十七条の十 の規定による縁組及び離縁に関する処分

九 民法第八百二十二条 又は第八百五十七条 (同法第八百六十七条第二項 において準用する場合を含む。)の規定による懲戒に関する許可その他の処分

十 民法第八百二十六条 (同法第八百六十条 において準用する場合を含む。)の規定による特別代理人の選任

十一 民法第八百三十条第二項 から第四項 まで(同法第八百六十九条 において準用する場合を含む。)の規定による財産の管理者の選任その他の財産の管理に関する処分

十二 民法第八百三十四条 から第八百三十六条 までの規定による親権又は管理権の喪失の宣告及びその取消し

十三 民法第八百三十七条 の規定による親権又は管理権を辞し、又は回復するについての許可

十四 民法第八百四十条 、第八百四十三条第一項から第三項まで(同法第八百七十六条の二第二項 及び第八百七十六条の七第二項 において同法第八百四十三条第二項 及び第三項 の規定を準用する場合を含む。)、第八百四十九条、第八百四十九条の二、第八百七十六条の二第一項、第八百七十六条の三第一項、第八百七十六条の七第一項又は第八百七十六条の八第一項の規定による後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人の選任

十五 民法第八百四十四条 (同法第八百五十二条 、第八百七十六条の二第二項、第八百七十六条の三第二項、第八百七十六条の七第二項及び第八百七十六条の八第二項において準用する場合を含む。)の規定による後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人の辞任についての許可

十六 民法第八百四十六条 (同法第八百五十二条 、第八百七十六条の二第二項、第八百七十六条の三第二項、第八百七十六条の七第二項及び第八百七十六条の八第二項において準用する場合を含む。)の規定による後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人の解任

十七 民法第八百五十三条第一項 ただし書(同法第八百五十六条 及び第八百六十七条第二項 において準用する場合を含む。)の規定による財産の目録の作成の期間の伸長

十八 民法第八百五十九条の二第一項 及び第二項 (これらの規定を同法第八百五十二条 、第八百七十六条の三第二項、第八百七十六条の五第二項、第八百七十六条の八第二項及び第八百七十六条の十第一項において準用する場合を含む。)の規定による数人の成年後見人、成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人の権限の行使についての定め及びその取消し

十九 民法第八百五十九条の三 (同法第八百五十二条 、第八百七十六条の三第二項、第八百七十六条の五第二項、第八百七十六条の八第二項及び第八百七十六条の十第一項において準用する場合を含む。)の規定による成年被後見人、被保佐人又は被補助人の居住用不動産の処分についての許可

二十 民法第八百六十二条 (同法第八百五十二条 、第八百六十七条第二項、第八百七十六条の三第二項、第八百七十六条の五第二項、第八百七十六条の八第二項及び第八百七十六条の十第一項において準用する場合を含む。)の規定による後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人に対する報酬の付与

二十一 民法第八百六十三条 (同法第八百六十七条第二項 、第八百七十六条の五第二項及び第八百七十六条の十第一項において準用する場合を含む。)の規定による後見、保佐又は補助の事務の報告、財産の目録の提出、当該事務又は財産の状況の調査、財産の管理その他の当該事務に関する処分

二十二 民法第八百七十条 ただし書(同法第八百七十六条の五第三項 及び第八百七十六条の十第二項 において準用する場合を含む。)の規定による管理の計算の期間の伸長

二十二の二 民法第八百七十六条の二第三項 又は第八百七十六条の七第三項 の規定による臨時保佐人又は臨時補助人の選任

二十三 民法第八百九十五条 の規定による遺産の管理に関する処分

二十四 民法第九百十五条第一項 ただし書の規定による相続の承認又は放棄の期間の伸長

二十五 民法第九百十八条第二項 及び第三項 (これらの規定を同法第九百二十六条第二項 、第九百三十六条第三項及び第九百四十条第二項において準用する場合を含む。)の規定による相続財産の保存又は管理に関する処分

二十五の二 民法第九百十九条第四項 の規定による相続の限定承認又は放棄の取消しの申述の受理

二十六 民法第九百二十四条 の規定による相続の限定承認の申述の受理

二十七 民法第九百三十条第二項 (同法第九百四十七条第三項 、第九百五十条第二項及び第九百五十七条第二項において準用する場合を含む。)、第九百三十二条ただし書(同法第九百四十七条第三項 及び第九百五十条第二項 において準用する場合を含む。)又は第千二十九条第二項の規定による鑑定人の選任

二十八 民法第九百三十六条第一項 の規定による相続財産の管理人の選任

二十九 民法第九百三十八条 の規定による相続の放棄の申述の受理

三十 民法第九百四十一条第一項 又は第九百五十条第一項 の規定による相続財産の分離に関する処分

三十一 民法第九百四十三条 (同法第九百五十条第二項 において準用する場合を含む。)の規定による相続財産の管理に関する処分

三十二 民法第九百五十二条 及び第九百五十三条 又は第九百五十八条 の規定による相続財産の管理人の選任その他相続財産の管理に関する処分

三十二の二 民法第九百五十八条の三第一項 の規定による相続財産の処分

三十三 民法第九百七十六条第四項 又は第九百七十九条第三項 の規定による遺言の確認三十四 民法第千四条第一項 の規定による遺言書の検認

三十五 民法第千十条 の規定による遺言執行者の選任

三十六 民法第千十八条第一項 の規定による遺言執行者に対する報酬の付与

三十七 民法第千十九条 の規定による遺言執行者の解任及び遺言執行者の辞任についての許可

三十八 民法第千二十七条 の規定による遺言の取消し

三十九 民法第千四十三条第一項 の規定による遺留分の放棄についての許可

乙類

一 民法第七百五十二条 の規定による夫婦の同居その他の夫婦間の協力扶助に関する処分

二 民法第七百五十八条第二項 及び第三項 の規定による財産の管理者の変更及び共有財産の分割に関する処分

三 民法第七百六十条 の規定による婚姻から生ずる費用の分担に関する処分

四 民法第七百六十六条第一項 又は第二項 (これらの規定を同法第七百四十九条 、第七百七十一条及び第七百八十八条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護者の指定その他子の監護に関する処分

五 民法第七百六十八条第二項 (同法第七百四十九条 及び第七百七十一条 において準用する場合を含む。)の規定による財産の分与に関する処分

六 民法第七百六十九条第二項 (同法第七百四十九条 、第七百五十一条第二項、第七百七十一条、第八百八条第二項及び第八百十七条において準用する場合を含む。)又は第八百九十七条第二項 の規定による同条第一項 の権利の承継者の指定

六の二 民法第八百十一条第四項 の規定による親権者となるべき者の指定

七 民法第八百十九条第五項 又は第六項 (これらの規定を同法第七百四十九条 において準用する場合を含む。)の規定による親権者の指定又は変更

八 民法第八百七十七条 から第八百八十条 までの規定による扶養に関する処分

九 民法第八百九十二条 から第八百九十四条 までの規定による推定相続人の廃除及びその取消し

九の二 民法第九百四条の二第二項 の規定による寄与分を定める処分

十 民法第九百七条第二項 及び第三項 の規定による遺産の分割に関する処分

○2 家庭裁判所は、この法律に定めるものの外、他の法律において特に家庭裁判所の権限に属させた事項についても、審判を行う権限を有する。

第11条 家庭裁判所は、何時でも、職権で第九条第一項乙類に規定する審判事件を調停に付することができる。

家事審判規則

第五十二条の二 子の監護者の指定その他子の監護に関する審判の申立てがあつた場合において、強制執行を保全し、又は事件の関係人の急迫の危険を防止するため必要があるときは、家庭裁判所は、当該審判の申立人の申立てにより、仮差押え、仮処分その他の必要な保全処分を命ずることができる。

第五十三条 家庭裁判所は、子の監護者の指定その他子の監護について必要な事項を定め、又は子の監護者を変更し、その他子の監護について相当な処分を命ずる審判においては、子の引渡又は扶養科その他の財産上の給付を命ずることができる。

<最高裁第2小法廷平成17年12月6日決定 補足意見及び反対意見>

裁判官今井功の補足意見は,次のとおりである。

私は,家庭内の紛争に刑事司法が介入することには極力謙抑的であるべきであり,また,本件のように,別居中の夫婦の間で,子の監護について争いがある場合には,家庭裁判所において争いを解決するのが本来の在り方であると考えるものであり,この点においては,反対意見と同様の考えを持っている。しかし,家庭裁判所の役割を重視する立場に立つからこそ,本件のような行為について違法性はないとする反対意見には賛成することができない。

家庭裁判所は,家庭内の様々な法的紛争を解決するために設けられた専門の裁判所であり,そのための人的,物的施設を備え,家事審判法をはじめとする諸手続も整備されている。したがって,家庭内の法的紛争については,当事者間の話合いによる解決ができないときには,家庭裁判所において解決することが期待されているのである。

ところが,本件事案のように,別居中の夫婦の一方が,相手方の監護の下にある子を相手方の意に反して連れ去り,自らの支配の下に置くことは,たとえそれが子に対する親の情愛から出た行為であるとしても,家庭内の法的紛争を家庭裁判所で解決するのではなく,実力を行使して解決しようとするものであって,家庭裁判所の役割を無視し,家庭裁判所による解決を困難にする行為であるといわざるを得ない。近時,離婚や夫婦関係の調整事件をめぐって,子の親権や監護権を自らのものとしたいとして,子の引渡しを求める事例が増加しているが,本件のような行為が刑事法上許されるとすると,子の監護について,当事者間の円満な話合いや家庭裁判所の関与を待たないで,実力を行使して子を自らの支配下に置くという風潮を助長しかねないおそれがある。子の福祉という観点から見ても,一方の親権者の下で平穏に生活している子を実力を行使して自らの支配下に置くことは,子の生活環境を急激に変化させるものであって,これが,子の身体や精神に与える悪影響を軽視することはできないというべきである。

私は,家庭内の法的紛争の解決における家庭裁判所の役割を重視するという点では反対意見と同じ意見を持つが,そのことの故に,反対意見とは逆に,本件のように,別居中の夫婦が他方の監護の下にある子を強制的に連れ去り自分の事実的支配下に置くという略取罪の構成要件に該当するような行為については,たとえそれが親子の情愛から出た行為であるとしても,特段の事情のない限り,違法性を阻却することはないと考えるものである。

裁判官滝井繁男の反対意見は,次のとおりである。

私も,親権者の1人が他の親権者の下で監護養育されている子に対し有形力を行使して連れ出し,自分の事実的支配下に置くことは,未成年者略取罪の構成要件に該当すると考えるものである。しかしながら,両親の婚姻生活が円満を欠いて別居しているとき,共同親権者間で子の養育をめぐって対立し,親権者の1人の下で養育されている子を他の親権者が連れ去り自分の事実的支配の下に置こうとすることは珍しいことではなく,それが親子の情愛に起因するものであってその手段・方法が法秩序全体の精神からみて社会観念上是認されるべきものである限りは,社会的相当行為として実質的違法性を欠くとみるべきであって,親権者の1人が現実に監護していない我が子を自分の支配の下に置こうとすることに略取誘拐罪を適用して国が介入することは格別慎重でなければならないものと考える。

未成年者略取誘拐罪の保護法益は拐取された者の自由ないし安全と監護に当たっている者の保護監督権であると解されるところ,私は前者がより本質的なものであって,前者を離れて後者のみが独自の意味をもつ余地は限られたものであると解すべきであると考える。とりわけ,本件のように行為が親権者によるものであるとき,現に監護に当たっている者との関係では対等にその親権を行使し得るものであって,対立する権利の行使と見るべき側面もあるのであるから,それが親権の行使として逸脱したものでない限り,略取された者の自由等の法益の保護こそを中心にして考えるべきものである。

このような観点から本件を見るに,被告人は,他の親権者である妻の下にいるCを自分の手元に置こうとしたものであるが、そのような行動に出ることを現に必要とした特段の事情がなかったことは多数意見の指摘するとおりである。しかしながら,それは親の情愛の発露として出た行為であることも否定できないのであって,そのこと自体親権者の行為として格別非難されるべきものということはできない。

確かに,被告人の行動は,生活環境についての判断・選択の能力が十分でない2歳の幼児に対して,その後の監護養育について確たる見通しがない状況下で行われたことも事実である。しかしながら,親子間におけるある行為の社会的な許容性は子の福祉の視点からある程度長いレンジの中で評価すべきものであって,特定の日の特定の行為だけを取上げその態様を重視して刑事法が介入することは慎重でなければならない。

従来,夫婦間における子の奪い合いともいうべき事件において,しばしば人身保護法による引渡しの申立てがなされたが,当裁判所は引渡しの要件である拘束の「顕著な違法性」の判断に当たっては,制限的な態度をとり,明らかに子の福祉に反すると認められる場合を除きこの種紛争は家庭裁判所の手続の中で解決するとの立場をとってきたものである(最高裁平成5年(オ)第609号同年10月19日第三小法廷判決・民集47巻8号5099頁,同平成6年(オ)第65号同年4月26日第三小法廷判決・民集48巻3号992頁など)。

私は,平成5年(オ)第609号同年10月19日第三小法廷判決において,「別居中の夫婦(幼児の父母)の間における監護権を巡る紛争は,本来,家庭裁判所の専属的守備範囲に属し,家事審判の制度,家庭裁判所の人的・物的の機構・設備は,このような問題の調査・審判のためにこそ存在するのである。」として,子の親権をめぐる紛争において審判前の保全処分の活用を示唆された裁判官可部恒雄の補足意見に全面的に賛成し,子の監護をめぐる紛争は子の福祉を最優先し,専ら家庭裁判所の手続での解決にゆだねるべきであって,他の機関の介入とりわけ刑事司法機関の介入は極力避けるべきものと考える。

このような考えに立つ以上,被告人もまたこの種紛争の解決は家庭裁判所にゆだねるべきであったのであるから,一方の親権者の下で平穏に生活している子に対し親権を行使しようとする場合には,まず,家庭裁判所における手続によるべきであって,それによることなく実力で自分の手元に置こうとすることは許されるべきことではないといえるものである。

しかしながら,そのことから被告人が所定の手続をとることなく我が子を連れ出そうとしたことが直ちに刑事法の介入すべき違法性をもつものと解すべきものではない。

そのような行為も親権の行使と見られるものである限り,仮に一時的に見れば,多少行き過ぎと見られる一面があるものであっても,それはその後の手続において子に対する関係では修復される可能性もあるのであるから,その行為をどのように評価するかは子の福祉の観点から見る家庭裁判所の判断にゆだねるべきであって,その領域に刑事手続が踏み込むことは謙抑的でなければならないのである。

確かに,このような場合家庭裁判所の手続によることなく,他の親権者の下で生活している子を連れ出すことは,監護に当たっている親権者の監護権を侵害するものとみることができる。しかしながら,その行為が家庭裁判所での解決を不可能若しくは困難にしたり,それを誤らせるようなものであればともかく,ある時期に,公の手続によって形成されたわけでもない一方の親権者の監護状態の下にいることを過大に評価し,それが侵害されたことを理由に,子の福祉の視点を抜きにして直ちに刑事法が介入すべきではないと考える。

むしろ,このような場合,感情的に対立する子を奪われた側の親権者の告訴により直ちに刑事法が介入することは,本件でも見られたように子を連れ出そうとした親権者の拘束に発展することになる結果,他方の親権者は保全処分を得るなど本来の専門的機関である家庭裁判所の手続を踏むことなく,刑事事件を通して対立する親権者を排除することが可能であると考えるようになって,そのような方法を選択する風潮を生む危険性を否定することができない。そのようになれば,子にとって家庭裁判所による専門的,科学的知識に基づく適正な監護方法の選択の機会を失わせるという現在の司法制度が全く想定していない事態となり,かつまた子にとってその親の1人が刑事事件の対象となったとの事実が残ることもあいまって,長期的にみればその福祉には沿わないことともなりかねないのである(このような連れ出し行為が決して珍しいことではないにもかかわらず,これまで刑事事件として立件される例がまれであったのは,本罪が親告罪であり,子を連れ去られた親権者の多くが告訴をしてまで事を荒立てないという配慮をしてきたからであるとも考えられるが,これまで述べてきたような観点から刑事法が介入することがためらわれたという側面も大きかったものと考えられる。本件のようなありふれた連れ出し行為についてまで当罰的であると評価することは,子を連れ去られた親権者が行為者である他方親権者を告訴しさえすれば,子の監護に関する紛争の実質的決着の場を,子の福祉の観点から行われる家庭裁判所の手続ではなく,そのような考慮を入れる余地の乏しい刑事司法手続に移し得ることを意味し,問題は大きいものといわなければならない。)。

以上の観点に立って本件を見るとき,被告人の行為は親権者の行為としてやや行き過ぎの観は免れないにしても,連れ出しは被拐取者に対し格別乱暴な取扱いをしたというべきものではなく,家庭裁判所における最終的解決を妨げるものではないのであるから,このような方法による実力行使によって子をその監護下に置くことは子との関係で社会観念上非難されるべきものではないのである。

このような考えから,私は被告人の本件連れ出しは社会的相当性の範囲内にあると認められ,その違法性が阻却されると解すべきものであると考える(私は,多数意見の引用する当小法廷の決定においては,一方の親権者の下で保護されている子を他方の親権者が有形力を用いて連れ出した行為につき違法性が阻却されないとする法廷意見に賛成したが,それは外国に連れ去る目的であった点において,家庭裁判所における解決を困難にするものであり,かつその方法も入院中の子の両足を引っ張って逆さにつり上げて連れ去ったという点において連れ出しの態様が子の安全にかかわるものであったなど,本件とは全く事案を異にするものであったことを付言しておきたい。)。

以上によれば,本件被告人の行為が違法性を阻却されないとした原判決は法律の解釈を誤ったものであり,その違法は判決に影響を及ぼすことは明らかであるから,これを破棄しなければ著しく正義に反するものといわなければならない。