新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース 質問:私は、大学1年生(18歳)ですが、昨日新入生のコンパがあり、飲み会の後、友人と2次会を開いたその帰り、酔って座席に座り寝てしまいました。隣の女性が、駅に着くと、「この人が、10分以上も私の胸を手の先で触っていました」と騒ぎ出し警察に逮捕されました。確かに腕組みをした手の甲が女性の胸に接触したような気がしましたが、10分も触った記憶がありません。私はどうなるでしょうか。大学に連絡はいくでしょうか。マスコミには発表になるでしょうか。 2.いったん事実について自白し、その供述調書に署名押印すると、裁判所で自白と異なる事実を認めてもらうことは極めて難しくなります。他方で、その事実を否定した場合、罪証隠滅のおそれがあるとの判断に傾きやすく、身体拘束が続いてしまう可能性は高くなります(なお、本件の場合、いずれにしても女性の胸を触ったことは事実であるため、犯罪自体は成立します。)。あなたは未成年ですので、捜査の結果犯罪の嫌疑があるときは、事件は家庭裁判所に送致され、家庭裁判所による事件の調査、少年審判が行われます(もっとも、審判不開始、不処分となるケースもあります)。少年審判における処遇については、保護処分(保護観察、児童自立支援施設・児童養護施設送致、少年院送致)、検察官送致(刑事処分のための手続きとなります)、不処分、知事・児童相談所長送致があります(少年法23条以下)。審判や保護処分等は、その保護手続が過度になってしまえば、かえって少年に不利益な影響を及ぼしかねません。そのため、要保護性の有無等についての適切な事情・資料を手続上にきちんと顕出させるためにも、専門家である弁護士にご相談されることが望ましいでしょう。 3.捜査機関の捜査や家庭裁判所の調査の過程で、所属大学に連絡がいく事態はありえます。弁護士が少年の弁護人・付添人となった場合、警察官、検察官、裁判所等の関係各機関に対して、また、場合によっては被害者等の関係者との間でも、所属大学への連絡が少年の更生を阻害することを説明し、連絡を控えるよう早急に要請していきます。地方公務員法34条、国家公務員法100条は、捜査機関である公務員の守秘義務を明確に規定しています。捜査機関等からマスコミに情報が伝わって報道されてしまう事態はありえます(少年の場合、実名、写真等は伏せられます。少年法61条。)。マスコミによる報道は、報道の自由、国民の知る権利を根拠としますが(憲法21条)、少年の更生を阻害するおそれが大きく、発表を阻止する必要性は高いと思います。逮捕段階での情報流出の危険があるため、弁護人から捜査機関に対しマスコミへの情報流出を控えるよう要請することを望まれるのであれば、一刻も早くご相談されるべきでしょう。被疑者の正当な利益を代弁する弁護人から説得的な要請をすることで、捜査機関が安易に情報を流出させることに対する相当程度の牽制が期待できると思います。 4.法律相談事例集キーワード検索:1087番、1039番、777番、716番、714番、649番、461番、403番、291番、244番、161番参照。 解説: また、勾留が請求されない場合、後述2のとおり家庭裁判所に送致され、観護措置がとられるケースもあります。その場合、家庭裁判所に到着のときから24時間以内に観護措置がとられることとなります(同法17条2項後段)。観護措置というのは、家庭裁判所が、調査・審判を行うために、少年の心情の安定を図りながら、その身体を保全するための措置で、少年鑑別所に送致されるのが通常です(同法17条1項2号)。次のような事情がある場合、「審判を行うために必要がある」(同項柱書)ものとして、観護措置が認められます。 観護措置がとられた場合、その期間は2週間以内ですが、更新されるケースが大半で、その場合4週間以内ということになります(同条3項)。観護措置がとられない場合、家庭裁判所による事件についての調査等は継続しますが、一時帰宅という形で、身体拘束からは解放されることとなります。以上のような勾留や観護措置は、少年を日常生活から長時間遮断する身体拘束となってしまうため、少年に与える不利益や及ぼす影響は甚大なものとなるおそれがある一方で、その決定が出るまでには極めて短い時間しかありません。そのため、身体拘束からの早期解放を実現するためにも、早急に弁護士にご相談され、少年との接見や刑事・少年手続上の申立て・意見申述等、できる限りの手を尽くす必要があるでしょう。これは時間との戦いとなりますが、決定されても再度整理した資料(少年の経歴、家庭環境、親権者の監督意見、誓約書、示談金等)を添付して異議の申し立てが必要です(法17条の2第1項)。 2.事実関係の認否について 3.家庭裁判所への送致 少年審判後の処遇については、「保護処分(同法24条1項)」、「検察官送致(同法23条1項・20条)」、「不処分(同法23条2項)」という3つのパターン、それと、ごく少ない件数ではありますが、「知事・児童相談所長送致(同法23条1項・18条)」というケースもあり、全部で4つのパターンがあります。 4.所属大学への連絡 5.マスコミ発表 地方公務員法第34条(秘密を守る義務)職員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、また、同様とする。 各都道府県警察には、報道機関による記者クラブが組織されており、警察の担当者は、継続的に記者からの取材を受けています。勿論、行政目的を達する為に必要な職務上の秘密は漏洩されることはありませんが、国民の表現の自由(憲法21条)を保護する必要があるため、表現の自由から派生した国民の「知る権利」と、これに奉仕する「報道の自由、取材の自由」も判例上尊重すべきこととされております。 日本国憲法第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。 警察の広報担当者としては、被疑者の人権問題と、公務員としての守秘義務の問題と、国民の知る権利と報道機関の取材の自由を、すべて考慮したうえで、公益上必要と認められる情報については開示しているものと思われます。警察の広報担当者は、刑法の名誉毀損罪の条文と判例を参考に判断しているものと思われます。 刑法第230条(名誉毀損)公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。 いずれにしても、公益上必要と考えられる情報については、取材に応じて情報提供される可能性は否定できません。政治家のほか、公務員や教員や上場企業の役職者など、社会的地位の高い人物の犯罪行為や、学生であっても、有名大学の学生や、医大生などは、情報提供のリスクがあるといえます。 勿論未成年者の場合は実名報道されることは基本的にありませんが、マスコミによる報道は少年の更生を阻害するおそれが大きく、発表を阻止する必要性は高いです。少年法61条は,「家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であること推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない」と規定しています。弁護士が少年の弁護人・付添人となった場合、捜査機関等に対して、マスコミによる発表が少年の更生を阻害することを説明し、情報の流出を控えるよう早急に要請していきます。逮捕段階での情報流出の危険があるため、弁護人による捜査機関への要請を望まれるのであれば、一刻も早くご相談されるべきでしょう。最終的に捜査機関の判断によるものであることは否めませんが、被疑者の正当な利益を代弁する弁護人(捜査機関はいくら親切、丁寧であっても職務上犯罪を立件する立場から基本的に被害者側の利益を代弁することになります。これを忘れてはいけません。)から説得的な要請をすることで、捜査機関が安易に情報を流出させることに対する相当程度の牽制が期待できます。 6.未成年者が事件を起こして逮捕されてしまった場合、弁護士が弁護人・付添人として活動すれば、様々な役割を果たすことができます。少年の健全な育成のためにも、一度お近くの弁護士にご相談されることをおすすめいたします。 ≪参照条文≫ 憲法 刑事訴訟法 少年法 国家公務員法
No.1113、2011/6/7 15:13 https://www.shinginza.com/chikan.htm
【刑事・少年・痴漢・一部否認・学校連絡・マスコミ報道】
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回答:
1.警察に逮捕された場合、検察官の判断により72時間以内に勾留が請求され、裁判官が勾留または勾留請求却下の決定を出します(刑事訴訟法203条・205条1項2項、207条1項・60条)。もっとも、あなたは未成年ですから、勾留請求や勾留については、勾留の理由・必要性のほか、やむを得ない理由がある場合に限られます(少年法43条3項、48条1項)。また、未成年ですから勾留請求されない場合でも、家庭裁判所に送致され、観護措置がとられるケースもあります(少年法17条)。観護措置がとられない場合、一時帰宅という形で、身体拘束からは解放されることとなります。身体拘束からの早期解放を実現するためにも、早急に弁護士にご相談され、少年との接見や刑事・少年手続上の申立て・意見申述等、できる限りの手を尽くす必要があるでしょう。
1.身体拘束の流れ
あなたが警察に逮捕された場合、留置の必要ありとされれば、検察官に送致されます。そして、検察官がさらに身体拘束が必要かどうかを検討し、さらなる身体拘束が必要と判断されれば、逮捕から72時間以内に、勾留が請求されることとなります(刑事訴訟法203条・205条1項2項)。検察官の勾留請求があった場合、裁判官が勾留するかどうかを判断し、勾留が必要ならば勾留決定が、不必要ならば勾留請求却下決定を出します(同法207条1項・60条)。勾留されると、10日間以内の身体拘束が続き、勾留が延長されればさらに10日間以内の身体拘束が続くため、捜査機関が捜査を遂げるまで、逮捕から最長23日間の身体拘束がされることとなります(同法208条1項2項)。もっとも、あなたは未成年ですから、以上のような勾留請求や勾留については、勾留の理由・必要性のほか、やむを得ない理由がある場合でなければ認められません(少年法43条3項、48条1項)。
この段階で、資料を収集、詳細な意見書添付して検察官、裁判所と交渉することが必要不可欠です。勾留請求の阻止又は、勾留請求却下を求めることは成人の場合より容易になりますが、実際には時間がなく(逮捕から72時間程度で勾留決定の結論が出てしまいますからその前に弁護人選任が不可欠です。)事前準備が大変です。弁護人の選任、協議に手間取っていると勾留請求が通ってしまうことはよくあることです。両親の迅速な対応が求められるでしょう。弁護人の準抗告も不可欠です。万が一、検察官の準抗告が通っても再度抗告しましょう。検察官の準抗告に対しても意見書資料を整理し再度提出する場合があります。
横浜地方裁判所昭和36年7月12日決定(勾留請求却下の裁判に対する検察官の準抗告事件)は、少年事件について検察官の準抗告を棄却しています。その内容を参照します。「少年法43条3項、48条1項の「やむを得ない場合」とは、少年である被疑者が、刑訴60条の要件を完備する場合で、当該裁判所の所在地に、少年鑑別所又は代用鑑別所がなく、あっても収容能力から収容できない場合、又は、少年の性行、罪質から勾留によらなければ捜査の遂行上重大な支障をきたすと認められる場合を指す」と判断しています。覚せい剤取締法違反事件で少年らが一部否認し、一部否認する成人の第三者と共犯関係にあっても、管轄地域に少年鑑別所は設置されており、又は捜査に重大な支障をきたす事情は見当たらないとして検察官の準抗告を棄却しています。少年の健全な成長を考え、観護処置(少年鑑別所送致)請求を本来とるべきであるとした判断は適正、妥当と思われます。
@逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれがある等、身体拘束の必要性が認められる場合。
A家族からの虐待や自傷のおそれがある等、緊急に保護する必要性が認められる場合。
B継続して行動観察を行ったり、親や友人等から遮断して鑑別を行ったりする必要性がある等、収容して心身鑑別を行う必要がある場合。
たとえばあなたが、女性の胸を手の先で10分以上触ったと述べたり、その旨の調書に署名指印したりすると、自白したという証拠となります。いったん自白すると、裁判所で自白と異なる事実を認めてもらうことは極めて難しくなります。他方で、その事実を否定した場合、被疑・非行事実を認めていないということで、勾留・観護措置理由である「罪証隠滅のおそれ」(刑事訴訟法207条1項本文・60条1項、少年法17条1項)があるとの判断に傾きやすく、身体拘束が続いてしまう可能性は高くなります。
なお、本件の場合、いずれにしても女性の胸を触ったことは事実であるため、犯罪自体は成立します。そうすると、手の甲か手の先か、触っていた時間がどれくらいかといった点は、犯行態様の問題にすぎず、情状面で考慮されうる一事情ということになります。もちろん、触っていたことについて気がつかなかった、ということであれば故意がないことになり犯罪は成立しません。しかし、積極的に触るつもりはなかったとしても、手の甲が胸に触れていることを知りながら、これを放置していたということになれば犯罪自体が成立していたことは否定できません。
未成年者が事件を起こした場合、捜査機関が事件について捜査を遂げた結果、犯罪の嫌疑があるものと考えるときは、事件はすべて家庭裁判所に送致されることとなっています(少年法42条、41条。全件送致主義。少年以外の場合は検察官が犯罪の嫌疑があっても不起訴処分として裁判所に起訴しない場合もあります。少年については少年の保護という見地から家庭裁判所の判断が必要とされるため、全件送致主義が取られています)。送致された家庭裁判所は、事件について調査をし、少年審判をすることとなります(もっとも、少年審判をするには及ばないという、審判不開始の決定が出るケースもあります(同法21条参照)。)。
事件の調査については、裁判官が記録検討をするほか、家庭裁判所の調査命令により、家庭裁判所の調査官が、少年自身や周囲の環境等に対する調査を行います(同法8条1項2項)。そして、少年審判においては、少年出席のうえ、裁判官がまず非行事実について審理を行い、非行事実の存在について確信に至る心証を得た場合、少年の生活状況、周囲の環境等の要保護性についての審理を行います。そして、審理の結果、少年に対する処遇が決定されます。
このうち、重大事件等により検察官送致がされたのちは、検察官が起訴をし、成人と同様の刑事裁判を受けることとなります。また、保護処分については、保護観察官・保護司の指導監督・補導援護によって少年の改善更生を図る「保護観察(同法24条1項1号)」、児童を養護しつつ自立を支援する「児童自立支援施設・児童養護施設送致(同項2号)」、施設に収容して生活指導・教科教育・職業補導・情操教育等を施し非行性の矯正を行う「少年院送致(同項3号)」の3つのパターンがあります。このほか、以上の終局処分とは別の中間処分として、処分決定のための観察期間を設ける「試験観察(同法25条)」に付される場合もあります。更生の可能性が大きい場合は、付添い人としては不処分を考え試験観察(その間にボランティァ等を行い更生の度合いを判断する。)を主張することになります。尚、家裁への送致記録は検察官送致の場合と異なり付添人が閲覧できますので、被害者側の連絡先情報を確認することができます。本件のように被害者側の連絡先が不明の事件であっても被害者側との謝罪、被害弁償は容易ですから処分前に至急閲覧が必要です。
以上のような審判や保護処分等は、少年を保護し健全な育成を期するために用意されている制度ではありますが、現実に存在する要保護性に応じた保護手続であれば足り、過度な保護手続によって精神的にも未成熟な少年への負担の大きいものとなってしまえば、かえって少年に不利益な影響を及ぼしてしまいかねません。そのため、要保護性の有無等についての適切な事情・資料を手続上にきちんと顕出させるためにも、専門家である弁護士にご相談されることが望ましいでしょう。
所属大学への連絡については、特に法律上禁じられているわけではなく、捜査機関の捜査や家庭裁判所の調査の過程で、何らかの形で連絡がいく事態はあります。ただ、捜査機関が捜査の必要性もないのに連絡することは許されません。少年被疑事件でも、捜査の内容をみだりに開示することは公務員の守秘義務との関係で許されません(地方公務員法34条、国家公務員法100条)。
大学への事件のことについて所属大学に知れることになると、退学処分等がなされるおそれがあり、一般的にいえば少年の更生を阻害するおそれが大きく、連絡を阻止する必要性が高いところです。少年の更生のために所属大学への連絡が望ましいかどうかについては、多様なケースや見解がありうるところではありますが、弁護士が少年の弁護人・付添人となった場合、少年の更生を阻害すると考えるケースにおいては、警察官、検察官、裁判所等の関係各機関に対して、また、場合によっては被害者等の関係者との間でも、所属大学への連絡が少年の更生を阻害することを説明し、連絡を控えるよう早急に要請していきます。
マスコミによる発表についても、特に法律で禁じられているわけではなく、捜査機関等から情報が伝わって報道されてしまう事態はありえます。警察官も地方公務員であり、職務上の守秘義務があるにもかかわらず、これがマスコミ報道されることに不思議を感じる方も居られるかもしれません。
2項 法令による証人、鑑定人等となり、職務上の秘密に属する事項を発表する場合においては、任命権者(退職者については、その退職した職又はこれに相当する職に係る任命権者)の許可を受けなければならない。
3項前項の許可は、法律に特別の定がある場合を除く外、拒むことができない。
2項 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。
第230条の2(公共の利害に関する場合の特例)前条第一項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
2項 前項の規定の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。
3項 前条第一項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
第六十条 裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することができる。
一 被告人が定まつた住居を有しないとき。
二 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
三 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
2 勾留の期間は、公訴の提起があつた日から二箇月とする。特に継続の必要がある場合においては、具体的にその理由を附した決定で、一箇月ごとにこれを更新することができる。但し、第八十九条第一号、第三号、第四号又は第六号にあたる場合を除いては、更新は、一回に限るものとする。
3 三十万円(刑法 、暴力行為等処罰に関する法律(大正十五年法律第六十号)及び経済関係罰則の整備に関する法律(昭和十九年法律第四号)の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる事件については、被告人が定まつた住居を有しない場合に限り、第一項の規定を適用する。
第二百三条 司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者を受け取つたときは、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から四十八時間以内に書類及び証拠物とともにこれを検察官に送致する手続をしなければならない。
2 前項の場合において、被疑者に弁護人の有無を尋ね、弁護人があるときは、弁護人を選任することができる旨は、これを告げることを要しない。
3 司法警察員は、第三十七条の二第一項に規定する事件について第一項の規定により弁護人を選任することができる旨を告げるに当たつては、被疑者に対し、引き続き勾留を請求された場合において貧困その他の事由により自ら弁護人を選任することができないときは裁判官に対して弁護人の選任を請求することができる旨並びに裁判官に対して弁護人の選任を請求するには資力申告書を提出しなければならない旨及びその資力が基準額以上であるときは、あらかじめ、弁護士会(第三十七条の三第二項の規定により第三十一条の二第一項の申出をすべき弁護士会をいう。)に弁護人の選任の申出をしていなければならない旨を教示しなければならない。
4 第一項の時間の制限内に送致の手続をしないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
第二百五条 検察官は、第二百三条の規定により送致された被疑者を受け取つたときは、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者を受け取つた時から二十四時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければならない。
2 前項の時間の制限は、被疑者が身体を拘束された時から七十二時間を超えることができない。
3 前二項の時間の制限内に公訴を提起したときは、勾留の請求をすることを要しない。4 第一項及び第二項の時間の制限内に勾留の請求又は公訴の提起をしないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
5 前条第二項の規定は、検察官が、第三十七条の二第一項に規定する事件以外の事件について逮捕され、第二百三条の規定により同項に規定する事件について送致された被疑者に対し、第一項の規定により弁解の機会を与える場合についてこれを準用する。ただし、被疑者に弁護人があるときは、この限りでない。
第二百七条 前三条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。但し、保釈については、この限りでない。
2 前項の裁判官は、第三十七条の二第一項に規定する事件について勾留を請求された被疑者に被疑事件を告げる際に、被疑者に対し、弁護人を選任することができる旨及び貧困その他の事由により自ら弁護人を選任することができないときは弁護人の選任を請求することができる旨を告げなければならない。ただし、被疑者に弁護人があるときは、この限りでない。
3 前項の規定により弁護人の選任を請求することができる旨を告げるに当たつては、弁護人の選任を請求するには資力申告書を提出しなければならない旨及びその資力が基準額以上であるときは、あらかじめ、弁護士会(第三十七条の三第二項の規定により第三十一条の二第一項の申出をすべき弁護士会をいう。)に弁護人の選任の申出をしていなければならない旨を教示しなければならない。
4 裁判官は、第一項の勾留の請求を受けたときは、速やかに勾留状を発しなければならない。ただし、勾留の理由がないと認めるとき、及び前条第二項の規定により勾留状を発することができないときは、勾留状を発しないで、直ちに被疑者の釈放を命じなければならない。
第二百八条 前条の規定により被疑者を勾留した事件につき、勾留の請求をした日から十日以内に公訴を提起しないときは、検察官は、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
2 裁判官は、やむを得ない事由があると認めるときは、検察官の請求により、前項の期間を延長することができる。この期間の延長は、通じて十日を超えることができない。
(事件の調査)
第八条 家庭裁判所は、第六条第一項の通告又は前条第一項の報告により、審判に付すべき少年があると思料するときは、事件について調査しなければならない。検察官、司法警察員、警察官、都道府県知事又は児童相談所長から家庭裁判所の審判に付すべき少年事件の送致を受けたときも、同様とする。
2 家庭裁判所は、家庭裁判所調査官に命じて、少年、保護者又は参考人の取調その他の必要な調査を行わせることができる。
(観護の措置)
第十七条 家庭裁判所は、審判を行うため必要があるときは、決定をもつて、次に掲げる観護の措置をとることができる。
一 家庭裁判所調査官の観護に付すること。
二 少年鑑別所に送致すること。
2 同行された少年については、観護の措置は、遅くとも、到着のときから二十四時間以内に、これを行わなければならない。検察官又は司法警察員から勾留又は逮捕された少年の送致を受けたときも、同様である。
3 第一項第二号の措置においては、少年鑑別所に収容する期間は、二週間を超えることができない。ただし、特に継続の必要があるときは、決定をもつて、これを更新することができる。
4 前項ただし書の規定による更新は、一回を超えて行うことができない。ただし、第三条第一項第一号に掲げる少年に係る死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件でその非行事実(犯行の動機、態様及び結果その他の当該犯罪に密接に関連する重要な事実を含む。以下同じ。)の認定に関し証人尋問、鑑定若しくは検証を行うことを決定したもの又はこれを行つたものについて、少年を収容しなければ審判に著しい支障が生じるおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある場合には、その更新は、更に二回を限度として、行うことができる。
5 第三項ただし書の規定にかかわらず、検察官から再び送致を受けた事件が先に第一項第二号の措置がとられ、又は勾留状が発せられた事件であるときは、収容の期間は、これを更新することができない。
6 裁判官が第四十三条第一項の請求により、第一項第一号の措置をとつた場合において、事件が家庭裁判所に送致されたときは、その措置は、これを第一項第一号の措置とみなす。
7 裁判官が第四十三条第一項の請求により第一項第二号の措置をとつた場合において、事件が家庭裁判所に送致されたときは、その措置は、これを第一項第二号の措置とみなす。この場合には、第三項の期間は、家庭裁判所が事件の送致を受けた日から、これを起算する。
8 観護の措置は、決定をもつて、これを取り消し、又は変更することができる。
9 第一項第二号の措置については、収容の期間は、通じて八週間を超えることができない。ただし、その収容の期間が通じて四週間を超えることとなる決定を行うときは、第四項ただし書に規定する事由がなければならない。
10 裁判長は、急速を要する場合には、第一項及び第八項の処分をし、又は合議体の構成員にこれをさせることができる。
(児童福祉法 の措置)
第十八条 家庭裁判所は、調査の結果、児童福祉法 の規定による措置を相当と認めるときは、決定をもつて、事件を権限を有する都道府県知事又は児童相談所長に送致しなければならない。
2 第六条の七第二項の規定により、都道府県知事又は児童相談所長から送致を受けた少年については、決定をもつて、期限を付して、これに対してとるべき保護の方法その他の措置を指示して、事件を権限を有する都道府県知事又は児童相談所長に送致することができる。
(検察官への送致)
第二十条 家庭裁判所は、死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件について、調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるときは、決定をもつて、これを管轄地方裁判所に対応する検察庁の検察官に送致しなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、家庭裁判所は、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件であつて、その罪を犯すとき十六歳以上の少年に係るものについては、同項の決定をしなければならない。ただし、調査の結果、犯行の動機及び態様、犯行後の情況、少年の性格、年齢、行状及び環境その他の事情を考慮し、刑事処分以外の措置を相当と認めるときは、この限りでない。
(審判開始の決定)
第二十一条 家庭裁判所は、調査の結果、審判を開始するのが相当であると認めるときは、その旨の決定をしなければならない。
(審判開始後保護処分に付しない場合)
第二十三条 家庭裁判所は、審判の結果、第十八条又は第二十条にあたる場合であると認めるときは、それぞれ、所定の決定をしなければならない。
2 家庭裁判所は、審判の結果、保護処分に付することができず、又は保護処分に付する必要がないと認めるときは、その旨の決定をしなければならない。
3 第十九条第二項の規定は、家庭裁判所の審判の結果、本人が二十歳以上であることが判明した場合に準用する。
(保護処分の決定)
第二十四条 家庭裁判所は、前条の場合を除いて、審判を開始した事件につき、決定をもつて、次に掲げる保護処分をしなければならない。ただし、決定の時に十四歳に満たない少年に係る事件については、特に必要と認める場合に限り、第三号の保護処分をすることができる。
一 保護観察所の保護観察に付すること。
二 児童自立支援施設又は児童養護施設に送致すること。
三 少年院に送致すること。
2 前項第一号及び第三号の保護処分においては、保護観察所の長をして、家庭その他の環境調整に関する措置を行わせることができる。
(家庭裁判所調査官の観察)
第二十五条 家庭裁判所は、第二十四条第一項の保護処分を決定するため必要があると認めるときは、決定をもつて、相当の期間、家庭裁判所調査官の観察に付することができる。
2 家庭裁判所は、前項の観察とあわせて、次に掲げる措置をとることができる。
一 遵守事項を定めてその履行を命ずること。
二 条件を附けて保護者に引き渡すこと。
三 適当な施設、団体又は個人に補導を委託すること。
(司法警察員の送致)
第四十一条 司法警察員は、少年の被疑事件について捜査を遂げた結果、罰金以下の刑にあたる犯罪の嫌疑があるものと思料するときは、これを家庭裁判所に送致しなければならない。犯罪の嫌疑がない場合でも、家庭裁判所の審判に付すべき事由があると思料するときは、同様である。
(検察官の送致)
第四十二条 検察官は、少年の被疑事件について捜査を遂げた結果、犯罪の嫌疑があるものと思料するときは、第四十五条第五号本文に規定する場合を除いて、これを家庭裁判所に送致しなければならない。犯罪の嫌疑がない場合でも、家庭裁判所の審判に付すべき事由があると思料するときは、同様である。
2 前項の場合においては、刑事訴訟法 の規定に基づく裁判官による被疑者についての弁護人の選任は、その効力を失う。
(勾留に代る措置)
第四十三条 検察官は、少年の被疑事件においては、裁判官に対して、勾留の請求に代え、第十七条第一項の措置を請求することができる。但し、第十七条第一項第一号の措置は、家庭裁判所の裁判官に対して、これを請求しなければならない。
2 前項の請求を受けた裁判官は、第十七条第一項の措置に関して、家庭裁判所と同一の権限を有する。
3 検察官は、少年の被疑事件においては、やむを得ない場合でなければ、裁判官に対して、勾留を請求することはできない。
(勾留)
第四十八条 勾留状は、やむを得ない場合でなければ、少年に対して、これを発することはできない。
2 少年を勾留する場合には、少年鑑別所にこれを拘禁することができる。
3 本人が満二十歳に達した後でも、引き続き前項の規定によることができる。
第四章 雑則
(記事等の掲載の禁止)
第六十一条 家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。
(秘密を守る義務)
第百条 職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする。
○2 法令による証人、鑑定人等となり、職務上の秘密に属する事項を発表するには、所轄庁の長(退職者については、その退職した官職又はこれに相当する官職の所轄庁の長)の許可を要する。
○3 前項の許可は、法律又は政令の定める条件及び手続に係る場合を除いては、これを拒むことができない。
○4 前三項の規定は、人事院で扱われる調査又は審理の際人事院から求められる情報に関しては、これを適用しない。何人も、人事院の権限によつて行われる調査又は審理に際して、秘密の又は公表を制限された情報を陳述し又は証言することを人事院から求められた場合には、何人からも許可を受ける必要がない。人事院が正式に要求した情報について、人事院に対して、陳述及び証言を行わなかつた者は、この法律の罰則の適用を受けなければならない。
○5 前項の規定は、第十八条の四の規定により権限の委任を受けた再就職等監視委員会が行う調査について準用する。この場合において、同項中「人事院」とあるのは「再就職等監視委員会」と、「調査又は審理」とあるのは「調査」と読み替えるものとする。