新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1172、2011/10/25 18:45 https://www.shinginza.com/qa-sarakin.htm

【民事・債務整理・ブラックリスト・掲載をとめることが出来るか】

質問:消費者金融から借り入れをしています。ブラックリストというものがあると聞きますが、それはどのようなものなのでしょうか?ブラックリストに名前が載ってしまうと、どのような制裁があるのですか?

回答:
1.消費者等金融関係におけるいわゆる「ブラックリスト」は法的な概念、制度ではなく民間の信用情報機関間で作成される借入債務者の支払いに関する延滞、債務整理等障害を記載した信用情報をいい単なる通称です。その目的は、提携金融機関の事前信用調査及び、副次的に多重債務者の破綻防止にあります。従って、リスト記載により事前の信用調査が行われ借入に制限が加えられます。ただ、不当な記載に対してはこれを訂正の請求が認められています。尚、労働基準法上は、会社の利益に反すると考える労働組合活動等を積極的に行う者を記載した企業間リストをいい、その目的は労働者の適正な就労を妨げ、会社の利益を不当に得ようとするものです。労働基準法22条4項によりブラックリストを利用する使用者の活動を禁止しています。
2.事務所事例集839番711番参照。この事例集は711番を法改正に従い修正したものです。

解説:
1. まず、ブラックリストというものは法的には存在しません。俗にブラックリストと呼んでいるものは、正確には、業者からお金を借りたり、クレジットを組んだときに、長期にわたって返済を滞納したり、返済期間が多々遅れたり、また、債務整理などの法的措置をした場合に、それらの事故情報の確認がとれるように、加盟している信用情報機関の信用情報への記載を指します。なお、これらの信用情報への記載は延滞等の事故が無い場合でも借り入れがあることやカード等を作成したことが情報として記載されますから、情報の記載が直ちにブラックリストというわけではありません。

2.主な信用情報機関は、以下のとおりです。
  @ 全国銀行個人信用情報センター(KSS) http://www.zenginkyo.or.jp/pcic/ 電話0120-540-558
全国銀行協会(全銀協)が運営しており、銀行を主な加盟会員とする組織です。
  A 潟Vー・アイ・シー(CIC) http://www.cic.co.jp 電話0120-810-414
カード会社を主な加盟会員とする組織です。
  B 鞄本信用情報機構(JICC) http://www.jicc.co.jp/ 電話0120-441-481
消費者金融会社を主な加盟会社とする組織です。
同組織は、近年、以下のとおり統廃合を繰り返しています。

  H19.12 鞄本情報センター、潟Aイネット、潟eラネットの3社が合併し、新たに潟eラネットが発足する。
  H21.4 社名を鞄本信用情報機構に変更。
  全国信用情報センター連合会加盟33情報センターの信用情報事業を承継する。
  H21.8 潟Vー・シー・ビー(CCB)を吸収合併する。

  これら3つの機関は、正確な信用情報を共有すべく、相互に情報を融通し合っています。Credit Information Networkの略で「クリン」と呼ばれています。ですから、いわゆるブラックリストとは、この「クリン」にリストアップされた信用情報のことを指すと思われます。
  なお、平成22年6月18日から、いわゆる総量規制が導入され、貸金業者は顧客の総借入残高を正確に把握できる必要がある(後記参照)ところ、その仕組みとして指定信用情報機関制度(貸金業法41条の13)が導入されており、上記潟Vー・アイ・シーと鞄本信用情報機構は指定信用情報機関に指定されております。

3.大抵の金融機関・貸金業者・クレジット会社、信販会社・リース会社は上記のいずれかに加盟しています。ただし、違法な無登録業者(やみ金業者)や個人の金貸しなどはこれに加盟していないので、ブラックリストを閲覧することはできません。

4. どのような場合にリストに載るかということについては、具体的には決められていませんが、一般的には、借り入れした時期、借入残高、長期延滞と、債務整理(弁護士介入による任意整理、調停,民事再生、自己破産など)とされています。延滞していなくても利息制限法引きなおしによる過払い金返還請求などでも載ることはあるようでしたが、平成22年1月、金融庁は過払い請求の事実は個人の支払能力とは直接関係がないと判断し、ブラックリストには載せない方針を決めました。長期延滞については、一般的に3カ月以上滞納した場合は「延滞」という事故情報が、登録されます。
  このような事故が生じたときに、ブラックリストに情報が載り、それを金融機関が照会する、ということは、クレジットカードなどを契約する際の借入申込書の裏面などに「弊社があなたの個人情報を信用情報機関に登録・紹介することを許可する」などと小さく書かれており、申し込みの際に承諾をしていることになっています。

5.このようなブラック情報の登録について、独占禁止法違反やプライバシー侵害を理由に差止請求の裁判がありましたが、裁判所は「個人信用情報登録制度は、その趣旨・目的、情報の登録・利用の手続や利用者の範囲、プライバシーの保護に対する配慮等の点からみて、公共性・公益性を有し、合理性のある制度であると認めるのが相当である」と判断し、差し止めを認めませんでした(東京高等裁判所平成10年2月26日判決)。無担保で個人に対して融資を行う業者にも自己防衛の必要がありますから、借り入れを希望する場合に、信用情報機関への登録が条件となっていても、これを拒否することは事実上不可能となっています。

6. 以前に延滞をしてしまった経験などがあり、ご自身がブラックリストに登録されているか気になるようでしたら、自分で最寄の情報センターへ行き、身分証明書と印鑑を持参すれば、自分の情報の開示を求めることができます(郵送によることも可能です。)。開示請求方法の詳細については情報機関各社に問い合わせみるとよいでしょう。登録情報に関して事実に反するなど不服がある場合には、申し出ることもできます。登録情報の本人からの照会や、登録情報の訂正の申し出に応じるということは、個人情報保護法により義務化されています(個人情報保護法25条・26条)。

7.では、一度ブラックリストに登録されてしまうと、どのような制裁があるのでしょうか。他社からの借入残高の合計が収入に比べて過大になっているような場合は、新たな融資を受けるのは困難でしょうし、事故情報が載っている間はクレジットカードを作ろうとしても、カード会社の審査が通らず、借り入れをしたり、家や車を購入する際や、子供の教育ローンを組んだりしにくくなります。なお、このような弊害は法律上のものではなくあくまで金融機関の与信の問題です。なお、平成22年6月18日から、いわゆる総量規制が導入され、原則として以下の扱いとなっています。

@ a 特定の貸金業者からの借入残高が50万円超となる借入れ,
又は,
b 総借入残高が100万円超となる借入れ
の場合には,貸金業者に対し年収等の資料の提出が必要となり(貸金業法13条),
また,A 住宅ローン等を除き,調査の結果,総借入残高が年収の3分の1を超える借入れはできなくなります(貸金業法13条の2)。

8.以前はブラックリストに残っている場合に借り入れをするには非一般金融業者以外方法がないと言われていましたが、最近では、ブラック情報を照会しない、過去のことは問わない、といった業者もあるようです(但しこの場合は違法な利息(適正利率につき利息制限法1条1項参照)を請求しないかどうか良く確認する必要はあると思います。) 。

9.では、完済すれば直ちにブラックリストの情報は消えるのか、というと、そうではなく、個人信用情報には、「延滞しました」「延滞したお金を払いました」「完済しました」という情報が記録されますので、お金を払っても、しばらくは延滞したという記録は消せません。長期延滞の場合は約5年、調停は任意整理、裁判和解の場合も約5年、自己破産や個人再生手続きは約7〜10年、事故情報が残ります。

10.ブラックリストの情報について、どうしても納得が出来ない、訂正してもらいたいなどの事情がある場合は、御自分で信用情報を取得した上で、最寄の弁護士事務所に御相談になってみると良いでしょう。 その情報について、提供者である金融機関に対して、情報の調査を請求することができ、間違いであることが判明すればその訂正を求めることが可能です。

<参考条文>

個人情報保護法 
第25条 個人情報取扱事業者は、本人から、当該本人が識別される保有個人データの開示(当該本人が識別される保有個人データが存在しないときにその旨を知らせることを含む。以下同じ。)を求められたときは、本人に対し、政令で定める方法により、遅滞なく、当該保有個人データを開示しなければならない。ただし、開示することにより次の各号のいずれかに該当する場合は、その全部又は一部を開示しないことができる。
 一 本人又は第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがある場合
 二 当該個人情報取扱事業者の業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合
 三 他の法令に違反することとなる場合
第26条 個人情報取扱事業者は、本人から、当該本人が識別される保有個人データの内容が事実でないという理由によって当該保有個人データの内容の訂正、追加又は削除(以下この条において「訂正等」という。)を求められた場合には、その内容の訂正等に関して他の法令の規定により特別の手続が定められている場合を除き、利用目的の達成に必要な範囲内において、遅滞なく必要な調査を行い、その結果に基づき、当該保有個人データの内容の訂正等を行わなければならない。

利息制限法
第1条1項 金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約は、その利息が左の利率により計算した金額をこえるときは、その超過部分につき無効とする。
元本が10万円未満の場合      年2割
元本が10万円以上百万円未満の場合 年1割8分
元本が100万円以上の場合      年1割5分

貸金業法(平成18年改正)
13条 貸金業者は,貸付けの契約を締結しようとする場合には,顧客等の収入又は収益その他の資力,信用,借入れの状況,返済計画その他の返済能力に関する事項を調査しなければならない。
2 貸金業者が個人である顧客等と貸付けの契約(極度方式貸付けに係る契約その他の内閣府令で定める貸付けの契約を除く。)を締結しようとする場合には,前項の規定による調査を行うに際し,指定信用情報機関が保有する信用情報を使用しなければならない。
3 貸金業者は,前項の場合において,次の各号に掲げる場合のいずれかに該当するときは,第1項の規定による調査を行うに際し,資金需要者である個人の顧客(以下この節において「個人顧客」という。)から源泉徴収票(所得税法(昭和40年法律第33号)第226条第1項に規定する源泉徴収票をいう。以下この項及び第13条の3第3項において同じ。)その他の当該個人顧客の収入又は収益その他の資力を明らかにする事項を記載し,又は記録した書面又は電磁的記録として内閣府令で定めるものの提出又は提供を受けなければならない。ただし,貸金業者が既に当該個人顧客の源泉徴収票その他の当該個人顧客の収入又は収益その他の資力を明らかにする事項を記載し,又は記録した書面又は電磁的記録として内閣府令で定めるものの提出又は提供を受けている場合は,この限りでない。
一 次に掲げる金額を合算した額(次号イにおいて「当該貸金業者合算額」という。)が50万円を超える場合
イ 当該貸付けの契約(貸付けに係る契約に限る。ロにおいて同じ。)に係る貸付けの金額(極度方式基本契約にあっては,極度額(当該貸金業者が当該個人顧客に対し当該極度方式基本契約に基づく極度方式貸付けの元本の残高の上限として極度額を下回る額を提示する場合にあっては,当該下回る額))
ロ 当該個人顧客と当該貸付けの契約以外の貸付けに係る契約を締結しているときは,その貸付けの残高(極度方式基本契約にあっては,極度額(当該貸金業者が当該個人顧客に対し当該極度方式基本契約に基づく極度方式貸付けの元本の残高の上限として極度額を下回る額を提示している場合にあっては,当該下回る額))の合計額
二 次に掲げる金額を合算した額(次条第二項において「個人顧客合算額」という。)が100万円を超える場合(前号に掲げる場合を除く。)
イ 当該貸金業者合算額ロ指定信用情報機関から提供を受けた信用情報により判明した当該個人顧客に対する当該貸金業者以外の貸金業者の貸付けの残高の合計額
4 貸金業者は,顧客等と貸付けの契約を締結した場合には,内閣府令で定めるところにより,第1項の規定による調査に関する記録を作成し,これを保存しなければならない。
5 前各項の規定は,極度方式基本契約の極度額(貸金業者が極度方式基本契約の相手方に対し当該極度方式基本契約に基づく極度方式貸付けの元本の残高の上限として極度額を下回る額を提示している場合にあっては,当該下回る額)を増額する場合(当該極度方式基本契約の相手方の利益の保護に支障を生ずることがない場合として内閣府令で定めるものを除く。)について準用する。この場合において,必要な技術的読替えは,政令で定める。
第13条の2 貸金業者は,貸付けの契約を締結しようとする場合において,前条第1項の規定による調査により,当該貸付けの契約が個人過剰貸付契約その他顧客等の返済能力を超える貸付けの契約と認められるときは,当該貸付けの契約を締結してはならない。
2 前項に規定する「個人過剰貸付契約」とは,個人顧客を相手方とする貸付けに係る契約(住宅資金貸付契約その他の内閣府令で定める契約(以下「住宅資金貸付契約等」という。)及び極度方式貸付けに係る契約を除く。)で,当該貸付けに係る契約を締結することにより,当該個人顧客に係る個人顧客合算額(住宅資金貸付契約等に係る貸付けの残高を除く。)が当該個人顧客に係る基準額(その年間の給与及びこれに類する定期的な収入の金額として内閣府令で定めるものを合算した額に3分の1を乗じて得た額をいう。次条第5項において同じ。)を超えることとなるもの(当該個人顧客の利益の保護に支障を生ずることがない契約として内閣府令で定めるものを除く。)をいう。
第41条の13 内閣総理大臣は,次に掲げる要件を備える者を,その申請により,この章の定めるところにより信用情報提供等業務を行う者として,指定することができる。
一 法人(人格のない社団又は財団で代表者又は管理人の定めのあるものを含み,外国の法令に準拠して設立された法人その他の外国の団体を除く。以下この章において同じ。)であること。
二 第41条の33第1項の規定によりこの項の規定による指定を取り消され,その取消しの日から5年を経過しない者でないこと。
三 この法律若しくは個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)又はこれらに相当する外国の法令の規定に違反し,罰金の刑(これに相当する外国の法令による刑を含む。)に処せられ,その刑の執行を終わり,又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者でないこと。
四 役員(業務を執行する社員(業務を執行する社員が法人であるときは,その職務を行うべき者を含む。),取締役,執行役,会計参与(会計参与が法人であるときは,その職務を行うべき社員を含む。),監査役,代表者若しくは管理人又はこれらに準ずる者をいう。以下この章において同じ。)のうちに,次のいずれかに該当する者がないこと。
イ 成年被後見人若しくは被保佐人又は外国の法令上これらと同様に取り扱われている者
ロ 破産者で復権を得ないもの又は外国の法令上これと同様に取り扱われている者
ハ 禁錮以上の刑(これに相当する外国の法令による刑を含む。)に処せられ,その刑の執行を終わり,又は刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
ニ 第41条の33第1項の規定によりこの項の規定による指定を取り消された場合又はこの法律に相当する外国の法令の規定により当該外国において受けている当該指定に類する行政処分を取り消された場合において,その取消しの日前30日以内にその法人の役員(外国の法令上これと同様に取り扱われている者を含む。ホにおいて同じ。)であつた者でその取消しの日から5年を経過しない者
ホ 第41条の33第1項の規定又はこの法律に相当する外国の法令の規定により解任を命ぜられた役員でその処分を受けた日から5年を経過しない者
ヘ この法律若しくは個人情報の保護に関する法律又はこれらに相当する外国の法令の規定に違反し,罰金の刑(これに相当する外国の法令による刑を含む。)に処せられ,その刑の執行を終わり,又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
五 その取り扱う信用情報の規模として内閣府令で定めるものが,信用情報提供等業務を適正かつ効率的に行うに足りるものとして内閣府令で定める基準に適合するものであること。
六 信用情報提供等業務を遂行するために必要と認められる財産的基礎で内閣府令で定めるものを有すると認められること。
七 その人的構成に照らして,信用情報提供等業務を適正かつ確実に遂行することができる知識及び経験を有し,かつ,十分な社会的信用を有すると認められること。
2 内閣総理大臣は,前項の規定による指定をしたときは,指定信用情報機関の商号又は名称及び主たる営業所又は事務所の所在地並びに当該指定をした日を官報で公示しなければならない。

労働基準法
(退職時等の証明)
第二十二条  労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。
○2  労働者が、第二十条第一項の解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。ただし、解雇の予告がされた日以後に労働者が当該解雇以外の事由により退職した場合においては、使用者は、当該退職の日以後、これを交付することを要しない。
○3  前二項の証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはならない。
○4  使用者は、あらかじめ第三者と謀り、労働者の就業を妨げることを目的として、労働者の国籍、信条、社会的身分若しくは労働組合運動に関する通信をし、又は第一項及び第二項の証明書に秘密の記号を記入してはならない。

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