新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1194、2011/12/6 11:38 https://www.shinginza.com/cooling.htm

【民事・結婚相談所・婚活・出会い・クーリングオフ・中途解約・途中退会・特定商取引に関する法律、津地方裁判所平成22年5月19日判決】

質問:私は現在,A結婚相談所を利用しています。私は,この相談所の紹介サービスには納得がいかず,別の結婚相談所を利用してみたいと思い,A結婚相談所に利用を辞めたいと伝えたのですが,今まで払った分のお金は返金できないことは勿論,慰謝料もかかると言われました。私はA相談所からの返金を受けられず,契約書所定の慰謝料を払う必要があるのでしょうか。

回答:
1 わが国では,一度成立した契約には相互に拘束されるというのが,民法上の建前です。もっとも,事業者と消費者の情報力・交渉力の格差に鑑み,消費者を保護する法制度も整備されています。このうち,本件では以下の制度を利用できる可能性があります。
2 まず,契約が成立して法令所定事項を記載した契約書を受領した日から8日が経過するまでは,クーリング・オフが可能です。この場合,あなたが業者に対して交付した金銭は全額返金されます。
3 次に,契約が成立して法令所定事項を記載した契約書を受領した日から8日が経過したのちであっても,中途解約が可能です。この場合,役務提供開始前であれば通常の必要費用(初期費用),役務提供開始後であれば,既提供役務の対価及び通常の損害額を支払えばよく,それ以上は支払義務を負いません。この額より多く支払っているような場合には,超過分の返還請求ができます。
4 以上のとおり,A結婚相談所からあなたに対する返金が全くなく,かえって,さらに慰謝料等の支払義務を生じるなどということは法律上決してありません。このようなケースに遭遇したら,一度弁護士等専門家にご相談されることを強く推奨いたします。契約類型の確認,クーリング・オフが可能かどうか,中途解約した場合の見通し等,確実なアドバイスを受けることが必要です。また,事実上の問題としても,消費者個人相手ですと,業者が行動を起こそうとしなかったり,ごまかしたりするおそれもあるところです。毅然とした態度で,法律上正当な権利を主張し,実現することが肝要です。
5 又400万円以上も支払った結婚相談所との紹介契約を暴利行為として無効であるとした判例もあります。津地方裁判所平成20年(ワ)第510号平成22年5月19日判決です。参考にしてください。
6 特定商取引に関する法律に関して 事務所事例集975番928番898番885番767番751番719番590番350番327番302番262番228番227番149番140番120番も参照してください。
消費者契約法に関しては,事務所事例集1145番1125番1083番1072番1022番1001番948番943番916番907番854番815番585番584番543番355番328番274番255番239番224番165番も参考にしてください。

解説:
1 民法の原則と消費者保護法制
  契約は,当事者間の意思の合致に基づいて成立し,一度成立した契約には相互に拘束されます。これが,わが国の民法の建前です。当事者同士が対等な人格であることを前提に,その当事者らが相互に納得して合意した以上,その合意内容は可及的に守られるべきであるという近代市民法に基づく発想によるものです。この民法上の原則からすれば,期間を定めて,料金を支払い,結婚相手紹介のサービスを受けるという合意が当事者間で成立した以上,相互に拘束されることとなり,解約は本来自由にできるものではありません(民法上,相手方当事者に債務の不履行等がある場合には解除ができますし,意思表示の瑕疵や制限能力を理由とする取消しや,意思表示の欠缺や公序良俗違反等を理由とする無効の主張が認められますが,これらは例外的なケースになります。)。
  しかし,現代社会における取引は,当事者同士が対等な関係にある取引ばかりではなく,事業者対消費者といった情報力・交渉力に格差がある者同士の取引も数多くあります。また,取引の内容・形態自体も多様化しているところです。私的自治の原則,契約自由の原則はそもそも公平,公正な社会秩序を維持建設する手段として存在しますので,不平等な契約を排除する信義誠実の原則(民法1条,2条)が制度自体に内在しています。そこで,消費者契約法や割賦販売法,特定商取引に関する法律(以下「特商法」といいます。)などの各特別法が制定され,消費者保護が図られています。
  以下,本件で問題となってくる具体的な各制度について見ていきます。

2 クーリング・オフ
  まず,いったんは契約を結んだものの,その後考え直して契約を取りやめたいという場合に取り得る方法として,一定の契約類型には限られますが,意思表示の撤回(いわゆる「クーリング・オフ」)の制度があります。結婚相手紹介サービスの場合,特商法上,「特定継続的役務提供契約」として,このクーリング・オフができる旨規定されています(48条)。このクーリング・オフという制度は,理由如何を問わず(たとえ結婚相手を紹介されていたとしても),無条件に申込の意思表示を撤回できるという制度です。
  クーリング・オフの期間については,よく「8日以内であればクーリング・オフが可能」といわれますが,法律上は,法令所定事項について契約内容を明らかにする書面を交付したときから8日以内(なお,この8日の起算点は,書面交付日を初日として参入します。)とされています(特商法48条1項・42条2項。同法42条2項各号・同施行規則33条に挙げられている事項のすべてについて,十分な記載がなければなりません。記載すべき内容・程度の詳細については,お近くの弁護士や消費生活センターにご相談ください。)。ですから,契約時点から8日経過していない場合には速やかにクーリング・オフをするか否かを考える必要があるでしょうし,契約時点からすでに8日経過している場合であっても,業者からクーリング・オフについての書面が交付されたか,またその内容に記載事項の漏れがないかどうかを確認し,クーリング・オフを検討する必要があるでしょう。

  クーリング・オフがされた場合の効果としては,次のようなものがあります(主に本件のような結婚相手紹介サービスに関係するものを取り上げます。)。
  まず,クーリング・オフを行う旨の書面を発信した時点で,意思表示の効力が発生します(特商法48条3項)。次に,事業者は,消費者に対して損害賠償金または違約金の支払いを請求できません(同条4項)。また,役務提供がすでに行われていたときでも,事業者は,消費者に対して役務の対価等の金銭の支払を請求できません(同条6項)。さらには,役務提供契約に関連して事業者が受領した金銭は,速やかに消費者に返還する必要があります(同条7項)。そして,これらに反する特約で消費者に不利益なものは,すべて無効とされます(同条8項)。
  あなたのケースでも,契約が成立して契約書を受領した日から8日が経過しているかどうか,また,8日が経過していたとして,契約書の記載に不備がないかどうか,まずは検討する必要があります。そして,クーリング・オフが可能であれば,上記のとおり,違約金は発生せず,また,仮にすでに結婚相手の紹介を受けていたとしても,その対価について支払う必要はなく,仮に既に対価を支払っているのであれば,その返還を受けることができます。そのため,クーリング・オフができた場合,あなたが業者に対して交付した金銭については,全額が返金されます。

3 中途解約
  特商法所定の要件を満たす書面が交付されていた場合,書面交付日より8日を経過した後は,クーリング・オフはできません。そこで中途解約(特商法49条)による解約が考えられます。結婚相手紹介サービスなど政令で定められたいくつかの継続的契約の類型(既に述べた特商法上の「特定継続的役務提供契約」に該当する類型の契約)については,契約を継続していく中で実際のサービス内容や効果がわかってくるという面があること,長期間の間に事情が変更することもあることなどから,中途解約が認められています(特商法49条)。
  この場合,役務提供開始前であれば,契約の締結および履行のために通常要する費用の額(初期費用)を支払えばよいとされています(特商法49条2項2号)。そして,結婚相手紹介サービスの場合における上記「通常要する費用の額」は,3万円が上限とされています(同施行令16条)。そのため,3万円(上限)の範囲内で金員を支払うことになりますが,それ以上は支払義務を負わないことになります。そうすると,この額より多く支払っているような場合には,超過分の返還請求ができます。
  役務提供開始後であっても,提供された役務の対価に相当する額及び契約解除によって通常生じる損害の額を支払えばよいとされています(同法49条2項1号)。そして,結婚相手紹介サービスの場合における「契約解除によって通常生じる損害の額」は,「2万円または契約残額の20%のいずれか低い額」が上限とされています(同法49条2項1号・同施行令15条)。そのため,既提供役務分相当額及び「2万円または残額の20%のいずれか低い額」は違約金として支払うことになりますが,それ以上は支払義務を負わないことになります。そうすると,この額より多く支払っているような場合には,超過分の返還請求ができます。消費者とすると,損害の金額等は不明ですから,支払った金額の全額の返還を求め,立証責任分配の原則から損害金を請求して利益を受ける立場にある業者側で労務提供分,損害額を主張立証して実際の返還金額を計算することになります。
  今回のような結婚相手紹介サービスの契約は,書面受領日から8日経過してクーリング・オフ(契約の意思表示そのもの自体の撤回)ができないような場合であっても,契約期間内の中途解約が可能な類型の契約ですので,ご検討のうえ,期間途中に解約をすることは可能です。そして,中途解約した場合,あなたには上記金銭の支払義務は生じますが,それ以上の支払義務は生じません。いずれにしても,あなたにはA結婚相談所の主張するような金銭の支払義務はありません。

4 以上のとおりですので,A結婚相談所からあなたに対する返金が全くなく,かえって,さらに慰謝料等の支払義務生じるなどということは法律上決してありません。そのような運用をしている業者は,明らかに特商法に違反しています。あなたとの関係では,あなたに対する金銭の返還請求権が生じていますし,社会上も,行政規制や刑事罰の対象ともなります。なお,エステ,語学教室,学習塾等についても,特商法上,結婚相手紹介サービスと同様の規制がなされています。
  このようなケースに遭遇したら,一度弁護士等専門家にご相談されることを強く推奨いたします。上記のような「特定継続的役務提供契約」に該当するかどうか,クーリング・オフが可能かどうか,中途解約した場合の見通し等,確実なアドバイスを受けることが必要です。また,事実上の問題としても,消費者個人相手ですと,業者が行動を起こそうとしなかったり,ごまかしたりするおそれもあるところです。毅然とした態度で,法律上正当な権利を主張し,実現することが肝要です。

5 最後に判例を紹介します。契約自体暴利行為として無効であるとした津地方裁判所平成20年(ワ)第510号平成22年5月19日判決がありますので参考にしてください。妥当な判断です。

判決抜粋
「第3 当裁判所の判断
 原告は,本件契約の締結及びそれに基づく被告らの行為が,原告に対する不法行為である旨主張するので,まず,本件における不法行為の成否の点から検討する。

1 前提となる事実及び原告の主張
 本件においては,原告が,被告会社との間で,平成19年6月21日,本件紹介契約を,同月22日,本件支援契約を,それぞれ締結した上,被告会社に対し,本件契約に基づき,同年7月12日ころ,被告会社塩浜相談所において,250万円,同年8月24日ころ,三重県鈴鹿市○○所在の原告の母親訴外A方において,同人を介し,174万9250円をそれぞれ交付した事実については,当事者の間に争いがない。
 以上の事実関係を前提として,原告は,国際結婚の他社の費用が110万円,国内結婚の成約料の相場は40万円程度であるにもかかわらず,被告会社が,その4〜10倍にも達する金員を原告に交付させていることを指摘し,424万9250円もの対価を伴う本件契約は暴利契約であって,不法行為に該当する旨主張するから,以下検討する。

2 本件支援契約の不法行為性
(1)被告会社の行った業務の必要性とその対価の相当性
 被告会社は,本件支援契約に基づき,様々な業務を行い,その費用として金員を収受した旨主張するから,被告会社が行ったとされる業務について,検討を加える。

ア 被告伊藤は,法務省で実在を確認する調査をし,15万円の費用を要した旨供述する(平成21年12月17日付け被告伊藤文人本人調書添付速記録(以下「被告伊藤速記録〔1〕」という)4頁)ところ,その内実は,学生であっても結婚できるかをインフォメーションで聞いたことと在留資格を記入する用紙をもらってきたことであり,実費は交通費のみであったというのである(被告伊藤速記録〔1〕4頁)から,専門的知識も経験もほとんど必要としない作業を行っただけであり,被告会社が,費用に見合った業務を行ったとは言い難いといわなければならない。

イ 被告伊藤は,外務省大阪分室で,実在を確認する調査をし,10万円の費用を要した旨供述する(被告伊藤速記録〔1〕5頁)ところ,その内実は,訴外女性の住所の関係で結婚に妨げはないかを聞いたことと出入国関係の申請用紙と資料をもらってきたことであり,実費は交通費のみであったというのである(被告伊藤速記録〔1〕5頁)から,これも,専門的知識も経験もほとんど必要としない作業を行っただけであり,被告会社が,費用に見合った業務を行ったとは言い難いといわなければならない。

ウ 被告伊藤は,名古屋にある中華人民共和国(以下「中国」という)の領事館で実在を確認する調査をし,10万円の費用を要した旨供述(被告伊藤速記録〔1〕6頁)し,その内実は,訴外女性の独身証明書を発給してもらったというものである(被告伊藤速記録〔1〕6頁)ところ,婚姻要件具備証明書(いわゆる独身証明書)の発給申請は本人が行う必要があり,代理申請できないものであることは当裁判所に顕著な事実であるから,この点に関する被告伊藤の供述はにわかに信用できず,他に名古屋にある中国の領事館で行った業務があることをうかがわせるに足りる証拠はないから,結局,この点についても,被告会社が,費用に見合った業務を行ったとは認められないというべきである。

エ 被告伊藤は,訴外女性の自宅調査と尾行調査を行い,それに合計13万円の費用を要した旨供述(被告伊藤速記録〔1〕6〜7頁)するところ,その内実は,被告伊藤自身が自宅に早朝と深夜にそれぞれ訪れてみたことに3万円,3日間の尾行調査をする業者を雇い,早朝に訴外女性の自宅に行ってもらう費用として約10万円を要したというものである(被告伊藤速記録〔1〕7頁)が,その詳細な内容は必ずしも明確ではなく,尾行をする業者を雇う必要性についても,合理的な説明があるわけではないから,この点については,婚姻相手を紹介するのに付随するサービスとしての必要性には,多大の疑問があるといわなければならない。

オ 被告伊藤は,訴外女性に結婚の意思があるかどうかの確認をするために面談訪問を延べ7日間行い,その費用として20万円を要した旨供述する(被告伊藤速記録〔1〕7頁)が,その内実は,被告会社のスタッフの人件費であるというところ,7日間で20万円の人件費というのは,非常に高額であり,結婚の意思を確認するのみでそのような高額の人件費が必要であるとは到底認め難い上,そもそも,7日間面談を行ったことを示す資料も何ら提出せず,7日間面談を行った事実そのものの存在も疑わしいといわざるを得ないから,この点については,被告会社が,費用に見合った業務を行ったとはいえないというべきである。

カ 被告伊藤は,訴外女性の身分証が本物であるかどうかを確認する調査を行い,その費用として12万円を要した旨供述する(被告伊藤速記録〔1〕9頁)が,その内実は,日本国内で,顔,形に間違いがないかとか,入管に入ったときに違う人で入ったということがないかを確認したというものであるところ,その成果物を証拠として提出するわけでもなく,その内容を必ずしも明確に説明できているわけでもない(被告伊藤速記録〔1〕9〜10頁参照)ことに照らすと,この点の業務としてどのようなことを行ったのか,必ずしも明らかではなく,12万円の費用の相当性についても,きちんと説明できているとはいえないといわざるを得ない。したがって,この点についても,被告会社が,費用に見合った業務を行ったとは認められないというべきである。

キ 被告伊藤は,訴外女性を領事館に連れて行き,領事館の人に訴外女性の人となりを見せに行ったり,結婚する意思があるかどうかを聞きに行ったりし,その際に被告会社のスタッフ(被告伊藤を含む)が付き添った費用として20万円を要した旨供述する(被告伊藤速記録〔1〕10頁)ところ,その内実は,交通費と駐車料金を除けば全て被告会社のスタッフ(被告伊藤を含む)の日当であるというのであるが,被告会社のスタッフが,領事館に付き添っていき,どのような業務を行ったかについては,被告伊藤の供述によっても,具体的には必ずしも明らかではなく,他に被告伊藤が供述するような高額の日当が必要な理由について,これをうかがわせるに足りる証拠もないから,結局,20万円という費用の相当性については,何ら合理的な説明がなされていないというべきである。したがって,この点についても,被告会社が,費用に見合った業務を行ったとは認められないというべきである。

ク 被告伊藤は,中国で必要とされる書類を調べるために中国にある日本大使館に5日間で合計5〜6時間電話をかけ,その費用として15万円を要した旨供述する(被告伊藤速記録〔1〕11頁)が,必要書類を調べるだけのためにわざわざ外国にある日本大使館に電話をかける必要性は乏しいといわざるを得ず,かつ,人件費と電話代を合計して15万円を要することについても,合理的な説明があるとはいえない(被告伊藤速記録〔1〕12頁参照)から,この点については,業務の必要性も,費用の相当性も,全く説明ができていないというべきである。

ケ 被告伊藤は,訴外女性の家族(中国在住)の言い分を聞く被告会社のスタッフの人件費(延べ60日)及び通信費として,36万円を要した旨供述する(被告伊藤速記録〔1〕12頁)ところ,その内実については,被告伊藤の説明によっても必ずしも明確ではない(被告伊藤速記録〔1〕12頁参照)上,我が国と中国との物価水準の違いをも併せ考慮すれば,その費用の相当性についても多大の疑問が残るといわざるを得ないから,結局,業務の必要性についても,費用の相当性についても,合理的な説明がなされているとは言い難いといわなければならない。

コ 被告伊藤は,被告会社のスタッフ2名が訴外女性の話を聞いたり,アドバイスをしたりした人件費として,延べ60日分36万円を要した旨供述する(被告伊藤速記録〔1〕13頁)が,被告会社のスタッフは,訴外女性の話を聞いたりアドバイスをしたりするだけではなく,他の業務にも従事し,その業務についても,日当を払っているという被告伊藤の説明を前提とすれば,訴外女性の話を聞いたり,アドバイスをしたりする人件費として,36万円という費用が発生するというのは,いささか高額にすぎる嫌いがある上,そもそも,60日分被告伊藤が供述するような業務を行ったことを示す資料も何ら提出せず,60日分の業務を行った事実そのものの存在も疑わしいといわざるを得ないから,その費用の相当性については,合理的な説明があるとはいえないというべきである。したがって,この点についても,被告会社が,費用に見合った業務を行ったとは認められないというべきである。

サ 被告伊藤は,原告の婚姻に差し支えがないかどうかを確認するため,原告と同行して津の法務局に行った費用として,2万円を要した旨供述する(被告伊藤速記録〔1〕13頁)が,その内実は,ほとんどが被告会社のスタッフの人件費である(被告伊藤速記録〔1〕13頁)というのであって,津の法務局に同行するだけで,2万円もの人件費が必要となることには,ほとんど合理性がないというべきところ,被告伊藤の供述によっても,そのような高額の人件費が必要となった理由については,何ら合理的な説明がなされていないから,その費用の相当性については,合理的な説明があるとはいえないというべきである。したがって,この点についても,被告会社が,費用に見合った業務を行ったとは認められないというべきである。

シ 被告伊藤は,原告の自宅調査及び職場調査を行い,その費用として各2万円を要した旨供述する(被告伊藤速記録〔1〕13〜14頁)が,自宅や職場を訪れるだけで,それぞれ2万円もの人件費が必要となることには,ほとんど合理性がないというべきところ,被告伊藤の供述によっても,そのような高額の人件費が必要となった理由については,何ら合理的な説明がなされていないから,その費用の相当性については,合理的な説明があるとはいえないというべきである。したがって,この点についても,被告会社が,費用に見合った業務を行ったとは認められないというべきである。

ス 被告伊藤は,原告に結婚の意思があるかどうかの確認をするために面談訪問を延べ7日間行い,その費用として20万円を要した旨供述する(被告伊藤速記録〔1〕14頁)が,その内実は,被告会社のスタッフの人件費であるというから,上記オと同様,7日間で20万円の人件費というのは,非常に高額であり,結婚の意思を確認するのみでそのような高額の人件費が必要であるとは到底認め難い上,そもそも,7日間面談を行ったことを示す資料も何ら提出せず,7日間面談を行った事実そのものの存在も疑わしいといわざるを得ないから,この点については,被告会社が,費用に見合った業務を行ったとは認められないというべきである。

セ 被告伊藤は,被告会社のスタッフ2名が原告の話を聞いたり,アドバイスをしたりした人件費として,延べ24時間,60日分36万円を要した旨供述する(被告伊藤速記録〔1〕14〜15頁)が,被告会社のスタッフは,原告の話を聞いたりアドバイスをしたりするだけではなく,他の業務にも従事し,その業務についても,日当を払っているという被告伊藤の説明を前提とすれば,原告の話を聞いたり,アドバイスをしたりする人件費として,36万円という費用が発生するというのは,いささか高額にすぎる嫌いがある上,そもそも,延べ24時間,60日分被告伊藤が供述するような業務を行ったことを示す資料も何ら提出せず,そのような業務を行った事実そのものの存在も疑わしいといわざるを得ないから,その費用の相当性については,合理的な説明があるとはいえないというべきである。したがって,この点についても,被告会社が,費用に見合った業務を行ったとは認められないというべきである。

ソ 被告伊藤は,原告が独身証明書を取得するために被告会社のスタッフが付添をし,延べ2日間で5万円の費用を要した旨供述する(被告伊藤速記録〔1〕15頁)が,上記サの業務内容と重複がある上,上記サの費用に加え,1日当たり2万5000円もの高額の人件費が必要となることには,ほとんど合理性がないというべきところ,被告伊藤の供述によっても,そのような高額の人件費が必要となった理由については,何ら合理的な説明がなされていないから,その費用の相当性については,合理的な説明があるとはいえないというべきである。したがって,この点についても,被告会社が,費用に見合った業務を行ったとは認められないというべきである。

タ 被告伊藤は,原告が訴外女性と結婚するのに必要な書類についての打合せを行い,延べ5日で10万円の費用を要した旨供述する(被告伊藤速記録〔1〕15頁)が,被告伊藤の説明によっても,その内実は必ずしも明らかではない上,被告伊藤が供述するような高額の日当が発生する理由についても,何ら合理的な説明をしないから,結局,業務の必要性についても,費用の相当性についても,合理的な説明がなされているとは言い難いといわなければならない。

チ 被告伊藤は,原告が訴外女性と会っている時間,その行動にずっと付き添ったとして,延べ7日間で15万円の費用を要した旨供述する(被告伊藤速記録〔1〕16頁)が,行動に付き添うとするその内実は必ずしも明らかではない上,そのことのみで被告伊藤が供述するような高額の日当が発生する理由についても,被告伊藤の供述によっても必ずしも明らかではないから,結局,その費用の相当性については,合理的な説明があるとはいえないというべきである。したがって,この点についても,被告会社が,費用に見合った業務を行ったとは認められないというべきである。

ツ 被告伊藤は,訴外女性の在留資格の変更のため,四日市にある入国管理局の出張所に赴き,申請書の下書きをして,説明を受けに行き,その費用として,延べ2日で5万円の費用を要した旨供述する(被告伊藤速記録〔1〕16〜17頁)ところ,被告伊藤の説明する業務内容により,被告伊藤が供述するような高額の日当が発生する理由については,被告伊藤の供述によっても必ずしも明らかではないから,結局,その費用の相当性については,合理的な説明があるとはいえないというべきである。したがって,この点についても,被告会社が,費用に見合った業務を行ったとは認められないというべきである。

テ 被告伊藤は,「上記付帯する通訳並び文書作成訳者料(外注含む)」として,20万円の費用を要した旨供述する(被告伊藤速記録〔1〕17頁)が,その内容については,供述が二転三転し,どのような業務について,どのような出費があったのか,全く判然としない(被告伊藤速記録〔1〕17〜18頁参照)から,結局,業務の必要性についても,費用の相当性についても,合理的な説明がなされているとは言い難いといわなければならない。 

ト 被告伊藤は,3泊4日で中国を訪問し,60万円の費用を要した旨供述する(被告伊藤速記録〔1〕18頁)が,証拠(略)によれば,(あ)被告伊藤が,中国を訪問したのは,平成19年9月24日から同月27日までであること,(い)同年7月24日ころ,既に,原告と訴外女性との関係は破綻していたこと,(う)被告伊藤は,同年7月下旬ころ,原告と訴外女性との関係が破綻したことを知っていたことの各事実が認められるから,原告と訴外女性との婚姻を進めるために中国を訪問する必要性は既に消滅していたといわなければならず,被告伊藤は,原告との関係で何ら必要性のない渡航をしたにすぎないというべきである。

ナ 被告伊藤は,中国で動いてもらった人へのお礼として24万円の費用を要した旨供述する(被告伊藤速記録〔1〕20頁)ところ,上記トで摘示したとおり,被告伊藤が,原告のために中国で活動する必要性は全く存在していなかったのであるから,この点の費用も原告との関係では,何ら必要のない費用であるといわなければならない。

ニ 被告伊藤は,「用意された書類の申請から交付又は」という業務の費用として,20万円を要した旨供述する(被告伊藤速記録〔1〕20頁)が,その内実は,被告伊藤の説明によっても,その供述内容が二転三転するだけではなく,内容も全く意味不明(被告伊藤速記録〔1〕20〜22頁参照)であり,業務としての実態があったとは到底認められないから,結局,業務の必要性についても,費用の相当性についても,合理的な説明がなされているとは言い難いといわなければならない。

ヌ 被告伊藤は,「不成立等の示談並び延滞の対処費用」として,20万円を要した旨供述する(被告伊藤速記録〔1〕22頁)が,その内実は,内容証明郵便の送付や6人の人間に対する六,七回の相談料というのであり,その相談内容が全く明らかでない上,内容証明郵便の存在を証する証拠も提出されていない以上,結局,業務の必要性についても,費用の相当性についても,合理的な説明がなされているとは言い難いといわなければならない。

ネ 被告伊藤は,「交際が成立し結婚同意に至るメンテ」として,10万円を要した旨供述する(被告伊藤速記録〔1〕22頁)が,その内実は,全て被告伊藤自身の人件費であって,業務内容はアドバイスをしたことというのであり,それ以上の説明は全くなく,業務内容を裏付ける証拠も存在しないから,結局,被告伊藤の説明する業務内容により,被告伊藤が供述するような高額の日当が発生する理由については,被告伊藤の供述によっても必ずしも明らかではないから,結局,その費用の相当性については,合理的な説明があるとはいえないというべきである。したがって,この点についても,被告会社が,費用に見合った業務を行ったとは認められないというべきである。

(2)他の会社との比較
 証拠(略)及び弁論の全趣旨によれば,同業他社の同種業務を委託した場合に発生する費用は,女性の紹介から婚姻に至るまでの全ての業務の委託を含めて100万円〜150万円であり,その他に要する費用などを加算したとしても,せいぜい200万円程度に留まると認められるところ,本件においては,その倍額以上の金員を交付させているのであるから,被告会社が,原告に交付させた金員は,他社との比較においても,相当高額のものであったと認められる。

(3)本件支援契約の不法行為性
 以上によれば,本件支援契約に基づく被告会社の行った業務については,その必要性に疑問があるものが多いだけでなく,原告と訴外女性との婚姻支援との関係で意味のある具体的な内容をほとんど伴っていないといえる上,原告が支払った対価についても,その相当性に疑問があるものが大半を占め,かつ,同業他社との比較においても,他社の少なくとも倍以上の金額を交付させていることになるから,これらの事実を総合すれば,少なくとも,原告と被告会社との間の本件支援契約は,暴利行為との評価を免れないというべきである。

3 本件契約の不法行為性
1 既に摘示したとおり,本件支援契約と本件紹介契約は,形式上は,別の契約であるところ,〔1〕本件紹介契約の「契約の内容を明らかにする書面」(証拠,略)の中に,「記載のない交通費,宿泊費,日当及び付帯する諸経費についてはその必要性を考えた上で事前に協議し,合意の上で支払いするものとします。」という本件支援契約の存在を暗に前提としているとうかがわれる記載があることに加え,〔2〕(a)本件紹介契約締結の翌日に本件支援契約が締結されていること,(b)本件支援契約の対価(415万円)が実際の交付金額(424万9250円)の大半を占めていることの各事実に照らし,本件契約の重心が,本件支援契約にあったとうかがわれることの各事実をも併せ考慮すれば,本件紹介契約については,本件支援契約の前提をなし,本件支援契約と一体となった契約であって,暴利行為の不可分な一部を構成すると認められる。
 したがって,本件契約は,全体として,暴利行為に該当すると認めるのが相当である。
4 まとめ
 以上に加え,被告伊藤は,被告会社の代表取締役であり(この事実は,当事者の間に争いがない),暴利行為を行った本人でもある(被告伊藤が,本件契約の被告側の担当者であることについては,当事者の間に争いがない)ことになるから,被告伊藤が,被告会社を代表して,原告から,本件契約に基づき,総額424万9250円を収受した行為は,被告らの原告に対する不法行為を構成すると認められる。
 そして,上記不法行為による損害額は,既に検討したとおり,本件紹介契約と本件支援契約が一体の契約であること,被告会社が,本件支援契約に基づき,原告と訴外女性との婚姻支援との関係で意味のある具体的な内容を伴う業務らしい業務をほとんど行っていないこと等に照らすと,原告が本件契約に基づいて被告に交付した424万9250円全額であると認められるから,結局,請求原因その1はすべて認められる。請求原因は理由がある。」

≪参照条文≫

民法
(基本原則)
第一条  私権は,公共の福祉に適合しなければならない。
2  権利の行使及び義務の履行は,信義に従い誠実に行わなければならない。
3  権利の濫用は,これを許さない。
(解釈の基準)
第二条  この法律は,個人の尊厳と両性の本質的平等を旨として,解釈しなければならない。

特定商取引に関する法律
(特定継続的役務提供における書面の交付)
第四十二条 役務提供事業者又は販売業者は,特定継続的役務の提供を受けようとする者又は特定継続的役務の提供を受ける権利を購入しようとする者と特定継続的役務提供契約又は特定権利販売契約(以下この章及び第五十八条の八において「特定継続的役務提供等契約」という。)を締結しようとするときは,当該特定継続的役務提供等契約を締結するまでに,主務省令で定めるところにより,当該特定継続的役務提供等契約の概要について記載した書面をその者に交付しなければならない。
2 役務提供事業者は,特定継続的役務提供契約を締結したときは,遅滞なく,主務省令で定めるところにより,次の事項について当該特定継続的役務提供契約の内容を明らかにする書面を当該特定継続的役務の提供を受ける者に交付しなければならない。
一 役務の内容であつて主務省令で定める事項及び当該役務の提供に際し当該役務の提供を受ける者が購入する必要のある商品がある場合にはその商品名
二 役務の対価その他の役務の提供を受ける者が支払わなければならない金銭の額
三 前号に掲げる金銭の支払の時期及び方法
四 役務の提供期間
五 第四十八条第一項の規定による特定継続的役務提供契約の解除に関する事項(同条第二項から第七項までの規定に関する事項を含む。)
六 第四十九条第一項の規定による特定継続的役務提供契約の解除に関する事項(同条第二項,第五項及び第六項の規定に関する事項を含む。)
七 前各号に掲げるもののほか,主務省令で定める事項
3 販売業者は,特定権利販売契約を締結したときは,遅滞なく,主務省令で定めるところにより,次の事項について当該特定権利販売契約の内容を明らかにする書面を当該特定継続的役務の提供を受ける権利の購入者に交付しなければならない。
一 権利の内容であつて主務省令で定める事項及び当該権利の行使による役務の提供に際し当該特定継続的役務の提供を受ける権利の購入者が購入する必要のある商品がある場合にはその商品名
二 権利の販売価格その他の当該特定継続的役務の提供を受ける権利の購入者が支払わなければならない金銭の額
三 前号に掲げる金銭の支払の時期及び方法
四 権利の行使により受けることができる役務の提供期間
五 第四十八条第一項の規定による特定権利販売契約の解除に関する事項(同条第二項から第七項までの規定に関する事項を含む。)
六 第四十九条第三項の規定による特定権利販売契約の解除に関する事項(同条第四項から第六項までの規定に関する事項を含む。)
七 前各号に掲げるもののほか,主務省令で定める事項
(特定継続的役務提供等契約の解除等)
第四十八条 役務提供事業者又は販売業者が特定継続的役務提供等契約を締結した場合におけるその特定継続的役務提供受領者等は,第四十二条第二項又は第三項の書面を受領した日から起算して八日を経過したとき(特定継続的役務提供受領者等が,役務提供事業者若しくは販売業者が第四十四条第一項の規定に違反してこの項の規定による特定継続的役務提供等契約の解除に関する事項につき不実のことを告げる行為をしたことにより当該告げられた内容が事実であるとの誤認をし,又は役務提供事業者若しくは販売業者が同条第三項の規定に違反して威迫したことにより困惑し,これらによつて当該期間を経過するまでにこの項の規定による特定継続的役務提供等契約の解除を行わなかつた場合には,当該特定継続的役務提供受領者等が,当該役務提供事業者又は当該販売業者が主務省令で定めるところによりこの項の規定による当該特定継続的役務提供等契約の解除を行うことができる旨を記載して交付した書面を受領した日から起算して八日を経過したとき)を除き,書面によりその特定継続的役務提供等契約の解除を行うことができる。
2 前項の規定による特定継続的役務提供等契約の解除があつた場合において,役務提供事業者又は販売業者が特定継続的役務の提供に際し特定継続的役務提供受領者等が購入する必要のある商品として政令で定める商品(以下この章並びに第五十八条の八第二項及び第六十六条第二項において「関連商品」という。)の販売又はその代理若しくは媒介を行つている場合には,当該商品の販売に係る契約(以下この条,次条及び第五十八条の八第二項において「関連商品販売契約」という。)についても,前項と同様とする。ただし,特定継続的役務提供受領者等が第四十二条第二項又は第三項の書面を受領した場合において,関連商品であつてその使用若しくは一部の消費により価額が著しく減少するおそれがある商品として政令で定めるものを使用し又はその全部若しくは一部を消費したとき(当該役務提供事業者又は当該販売業者が当該特定継続的役務提供受領者等に当該商品を使用させ,又はその全部若しくは一部を消費させた場合を除く。)は,この限りでない。
3 前二項の規定による特定継続的役務提供等契約の解除及び関連商品販売契約の解除は,それぞれ当該解除を行う旨の書面を発した時に,その効力を生ずる。
4 第一項の規定による特定継続的役務提供等契約の解除又は第二項の規定による関連商品販売契約の解除があつた場合においては,役務提供事業者若しくは販売業者又は関連商品の販売を行つた者は,当該解除に伴う損害賠償若しくは違約金の支払を請求することができない。
5 第一項の規定による特定権利販売契約の解除又は第二項の規定による関連商品販売契約の解除があつた場合において,その特定権利販売契約又は関連商品販売契約に係る権利の移転又は関連商品の引渡しが既にされているときは,その返還又は引取りに要する費用は,販売業者又は関連商品の販売を行つた者の負担とする。
6 役務提供事業者又は販売業者は,第一項の規定による特定継続的役務提供等契約の解除があつた場合には,既に当該特定継続的役務提供等契約に基づき特定継続的役務提供が行われたときにおいても,特定継続的役務提供受領者等に対し,当該特定継続的役務提供等契約に係る特定継続的役務の対価その他の金銭の支払を請求することができない。
7 役務提供事業者は,第一項の規定による特定継続的役務提供契約の解除があつた場合において,当該特定継続的役務提供契約に関連して金銭を受領しているときは,特定継続的役務の提供を受ける者に対し,速やかに,これを返還しなければならない。
8 前各項の規定に反する特約で特定継続的役務提供受領者等に不利なものは,無効とする。
第四十九条 役務提供事業者が特定継続的役務提供契約を締結した場合におけるその特定継続的役務の提供を受ける者は,第四十二条第二項の書面を受領した日から起算して八日を経過した後(その特定継続的役務の提供を受ける者が,役務提供事業者が第四十四条第一項の規定に違反して前条第一項の規定による特定継続的役務提供契約の解除に関する事項につき不実のことを告げる行為をしたことにより当該告げられた内容が事実であるとの誤認をし,又は役務提供事業者が第四十四条第三項の規定に違反して威迫したことにより困惑し,これらによつて当該期間を経過するまでに前条第一項の規定による特定継続的役務提供契約の解除を行わなかつた場合には,当該特定継続的役務の提供を受ける者が,当該役務提供事業者が同項の主務省令で定めるところにより同項の規定による当該特定継続的役務提供契約の解除を行うことができる旨を記載して交付した書面を受領した日から起算して八日を経過した後)においては,将来に向かつてその特定継続的役務提供契約の解除を行うことができる。
2 役務提供事業者は,前項の規定により特定継続的役務提供契約が解除されたときは,損害賠償額の予定又は違約金の定めがあるときにおいても,次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める額にこれに対する法定利率による遅延損害金の額を加算した金額を超える額の金銭の支払を特定継続的役務の提供を受ける者に対して請求することができない。
一 当該特定継続的役務提供契約の解除が特定継続的役務の提供開始後である場合 次の額を合算した額
イ 提供された特定継続的役務の対価に相当する額
ロ 当該特定継続的役務提供契約の解除によつて通常生ずる損害の額として第四十一条第二項の政令で定める役務ごとに政令で定める額
二 当該特定継続的役務提供契約の解除が特定継続的役務の提供開始前である場合 契約の締結及び履行のために通常要する費用の額として第四十一条第二項の政令で定める役務ごとに政令で定める額
3 販売業者が特定権利販売契約を締結した場合におけるその特定継続的役務の提供を受ける権利の購入者は,第四十二条第三項の書面を受領した日から起算して八日を経過した後(その特定継続的役務の提供を受ける権利の購入者が,販売業者が第四十四条第一項の規定に違反して前条第一項の規定による特定権利販売契約の解除に関する事項につき不実のことを告げる行為をしたことにより当該告げられた内容が事実であるとの誤認をし,又は販売業者が第四十四条第三項の規定に違反して威迫したことにより困惑し,これらによつて当該期間を経過するまでに前条第一項の規定による特定権利販売契約の解除を行わなかつた場合には,当該特定継続的役務の提供を受ける権利の購入者が,当該販売業者が同項の主務省令で定めるところにより同項の規定による当該特定権利販売契約の解除を行うことができる旨を記載して交付した書面を受領した日から起算して八日を経過した後)においては,その特定権利販売契約の解除を行うことができる。
4 販売業者は,前項の規定により特定権利販売契約が解除されたときは,損害賠償額の予定又は違約金の定めがあるときにおいても,次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める額にこれに対する法定利率による遅延損害金の額を加算した金額を超える額の金銭の支払を特定継続的役務の提供を受ける権利の購入者に対して請求することができない。
一 当該権利が返還された場合 当該権利の行使により通常得られる利益に相当する額(当該権利の販売価格に相当する額から当該権利の返還されたときにおける価額を控除した額が当該権利の行使により通常得られる利益に相当する額を超えるときは,その額)
二 当該権利が返還されない場合 当該権利の販売価格に相当する額
三 当該契約の解除が当該権利の移転前である場合 契約の締結及び履行のために通常要する費用の額
5 第一項又は第三項の規定により特定継続的役務提供等契約が解除された場合であつて,役務提供事業者又は販売業者が特定継続的役務提供受領者等に対し,関連商品の販売又はその代理若しくは媒介を行つている場合には,特定継続的役務提供受領者等は当該関連商品販売契約の解除を行うことができる。
6 関連商品の販売を行つた者は,前項の規定により関連商品販売契約が解除されたときは,損害賠償額の予定又は違約金の定めがあるときにおいても,次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める額にこれに対する法定利率による遅延損害金の額を加算した金額を超える額の金銭の支払を特定継続的役務提供受領者等に対して請求することができない。
一 当該関連商品が返還された場合 当該関連商品の通常の使用料に相当する額(当該関連商品の販売価格に相当する額から当該関連商品の返還されたときにおける価額を控除した額が通常の使用料に相当する額を超えるときは,その額)
二 当該関連商品が返還されない場合 当該関連商品の販売価格に相当する額
三 当該契約の解除が当該関連商品の引渡し前である場合 契約の締結及び履行のために通常要する費用の額
7 前各項の規定に反する特約で特定継続的役務提供受領者等に不利なものは,無効とする。

特定商取引に関する法律施行令
(法第四十九条第二項第一号 ロの政令で定める額)
第十五条 法第四十九条第二項第一号 ロの政令で定める額は,別表第四の第一欄に掲げる特定継続的役務ごとに同表の第三欄に掲げる額とする。
(法第四十九条第二項第二号 の政令で定める額)
第十六条 法第四十九条第二項第二号 の政令で定める額は,別表第四の第一欄に掲げる特定継続的役務ごとに同表の第四欄に掲げる額とする。

別表第四 (第十一条,第十二条,第十五条,第十六条関係)
特定継続的役務特定継続的役務提供の期間契約の解除によつて通常生ずる損害の額契約の締結及び履行のために通常要する費用の額
一 人の皮膚を清潔にし若しくは美化し,体型を整え,又は体重を減ずるための施術を行うこと。一月二万円又は当該特定継続的役務提供契約に係る特定継続的役務の対価の総額から提供された特定継続的役務の対価に相当する額を控除した額(以下この表において「契約残額」という。)の百分の十に相当する額のいずれか低い額二万円
二 語学の教授(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する学校,同法第百二十四条に規定する専修学校若しくは同法第百三十四条第一項に規定する各種学校の入学者を選抜するための学力試験に備えるため又は同法第一条に規定する学校(大学を除く。)における教育の補習のための学力の教授に該当するものを除く。)二月五万円又は契約残額の百分の二十に相当する額のいずれか低い額一万五千円
三 学校教育法第一条に規定する学校(幼稚園及び小学校を除く。),同法第百二十四条に規定する専修学校若しくは同法第百三十四条第一項に規定する各種学校の入学者を選抜するための学力試験(四の項において「入学試験」という。)に備えるため又は学校教育(同法第一条に規定する学校(幼稚園及び大学を除く。)における教育をいう。同項において同じ。)の補習のための学力の教授(同項に規定する場所以外の場所において提供されるものに限る。)二月五万円又は当該特定継続的役務提供契約における一月分の役務の対価に相当する額のいずれか低い額二万円
四 入学試験に備えるため又は学校教育の補習のための学校教育法第一条に規定する学校(幼稚園及び大学を除く。)の児童,生徒又は学生を対象とした学力の教授(役務提供事業者の事業所その他の役務提供事業者が当該役務提供のために用意する場所において提供されるものに限る。)二月二万円又は当該特定継続的役務提供契約における一月分の役務の対価に相当する額のいずれか低い額一万一千円
五 電子計算機又はワードプロセッサーの操作に関する知識又は技術の教授二月五万円又は契約残額の百分の二十に相当する額のいずれか低い額一万五千円
六 結婚を希望する者への異性の紹介二月二万円又は契約残額の百分の二十に相当する額のいずれか低い額三万円

特定商取引に関する法律施行規則
第三十三条 法第四十二条第二項第一号 の経済産業省令で定める事項は,次のとおりとする。
一 役務の種類
二 役務提供の形態又は方法
三 役務を提供する時間数,回数その他の数量の総計
四 施術を行う者,講師その他の役務を直接提供する者の資格,能力等に関して特約があるときは,その内容
2 法第四十二条第二項第七号 の経済産業省令で定める事項は,次のとおりとする。
一 役務提供事業者の氏名又は名称,住所及び電話番号並びに法人にあつては代表者の氏名
二 特定継続的役務提供契約の締結を担当した者の氏名
三 特定継続的役務提供契約の締結の年月日
四 役務の提供に際し役務の提供を受けようとする者が購入する必要のある商品がある場合にはその種類及び数量
五 割賦販売法第二条第二項 に規定するローン提携販売の方法又は同条第三項 に規定する包括信用購入あつせん又は同条第四項 に規定する個別信用購入あつせんに係る提供の方法により役務の提供を行う場合には,同法第二十九条の四第二項 (同条第三項 において準用する場合を含む。)又は同法第三十条の四 (同法第三十条の五第一項 において準用する場合を含む。)の規定に基づきローン提携販売業者又は包括信用購入あつせん関係役務提供事業者若しくは個別信用購入あつせん関係役務提供事業者に対して生じている事由をもつて,役務の提供を受ける者はローン提供業者又は包括信用購入あつせん業者若しくは個別信用購入あつせん業者に対抗することができること。
六 特定継続的役務提供に係る前払取引を行うときは,当該前受金について保全措置を講じているか否か及び,講じている場合には,その内容
七 役務の提供に際し役務の提供を受ける者が購入する必要のある商品がある場合には,当該商品を販売する者の氏名又は名称,住所及び電話番号並びに法人にあつては代表者の氏名
八 特約があるときは,その内容

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