新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1234、2012/2/22 11:28

【親族・養子死亡後の養子縁組の解消・福岡高裁平成11年(ラ)第104号 平成11年9月3日決定】

質問:私たち夫婦は、甲を養子としてきました。甲は養子縁組後に結婚して子供乙ができました。その後、甲はがんで死亡しました。 甲の死後、乙は非行に走り、私たちに対して暴言を吐き、暴力を振るい、私たちに怪我を負わせるようになりました。私たちは乙との関係を解消したいと思っているのですが、出来ますでしょうか?

回答:
1.養親と養子の子供乙との関係だけを終了させる手続きはありません。亡くなられた養子甲との養子縁組について家庭裁判所の許可を得て、死後離縁の届出(民811条6項)をすることにより養子縁組による親族関係は解消され、乙とは親族(法定血族関係)ではなくなり、ご希望とおり関係を解消することができます。すなわち、相続の関係では代襲相続権が否定されることになります。家庭裁判所が、死後離縁の許可の審判をするか否かについては、養子縁組を解消する合理的な理由と生存当事者からの離縁の要求が正義に反しないかという見地から検討され、具体的な検討が必要です。乙の非行、あなたたちに対する暴言、暴力、あなたたちの怪我の状況を具体的に検討し、推定相続人の廃除事由(892条)に該当するような虐待や重大な侮辱行為に該当する場合は、許可される可能性が高いと言えます。
2.福岡高裁平成11年(ラ)第104号、平成11年9月3日決定(死後離縁許可申立却下審判に対する即時抗告事件)は「民法811条6項は,養親又は養子が死亡後に他方当事者を法定血族関係で拘束することが不相当になった場合,生存当事者の利益を考慮して死後離縁を認めることとし,その際,道義に反するような生存当事者の恣意的離縁を防止するために,死後離縁を家庭裁判所の許可にかからしめたものと解するのが相当である。」とその制度趣旨を述べています。従って、「道義に反し恣意的離縁となる理由」がなければ、縁組解消が認められることになるでしょう。
3.事務所事例集633番参照。

解説:
1 (養子縁組契約は当事者一方の死亡により解消するか。婚姻契約との違い。)
  養子と養親およびその血族との間においては養子縁組の日から血族間におけるのと同一の親族関係を生じることになっています(民727条)。そこで、養親と養子の子供は2親等の直系血族(法定)となります。そして、民法では、養親と養子の子供との関係だけを終了させる手続きはありません。養子縁組も私的自治の原則からは契約関係として成立しますが、養親と養子の子供には直接の契約関係がないからです。方法としては直接の契約当事者である養子縁組契約を離縁により解消することになります。すなわち、契約自体を解消しその契約により生じた法定血族関係も理論的に解消するということになります。契約関係を当事者の意思表示により解消しないと(争いがある場合は訴訟、裁判になります。)、養親子関係の上に築かれた直系血族関係も解消できません。

  そして、養子縁組の当事者の一方が死亡しても、養親子関係は当然には終了せず、養親子関係を終了させるためには、離縁の手続きが必要です。養親子関係が契約であるなら、契約当事者の一方が存在しない以上、婚姻契約と同じように養親子関係が終了するとしてもいいはずです(婚姻契約は当事者の一方が死亡すると婚姻関係は終了します。すなわち独身になります。理論上当然のことで直接の規定はありせん。民法728条1項は離婚という当事者の意思により婚姻契約関係が消滅したので姻族関係も終了することは当然です。728条2項は死亡による夫婦関係解消を前提とする特別規定となります。)。解消しない理由は、親子の自然血族関係と同様に(自然血族関係では契約関係ではありませんから当事者が死亡しても親子関係はなくなりません。親が死亡しても親子関係は解消しません。)考えるのが親子関係の実態に合致すると考えたからです。すなわち、一方の契約解消の意思表示を待って初めて解消を認めています。そういう意味で、811条6項は、契約理論の例外を見ためた特別規定ということになります。以上のように、養親子関係は、私的自治の原則に基づき婚姻と同様契約理論を前提に考えていくと分かりやすいと思います。

  当事者一方の死亡後の離縁手続きのことは、「死後離縁」と言われています。血族の他には、養子縁組や婚姻によって親族関係が生じるのですが、婚姻や養子縁組が当事者の死亡によって終了した場合残っている親族関係については、当然に終了するのではなく(離婚、離縁の場合、婚姻、縁組により生じた親族関係は当然終了します。)、婚姻や縁組の当時者本人が希望する場合に限って、親族関係を終了させようとする制度です。
  なぜ、合意、裁判上の離婚、合意縁組解消、裁判上の縁組解消の場合は、婚姻、縁組により生じた親族(姻族)関係、法定血族関係が当然に全て解消するのに、当事者一方の死亡の場合は、生存配偶者と死亡配偶者の親族関係、法定血族関係が残るのでしょうか。養子縁組の理由は前述しましたが、婚姻の場合は、本来当事者がいない以上理論的に消滅するのが当然ですが、意思表示により婚姻関係が解消したのではなく、死亡という偶然の事情により姻族関係が終了するというのは家族関係の内情にそぐわない結果となる場合もあるので、生存配偶者にのみ(姻族関係者からは認められない)解消権を認めたものです(728条2項、戸籍法96条)。

  死後離縁は、養父母がともに死亡したときに、その一方のみとだけ離縁をすることも可能です。養子契約は養父母別個に成立しており、唯、養父母と共に養子をするという要件(民法759条)は、自然な親子関係の実態にそぐわないので便宜上の要件としていますが、養親が死亡した以上成立の場合と異なり双方ともに解消する必要性がなくなるからです。また、養子が未成年者であっても契約である以上解消することが出来ます。ただ、特定の親族関係だけを終了させる手続きはなく、養親と養子の子供との関係だけを終了させる手続きはありません。死後離縁によって、養親と養子の養親子関係は解消しますが、それだけでなく養子縁組によって生じた養親族関係全部が解消するとされています(養親族関係とは法定血族や姻族関係のことを意味し、養子の子供も含まれます)。したがって、現行法においては、養親と養子の子供との関係を終了させるためには、養親と養子との死後離縁をするしかありません。

2 (死後離縁でどうして家庭裁判所の許可が必要か。)
  生存している当事者が死後離縁をするためには家庭裁判所の許可が必要です(811条6項)。そして、実際に離縁の効力を生じさせるためには、家庭裁判所の許可を得た上で、役所に死後離縁の届出をする必要があります。夫婦の場合、他方が死亡したことによる姻族関係は、生存配偶者による終了させる意思表示(届出が必要です)だけで終了することになっており家庭裁判所の許可は必要ではありませんが(民728条2項)、養子縁組の場合は、家庭裁判所の許可(審判書謄本、と審判の確定証明書を届出に添付する必要があります)が必要とされています。

  民法では夫婦が家族の基本となっていますから、契約である以上夫婦の一方が死亡した場合は、生存している親族との親族関係(姻族関係)を終了させることは理論的にむしろ当然といえるため(契約に付随して生じた関係なので元の契約がなくなる以上当然です。)、特に家庭裁判所の許可は不要です。
  しかし、養子縁組による親子関係は他方当事者が死亡したとしても親子関係は継続することになるため、継続しがたい事由があるか否かを家庭裁判所の許可の審判により判断させるというのが法律の趣旨です。前述のごとく本来契約である以上、当事者の死亡により全ての関係が終了するのですが、自然血族関係に倣い当然に解消しない方が、親子の実情に合うという便宜的理由から認められていますので、その実態がないような場合には、裁判所の許可を要件として認めています。付随的理由として、法定の直系血族関係では、夫婦の場合と異なり(夫婦では姻族が法定相続権を持つことはありませんし、原則扶養義務はありません。)、相続権(代襲相続権)扶養義務(民法877条、直系血族、兄弟姉妹)の問題があり、法定相続人の利益も考慮しなければならない点があげられます。

  ところで、15歳未満の養子が「死後離縁」許可の申立をする場合、ケースによって申立人が異なります。養父母の一方が死亡した後に養子がその死亡した養親のみと離縁するケースでは、生存する養親が申立人となります。死亡した養親だけでなく生存している養親とも離縁するケースでは、実父母が申立人となります。なぜならば、離縁によって実父母の親権が回復するからです。養父母双方が死亡しているケースでは、戸籍先例では未成年者後見人が申立人となるとされています。これは養父母双方の死亡で養子には未成年者後見が開始しているからです。しかしながら、この点について、学説上、少なくとも未成年者後見人が現実に選任されていない段階では実父母に権限を認めるべきではないかとの見解が有力です。なぜならば、離縁後は未成年者後見は終了し、実父母が親権者となり離縁後の法定代理人となるからです。
  死後離縁の届出は、生存当事者だけで可能です(戸籍法72条)。家庭裁判所の許可を疎明しないといけませんので、家庭裁判所の許可審判の謄本および確定証明書を添付しないといけません。

3 (家庭裁判所の許可基準は何か)
  家庭裁判所の死後離縁の許可基準について、具体的に法律の規定があるわけではありません。従って死後離縁を認めた制度趣旨から解釈する必要があります。ただ、民法上の大前提として、養子縁組による血族関係は一方当事者の死亡によっても解消しないというのが原則ですから、死後離縁の申立が許可されるためには、養子縁組を継続しがたい事由が存在すること、抽象的ですが信義則に反しないこと、権利の濫用にならないことが必要です。社会通念上正義に反するような死後離縁の申立は許可されないです。養子縁組契約は契約であるにもかかわらず、当事者一方の死亡による場合、自然血族関係の親子関係と同様に扱う必要があり、養親子関係は解消しないのですから特別な理由が要請されることになります。ただ、契約である以上当事者の意思により解消も認めざるを得ず、これも、私的自治の原則に内在する信義誠実、公正、公平、権利濫用禁止の理論により支配されることになります。養親、養子の互いの利益を比較考量して決定されます。
  養子縁組自体が子の福祉及び、子を持ちたいという養親の利益の上に立っている以上双方の利益を考慮せざるを得ないと思います。

  具体的には、養親から扶養を受けていたにもかかわらず、養親の片方が死亡した際、死亡した養親の相続を受けつつ、生存する養親の扶養義務を免れるために死後離縁の申立をするようなケースです。
  養子の死亡後に養親から死後離縁を申し立てた場合には、養子の子と養親との間に推定相続人の廃除事由(892条)に該当するような虐待や重大な侮辱行為等があるときなどに許可を限定すべきでしょう。また、そこまで至らない場合でも許可の判断は慎重になされると思われます。なぜならば、亡き養子の子の福祉を考慮しなければならないからです。特に未成熟子の場合はなおさらです。養子が死亡した後は、養親は直系尊属として養子の子を扶養する義務があります。養子の子は、養親の相続について養子を代襲して相続人となる資格があります。死後離縁は、死亡した養子の子との養親族関係を解消させて、養子の子からこのような地位を失わせるためになされる可能性があることから、養子の子の利益を考慮して、養子の子の福祉など慎重に判断がなされることになります。

4 (本件の検討)
  以上を踏まえて、本件相談者の事例を検討します。乙は養子甲の子ですから、乙との関係を解消するためには、甲との養親族関係を解消するべく、甲との死後離縁の手続きをとることになります。死後離縁の許可がなされるかに関し、乙は非行に走り、あなたたちに対して暴言を吐き、暴力を振るい、あなたたちに怪我を負わせるような行為をしているのであれば、推定相続人の廃除事由(892条)に該当するような虐待や重大な侮辱行為にあたる可能性がありますので、家庭裁判所の許可は得られると思われます。よって、家庭裁判所に死後離縁の許可を申立て、許可がでて確定した後に、役所に死後離縁の届出をすると良いでしょう。

5 (参考判例)
  前記判例を読むと、許可基準は養親の利益も考慮し、広く解釈されているようです。老後の世話,家業の引継ぎ,財産の相続を主な目的としてなされた養子縁組の養親側の利益を認めています。(決定抜粋は後記掲載。)

≪参照条文≫

民法
(親族の範囲)
第七百二十五条  次に掲げる者は、親族とする。
一  六親等内の血族
二  配偶者
三  三親等内の姻族
(親等の計算)
第七百二十六条  親等は、親族間の世代数を数えて、これを定める。
2  傍系親族の親等を定めるには、その一人又はその配偶者から同一の祖先にさかのぼり、その祖先から他の一人に下るまでの世代数による。
(縁組による親族関係の発生)
第七百二十七条  養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる。
(離婚等による姻族関係の終了)
第七百二十八条  姻族関係は、離婚によって終了する。
2  夫婦の一方が死亡した場合において、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときも、前項と同様とする。
(協議上の離縁等)
第八百十一条  縁組の当事者は、その協議で、離縁をすることができる。
2  養子が十五歳未満であるときは、その離縁は、養親と養子の離縁後にその法定代理人となるべき者との協議でこれをする。
3  前項の場合において、養子の父母が離婚しているときは、その協議で、その一方を養子の離縁後にその親権者となるべき者と定めなければならない。
4  前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項の父若しくは母又は養親の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。5  第二項の法定代理人となるべき者がないときは、家庭裁判所は、養子の親族その他の利害関係人の請求によって、養子の離縁後にその未成年後見人となるべき者を選任する。
6  縁組の当事者の一方が死亡した後に生存当事者が離縁をしようとするときは、家庭裁判所の許可を得て、これをすることができる。
(扶養義務者)
第八百七十七条  直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
2  家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
3  前項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる。
(子及びその代襲者等の相続権)
第八百八十七条  被相続人の子は、相続人となる。
2  被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
3  前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。
(推定相続人の廃除)
第八百九十二条  遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。

戸籍法
第38条 届出事件について父母その他の者の同意又は承諾を必要とするときは、届書にその同意又は承諾を証する書面を添附しなければならない。但し、同意又は承諾をした者に、届書にその旨を附記させて、署名させ、印をおさせるだけで足りる。
2 届出事件について裁判又は官庁の許可を必要とするときは、届書に裁判又は許可書の謄本を添附しなければならない。
第72条 民法第811条第6項の規定によつて離縁をする場合には、生存当事者だけで、その届出をすることができる。

(参照判例)

福岡高裁平成11年(ラ)第104号、平成11年9月3日決定(死後離縁許可申立却下審判に対する即時抗告事件) 理論的に妥当な結論でしょう。

決定抜粋「1 抗告人らは,主文同旨の裁判を求め,別紙「抗告の理由」のとおり,その理由を述べた。
2 一件記録によると,次の事実が認められる。
(1)抗告人利光は,昭和27年,父の家業であった宮下呉服店を再開し,抗告人珠子はこれを補佐していたが,抗告人らは,その頃,取引先の呉服店の従業員として出張してきていた事件本人と知り合い,昭和37年1月,事件本人と養子縁組をした。
(2)事件本人は,縁組後しばらく抗告人らと同居していたが,約3か月経過した頃,抗告人利光は,事件本人の要望を容れ,抗告人ら住居の近くに土地を購入し,これを敷地として事件本人名義の家を新築し,右敷地を事件本人に無償で使用させた。
 事件本人は,同年夏,宮下呉服店にアルバイトに来ていた,抗告人珠子の従妹である宮下(旧姓杉浦)洋子と知り合い,抗告人らの薦めもあって,昭和39年10月,挙式の上結婚し(届出は昭和39年12月),昭和41年4月長女真理子,昭和46年6月,長男保を儲けた。
(3)洋子は,長女真理子が出生直後,真理子を連れて宮下呉服店へ行った際,抗告人珠子が同店の炊事のおばさんに「こんなおかしな赤子は始めてみた。」と言っているのを聞いて反感を持ち,それ以来約10年間,抗告人らのところへは一切出入りしなかったが,昭和51年頃,同店に勤務していた女性従業員に薦められて同店に勤務することになった。
 洋子は,その頃から,2,3回は抗告人らのもとへ長男保を連れて行ったことがあるが,同人が小学入学頃からは,抗告人らの所へ行くことを嫌うところから連れて行ったことはない。
(4)抗告人らと事件本人の長女,長男との交流は上記以外には全くなく,疎遠である。
 事件本人の長女は,平成6年11月,結婚したが,抗告人らは,事件本人夫妻が結婚式の前日まで何の相談もしなかったとして,結婚式にも出席しなかった。
 長女は,現在,鹿児島市に居住し,長男は,就職して,船橋市に居住している。
(5)抗告人らは,抗告人利光が平成8年4月,脳梗塞で入院した際,事件本人夫妻が見舞いに行かなかったとして不満を持っているが,このことについて,洋子は,抗告人珠子に頼まれて,自動車で同人を病院まで送ったことがあるが,その際,抗告人珠子からすぐ済むから車内で待つようにと言われたので病室までは行かなかったと弁解している。
(6)事件本人は,平成8年10月30日,脳溢血で倒れるまで宮下呉服店で従業員として勤務し,同年11月6日,死亡した。
(7)抗告人らと事件本人との関係は余り親密な親子関係が形成されないままであった。
 特に抗告人珠子と洋子との間は葛藤が強く,事件本人死亡後,抗告人らと洋子との間はいよいよ険悪となり,現在,事件本人所有の前記家屋の敷地の使用権原について紛争が生じている。
3 民法811条6項は,養親又は養子が死亡後に他方当事者を法定血族関係で拘束することが不相当になった場合,生存当事者の利益を考慮して死後離縁を認めることとし,その際,道義に反するような生存当事者の恣意的離縁を防止するために,死後離縁を家庭裁判所の許可にかからしめたものと解するのが相当である。
 そこで検討するに,前記認定によると,抗告人らは,(a)老後の世話,(b)家業の引継ぎ,(c)財産の相続を主な目的として,事件本人と養子縁組をしたことが推認されるところ,事件本人が抗告人らより先に死亡したため,右の目的はほとんど達せられなくなってしまったこと,事件本人の長女真理子はすでに嫁いで鹿児島市に居住し,長男保は,就職して千葉県船橋市に居住しているが,もともと抗告人らとは疎遠であり,同人らに右(a),(b)を期待することは到底できない状況にあることを考慮すると,抗告人らの本件申立ては理解できないものではない。
 右洋子や真理子らは,本件申立てについて,事件本人の長年にわたる貢献を無視するものと非難しており,確かに,事件本人は34年間,宮下呉服店に勤務し,それなりの貢献をしてきたことは認められるが,もともと事件本人は,以前他の呉服店で勤務していたものであり,妻洋子と結婚後は新築の家を購入して貰い,その敷地の無償貸与を受けてきたのであって,本件縁組によって事件本人のみが一方的に不利益を受けたとも認めがたく,真理子らに前記(a),(b)について期待ができない状況を考えると,真理子らの代襲相続の権利だけが保護されるべきであるとの見解も採用できない。(なお,前記家屋の敷地の使用権原が離縁によって直ちに解消するとの扱いは相当でなく,法律上も検討の余地がある。)
4 したがって,本件申立てを恣意的申立てであるとして却下するのは相当でなく,右と結論を異にする原審判を取消し,本件申立てを許可することとし,主文のとおり決定する。」

法律相談事例集データベースのページに戻る

法律相談ページに戻る(電話03−3248−5791で簡単な無料法律相談を受付しております)

トップページに戻る