新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1246、2012/3/13 14:59 https://www.shinginza.com/qa-souzoku.htm

【相続開始後放棄前の相続人の遺産を構成する不動産の固定資産税の支払い義務について】

質問:先日,父が亡くなり,相続人は子供である私一人です。相続財産は,父が住んでいた家と土地だけですが,父には多額の借金があるので,相続放棄をしようと思っています。父の両親はすでに死亡し,兄弟はいませんので,私が放棄をしてしまうと,相続人が誰もいなくなってしまいます。この場合,不動産や借金の処理はどうなるのでしょうか。また,家や土地にかかる固定資産税もあると思いますが,これはどうなるのでしょうか?税金ということで,私に支払い義務があるのでしょうか?

回答:
 相続放棄により,相談者は相続人ではなかったことになり,お父様の借金の支払いはする必要はなく,この点は,固定資産税についても基本的には同様です。
 ただし,固定資産税は,賦課期日時点の不動産の所有名義人(登記簿上の名義人や課税台帳上の名義人で,真の所有者とは異なる場合もある)に対して課税を行うという台帳課税主義を採用していますので,賦課期日時点の名義人がお父様であれば,生前のお父様に対して納税義務が課されます。そして,そのお父様に課された納税義務を,相続人が承継することになり,相続人がいない場合は相続財産法人(民法951)が納税義務を負います。
 しかし,賦課期日時点で相続人の名義の登記がある場合(相続後に債権者が代位して相続人名義で登記することがあります),相続人である名義人が納税義務を負うことになり,相続の放棄があったとしてもこれは被相続人の債務ではなく,課税時点での名義人に課せられる義務なので免れることはできません。
 なお,相続放棄後に相続人名義でなされた登記の名義変更については難しい問題があり司法書士や法務局と協議して進める必要があります。

解説:

1(1)相続の放棄は,相続債務の超過が明らかなときや,遺産を受けるのを潔しとしないときに行う意思表示で,被相続人の権利義務の承継を全面的に拒否する行為です。
   相続の放棄は,家庭裁判所に対してその旨を申述することにより行います(民法938条)。放棄の理由は特に示す必要はありませんが,原則として,相続人において,相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に行わなければなりません(民法915条1項本文)。この期間のことを熟慮期間といいます。
   この相続放棄の意思表示により,初めから相続人とはならなかったものとみなされます(民法939条)。つまり,初めから相続人ではないので,被相続人の財産の一切を引継ぐことはないということです。財産には,ご相談にあるような家・土地や預金といった,いわゆるプラスの財産もありますが,借金といったマイナスの財産もあります。そうすると,お父様の借金については,相続放棄により相談者が支払う必要はなくなりますが,相談者が,お父様の保証人になっているという場合は,注意が必要です。

 (2)なお,お父様の借金は主債務といいますが,この主債務が消滅すれば,これに連動して,保証債務も消滅します(附従性)。
   しかし,相続放棄というのは,文字通り,「相続を放棄する」ということであり,被相続人の借金を消滅させるということではありません。したがって,お父様の保証人になっていたという場合は,ご自身の保証債務について支払いをする義務があるということになります。

 (3)家庭裁判所において,相続放棄が認められると,「相続放棄申述受理証明書」というものを発行してもらえます。おそらく債権者からお父様の借入れについての請求をされると思います。その際,相続放棄をしたと伝えると,債権者から,この相続放棄申述受理証明書のコピーを送って欲しいなどと頼まれることと思います。その際は,その求めに応じて,送ってあげるのが良いでしょう。
   後で説明しますが,債権者は相続財産である不動産を差し押さえて競売するためには,相続人を債務者として行い,不動産の登記についても債権者の代位という形で相続人名義に登記名義を変更することになります。このようなことが起こらないようにするためには,債権者に相続放棄をしたことを放棄後すぐに連絡しておく必要があります。申述受理証明書は,相続放棄の申立人はもちろんのこと,債権者などの利害関係人も請求することが可能ではあります。ただ,利害関係人がこの請求をするのには,被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本などを取り寄せ,申立書に添付するなど,時間も労力もかかる上,相続放棄が確認できず,支払いに応じないということで,訴えを提起したりしてくる可能性も否定できませんので,ここは素直に応じて,あっさりと終わらせるのが得策です。

 (4)これは,お父様が支払うはずだった,あるいは滞納していた固定資産税についても基本的に当てはまります。ただし,固定資産税については,役所との関係で相続の問題とは別の扱いがありますので,後ほど説明を加えさせていただきます。

2.相続人がいなくなると,民法上「相続人不存在」という状態として扱われ,相続財産は法人化し,相続財産法人となります(民法951条)。被相続人が死亡したときに,何らの行為も要せず,当然に法人化します。そして,相続人の捜索や相続財産の管理・清算を行うため,利害関係人または検察官の請求により,相続財産管理人が家庭裁判所により選任されます(民法952条)。相続財産から弁済されるのは,相続債権者への支払いや,特別縁故者への財産分与や,相続財産管理人の報酬などがあります。全ての弁済が終わった後に残った相続財産は,国庫に帰属することになります。具体的には,政府機関である財務省地方財務局が収納することになります。

  なお,相続を放棄した場合,放棄後の相続人が相続財産を管理するまでは放棄をした人が相続財産を管理しておく必要があります(民法940条,相続の放棄をした者による管理)。他に相続人がいないようであれば,放棄された相談者が相続財産管理人選任を家庭裁判所に申立て,管理人が選任されるまでは相続財産を管理する責任があることになります。親の財産であっても,相続放棄をした後の管理に不手際があると,後日相続財産管理人から損害賠償請求の訴訟を起こされる可能性がありますのでご注意下さい。
  相続財産管理人選任後の手続きの流れを,簡単に箇条書きにて,ご紹介しておきます。

   @家庭裁判所による相続財産管理人選任の公告(2ヶ月)(民法952条2項,957条1項)
   A相続財産管理人による相続債権者・受遺者に対する公告(2ヶ月以上)(民法957条1項)
   B家庭裁判所による相続人捜索公告(6ヶ月以上)(民法958条)
   C公告期間の満了をもって相続人不存在の確定(民法958条の2)
   D特別縁故者からの財産分与請求(3ヶ月以内)(民法958条の3)
   E相続財産管理人に対する報酬付与(民法953条,29条2項)
   F残余財産の国庫への帰属(民法959条)

3(1)固定資産税について
   ご相談のケースにおいて,固定資産税の賦課期日後にお父様がお亡くなりになられたということであれば,お父様に納税義務が生じることになります。そして,相続人がいる場合には,相続人が納税義務を承継することになるところですが(地方税法9条1項本文),相談者の相続放棄によって,相続人が不存在の状態となっています。
   相続人不存在の状態となった相続財産が法人となるのは,2でご説明させていただいたとおりですが,この相続財産法人が,被相続人の納税義務を承継するとされています(地方税法9条1項本文)。

 (2)では,固定資産税の賦課期日前にお父様がお亡くなりになられた場合はどうでしょうか。
   固定資産税の納税義務者は,固定資産の所有者とされています(地方税法343条1項)。この「固定資産の所有者」とは,賦課期日(当該年度の初日の属する年の1月1日)の時点で,土地・家屋については,登記簿または土地補充課税台帳,家屋補充課税台帳に所有者として登記,登録されている者のことをいいます(台帳課税主義。地方税法343条2項)。
   ただ,この登記簿・土地補充課税台帳等(以下,登記簿等)に登記・登録(以下,登記等)されている個人が賦課期日前に死亡しているときは,同日において当該土地または家屋を現に所有している者をいうとされています(地方税法343条2項)。
   前述のとおり,被相続人の死亡後,相続人が不存在の状態であるときは,被相続人の死亡の時点で相続財産は当然に法人となります。家・土地がお父様の名義のままである場合には,相続財産法人が納税義務者ということになります。

 (3)このようにされてはいますが,問題が生じて来るケースがあります。
   ア 地方税法上,固定資産の所有者とは,登記簿等に登記等をされている者のことであることは前述のとおりです。この登記簿等に登記等されている者が,真実の所有者ということであれば問題は生じません。
     しかし,登記等されている者と真の所有者とが合致しているとは限りません。本来であれば,真の所有者に課税をなすべきところですが,権利関係が複雑であったりすると納税義務者の確定に時間がかかってしまいますし,特に,その権利関係に争いがある場合には,その確定まで待たなくてはいけなくなってしまいます。
     そこで,登記簿等に登記等をされている者を所有者として,課税をすることとされています。そして,仮に登記簿の記載に間違いがあって,その誤った記載に基づいて課税が行われたとしても,その課税は有効だと解されています。

   イ 例えば,お父様の債権者が,家や土地を差押えた場合に,上記のような問題が生じ得ます。
     この場合,債権者は差押えたことを登記する必要がありますが,差押えの対象となっている不動産の登記名義人が亡くなっているが,登記の名義はそのままであるという場合,差押登記の前提として,相続登記をする必要があります。この相続登記は,本来であれば,相続人が行うものですが,差押債権者が,この相続人に代位して,相続登記を行い(債権者代位権,民法423条),その後,差押登記を行うということも可能です。
     したがって,もし,債権者代位により,相談者への相続登記が行われ,その状態で賦課期日をむかえてしまうと,相談者に納税義務が生じるということになります。

   ウ 突然,このような事態になるということは,あまりないとは思いますが,債権者から相続放棄申述受理証明書を送って欲しいと頼まれた場合には,素直に応じていただいたほうが良いと申し上げたのは,このためです。支払いに応じず,相続放棄の確認もとれないということで,差押えをし,相続登記を代位により行って来るかもしれません。

   エ 債権者による代位登記後に相続放棄をしたというケースについてですが,判例がありますので,ご紹介します。
     「……法は,固定資産税及び都市計画税を課すべき「所有者」を,右の各公簿上の所有名義人と定め,いわゆる台帳課税主義を採用しているが,これは,課税庁は,課税の対象となる多数の固定資産につき限られた人員で短期間に徴税事務を行わなければならないところ,私法上の所有権の帰属の判定には困難が伴うことから,徴税の便宜を図る必要があるという理由によるものであると解される……。
     もっとも,法は,所有者として登記又は登録されている個人が賦課期日前に死亡しているときは,同日において当該土地又は家屋を現に所有している者を固定資産の「所有者」とする旨を定めている(三四三条二項後段,七〇二条二項)。
     すなわち,右のような場合には,所有名義人をもって納税義務者とする台帳課税主義に例外を設け,「現に所有している者」という所有権の帰属する者をもって納税義務者とし,その限りで所有権の判定に困難が伴うことを甘受する考え方を取入れている。これは,死亡している人からは現実問題として徴税できないために,やむを得ず例外を設けたものと解される。そうすると,右のような例外の場合を除いては,原則どおり所有名義人を納税義務者とするのが法の考え方であるというべきである。
     そして,このような原則とわずかな例外とからなる固定資産税及び都市計画税の課税の在り方には,相応の合理性があるということができる。
     本件では,……固定資産税及び都市計画税の賦課期日……現在,原告らが本件物件の登記簿上の所有名義人とされ,かつ,原告らが生存しているので,被告は,原告らに対し,右の台帳課税主義に従って本件処分をしたものである。よって本件処分は適法というべきである。」(横浜地判平成12年2月21日判例地方自治205号19頁)。
     判例の事案は,移転登記後の相続放棄であり,問題が生じうる場合としてご紹介したケースは相続放棄後の移転登記であって,事案が少し異なりますが,賦課期日現在の所有名義人が生存しており,判例のいう例外にはあたらず,同様に解して良いと思われます。

4(1)真の所有者が別にいる場合でも,登記簿等に登記等をされている者,それが仮に誤った記載だとしても,その者に対して行った課税が有効だというのは分かりましたが,真の所有者でもないのに納税した者は,仕方のないことだと諦めるしかないのでしょうか。
   この点について判断をした判例がありますので,ご紹介します。
   「固定資産税は,土地,家屋および償却資産の価値に着目して課せられる物税であり,その負担者は,当該固定資産の所有者であることを原則とする。ただ,地方税法は,課税上の技術考慮から土地については土地登記簿……または土地補充課税台帳に,家屋については建物登記簿……または家屋補充課税台帳に,一定の時点に,所有者として登記または登録されている者を所有者として,その者に課税する方式を採用しているのである。したがつて,真実は土地,家屋の所有者でない者が,右登記簿または台帳に所有者として登記または登録されているために,同税の納税義務者として課税され,これを納付した場合においては,右土地,家屋の真の所有者は,これにより同税の課税を免れたことになり,所有者として登記または登録されている者に対する関係においては,不当に,右納付税額に相当する利益を得たものというべきである。そして,この理は,同種の性格を有する都市計画税についても同様である。」(最三判昭和47年1月25日民集6巻1号1頁)。

 (2)つまり,登記簿等に登記等をされているということで納税をした者は,真の所有者に対して,その納税額について,不当利得返還請求をすることができるということです(民法703条以下)。
   問題が生じうる場合としてご紹介したケースでは,真の所有者である相続財産法人に対し,不当利得返還請求を行うこととなります。
   ただ,相続財産が相続財産法人になるケースというのは,その多くは,ほとんど積極財産がない場合であり,このような相続財産法人から回収を受けるのは,事実上困難だと思われます。
   この点は,前述の横浜地裁判決も述べるところです。そして,さらに続けて,このことは,地方税法が台帳課税主義を定めた結果当然に予想されたものであり,この点について特段の措置を講じておらず,台帳課税主義が一定の合理性を有するものである以上,やはり例外は認められない,との趣旨のことを述べており,不当利得返還請求による回収が困難な場合についてまでは,残念ですが,仕方がないということになってしまいます。
5.問題が生じうる場合としてご紹介したケースのような状況も考えられますが,基本的には,家庭裁判所で,きちんと相続放棄の手続を行えば問題はないかと思います。ご心配でしたら,一度,お近くの法律事務所へご相談してみて下さい。

【参照条文】

民法
(管理人の担保提供及び報酬)
第二十九条 家庭裁判所は,管理人に財産の管理及び返還について相当の担保を立てさせることができる。
2 家庭裁判所は,管理人と不在者との関係その他の事情により,不在者の財産の中から,相当な報酬を管理人に与えることができる。
(債権者代位権)
第四百二十三条 債権者は,自己の債権を保全するため,債務者に属する権利を行使することができる。ただし,債務者の一身に専属する権利は,この限りでない。
2 債権者は,その債権の期限が到来しない間は,裁判上の代位によらなければ,前項の権利を行使することができない。ただし,保存行為は,この限りでない。
(不当利得の返還義務)
第七百三条 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け,そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は,その利益の存する限度において,これを返還する義務を負う。
(悪意の受益者の返還義務等)
第七百四条 悪意の受益者は,その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において,なお損害があるときは,その賠償の責任を負う。
(相続の承認又は放棄をすべき期間)
第九百十五条 相続人は,自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に,相続について,単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし,この期間は,利害関係人又は検察官の請求によって,家庭裁判所において伸長することができる。
2 相続人は,相続の承認又は放棄をする前に,相続財産の調査をすることができる。
(相続の放棄の方式)
第九百三十八条 相続の放棄をしようとする者は,その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
(相続の放棄の効力)
第九百三十九条 相続の放棄をした者は,その相続に関しては,初めから相続人とならなかったものとみなす。
(相続財産法人の成立)
第九百五十一条 相続人のあることが明らかでないときは,相続財産は,法人とする。
(相続財産の管理人の選任)
第九百五十二条 前条の場合には,家庭裁判所は,利害関係人又は検察官の請求によって,相続財産の管理人を選任しなければならない。
2 前項の規定により相続財産の管理人を選任したときは,家庭裁判所は,遅滞なくこれを公告しなければならない。
(不在者の財産の管理人に関する規定の準用)
第九百五十三条 第二十七条から第二十九条までの規定は,前条第一項の相続財産の管理人(以下この章において単に「相続財産の管理人」という。)について準用する。
(相続財産の管理人の報告)
第九百五十四条 相続財産の管理人は,相続債権者又は受遺者の請求があるときは,その請求をした者に相続財産の状況を報告しなければならない。
(相続財産法人の不成立)
第九百五十五条 相続人のあることが明らかになったときは,第九百五十一条の法人は,成立しなかったものとみなす。ただし,相続財産の管理人がその権限内でした行為の効力を妨げない。
(相続財産の管理人の代理権の消滅)
第九百五十六条 相続財産の管理人の代理権は,相続人が相続の承認をした時に消滅する。
2 前項の場合には,相続財産の管理人は,遅滞なく相続人に対して管理の計算をしなければならない。
(相続債権者及び受遺者に対する弁済)
第九百五十七条 第九百五十二条第二項の公告があった後二箇月以内に相続人のあることが明らかにならなかったときは,相続財産の管理人は,遅滞なく,すべての相続債権者及び受遺者に対し,一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において,その期間は,二箇月を下ることができない。
2 第九百二十七条第二項から第四項まで及び第九百二十八条から第九百三十五条まで(第九百三十二条ただし書を除く。)の規定は,前項の場合について準用する。
(相続人の捜索の公告)
第九百五十八条 前条第一項の期間の満了後,なお相続人のあることが明らかでないときは,家庭裁判所は,相続財産の管理人又は検察官の請求によって,相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。この場合において,その期間は,六箇月を下ることができない。
(権利を主張する者がない場合)
第九百五十八条の二 前条の期間内に相続人としての権利を主張する者がないときは,相続人並びに相続財産の管理人に知れなかった相続債権者及び受遺者は,その権利を行使することができない。
(特別縁故者に対する相続財産の分与)
第九百五十八条の三 前条の場合において,相当と認めるときは,家庭裁判所は,被相続人と生計を同じくしていた者,被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって,これらの者に,清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。
2 前項の請求は,第九百五十八条の期間の満了後三箇月以内にしなければならない。
(残余財産の国庫への帰属)
第九百五十九条 前条の規定により処分されなかった相続財産は,国庫に帰属する。この場合においては,第九百五十六条第二項の規定を準用する。

地方税法
(相続による納税義務の承継)
第九条 相続(包括遺贈を含む。以下本章において同じ。)があつた場合には,その相続人(包括受遺者を含む。以下本章において同じ。)又は民法(明治二十九年法律第八十九号)第九百五十一条の法人は,被相続人(包括遺贈者を含む。以下本章において同じ。)に課されるべき,又は被相続人が納付し,若しくは納入すべき地方団体の徴収金(以下本章において「被相続人の地方団体の徴収金」という。)を納付し,又は納入しなければならない。ただし,限定承認をした相続人は,相続によつて得た財産を限度とする。
2 前項の場合において,相続人が二人以上あるときは,各相続人は,被相続人の地方団体の徴収金を民法第九百条から第九百二条までの規定によるその相続分によりあん分して計算した額を納付し,又は納入しなければならない。
3 前項の場合において,相続人のうちに相続によつて得た財産の価額が同項の規定により納付し,又は納入すべき地方団体の徴収金の額をこえている者があるときは,その相続人は,そのこえる価額を限度として,他の相続人が同項の規定により納付し,又は納入すべき地方団体の徴収金を納付し,又は納入する責に任ずる。
4 前三項の規定によつて承継する義務は,当該義務に係る申告又は報告の義務を含むものとする。
(相続人からの徴収の手続)
第九条の二 納税者又は特別徴収義務者(以下本章(第十三条を除く。)においては,第十一条第一項に規定する第二次納税義務者及び第十六条第一項第六号に規定する保証人を含むものとする。)につき相続があつた場合において,その相続人が二人以上あるときは,これらの相続人は,そのうちから被相続人の地方団体の徴収金の賦課徴収(滞納処分を除く。)及び還付に関する書類を受領する代表者を指定することができる。この場合において,その指定をした相続人は,その旨を地方団体の長に届け出なければならない。
2 地方団体の長は,前項前段の場合において,すべての相続人又はその相続分のうちに明らかでないものがあり,かつ,相当の期間内に同項後段の届出がないときは,相続人の一人を指定し,その者を同項に規定する代表者とすることができる。この場合において,その指定をした地方団体の長は,その旨を相続人に通知しなければならない。
3 前二項に定めるもののほか,第一項に規定する代表者の指定に関し必要な事項は,政令で定める。
4 被相続人の地方団体の徴収金につき,被相続人の死亡後その死亡を知らないでその者の名義でした賦課徴収又は還付に関する処分で書類の送達を要するものは,その相続人の一人にその書類が送達された場合に限り,当該被相続人の地方団体の徴収金につきすべての相続人に対してされたものとみなす。
(固定資産税の納税義務者等)
第三百四十三条 固定資産税は,固定資産の所有者(質権又は百年より永い存続期間の定めのある地上権の目的である土地については,その質権者又は地上権者とする。以下固定資産税について同様とする。)に課する。
2 前項の所有者とは,土地又は家屋については,登記簿又は土地補充課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に所有者(区分所有に係る家屋については,当該家屋に係る建物の区分所有等に関する法律第二条第二項の区分所有者とする。以下固定資産税について同様とする。)として登記又は登録されている者をいう。この場合において,所有者として登記又は登録されている個人が賦課期日前に死亡しているとき,若しくは所有者として登記又は登録されている法人が同日前に消滅しているとき,又は所有者として登記されている第三百四十八条第一項の者が同日前に所有者でなくなつているときは,同日において当該土地又は家屋を現に所有している者をいうものとする。
3 第一項の所有者とは,償却資産については,償却資産課税台帳に所有者として登録されている者をいう。
4 市町村は,固定資産の所有者の所在が震災,風水害,火災その他の事由によつて不明である場合においては,その使用者を所有者とみなして,これを固定資産課税台帳に登録し,その者に固定資産税を課することができる。
(以下略)

法律相談事例集データベースのページに戻る

法律相談ページに戻る(電話03−3248−5791で簡単な無料法律相談を受付しております)

トップページに戻る