新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース 質問:私は,美術品等の販売を業務とする会社に勤めている者です。私は普段,会社内で美術品の販売促進について企画を考えるといった業務を行っています。ただ,私の会社は,年に数回,ホテルの会場等を貸し切って美術品の展覧会兼販売会(以下,単に「展覧会」といいます。)を開いており,このときばかりは,私も販売要員として展覧会場で働き,お客さんに美術品を紹介して売るといった業務に携わります。その日は,ずっと展覧会場内で働くことになり,会場を離れることはありません。また,展覧会場の開場及び閉場時間は決まっていますし,会社の部長や課長といった管理職の人も会場に常駐しています。ただ,展覧会は,会社が重視しているイベントなので開催時間が長く,私を含めた社員は,会社で定められている所定労働時間(8時間)よりも長い時間働くことになってしまいます。それにもかかわらず,会社は,所定労働時間外の賃金を払ってくれません。先日,転職することを決めたので,私は会社に対し,今まで支払ってもらっていなかった展覧会日の所定労働時間外の賃金を請求しました。しかし,会社は,会社外での労働時間は把握できないし,法律上,所定労働時間働いたとみなされることになっているから,そのような賃金は発生しないと反論してきます。私の主張は認められないのでしょうか。 解説: 第1(問題点) 第2(事業場外労働のみなし制について) (2)趣旨 2 みなし制に伴う法的効果 (2)例外 (3)帰結 3 みなし制適用の要件 (1)@について (2)Aについて (ア)何人かのグループで事業場外労働に従事し,その中に労働時間を管理する者がいる場合 ウ 事業場外労働のみなし制の適用の有無が争点となるケースでは,本要件Aが争われることが多いと考えられます。なぜなら,労働時間の算定が困難であるか否かは,諸事情を総合考慮して判断せざるを得ず,具体的事実に対する本要件の該当性について,様々な評価が可能となると思われるからです。 (1)行政解釈からの検討 (2)類似の裁判例 6 結論 <参考文献> <参考条文> <参考判例>
No.1277、2012/5/30 13:48 https://www.shinginza.com/qa-roudou.htm
【労働・事業場外労働のみなし制とその適用例外・東京地方裁判所平成9年8月1日判決(ぽるぷ事件)】
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回答:
1.事業場外(会社外)で労働した場合について,労働基準法上,労働時間の把握が困難なときには所定労働時間働いたものとみなすという,事業場外労働のみなし制が定められています。これが適用されてしまうと,実際に所定労働時間を超えて働いたとしても,所定労働時間しか労働していないことになり,所定労働時間を超えて労働をしたとしても,当該時間の賃金も発生しないことになってしまいます。
2.ただ,事業場外労働のみなし制は,事業場外の労働であっても労働時間の把握が可能な場合には適用されないと考えられています。展覧会日の労働状況を考えると,相談者の方には事業場外労働のみなし制が適用されず,所定労働時間外の賃金を請求できる可能性が十分にあります。
3.労働法に関連する事例集論文1201番,1141番,1133番,1062番,925番,915番,842番,786番,763番,762番,743番,721番,657番,642番,458番,365番,73番,5番,手続は,995番,879番参照。
(労働契約 に関する法規解釈の指針)
先ず、労働法における雇用者(使用者),労働者の利益の対立について説明します。本来,資本主義社会において私的自治の基本である契約自由の原則から言えば,労働契約は使用者,労働者が納得して契約するものであれば特に不法なものでない限り,どのような内容であっても許されるようにも考えられますが,契約時において使用者側は経済力,情報力からも雇う立場上有利な地位にあるのが一般的ですし,労働力の対価として賃金をもらい日々生活する関係上,労働者は長期間にわたり拘束する契約でありながら,常に対等な契約を結べない危険性を有しています。又, 労働契約 は労働者が報酬(賃金)を得るために使用者の指揮命令に服し従属的な時間的拘束関係にあることが基本的特色(民法623条)であり,契約後も自ら異議を申し出ることが事実上阻害され不平等な取扱いを受ける可能性を常時有しています。仮に労働契約の内容に不満であっても,労働者側は,事実上退職する自由しか与えられないことになってしまいます。
このような状況は個人の尊厳を守り,人間として値する生活を保障した憲法13条,平等の原則を定めた憲法14条の趣旨に事実上反しますので,法律は民法の雇用契約の特別規定である労働法等(労働組合法,労働関係調整法,労働基準法の基本労働三法,労働契約法)により,労働者が雇用主と対等に使用者と契約でき,契約後も実質的に労働者の権利を保護すべく種々の規定をおいています。
法律は性格上おのずと抽象的規定にならざるをえませんから,その解釈にあたっては使用者,労働者の実質的平等を確保するという観点からなされなければならない訳です。使用者側の利益は営利を目的とする経営する権利(憲法29条の私有財産制に基づく企業の営業の自由,経済的利益確保の自由)であるのに対し,他方労働者の利益は毎日生活し働く権利ですし(憲法25条,生存権),個人の尊厳確保(憲法13条)に直結した権利ですから,使用者側の指揮命令権,労働者側の従属性が存在するとしてもおのずと力の弱い労働者の賃金および労働条件,退職等の具体的利益を実質的に侵害する事は許されないことになります。従って,解釈に当たっては,以上の趣旨から行われ,具体的法規がない場合は,積極的に私的自治の原則に内在する,信義誠実の原則,権利濫用禁止の原則,個人の尊厳保障の法理(憲法12条,13条,民法1条,1条の2)が発動されなければならない分野です。
ちなみに,労働基準法1条も「労働条件は,労働者が人たるに値する生活を営むための必要を満たすべきものでなければならない。」第2条は「労働条件は労働者と使用者が,対等の立場において決定すべきものである。」と規定しています。以上の趣旨から契約上,法文上の形式的文言にとらわれることなく使用者側,労働者側の種々の利益を考慮調整し実質的対等性を確保する観点から労働法を解釈し,労働契約の有効性を判断することになります。
労働基準法では,就業規則において,労働時間の開始時と終了時を示すものとして「始業時」及び「終業時」を記載しなければならないとされ(労働基準法(以下「労基法」といいます。)89条1項1号),所定労働時間が決められているのが通常です。そして,所定時間を超えて労働した場合,当該労働が実質を伴うのであれば,所定労働時間外の労働についても賃金請求権が発生すると考えられます。
しかし,労基法では,事業場外で行った労働については,所定労働時間労働したとみなすという,みなし制の規定が存在します。これによれば,事業場外労働については,実際に所定労働時間を超えて労働したとしても,同部分の賃金請求権が発生しないことになってしまいます(なお,所定労働時間を超えた労働が法定労働時間を超える労働となっていた場合,時間外労働の割増賃金についても問題となりますが,今回の解説では,解説を複雑にしないため,所定労働時間外の賃金請求のみについて記載します。)。
そこで,事業場外労働のみなし制の規定につき,本件のような場合にも適用があるのかを以下で考えていきたいと思います。
1 事業場外労働のみなし制とは
(1)概要
「労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において,労働時間を算定し難いときは,所定労働時間労働したものとみなす」(労働基準法(以下「労基法」といいます。)38条の2第1項)とされているように,労働場所である事業場の外で業務を行った場合に,所定労働時間働いたものとみなされる制度です。
この規定の趣旨は,労働者が事業場外で行う労働で,労働時間の算定が困難な場合の算定方法について定めたもので,労働時間を実労働時間によって算定するのが原則ですが,こうした労働については使用者の具体的な指揮監督が及ばず,労働時間の算定が困難なことがあるために,みなし制を採り,使用者の労働時間算定義務を免除したものであるとされています。労働契約の基本的性格は,労働者が,使用者の指揮命令に服し,従属的に拘束されて自らの労働力を提供し,その対価として賃金請求権を取得することにありますから(民法623条),事業外労働の場合,通常指揮命令が及ばす,時間的な拘束が事実上及ばず算定できないので実労働時間として計算しないというものです。
(1)原則
所定労働時間労働したものとみなされますので(労基法38条の2第1項本文),所定労働時間を基に算定された賃金の支払請求権のみ発生することになります。
この所定労働時間とは,就業規則等において定められている始業時から終業時までの時間(所定就業時間)から,所定の休憩時間を引いたものとなります。例えば,出社時刻午前9時,退社時刻午後6時,休憩時間1時間の場合,所定労働時間は8時間となります。
もっとも,例外として,通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合には,当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなすとされています(労基法38条の2第1項ただし書)。そのため,通常必要とされる労働時間を基に算定された賃金支払請求権が発生します。このことから,本みなし制度では,みなし労働時間数をできるだけ実際の労働時間数に近づけるようにみなし方が定められているものといわれています。
このように,みなし制が適用されることによって,原則として,労働者は所定労働時間働いたものとみなされるため,所定労働時間外の賃金請求権が発生しないことになってしまいます。例外の場合には所定労働時間外の賃金請求権が発生する余地はありますが,みなし労働時間よりも実労働時間が長かったとしても,みなし労働時間を超える分の賃金請求権は発生しないことになります。
@「労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合」
かつ
A「労働時間を算定し難いとき」
にみなし制が適用されることになります。
恒常的・常態的な事業場外労働のみならず,一時的・臨時的な事業場外労働も含むとされています。例えば,取材記者,外勤営業社員等が挙げられます。また,労働時間の全部を事業場外で労働する場合のみならず,その一部を事業場外で労働する場合も含むとされています。
事業場外での労働か否かは,客観的な労働の態様から明らかになることが多いので,@の要件については,あまり争いになることはありません。
ア 文字通り,事業場外労働について労働時間の算定が困難でなければなりません。事業場外労働であっても,労働時間の算定が可能である場合には,本条の適用はありません。
イ 行政解釈では,次のような場合には,使用者の具体的な指揮監督が及んでいるので,労働時間の算定は可能であるとされています(昭63.1.1基発1号)。いずれもみなし制の制度趣旨から当然の解釈と考えられます。
(イ)無線やポケットベル等によって随時使用者の指示を受けながら労働している場合
(ウ)事業場で訪問先や帰社時刻等,当日の業務の具体的指示を受けた後に,事業場外で指示どおりに業務に従事し,その後事業場に戻る場合
争点に浮上する具体的ケースとしては,労働者側が使用者側に対し,所定労働時間外の賃金支払請求を行ったとき,使用者側が抗弁として,労働時間の算定困難によるみなし制の適用を主張して,算定の基礎となる労働時間の短縮を求めることが多いと考えられます。
5 本件に対する具体的検討
上記行政解釈によれば,「(ア)何人かのグループで事業場外労働に従事し,その中に労働時間を管理する者がいる場合」は,労働時間の算定が可能であるとして,事業場外労働のみなし制が適用されないこととなっています。
そして,本件では,展覧会場に会社の部長や課長といった管理職の人も会場に常駐しているとのことですので,労働時間を管理する者が存在するといえ,上記(ア)に類似する事案であるといえます。
さらに,相談者の方は,ずっと展覧会場内で働いていて会場を離れることがなかった上,展覧会場の開場及び閉場時間は決まっているという事情もあるので,相談者の方の労働時間の把握は比較的容易であったことも窺えます。
そうすると,本件では,上記行政解釈の(ア)の場合に類似するものであり,そのほかにも労働時間の把握が比較的容易な状況が存在したといえるので,本件は,業務に時間的場所的限定が存在し,使用者側の具体的指導監督可能性があることから,労働時間の算定が困難であるとは認められず,事業場外労働のみなし制の適用を否定される可能性が高いと考えられます。
本件の類似事件に対する判断として,ぽるぷ事件の裁判例(東京地方裁判所平成9年8月1日判決)が挙げられます。この裁判例では,出版社の社員が,年に数回,ホテル等で行われる会社の絵画の展覧会で労働したという事案で,@労働者が原則として会場を離れることはなかった,A展覧会の会場の開閉時間は定められている,B支店長等は会場に赴いているといった本件と似た事情が存在します。
この裁判例では,まず,事業場外労働のみなし制について,「…本来使用者には労働時間の把握算定義務があるが,事業場の外で労働する場合にはその労働の特殊性から,すべての場合について,このような義務を認めることは困難を強いる結果になることから,みなし規定による労働時間の算定が規定されているものである。したがって,本条の規定の適用を受けるのは労働時間の算定が困難な場合に限られる…」として,事業場外労働のみなし制の適用は,労働時間の算定が困難な場合に限られるという判断枠組みを示しています。
そして,上記判断枠組みを前提とした具体的検討では,「本件における展覧会での展示販売は,…,業務に従事する場所及び時間が限定されており,被告の支店長等も業務場所に赴いているうえ,会場内での勤務は顧客への対応以外の時間も顧客の来訪に備えて待機しているもので休憩時間とは認められないこと等から,被告がプロモーター社員らの労働時間を算定することが困難な場合とは到底言うことができず,労基法三八条の二の事業場外みなし労働時間制の適用を受ける場合でないことは明らかである」として,事業場外労働のみなし制の適用を否定しています。
以上から,本件では,使用者側の管理職が展覧会場に存在し,具体的指導監督可能性があって労働時間の把握が可能であること,業務に時間的場所的限定が存在することといった事情を考慮すれば,労働時間の算定が困難であるとは認められないと考えられます。 したがって,本件では,事業場外労働のみなし制の適用を否定される可能性が高いと考えられ,相談者による所定労働時間外の賃金請求が認められる可能性は十分存在すると考えられます。
菅野和夫「労働法」第9版
東京大学労働法研究会編「注釈労働基準法」下巻
厚生労働省労働基準局編「労働基準法」上
民法
(雇用)
第六百二十三条 雇用は,当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し,相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって,その効力を生ずる。
労働基準法
(時間外,休日及び深夜の割増賃金)
第三十七条 使用者が,第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し,又は休日に労働させた場合においては,その時間又はその日の労働については,通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし,当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては,その超えた時間の労働については,通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
第三十八条の二 労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において,労働時間を算定し難いときは,所定労働時間労働したものとみなす。ただし,当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては,当該業務に関しては,厚生労働省令で定めるところにより,当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす。
2 前項ただし書の場合において,当該業務に関し,当該事業場に,労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合,労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは,その協定で定める時間を同項ただし書の当該業務の遂行に通常必要とされる時間とする。
3 使用者は,厚生労働省令で定めるところにより,前項の協定を行政官庁に届け出なければならない。
(作成及び届出の義務)
第八十九条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は,次に掲げる事項について就業規則を作成し,行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても,同様とする。
一 始業及び終業の時刻,休憩時間,休日,休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
東京地方裁判所平成9年8月1日判決(ぽるぷ事件)
「1 被告は,就業規則三二条二項但書が,プロモーター社員につき「事業所外勤務のため,前項の終業時刻を越えた場合,通常の労働時間勤務したものとみなす」と規定しているので,プロモーター社員である原告薄及び同小峰には,展覧会における展示販売の場合の所定時間外労働は発生しない旨を主張する。そこで,右展示販売が労基法三八条の二で規定する要件に該当するか否かを検討する。
2 展覧会における展示販売の状況等については,証拠…及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(一)被告の本社又は各支店は,年間に数回程度,画廊やホテル等の特定の会場を設けて絵画の展覧会を行い(会場の開閉時間は定められている),右会場内でプロモーター社員らにより,絵画の展示販売を行っている。
(二)展覧会における展示販売は,プロモーター社員らの通常の販売活動をより容易にして売上を増加させること,そして被告の売上を増加させることを目的としており,被告の業務として行われている。被告は,展覧会の展示販売を行うに際し,プロモーター社員に参加するように働き掛けるものの,参加を強制することはなく,参加しないことによりペナルティーを課すことはない。
(三)被告は,展覧会の企画の段階で,売上目標,販売人数,顧客の予想等を具体的に立案し,プロモーター社員らが顧客に招待状や案内状を送って集客に努めるように推進している。また,被告の支店長等は,現場責任者として展覧会の会場に赴いている。
(四)プロモーター社員は,展覧会での展示販売に参加する場合,会場内で顧客の対応をするため,原則として会場を離れることはなかった。
3 労基法三八条の二は,事業場外で業務に従事した場合に労働時間を算定し難いときは所定労働時間労働したものとみなす旨を規定しているところ,本来使用者には労働時間の把握算定義務があるが,事業場の外で労働する場合にはその労働の特殊性から,すべての場合について,このような義務を認めることは困難を強いる結果になることから,みなし規定による労働時間の算定が規定されているものである。したがって,本条の規定の適用を受けるのは労働時間の算定が困難な場合に限られるところ,本件における展覧会での展示販売は,前記二2で認定のとおり,業務に従事する場所及び時間が限定されており,被告の支店長等も業務場所に赴いているうえ,会場内での勤務は顧客への対応以外の時間も顧客の来訪に備えて待機しているもので休憩時間とは認められないこと等から,被告がプロモーター社員らの労働時間を算定することが困難な場合とは到底言うことができず,労基法三八条の二の事業場外みなし労働時間制の適用を受ける場合でないことは明らかである(したがって,就業規則三二条二項但書のプロモーター社員について,事業場外での業務について,通常の労働時間勤務したものとみなす旨の規定は,労働時間の算定が困難な場合に限っての規定と限定して解釈する限りにおいて有効と認められる)。なお,被告はプロモーター社員が展覧会での展示販売へ参加するか否かは自由であり,また展示販売の時間中は自由に利用できる休憩時間を増やし,労働時間を増やすことのないように指導していると主張するが,展示販売は被告の業務として行われているものであるし,プロモーター社員が展示販売業務に従事しているか否かを把握して労働時間を算定することは,右のとおり本来容易に出来ることであるから,この点に関する被告の主張は理由がない。
4 したがって,原告薄及び同小峰には事業場外みなし労働時間制の適用により,展覧会における展示販売の場合の所定時間外労働は発生しない旨の被告の主張は理由がない。」