新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース 質問:私は、かわいがってくれていた伯父から、生前、「葬式から何からして欲しい。お前しか頼む人がいない。残った分は全部お前にあげる。孫は死んだ息子の退職金をもらっているから関係ない。」と言われ、通帳と印鑑を預かりました。その言いつけに従い、亡くなった時にはお葬式を手配し、残りをすべて使わせてもらいました。伯父がこのように言っていたのに、最近突然、伯父の相続人という孫から、伯父の預金を渡せ、と請求されています。この請求に応じないといけないのでしょうか。 解説: 2(同種事例を扱った判例、高松高裁平成22年8月30日、原審松山地裁平成21年2月20日の存在と解説) (2)第一審判決について (3)控訴審判決について (4)両判決の比較 3(最後に) ≪参照条文≫ 民法 ≪判例参照≫ 高松高裁平成22年8月30日判決
No.1281、2012/6/6 16:51
【民事・通帳と印鑑を手渡し葬式等を頼んだ行為は委任かそれとも負担付贈与か・高松高裁平成22年8月30日判決】
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回答:
1.本件で問題となる点は、伯父さんとあなたとの契約が贈与(預金をあなたにあげるという契約)だったのか、委任契約(葬儀の費用についておじさんの預金を管理することを依頼された契約)だったのか、という点です。贈与の場合はあなたが、伯父さんから、お葬式をあげることを負担とした預金債権についての負担付き贈与を受けたということになり、委任契約とすれば、伯父さんの死後の葬式等の事務の履行を委任して管理処分権を与えられたことになります。
2.判断は個別の事情によりますが、「@葬式から何からして欲しい。お前しか頼む人がいない。A残った分は全部お前にあげる。孫は死んだ息子の退職金をもらっているから関係ない。」というおじさんの言葉についてすべて立証できれば、負担付き贈与と認められるでしょう。その場合、相続人からの遺留分減殺請求権が問題となるだけであって、一応は預金の帰属を主張できます。しかしながら、Aについて証拠がなく立証できない場合は葬儀等を委任しただけと判断され、委任契約の履行に必要な範囲を超えた預金の処分は認められず、超えた金額は遺産となり、相続人の返還請求に応じないといけないことになります。
1 (問題点 委任者の死後の事務を対象とする負担付き贈与契約及び委任契約の有効性)
本件が贈与契約と認められるとしても、伯父様がご自分のお葬式についてあなたに依頼していることから、単なる贈与契約ではなく、負担付の贈与契約となります(民法553条)。負担付贈与契約については、負担となっている、「伯父様がご自分の死後のお葬式についてあなたに委任した行為」が、民法上有効と認められるかが問題となります。すなわち、伯父様とあなたとの「葬式から何からして欲しい。」という約束は民法上の委任契約と考えられますが、委任契約は委任者の死亡により契約を終了することとされていますので、委任者である伯父様の死亡により委任契約が終了してしまうことになり、そのような委任契約は無効であり、負担となる契約が無効である以上贈与契約も無効になるではとも考えられます。
この点については委任契約における契約終了事由は、委任契約が当事者間の信頼関係に基づいて締結されるものであることから定められたものであって、委任者が死亡後の事務を特に委任した場合には、委任者の死亡により委任契約は終了しないと考えられています。
したがって、伯父様とあなたとの「葬式から何からして欲しい。お前しか頼む人がいない。残った分は全部お前にあげる。」というお約束が負担付き贈与と判断されれば、有効な契約と認められます。問題は贈与があったか否かという事実の認定の問題となります。
(1)負担付き贈与であれば、お葬式をきちんと執り行うことで負担を履行したといえ、預金の残額は贈与を受けたものと主張できますが、死後の葬式の執行の委任であれば、あなたは預金のうちその事務処理に要した費用以外をもらうことはできず、相続財産として相続人に帰属することとなります。そこで、負担付き贈与か委任かの判断が大きな問題となります。
同様の事案について、負担付き贈与と解した第一審(松山地裁平成21年2月20日判決)と、その判断を覆して委任契約と解した控訴審(高松高裁平成22年8月30日判決)が近時出されました。どのような事情により判断が分かれたのか、以下検討いたします。
前提としては、死亡したAとその姪Bは長年にわたり親しくしていた反面、Aの唯一の相続人に当たるCはAとはほとんど交流がなかったという事情と、Aの娘に統合失調症で入院生活にあった成人の娘Dがいた、という事情があります。
第一審判決は、Aが言った「葬式から何からして欲しい。Dの世話をして欲しい。Bしか頼む人がいない。・・・残った分はBにあげるから。Cには父親が亡くなった時に退職金等を渡しているので関係ない、方を付けている。」という言葉の存在と、それに基づいてBが通帳と印鑑を受け取り、Aの葬儀を執り行ったうえ、今後の供養法事もBが行い、その費用をCに対し請求する意思がないことを認定しました。そしてそれに基づき、「Aの合理的な意思を推認すれば、Aは、本来、A及びその妻に対する何らの義務のないBに対して、Aが死亡した後のA関係の一切の事務の処理と精神分裂病に罹患しているDの世話を依頼し、その費用及び報酬として、A名義の預金を贈与(負担付き贈与)したと認めるのが相当である」と判断しました。
その結果、BはAの預金を負担付きで贈与されたこととされ、Bは預金について目的を問わず使用することが認められるとしました。
第一審判決に対しCが控訴して出された控訴審判決では、AからのBへの「葬式から何からして欲しい。Dの世話をして欲しい。Bしか頼む人がいない。・・・残った分はBにあげるから。Cには父親が亡くなった時に退職金等を渡しているので関係ない、方を付けている。」という言葉のうち、後半部分である「残った分はBにあげるから。原告には父親が亡くなった時に退職金等を渡しているので関係ない、方を付けている。」という部分につき、信用できないとして採用しませんでした。これにより、Aの意思について「Aは、被控訴人BにA名義の通帳類と印鑑を渡して、Aの葬儀等と将来にわたってDの世話をすることを委託し、これを了解した被控訴人Bに対して、上記事務を履行するためにA名義の預金全部について払戻等を行うことができる管理処分権を与えたものと認められる。」と推認し、結果として、AB間においてAの死亡によっては終了しない委任契約を締結したものと認めました。
その結果、BはAの預金の管理について善管注意義務を負い、委託された趣旨、すなわち、葬儀の執行及びそれに関する費用ならびにDの生活費のための正当な支出のみがBの権限の範囲内となりました。そして、Bの受任者としての権限の範囲を超えた預金の払い戻しや支出は認められず、善管注意義務違反を理由にC対する損害賠償責任があると判断されました。
両判決は、AからのBへの委託の趣旨をどのように認めるかという点で判断を異にしたものと見受けられます。すなわち、「残った分はBにあげるから。Cには父親が亡くなった時に退職金等を渡しているので関係ない、方を付けている。」という部分が存在したのであれば負担付き贈与、その部分が存在しなかったから委任、と判断されたのであって、事実認定により結論が分かれたと評価できます。
以上のとおり、あなたのご相談は、伯父様から預金をあげると言われた際の個々の事情により、負担付き贈与とも委任とも捉えることができます。贈与契約であるという主張立証責任はあなたにあります。亡くなった伯父さんとの口約束しかないとすると、直接的、客観的な証拠は少ないでしょうから、さまざまな間接事実を主張立証する必要があります。そこで、事情を包み隠さず弁護士にご相談され、今後の対応を検討されることをお勧めいたします。
(履行遅滞等による解除権)
第五百四十一条 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。
(贈与)
第五百四十九条 贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
(負担付贈与)
第五百五十三条 負担付贈与については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、双務契約に関する規定を準用する。
(委任)
第六百四十三条 委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
(受任者の注意義務)
第六百四十四条 受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。
(受任者の金銭の消費についての責任)
第六百四十七条 受任者は、委任者に引き渡すべき金額又はその利益のために用いるべき金額を自己のために消費したときは、その消費した日以後の利息を支払わなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。
(受任者の報酬)
第六百四十八条 受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない。
2 受任者は、報酬を受けるべき場合には、委任事務を履行した後でなければ、これを請求することができない。ただし、期間によって報酬を定めたときは、第六百二十四条第二項の規定を準用する。
3 委任が受任者の責めに帰することができない事由によって履行の中途で終了したときは、受任者は、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。
(受任者による費用の前払請求)
第六百四十九条 委任事務を処理するについて費用を要するときは、委任者は、受任者の請求により、その前払をしなければならない。
(受任者による費用等の償還請求等)
第六百五十条 受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。
2 受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる債務を負担したときは、委任者に対し、自己に代わってその弁済をすることを請求することができる。この場合において、その債務が弁済期にないときは、委任者に対し、相当の担保を供させることができる。
3 受任者は、委任事務を処理するため自己に過失なく損害を受けたときは、委任者に対し、その賠償を請求することができる。(委任の終了事由)
第六百五十三条 委任は、次に掲げる事由によって終了する。
一 委任者又は受任者の死亡
二 委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと。
三 受任者が後見開始の審判を受けたこと。
微妙な事実認定と思われる。
判旨抜粋
第三 当裁判所の判断
「一 認定事実
前記前提事実並びに《証拠略》を総合すると、以下の事実を認めることができる。
(1)被控訴人花子は、竹夫の姉松子の四女で、幼いころから竹夫に可愛がられ、竹夫の世話で松夫と結婚した。松夫と被控訴人花子が宇摩郡新宮村(現在の四国中央市新宮町)で生活していた時期には、竹夫は隣家で生活しており、その後に被控訴人花子が川之江市(現在の四国中央市川之江町)で生活を始めると、竹夫も同市内の市営住宅に転居してくるなど、被控訴人花子と竹夫は親密な関係を維持していた。
(2)控訴人の母花江は、控訴人の出生の約一年後の昭和五一年二月、控訴人の父一夫と離婚した。控訴人の親権者となった花江は、大阪府高槻市内の実家に戻り、健康保険組合に勤務しながら、控訴人を育てた。一夫は、教員を務めており、離婚後も時々控訴人に会いに来ていたが、昭和五七年二月に死亡した。一夫の死亡退職金約三一〇万円は、一夫の唯一の相続人である控訴人が受領した。
控訴人及び花江と竹夫及び梅子とは、一夫の死亡後も、手紙や写真のやり取り、入学祝いやお年玉等の送金などの交流があり、昭和六二年三月には、花江、控訴人、竹夫及び梅子の四人で四国内を小旅行したこともあった。しかし、その交流はさほど親密なものとはいい難く、平成九年五月に竹夫が死亡した際には、控訴人が香典を送付して弔電を打ったものの、控訴人側の関係者で葬儀に出席した者はいなかった。
(3)竹夫の一人娘の梅子は、大学を卒業したころ統合失調症を発症して、入退院を繰り返しており、平成五年以降では、〔1〕同年四月八日から同年六月一四日まで、〔2〕平成六年一二月二日から平成七年三月三一日まで、〔3〕平成八年一二月一三日から平成九年四月七日まで、いずれも山内病院に入院していた。専ら独りで梅子の世話をしていた竹夫は、同月一八日、梅子が山内病院に医療保護入院すると、自らも山内病院に入院した。
(4)入院後も体調の悪かった竹夫は、平成九年五月初めころ、見舞いに訪れた被控訴人花子に対し、自分の葬式と梅子の世話をしてほしいと頼んで、竹夫名義の普通預金〔1〕及び定期預金〔2〕ないし〔6〕の通帳類と印鑑を渡した。
(5)被控訴人花子は、平成九年五月一〇日に竹夫が死亡すると、竹夫の葬儀等を執り行った。そして、被控訴人銀行の元行員の戊田二夫を介して、被控訴人銀行に竹夫名義の定期預金の中途解約を依頼した上、同年五月一三日、被控訴人銀行川之江支店を独りで訪れ、同支店の次長に対し、竹夫には梅子のほかに身寄りがおらず、預金その他の財産の管理をすべて自分が任されていること、葬式等の費用が必要であることなどを説明して、定期預金〔2〕、〔5〕及び〔6〕を中途解約し、預金の払戻しを受けた。被控訴人花子は、これらの定期預金から払戻しを受けた金銭をもって、葬式等の費用に充てた。
その後も被控訴人花子は、別紙「丙川竹夫解約・払出預金明細」記載のとおり、竹夫名義の預金の払戻しを受けた。
(6)山内病院の担当者は、梅子に支給されるべき遺族共済年金の申請手続を行い、平成九年五月二九日、年金等の受領のため、被控訴人銀行の金生支店に梅子名義の普通預金〔7〕を開設した。その後、同預金には、同年六月一一日から平成一五年一二月一五日にかけて、愛媛県や川之江市から梅子への年金等が振り込まれた。山内病院の担当者は、普通預金〔7〕の通帳を管理し、梅子の入院費と小遣いに充てる金銭を定期的に払い戻していたが、平成一一年七月一二日及び平成一三年三月二二日、梅子のための立替金があるとする被控訴人花子の要求を受けて、同預金から別紙「引出一覧表」中の「番号」欄一及び二の各「引出額」欄記載の金員の払戻しを受け、これを被控訴人花子に交付した。
山内病院の担当者は、同年一一月二七日、同通帳を被控訴人花子に交付し、以後、被控訴人花子は、同預金から別紙「引出一覧表」中の「番号」欄三ないし二六の各「引出額」欄記載の金員の払戻しを受けた。被控訴人花子は、同通帳の交付を受けてから、同通帳等から払い戻した金銭等をもって、梅子の入院費や小遣いに充てた。
(7)梅子は、平成九年四月一八日から平成一五年一一月一〇日まで、山内病院に継続して入院していたが、同日、公立学校共済組合四国中央病院に転院し、同年一二月二〇日に死亡した。
二 事実認定の補足説明
(1)被控訴人花子本人は、竹夫名義の通帳と印鑑を受け取った時の状況について、〔1〕竹夫が死亡する少し前に、竹夫から、竹夫名義の通帳と印鑑を渡され、「葬式から何からして欲しい。梅子の世話をして欲しい。被控訴人花子しか頼む人がいない。」旨頼まれた、〔2〕その際、「残った分は被控訴人花子にあげるから。控訴人には一夫が世くなった時に退職金を渡しているので関係ない、かたを付けている。」旨の説明を受けた旨供述する。
(2)上記供述のうち〔1〕については、上記一で認定したとおり、竹失と被控訴人花子が親密な関係にあり、他方で竹夫と控訴人とはさほど親密な関係にはなかったこと、竹夫の死亡後被控訴人花子は竹夫の葬儀等を執り行い、梅子の死亡までその世話をしたことなどを考慮すると、その供述内容が実状に合致しているところから、信用することができる。
しかし、上記〔2〕の供述については、〔ア〕一夫の退職金の支払を受ける権利を有する者は一夫の唯一の相続人である控訴人のみであるから、控訴人が一夫の退職金を受領したことは法律上当然のことであり、また、控訴人に対する退職金の支払に竹夫が関与した形跡は証拠上見当たらないこと、〔イ〕被控訴人花子が竹夫から上記依頼を受けた平成九年五月当時、梅子はいまだ五六歳で統合失調症以外に特に健康面の問題があった様子はうかがわれず、他方で被控訴人花子は梅子よりも一二歳年上で、上記当時既に健康面の問題もあったことからすると、竹夫が被控訴人花子に対して梅子が死亡した時点での残金を被控訴人花子に贈与する旨述べるのは不合理かつ不自然であることなどに照らすと、たやすく信用することができず、他にこれを裏付ける的確な証拠もないから、採用することができない。
三 竹夫名義の預金の負担付贈与について
上記二において判示したとおり、竹夫から預金の負担付贈与を受けたとする趣旨の被控訴人花子の供述は採用することができず、他に被控訴人らの主張を認めるに足りる証拠はないから、竹夫名義の預金の負担付贈与に関する被控訴人らの主張はいずれも採用しない。
四 竹夫名義の預金の死後の事務処理の委任について
上記一において認定したところによれば、竹夫は、被控訴人花子に竹夫名義の通帳類と印鑑を渡して、竹夫の葬儀等と将来にわたって梅子の世話をすることを委託し、これを了解した被控訴人花子に対して、上記事務を履行するために竹夫名義の預金全部について払戻等を行うことができる管理処分権を与えたものと認められる。そして、上記事務の内容に照らすと、当該委任契約においては竹夫の死亡によっては契約が終了しないことが合意されていたものと認めるのが相当である。
五 控訴人の被控訴人銀行に対する預金返還請求権の存否について
上記四によれば,被控訴人花子は竹夫名義の預金の管理処分権を有しており、上記預金の全部について払戻しを受ける権限があるから、被控訴人花子の要求に応じて被控訴人銀行が上記預金の払戻しをしたことによって、上記預金債権はすべて消滅している。
したがって、控訴人の被控訴人銀行に対する預金返還請求は理由がない。
六 竹夫名義の預金に関する被控訴人乙山らの責任について
上記四によれば、被控訴人花子は竹夫からの委託の趣旨に従い、善良な管理者としての注意義務をもって、竹夫名義の預金を管理すべき義務がある。
被控訴人花子は、竹夫名義の預金の払戻金は梅子名義の預金の払戻金と渾然一体として管理され、水道光熱費、病院関係費、葬式関係費、租税公課、梅子の小遣い、家屋改築修理費、交際接待費、梅子の生活費、雑費として、いずれも竹夫又は梅子のための費用に充てられたと主張するが、《証拠略》によれば、竹夫名義の預金からの正当な支出として認められる額は、次のとおり四四五万五〇四一円のみである。
(1)梅子の病院関係費(平成九年五月一九日支払分) 四万五四三〇円
(2)竹夫の葬式関係費 三二六万四六四七円
内訳については、別紙「竹夫葬式関係費一覧」記載のとおり
(3)軽自動車税(平成九、一一年度) 二一〇〇円
(4)固定資産税(平成一一年度) 四四〇〇円
なお、平成一二年度以降の固定資産税については、山内病院において梅子のための保管金から納付された。
(5)梅子の国民健康保険料(平成九年度第五期) 二六〇〇円
なお、平成一一年度以降の国民健康保険料については、同年度第三期ないし第一〇期分も含めて、山内病院において梅子のための保管金から納付された。
(6)竹夫の市県民税(平成九年度) 一万三八〇〇円
(7)梅子の国民年金保険料(平成一〇年三月分) 一万二八〇〇円
(8)電話料金(平成九年六月分、一一年一月分) 三三八〇円
なお、平成九年五月分まで、同年七月分から平成一〇年一二月分まで、平成一一年二月分から六月分までの電話料金は竹夫名義の普通預金〔1〕から、同年七月分以降の電話料金は梅子名義の普通預金〔7〕から、それぞれ引き落とされた。
(9)家屋改築修理費(新宮土地年貢) 四〇万円
(10)交際接待費 五一万七〇三三円
(11)梅子の生活費 一八万八八五一円
内訳については、別紙「梅子生活費一覧」記載のとおり
(12)上記合計 四四五万五〇四一円
したがって、被控訴人花子が実質的に払戻しを受けた金額二三三二万八〇〇二円から四四五万五〇四一円を差し引いた一八八七万二九六一円について、被控訴人花子は控訴人に対する損害賠償義務を負う。
なお、控訴人は、被控訴人花子と松夫が共謀の上、上記金員を払い戻したと主張するが、かかる共謀の事実を認めるに足りる証拠はないから、被控訴人花子以外の被控訴人乙山らは、控訴人に対して損害賠償義務を負わない。
さらに、控訴人は、不法行為に基づく損害賠償請求と並んで、不当利得の返還及び被控訴人花子に対する善管注意義務違反による損害賠償も選択的に求めているが、既に説示したところによれば、不当利得額及び善管注意義務違反による損害額が上記賠償額を超えるものでないことは明らかである。
七 梅子名義の普通預金〔8〕の帰属について
前記前提事実のとおり、被控訴人花子は平成一〇年四月一〇日に被控訴人銀行の川之江支店の竹夫名義の定期預金〔3〕の一部を解約し、三〇〇万六〇二九円の払戻しを受けたこと、同支店の梅子名義の普通預金〔8〕は同日に上記払戻額とほぼ同額の三〇〇万六〇九七円の入金をもって開設されたものであることからすると、梅子名義の普通預金〔8〕は竹夫名義の定期預金〔3〕を預け替えしたものであると認められる。
したがって、被控訴人花子が梅子名義の普通預金〔8〕を解約してその払戻金を取得したことによる損害は、竹夫名義の定期預金〔3〕の払戻金の取得による損害と別個の損害に当たるものではない。
八 梅子名義の預金の負担付贈与について
梅子名義の普通預金〔7〕は、梅子の年金等の受領のため、竹夫の死亡後の平成九年五月二九日に山内病院担当者によって開設され、その後、同年六月一一日から平成一五年一二月一五日にかけて、愛媛県や川之江市から梅子への年金等が振り込まれたものであることは前記認定事実のとおりであるから、竹夫が被控訴人花子に対して普通預金〔7〕を負担付贈与したとする被控訴人乙山らの主張は、その前提において失当であり、採用することができない。」