新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1292、2012/6/25 11:00

【小切手法・不渡処分・振出人の救済方法・依頼返却と2号不渡り異議申立・異議申立預託金返還請求・不渡処分取消,解除・小切手所持人側の対応・最高裁昭和32年7月19日判決】

質問:私は現在,個人事業を営んでいます。先日,その事業の関係で小切手を振り出したのですが,その小切手が不渡りになってしまいそうなのです。何か,不渡処分を回避する方法はないのでしょうか。

回答:
1.適法に振り出された小切手であれば,支払人である金融機関の口座に支払のための資金を用意する以外に不渡処分を回避する方法はありません。これが大原則ですが事情により以下の方法も考えられます。
2.不渡処分回避第一の方法は「依頼返却」です。当該小切手が本来交換呈示してほしくない小切手(例えば当該小切手の原因債権が既に現金決済済み。支払い猶予の合意。資金が用意できない場合にも利用されています。手形交換所規則施行細則64条。同77条1項1号B)であれば,小切手が交換所に持ち出されたとしても,持出銀行から支払銀行に対して,交換日当日中に小切手の返却を申し出ることができます。振出人が,小切手の所持人に対し持出銀行を通し返却してもらうようお願いすることです(いわゆる「依頼返却」。)。小切手は,持出銀行,交換所,支払銀行(持帰銀行)に渡ったとしても又同じ経路で戻ってきますから不渡届がなされず,不渡処分もなされません。
3.但し,小切手要件不備,呈示期間経過後かつ支払委託の取消,除権判決等によって,小切手の形式面に不備がある場合,いわゆる0号不渡りとして,不渡届の提出はされず,不渡りとはなりません(東京手形交換所規則63条本文)。
4.不渡処分回避の第2の方法は異議申立てです(規則66条)。契約不履行,詐取その他一切の事由(0号不渡りに該当するものは除きます。)により支払いを拒否する場合は,2号不渡りとなります。2号不渡りの場合,不渡小切手金額と同額を取引銀行に預託し(異議申立預託金),取引銀行が同金額を担保に手形交換所に対して異議申立提供金を提供して異議申立手続をすれば,不渡処分は行われません。預託金が不要の場合もあります。異議申立制度や,異議申立預託金の取扱いについては,以下の解説の4項で詳述します。
5.いずれにせよ,支払呈示を受ければ振出人の資金から支払がされるべきというのが大原則です。その上で,支払が不適当である正当な理由があるとお考えであれば,専門家にご相談された方がよいでしょう。
6.事務所事例集論文996番897番184番参照。末尾に手形小切手訴訟の訴状,異議申立預託金の仮差押書式が掲載されています。

解説:

(小切手制度と不渡り処分の関係)
  小切手とは,振出人が支払人(銀行のみの資格制限)に宛てて,小切手所持人に対する一定金額の支払いを委託する有価証券です(小切手法1条)。手形は,取引において手形債権の信用を利用し割引により債権の早期実現,簡易安全な送金,決済として利用されていますが(満期まで資金を用意すればいいので振出す時に現金がなくてもかまいません),小切手は,支払い,決済を安全確実に行うための支払いの手段として存在します。現金の代わりです(振出す時に現金が必要です。)。小切手は手形と同じように取引上原因となった債権(例えば,売買債権)の支払いの手段として発行された有価証券です。有価証券とは財産権を表章し,その表象された財産権の移転行使が証券自体によってなされる証券(証券とは財産上の権利義務について記載された紙片で有価証券と証拠証券に分かれますが,)です。
  すなわち, 小切手は,その紙自体に要件に従い小切手であることを認識して署名押印すると,原因となった取引関係とは無関係に小切手金請求権が突然出現し,小切手債権と小切手の紙(用紙)が結合し一体となっているところに基本的特色があります(設権証券といいます)。貴方が売買代金の決済として受け取った小切手に表章されている小切手金請求権は売買代金請求権とはまったく法的に別個独立の権利として存在します(ただ,決済されると支払いの手段ですので売買代金請求権も消滅するので二重請求はできません)。

  どうしてこのような小切手が必要かというと,大量反復して行われる商取引の支払い決済を安全,簡易,迅速,低廉に行うためです。取引が単純であれば現金決済でいいですが,取引が複雑となって金額が高額となり,又遠隔地取引での決済送金等の商取引が生じます。そこで,小切手という証券(紙片)に振出の原因となった取引関係とは無関係な金銭債権を認め(無因性といいます。従って原因関係の主張は所持人にできません。抗弁の切断といいます。),現金に代わる支払い決済の手段としたのです。証券自体に権利が表章されているので原因関係に無関係に迅速(証券の移転は交付により容易),安全で(現金を持ち歩く必要がない,遠隔地決済に容易)簡易な(証券の移転は手渡しで簡単)取引決済が可能になり支払い決済取引が円滑に行われる訳です。例えば,貴方の場合,単なる売買代金債権を持っているより,小切手債権であれば多額の現金を持つよりもはるかに安心です。
  しかし,小切手を発行しても振出人が無責任で資金を用意しない状態になれば,決済ができませんので(銀行は,支払人ですが小切手上の債務者ではなく,振出人から単に支払いを委託されただけなので資金がなければ支払いません。同3条)単なる債務不履行の問題だけでなく,小切手制度自体に対する信用がなくなり,円滑な商取引自体ができなくなる危険があります。そこで,小切手(手形)の信用を維持するため小切手による支払いの約束を破った者に対しその制裁として不渡処分が行われます。

  不渡処分とは,正式には「銀行取引停止処分」といいます。手形交換所(一定地域で顧客と手形小切手取引のための当座勘定取引契約を行っている銀行が会員となって互いに手形小切手を集団,簡易迅速に交換,決済をする組織。基本的に銀行協会が運営しています。全国各県にあります。)を通して支払いの呈示された手形,小切手が支払を行うべき銀行等により支払いを拒絶された場合(これを不渡りといいます。6カ月以内に2回の不渡届。)に,手形交換所規則により手形,小切手の振出人等になされる制裁処分をいいます(不渡り事由の全てが処分対象とされるわけではありません。制裁ですから小切手振出人に責任がないものであれば除外されます。)。具体的には振出人等は,手形交換所加盟銀行との取引(手形,小切手取引のための当座勘定取引契約,貸出が原則禁止となります。)が2年間禁止されます。当座勘定取引は,銀行が契約者にのみ手形小切手用紙を交付し,振出人の小切手の偽造,事故届の有無を確認して支払う手続きをするので,契約がなければ小切手取引はできません。従って,手形,小切手を反復,大量に利用し安全確実,迅速な信用,決済,支払いの手段としている事業者にとっては取引が事実上できず致命的影響を受けることになりますから重大問題です。
  これは,手形,小切手制度の信用を保護して円滑な商取引を実現し公正な商取引による経済社会秩序を維持発展させるためにやむを得ない制度です。
  尚,万が一小切手金額 の請求に対し小切手の振出人が任意に支払いに応じなければ,簡易迅速に小切手債権の訴訟による強制的実現(小切手訴訟)を可能にして,小切手制度の信用,安全性を側面から維持しています。以上の趣旨から不渡り制度を考えることになります。

1 (小切手の性質)
  小切手は,振出日付後10日間内に支払呈示することにより(小切手法29条),支払委託を受けた金融機関(支払人)から支払を受けることができる制度です。現金に代わる決済取引の安全を重視した制度であり,その無因証券性(同法1条2号),人的抗弁の個別性(同法22条)から,小切手の支払呈示があれば,支払人(銀行)は支払委託をした振出人の資金から支払をするというのが大原則になります。銀行は支払人ですが,約束手形の振出人,為替手形の引受人とは異なり小切手金請求の債務者ではありません。あくまで現金決済の手段なので銀行を委託する支払人に限定して(同法3条,71条),種々の規定により安全を図り小切手上の債務者を認める必要がありません。但し,支払いが拒絶されれば,最終的に振出人は遡及義務を負うことになります(同法39条)。
  そのため,支払人である金融機関の口座に支払のための資金を用意するというのが,不渡り回避のための原則的な対処方法です(なお,仮に呈示者が違法不法な行為等によって小切手を入手・提示している場合には,呈示者との関係では小切手に関する権利自体が無効となり,呈示によっても金銭を受領できないことになりますから,取引停止処分回避のためにその呈示者に資金を用意させ,指示して金融機関の口座に入れさせるという対処方法も考えられます。)。

2 (不渡り事前の回避の手段その1,依頼返却)
  仮に当該小切手が本来交換呈示すべきでない小切手であった場合(原因債権の支払済み,支払い期限猶予の合意ができていた等。),持出銀行から支払銀行に対して,交換日当日中に小切手の返却方を申し出ることができます。これを「依頼返却」といいます。
  この依頼返却の手続については,小切手に関する信用取引の秩序維持の観点から,慎重な取扱いがなされているようです。関係銀行でも役席者間でのやり取りがなされ,事務処理管理手続も所定の厳正な方式を履践することとなっています。しかし,交換所に回されても,当事者に決済の必要性がないという合意ができれば,これを拒否する理由はないことから持出銀行も手続きに応じています。
  
  依頼返却ができれば,小切手金を請求する意思を所持人自ら撤回したのですから小切手の不渡処分を回避することができます。もっとも,支払呈示・支払拒絶の関係でいえば,もっぱら取引停止処分免脱の便宜に出た依頼返却によっては,いったん生じた支払呈示及び支払拒絶の効力は失われません(最高裁昭和32年7月19日判決民集11巻7号1297頁 後記参照)。従って,依頼返却でも振出人,裏書人に対する遡求は可能です(小切手法39条,統一小切手用紙にも手形と同じように拒絶証書不要の文言が記載されています。)。
  ちなみに,上記のような取引停止処分回避の便法としての依頼返却は悪質な不渡処分潜脱に用いられるケースもあり,依頼返却を行う場合,所持人が仮に違法な経緯で小切手を入手したなどの事情があっても,依頼返却とはそもそも所持人が手続きを行うものですから,権利者たる呈示者(所持人)の意向に関係なく振出人が,持出銀行に対して依頼返却手続を進めてもらうことは勿論できません。

3 (0号不渡り 東京交換所規則63条1項本文)
  また,小切手要件不備,呈示期間経過後かつ支払委託の取消,除権判決等によって,小切手の形式面に不備がある場合,いわゆる0号不渡りとして,不渡届の提出はされず,不渡りとはなりません。ただ,持出銀行が小切手の要件不備に気がつけば,交換所に回すことができない旨所持人に連絡することになります。
  もっとも,0号不渡りは形式面の不備に基づくものであって,実質面の小切手の瑕疵に基づくものは0号不渡りにはなりません。仮に,偽造,変造,詐取,盗難,紛失等の実質面での瑕疵があるような場合には,次項のいわゆる2号不渡りとして扱われることとなります。

4 (1号,2号不渡り 東京交換所規則63条)
(1) 1号不渡り・2号不渡りについて
  不渡りとなる場合,資金不足,当座勘定取引なしといった事由については1号不渡り,契約不履行,詐取その他一切の事由(0号不渡りに該当するものは除きます。)については2号不渡りとなります。1号不渡りの場合,直ちに不渡処分に付されますが,2号不渡りの場合は,支払資金の存在を示すことができれば,不渡処分が猶予されます。

  1号不渡りについては,手形や小切手が呈示された時点で,前提となる当座勘定取引そのものがない場合や,取引はあっても支払資金が用意されていない場合であり,手形・小切手の健全な利用に対し,極めて悪質というべきで,信用取引の存立基盤を崩しかねないところから,かかる不渡りは積極的に信用取引界から排除しようという意図に基づいて定められた類型であると考えられます。1号不渡りの事前回避策は,「依頼返却」しかありません。

  但し,不渡り後の回避策として不渡届撤回があります(規則68条,63条,64条1項3号)。 
  不渡後の対策は不渡りとなり持出銀行に戻ってきた小切手を直ちに振出人が所持人と連絡し買い戻して,所持人に依頼し持出銀行から交換日から起算して3営業日以内にすでに出されている不渡届を取り扱い錯誤で撤回してもらうことです。撤回されれば不渡り報告がなされず,不渡処分も行われません。従って,以後の不渡の取消は不渡報告,取引停止処分を回避できません。
  不渡届の提出期限は,支払銀行は,交換日の翌日の交換開始時刻まで(午前9時30分),持出銀行は,交換日から3営業日の午前9時30分までですからその分撤回まで猶予があります(規則63条)。4営業日に交換所は,不渡り報告を参加銀行に行います(規則64条)。

  2号不渡りについては,何人に対しても支払責任がないと主張する偽造・変造の場合や,正当な抗弁事由であるとみられる契約不履行,詐取,届け出印鑑の間違い,等の場合には,直ちに不渡処分に付することなく,支払資金の存在することを示させることにより,不渡処分を猶予させるのが妥当であるとの判断があるものと考えられます。そもそも,不渡り処分は,小切手金振出人に対する制裁であり,振出人に制裁を科す責任がないような場合には適用されません。ただ責任があるかどうかは,小切手上からは直ちに分からないので担保をたてさせて責任回避の手続きを用意し当の振出人に責任がない旨の説明を求めています。それが異議申立制度です。

(2) ( 不渡り事前の回避の手段その2)2号不渡りの異議申立制度(規則66条)。その他事後の不渡処分回避の方法(取引停止取消,規則68,69条)もあります。

ア,2号不渡り事由で不渡りになった場合,
  支払い銀行からの連絡等により小切手について不渡りになることが判明すれば,直ちに支払銀行担当者に支払いには応じない理由を詳しく説明して不渡小切手金額と同額を支払銀行に預託します(異議申立預託金といいます。)。支払銀行は「第2号不渡届」を手形交換所に出すと同時に異議申し立てを行うことを予告します。次に,支払銀行は,異議申立預託金を担保にして,銀行の金員で同金額を交換所に提供します(異議申立提供金といいます。)。手形交換所に対して以上の異議申立をすれば,不渡処分は行われません。支払銀行の異議申立は,手形交換日から数えて3営業日目の営業時限内(平日午後3時まで,土,日曜日は休み,)に手形交換所に行いますが,異議申立の事前予告等の事務処理上の必要からは,できる限り速やかに預託金の提供をする必要があります(東京手形交換所規則66条1項)。

  この場合,支払銀行の異議申し立て提供金が手形交換所から返還されない限り,振出人は預託金の返還を受けられない一方で,不渡処分を受けることもありません。いちおう,不渡処分となることを承知の上であれば,いつでも預託金返還を受けることはできます。なお,支払銀行が独断で異議申立提供金を取り下げることはありません。
  そのため,最長だと異議申立日から2年間経過まで,預託金の回収ができないことになります(同規則67条1項7号)。2年間と定められている理由ですが,不渡処分となったとしても制裁期間も2年間ですし,異議申立てがあっても,所持人は,小切手訴訟,振出人は債務不存在訴訟により小切手金支払い義務について決着がつく十分な期間と考えられるからです。所持人は,小切手訴訟で勝訴すれば通常預託金請求権を仮差し押さえしているので権利を確保でききます。迅速な(小切手の信用性を維持するため,通常1回の審理,証拠申し出の制限。偽造変造出ない限り敗訴します。)小切手訴訟で振出人が敗訴した場合,振出人が異議の申し出を行い,通常訴訟に移行しても小切手訴訟判決には仮執行宣言がつき,振出人が仮執行宣言に対する執行停止を申し立ててもさらに同額の保証金を要求されるので所持人は安心です。すなわち振出人は2倍の担保が必要になり著しく不利益です。小切手の信用性を維持するため振出人の責任は加重されています。従って,振出人は所持人に信用不安がなければ,執行停止を諦める場合もあります。他方,振出人が勝訴すれば当然確定判決を交換所に提出して提供金,預託金の返還を求めることができます。預託金請求権の仮差押の書式は下記参照。
  預託金は,異議申立提供金が支払銀行に返還された時点で弁済期が到来すると考えられます。

イ,異議申立提供金の返還時期については,2号不渡り事由のうち偽造・変造については,その旨の証明を条件として,異議申立提供金免除(偽造,変造が決められた書類により証明できればそもそも支払い義務がないので適正な小切手決済もできなくなり振出人に不公平になるので審査の上免除しています。規則66条。),異議申立提供金早期返還(規則67条),その他不渡処分の事後の回避方法として不渡報告または取引停止処分の取消(規則69条)が認められています。

  他方,詐取,紛失,盗難,取締役会承認等不存在については,異議申立提供金早期返還,参加銀行等の取扱錯誤により不渡報告,取引停止処分の取消が認められています(規則68条)。
  このうち,不渡処分を回避しつつ異議申立提供金の早期返還を受けられる事由としては,@不渡事故が解消した場合,A小切手の支払義務がないことが裁判により確定した場合,B(特例として)偽造,変造,詐取,紛失,盗難,取締役会承認等不存在その他これらに相当する事由ありと認められた場合があります。(3)で詳述します。
  なお,振出人が支払い銀行に積んだ「異議申立預託金」(異議申立提供金ではありません。)に対して,小切手所持人が仮差押えをし,手形訴訟で勝訴判決を得て差押・添付命令を受けて回収を実現するケースが通常です。
  異議申立手続については,前述のように支払銀行に所定の異議申立書を提出するよう依頼し,また預託金を支払銀行に預託したうえで,支払銀行が手形交換所に異議申立書を提出して異議申立提供金を提供します。異議申立提供金の提供があったときには,手形交換所は預かり証を発行します。これらの手続は,交換日から3営業日目の営業時限までに行われる必要があります。

 (3) 異議申立提供金の早期返還の例(規則67条)
  以下,不渡処分を回避しつつ異議申立金の早期返還(2年間経過より前の返還)を受けられるケースについて取り上げます。
ア まず,不渡事故が解消した場合があげられます。典型的には,当事者間に不渡小切手の支払いについて和解合意が成立したような場合です。この場合,和解書を小切手所持人から持出銀行に提出して,和解の事実を立証します。その後の手続もあるため,3日目以降から返還請求ができることになります。
イ 次に,小切手の支払義務がないことが裁判により確定した場合があげられます。小切手振出人が債務不存在の確認訴訟を提起してその認容判決が確定した場合や,小切手所持人が小切手金請求訴訟を提起してその棄却判決が確定した場合などです。
あなたのケースでこの手段をとるとすれば,あなたが債務不存在の確認訴訟を提起するという形になるでしょうが,ここで気をつけていただきたいのは,訴訟提起によって被告となる所持人に訴状の送達がなされれば,債務不存在確認訴訟を機に反訴の形で小切手金請求訴訟を提起してくる可能性もあることです。また,それに伴い異議申立預託金に対して仮差押え等をかけてくるのが通常です。
ウ また,偽造,変造,詐取,紛失,盗難,取締役会承認等不存在その他これらに相当する事由ありと認められた場合も,特例として早期返還を受けることができます。なお,この「その他これらに相当する事由」には横領なども含まれうると考えられるところですが,実際に適用された例はほとんどないようです。
  
  この特例返還請求は,必要書類を提出し,手形交換所の審議機関の承認を受けなければなりません。提出書類としては,所定様式の異議申立提供金返還請求書に,被害届写し及び被害届受理証明書写し(告訴が必要な犯罪の場合には告訴状写し及び告訴受理証明書写し),振出人等の陳述書,当座勘定取引証明書,届出印鑑写し,偽造または変造小切手の写し等の資料を添付する必要があります。

  また,「異議申立提供金」返還について,手形交換所の審議機関の承認がされるためには「異議申立預託金」に仮差押えがなされていないことが事実上必要になるため(仮差押されていれば振出人の責任について小切手事件が解決していないので早期返還はしない。),仮差押えが見込まれる1か月間は様子を見て,その間に仮差押えがなされていないことを確認のうえ,返還請求の承認がなされるようです。

(4)取引停止処分の解除(規則70条,71条)これも事後の不渡処分回避の方法です。
2年間の処分は,振出人に対する制裁ですが,もとをただせば,小切手による信用取引の維持のためにあるので(規則1条)振出人の信用が回復して小切手の信用を侵害する危険さえがなくなれば,処分の解除を認めています。勿論その資料を,手形交換所が設置する不渡手形審査専門委員会提出する必要があります。

(5)不渡りの際の小切手所持人の対応としては,偽造変造出小切手でなければ通常異議申立預託金の仮差押,小切手上の債務者に対する小切手訴訟ということになります。

5 (まとめ)
  以上,不渡処分を回避しうる方法を列挙しましたが,いずれにせよ支払呈示を受ければ振出人の資金から支払がされるべきというのが大原則です。その上で,支払が不適当である正当な理由があるとお考えであれば,専門家にご相談された方がよいでしょう。手続的な疑問であれば,詳しくは取扱いを恥ずかしがらず積極的に取引金融機関等にお尋ねください。分からないときは弁護士も銀行担当者に尋ねています。小切手は現金の代わりであり,支払いを迅速,確実にするため,設権,要式証券という特殊性から特別な手続きが定められていますので一般人には理解が難しい面もあるからです。

≪参照条文≫

小切手法
第一条 小切手ニハ左ノ事項ヲ記載スベシ
一 証券ノ文言中ニ其ノ証券ノ作成ニ用フル語ヲ以テ記載スル小切手ナルコトヲ示ス文字二 一定ノ金額ヲ支払フベキ旨ノ単純ナル委託
三 支払ヲ為スベキ者(支払人)ノ名称
四 支払ヲ為スベキ地ノ表示
五 小切手ヲ振出ス日及地ノ表示
六 小切手ヲ振出ス者(振出人)ノ署名
第三条  小切手ハ其ノ呈示ノ時ニ於テ振出人ノ処分シ得ル資金アル銀行ニ宛テ且振出人ヲシテ資金ヲ小切手ニ依リ処分スルコトヲ得シムル明示又ハ黙示ノ契約ニ従ヒ之ヲ振出スベキモノトス但シ此ノ規定ニ従ハザルトキト雖モ証券ノ小切手タル効力ヲ妨ゲズ
第二十二条 小切手ニ依リ請求ヲ受ケタル者ハ振出人其ノ他所持人ノ前者ニ対スル人的関係ニ基ク抗弁ヲ以テ所持人ニ対抗スルコトヲ得ズ但シ所持人ガ其ノ債務者ヲ害スルコトヲ知リテ小切手ヲ取得シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第二十九条 国内ニ於テ振出シ且支払フベキ小切手ハ十日内ニ支払ノ為之ヲ呈示スルコトヲ要ス
2 支払ヲ為スベキ国ト異ル国ニ於テ振出シタル小切手ハ振出地及支払地ガ同一洲ニ存スルトキハ二十日内又異ル洲ニ存スルトキハ七十日内ニ之ヲ呈示スルコトヲ要ス
3 前項ニ関シテハ欧羅巴洲ノ一国ニ於テ振出シ地中海沿岸ノ一国ニ於テ支払フベキ小切手又ハ地中海沿岸ノ一国ニ於テ振出シ欧羅巴洲ノ一国ニ於テ支払フベキ小切手ハ同一洲内ニ於テ振出シ且支払フベキモノト看做ス
4 本条ニ掲グル期間ノ起算日ハ小切手ニ振出ノ日附トシテ記載シタル日トス
第六章 支払拒絶ニ因ル遡求
第三十九条  適法ノ時期ニ呈示シタル小切手ノ支払ナキ場合ニ於テ左ノ何レカニ依リ支払拒絶ヲ証明スルトキハ所持人ハ裏書人,振出人其ノ他ノ債務者ニ対シ其ノ遡求権ヲ行フコトヲ得
一  公正証書(拒絶証書)
二  小切手ニ呈示ノ日ヲ表示シテ記載シ且日附ヲ附シタル支払人ノ宣言
三  適法ノ時期ニ小切手ヲ呈示シタルモ其ノ支払ナカリシ旨ヲ証明シ且日附ヲ附シタル手形交換所ノ宣言

第十一章 通則
第五十九条  本法ニ於テ「銀行」ナル文字ハ法令ニ依リテ銀行ト同視セラルル人又ハ施設ヲ含ム
附則
第七十一条  小切手ノ振出人ガ第三条ノ規定ニ違反シタルトキハ五千円以下ノ過料ニ処ス
(東京手形交換所規則)
目次
第1章 総 則(第1条―第4条)
第2章 参 加 銀 行
第1節 参加および脱退(第5条―第15 条)
第2節 加入金および経費分担金(第16 条―第19 条)
第3節 保 証 金(第20 条,第21 条)
第3章 手 形 交 換
第1節 総 則(第22 条―第28 条)
第2節 持 出 手 続(第29 条―第37 条)
第3節 交換所の処理(第38 条―第43 条)
第4節 持 帰 手 続(第44 条―第47 条)
第5節 交換尻決済(第48 条―第51 条)
第6節 手形の返還(第52 条―第54 条)
第7節 代 理 交 換(第55 条―第58 条)
第8節 雑 則(第59 条―第61 条)
第4章 取引停止処分(第62 条―第71 条)
第5章 手形交換一時停止時・脱退時緊急措置
第1節 手形交換一時停止時・脱退時緊急措置の認定(第71 条の2―第71
条の4)
第2節 一時停止時・脱退時緊急措置時における手形交換の特例(第71 条の
5―第71 条の9)
第3節 一時停止時・脱退時緊急措置時における取引停止処分の特例(第71
条の10―第71 条の13)
第6章 預金保険法に定める営業譲渡等に係る措置(第71 条の14―第71 条の
16)
第7章 罰 則(第72 条―第75 条)
第8章 会 計(第76 条―第76 条の4)
第9章 雑 則(第77 条,第78 条)
附 則
1.東京手形交換所規則
(総会決議昭和46.4.27)
第1章 総 則
(目 的)
第1条 この規則は,一般社団法人全国銀行協会(以下「協会」という。)の定款(以下「定款」
という。) 第4条【事業】第6号および協会が運営する東京銀行協議会(以下「協議会」という。)の規則第2条【協議会の業務】第2号の規定にもとづき,協会が設置,運営する東京手形交換所(以下「交換所」という。)の組織および業務の方法について定め,もって手形,小切手等の簡易,円滑な取立を可能にし,併せて信用取引の秩序維持を図ることを目的とする。
(交換所の事業)
第2条 交換所は,前条の目的を達成するために,次の事業を行う。
一 手形,小切手その他の証券の交換決済
二 取引停止処分制度の運営
三 手形交換に関する資料の収集および配布
四 その他前条の目的を達成するために必要な事業
第3章 手 形 交 換
第1節 総 則
(交換証券)
第22 条 社員銀行(委託社員銀行を除く。),準社員銀行および客員(以下「加盟銀行」という。)は,参加銀行において支払うべき手形,小切手をこの章の規定により交換に付すものとする。ただし,第51 条【交換尻不足金の不払】第1項,第53 条【混入手形の返還等】または第57 条【代理交換委託金融機関の不足金の不払】第1項の規定により返還された手形,小切手はこの限
りでない。
2 加盟銀行は,利札,郵便為替証書,配当金領収証,その他金額の確定した証券で,当該銀行において領収すべき権利の明らかなものを,交換に付すことができる。
3 前2項により交換に付すいっさいの証券は,この章において,これを「手形」という。
(交換参加店)
第23 条 交換に参加する店舗(加盟銀行が委託した銀行法第七章の三に規定する「銀行代理業者」の営業所等を含む。次条においても同じ。)は,加盟銀行の店舗のうち東京都内に所在する店舗とする。ただし,東京都以外に所在する店舗でも,交換所が承認した場合には,この交換に参加することができる。
(交換母店,不渡受入母店)
第24 条 加盟銀行は,交換に関する事務を統轄する店舗または事務所を,交換母店として定めるものとする。
2 加盟銀行は,前項の交換母店とは別に,第52 条【不渡手形の返還】および第53 条【混入手形の返還等】に規定する不渡手形および混入手形の受入れに関する事務を行う店舗を,不渡受入母店として定めることができる。
(交換印)
第25 条 加盟銀行は,交換に付す手形にはすべて交換印を押捺しなければならない。
2 加盟銀行は,交換印が押捺されている手形に対しては交換を経由しないで直接に支払ってはならない。
(交換方)
第26 条 加盟銀行は,交換方を定め,当該銀行が交換所において行うべき交換事務を行わせるものとする。
2 加盟銀行は,交換に関して交換方が行った行為について,いっさいの責任を負うものとする。
(交換持出手形の記録)
第27 条 加盟銀行は,交換に付す手形を細則で定めるところにより記録しておかなければならない。
(交換関係帳票の保存)
第28 条 加盟銀行および交換所は,細則で定めるところにより交換関係の帳票を保存しなければならない。
第2節 持 出 手 続
(交換所分類手形の持出)
第29 条 加盟銀行は,交換に付す手形のうち金融機関共同コードの印字のある手形(第31 条【金融機関共同コードの印字のある手形の持出の特例】に規定する手形を除く。)については,MICR方式による金額の印字を行い,これを一定のバッチ(束)に区分し,細則で定める帳票を添付して交換所に持出すものとする。
2 前項の方法により交換所に持出される手形を「交換所分類手形」という。
(銀行分類手形の持出)
第30 条 加盟銀行は,交換に付す手形のうち金融機関共同コードの印字のない手形については,相手銀行別に分類し,細則で定める帳票を添付し,交換袋に封入して交換所に持出すものとする。この場合において,加盟銀行は,交換袋を交換所の持帰銀行のロッカー(銀行分類手形用)に投入するものとする。
2 前項の方法により交換所に持出される手形を「銀行分類手形」という。
(計数報告)
第32 条 加盟銀行は,交換に持出した手形の枚数および金額を,細則で定める帳票により交換所に報告(以下「計数報告」という。)しなければならない。
(持出および計数報告時間)
第33 条 手形の持出およびその計数報告の時間は,当該手形を交換に付す日(以下「交換日」という。)の前営業日(以下「持出日」という。)を基準として,午後4時30 分から次に掲げる時刻までとする。ただし,交換所の閉扉時間を除く。
一 交換所分類手形の持出午後9時
二 銀行分類手形の持出翌営業日午前8時
三 計数報告午後10 時
2 前項にかかわらず,予め交換所の承認を得た加盟銀行は,前項の時間前に手形の持出および計数報告ができるものとし,その時間は,交換所の指示するところによる。
(特殊日の持出および計数報告時間)
第34 条 前条にかかわらず,持出日が月末前日,月末日または月初日(これらの日が銀行の休業日に当たる場合には,細則で定める日とする。以下「特殊日」という。)の交換所分類手形の持出時間および計数報告時間は,持出日を基準として,午後4時30 分から次に掲げる時刻までとする。
一 交換所分類手形の持出
@ 月末前日 午後9時30 分
A 月末日 午後10 時30 分
B 月初日 午後9時30 分
二 計数報告
@ 月末前日 午後10 時30 分
A 月末日 午後11 時30 分
B 月初日 午後10 時30 分
第3節 交換所の処理
(交換所分類手形等の受付)
第38 条 交換所は,加盟銀行から交換所分類手形を受けたときは,バッチ数および添付帳票を点検し,これを受領するものとする。
2 交換所は,加盟銀行から計数報告の帳票を受けたときは,その記載内容および枚数を点検し,これを受領するものとする。
(交換所分類手形の分類および計数処理)
第39 条 交換所は,交換所分類手形を持帰銀行別に分類するほか,加盟銀行別に当該手形の持出および持帰の計数を算出するものとする。
2 交換所は,前項により分類した手形を交換所の持帰銀行のロッカー(交換所分類手形用)に保管するものとする。
(銀行分類手形の計数処理)
第40 条 交換所は,銀行分類手形の計数報告の帳票により加盟銀行別に銀行分類手形の持出および持帰の計数を算出するものとする。
(交換尻の算出)
第41 条 交換所は,前2条により算出した金額にもとづき,加盟銀行別に交換尻の算出を行うものとする。
(MICR方式による取扱い)
第42 条 交換所は,第39 条【交換所分類手形の分類および計数処理】および第40 条【銀行分類手形の計数処理】に規定する手形の分類および計数の処理に当たっては,MICR方式による印字に従って取扱うものとする。
(帳票の作成,交付)
第43 条 交換所は,交換計数が確定したときは,細則で定める帳票を加盟銀行別に作成し,これを加盟銀行へ交付するものとする。
第4節 持 帰 手 続
(持帰時間および持帰方法)
第44 条 加盟銀行は,交換日の午前8時から午前9時30 分までの間に,交換所の自行のロッカーから手形を持帰るものとする。
2 予め交換所の承認を得た加盟銀行は,前項に規定する時間前であっても,交換所が前条に規定する帳票の作成を終えたときまたは交換所が処理に支障ないと判断したときは,手形を持帰ることができる。ただし,交換所の閉扉時間を除く。
3 加盟銀行は,第1項に規定する時間後に手形を持帰るときは,交換所にその理由書を提出しなければならない。
(持帰時の点検義務)
第45 条 加盟銀行は,交換所から手形を持帰るときは,交換所分類手形についてはバッチの数を,銀行分類手形については交換袋の数を交換所の作成帳票および添付帳票により点検するほか,バッチおよび袋の混入の有無を点検しなければならない。
2 加盟銀行は,前項の点検によりバッチの数もしくは交換袋の数の相違または混入を発見したときは,直ちに交換所に連絡し,その指示に従うものとする。
(持帰後の点検義務)
第46 条 加盟銀行は,手形を持帰ったときは,直ちに手形の枚数および混入の有無を点検するほか,細則で定める計数の確認を行うものとする。
2 加盟銀行は,前項の点検により枚数の相違を発見したときは,必要により,金額を確認し,交換所分類手形については交換所に,銀行分類手形については当該手形の持出銀行にその旨を通知し,必要な措置をとるものとする。
3 加盟銀行は,第1項の点検により混入手形を発見したときは,第53 条【混入手形の返還等】の規定により処理するものとする。
(交換違算金の清算)
第47 条 加盟銀行は,交換違算金が発生した場合には,速やかにその原因を究明し,関係銀行間において清算するものとする。
2 交換違算金の清算は,原則として,交換日から6か月以内に行うものとする。
第5節 交換尻決済
(決済方法)
第48 条 交換尻の決済は,交換日において日本銀行における加盟銀行(客員を除く。以下この節において同じ。)および協会の当座勘定の振替により行うものとする。
2 交換所は,交換計数が確定したときは,交換総決算に係る電文(様式第1号)を作成し,これを全国銀行データ通信システム(以下「全銀システム」という。)を通じて日本銀行に送信するものとする。ただし,全銀システムによることができない場合または日本銀行および交換所の双方が適当と認めた場合は,交換所は,交換総決算に係る電磁的記録媒体および交換総決算表(様式第1号の2)を作成し,同交換総決算表に調印して日本銀行に提出するものとする。なお,交換所において電磁的記録媒体が作成できない場合には,交換総決算表のみを提出する。
(交換尻の振替請求)
第49 条 交換所は,確定した交換計数にもとづき,交換尻振替請求に係る電文(様式第2号)を作成し,これを全銀システムを通じ日本銀行に送信して,加盟銀行に代って交換尻の振替請求を行うものとする。ただし,全銀システムによることができない場合または日本銀行および交換所の双方が適当と認めた場合は,交換所は,交換尻振替請求に係る電磁的記録媒体および交換尻振替請求書(様式第2号の2)を作成し,当該交換尻振替請求書に調印して日本銀行に提出するものとする。なお,交換所において電磁的記録媒体が作成できない場合には,交換尻振替請求書のみを提出する。
2 日本銀行は,交換所から受信した前項の振替請求電文または交換所から受領した前項の電磁的記録媒体または振替請求書にもとづき,交換日の午後0時30 分(日本銀行が別の時刻を指定した場合には当該時刻とする。)から,加盟銀行のうち交換尻が借方となった者(以下「借方銀行」という。)の日本銀行における当座勘定から順次交換尻相当額を引き落してこれを協会の日本銀行における当座勘定(以下「決済勘定」という。)に入金し,決済勘定へのすべての入金が完了した後,加盟銀行のうち交換尻が貸方となった者(以下「貸方銀行」という。)の交換尻相当額を決済勘定から引き落してこれを貸方銀行の日本銀行における当座勘定に順次入金することにより,加盟銀行の交換尻の振替決済を行う。
(交換尻不足金の払込)
第50 条 加盟銀行は,交換尻が借方となった場合において,日本銀行における当座勘定の資金が前条の交換尻振替請求の金額に満たないときは,その不足金額を当日の午後0時30 分までに日本銀行に払込まなければならない。
(交換尻不足金の不払)
第51 条 交換所は,借方銀行が前条に規定する時限までにその払込みを行わなかったときは,直ちにその旨を加盟銀行に通知し,当日,その借方銀行と交換上貸借関係にある加盟銀行を招集して,その借方銀行が持出した手形および持帰った手形を繰戻し,新たに交換尻決済の手続を行う。
ただし,その借方銀行の不足金が第20 条【保証金の差入れ】の規定により差入れた保証金の金額以内であるときは,当該保証金をその不足金額に充当して交換を結了させることができる。
2 交換所は,前項により手形を繰戻す場合において,繰戻す手形のうちに交換済または支払済の印を押捺した手形があるときは,付箋により支払未済の旨を証明するものとする。
第6節 手形の返還
(不渡手形の返還)
第52 条 加盟銀行は,持帰手形のうちに自行宛の手形で支払に応じがたい手形(以下「不渡手形」という。)があるときは,当該手形に不渡の事由を記載し,交換日の翌営業日の持出銀行宛の持出手形に組入れるものとする。ただし,やむを得ない理由によりこの取扱いができなかった場合は,交換日の翌営業日午前11 時までに持出銀行の細則で定める店舗の店頭(以下「持出銀行の店頭」という。)に返還することができるものとし,その代り金を受取るものとする。
2 前項にかかわらず,細則で定める不渡手形については,その定める時限までに持出銀行の店頭に返還し,その代り金を受取るか,またはその定める日の持出手形に組入れることができる。
(混入手形の返還等)
第53 条 加盟銀行は,持帰手形のうちに他の加盟銀行宛の手形(以下「混入手形」という。)があるときは,交換日の午前11 時50 分までに持出銀行に通知し,当該手形に混入の旨を記載して次のいずれかによって処理するものとする。ただし,第3号によって処理する場合には,持出銀行への通知を省略することができる。
一 交換日の午後3時までに自行の店頭において持出銀行に返還し,その代り金を受取る。
二 持出銀行と協議し,翌営業日の持出銀行宛の持出手形に組入れる。ただし,不渡手形を除く。
三 当該手形の宛先銀行と協議し,交換日の午後3時までに,直接,当該銀行に手交し,その代り金を受取る。
四 前3号のほか関係銀行間で合意あるときは,その合意した方法により受け渡しを行い,その代り金を受取る。
2 加盟銀行は,前項の通知を遅延したときは,当該手形を持出銀行の希望する方法により返還するものとする。
3 加盟銀行は,第1項第1号の規定により混入手形を返還する場合において,持出銀行が当該時限までに買い戻しを行わなかったときは,第52 条【不渡手形の返還】第1項に規定する方法により返還することができる。
(手形代り金不払時の措置)
第54 条 加盟銀行は,第52 条【不渡手形の返還】に規定する方法により手形を店頭に返還する場合において,持出銀行がその代り金を支払わないときは,直ちに,その旨を交換所に届出るものとする。
2 交換所は,前項の届出を受けた場合には,その事実を審査し,必要と認めたときは,第51 条【交換尻不足金の不払】の規定に準じて処理するものとする。
第4章 取引停止処分
(取引停止処分)
第62 条 手形または小切手(この章において「手形」という。)の不渡があったときは,約束手形もしくは小切手の振出人または為替手形の引受人(以下「振出人等」という。)に対して,この章の定めるところにより,取引停止処分をするものとする。
2 参加銀行は,取引停止処分を受けた者に対し,取引停止処分日から起算して2年間,当座勘定および貸出の取引をすることはできない。ただし,債権保全のための貸出はこの限りでない。
(不渡届)
第63 条 手形の不渡があったときは,当該手形の支払銀行および持出銀行は,次の各号の不渡届を交換所に提出しなければならない。ただし,取引停止処分中の者に係る不渡および細則で定める適法な呈示でないこと等を事由とする不渡については,不渡届を提出しないものとする。
一 不渡事由が「資金不足」または「取引なし」の場合 第1号不渡届
二 不渡事由が前号以外の場合 第2号不渡届
2 不渡届の提出は,支払銀行は交換日の翌営業日の午前9時30 分までとし,持出銀行は交換日の翌々営業日の午前9時30 分までとする。ただし,交換日の翌営業日に店頭返還した場合には,支払銀行は,不渡届を交換日の翌々営業日の午前9時30 分までに提出するものとし,その不渡届には店頭返還の旨を表示する。
(不渡報告)
第64 条 交換所は,不渡届の提出があったときは,次の各号に掲げる場合を除き,交換日から起算して営業日4日目に当該振出人等を不渡報告に掲載して参加銀行へ通知する。
一 不渡届に対して異議申立が行われた場合
二 不渡届が取引停止処分を受けている者に係る場合
三 交換日の翌々営業日の営業時限(午後3時)までに第68 条【不渡報告および取引停止処分の取消】第1項または第2項に規定する取消の請求があった場合
(取引停止報告)
第65 条 不渡報告に掲載された者について,その不渡届に係る手形の交換日から起算して6か月以内の日を交換日とする手形に係る2回目の不渡届が提出されたときは,次の各号に掲げる場合を除き,取引停止処分に付するものとし,交換日から起算して営業日4日目にこれを取引停止報告に掲載して参加銀行へ通知する。
一 不渡届に対して異議申立が行われた場合
二 交換日の翌々営業日の営業時限(午後3時)までに第68 条【不渡報告および取引停止処分の取消】第1項または第2項に規定する取消の請求があった場合
2 第62 条【取引停止処分】第2項の取引停止処分日は,前項による通知を発した日とする。
(不渡情報の適正な管理)
第65 条の2 交換所および参加銀行は,第63 条【不渡届】に規定する不渡届,第64 条【不渡報告】に規定する不渡報告および第65 条【取引停止報告】に規定する取引停止報告に係る情報(以下,これらの情報を「不渡情報」という。)について漏えい等が生じないよう適正に管理しなければならない。
2 交換所は,細則で定める場合を除き,参加銀行以外の者に不渡情報を提供してはならない。
3 参加銀行は,不渡情報を手形取引の円滑化の確保および当該参加銀行の与信取引上の判断のためにのみ利用するものとし,当該参加銀行以外の者に不渡情報を提供してはならない。
4 交換所および参加銀行は,細則で定める安全管理に沿った措置を講じるものとする。
(不渡情報の共同利用)
第65 条の3 不渡情報については,「個人情報の保護に関する法律」(平成15 年法律第57 号)第23 条第4項第3号の規定を適用し,交換所および参加銀行のほか細則で定める者(以下「共同利用者」という。)との間で共同して利用するものとする。
2 前項により不渡情報を共同して利用する場合には,共同利用者は,細則で定める方法によりその目的等を継続的に公表するものとする。
(交換所の障害発生時の取引停止処分等に係る措置)
第65 条の4 交換所は,交換所の主要機器に障害が発生し,第4章に規定する取引停止処分等の実施が困難な場合には,直ちに必要な措置をとらなければならない。
(取引停止処分等に係る緊急措置)
第65 条の5 交換所は,台風,洪水,大火,地震等の災害,事変または交換所もしくは交換参加店(交換母店を含む。)における爆破,不法占拠等により,第64 条【不渡報告】および第65 条【取引停止報告】の規定にもとづく不渡報告への掲載または取引停止処分を行うことが不適当であると認められる緊急事態が発生した場合には,直ちに必要な措置をとり,幹事会に報告しなければならない。
2 交換所は,前項の事態が長期間にわたることが予想される場合には,幹事会の決定により必要な措置をとるものとする。
(異議申立)
第66 条 支払銀行は,第63 条【不渡届】第1項の第2号不渡届に対し,交換日の翌々営業日の営業時限(午後3時)までに,交換所に不渡手形金額相当額(以下「異議申立提供金」という。)を提供して異議申立をすることができる。ただし,不渡の事由が偽造または変造である場合は,交換所に対し,異議申立提供金の提供の免除を請求することができる。この請求に当たっては,異議申立書に細則で定める証明資料を添付しなければならない。
2 交換所は,前項ただし書きによる請求を受けた場合には,不渡手形審査専門委員会の審議に付し,その請求を理由があるものと認めるときは,異議申立提供金の提供を免除するものとする。
(異議申立提供金の返還)
第67 条 交換所は,次の各号に掲げる場合において,支払銀行から請求があったときは,異議申立提供金を返還するものとする。
一 不渡事故が解消し,持出銀行から交換所に不渡事故解消届が提出された場合
二 別口の不渡により取引停止処分が行われた場合
三 支払銀行から不渡報告への掲載または取引停止処分を受けることもやむを得ないものとして異議申立の取下げの請求があった場合
四 異議申立をした日から起算して2年を経過した場合
五 当該振出人等が死亡した場合
六 当該手形の支払義務のないことが裁判(調停,裁判上の和解等確定判決と同一の効力を有するものを含む。)により確定した場合
七 持出銀行から交換所に支払義務確定届または差押命令送達届が提出された場合
2 前項第5号または第6号の規定により異議申立提供金の返還を請求する場合には,その請求書に当該事実を証する資料を添付しなければならない。
3 第1項第3号により異議申立提供金を返還した場合には,その返還した日を交換日とする不渡届が提出されたものとみなして第64 条【不渡報告】または第65 条【取引停止報告】の規定を適用する。第1項第1号,第2号および第4号から第6号までの事由により異議申立提供金を返還した場合には,不渡報告への掲載または取引停止処分に付さないものとし,第7号の事由により異議申立提供金を返還した場合には,次条によるほかは不渡報告への掲載または取引停止処分に付さないものとする。
4 支払銀行は,手形の不渡が偽造,変造,詐取,紛失,盗難,取締役会承認等不存在その他これらに相当する事由によるものと認められる場合には,交換所に対し,異議申立提供金の返還を請求することができる。この場合においては,その請求書に細則で定める証明資料を添付しなければならない。
5 交換所は,前項の請求を受けた場合には,不渡手形審査専門委員会の審議に付し,その請求を理由があるものと認めるときは,異議申立提供金を返還する。
(支払義務の確定後における取引停止処分等)
第67 条の2 持出銀行は,異議申立に係る不渡手形について振出人等に当該不渡手形金額全額の支払義務のあることが裁判により確定した後においても当該手形の支払がなされていない場合には,細則で定めるところにより,交換所に対し,当該不渡手形の振出人等の不渡報告への掲載または取引停止処分の審査を請求することができる。
2 交換所は,前項の請求を受けた場合には,不渡手形審査専門委員会の審議に付し,その請求を理由があるものと認めるときは,同委員会の最終審査日を交換日とする不渡届が提出されたものとみなして第64 条【不渡報告】または第65 条【取引停止報告】の規定を適用するものとする。
(保険事故発生時における異議申立提供金の返還)
第67 条の3 交換所は,第66 条【異議申立】第1項の規定により異議申立提供金を提供した支払銀行に預金保険法で定める保険事故が生じた場合には,細則で定める手続により,当該支払銀行に異議申立提供金を返還する。
この場合,当該異議申立に係る振出人等は,不渡報告への掲載または取引停止処分に付さないものとする。
(不渡報告および取引停止処分の取消)
第68 条 不渡報告または取引停止処分が参加銀行の取扱錯誤による場合には,当該銀行は交換所に対し,不渡報告または取引停止処分の取消を請求しなければならない。
2 不渡報告または取引停止処分が参加銀行以外の金融機関の取扱錯誤による場合には,参加銀行は当該金融機関の依頼にもとづき,交換所に対し,不渡報告または取引停止処分の取消を請求することができる。
3 交換所は,前2項の請求を受けたときは,直ちに,不渡報告または取引停止処分を取消すものとする。
(偽造,変造等の場合の不渡報告または取引停止処分の取消)
第69 条 不渡報告または取引停止処分が偽造,変造,詐取,紛失,盗難,取締役会承認等不存在その他これらに相当する事由の手形について行われたものと認められる場合には,当該手形の振出人等と関係のある参加銀行は,交換所に対し,不渡報告または取引停止処分の取消を請求することができる。この場合においては,取消請求書に細則で定める証明資料を添付しなければならない。
2 交換所は,前項の請求を受けた場合には,不渡手形審査専門委員会の審議に付し,その請求を理由があるものと認めるときは,不渡報告または取引停止処分を取消すものとする。
(取引停止処分等の解除)
第70 条 参加銀行は,取引停止処分を受けた者について著しく信用を回復したとき,その他相当と認められる理由があるとき,または不渡報告に掲載された者について相当と認められる理由があるときは,交換所に対し,その解除を請求することができる。この場合においては,請求書に細則で定める証明資料を添付しなければならない。
2 交換所は,前項の請求を受けた場合には,不渡手形審査専門委員会の審議に付し,その請求を理由があると認めるときは,取引停止処分等を解除するものとする。
(不渡手形審査専門委員会)
第71 条 交換所は,不渡手形審査専門委員会を設置し,この章で定める事項その他必要な事項を審議させるものとする。

(東京手形交換所規則施行細則)
(依頼返却手形の特例)
第64 条 加盟銀行は,いったん交換に持出した手形について,別途支払済,その他真にやむを得ない理由があるときは,持帰銀行と協議して返却を依頼することができる。
2 持帰銀行は,持出銀行から返却を依頼された手形を返還する場合には,当該手形の返還に先立って持出店に連絡し,申出の事実を確認するものとする。
3 依頼返却手形の返還方法は,不渡手形についての規定に準ずる。この場合において,付箋には支払銀行の押切印を押捺するほか,持出店との連絡に当たった役席者名を記載(または認印の押捺)するとともに持出店の連絡者名を付記するものとする。
第4章 取引停止処分
(取引停止処分の対象)
第75 条 次の手形が不渡となった場合には,当該手形の持出銀行および支払銀行は,規則第63 条の規定により不渡届を提出しなければならない。
一 交換所における交換手形
二 委託金融機関(委託社員銀行を含む。次号において同じ。)と受託銀行(受託社員銀行を含
む。次号において同じ。)との間における交換手形
三 受託銀行を同じくする委託金融機関間における交換手形
2 同一銀行の交換参加店間における行内交換手形が不渡となった場合には,前項に準じて,不渡届を提出しなければならない。
3 前2項または次項の手形のいずれでもない手形で参加銀行を支払銀行とする手形が不渡となった場合には,当該手形の支払銀行は,規則第63 条第1項の規定により不渡届を提出しなければならない。
4 所持人が参加銀行の店頭で支払呈示した手形が不渡となった場合には,当該手形の支払銀行は,規則第63 条第1項の不渡届を提出することができる。
5 パーソナル・チェックにおいて当座取引上代理人である者が振出した小切手の不渡については,小切手面に代理関係の表示がない場合でも,その取引名義人を取引停止処分に付することとし,不渡届にはその取引名義人を振出人等として記載する。
6 規則第62 条第2項ただし書きに規定する債権保全のための貸出は,債権保全のために既存の貸出を継続する場合のほか,債権保全のために行う新規の貸出とする。
(不渡届)
第76 条 支払銀行は,不渡届(様式第21 号,第22 号)の甲,乙の両片を作成し,乙片を交換所へ提出し,甲片を不渡手形の返還の際に手形に添付して持出銀行へ送付する。
甲片の送付を受けた持出銀行は,その記載事項を確認して交換所へ提出する。
2 前条第3項または第4項に係る不渡届は,支払銀行において持出銀行欄空欄のまま,甲,乙の両片を作成し,その両片の標題の下部に「店内」と朱書したうえ,呈示日の翌々営業日午前9時30 分までに交換所へ提出する。
3 規則第63 条第2項ただし書きに係る不渡届には,支払銀行において甲,乙両片の標題の下部に「店頭返還」と朱書する。
4 同一の振出人等に関して同一交換日に係る不渡届が2枚以上提出された場合も,これを1回として計算する。
(不渡事由等)
第77 条 規則第63 条第1項に規定する不渡事由および不渡届の取扱いは,次によるものとする。
一 0(ゼロ)号不渡事由
適法な呈示でないこと等を事由とする次に掲げる不渡事由であり,この場合,不渡届の提出は不要である。
@ 手形法・小切手法等による事由
形式不備(振出日および受取人の記載のないものを除く。),裏書不備,引受なし,呈示期間経過後(手形にかぎる。),呈示期間経過後かつ支払委託の取消(小切手にかぎる。),期日未到来,除権決定
A 破産法等による事由
ア 財産保全処分等
(ア) 破産法(第28 条第1項,第91 条)による財産保全処分中
(イ) 破産法による包括的禁止命令(第25 条)
(ウ) 会社更生法(第28 条第1 項,第30 条,第35 条)による財産保全処分中
(エ) 会社更生法による包括的禁止命令(第25 条)
(オ) 民事再生法(第30 条第1項,第54 条,第79 条)による財産保全処分中
(カ) 民事再生法による包括的禁止命令(第27 条)
(キ) 会社法(第540 条第2 項,第825 条第1項)による財産保全処分中
イ 手続開始決定等
(ア) 破産手続開始決定(破産法第100 条第1項)
(イ) 会社更生手続開始決定(会社更生法第47 条第1 項)
(ウ) 民事再生手続開始決定(民事再生法第85 条第1項)
(エ) 清算手続による弁済禁止(会社法第500 条第1項,同法第661 条第1項,有限責任
事業組合契約に関する法律第47 条第1項)
(オ) 会社特別清算開始(会社法第537 条)
ウ 命令等にもとづく事由
支払禁止の仮処分決定(手形面の最終権利者が仮処分決定主文中における債務者または
裁判所執行官の場合)
エ 外国倒産処理手続に対する援助の処分に係る事由
外国倒産処理手続に対する援助の処分中(外国倒産承認援助法第26 条)
B 案内未着等による事由
案内未着,依頼返却,該当店舗なし,レート相違・換算相違,振出人等の死亡,再交換禁止(交換所規則施行細則第22 条本文)
C その他による事由
上記@,A,Bの各不渡事由に準ずる事由
二 第1号不渡事由
次の不渡事由であり,この場合,第1号不渡届の提出を必要とする。ただし,取引停止処分中の者に係る不渡(取引なし)については不渡届の提出を要しない。
資金不足(手形が呈示されたときにおいて当座勘定取引はあるがその支払資金が不足する場合)
取引なし(手形が呈示されたときにおいて当座勘定取引のない場合)
三 第2号不渡事由
0号不渡事由および第1号不渡事由以外のすべての不渡事由であって例示すると次のとおりであり,この場合,第2号不渡届の提出を必要とする。
契約不履行,詐取,紛失,盗難,印鑑(署名鑑)相違,偽造,変造,取締役会承認等不存在,金額欄記載方法相違(金額欄にアラビア数字をチェック・ライター以外のもので記入した場合等),約定用紙相違(銀行所定の用紙以外を使用した場合)
2 不渡事由が重複する場合は次による。
一 0号不渡事由と第1号不渡事由または第2号不渡事由とが重複する場合は,0号不渡事由が優先し,不渡届の提出を要しない。
二 第1号不渡事由と第2号不渡事由とが重複する場合は,第1号不渡事由が優先し,第1号不渡届による。ただし,第1号不渡事由と偽造または変造とが重複する場合は,第2号不渡届による。
(異議申立)
第78 条 規則第66 条の規定により異議申立をする場合には,異議申立書(様式第23 号)を提出するものとする。
2 異議申立提供金は協会名義の通知預金によるものとする。ただし,これによれない場合には,現金または自己宛小切手によることができる。
3 交換所は,前項ただし書きにより異議申立提供金を受入れた場合には,当該提供金を最寄りの取引銀行へ預託する。
4 交換所は,異議申立提供金を受入れたときは,異議申立提供金預り証(様式第24 号)を交付する。
(異議申立の特例)
第79 条 規則第66 条第1項のただし書きの規定により異議申立提供金の提供の免除を請求(以下「免除請求」という。)する場合には,不渡の事由が偽造または変造であることを証明するため異議申立書〔特例扱〕(様式第25 号)に次の資料を添付して交換日の翌々営業日の営業時限(午後3時)までに交換所に提出しなければならない。ただし,第1号の資料の提出期限は,交換日から起算して10 営業日とする。
一 告訴状写および同受理証明書(写)
ただし,警察署において告訴状の提出を要しないとされた場合は警察署への被害届写および同受理証明書(写)で足りる。
二 振出人等の陳述書
三 当座勘定取引証明書
四 届出印鑑写
五 偽造または変造手形の写
2 前項の規定にかかわらず,振出人等と取引がなくかつ用紙交付先と相違する場合等真にやむを得ない理由により前項第1号および第2号の資料の提出ができない場合には,当該資料に代え告訴状写の提出不能理由書および支払銀行の陳述書の提出によることができるものとする。
3 交換所は,不渡手形審査専門委員会の審議に必要とする場合には,前2項に規定する資料以外の証明資料の提出を求めることができる。
4 免除請求後,新事実が判明する等の理由により免除請求の維持が困難とされた場合には,支払銀行は遅滞なく免除請求を取下げ,交換所所定の取下書の提出と同時に異議申立提供金を提供しなければならない。
5 第1項第1号または第2項に規定する資料を提出できない場合には,支払銀行は交換日から起算して10 営業日の営業時限(午後3時)までに交換所所定の取下書の提出と同時に異議申立提供金を提供しなければならない。
6 不渡手形審査専門委員会の審議において異議申立提供金の免除請求が却下された場合,支払銀行は却下された日の翌々営業日の営業時限(午後3時)までに異議申立提供金を交換所に提供しなければならない。
7 前3項の異議申立提供金が提供されない場合には,異議申立が当初から行われなかったものとみなし,交換所は,不渡報告または取引停止報告に当該不渡手形の交換日を基準にして追加掲載するものとする。
(不渡事故解消届の提出)
第80 条 異議申立が行われた不渡届について不渡事故が解消したときは,持出銀行は,不渡事故解消届(様式第26 号)を交換所に提出するものとする。
(支払義務確定届の提出)
第80 条の2 異議申立に係る不渡手形について振出人等に当該不渡手形金額全額の支払義務のあ
ることが裁判により確定した場合には,持出銀行は,支払義務確定届(様式第26 号の2)を交換所に提出することができる。
(差押命令送達届の提出)
第80 条の3 異議申立に係る不渡手形について当該手形債権を請求債権とし異議申立提供金のための預託金の返還請求権を差押債権とする差押命令(差押・転付命令を含む。)が支払銀行に送達された場合には,持出銀行は,差押命令送達届(様式第26 号の3)を交換所に提出することができる。
(持出銀行が存しない場合の不渡事故解消届等の提出)
第80 条の4 前3条において,異議申立に係る不渡手形が第75 条【取引停止処分の対象】第3項または第4項に規定するものである場合には,各条に規定する各届の提出は支払銀行が行うものとする。
(異議申立提供金の返還)
第81 条 異議申立をした参加銀行が異議申立提供金の返還を請求する場合には,異議申立提供金返還請求書(様式第27 号)を提出しなければならない。ただし,異議申立提供金を通知預金として差入れている場合には,利息およびその計算書を添付しなければならない。
2 交換所は,異議申立提供金の返還の請求を受けたときは,通知預金として受入れていた場合を除き,当座小切手をもってこれを返還する。
3 交換所が受入れた異議申立提供金には利息を付さないものとする。
(異議申立提供金の返還の特例)
第82 条 規則第67 条第4項の規定により異議申立提供金の返還を請求する場合には,手形の不渡が偽造,変造,詐取,紛失,盗難,取締役会承認等不存在その他これらに相当する事由によるものであることを証明するため異議申立提供金返還請求書〔特例扱〕(様式第28 号)に第79 条【異議申立の特例】に規定する資料に準じた資料を添付しなければならない。
(支払義務の確定後における取引停止処分等)
第82 条の2 規則第67 条の2第1項に規定する請求(以下「処分審査請求」という。)は,第80条の2【支払義務確定届の提出】に規定する支払義務確定届または第80 条の3【差押命令送達届の提出】に規定する差押命令送達届が交換所に受理され,かつ当該受理日(差押命令送達届が交換所に受理された日の後に異議申立に係る不渡手形金額全額の支払義務が確定した場合には,当該確定の日。以下「受理日」という。)から起算して2か月後の応当日以後においても不渡手形の支払がなされていない場合にできるものとする。
2 持出銀行は,処分審査請求をする場合には,不渡報告・取引停止処分審査請求書(様式第28号の2)に次の資料を添付して交換所に提出するものとする。
一 支払義務の確定を証する次のいずれかの資料
@ 確定した手形訴訟判決文の写し
A 手形債権に係る確定した通常訴訟判決文の写し
B 手形債権に係る認諾調書の写し
C 手形債権に係る和解調書の写し
D 手形債権に係る調停調書の写し
二 当該不渡手形の写し
三 不払に関する事情説明書
3 処分審査請求は,受理日から起算して3か月後の応当日以後または当該不渡手形の異議申立日から起算して2年後の応当日以後はできないものとする。処分審査請求が認められている期間内であっても,同一の振出人等に係る同一交換日の他の不渡手形についてすでに処分審査請求がなされ,その請求が理由があるものと認められている場合も,同様とする。
4 交換所は,支払銀行および持出銀行に対して,不渡手形審査専門委員会での審議のために必要な資料の提出を求めることができる。
5 同一の振出人等に係る複数の不渡手形について処分審査請求が行われ,その請求が理由があるものと認められた場合には,不渡手形審査専門委員会の最終審査日が同一であっても,各々の不渡手形の交換日が異なるときは,第76 条第4項の規定にかかわらず,不渡届の提出回数はその交換日ごとに1回として計算するものとする。
(持出銀行が存しない場合の処分審査請求)
第82 条の3 処分審査請求は,異議申立に係る不渡手形が第75 条【取引停止処分の対象】第3項または第4項に規定するものである場合には,支払銀行がこれを行うものとする。
(不渡報告および取引停止処分の取消)
第83 条 規則第68 条第1項または第2項の規定により交換所に不渡報告または取引停止処分の取消を請求する場合には,不渡報告または取引停止処分の取消請求書(様式第29 号)に取扱錯誤を証する資料を添付しなければならない。
(偽造,変造等の場合の不渡報告または取引停止処分の取消)
第84 条 規則第69 条第1項の規定により交換所に不渡報告または取引停止処分の取消を請求する場合には,不渡報告または取引停止処分が偽造,変造,詐取,紛失,盗難,取締役会承認等不存在その他これらに相当する事由の手形について行われたものであることを証明するため,不渡報告または取引停止処分の取消請求書(様式第30 号)に第79 条【異議申立の特例】に規定する資料に準じた資料を添付しなければならない。
(取引停止処分等の解除)
第85 条 規則第70 条第1項の規定により交換所に取引停止処分等の解除を請求する場合には,解除を相当とする理由の存在を証明するため,取引停止処分等解除請求書(様式第31 号)に次の資料を添付しなければならない。
一 請求銀行の理由書
二 振出人等の陳述書
三 預金残高証明書
四 理由書記載の事実を証明する資料

(書式  小切手訴訟,預託金仮差押)

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債権仮差押命令申立書
平成  年  月  日
〇〇地方裁判所民事部保全係 御中

                  債権者〇〇 〇〇  印

当事者の表示    別紙当事者目録記載のとおり
請求債権の表示   別紙請求債権目録記載のとおり
仮差押債権の表示   別紙差押債権目録記載のとおり

申立の趣旨                    
 債権者の債務者に対する上記請求債権の執行を保全するため,別紙差押債権目録記載の債権は,仮に差し押さえる。
第三債務者は,債務者に対し,仮差押えに係る債務の支払をしてはならない。
との裁判を求める。

申立の理由                    
第1 被保全権利
 1 債務者は前記請求債権目録記載の小切手1通を振り出し(甲1号   

証),債権者は右小切手を所持している。
 2 債権者は,平成 年 月 日 支払人に対して右小切手を提示して支払いを求めたところ支払人である本件第三債務者から契約不履行を理由に支払いを拒絶された。

第2 保全の必要性
1 債務者は,支払人を通じて契約不履行を理由に小切手の支払いを拒絶すると同時に,不渡処分を回避するために,右小切手金と同額を支払人に預託して異議申立手続きを行い債権者と争っている。しかし,前記債務不履行の理由は存在せず,債権者は,債務者に対して,上記請求訴訟を提起すべく準備中であるが,債務者には他にも過大な債務があり,債務者の前記仮差押債権目録記載の債権について他の債権者から強制執行の差押え,債権譲渡,第三債務者(支払人銀行)からの相殺手続きが取られる危険が十分考えられる(甲第2号証)。
2 したがって,現時点で本件不渡異議申立預託金の返還請求権に対し仮差押えをしておかなければ,後日,本案訴訟に勝訴したとしてもその執行が不能または著しく困難になるおそれがあるので,本申立に及ぶ次第である。

疎明方法                    
1 甲第1号証  (小切手)
2 甲第2号証  (上申書)
3 甲第3号証  (   )

添付書類                    
 甲号証写し              各1通
資格証明(債務者)           1通 

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当事者目録
〒123-4567
東京都○区○1−2−3
債権者    ○○○○
     電 話 ○○○−○○○−○○○○
FAX ○○○−○○○−○○○○
〒123-4567
東京都○区○3−2−1
債務者    ○○株式会社
       代表取締役 ○○○○

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請求債権目録
金○○万円
ただし,債権者が債務者に対して有する下記小切手金債権

金 額 ○○万円
支 払 地 東京都○区
振 出 地 同 上
支 払 人 株式会社○○銀行○○支店
振 出 日 平成○年○月○日
振 出 人 ○○○○株式会社
持参人払式
呈示の日 平成○年○月○日

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仮差押債権目録
 金○○万円
 ただし,債務者が別紙請求債権目録記載の小切手の不渡処分を免れるため,第三債務者の加盟する銀行協会(手形交換所)に提供させる目的で,第三債務者(○○支店扱い)に預託した金員の返還請求権

訴 状(小切手訴訟)
東京地方裁判所
民事第8部 御中
平成○年○月○日
〒123-4567
東京都○区○1−2−3
原 告    ○○○○

〒123-4567
東京都○区○3−2−1
被 告    ○○株式会社
       代表取締役 ○○○○

小切手金請求事件

訴訟物価額     金300万円
貼用印紙額   金20,000円

請求の趣旨
1 被告は原告に対し,金269万円及びこれに対する平成○年○月○日から完済にいたるまで年6分の割合による金員を支払え。
1 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決ならびに仮執行の宣言を求める。
本件は小切手訴訟による審理及び裁判を求める。

請求の原因

1 被告は,別紙小切手目録記載の小切手(以下「本件小切手」という。)1通を振り出した(甲第1号証の1ないし甲第1号証の3)。
2 原告は,本件小切手を所持している。
2 原告は本件小切手を支払呈示期間内に支払人に呈示したが,その支払を拒絶された(甲第1号証の3)。
3 よって,原告は被告に対し,本件小切手金300万円及びこれに対する平成○年○月○日から完済にいたるまで小切手法所定の年6分の割合による利息金の支払を求める。

証 拠 方 法
甲1号証の1から3まで 本件小切手(表面,裏面,付箋)

添 付 書 類
1,訴状副本       1通
1,甲号証写し     各1通
1,資格証明書       1通

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小切手目録
1,小切手
金 額 金300万円
支 払 地 東京都○区
振 出 地 同 上
支 払 人 株式会社○○銀行○○支店
振 出 日 平成○年○月○日
振 出 人 ○○○○株式会社
持参人払式
呈示の日 平成○年○月○日
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判例紹介
最高裁昭和32年7月19日判決
抜粋 
「論旨は,本件手形には「依頼返還」の符箋がついて,受入銀行から持出銀行に返還されたのであるから,支払拒絶があつたわけでなく,又呈示は撤回したものといわなければならないと主張するが,本件手形については,満期日に東京手形交換所における呈示により支払を求めたが,これが支払を得られなかつたこと(手形法七七条三八条二項四三条)は原判決の認定するところである,又所論の「依頼返還」は振出人の懇請により持出銀行が,受入銀行に依頼して,呈示後返還を受けたものであるが,右措置は専ら持出人に対する取引停止処分免脱のための便宜に出でたものであることも原判決の認定するところである,そして右認定事実に基いて一旦生じた支払のための呈示並に支払拒絶の効力を滅却させるものでないとの趣旨に帰する原判決の判断は,これを首肯することができる。論旨は採用できない。」


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