刑事記録の閲覧・謄写

刑事|被害者参加制度の下での犯罪被害者等に対する証拠の開示に関する依命通達|最高裁昭和28年7月18日判決

目次

  1. 質問
  2. 回答
  3. 解説
  4. 関連事例集
  5. 参考判例

質問:

先日,強制わいせつの被害に遭いました。犯人は逮捕され,現在警察や検察で取調べを受けており,今後起訴される予定です。被害者として事件の真相を知りたいと思い,捜査機関が作成した書類を見たいと考えていますが,どのような手段があるのでしょうか。

回答:

1 まず,本件事件が捜査段階にある場合には,原則として捜査記録を見ることはできません(刑事訴訟法47条)。これは,捜査段階で捜査記録が開示されることにより,事件関係者(特に被害者)の名誉・プライバシー等が侵害するおそれ(元々刑事裁判は,自力救済禁止の反射的効果として広く被害者側の処罰請求権に基づくもので被害者及び公共の秩序を保持するためにあります。)や公正,公平,迅速を旨とする捜査・公判に支障を生ずるおそれがあるためです(憲法31条,37条1項,刑訴1条)。

2 次に,本件事件について公訴が提起された場合であっても,第一回公判期日前の段階では,上記趣旨が依然として妥当するため,訴訟記録は原則として公開されません。

もっとも,平成20年9月5日付「被害者参加制度の下での犯罪被害者等に対する証拠の開示に関する依命通達」において,被害者参加制度を利用している場合には,検察官が公判に提出する証拠を閲覧することができる運用が採られています。

さらに,第一回公判期日後においては,犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律3条及び4条において,被害者等による公判記録の閲覧及び謄写,同種余罪の被害者等による公判記録の閲覧及び謄写が規定されています。

3 また,判決確定後は,刑事訴訟法53条1項に基づき,何人も,被告事件の終結後,訴訟記録を閲覧することができます。裁判の公開の原則(憲法37条1項)の表れです。記録の閲覧ができなければ,刑事裁判が公平,適正なものかどうかの最終的判断ができないからです。又,判決が確定すれば,裁判の公正,公平,迅速性を侵害することはないからです。さらに,関係人のプライバシーもマスキング方式(関係部分黒塗り)で保護されています。

4 なお,以上は起訴された場合の訴訟記録についての閲覧方法でしたが,検察庁においては,不起訴記録についても可能な限り開示する運用がなされています。詳細については,下記解説に記載した検察庁の運用をご覧ください。

5 以上のように,刑事記録の閲覧については,公訴提起の前後及び犯罪被害者か否かなどの差異により閲覧の可否や範囲が異なってはいるものの,閲覧の必要性とそれにより生じる不利益を考慮した上で,相当と認められる範囲において,弾力的な運用がなされているといえます。

本件事件においても,事件の類型として,検察庁にどのような証拠が存在する可能性があるのか,どのような目的で当該証拠を利用するのかについてご不明な点がある場合には,弁護士ともご相談の上,各種開示制度を利用することが考えられます。

なお,記録の保存については,事件の性質に応じた保存期間が定められていますので,記録の保存期間内に閲覧しなければならないことにも注意を要します。

4 犯罪被害に関する関連事例集参照。

解説:

1 捜査段階

(1)非公開の原則

刑事訴訟法47条においては,「訴訟に関する書類は,公判の開廷前には,これを公にしてはならない。但し,公益上の必要その他の事由があつて,相当と認められる場合は,この限りでない」と規定されており,被告事件又は被疑事件に関して作成された書類は,公判の開廷前には,原則として非公開とされています。

この趣旨は,判例(最高裁昭和28年7月18日判決)によると,「訴訟に関する書類が公判開廷前に公開されることによって訴訟関係人の名誉が毀損され,公序良俗が害され,または裁判に対する不当な影響が引き起こされるのを防止する」点にあるとされています。刑事裁判の真の目的は,一旦乱れた公正な法秩序の回復,維持にあり,当該訴訟関係人,特に被害者等の利益が害されることがあっては元も子もないからです。

もっとも,刑事訴訟法47条ただし書において,「公益上の必要その他の事由があって,相当と認められる場合」には,被告事件又は被疑事件に関して作成された書類が公開される場合があることが規定されています。

この「公益上の必要」の一例としては,両議院の国政調査権(憲法62条,国会法104条)などが当たると考えられており,「その他の事由」とは,上記「公益上の必要」に準じる事由を指すものと考えられています。

(2)不起訴の場合

捜査の結果,検察官が,当該被疑事件を不起訴処分とし,公訴を提起しない場合については,捜査記録を閲覧・謄写するための明文の規定がありませんでした。しかしながら,以下の検察庁の運用(http://www.moj.go.jp/keiji1/keiji_keiji23.html)により,この「その他の事由」に含まれるものとして考えることができます。

不起訴事件記録の開示について

1 被害者等の方々に対する不起訴記録の開示に関する従来の運用について

不起訴記録については,これを開示すると,関係者の名誉・プライバシー等を侵害するおそれや捜査・公判に支障を生ずるおそれがあるため,刑事訴訟法第47条により,原則として,これを公にしてはならないとされています。

しかし,法務省においては,平成12年2月4日付けで被害者等の方々に対する不起訴記録の開示について,平成16年5月31日付けで民事裁判所から不起訴記録に関する文書送付嘱託がなされた場合の対応について,それぞれ全国の検察庁に指針を示しており,検察庁においては,刑事訴訟法第47条の趣旨を踏まえつつ,被害者等の保護等の観点と開示により関係者のプライバシー等を侵害するおそれや捜査・公判に支障を生ずるおそれの有無等を個別具体的に勘案し,相当と認められる範囲で,弾力的な運用を行ってきたところです。

2 新たな方針について

近時,被害者等の方々からは,被害を受けた事件の内容を知りたいとの強い要望がなされているところであり,このような要望にこたえ,被害者等の方々の保護をより十全なものとするため,従来の指針に加え,刑事訴訟法第316条の33以下に規定された被害者参加の対象事件(以下「被害者参加対象事件」という。)の不起訴記録については,被害者等の方々が,「事件の内容を知ること」などを目的とする場合であっても,客観的証拠については原則として閲覧を認めるという,より弾力的な運用を図るのが相当であると考え,平成20年12月1日から実施することとして,同年11月19日付けで,全国の検察庁に通達を発出しました。

従来の指針が適用される部分も含めた不起訴記録の開示に関する全体的な方針の概要は,下記のとおりです。

第1 不起訴記録の開示について

1 被害者参加対象事件について閲覧請求がなされた場合

(1) 閲覧請求の主体

被害者参加対象事件,すなわち

ア 故意の犯罪行為により人を死傷させた罪

イ 刑法第176条から第178条まで,第211条,第220条又は第224条から第227条までの罪

ウ イに掲げる罪のほか,その犯罪行為にこれらの罪の犯罪行為を含む罪(アに掲げる罪を除く。)

エ アからウに掲げる罪の未遂罪

に係る事件の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人又はそれらの代理人たる弁護士については,後記(2)以下の基準に従って閲覧を認めることとする。

また,被害者が死亡した場合又はその心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者,直系の親族又は兄弟姉妹の方々についても,後記(2)以下の基準に従って閲覧を認める。

(2) 閲覧目的

従来は,不起訴記録について被害者等の方々に閲覧等を認めるのは,民事訴訟等において被害回復のための損害賠償請求権その他の権利を行使する目的である場合に限っていたが,今後は,前記(1)の被害者参加対象事件の被害者等の方々については,このような場合に限らず,「事件の内容を知ること」等を目的とする場合であっても,原則として閲覧を認める。

(3) 関係者の名誉に対する配慮等

ア関係者の名誉・プライバシー等にかかわる証拠の場合,イ関連事件の捜査・公判に具体的な影響を及ぼす場合,ウ将来における刑事事件の捜査・公判の運営に支障を生ずるおそれがある場合などは,閲覧を認めず,又は当該部分にマスキングの措置を講ずる。

(4) 閲覧の対象となる不起訴記録

実況見分調書や写真撮影報告書等の客観的証拠について,原則として,代替性の有無にかかわらず,相当でないと認められる場合を除き,閲覧を認める。

2 被害者参加対象事件以外の事件について閲覧・謄写請求がなされた場合

(1) 閲覧・謄写請求の主体

ア 被害者参加対象事件以外の事件の被害者等の方々若しくは当該被害者の法定代理人又はそれらの代理人たる弁護士について,後記(2)以下の基準に従って閲覧・謄写を認めることとする。

閲覧・謄写を認めることとする被害者の親族の方々の範囲については,前記1(1)と同様である。

イ 被害者等以外の者から,閲覧・謄写請求がなされた場合でも,例えば,過失相殺事由の有無等を把握するため,加害者側が記録の閲覧・謄写を求めるような場合には,正当に被害回復が行われることに資する場合も少なくないので,相当と認められるときには,閲覧・謄写に応じる。

さらに,損害保険料率算出機構,財団法人交通事故紛争処理センター,全国共済農業協同組合連合会及び財団法人自賠責保険・共済紛争処理機構からの照会については,後記第2の民事裁判所からなされた不起訴記録の文書送付嘱託に関し,客観的証拠の送付に応じる場合と同様に取り扱う。

これらの被害者等以外の者から閲覧・謄写請求がなされた場合の取扱いについては,前記

1(1)記載の被害者参加対象事件の場合も同様である。

(2) 閲覧目的

民事訴訟等において被害回復のための損害賠償請求権その他の権利を行使する目的である場合に閲覧を認める。

(3) 関係者の名誉に対する配慮等

前記1(3)と同様である。

(4) 閲覧の対象となる不起訴記録

客観的証拠であって,当該証拠が代替性に乏しく,その証拠なくしては,立証が困難であるという事情が認められるものについて,閲覧・謄写の対象とし,代替性がないとまではいえない客観的証拠についても,必要性が認められ,かつ,弊害が少ないときは,閲覧・謄写を認める。

第2 民事裁判所から不起訴記録の文書送付嘱託等がなされた場合

1 不起訴記録中の客観的証拠の開示について

前記第1,2,(4)にいう必要性が認められる場合,客観的証拠の送付に応じる。

2 不起訴記録中の供述調書の開示について

次に掲げる要件をすべて満たす場合には,供述調書を開示する。

(1) 民事裁判所から,不起訴記録中の特定の者の供述調書について文書送付嘱託がなされた場合であること。

(2) 当該供述調書の内容が,当該民事訴訟の結論を直接左右する重要な争点に関するものであって,かつ,その争点に関するほぼ唯一の証拠であるなど,その証明に欠くことができない場合であること。

(3) 供述者が死亡,所在不明,心身の故障若しくは深刻な記憶喪失等により,民事訴訟においてその供述を顕出することができない場合であること,又は当該供述調書の内容が供述者の民事裁判所における証言内容と実質的に相反する場合であること。

(4) 当該供述調書を開示することによって,捜査・公判への具体的な支障又は関係者の生命・身体の安全を侵害するおそれがなく,かつ,関係者の名誉・プライバシーを侵害するおそれがあるとは認められない場合であること。

3 目撃者の特定のための情報の提供について

次に掲げる要件をすべて満たす場合には,当該刑事事件の目撃者の特定に関する情報のうち,氏名及び連絡先を民事裁判所に回答する。

(1) 民事裁判所から,目撃者の特定のための情報について調査の嘱託がなされた場合であること。

(2) 目撃者の証言が,当該民事訴訟の結論を直接左右する重要な争点に関するものであって,かつ,その争点に関するほぼ唯一の証拠であるなど,その証明に欠くことができない場合であること。

(3) 目撃者の特定のための情報が,民事裁判所及び当事者に知られていないこと。

(4) 目撃者の特定のための情報を開示することによって,捜査・公判への具体的な支障又は目撃者の生命・身体の安全を侵害するおそれがなく,かつ,関係者の名誉・プライバシーを侵害するおそれがないと認められる場合であること。

2 公判段階

(1)第一回公判期日前

第一回公判期日前の段階は,「公判の開廷前」であるため,刑事訴訟法47条により,訴訟に関する記録は,原則として非公開とされています。

(2)第一回公判期日後

刑事訴訟法53条1項は,「何人も被告事件の終結後訴訟記録を閲覧することができる。」と規定していることから,被告事件が確定するまでは刑事記録の閲覧はできないとされていました。裁判は公開の法廷で行われるので記録の閲覧ができなくても不都合はないという建前でした。しかし,近時犯罪被害者等の権利利益の保護を図る必要があるという主張が高まり,刑事手続に付随する措置に関する法律(以下「犯罪被害者保護法」といいます。)3条及び4条において,被害者等による公判記録の閲覧及び謄写,同種余罪の

被害者等による公判記録の閲覧及び謄写が規定されました。

すなわち,犯罪被害者保護法3条1項では,「刑事被告事件の係属する裁判所は,第一回の公判期日後当該被告事件の終結までの間において,当該被告事件の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士から,当該被告事件の訴訟記録の閲覧又は謄写の申出があるときは,検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き,閲覧又は謄写を求める理由が正当でないと認める場合及び犯罪の性質,審理の状況その他の事情を考慮して閲覧又は謄写をさせることが相当でないと認める場合を除き,申出をした者にその閲覧又は謄写をさせるものとする」と規定されています。

また,犯罪被害者保護法4条1項では,「刑事被告事件の係属する裁判所は,第一回の公判期日後当該被告事件の終結までの間において,次に掲げる者から,当該被告事件の訴訟記録の閲覧又は謄写の申出があるときは,被告人又は弁護人の意見を聴き,第一号又は第二号に掲げる者の損害賠償請求権の行使のために必要があると認める場合であって,犯罪の性質,審理の状況その他の事情を考慮して相当と認めるときは,申出をした者にその閲覧又は謄写をさせることができる。 一 被告人又は共犯により被告事件に係る犯罪行為と同様の態様で継続的に又は反復して行われたこれと同一又は同種の罪の犯罪行為の被害者 二 前号に掲げる者が死亡した場合又はその心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者,直系の親族又は兄弟姉妹 三 第一号に掲げる者の法定代理人 四 前三号に掲げる者から委託を受けた弁護士」と規定されています。

3 判決確定後

すでに説明した通り,刑事訴訟法53条1項には,「何人も,被告事件の終結後,訴訟記録を閲覧することができる。但し,訴訟記録の保存又は裁判所若しくは検察庁の事務に支障のあるときは,この限りでない」と規定され被告事件の終結前は,当該事件の訴訟関係人を除いて,一般人には訴訟記録を閲覧することは認められておらず,判決の確定後に,「何人も」訴訟記録を閲覧することができることになっていました。

なお,具体的に閲覧を請求する先は確定した訴訟記録の保管者は,当該事件について第一審の裁判をした裁判所に対応する検察庁の検察官とされていますから(刑事確定訴訟記録法2条1項)当該事件について第一審の裁判をした裁判所に対応する検察庁の検察官(刑事確定訴訟記録法4条1項)となります。

4 記録の保存期間

刑事記録の保管期間については,以下のように,起訴された場合,不起訴の場合に分けて,詳細な規定が定められています。保管期間が短いものでは1年というものもありますので,保管期間経過前に刑事記録を閲覧する必要があります。

(1)起訴された場合

刑事確定訴訟記録法2条2項,別表,刑事確定訴訟記録法施行規則1条ないし4条において,詳細な規定が定められています。

(2)不起訴の場合

検察庁の記録事務規程(法務省訓令)24条において,詳細な規定が定められています。

以上

関連事例集

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※参照条文

<刑事訴訟法>

第一条 この法律は,刑事事件につき,公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ,事案の真相を明らかにし,刑罰法令を適正且つ迅速に適用実現することを目的とする。

第四十七条 訴訟に関する書類は,公判の開廷前には,これを公にしてはならない。但し,公益上の必要その他の事由があつて,相当と認められる場合は,この限りでない。

第五十三条 何人も,被告事件の終結後,訴訟記録を閲覧することができる。但し,訴訟記録の保存又は裁判所若しくは検察庁の事務に支障のあるときは,この限りでない。

2 弁論の公開を禁止した事件の訴訟記録又は一般の閲覧に適しないものとしてその閲覧が禁止された訴訟記録は,前項の規定にかかわらず,訴訟関係人又は閲覧につき正当な理由があつて特に訴訟記録の保管者の許可を受けた者でなければ,これを閲覧することができない。

3 日本国憲法第八十二条第二項 但書に掲げる事件については,閲覧を禁止することはできない。

4 訴訟記録の保管及びその閲覧の手数料については,別に法律でこれを定める。

第三百十六条の三十三 裁判所は,次に掲げる罪に係る被告事件の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士から,被告事件の手続への参加の申出があるときは,被告人又は弁護人の意見を聴き,犯罪の性質,被告人との関係その他の事情を考慮し,相当と認めるときは,決定で,当該被害者等又は当該被害者の法定代理人の被告事件の手続への参加を許すものとする。

一 故意の犯罪行為により人を死傷させた罪

二 刑法第百七十六条 から第百七十八条 まで,第二百十一条,第二百二十条又は第二百二十四条から第二百二十七条までの罪

三 前号に掲げる罪のほか,その犯罪行為にこれらの罪の犯罪行為を含む罪(第一号に掲げる罪を除く。)

四 前三号に掲げる罪の未遂罪

2 前項の申出は,あらかじめ,検察官にしなければならない。この場合において,検察官は,意見を付して,これを裁判所に通知するものとする。

3 裁判所は,第一項の規定により被告事件の手続への参加を許された者(以下「被害者参加人」という。)が当該被告事件の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人に該当せず若しくは該当しなくなつたことが明らかになつたとき,又は第三百十二条の規定により罰条が撤回若しくは変更されたため当該被告事件が同項各号に掲げる罪に係るものに該当しなくなつたときは,決定で,同項の決定を取り消さなければならない。犯罪の性質,被告人との関係その他の事情を考慮して被告事件の手続への参加を認めることが相当でないと認めるに至つたときも,同様とする。

<犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律>

(被害者等による公判記録の閲覧及び謄写)

第三条 刑事被告事件の係属する裁判所は,第一回の公判期日後当該被告事件の終結までの間において,当該被告事件の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士から,当該被告事件の訴訟記録の閲覧又は謄写の申出があるときは,検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き,閲覧又は謄写を求める理由が正当でないと認める場合及び犯罪の性質,審理の状況その他の事情を考慮して閲覧又は謄写をさせることが相当でないと認める場合を除き,申出をした者にその閲覧又は謄写をさせるものとする。

2 裁判所は,前項の規定により謄写をさせる場合において,謄写した訴訟記録の使用目的を制限し,その他適当と認める条件を付することができる。

3 第一項の規定により訴訟記録を閲覧し又は謄写した者は,閲覧又は謄写により知り得た事項を用いるに当たり,不当に関係人の名誉若しくは生活の平穏を害し,又は捜査若しくは公判に支障を生じさせることのないよう注意しなければならない。

(同種余罪の被害者等による公判記録の閲覧及び謄写)

第四条 刑事被告事件の係属する裁判所は,第一回の公判期日後当該被告事件の終結までの間において,次に掲げる者から,当該被告事件の訴訟記録の閲覧又は謄写の申出があるときは,被告人又は弁護人の意見を聴き,第一号又は第二号に掲げる者の損害賠償請求権の行使のために必要があると認める場合であって,犯罪の性質,審理の状況その他の事情を考慮して相当と認めるときは,申出をした者にその閲覧又は謄写をさせることができる。

一 被告人又は共犯により被告事件に係る犯罪行為と同様の態様で継続的に又は反復して行われたこれと同一又は同種の罪の犯罪行為の被害者

二 前号に掲げる者が死亡した場合又はその心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者,直系の親族又は兄弟姉妹

三 第一号に掲げる者の法定代理人

四 前三号に掲げる者から委託を受けた弁護士

2 前項の申出は,検察官を経由してしなければならない。この場合においては,その申出をする者は,同項各号のいずれかに該当する者であることを疎明する資料を提出しなければならない。

3 検察官は,第一項の申出があったときは,裁判所に対し,意見を付してこれを通知するとともに,前項の規定により提出を受けた資料があるときは,これを送付するものとする。

4 前条第二項及び第三項の規定は,第一項の規定による訴訟記録の閲覧又は謄写について準用する。

<刑事確定訴訟記録法>

第二条 刑事被告事件に係る訴訟の記録(犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律(平成十二年法律第七十五号)第十四条第一項に規定する和解記録については,その謄本)は,訴訟終結後は,当該被告事件について第一審の裁判をした裁判所に対応する検察庁の検察官(以下「保管検察官」という。)が保管するものとする。

2 前項の規定により保管検察官が保管する記録(以下「保管記録」という。)の保管期間は,別表の上欄に掲げる保管記録の区分に応じ,それぞれ同表の下欄に定めるところによる。

3 保管検察官は,必要があると認めるときは,保管期間を延長することができる。

第四条 保管検察官は,請求があつたときは,保管記録(刑事訴訟法第五十三条第一項の訴訟記録に限る。次項において同じ。)を閲覧させなければならない。ただし,同条第一項ただし書に規定する事由がある場合は,この限りでない。

2 保管検察官は,保管記録が刑事訴訟法第五十三条第三項に規定する事件のものである場合を除き,次に掲げる場合には,保管記録(第二号の場合にあつては,終局裁判の裁判書を除く。)を閲覧させないものとする。ただし,訴訟関係人又は閲覧につき正当な理由があると認められる者から閲覧の請求があつた場合については,この限りでない。

一 保管記録が弁論の公開を禁止した事件のものであるとき。

二 保管記録に係る被告事件が終結した後三年を経過したとき。

三 保管記録を閲覧させることが公の秩序又は善良の風俗を害することとなるおそれがあると認められるとき。

四 保管記録を閲覧させることが犯人の改善及び更生を著しく妨げることとなるおそれがあると認められるとき。

五 保管記録を閲覧させることが関係人の名誉又は生活の平穏を著しく害することとなるおそれがあると認められるとき。

六 保管記録を閲覧させることが裁判員,補充裁判員,選任予定裁判員又は裁判員候補者の個人を特定させることとなるおそれがあると認められるとき。

3 第一項の規定は,刑事訴訟法第五十三条第一項の訴訟記録以外の保管記録について,訴訟関係人又は閲覧につき正当な理由があると認められる者から閲覧の請求があつた場合に準用する。

4 保管検察官は,保管記録を閲覧させる場合において,その保存のため適当と認めるときは,原本の閲覧が必要である場合を除き,その謄本を閲覧させることができる。

別表 (第二条関係)

保管記録の区分保管期間

一 裁判書

1 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に処する確定裁判の裁判書百年

2 有期の懲役又は禁錮に処する確定裁判の裁判書五十年

3 罰金,拘留若しくは科料に処する確定裁判又は刑を免除する確定裁判の裁判書二十年(法務省令で定めるものについては,法務省令で定める期間)

4 無罪,免訴,公訴棄却又は管轄違いの確定裁判の裁判書

(一) 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係るもの十五年

(二) 有期の懲役又は禁錮に当たる罪に係るもの五年

(三) 罰金,拘留又は科料に当たる罪に係るもの三年

5 控訴又は上告の申立てについての確定裁判(1から4までの確定裁判を除く。)の裁判書控訴又は上告に係る被告事件についての1から4までの確定裁判の区分に応じて,その裁判の裁判書の保管期間と同じ期間

6 その他の裁判の裁判書法務省令で定める期間

二 裁判書以外の保管記録

1 刑に処する裁判により終結した被告事件の保管記録

(一) 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に処する裁判に係るもの五十年

(二) 二十年を超える有期の懲役又は禁錮に処する裁判に係るもの三十年

(三) 十年以上二十年以下の懲役又は禁錮に処する裁判に係るもの二十年

(四) 五年以上十年未満の懲役又は禁錮に処する裁判に係るもの十年

(五) 五年未満の懲役又は禁錮に処する裁判に係るもの五年

(六) 罰金,拘留又は科料に処する裁判に係るもの三年(法務省令で定めるものについては,法務省令で定める期間)

2 刑の免除,無罪,免訴,公訴棄却又は管轄違いの裁判により終結した被告事件の保管記録

(一) 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係るもの十五年

(二) 有期の懲役又は禁錮に当たる罪に係るもの五年

(三) 罰金,拘留又は科料に当たる罪に係るもの三年

3 その他の保管記録法務省令で定める期間

記録事務規程(法務省訓令)

第1章 総則

(目的)

第1条 この規程は,刑事確定訴訟記録,裁判所不提出記録,不起訴記録,費用補償請求事件記録及び刑事補償請求事件記録の管理に関する事務の取扱手続を規定し,これを取り扱う職員の職務とその責任を明確にし,もつてその事務の適正な運用を図ることを目的とする。

第5章 不起訴記録

(保存)

第24条 検察官は,次条の場合を除き,不起訴記録を,次の表の左欄に掲げる不起訴記録の区分に応じ,不起訴の裁定をした日から起算して同表の右欄に定める期間保存する。

不起訴記録の区分期間

1 事件事務規程第72条第2項第16号から第18号まで,又は第20号の裁定主

文に係る不起訴記録(本表第3号(2)に規定する者を除く。)

(1) 人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの(死刑に当たるものを

除く。)について

ア 無期の懲役又は禁錮に当たる罪に係る事件のもの30年

イ 長期20年の懲役又は禁錮に当たる罪に係る事件のもの20年

ウ ア及びイに掲げる罪以外の懲役又は禁錮に当たる罪に係る事件のもの10年

(2) 人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪について

ア 死刑に当たる罪に係る事件のもの25年

イ 無期の懲役又は禁錮に当たる罪に係る事件のもの15年

ウ 長期15年以上の懲役又は禁錮に当たる罪に係る事件のもの10年

エ 長期10年以上15年未満の懲役又は禁錮に当たる罪に係る事件のもの 7年

オ 長期5年以上10年未満の懲役又は禁錮に当たる罪に係る事件のもの 5年

カ 長期5年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪に係る事件のもの 3年

キ 拘留又は科料に当たる罪に係る事件のもの 1年

2 事件事務規程第72条第2項第15号又は第19号の裁定主文に係る不起訴記録 5年

3 次に掲げる不起訴記録

(1) 事件事務規程第72条第2項第1号から第14号までの裁定主文に係る不起訴

記録 1年

(2) 道路交通法違反事件又は自動車の保管場所の確保等に関する法律違反事件の不

起訴記録であって,区検察庁の検察官がした不起訴処分に係るもの 1年

(人を死亡させた罪であつて死刑に当たるものに係る不起訴記録の一部の保存に関する特例)

第24条の2 検察官は,事件事務規程第72条第2項第16号から第18号まで,又は第20号の裁定主文に係る不起訴記録のうち,人を死亡させた罪であつて死刑に当たるものについては,被疑者の年齢が満100歳に達した日までの間保存する。

2 前項の場合において,被疑者が不詳であるときの被疑者の年齢については,犯罪行為が行われた日又は行われたとされる日に満20歳に達したものとみなす。

(保存期間の延長)

第24条の3 検察官は,必要があると認めるときは,前2条に規定する不起訴記録の保存期間を延長することができる。 (不起訴記録保存簿への登載等)

第25条 記録係事務官は,不起訴記録を受領したときは,不起訴記録保存簿(様式第16号)に所定の事項を登載するとともに,保存番号を不起訴・中止裁定書に記入する。2 不起訴記録保存簿は,不起訴記録の区分ごとに作成し,その保存番号は,不起訴記録ごとに一連番号を付し,暦年ごとに改める。

3 第4条の規定は,検察官が不起訴記録の保存期間を延長することとした場合に準用する。この場合において,同条中「保管期間延長記録保管簿」とあるのは,「保存期間延長不起訴記録保存簿(様式第17号)」と読み替えるものとする。

(廃棄等)

第26条 第9条及び第10条の規定は,不起訴記録の保存期間が満了した場合に準用する。

2 不起訴処分に付された事件が再起されたときは,記録係事務官は,不起訴記録保存簿又は保存期間延長不起訴記録保存簿の備考欄にその旨及び再起年月日を記入する。3 前項の規定は,不起訴処分に付された事件が刑事訴訟法第266条第2号の規定により裁判所の審判に付された場合に準用する。

(刑事参考不起訴記録)

第27条 法務大臣において刑事法制及びその運用並びに犯罪に関する調査研究の重要な参考資料として指定した不起訴記録(保存期間の満了したものに限る。)を刑事参考不起訴記録とする。

2 刑事参考不起訴記録は,当該記録に係る事件について不起訴の裁定をした検察官の属する検察庁の長が保存する。

3 第17条及び第18条の規定は,刑事参考不起訴記録について準用する。