新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース (回答): (解説): 1 破産した株式会社・会社代表者との関係で問題となりうる犯罪について (1)破産者等に対する面会強請等の罪について (2)恐喝罪について (3)強要罪について (4)上記(1)から(3)までの罪の関係 (5)窃盗罪について (6)特定の債権者に対する担保の供与等の罪について 2 中古車業者との関係で問題となりうる犯罪について (2)破産手続中の自動車の転売に関する補足 イ 管財人との関係について 3 なお,倒産しそうな取引先からの債権回収については,事例集65番もご参照ください。 【参照条文】 <刑法> <破産法> <民法> <会社法> 【参考文献】
No.1316、2012/8/3 14:07 https://www.shinginza.com/qa-sarakin.htm
【破産・倒産会社に対する債権回収としての自動車の持出と転売・破産者等に対する面会強請等の罪,特定の債権者に対する担保の供与等の罪(平成16年破産法改正)】
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質問:私は,ある株式会社にお金を貸していたのですが,その会社に裁判所から破産手続開始決定通知がありました。その後,私は,破産手続きではお金を回収する見込みがないと思い,会社代表者の同意を強引に取り付けて,会社の自動車を持ち帰ってきました。また名義変更のために,会社にあった印鑑証明書と名義変更の書類に実印を押してもらって持って来ました。これから,この車を中古車業者に転売してお金にしようと思っております。私の行動は法律上問題があるでしょうか。何らかの罪に問われますか。
1.あなたは破産手続開始決定があった会社の代表者に債権の回収を目的として強引に面談したということですから,あなたには面会強請等の罪(破産法275条)が成立すると考えられます。また,あなたの取った行動が害悪の告知や暴行等を伴う場合は恐喝罪(刑法249条1項),強要罪(刑法223条)に問われる可能性があります。また,破産会社の代表者が任意に印鑑証明等を渡したとしても破産した株式会社に成立する特定の債権者に対する担保の供与等の罪(破産法266条)に関する共犯も成立する可能性があります。また,中古車業者に対しても,破産手続が開始された会社の自動車であることを隠して売却すれば詐欺罪(刑法246条1項)に問われる可能性があります。このようにあなたの行動は犯罪になりますから,自動車の販売はただちに中止して,自動車や必要書類は管財人に連絡して返還すべきです。
2.破産に関連して当事務所事例集論文:1227番,1197番,1146番,1098番,1020番,938番,843番,841番,835番,834番,833番,804番,802番,717番,562番,515番,510番,463番,455番,428番,426番,374番,323番,322番,226番,184番,170番,155番,65番,34番,9番参照。
(破産制度の趣旨)
まず破産手続きの趣旨をご説明します。破産(免責)とは,支払不能等により自分の財産,信用では総債権者に対して約束に従った弁済ができなくなった債務者の財産(又は相続財産)に関する清算手続きおよび免責手続きをいいますが(破産法2条1項),その目的は,債務者(破産者)の早期の経済的再起更生と債権者に対する残余財産の公正,平等,迅速な弁済の2つです。その目的を実現するため手続きは適正,公平,迅速,低廉に行う必要があります(破産法1条)。なぜ 破産,免責手続きがあるのかといえば,自由で公正な社会経済秩序を建設し,個人の尊厳保障のためです(法の支配の理念,憲法13条)。我が国は,自由主義経済体制をとり自由競争を基本としていますから構造的に勝者,敗者が生まれ,その差は資本,財力の集中拡大とともに大きくなり恒常的不公正,不平等状態が出現する可能性を常に有しています。しかし,本来自由主義体制の原点,真の目的は,自由競争による公正公平な社会秩序建設に基づく個人の尊厳保障(法の支配の理念)にありますから,その手段である自由主義体制(法的には私的自治の原則)に内在する公平公正平等,信義誠実の原則が直ちに発動され,不平等状態は解消一掃されなければなりません。
そこで,法は,なるべく早く債務者が再度自由競争に参加できるように従来の債務を減額,解消,整理する権利を国民(法人)に認めています。したがって,債務整理を求める権利は法が認めた単なる恩恵ではなく,国民が経済的に個人の尊厳を守るために保持する当然の権利です。その権利内容は,債務者がその経済状態により再起更生しやすいように種々の制度が用意されているのです。
大きく分けると債務者の財産をすべて一旦清算し,残余財産を分配してゼロからスタートする破産 (清算方式の内整理)と,従来の財産を解体分配せずに,従来の財産を利用して再起を図る再生型(再起型内整理,特定調停,民事再生,会社更生法)に分かれます。唯,債権の減縮,免除が安易に行われると契約は守られなければならないという自由主義経済(私的自治の原則)の根底が崩れる危険があり,債務者の残余財産の確保,管理,分配(破産財団の充実)は厳格,公正,平等,迅速低廉に行われます。従って,破産の目的を実現するため破産法上特別な規定を用意しています。破産者等に対する面会強請等の罪,特定の債権者に対する担保の供与等の罪(平成16年破産法改正)も以上の制度趣旨に従って規定されており,解釈されます。
破産手続開始決定(破産法30条)があった後は,裁判所が破産債権を調査し(破産法116条),破産管財人が破産財団を調査し(破産法83条),これを金銭に換価し(破産法184条),配当表(破産法196条)に従って債権者に分配していくというのが手続の原則になります。破産債権者としては,債権者集会(破産法135条)に参加し,裁判所が作成する債権者一覧表に異議を出したり,破産管財人が作成する破産財団の財産目録や,配当表に記載された債権額などについて異議を述べていくなどの活動をすることは破産法上も認められていますが,それ以外に,法人代表者と個人的に話をつけて債権回収をするようなことは認められていないのです。
破産法275条は,破産者又はその親族その他の者に破産債権(免責手続の終了後にあっては,免責されたものに限る。)を弁済させ,又は破産債権につき破産者の親族その他の者に保証をさせる目的で,破産者又はその親族その他の者に対し,面会を強請し,又は強談威迫の行為をした者は,3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し,又はこれを併科するものと定めています。
そもそも,破産手続は,すべての破産債権者が,平等原則の下において,本来は自らの権利に属する行為を等しく制限され,最終的にも配当の限度でのみ,その権利を充足することを認める手続です。このような破産手続外において,実力によってその権利の充足を図ろうとする行為は,各債権者に課せられた行為制限を逸脱するものといえます。また,その財産が破産財団を構成するものとすれば,特定の債権者だけに不公正な弁済を強いるものといえます。本条は,これらの観点などから,実力の行使により破産債権の充足を図ろうとする行為を処罰することとしたものです。
制度趣旨から本罪が成立するには@「弁済させ」る,あるいは「破産債権について保証させる」目的で,A破産債権者等に「面会を強請し」あるいは「強談威迫の行為」をしたこと,が要件となります。実際に弁済されたか否かは犯罪の成立とは関係ありません。
あなたは,破産手続開始決定があることを知って,破産手続きによらずに債権を回収しようとして破産会社の関係者に面談したわけですから,@の目的があったことは否定できないでしょう。なお,ここでいう「弁済」とは,破産債権の消滅原因になるものと広く含むものと解されています。また,債務を金銭の代わりに自動車で支払うという代物弁済が「弁済」にあたることに問題はありません。本罪は,実際に弁済を受けなくてもその目的をもっていれば成立する犯罪ですから,現実に弁済を受けたとすれば,その目的を有していたことを否定することはできないでしょう。
Aの要件について,「面会強請」とは相手の意思に反して面会を要求する行為のことであり,「強談威迫」とは強談(相手に対し言語をもって強いて自己の要求に応ずるよう迫る行為)又は威迫(相手に対して言語,動作をもって気勢を示し,不安,困惑を生じさせる行為)のことをいいます。倒産した会社の関係者と面談する場合ですからある程度の強い態度をとることもあるでしょうから,強い態度のすべてが強制や強談とは言えないでしょう。しかし,債務者とすれば破産手続が開始しているので,話はできない,管財人なり債務者代理人弁護士と協議して欲しいなどと面談を拒否するのが通常の対応でしょうから,明確に面談を拒否された後も,面談等を要求すると強制なり強談,威迫があったとされることになるでしょう。強制等が,害悪の告知等を伴う違法性が高いものになれば後で説明する,恐喝や強要罪となりますが,その程度に至らないような行為が本罪となります。
本罪の法定刑は3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処せられ,又はこれらが併科されることになっています。
刑法249条1項は,人を恐喝して財物を交付させた者は,10年以下の懲役に処すると規定しています。
ここで「人」には,自然人のみならず法人その他の団体を含みますので,本件のような株式会社である法人も「人」にあたります。
また「恐喝」とは,相手方に対して,その反抗を抑圧するに至らない程度の脅迫又は暴行を加え,財物交付を要求することをいいます。相談者様の場合,事情ははっきりしませんが,例えば「金を返さないと,会社の不祥事を公にする」などの言葉でもって会社代表者から強引に同意を取り付けたような場合には,恐喝にあたる可能性があります。
なお,権利者がその権利の実行の手段として相手方を恐喝して財物を交付させたような場合は自救行為として違法性がないとして犯罪が成立しないのではないかという議論があります。ですが,お金を貸していた債権者が債務者に自動車での支払を要求することはそもそも権利とはいえないと思われますので,この場合には違法性は認められ犯罪は成立するものと考えられます。
刑法223条1項は,生命,身体,自由,名誉若しくは財産に対し害を加えるとを告知して脅迫し,又は暴行を用いて,人に義務のないことを行わせ,又は権利の行使を妨害した者は,3年以下の懲役に処すると規定しています。
「義務のないこと」とは,脅迫・暴行による強制を受忍する義務がないことを意味し,法律上の義務がある場合を排除する趣旨ではありません。本件において,金銭を借りた場合には金銭で返す義務はありますが金銭の支払いに代えて車を引き渡す法律上の義務はありませんし,ましてやそのことが脅迫・暴行による強制を受忍すべきものともいえませんから,本件のような車の引き渡しは「義務のないこと」にあたります。
このように見てくると,本件では,破産者等に対する面会強請等の罪,場合によっては恐喝罪,強要罪が成立しそうにも思えますが,いずれの犯罪が成立することになるのでしょうか。
まず,恐喝罪は強要罪に優先して成立するものと解されておりますので(法条競合),本件では恐喝罪が成立するということであれば,強要罪は成立しません。ただ,恐喝罪のところで説明した事情が一切ないということであれば,強要罪にとどまるでしょう。 次に,破産者等に対する面会強請等の罪については,平成16年破産法改正の際に新設された規定で余り議論が煮詰まってないところのため以下は私見となりますが,恐喝罪か強要罪が成立する場合には,破産者等に対する面会強請等の罪は成立しないものと考えます。そもそも,同罪を新設した立法趣旨は,破産手続外において,実力により破産債権の充足を図ろうとする行為は,本来的には権利の行使として許される範囲のものであって恐喝罪等を構成することにはならないものであっても,各債権者に課せられた行為制限を逸脱するものであり,破産手続の適正かつ公正な実施に対する侵害行為に当たるものとして処罰対象としたものです。すなわち,面会要請等は恐喝罪等の手段の態様として位置づけられているものといえます。こうしてみますと,これは傷害罪における暴行罪の関係と類似します(一般的に,傷害罪が成立する場合には,暴行罪は成立しないとされております(基本法と補充法の関係。法条競合。))。ですから,破産者等に対する面会要請等の罪と恐喝罪等も複数の構成要件が基本法と補充法の関係にあるとして,法条競合(補充関係)となると解するべきだからです。法定刑の重さを比較しても,3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金と恐喝罪,強要罪より軽くなっているのは以上の理由に基づいています。
刑法235条は,他人の財物を窃取した者は,窃盗の罪とし,10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処すると規定しています。
ここで「窃取」とは,財物の占有者の意思に反して,その占有を侵害し,自己又は
第三者の占有に移すことをいいます。本件では,強引ではありますが,自動車を引き渡すことに会社代表者の同意があります。会社代表者には業務執行権限がありますので(会社法349条4項),会社代表者にはその前提として会社財産について占有があるといえますから,会社代表者の同意が強引にせよある以上は「窃取」にはあたらないと考えられます。ですから,本件では,相談者様に窃盗罪は成立しないといえます。
破産法266条は,債務者(相続財産の破産にあっては相続人,相続財産の管理人又は遺言執行者を,信託財産の破産にあっては受託者等を含む。以下この条において同じ。)が,破産手続開始の前後を問わず,特定の債権者に対する債務について,他の債権者を害する目的で,担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって債務者の義務に属せず又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをし,破産手続開始の決定が確定したときは,5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し,又はこれを併科すると定めています。
本件会社の行動は,相談者様に対する「特定の債権者に対する債務」についてのことですし,破産する場合には債権者は多数に上るのが通常ですから「他の債権者を害する目的」で「債務の消滅に関する行為」をしたものといえます。また,本件株式会社が相談者様に対して代物弁済をすべき義務はありませんから,「その方法が債務者の義務に属しないもの」といえます。そうすると,本件会社代表者には,破産法266条の罪が成立します。
問題は,相談者が本件株式会社代表者に自動車を持ち帰ることの同意を強引に取り付けたという行動が,同罪の共同正犯(刑法60条)又は教唆犯(刑法61条1項)として処罰されるかということです。本条の罪について相手方処罰規定を設けるべきか,設けるとした場合はどのような要件にすべきかは議論になったところですが,平成16年改正新破産法は相手方処罰規定を置くことはせず,対向犯に係る必要的共犯の問題に関する刑法上の一般的な解釈にゆだねることとしました(法制審議会第33回会議議事録参照)。したがって,この点についても議論が必ずしも煮詰まっておりませんので,以下は刑法上の解釈に照らした私見となります。ここで対向犯とは,二人以上の行為者の互いに対向した行為の存在することが要件とされる犯罪をいいます。例えば,収賄罪と贈賄罪,わいせつ文書販売罪(買主不処罰)などがその典型例です。収賄罪と贈賄罪のように,いずれも複数の行為者が関与することを予想して独立した構成要件とした犯罪類型を必要的共犯といいます。他方で,わいせつ文書販売罪のように,対向関係にある行為者のうち,一方の行為者についてだけ処罰規定がある場合,刑法上,相手方が積極的に働きかけたような場合を除いて,相手方を処罰することは法の意図しないものと解されております。本件もわいせつ文書販売罪と同様の関係にあるといえますので,相談者様が積極的に本件株式会社に自動車を引き渡すように積極的ないし能動的な働きかけをしたというような例外的な場合には,その共犯としての構成要件にあたることはありえます(その場合,上記(1)ないし(3)の罪とは併合罪(刑法45条前段)の関係になるものと解されます)。もっとも,本件株式会社は恐喝・強要・面会強請等をされた被害者であるため,このような場合には違法性がないとされるか,量刑上本件会社に有利に判断されることが多いでしょう。
(1)詐欺罪について
刑法246条1項は,人を欺いて財物を交付させた者は,10年以下の懲役に処すると規定しております。
本件では,財物の所有権を破産会社から強引に移転しようとした場合であり,転売する際にそのことを告げないことが「人を欺いて」にあたるかが問題となります。
ここで欺くとは,人を錯誤に陥らせる行為をすることをいいます(大判大6・12・24録23-1621)。そして,錯誤とは,観念と真実の不一致を指します。ここで人を欺く行為によって生じさせる錯誤とは,それがなければ支払などをしなかったであろうような重要な事実に関するものでなければならないとされています。本件自動車は破産財団に属するものであり,破産手続によらない自動車の処分は無効ですから,自動車の所有権は実際はなおも本件会社にあることになります(破産法47条第1項)。そのため,そもそも他人に権利があるものを売買の目的とすることが重要な事実といえるかが問題となるわけですが,民法上他人の権利を売買の目的とすることも正当な取引行為であるとされておりますので(民法560条),所有権がないことを告げなかっただけで直ちに詐欺罪となるわけではありません。ただ,所有権者が所有権を手放す意思がないことを熟知していながら,相手方に対して,所有権者がその意思があると偽り,後にその目的物を譲り受けて譲り渡すと告げてお金を交付させたような場合は,重要な事実について相手方に錯誤を生じさせるものといえ,詐欺罪が成立すると考えられております。本件でも,破産手続段階においては所有者が自らの判断で本件自動車を手放すことはできないわけですから,株式会社が破産していることを告げないで自動車を第三者に売却しようとしているのであれば,その行動は詐欺罪(刑法246条1項)にあたりうるものと考えられます。
ア 所有権留保について
自動車のように高価なものについては,代金支払いの担保目的として,弁済が完了するまで所有権を留保しつつ占有のみを移転する契約形態が広く用いられています。このように,売主が目的物の引き渡しを終えつつ代金の完済まで目的物の所有権を留保することを内容とする契約を所有権留保契約と呼びます(所有権留保契約については,事例集349番,426番,938番,1076番,1192番もご参照ください)。
このような場合,名義人はリース会社になっていることが通常ですので,自動車を転売しようとしても,そもそも買い手が見つからないのが普通です。ただし,巷では名義変更手続きをせずに自動車を譲渡するようなことも行われていることも事実です。しかし,この様な行為は契約違反であるばかりか,自動車の所在が分からなくなってリース会社の自動車の回収を困難にするような行為はリース会社の所有権を侵害する行為であり横領罪に該当する行為であることに注意する必要があります。
自動車の名義人が仮に本件会社にあっても,本件では転売は困難なのが通常です。以下説明いたします。
本件においては,ある株式会社について破産手続開始決定がなされ(破産法30条),自動車については破産財団(破産法34条1項)の一部を構成しているものと思われます。破産財団というのは分かりにくいですが,破産者に対する債権をもった方全員のための支払いの引き当てとなる財産全体のことで,破産財団についての処分権限は原則すべて破産管財人に移転することになります(破産法78条)。その反面として,破産者が破産手続開始決定後に当該財産に関して何らかの法律行為をしたとしても,その効力は破産手続との関係では効力を有しません(破産法47条1項)。そのため,仮に自動車を処分する権限を破産者が相談者様に委ねたとしてもそのような行為は無効ですから,第三者に売却することはできません。手続的には自動車の名義変更には印鑑証明書と実印が必要ですが,破産手続開始後は会社の印鑑証明書自体は発行されるものの,印鑑証明書に破産手続開始決定されている旨を記載することになっており(会社は破産手続開始により解散手続きに入りその旨の登記がなされますが,清算法人として存続し会社役員もその地位にとどまっていますから印鑑証明書自体の発行は可能とするのが法務局の扱いです),この様な印鑑証明書では名義変更はできないことになります。ですから,破産手続開始決定前に会社が印鑑証明書を取得していた場合に,その印鑑証明書を使用して名義変更をするという,極めてまれな場合を想定する必要がありますが,その場合,形式上は名義変更は可能となります。
(強要)
第223条 生命,身体,自由,名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し,又は暴行を用いて,人に義務のないことを行わせ,又は権利の行使を妨害した者は,三年以下の懲役に処する。
2 親族の生命,身体,自由,名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し,人に義務のないことを行わせ,又は権利の行使を妨害した者も,前項と同様とする。
3 前二項の罪の未遂は,罰する。
(恐喝)
第249条 人を恐喝して財物を交付させた者は,十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により,財産上不法の利益を得,又は他人にこれを得させた者も,同項と同様とする。
(詐欺)
第246条 人を欺いて財物を交付させた者は,十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により,財産上不法の利益を得,又は他人にこれを得させた者も,同項と同様とする。
(共同正犯)
第60条 二人以上共同して犯罪を実行した者は,すべて正犯とする。
(教唆)
第61条 人を教唆して犯罪を実行させた者には,正犯の刑を科する。
2 教唆者を教唆した者についても,前項と同様とする。
(破産手続開始の決定)
第30条 裁判所は,破産手続開始の申立てがあった場合において,破産手続開始の原因となる事実があると認めるときは,次の各号のいずれかに該当する場合を除き,破産手続開始の決定をする。
一 破産手続の費用の予納がないとき(第二十三条第一項前段の規定によりその費用を仮に国庫から支弁する場合を除く。)。
二 不当な目的で破産手続開始の申立てがされたとき,その他申立てが誠実にされたものでないとき。
2 前項の決定は,その決定の時から,効力を生ずる。
(破産手続開始の決定と同時に定めるべき事項等)
第31条 裁判所は,破産手続開始の決定と同時に,一人又は数人の破産管財人を選任し,かつ,次に掲げる事項を定めなければならない。
一 破産債権の届出をすべき期間
二 破産者の財産状況を報告するために招集する債権者集会(第四項,第百三十六条第二項及び第三項並びに第百五十八条において「財産状況報告集会」という。)の期日
三 破産債権の調査をするための期間(第百十六条第二項の場合にあっては,破産債権の調査をするための期日)
2 前項第一号及び第三号の規定にかかわらず,裁判所は,破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足するおそれがあると認めるときは,同項第一号の期間並びに同項第三号の期間及び期日を定めないことができる。
3 前項の場合において,裁判所は,破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足するおそれがなくなったと認めるときは,速やかに,第一項第一号の期間及び同項第三号の期間又は期日を定めなければならない。
4 第一項第二号の規定にかかわらず,裁判所は,知れている破産債権者の数その他の事情を考慮して財産状況報告集会を招集することを相当でないと認めるときは,同号の期日を定めないことができる。
5 第一項の場合において,知れている破産債権者の数が千人以上であり,かつ,相当と認めるときは,裁判所は,次条第四項本文及び第五項本文において準用する同条第三項第一号,第三十三条第三項本文並びに第百三十九条第三項本文の規定による破産債権者(同項本文の場合にあっては,同項本文に規定する議決権者。次条第二項において同じ。)に対する通知をせず,かつ,第百十一条,第百十二条又は第百十四条の規定により破産債権の届出をした破産債権者(以下「届出をした破産債権者」という。)を債権者集会の期日に呼び出さない旨の決定をすることができる。
(開始後の法律行為の効力)
第47条 破産者が破産手続開始後に破産財団に属する財産に関してした法律行為は,破産手続の関係においては,その効力を主張することができない。
2 (略)
(特定の債権者に対する担保の供与等の罪)
第266条 債務者(相続財産の破産にあっては相続人,相続財産の管理人又は遺言執行者を,信託財産の破産にあっては受託者等を含む。以下この条において同じ。)が,破産手続開始の前後を問わず,特定の債権者に対する債務について,他の債権者を害する目的で,担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって債務者の義務に属せず又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをし,破産手続開始の決定が確定したときは,5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し,又はこれを併科する。
(破産者等に対する面会強請等の罪)
第275条 破産者(個人である破産者に限り,相続財産の破産にあっては,相続人。以下この条において同じ。)又はその親族その他の者に破産債権(免責手続の終了後にあっては,免責されたものに限る。以下この条において同じ。)を弁済させ,又は破産債権につき破産者の親族その他の者に保証をさせる目的で,破産者又はその親族その他の者に対し,面会を強請し,又は強談威迫の行為をした者は,3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し,又はこれを併科する。
(他人の権利の売買における売主の義務)
第560条 他人の権利を売買の目的としたときは,売主は,その権利を取得して買主に移転する義務を負う。
(株式会社の代表)
第349条 取締役は,株式会社を代表する。ただし,他に代表取締役その他株式会社を代表する者を定めた場合は,この限りでない。
2 前項本文の取締役が二人以上ある場合には,取締役は,各自,株式会社を代表する。
3 株式会社(取締役会設置会社を除く。)は,定款,定款の定めに基づく取締役の互選又は株主総会の決議によって,取締役の中から代表取締役を定めることができる。
4 代表取締役は,株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。
5 前項の権限に加えた制限は,善意の第三者に対抗することができない。
・刑法総論講義案(三訂補訂版)
・条解刑法(第2版)
・大コンメンタール破産法(初版)
・一問一答新しい破産法(初版)
・論点解説新破産法 下巻
・伊藤眞 破産法・民事再生法(第2版)